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なかなかスゴイものになっていますね、いえ、G20のことです。
内容的には詳細はまだ伝わって来ないのですが、画像的になんとも圧巻です。
たとえば私がたまげたのはこの一枚。左向きゃにトランプ、右向きゃ習。気の弱い人だったら気絶モノの構図です。
G20公式ツイート https://twitter.com/g20org
香港ではG20前夜にテーマとしてほしいというデモまであったそうですが、日本は議長国という制限の中でこのように触れています。
「香港政府の「逃亡犯条例」改正案を巡る問題で、首相は「一国二制度」の下で自由で開かれた香港の繁栄が重要だとの認識を伝達。新疆ウイグル自治区での人権問題も念頭に、人権の尊重や法の支配など普遍的価値の重要性を指摘」(日経6月29日)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46674680X20C19A6PP8000/
これに対して香港のひとたちの素直な感謝か多く寄せられています。
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3114.html
「安倍は香港問題を習近平の前で取り上げた初めての外国の首脳」「本当にありがとうございます」
「日本が世界で一番初めに香港のために声を上げてくれた。ありがとう日本」
「こういう発言を最初にしてくれるのは、英米日のどれかだと思ってた。でも日本が最初になったのは自然な流れだと思う。歴史的に良好な関係を築いてきたわけだから」
もの足りない、全体議題にしろという人もいるでしょうが、それはかつて中国と香港の一国二制度を取り決めた英国の仕事です。
たぶんメイさんはやるでしょう。プーチンにも「安定は壊すな」と直言していますしね。
もう彼女にはこわいものはありません。最後の花道を飾って欲しいものです。
日本政府としては、これができる精一杯の外交的努力でしょう。
日本は緊張-緩和-緊張というサイクルの中で、時間をかけて民主党時代の尖閣国有化によって破壊された二国間関係を修復しています。
そのかいあってか、習に訪日を約束させるまでになってきています。
中国は分かりやすい国で、日米同盟が堅固な時には必ず妥協してくるのです。
強い者には弱く、弱い者には権高に、これがチャイニーズ・スタイルです。
よく誤解している人がいますが、中国に対して自由主義陣営に属する国として原則的な発言を止める必要はありません。
しかしかといって、徒にこちらから外交的テンションを上げるのは愚策なのです。
なぜなら、日本は中国正面に位置する前線国家だからです。
日米同盟を堅持していれば、中国につけ入る余地はありません。
ところで『表現者 クライテリオン』 という同人誌がありますが、その主宰者・藤井聡氏がこんな巻頭言を書いていています。
「経済と軍事双方で圧倒的な大国となり果たした中国、戦争が真剣に危惧される状況から一転してアメリカとの歴史的会談を実現した北朝鮮。(略)こうした核武装国家と隣接しながら、いまや軍事力、政治力のみならず経済力すら喪失し、20世紀の遺物ともいうべき米ソ冷戦構造の中で作られた日米関係を堅持する以外に大きな外交方針を見いだすことのままならぬ状況に置かれ、わが国の国力、国勢は日に日に衰弱し続けている」
藤井さん、あなたは専門の国土強靱化だけしゃべっていたらどうですか。
日本が長期デフレで国力を絞り尽くしたという指摘はそのとおりですが、根本的に外交情勢認識を間違っています。
北朝鮮は「戦争が危惧される状況から一転」などしてなどいません。
なんどか書いてきていますが、北はいまや南北そろって袋小路状態で、掛け値なしにデッドエンドです。
ですから藤井氏が讃える「北の外交力」とやらは、トランプ劇場の中だけで許される小芝居にすぎません。
第3次会談があるとすれば、ハードルは限りなく高いですよ。
同じ回答ではまた第2次会談の繰り返しで、もう次はありません。
おまけにこれも南北そろって、国内経済は火の車です。
共に政治に火が着くのは時間の問題です。
これは中国もそうですが、共産国家は外圧では倒れません。
倒れる時は、内部から軍隊の一部を味方にした勢力がでなければなりません。
すぐにそのような勢力は現れないでしょうが、弱体化した3代目政治、どこまで持ちますかおなぐさみです。
早めに亡命先をお探し下さい。
また中国の強大化も事実ですが、「圧倒的大国化」したかどうかは疑問です。
中国が相手の弱みにつけんで手を拡げた一帯一路は、各地で拒否されています。
なにより、藤井氏は米中経済戦争に否定的なようですが、この「戦争」は大統領選を前に緊張と融和のサイクルを辿りながら必ず長期戦となります。
なぜなら、トランプが自由主義陣営の大原則である「人権」「民主主義」を大テーマに掲げてしまった以上、後戻りはできないからです。
今日に予定されている米中首脳会談は、互いの言い分の言い合いで終わるでしょう。
習が前回反故にした米中合意の線に戻れば、話は別ですが、いったん蹴ったものを再度辞を低くして受け入れることは、習の国内権力の終わりを意味します。
ですから、互いに主張を言い合うとしかなりようがありません。
つまり、新しい「冷戦」は既に始まっている見るべきです。
かつての米ソ冷戦も緊張-融和の波を刻んだように、この米中新冷戦もまたそのサイクルを歩みながら、10年以上のスパンで続くことでしょう。
体力気力がもたなくなった国が敗者となります。
この米中新冷戦の自由主義陣営最大の軍事的・政治的根拠地がわが国です。
ですから、日米安保を藤井氏のように「米ソ冷戦期の遺物」と理解するのは、どこを見てそんなことを言っているのでしょうか。
ここさえしっかり押えておけば、日米同盟が簡単に崩せるものでないことが分かるはずです。
したがってとうぜんのことですが、朝日の期待をよそに日米同盟の見直しなど議題にすらなりませんでした。
なぜって、今更日米首脳にはわかりきったことで、昨日も書いたようにトランプの安保懐疑論なんか日米合作のパフォーマンスにすぎませんからね。
「日米首脳、貿易早期合意へ交渉加速 安保の重要性確認
日米安保については、両首脳が同盟を一層強化する認識で一致した。トランプ氏は26日の米メディアのインタビューで「米国が攻撃されても日本は必ずしも助けてくれない」と話すなど、日米安保条約への不満を漏らす発言があった。西村氏によると、首相は一連の発言について触れず、トランプ氏からも日米安保条約の見直しなどに関する言及はなかった」(日経6月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46674680X20C19A6PP8000/
日本は米中冷戦の自由主義陣営の策源地でありながら、いや逆にそれが故に直接的緊張緩和に努力すべきです。
これはまったく矛盾することではありません。
いつも棒調子でワーワーと批判だけしていればいいわけではありません。
緊張は軍事的にも政治的にも多大の出費を伴うロスで、国力を削ぐからです。
わが国には憲法をはじめとして、ほんとうに戦えない構造が数多く残っています。
これがかつて安保に庇護されて「戦っているふり」さえしていれば済んだ第1次冷戦との大きな差です。
今回の第2次冷戦において、日本はかつての米ソ冷戦のドイツのような位置にあります。
仮に第4次大戦があるとすれば、それは日本の領海と離島を舞台にする可能性が高いのです。
しかし今の日本には、ドイツのようなNATOの集団安保体制も核シェアリングもありません。
今や英仏を凌ぐに至った核大国・中国に対して丸裸に等しく、最低の核防衛力すらありません。
ないない尽くしを言っても始まりません。
今すべきことは、短期的な政治緊張を巧みに回避しながら、中国の核ミサイルに対処可能な地上イージス・システムの完成を急ぐべき時期です。
それすら出来ないで、藤井氏たちグループが言うような「独自外交」もなにもあったものではないからです。
ちなみにどーでもいいですが、ムン閣下とうちの国の首相とは8秒間だったそうで、この「外交天才」は夜は寂しく在日と飯をくったそうです。
少しは韓国の置かれた孤立した立ち位置が身に沁みたでしょうか。
昨日、また言ってんのかぁというかんじで例のトランプの安保撤退論に対応してしまったのですが、あれからじっくり考えてみたんですが、いかん、いかん、トランプという人は一筋縄ではいかない政治家だということをつい忘れかけていました。
トランプが何か問題発言した時には、その裏を見ておかねばならない、としょっちゅう言っているのは私でした(汗)。
トランプは一見、言葉を選ばずに、言いたい放題に見えるから、宮家邦彦氏のような元プロの元外交官あがりにはバカにされきっています。
それはわからないではありません。彼が表象する言辞が、そのまま信用できない部分を残しつづけるからです。
これは言葉を武器とする政治家として重大な欠陥であると同時に、彼の類例を見ない破壊力の秘密でもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=-xJuTYsBpQk
では、今回のトランプの安保撤収論をどう考えたらいいのでしょうか。
G20で来日してまたやらかしました。これで直近だけで3回目です。
「会談冒頭、日本や豪州との関係について「とてもよく面倒をみてきた」と発言。「巨額の貿易赤字を抱え、軍事面でも助けている」と述べ、貿易、安全保障両面で同盟国との関係が片務的との主張を繰り返した」(毎日6月27日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190627-00000105-mai-pol
ここまでくどく「面倒をみてきた」などとと恩をきせられると、「冗談じゃないぞ。米本土にいるより安い駐留コストで基地を提供しているのはどこの誰なんだ」という気分にもなりますが、考えてみればこういう日本攻撃とも取れる発言を、彼が安倍氏と示し合わせていないわけがないのです。
西にはイランと一触即発の状況をかかえ、東には米中経済戦争の真っ盛り。首脳会議は間近、しかもその舞台は日本が議長国という状況下で、日本にまで喧嘩を売る意味がありません。
宮家氏あたりだと「しょせんあの男は気まぐれなシロートですから」で済ましてしまうでしょうが、そうだと面白くもなんともないわけです。
私はこの一連の日本バッシングは、安倍氏と綿密に打ち合わせた発言ではないかと仮説を立ててみました。
トランプが言っているのは安保の片務性に対する不満ですが、これを駐留経費論で済ませると分からなくなります。
たぶんそんなゼニカネの問題ではないと思います。
トランプがビジネスマンだったということの先入観に影響されすぎています。
というのは、トランプが続けて6月24日にこうTwitterしているからです。
「中国は91%、日本は62%の石油を、この海峡を通じて得ている。他の国々も同様だ。我々はなぜ、無償で長年、諸外国のシーレーンを守り続けているのか?すべてのこれらの国は、自国の船をその航行する海域において守るべきである」
ここでトランプが中国まで引き合いに出しているので分かりにくいし、ホルムズ海峡安全コストを米国のみが払っているというゼニカネ問題にするとまたわからなくなります。
言っている相手が、日本だということに注目してください。
不倶戴天の敵となった中国にホルムズ海峡まで出張って来いなんて思っているはずもありませんから、言っている相手は間違いなくわが日本です。
したがって、トランプは日本に対してホルムズ海峡のタンカー護衛に出てこいと言っているのです。
ほぼ同時期にトランプは攻撃10分前中止をしました。
これらは別の出来事ととるべきではありません。少なくともトランプにとってはひとつながりのことです。
つまり、イランへの攻撃10分前中止の真の原因は百何十人死ぬということではなく(戦争する以上、人的被害がでることは折り込み済みのはずですから)、ホルムズ海峡が戦場となって封鎖されるからです。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/iran-denial_jp...
米国が軍事攻撃に出た場合、いかにそれが限定攻撃であろうとも、イラン強硬派の革命防衛隊は過敏に反応します。
彼らはホルムズ海峡を封鎖を宣言するでしょう。しないと考えるほうが無理があります。
イランにとってホルムズ海峡というチョークポイントを握っていることが最大の保険なのですから、こういう時に使わねば意味がありません。
通過を試みるいかなる国のタンカーも攻撃の対象とすると、イランは世界に向けて叫ぶはずです。
ただし、それに踏み切ったら最後、国際社会を完全に敵に回し、第2の北朝鮮となります。
最悪、米国との全面戦争もありえることになります。
そうなった場合、イランは国家として消滅に追い込まれます。
イランがこの破滅への道を選ぶかどうかは未知数ですが、革命防衛隊などの強硬派が突っ走る可能性は否定できません。
どの社会、いかなる歴史においても、現実に戦争の足音が聞えてきた場合、過激な発言が優位を占めます。
穏健派は「お前らが融和的態度をした結果がこれだ」とばかりに袋叩きに合い逼塞します。
結果、イランの硬軟のバランスは崩れることになります。
そしてイランが強硬派の主張どおり、ホルムズ海峡の実力封鎖に走った場合、日本の62%の原油は止まり、国際原油価格は暴騰するでしょう。
国際経済はリーマンショック並の衝撃を受けます。
ただ米国のみは、この打撃からは最も遠い場所にいることを忘れないで下さい。
湾岸戦争時とは大きく違って、シェールガス革命で、世界最大の産油国となっているからです。
中東原油などあってもなくてもかまわないのが、米国の一国的経済利害なのです。
中東とは距離を置きたい。イラクからもアフガンからも撤収したわけです。
だからこそかえって、今や中東情勢の最大の不安定要因になってしまったイランを押込みたいと考えています。
核武装願望を根絶し、「革命の輸出」をやめさせ、北朝鮮との核のパイプが遮断されれば、イスラム原理主義の体制はどうぞそのまま存続して結構と考えていると思います。
このへんは、北に対する対応と酷似しています。
トランプが軍事力行使を寸止めした、と言った本意はここにあります。
トランプは、いかに無人機であろうと米軍機が撃墜されたからには黙っているわけにはいかないが、本音は戦争は極力回避したいのです。
この米国の本音を、日米のメディアは好戦的トランプという報道をくりかえしたために、完全に見誤ってしまっています。
ではトランプは何を言いたいのでしょうか。
発言の真意は、短期的には、ホルムズ海峡の安全のために日本の海自を派遣させることにあります。
海自にはそのようなタンカー護衛の海上作戦能力がありますし、法制的にもかつての安保法制時に作ってあります。
香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官はこのように述べています。
木村正人 https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20190625-00131581/
「ホルムズ海峡への依存と責任が少なくなった米国のトランプ大統領がそのように言い出すことは想定済みで、問題は、日本政府にその時の覚悟と準備があるかどうかでしょう。現在、日本はホルムズ海峡のシーレーン防衛に艦艇を出していません。
外洋作戦能力で言えば、海自は英国やフランスよりはるかに高いですから。駆逐艦の数で言っても海自は英海軍の3倍はあります。ホルムズ海峡のシーレーン防衛を担う能力は十分にあります。
トランプ大統領が強調したいのは自分のことは自分でしっかりやりなさい、全般的なことは米軍がやりますということだと思います」
かつてのイラク戦争終了後には機雷処理で掃海艇を派遣した実績がありますが、いまはかつてと違ってジブチに海賊対処のための施設を持っています。
具体的には、現在、海賊対処のために作られている自由主義諸国によるタクスフォースCTF-151のような枠組みを作り、それが船団を作ってホルムズ海峡を通過するのを護衛する形になるでしょう。
「自衛隊は護衛艦と派遣航空隊をCTF-151に編入しました。これと同じようなかたちで西側諸国による有志連合が編成され、航行する船舶を護衛することになるでしょう。
ペルシア湾、紅海、アラビア海からケニアまでの東アフリカを担当する米海軍第5艦隊が全体を調整するでしょう。米国は何と言っても情報を豊富に持っています」(香田前掲)
香田氏は、海賊対処の枠組みを発展させれば可能だとしていますが、まったく問題がないわけでもありません。
ひとつには、米軍が安保条約の枠外のために直接護衛ができないことです。
ですから、そのために有志連合というフレームを作らねばなりません。
実は日本はこのような有志連合という国際的軍事協力の体験は海賊対処ていどしか経験がありません。
また、日本籍タンカーといっても、実際には大部分がパナマなどの外国籍のために、外国籍タンカーの防衛ということに法的にはなるために、これをどう整合性をつけるかです。
このように問題はいくつも残っていますが、トランプは、日本がせっかく作った安保法制を神棚に祭って柏手を打って済ましてるんじゃないぞ、と言っているのです。
そして中長期的には、日米同盟を現状の片務的関係からまともな二国間関係である双務的関係に格上げしたいと思っていると思われます。
沖縄で問題となっている日米地位協定ひとつとっても、日米が双務的になればおのずと解決することです。
実はこれこそは、安倍氏が改憲論との関わりにおいても、具体的な論点にせねばならなかったことなのです。
そう考えると、安倍氏はトランプに停滞する改憲論への一石を投じて欲しかったといえるのかもしれません。
その意味で、トランプ発言は安倍氏と事前に議論した結果、計算されて出されたものではなかったかと、私は思い始めています。
トランプさんはああいう自己顕示欲が強烈なご仁ですから、色々言いますが、あまり一喜一憂しないで下さい。
正恩に対して「恋人みたいただ」と言ってみたり、習にだって「友人」くらいのことは平気で言う人です。
いちいち真に受けていたら、こっちの身がもちません。
ただ、彼は馬鹿ではないので行ったことの「目的」ははっきりとあります。
それを見極めれば、いかに表現がひどくても、いかに常識はずれであろうか、彼は彼なりに戦略的目的のためにああ言っているのですから、これもディールのうちだとかんがえましょう。
絶対に一球目は、内角高め危険球を投げると誓っているようですから、鼻先を通過する球に驚いていてはいけません。
あれはこちらが驚いて、フォームがバラバラになるのを期待しているのです。
修行が足りない政治家だと、たまげて唯々諾々くと法外な要求を呑んでしまうことになります。
ああ、またホワイトハウスで、プロレスWWEのマイクパーフォーマンスをやっているなと思えばいいのです。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20181110001...
G20直前に、ふたつばかり言っています。
ひとつは安保廃棄論。
いまひとつは、ホルムズ海峡の自国タンカーは自分で守れ論です。
前者の安保廃棄論は話になりませんが、後者のタンカー防衛論は一理あります。
分けて考えて、あくまでも自分の国の国益に沿って対応をすればいいだけのことです。
ブルームバーク The USS John S. McCain destroyer at the Yokosuka Naval Base in Japan.
まずは安保廃棄論から。朝日界隈は涙を流さんばかりに歓喜しているようですが無視して下さい。
なんと言っていたのか、ブルームバーク (6月25日) の原文にあたってみます。
"President Donald Trump has recently mused to confidants about withdrawing from a longstanding defense treaty with Japan, according to three people familiar with the matter, in his latest complaint about what he sees as unfair U.S. security pacts.
Trump regards the accord as too one-sided because it promises U.S. aid if Japan is ever attacked, but doesn’t oblige Japan’s military to come to America’s defense, the people said. The treaty, signed more than 60 years ago, forms the foundation of the alliance between the countries that emerged from World War II."(仮訳)
この問題をよく知る3人の人物によると、ドナルド・トランプ大統領は最近、彼が日米安全保障条約に苦情をもっており、日本との長年の
防衛条約からの撤退について自信をもっていた。
トランプ氏は、日本が攻撃されたことがあれば合衆国の援助を約束しているが、日本の軍隊がアメリカの防衛に来ることを義務付けていないため、この合意は一方的すぎると考えている、と述べた。 60年以上前に調印された条約は、第二次世界大戦から出現した諸国間の同盟の基礎を形成する」
元ネタを読まないと、朝日(6月26日)のように「『日米関係は最強』と蜜月をアピールする安倍(晋三)政権だが、衝撃と不安を隠しきれない」というリアクションになってしまいます。
朝日は元ネタを洗って書いているのでしょうか。
ブルームバークは続けてこうも書いています。
"Even so, the president hasn’t taken any steps toward pulling out of the treaty, and administration officials said such a move is highly unlikely. All of the people asked not to be identified discussing Trump’s private conversations. While Trump’s repeated criticism of security pacts around the world has alarmed allies from Seoul to Paris, he hasn’t moved to withdraw from such agreements the way he has with trade deals."
(仮訳)
「そうであっても、大統領は条約からの撤退に向けたいかなる措置も講じておらず、行政当局者はそのような動きはまったくありそうもないと述べた。 トランプの個人的な会話のために、全員が身元を明らかにしないよう求めた。
トランプ氏が世界中の安全保障条約について繰り返し批判したために、ソウルからパリまでの同盟国を不安にさせたが、彼は協定から撤退することに動いていない」
なんだ、ネタ元のブルームバークですら、現実にはありえないことだと行政当局者に言わせて、トランプもいままでさんざん言ってきたが、そんなことをしたことはないと書いているじゃないですか。
このもの騒がせに聞える安保撤退論は、ボルトンに言ったようですから、即座にボルトンにからこう諭されたことでしょう。
「大統領閣下、まだこんなことを言ってんですか。日米安保から合衆国が撤退したら、はしゃぐのは中国とロシア、それにイランですぞ。もし本気なら、ボンペオと私の首を切ってからやって下さい」
またトランプはこんなこともFOXTVで言っていたようです。
https://video.foxbusiness.com/v/6052501492001/#sp=show-clips
「日本が攻撃されたら米国は第3次世界大戦を戦う。いかなる犠牲を払っても日本を守る。でも米国が攻撃されても日本はわれわれを助ける必要はないし、その様子をソニーのテレビで見てられるってわけだ」
おお、なんと頼もしきお言葉を、合衆国大統領から頂いたものです。いいですか、トランプはこう言っているのですよ。
「日本が攻撃されたら第3次大戦を戦う。いかなる犠牲を払っても日本を守る」
渋々尖閣は安保第5条の範疇だと認めたオバマとはエライ違いです。
日本を守るためには第3次大戦も辞さないというフレーズを切り取りなさいよ、、朝日さん。
トランプが言っているのは日米安保の片務性という、延々と昭和の時代から議論されて来た手垢のついた議論にすぎません。
2016年の大統領選挙時にはもっと露骨にこの片務性を攻撃し、やれ駐留経費を上げろなどと吠えていました。
駐留経費は十分に払っています。日本を除く26カ国の合計より多いくらいです。
元々少ない上に、支払いを滞らせているドイツとは違います。
●2002年の米国の資料による各国米軍駐留経費負担率比較
・日本 ・・・75%
・ドイツ ・・・33%
・韓国 ・・・40%
・イタリア・・・41%
ちなみにトランプは就任前には日本は核を保有すべきだ、なんてことも言っていました。
その後に引っ込めますが、潜在的にその考えは眠っていると思われます。
トランプが本気で安保撤収論を言っているなら、その論理的延長上には日本の独自核武装が待っていますので、彼は彼なりに一貫したロジックがあるようです。
ところで、米国を守れといわれましてもねぇ、です。
日本が米国領土を防衛することはできません。ただし、たとえば海上に浮かぶ米海軍艦艇という「領土」が攻撃を受けた場合、それを守るために戦うていどのことは安保法制の刷新で可能になりました。
https://www.mag2.com/p/news/357373
実際に去年9月の日米首脳会談では、このような会話があったそうです。
産経6月27日抜粋
https://special.sankei.com/a/politics/article/20190627/0001.html
「トランプ氏 「米軍が日本の安全を守るために、相当の費用を費やしていることも忘れないでほしい」
安倍首相 「だからこそ安全保障関連法を成立させ、今や米国と助け合うことができるようになった。米軍の防護もやっている」
トランプ氏 「それは素晴らしい。ただ、米国は駐留米軍のために相当の負担をしている」
安倍首相 「日本はどの国よりも駐留経費を負担しているし、基地も提供している。駐留米軍の経費は、米国内にいるときよりも安くついている」
トランプ氏 「あなたは、反論の天才だな」」
ね、今更でしょう。あの人いつも言っているんです、このていどのこと。
そして毎回毎回、安倍氏に正しく反論されては、受け流されているんです。
今回も、なんとかアベの外交失点に結びつけたい界隈が、参院選がらみでことあれかしと騒ぎたてているだけのことです。
もうひとつ、今年横須賀におけるヘリ空母「かが」においてはこんなことも言っています。
日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45318230X20C19A5MM0000/
「トランプ氏は横須賀基地について「米海軍艦隊と同盟国の海軍艦隊が並んで司令部を置く世界で唯一の港だ」と強調した。「かが」にF35Bの搭載が可能となることに言及し「この地域とより広い領域を様々で複雑な脅威から防衛する」と語った。
その後、トランプ氏はヘリで同じ横須賀港の米軍強襲揚陸艦「ワスプ」に移り、米兵を前に「私たちには力による平和が必要だ」と演説した。米軍の装備刷新に言及したうえで日本のF35戦闘機の調達計画にも触れ「F35戦闘機の数は米国の同盟国の中でもっとも多くなる」と指摘し、日本による米国製の防衛装備品の購入を評価した。「日米同盟はかつてないほどに強固だ」とも述べた(日経5月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45318230X20C19A5MM0000/
日米同盟が、日本防衛のためだけにあるわけではないことは、トランプは百も承知のはずです。
このことについては私はなんどとなく書いてきましたが、米国の国際戦略の要はまがうことなく横須賀です。
横須賀を米国が喪失することにになれば、米国は対中・対露・対北、さらにはインド洋、ペルシャ湾、アフリカ東部の軍事的抑止力のすべてを失うことになります。
「米軍の横須賀海軍施設は燃料補給も艦艇のメンテナンスもできる世界第一級の海軍基地です。中国にはまだ後方支援ができる海外基地はなく、外洋で作戦行動できる範囲は限られています」(香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
仮に、米国が日米同盟からの撤退を選択するとすれば、米国が中国に次の覇権国の地位を譲り、北米大陸に籠もる時のみです。
したがって、日米同盟は朝日の切ない願望のように揺らいでもいないし、ましてや米国が安保から撤退することなどありえないことだと断言できます。
ホルムズ海峡のタンカー防衛については、安保撤退論よりはるかに現実味があることなので、明日に回します。
中国の上目線というのはもはや身に染みついた習性なのでしょうかね。中国がこんなことを言い始めています。
「北京=西見由章】中国商務省の王受文次官は24日の記者会見で、大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた米中首脳会談をめぐり、「一方(中国)だけでなく双方が譲歩しなければならない」と述べ、貿易協議の妥結には米国側の譲歩も必要だとの立場を強調した。中国外務省の張軍次官補も同じ記者会見で「G20で香港問題を議論することは許さない」とし、同問題を提起する方針を示したトランプ米大統領を牽(けん)制(せい)した。」(産経6月24日)
https://www.sankei.com/world/news/190624/wor1906240037-n1.html
なぁに言ってんだかですが、こんなことを言っているのも、中国特有のお家の事情です。
「中国は、5月に貿易協議が事実上決裂した原因は米国にあると国内メディアを通じて宣伝。
協議再開に道筋が付いた場合、一方的に譲歩したと受け止められるのを避けるため、今回のG20ではより強い表現で米批判を展開する可能性がある。 一方で中国当局は、香港の混乱をめぐり各国から批判を浴びる事態を懸念している。
中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について香港政府は作業の完全停止を発表したが、張次官補は条例改正が法律上の欠陥を補うために必要だとの認識を改めて表明。「どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない」と米側にクギを刺した」(産経前掲)
中国国内向けには貿易協議が決裂した責任はあげて米国にあると宣伝してきたのですが、実際は米中合意はできて、米中経済戦争は中締めの方向に向いていたのです。
双方の事務方が泣きながらとりまとめた150頁もの合意文書を、こともあろうに習の鶴の一声で50頁分削除してしまい、その中には中国の国有企業への不当な補助金などといった根幹に触れる事柄があったためにトランプが切れて、制裁第4弾発動の運びとなったのです。
フツー合意文書の署名まで行った段階で、一方が3分の1削除しろなんて言い出したら、ワヤになりますがな。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20180...
中国はそもそも今の米中経済戦争のフレーミングが気に入りません。中国にとってあくまでもこうじゃなくちゃならないのです。
それは「自由貿易の旗手の中国VS保護主義の米国」 という絵です。
「一方で、トランプ政権を念頭に「一部の国が一国主義や保護主義を実行し、ほしいままに貿易相手国に関税をかけている」と非難し、G20で多国間主義への支持が一層高まることへの期待感を示した」(産経前掲)
なんと倒錯した絵でしょうか。自由主義陣営の盟主たる米国が「ほしいままの保護主義」と批判され、社会主義を標榜する中国こそが「自由貿易を守る砦」だと言いたいようです。
実はこのような馬鹿な図柄を作ってしまったのは、米国自身にも責任を感じてもらわねばなりません。
ヒト、モノ、カネが無制限に往来できるグローバル化の世界を作り出したのは、他ならぬ米国自身だからです。
米国は冷戦が勝利で終結した後、もはや覇権争いは二度と起きないと慢心していました。
ところが21世紀の開始と共に始まったのが、このグローバル経済を目一杯利用した中国経済の台頭でした。
安い賃金、広い土地、14億市場を求めて、先進諸国が我先にと中国に殺到したのです。
結果は、今、私たちの眼前に拡がっているとおりです。
中国は外国の技術を盗み、コピー商品によって世界市場を制圧しました。
そして有り余ったカネを、IT技術と軍備におしげもなく投入されました。
それをを象徴するのが、ファーウェイと南シナ海の軍事人工島です
https://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/776f0b42ced...
一方、米国ほど自由主義の優等生はありませんでした。
米国はWTOを作った国として、もっとも外国企業に市場を開放してきました。
もちろん農業保護や自動車産業に対する関税などはやりましたが、おおむねこの国ほど自由主義貿易の良き子はいなかったと評してよいでしょう。
この相手国が市場を閉ざされていようと気にせずに、世界の商品をじゃんじゃん買いまくるきっぷの良さが、世界経済を活性化させたともいえます。
中国深セン http://japanese.china.org.cn/life/txt/2011-02/25/c...
これは、当時発展途上国からテイクオフする段階に差しかかっていた中国にとって、まさに願ってもないスプリ,ングボードでした。
中国はこの絶好の好機を逃さず、すさまじい短期間で経済大国にのし上がります。
皮肉にも、次の覇権国を作り出したのは、米国自身だったのです。
この超高速経済大国化は、信じがたいほどの貧富の差と、とり返しのつかない環境破壊を生み出しましたが、経済が右肩上りなうちは明るい未来があると思った国民には圧倒的に支持されました。
ただし、一方の米国にとっては、米国発祥の大企業がこぞって生産拠点を中国に移動させ、メイドインUSA、実はメイドインチャイナという産業の空洞化と競争力の減退をもたらしたのです。
つまり米国は、意識せざる形で自国経済を犠牲にして外国の繁栄を助けることで、グローバル経済の中心にいたということになります。
ただし中心といっても、それは消費だけが期待される馬鹿殿様としてですが。
出典不明
この状況に怒ったのが、米国の滅亡寸前だった工業地帯の労働者を支持基盤としたトランプの登場でしたた。
トランプは、ワシントン主流とは異なって臆面もなく「アメリカ・ファースト」を掲げ(なかなか東部インテリには言えません)米国の利益をことさらに強調することで、グローバリズムに待ったをかけたのです。
これは米国に望まれていた覇権国としての役割の放棄を宣言するに等しい行為でしたが、トランプはこれを中国という「敵」を作り出すことで説明しました。
共産党独裁の国家が、外国資本をほしいままに技術提供させているが、いいのか?
外国企業は不当な資本規制にあっているが、かまわないのか?
中国の大企業はことごとく国有企業で不当な補助金をもらっていて競争にならないが、これを認めるのか?
儲かったカネを中国は空前の軍備拡大に回しているが、これを許すのか?
5Gを制覇して、世界を中国共産党の監視下に置こうとしているが、排除しなくていいのか?
このようにトランプは、従来からあった米国一国主義という批判を、このような中国の反民主主義、反市場主義に対する普遍的な批判に置き換えることで新段階を迎えたことなります。
そして今回、香港の大規模デモを経て新たに加わったのが、これまた米国人の誰もが否定できない正統派の理念である「人権」です。
私からみれば、とうとう伝家の宝刀を抜いたかという気分にさせられました。
米国が民主主義に基づく人権といったカードを持ち出す時は、もうこれ以上譲れないという最後通牒の響きがあるのです。
中国が作ろうとしている「自由主義開放経済の中国vs自分の国しか考えない米国」という構図は、この米国の「人権」批判で完全に雲散霧消します。
中国はそれを分かっているからここそ、いまや「たかだか一地方」の問題にこれほど必死なのです。
「一方で中国当局は、香港の混乱をめぐり各国から批判を浴びる事態を懸念している。
中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について香港政府は作業の完全停止を発表したが、張次官補は条例改正が法律上の欠陥を補うために必要だとの認識を改めて表明。「どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない」と米側にクギを刺した」(産経前掲)
出典不明
「いかなる国の内政干渉も許さない」という弱々しい中国の言い分は、民主主義を守れと叫ぶ香港のデモの奔流に飲み込まれていこうとしています。
中国はG20で香港問題が議題になると、いままで一切封じてきた香港問題を隠蔽できなくなります。
それが堤防のひと穴となって、同じ問題を抱えるウィグルやチベットにまで波及することを中国共産党は心底恐れています。
だからラム行政長官に「このままいけば廃案になるかも」といった、あいまいな言葉でG20前の幕引きを図ったのです。
馬鹿な日本メディアはこのフェイントに見事に引っかかりましたが、もちろん中国が廃案を許す道理がありません。
今やそれほどまでに香港問題は巨大な位置を占めるようになったのです。
ならばそうか、そんなに中国がおイヤなら、自由主義諸国は奮ってG20で香港問題をとりあげて下さい。
習にとってイヤな人間が国防長官代行になったものです。
明確に中国を脅威と位置づけてきた、マーク・エスパー陸軍長官が国防長官代行に指名されました。
エスパーといっても超能力者ではありません(あたりまえだ)。
【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は21日、マーク・エスパー陸軍長官を次期国防長官に正式に指名すると述べた。トランプ氏はまた、国防副長官にデービッド・ノーキスト国防次官、陸軍長官にライアン・マッカーシー陸軍次官をそれぞれ指名した」(ウォールストリートジャーナル6月25日)
https://jp.wsj.com/articles/SB11168026957026933972104585380072378576064
前任のシャナハンが6年前の家庭内暴力事件と、古巣のボーイングへの便宜供与疑惑で、議会承認をえられなくなったためです。
ま、軍需産業との関係からいえば、このエスパーもレイセオンとの関係がありますから、それを議会がどのように判断するかです。
これ以上の国防長官は望めないと思われていたジェームズ・マティスに辞められてからゴタゴタ続きの後任人事ですから、トランプの苦慮が忍ばれます。
マーク・エスパー国防長官代行
さて、このエスパーはトランプの外交方針に沿って人選されました。
エスパーはマティスと一緒で軍歴を持っています。
「1986年、アメリカ陸軍士官学校卒業。後にアメリカ合衆国国務長官となったマイク・ポンペオとは同期にあたる。1990年、空挺師団の兵士として湾岸戦争に従軍した後、国防部副次官補として軍縮や核不拡散を担当したことがある。2007年、陸軍中佐の階級で除隊 」
マーク・エスパー - Wikipedia
沖タイだったら「軍人内閣」とでも呼びそうですが、米国は日本と違って、軍歴を持ち、しかも事務屋ではなく、実戦経験あるということは高い評価を受けます。
オバマ政権の国務長官をしていたケリーもベトナム戦争の従軍歴がありました。
エスパーが所属していたのは映画『プライベートライアン』や『バンドオブブラザーズ』で知られている第101空挺師団です。
文句なく米陸軍の最精鋭部隊ですが、エスパーは指揮官のひとりとして従軍経験もあります。
後にワシントンに戻されて、陸軍参謀として太平洋地域の作戦計画立案者のひとりとなりました。
後に紹介するロイターインタビューにもあるように、軍人時代からのアジア専門家でした。
台頭前の時期から中国警戒論者だったようで、中東重視が強かったマティスとこの点が違います。
現役経験がある米国元軍人は、おしなべて同盟重視がたたき込まれています。
マティスがそうでしたが、ともすれば同盟を軽視して独走する傾向のあるトランプのカウンターウェイトになってくれれば、2期めはもっと安定するでしょう(再選したらのはなしですが)。
また奇遇ですが、ウェストポインではポンペオ国務長官と同期だったそうです。
もっともポンペオのほうは首席で卒業すると軍務はさっさときりあげてハーバート・ロースクールに入り直して、以後政治の道を歩むところが違っていますが、知らない仲ではないでしょう。
どこの国もそうですが、陸軍士官学校は同期生意識が強烈ですから、国務-国防で強いタッグが作られることをトランプが望んでいるのかもしれません。
ちなみにトランプ自身も、少年期には私立の陸軍幼年学校に入れられていた経験がありますので、この空気はよく知っているはずです。。
エスパーは、いままでなんどとなく代行候補に上がっていたのですが、日本では無名で、数少ない紹介記事がロイターにありました。
「エスパー氏は、2018年に国防総省が戦略文書「国家防衛戦略」を公表するずっと前から、中国軍の増強を注視していたと語る。国家防衛戦略は、アフガニスタンなどにおける反政府勢力問題よりも、中国、ロシアとの競争を優先事項に位置づけた」(ロイター6月20日)
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-esper-idJPKCN1TK0TY
ロイターは今年4月にエスパーとのインタビューをものにしています。
「エスパー氏はロイターに対し、10年以上陸軍に勤めた後に連邦議会のスタッフとなった時期も含め、自身は1990年代から中国を重要な課題と見なしていたと語った。
4月に行ったインタビューで、同氏は「中国と戦略的競争になるということを認知するのが少し遅かった。いや、遅かった」と発言している。
エスパー氏は、1990年代半ばに陸軍参謀として太平洋地域の作戦立案に携わっていたことに触れ、「中国の問題、中国との競争、中国の能力といったことは私にとって新しい話題ではない。私はこの進展を20年以上見続けてきた」と述べた。(略)
今日のロシアと中国は、軍の編成、能力、武器体系を積極的に発展させており、長年にわたり我々が保ってきた優位性が通用しない」
(ロイター前掲)
エスパーがどのような戦略を秘めているのかまったく未知数ですし、そもそも国防長官になるかどうかさえ分かりませんが、トランプはボルトン-ポンペオ-エスパーという陣容を作るつもりだということが分かりました。
落ち目の習さんはいうまでもありませんが、いいお手紙をもらっちゃったい、と浮かれている正恩さん、お気をつけ下さい。
トランプがイランへの攻撃10分前に中止したというニュースが入ってきました。まったく冷や汗が出ます。
【ワシントン=住井亨介】トランプ米大統領は21日、イランの精鋭部隊「革命防衛隊」による米国の無人偵察機撃墜への報復として、20日夜にイランに対する軍事攻撃を準備したが、実行の10分前に中止を命じたとツイッターで明らかにした。トランプ氏は、人的被害が出るため「無人機(撃墜)と釣り合わない」と説明した。 ツイッターによると、攻撃計画では3つの目標を選定。犠牲者数の見込みについて「将官から150人との返答があった」とした。トランプ氏は「私は急いでいない。米軍は出動の準備ができている。イランは決して核兵器を持つことはできない」と警告し、なお軍事攻撃の可能性があることを示唆した」(産経6月21日)
https://www.sankei.com/world/news/190621/wor1906210035-n1.html
ツイッターで述べた「3つの目標」とは、イランの無人偵察機を撃墜した対空ミサイル陣地とそのレーダー施設、指令系統に対する限定攻撃だったと推測されます。
おそらく地中海周辺にいるとされる、2隻の空母打撃群が攻撃主体となったはずです。
uss-abraham-lincoln
「(CNN) 米海軍が地中海にニミッツ級空母の2隻を派遣し、ロシアを牽制(けんせい)する作戦に着手したことが28日までにわかった。地中海における米空母2隻の同時配備は2016年以降、初めて」(CNN4月28日)
皮肉にもこの直前中止は、タンカー襲撃事件以降ひんぱんに流布された米国謀略説を否定してしまったことになりました。
もし謀略説か正しければ、米国はトンキン湾事件のように、あえて無人偵察機をイラン領内に侵入させ、これを攻撃させることで戦端を切るというシナリオにつながらねばウソだからです。
いまでもロシアや中国は堂々と偽情報を発信しますが、米国はこんな古い手は使いません。というか、使えません。
それは懲りているからです。
かつてのネットが存在しなかったベトナム戦争初期と、今やこれだけSNSが発達して、即座に世界中で情報が共有され、数億人単位で検証されてしまう時代に、偽の証拠を出してしまったらすぐにバレます。
イラク戦争のきっかけとなった大量破壊兵器情報が間違いでなにひとつ見つからなかったために、政権がひとつ飛ぶでは済まず、米国の国際的信用までもがガタ落ちになってしまいました。
あれはブッシュ政権の意図にすり寄った情報を提供してしまったインテリジェンス機関の失敗です。
今回の日本のタンカーはすぐに実地検証されるのですし、それは船の運行に関わっていた日本も関与することになりますから、なんらかの政府の発表があるはずです。
もっともそうなっても謀略説が好きな人たちは、トランプとアベが密約を結んでいるんだぁ、なんていうかもしれませんけどね(笑)。
これに限りませんが、謀略論者の皆さんは、世の中を単純に見すぎています。
世界には巨悪と正しい人たちの二種類の人しかおらず、巨悪は常に悪だくみを巡らしているんだぁ、みたいな見方ですね。
初めから悪者は決定されていますから、ラクチンなもんです。
ところが実際は、別にトランプはイランと戦争をしたいわけではありません。むしろそれに消極的です。
WSJ 6月23日
トランプはイランに報復攻撃を中止させた理由について、ウォールストリートジャーナルはこう解説しています。
「トランプ氏は実のところ望んでいないイランとの戦争へと突入する瀬戸際にある一方、身内の共和党内に自ら反戦感情を高めたこともあり、イランとの戦いに対する国内の支持も限定的にとどまっている。
このジレンマにより、トランプ氏は20日夜、報復措置としてイランへの軍事攻撃を承認しながら、攻撃直前に撤回する事態に至った
(WSJ 6月23日)
https://jp.wsj.com/articles/SB11286504854297084764204585380901906728056
またウォールストリートジャーナルは、トランプが自己矛盾を起こしていると指摘しています。
「トランプ氏は過去2年、相容れない両方を手に入れようとしてきた。
前任がまとめたイラン核合意から離脱するとともに、前例のない経済制裁をイランにかけながら、イランが手荒い報復に出ることはないと踏んでいたのだ。
イランはこれに対し、軍事行動を激化させるのではなく、核合意の再交渉に応じ、ミサイル開発や中東の代理勢力への支援を制限することも取り決めに盛り込むと目論んでいた」(WSJ前掲)
つまり、トランプはイランを甘く見ていたということになります。
従来の経済制裁を更に上回る圧力をかけたのだから、イランが核合意や中東への革命防衛隊を使った「革命の輸出」を制限できると考えていたのかもしれません。
憶測ですが、この流れの中でトランプのほうから安倍氏にイランを訪問することを要請した可能性があります。
いきなり米国相手の譲歩のカードは切れないものの、親しい日本の仲介にならば妥協点を引き出せると期待したのかもしれません。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/20863
ところが、思わざる事態が起きました。
それが革命防衛隊が仕組んだと考えられる日本籍タンカーの襲撃と、それに続く米無人機の撃墜です。
「イランはまだ経済制裁による痛みを感じ始めたばかりだ。その痛みが広がるのを向こう数カ月は静観し、その後イランを交渉の場に引き出し、譲歩を迫るべきかどうか決定するのが最も賢明な措置だ、と米当局者は考えている。
問題は、イランによる米軍の無人偵察機撃墜が、この相互の暗黙の了解となっている限度を超えた動きなのか、単なる誤算なのかどうかだ」(WSJ前掲)
これは想定内であり、想定外でもあるギリギリのゾーンでした。
想定内といえるのは、トランプはイラン政権内の強硬派である革命防衛隊を孤立させ、穏健派との交渉を望んでいたからで、過激派がハネることは折り込んでいたはずです。
一方想定外とは、安倍氏のイラン訪問に合わせて日本タンカーを狙い撃ちにするとまでは思っていなかったことです。
その後の無人機撃墜にしても、相手がロシアならまちがいなく倍返しをしたことでしょうから、どういう了見なのかと米国は思ったことでしょう。
ちなみにトランプがこの無人機撃墜を知って、イランがステルス機を撃墜出来る能力があることを知って驚愕したから攻撃を中止したのだという説をもっともらしく言う人もいますが、ナンセンスです。
イランが発表したトライトンの撃墜 AFP
MQ-4Cトライトンは大型で滞空時間が長く多くの観察機材を積載できるので海洋監視に使われている機材です。
形状はみればわかるようにステルス性は考慮されていませんし、逃げ足もドン足なので危険な任務には向いていません。
またイランは領内に入っていたからだと言っていますが:それもありえないでしょう。
MQ-4C トライトンは領内に密かに侵入するための機体ではありません。
海洋監視用に作られたために広い範囲を監視可能ですから、わざわざリスクを冒して侵入する必然性がありません。
それはさておき、トランプはよく言われるように、いわゆる戦争大好きのタカ派ではありません。
軍事力は盛大に見せびらかしますので誤解を呼びますが、それを実際に行使することについてはきわめて慎重です。
北朝鮮についてもあれだけ大っぴらにダンビラを振りかざして、さぁぶった斬るぞと大声で威嚇しながら、相手が話あいを望むとコロリと快諾しました。
ただし、誤解なきように言い添えると、トランプがやっていることはただのブラフではなく、本気でやる準備を重ね、後は大統領の命令待ちといったスタンパイ状態でのハッタリだから迫力があったのです。
「対話で国を守る」、なんていうムン閣下とは、本質的にそこが違う点です。
【社説】「対話で国を守る」と主張する韓国軍の笑えない喜劇-Chosun
このイランについても、トランプは本心では戦争をしたくありません。
その理由はトランプが、イラク・アフガン戦争の泥沼に引き込んでしまった共和党主流を激しく批判して大統領になったからです。
「トランプ氏は2016年の米大統領選で、米国を中東での戦争へと巻き込んでいった共和党の姿勢を激しく批判することに重点を置き、民主党と同じくらい、党内のエスタブリッシュメント(支配階級)に激しい戦いを展開した。当時候補者だったトランプ氏は、3度にわたる中東での大規模な戦争(1990 ・2003年のイラク戦争および2001年のアフガニスタン戦争)を経て、一般国民の間では厭戦(えんせん)ムードが根強い、とおそらく正確に読んでいた。「これまでにない共和党候補で、大きく変わった党を率いる」とのトランプ氏のイメージは、少なからずこうした姿勢の上に成り立っていた」(WSJ前掲)
トランプは再選を狙っていますから、ブレたという批判には敏感なはずです。
だから、中東に軍事介入することは極力したくありません。
一方で、欠陥だらけのイラン核合意を、もう少しなんとかまともなものにしたいと思っていることも事実です。
米国民の中東は鬼門だからもうこりごりだという感情に忠実であらんとすれば不介入政策をとるしかなく、一方イランの核開発や外国への干渉は限度を超えたと考えれば、今回の核合意廃棄と圧力路線になるわけです。
実はこの二つの立場は相矛盾しますが、彼の中ではバランスをとっています。
その時、その時でどちらかが強調されことになります。
イラン核合意をチャブ台かえししたトランプの行動自体は、決して褒められたものではありません。
そもそも論でいえば、長期間の多国間協議に基づいて締結された国際条約を、一国の意志でチャラにするなどというまねをしていいはずがありません。
TPPについてもそうですが、こんなことを続ければ、米国とまともな条約を結ぼうという国がなくなってしまうからです。
政権が変わるつど、条約を廃棄されたらたまったもんじゃありませんもんね。
しかし一方で、なんどか書いてきているようにイラン核合意は、一定年数が立てば自動的に再度の核開発が可能ですし、弾道ミサイルの保持にも制限がかかっていないという抜け穴だらけの失敗作です。
これをより厳しい条約にする必要は確かにあります。
ですから、この二つは分けて考えるべきです。
トランプのやり方は間違っていたものの、言っていることは正しいのです。
合意離脱が間違っているから、イラン核合意が正しいことにはならないし、その逆も間違いなのです。
このようにトランプのイラン対応は自己矛盾に満ちています。
しかも、過去の言動や公約に忠実であろうとすればするほど、自己矛盾が増大してしまうようです。
今回、トランプがギリギリで停止したのは、イランのタンカー攻撃も無人機撃墜も、イランなりに米国の出方を見るという観測気球だと読んだからです。
イランには、吸着機雷など使わなくても撃沈できる手段はありますし、有人機を撃墜してパイロットが死亡したりでもすれば、米国は無条件で大規模な報復攻撃に出るのは分かりきっていたからです。
「問題は、イランによる米軍の無人偵察機撃墜が、この相互の暗黙の了解となっている限度を超えた動きなのか、単なる誤算なのかどうかだ。トランプ氏は誤算だったかもしれないとの見方を受け入れようとしているようだ。
トランプ氏は米国人に犠牲者が出ていない点に言及。イランに犠牲者が出ることも望んでいないからこそ、米国が軍事行動を撤回したともにおわせた。 そのため米国とイランの双方が引いた一線は、本音では戦争を回避したい大統領によってそのまま放置され、今でも維持されている可能性はある」(WSJ前掲)
このように米国とイランの間のギリギリの駆け引きはまだまだ続きます。
イランにかまけているうちに、日本政府の韓国に対する対応が明確になりました。
ひとことでいえば、責任を持った回答がないようなら、政府間関係が断絶してもかまわない、とするものです。
3つ続けて新聞記事を引用しますので、既にご承知の方は飛ばして下さい。
「日本企業の資産売却なら、韓国政府に賠償請求検討
韓国人元徴用工訴訟をめぐり、原告側に差し押さえられた日本企業の資産が売却された場合、日本政府が韓国政府への賠償請求を検討していることが21日、わかった。外務省幹部が明らかにした。
賠償請求は、日本側が検討している対抗措置とは別のもので、国際法で認められた措置として行う。日本政府は昨年10月に韓国大法院(最高裁)が元徴用工訴訟の判決を確定させたことについて、日韓請求権・経済協力協定に違反すると主張し、韓国側に国際法違反の状態を是正するよう求めている。
訴訟の原告側は5月に資産売却の手続きを裁判所に申請しており、8月にも資産が売却される可能性がある。日本政府は資産売却で日本企業に損害が生じないように、韓国政府が何らかの対応をとるよう求めている」(読売6月21日)
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0621/ym_190621_8814677093.html
https://www.sankei.com/world/news/181030/wor181030...
同日、「徴用工」原告団はこのようなことを言っています。
「元徴用工側「我慢の限界」「協議応じなければ売却」
韓国大法院(最高裁)が三菱重工業に元徴用工らへの賠償を命じた訴訟で、原告側は21日、三菱重工業が7月15日までに協議に応じない場合、既に差し押さえている資産の売却に向けた手続きに入ると表明した。 原告の支援者らはこの日、東京都千代田区の三菱重工業の本社を訪れ、協議に応じるよう求める要請書を提出した。支援団体の代表者は「今までも協議に応じてもらうよう求めてきたが、我慢の限界だ」と話した。
徴用工訴訟を巡っては、これまで日本製鉄(新日鉄住金が改称)と不二越の資産について、原告側が裁判所に売却命令を申請している」(
引用がつづきますが、もう一丁。韓国政府の対応です。バカヤローと思われる方は(私もおもいましたもん)、どうぞ飛ばして下さい。
「ソウル聯合ニュース】韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた強制徴用訴訟問題を巡り、被害者への慰謝料支払いに関する韓国政府の提案を日本が拒否したことについて、外交部が日本側に「慎重に知恵を集めるよう希望する」との立場を示した。
同部の金氏は政府の提案内容について「民事訴訟に対し政府が直接関与することは不可能だ。日本企業が裁判の結果に伴う協議に応じていない状況の中で、当事者間の和解の道を提示する内容が盛り込まれている。細かい内容は当事者の協議の過程で具体化することができるようにしている」と説明した。 「日本側が正式に立場を表明してきたか」との質問には、「日本側が公に立場を発表したと承知している」と答え、この発表を日本側の公式の立場として受け止めていることを示唆した。
日本メディアによると、菅義偉官房長官は20日の記者会見で韓国政府の提案について、全く受け入れられないと述べた」(韓国聯合6月20日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190620003900882?section=politics/index
特に解説の必要がないほど、日韓関係の現在と将来が鮮明になってきましたね。整理しておきます。
https://toyokeizai.net/articles/-/247496
●三者の立場
●日本政府の立場・・・「徴用工」訴訟は日韓基本条約の否定であるから一切応じない。韓国政府の提案である日韓企業による慰謝財団は慰安婦財団の二番煎じであるから拒否する。韓国政府が日限までに仲裁委員会に応じなかったので、日韓首脳会談は行わない。原告団が資産売却すれば、韓国政府に賠償請求する。●韓国政府・・・なにも決まらないし、なにをしていいのか皆目見当もつかないが、とりあえずアリバイ作りで「徴用工」慰謝財団を日本政府に提案してみた。当然ことわられたが、大統領が「外交天才」なので日韓首脳会談は開かれるだろうと思っている。開かれなければ外交部の官僚の首を飛ばすだけ。
●「徴用工」原告団・・・しびれを切らした、差し押さえた資産の売却を開始する。
したがって、このまま推移すると(たぶんするでしょうが)、自動的にこのようなことになります。
●今後の予想される展開
①「徴用工」原告団が差し押さえ資産の売却を開始する。
②日本政府は予告どおり韓国政府に対して見合った額を賠償請求をする。
③韓国政府、「暴挙」だとかなんとか言いつつ、何もしない。
④日韓関係、長期の氷河期に突入する。
チャンチャン♪
見事なまでの予定不調和です。
私としてはなるようになったじゃん、というぬるい感想しかもてません。
いつもは冷静な楽韓さんがバッカしゃねぇのと言っていましたが、私はそれを言う気にもなれません。
なぜなら真正のバカ相手にバカといっても虚しいからです。
こういう時には、もつれた糸球の初めを引っぱりださねばなりません。いわゆる「そもそも論」です。
https://www.sankei.com/world/news/181224/wor1812240023-n1.html
日本の主張は、つまるところひとつです。
意図的に破壊されようとしている、あるいは既に破壊された日韓基本条約の条約文言に立ち返って、韓国最高裁判決を、韓国政府が責任を持ってそれを否定することです。それ以外ありません。
からんだ糸球の初めがこの韓国最高裁判決にある以上、韓国政府がこれを否定しないことにはなにも解決しません。
韓国最高裁判決を韓国政府が認めなければ、それ以降でてきた賠償命令だとか差し押さえ命令はすべてチャラになるからです。
一方、韓国側の思惑は、政府が韓国最高裁判決を三権分立の名目で容認する形をとることで実体化してしまうことです。
そして日本企業に賠償金を支払わせれば既成事実にすることができます。
だから日韓企業で財団を作ることが仲裁委員会に出る条件だ、なんてことまで言い出しました。
実に狡猾です。
日本企業を「救済事業」に関わらせれば、仲裁委員会なんかやる前に日本側の敗北が決定してしまうからです。
これは、実は歴代の韓国政府の立場の否定、つまりムンがやっていることは「革命」なんですよね。
だって、今までの韓国政府はあのムンの師匠のノムヒョンですら日韓請求権協定を遵守せざるをえないために、元慰安婦や徴用工に対しての賠償責任の所在は韓国側にあるとしていたわけです。
自分の国で「革命」をするのはカラスの勝手です。
自分の国の経済をムチャクチャに壊すのも自由、失業者を倍増することも自由、北にすり寄るのもご勝手に、です。
しかし忘れて欲しくはないのは、それは国内だけのこと。
外国に対してまで、条約は破るわ、協議に応じないわ、では話にもなりません。
日本の不平等条約は幕府が結んだとしても、明治政府もそれを受け入れて自力で改正に努力せねばならなりませんでした。
あれは幕府が勝手にやったこと、オレらはそれに反対していたからナシだ、では済まないのです。
そんなことをすれば正統な日本政府として承認されませんからね。
だから後継政府はいいも悪いも含めて全部飲み込まざるをえないわけで、その上で改正するまでに半世紀、血の滲むような努力をしたのですよ。
このように一国の政府たらんと欲すれば、歴代政府が結んだ外国との約束を遵守することが大前提なのです。
それができないような政府は正統性が欠落していますから、相手にできないと判断するだけのことです。
というわけで、韓国の条件についての太郎外務大臣の答え。
「韓国から、韓国企業と日本企業が拠出した財源から確定済みの大法院判決の原告への支払いに充てることに日本政府が同意するならば請求権協定に基づく協議を受け入れる旨発表がありましたが、これは韓国の国際法違反の状態を是正することにはならず、この提案は受け入れられません」(6月19日ツイッター)
なにひとつ付け加える余地がないほどクリアです。河野氏はここで「国際法違反の是正」が日本政府の目的だと明確に述べています。
まさにそのとおりです。
ハリス在韓米国大使http://japan.hani.co.kr/arti/politics/33303.html
一方、米国は原則として同盟国間の紛争には介入しないという立場から、一歩踏み出しています。
在韓米国大使のハリー・ハリス氏は、2019年6月7日、韓国政府に向けていくつかの要請をしています。
①米国の対中戦略への賛同
②日韓関係の正常化
③韓国内の外国企業の状態の改善
①は、ファーウェイ排除を明確にしろということです。
韓国政府はファーウェイに入れあげていたために「追加措置はとれない」としてきました。
ファーウェイ問題がただの経済戦争問題のレベルではなく、安全保障領域のことだと韓国は理解できていないのです。
米国としては、こんな北京に情報が筒抜けになるような国とはおっかなくて安全保障関係は結べません。
そこでいままでのような二枚舌は許さないぞ、ということです。
とうとう言われちゃいましたね。
そのせいかどうか、習の6月に予定されていた訪韓はキャンセルされました。
②は、「この地域のいかなる重要な安全保障上の事案も、韓日双方の積極的関与なしには解決し得ない。米国は米韓日3カ国協力の強化に向けた強い意志を持っている」と述べています。
これは従来から米国が言い続けていることで、ハリス大使は米韓日の三国関係が、東アジアの安全保障インフラなのだということの再確認を韓国政府に迫ったわけです。
ちなみに鈴置氏は在韓米軍撤退・米軍の北への軍事行使という見立てです。
その場合、韓国には事前通告は一切なく、韓国軍の手助けも拒否するでしょう。
私は現状がそこまで煮詰まっているとは思えませんし、イランとの緊張を抱えて2正面で戦端を切ることはないと思います。
米国にとって必要なのは在韓米軍基地という軍事インフラだけであって、韓国軍でも韓国政府でもありません。
在韓米軍基地は、仮に対中戦となった場合に北方艦隊の根拠地を攻撃できる要衝ですから、今、手放すことはしません。
ですからそれを押えておく法的根拠である米韓同盟は維持し続けます、
戦時統制権廃棄で米軍司令官が韓国軍の司令官の下になろうと、気にしていないでしょう。
在韓米軍にとって韓国軍との強力関係が必要なケースは、唯一北が侵攻してきた場合だけで、そんなことはありえないことは米韓共に分かっています。
共同訓練は抑止のデモンストレーション以上でも以下でもありませんでした。
ですから、戦時統制権なんか実際に使われる可能性はないのです。
要は、韓国よ、二股かけるな、邪魔をするなということです。
とまぁ、このように米国もこのまま日韓関係が絶対零度になると、なんらかのアクションをせざるをえないでしょう。
イラン革命防衛隊が疑惑をもたれているタンカー襲撃事件をジミーに書いていたところ、米軍の無人偵察機が落とされる事件が発生しました。
まずはそれから。
「イラン革命防衛隊は20日午前、イラン上空でアメリカの偵察ドローン(小型無人機)を撃墜したと発表した。
国営メディアによると、革命防衛隊は南部ホルモズガン州のクモバラク付近で、「RQ-4グローバルホーク」を撃ち落したという。
米軍はドローン撃墜を確認していないが、米中央軍のビル・アーバン海軍大佐はロイター通信に対し、「本日、イラン領空を米軍機が飛行した事実はない」とのみ答えた。
クモバラクは、海上交通の要衝のホルムズ海峡に近い。
ホルムズ海峡に近いオマーン湾では今月13日、タンカー2隻が攻撃される事件があり、米政府はイランによる機雷攻撃だと断定している。
イランは一切の関与を否定している」(BBC6月20日)
https://www.bbc.com/japanese/48701714
今回の米国のドローン撃墜位置について、イランと米国の主張が13マイル(約20㎞)離れています。
米国は領空侵犯を否定しています。
US: 25°57'42.0"N 56°50'22.0”E
Iran: 25°59’43"N 57°02’25”E
https://twitter.com/JackDetsch_ALM
真相は藪の中ですが、トライトンを使って領空侵犯はやらないでしょう。
これは別に米国がドローンを使って他国領空を侵犯しないという意味ではなく(別な機体を使って、世界中でしょっちゅうやっていますので)、あんな大きい機体ではやらないという意味です。
革命防衛隊の発表ではRQ-4グローバルホークとなっていますが、実際に撃墜されたのは米海軍の大型無人機MQ-4Cトライトンです。
グローバルホークの元祖ですが、ともかく大きい、高い、のろい。
写真を見ていただきましょう。空飛ぶクジラです。
MQ-4Cトライトン https://twitter.com/tnak0214
ね、こんなこんなバカデカイものを、それじゃなくても濃密な対空ミサイル網を持ち、米軍機を見たら撃ちたくてたまらないイランに侵入させるわきゃないでしょう。
トライトンは領空に入らなくても、警戒監視が可能な機体です。
またこのトライトンの仕事は、海軍が海洋監視用で運用していることからわかるように、公海上をパトロールすることであって、敵対国家の奥深く潜入することではありません。
例の「謎の武装集団」が小型船舶でタンカーに乗り付けた夜間写真は、これが撮ったのかもしれません。
ですから、イランの領空侵犯されたとする主張は眉唾です。
大いに目障りで、やることが丸見えですから落としたくてたまらなかったのでしょう。
ところでイランという国は、こういう外国機を撃墜したという事例を国防省が発表するのではなく、革命防衛隊(IRGC) というわけのわからないといってはナンですが、他国に類例がない軍事組織が発表をする国です。
イラン以外で、こんな軍事組織を聞いたことがありますか?
革命防衛隊は、その名称で分かるように、強烈に宗教的、かつ熱烈に政治的な軍事組織です。
一方、もちろんイランにも「イラン・イスラム共和国軍」という正規軍が存在します。
これは米軍や自衛隊と同じで国際的に「軍隊」として認知されています。
イラン革命防衛隊は正規軍並の強力な武器を与えられていて、陸海空軍もひと揃え持っていますが、だから革命防衛隊がいわゆる「軍隊」なのかといえば、はてね?です。
というのは革命防衛隊は、「イスラム党の軍隊」だからです。私兵といってもいいかもしれません。
それはこの組織の誕生をみればお分かりになるでしょう。
革命防衛隊が出来たのは、あのホメイニ師らによるイスラム革命の時でした。
その時、正規軍はパーレビ国王に忠誠を誓い、イスラム革命に反感を持っていました。
これは正規軍としては常識的判断で、革命勢力にいきなり加担してしまうような正規軍には危なくって国防なんか任せられませんものね。
特に中東では軍はもっとも強固な社会集団です。
それに対してイスラム革命勢力はイスラム僧侶に率いられた有象無象の寄せ集めにすぎませんから、革命を起こしたのはいいが、それが存続できるか怪しまれていたのです。
そこで出来たのが革命後の体制を守るための軍事組織・イラン革命防衛隊でした。
下の写真は、1979年に起きた米国大使館占拠事件の時のものですが、ここに写っている戦闘服の連中が革命防衛隊です。
どうみてもゲリラか山賊です。
ハフィントンポストhttps://www.huffingtonpost.jp/2014/11/13/photos-iran-1979-revolution_n_6150404.html
それがイスラム革命後に続くイラン・イラク戦争を経て巨大化してしまいました。
あのイ・イ戦争で、前線にホメイニ師の写真を掲げて、ろくすっぽ訓練も受けていない青年を大量に送り込んだのが、この革命防衛隊でした。
歴史的に類例を探すとすれば、ロシア革命の赤軍、あるいは中国革命の紅軍に似ていますが、これらは革命が成就した後には正規軍化していくのに対して、イランは正規軍と異なった命令系統を持った別組織の軍事組織として巨大化したのですからややっこしい。
これは革命国家イランが正規軍を信用していないために、お目付役が欲しかったからです。
ですから、内務省軍の管轄の国境管理もするし、軍警察の仕事である治安維持もおこなっています。
ここまで手を拡げたために、現在では兵力12万で陸海空軍を持ち、正規軍とほとんど変わらない装備と予算を持ってしまいました。
ただし、かつての革命のゴタゴタから誕生した性格から、正面戦よりも非正規戦、つまりゲリラ戦争のほうが性に合っているのは致し方ありません。
この辺は北朝鮮の人民軍が特殊部隊を軍団単位で持っているのに似ています。
ちなみち北朝鮮とイランは、弾道ミサイルや化学兵器、はたまた核兵器開発で切っても切れない仲です。
よくイランは親日国という言いかたをしますが、こういう日本にとって有害なダークサイドもあることをお忘れなく。
今回のタンカー襲撃事件でも、正規軍と変わらない哨戒艇に乗りながら、制服も着用せずに吸着機雷をいじっていました。
攻撃方法もこういうゲリラコマンド的なやり方がお好きです。
また、多くの革命国家がそうであるように、革命を脅威と考える周辺国家によって反革命干渉されたことから、逆に「革命の輸出」をして転覆してやろうとしてきました。
ロシアは世界規模で国際共産党組織(コミンテルン)を作りましたし、中国も東南アジア各国に共産党を扶植することに熱心でした。
イランもまたパレスチナ、レバノン、イエメン、イラクなどの反政府勢力に大量の武器弾薬を供給して、紛争をこじらせています。
シリアでは、アサドという暴虐非道な政権にロシアと共に肩入れして、いまや国を乗っとらんばかりです。
とまれ、国の中に別系列の軍事組織が2本立てである、という奇妙奇天烈な国がイランなのです。
正規軍と決定的に異なるのは、彼らはイラン政府の指揮・管理下にありません。
彼ら革命防衛隊が忠誠を誓うのは、かつてはホメイニ師であり、今はその弟子のハメネイ師に限られるのです。
よく「精鋭部隊」と評されていますが、戦闘に強いいうわけではなく、ハメイニ直属だという意味です。
ですから、今回のタンカー襲撃事件が、そのままイコールでイラン政府の国家意志なのか否かは判然としません。
推測の域を出ませんが、違うはずです。
穏健派と呼ばれる大統領流は今の革命防衛隊が、中東であまりにも多くの紛争の種を蒔いたことに困惑しています。
核開発も、トランプから売られたケンカをいたしかたなく買っているわけで、なんとか日本に仲立ちしてもらいたいという気分があるはずです。
なにがなんでも核開発驀進というのではなく、イスラエルが核保有国な以上、対抗してイランも保有するしかないだろう、という温度です。
トランプが安倍氏に期待しているのは、穏健派をこちらに引き込み、革命防衛隊のようなハネ上がり"Loose and stupid"(トランプの表現ですが)を浮き上がらせて孤立に導くことでした。
その意味で、このタンカー襲撃事件は日米にとって「敵失」に等しいミスだったともいえるわけです。
ところでこの襲撃事件を、革命防衛隊自身は否定しており、元の指揮官はこんなことを述べています。
「対テロ作戦などを担当する精鋭部隊、イラン革命防衛隊のキャナニモガッダム・ホセイン元司令官(60)は13日、首都テヘランで産経新聞の取材に応じ、日本のタンカーが攻撃された事件について、「安倍晋三首相の訪問を反イラン宣伝に利用する狙いで行われたもので、テロ組織が関与した」との見方を示した。
ホセイン氏は、米・イランの軍事的緊張を高める目的で、分離主義を掲げるイラン南東部の反政府組織「ジェイシ・アドリ」などが行った可能性を指摘。同組織は「特定の国の支援を受けていることが分かっており、軍事技術も高い」と話した。
ほかに、イランと敵対関係にあるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)や国際テロ組織アルカーイダ系などが関与した可能性もあるとした」(産経6月13日)
https://www.sankei.com/world/news/190613/wor1906130035-n1.html
はっきり言って、偽情報です。
イラン内部の分離独立勢力である「ジェイシ・アドリ」やISの可能性はありません。
彼らはタンカーに近づいて吸着機雷を取り付ける船舶もなければ、爆発物撤去の専門技術もないからです。
ありえるとすれば、イエメンのイラン系武装組織フーシ派が、革命防衛隊から船舶と吸着機雷、そしてついでに爆発物の専門家も借りてやるくらいですが、それだとイランがやったのとなんら変わりがないことになってしまいます。
また事件後に、日本のタンカーが日章旗を掲げていなかったから日本船だと分からなかったのだと解説している人がいましたが、バカですか。
こんなことはインターネットで検索すればすぐに分かります。
したがって、今回のタンカー襲撃事件は日本をターゲットにしたテロです。
あえて名指しはしませんが、安倍氏が進めようとしていた融和路線に反対する勢力が、イラン政府とは無関係に実行したものだと考えられます。
昨日の米無人機撃墜もまた、米国との緊張が激化することを狙ったイラン内部の勢力が引き起こしたと考えられます。
かといって無人機相手だというところをみれば、戦端を切る気まではない軍事的アドバルーンといったところです。
トランプもその匙かげんを分かっていて、ツイッターで、「イランの米ドローンの撃墜はbig mistakeだが、それはLoose and stupidな分子によるもので、intentionalではなかった可能性もある」と言っています。
とうぶんの間、このようなさや当てが続くと思ったほうがよいでしょう。
ホルムズ海峡タンカー襲撃事件について続けます。
米中央軍が今回「コクラ・カレージャス」爆破に使われたと見られる吸着機雷の部品を公開しました。
「[フジャイラ(アラブ首長国連邦) 19日 ロイター] - 米海軍は19日、ホルムズ海峡付近で攻撃を受けた石油タンカーの1隻から回収した吸着型機雷の破片を公開した。破片の数は9個で、イランの機雷に酷似しているという」(ロイター6月19日)
米中央軍サイト JSF氏ツイッターより引用
上の米国中央軍画像右側にあるサンショウウオのような金属物体が底部のマグネット部分のようです。
これはリムペットマインと呼ばれる吸着機雷で、イラン軍が2015年に使ったことがあると、米軍は指摘しています。
ちなみに、メディアはただ「機雷」と報じている場合がみられますが、機雷は海底に係留して使うもので、吸着機雷は船腹に張り付けて使用しますので、まったく別物です。
第1次大戦時から使われてきた人が携帯できるサイズのもので、遠隔操作で爆破します。
いまや古典的水中兵器の範疇に属しており、名称にあるリムペットとは海岸の岩に着くカサガイのことです。
リムペットマイン - Wikipedia
船底にも吸着させることができますが、航行中の船底にダイバーが取り付けるのは無理があるために、航行中の船舶が速度を緩めた頃合いを見計らって船で近寄って喫水線上に張り付けます。
今回は、ホルムズ海峡の最も狭い水域を抜けるために減速したところを狙ったことが考えられます。
不発となった吸着機雷が残存していれば、動かぬ証拠になったのですが、何者かが持ち去ってしまいました。
さて、米中央軍は船腹の破孔の写真も公開しています。
破孔をみると外からのエネルギーで破られて外板が内側にめれていますから、船内からの爆発ではありません。
これで船体にあらかじめ爆発物を仕掛けた可能性は否定されました。
また、RPG7のような成形炸薬を使った対戦車ロケット弾にしては破孔が大きすぎます。
RPGは目標に当たると小さな破孔から高温のメタルジェットを噴出させて内部を焼き尽くすので、このような大きな孔は開きません
これで事件当初、国華産業が乗組員が飛来した物体を見たと発表したことから、沿岸からのロケット砲攻撃かとも言われていましたが、これも否定されました。
もっとも、国華産業の証言は右舷と左舷を間違えているくらいなので、そうとうにパニくっていたのかもしれません。
したがって、爆発物は吸着機雷であることはほぼ断定できます。
すると、誰が着けたのかです
この吸着機雷はかんたんな工業技術でできるので、初歩的工業力があればどの国でも国内生産できます。
国内生産しなくても、国際武器マーケットに出物はいくらでもありますから、ゲリラ勢力でも入手できます。
彼らはスポンサー国から供与されているでしょう。
ちなみにイラン革命防衛隊は、イエメンのフーシ派や、パレスチナガザ地区のヒズボラ、シリアのアサド政権などに大量の武器を供与しています。
ですから、この地域のすべての国、すべての武装組織が保有可能ということになります。
ただし、ここでこの事件が起きた場所を考えねばなりません。
https://www.asahi.com/articles/ASM6F63YMM6FUTIL02W
タンカーが襲撃を受けた位置はホルムズ海峡の最狭部33キロの水域を抜けた付近で、昨日も追加でアップしましたが、この場所はイラン革命防衛隊のバンダーラ・ジャークス海軍基地の目の前です。
出所 黒井文太郎氏ツイート
このホルムズ海峡には6箇所ものイラン革命防衛隊の海軍基地が展開していて、いわばイランの縄張りです。
このイラン革命防衛隊は正規軍ではありませんから、こことは別に正規軍のほうのイラン海軍も哨戒活動をしているはずで、この狭い海域には濃密なイランの監視網が光っています。
こんなイラン親分が仕切っている縄張りで、他の組がテロをすることは、ないとは言いませんが、やっぱりありえないでしょうね。
しかもここは、イラン革命防衛隊海軍基地の目の前です。革命防衛隊は他に5箇所の基地を沿岸に持っていて、このチョークポイントには精鋭を配置しているはずです。
こんな海の関所のような場所で、他国海軍(ないしはゲリラ勢力)が小型船舶を使って同時に2隻のタンカーに接近し、吸着機雷を取り付けるのを、イラン革命防衛隊という武闘派が指をくわえて眺めているとは思えません。
そのような破壊活動をすれば、イランは「この海域の安全に責任をっている」と豪語しているのですから、軍事的に排除したことでしょう。
次に問題となるのは、吸着機雷の破孔の場所です。喫水線から離れた位置にあいています。
この位置で爆破しても火災は発生しますが、沈没には至りません。沈没させる気なら、浸水させねばならないからです。
そのためには取り付けるならタンカーの喫水線下がベストですが、それは航行しているタンカーでするのは困難ですから、ギリギリ喫水線の上で取り付けねばなりません。
そのように見ると、憶測の域を出ませんが、これは単なる技術的失敗ではなく、この位置にあえて沈まない位置に吸着機雷を仕掛けたのだと思います。
犯人はタンカーを沈める気など初めからなかったのです。
ここまでを整理します。
①爆発物は吸着機雷である。
②これを保有する国は多数あるが、取り付けるためには小型船舶を使用するしかない。
③最もタンカーの速度が落ちるのは最狭部であるために、襲撃ポイントに選ばれた。
④襲撃ポイントはイラン革命防衛隊の海軍基地の眼前である。
⑤喫水線のかなり上に着けられている。
これらをまとめて考えると、イラン革命防衛隊が引き起こしたのはかなり確実であり、その目的は撃沈することではなく、なんらかの示威行為ではなかっのかと推測することが可能です。
ホルムズ海峡タンカー襲撃事件について整理していきます。
■ホルムズ海峡とは
まずは場所です。この特殊性が分からないと、この事件は理解できません。
まー、よーこんな危ないポイントを作っちまったんだと、創造主(いたらの話ですが)の意地の悪さを呪いたくなるような場所です。
ここは世界最大のエネルギー積み出し港から出るタンカーのすべてが通過せねばならないポインなのです。
このホルムズ海峡に面する石油積み出し港はこのようになっています。
出典不明
上図を見ればお分かりのように、このホルムズ海峡を封鎖されると、北からイラク・イラン・クウェート・オマーン・カタール・アラブ首長国連邦の石油輸出がストップしてしまいます。とりあえず無事なのはオマーンくらいなものです。
日本向けの原油の8割が止まりますから、日本経済、いや世界経済ははたちまち立ち行かなくなります。
「ペルシア湾沿岸諸国で産出する石油の重要な搬出路であり、毎日1700万バレルの石油をタンカーが運ぶ。日本に来るタンカーの全体の8割、年間3400隻がこの海峡を通過する。船舶の衝突を避けるため幅3kmずつの航行出入レーンが設けられている」
ホルムズ海峡 - Wikipedia
この石油の大動脈の狭い玄関口がホルムズ海峡です。
同上
驚くほど狭い海峡で、大型タンカーが通過できる水深がある最も狭いポイントはたった33キロしかありません。
こういう地形をチョーク・ポイントと呼びます。チョークは「締める」くらいの意味ですから、ここを封鎖してしまえば、世界経済に大打撃を与えることができるわけです。
「水深75m - 100m、最も狭いところでの幅は約33km。イラン本土近傍のゲシュム島やホルムズ島をはじめとして、複数の島が海峡内にある」(ウィキ前掲)
■事件概要
6月13日夜明け5時50分、日本の国華産業が運行するパナマ船籍タンカー「コクカ・カレイジャス」から攻撃を受けたとの緊急通報が発信されました。
ほぼ同時、約10カイリ離れた海上二あったマーシャル諸島船籍タンカー「フロントアルタイル」でも、「爆発が起きた」と遭難信号を発信されました。
日本が運用している「コクカ・カレイジャス」は炎上し、漂流を開始します。
Marine Traffic HP
「コクカ・カレイジャス」からの緊急信号を聞いたタグボート「コスタルエース」が、救助に向かい乗員を収容し、米海軍の「ベインブリッジ」に移送しました。
一方、「フロント・アルタイル」は、近辺を航行していた「ヒュンダイドバイ」に救助されましたが、ここでおかしなことが起きます。
ちなみに米海軍「ベインブリッジ」は、トムハンクス主演の映画『キャプテン・フィリップス』にも登場した艦艇で、世界有数の海賊対応のプロです。
午前9時12分、なぜかイランの小型艇が接近し、この救助船に乗員の引き渡しを命じ、さらには救命艇まで接収していきました。
おそらくイラン海軍の艦船(おそらく哨戒艇)でしょうが、いうまでもなくこんな引き渡しを求める権限はイランにはありません。
同時刻。ホルムズ海峡をパトロール中の米海軍P-8哨戒機が、イラン革命防衛隊が常用するヘンジャン級哨戒艇と、複数の襲撃グループを載せたと見える小型船舶を周辺海域で確認しています。
午前11時頃、米国の偵察衛星は、イランの大型の捜索救命船「ナジ10」が「フロントアルタイル」の近辺にいるのを発見しました。
ちなみにこの時点で、既に両タンカーの火災は鎮火し、乗員の救助も終わっていたので、救難活動ではありえません。
米国は同日、米軍機関紙Stars and Stripes紙で画像を公開しました。これには小型船舶が「フロントアルタイル」右舷に接舷している様子が連続写真で収められています。
https://www.stripes.com/news/middle-east/pentagon-to-send-another-1-000-troops-to-middle-east-as-it-works-to-prove-iran-was-behind-tanker-attacks-1.586429
■タンカーの被害状況
6月13日、米国が公表した写真には、日本が運用していたコクカ・カレージャス右舷の被害個所と不発の吸着機雷(リムペット・マインと説明のある物体が写っています。以下の現場写真はすべて米国中央軍HPによります。
米国中央群さらに6月17日には、吸着機雷を外した跡と磁力吸着装置の残存物だとする画像が公開されました。
さらには「コクカ・カレージャス」の右舷で何らかの作業をするイラン革命防衛隊海軍とおぼしき映像も公開されました。
「当局者の1人によると、映像は米軍機が上空から撮影。イラン艇が攻撃を受けたタンカーと並んで航行し、船体から「リムペットマイン」と呼ばれる水雷を取り除く様子を捉えた。映像には、この艦艇に乗った人物が水雷をつかむ場面も映っているという。
現場海域には米海軍艦「ベインブリッジ」と米無人機、P8哨戒機が4時間にわたりとどまっていたが、イラン艇はその後も動きを続けていた。米国防当局者は、イラン側が攻撃への関与を示す証拠を回収しようとしていたと見ている」(CNN6月14日)
https://www.cnn.co.jp/world/35138493.html"Imagery taken from a U.S. Navy MH-60R helicopter of the Islamic Revolutionary Guard Corps Navy removing an unexploded limpet mine from the M/T Kokuka Courageous."
米国海軍MH-60Rヘリコプターが撮影したイスラム革命防衛隊がコクカ・カレージャスから不発のリンペット機雷を除去する画像
この破孔とこの写真の接舷してなんらかの「作業」をしている位置が同じ場所なことから、この写真がコクカ・カレージャスの破孔を撮ったものであることはほぼ確実です(イランは否認)。
この撤去した後に残された機雷と見られる部品の一部の写真です。
さらに国防総省は、攻撃されたタンカーから不発の爆発物を撤去し、現場から立ち去る監視船のものとされる写真も公開しました。
ただこれらの写真が示す事実は、革命防衛隊がコクカ・カレージャスの右舷船腹から機雷らしきものを撤去して持ち去ったということであって、着けにきていたものではないことに留意下さい。
これは爆発した2発以外にもう1発不発弾があったので回収しにきたのか、あるいはイランがこの海域の安全を守るために撤去していたのか、現時点では決定的なことは言えません。
米海軍哨戒機はこの現場に実に4時間も滞空していたのですから、大量の証拠を持っているとおもわれます。今回、公表したのはそのごく一部です。
同盟国首脳には内々に開示することでしょうが、一般公開は池内恵氏が言っているように、「これ以上開示すると戦争せざるをえないからしない」のかもしれません。
なお、この襲撃現場は革命防衛隊海軍ジャースク基地の目の前です。出来すぎたというえば言えますが、彼らのなわばりではあります。
出所 黒井文太郎氏ツイート
いずれにせよ、この小型船舶は、当時この海域で救助活動をしていた米海軍艦載ヘリからの映像で、きわめて解像度が高くイラン革命防衛隊の船舶であると断定してかまわないとおもわれます。
■イランの反応
午前8時30分に事件の第1報を報道。
9時47分、「1隻のタンカーが沈没している」と誤報。
11時25分、「乗組員44人全員イランが救助した」と放送。現実にはイランへ移送された23人は強制的に「ヒュンダイドバイ」から拘束せされたもの。はんぶんの21人の乗員は米駆逐艦に移送されています。
イラン外務省報道官声明。「我々はホルムズ海峡の安全には責任を負っており、今回も敏速に船員たちを救助した」
午後1時33分、イラン国営放送IRIBの報道。「米国は最初の映像なるものを放送したが、それは一昨年1月イェメンの反政府武装組織フーシがサウジアラビアのフリゲート艦をミサイル攻撃した時のものだった」
イランの主張としては、この事件において「ホルムズ海峡の安全に責任を持つ」イランが救助活動をしていただけで、接舷して「作業」している革命防衛隊の船舶は、イエメンのフーシ派がサウジ海軍艦艇を攻撃した際のものだ、ということのようです。
ちなみにここでイランが言っているイエメン・フーシ派はこのような武装組織です。
「フーシ派はイエメン国軍から接収したもののほか、イランから供給された可能性がある弾道ミサイルを80発以上、サウジアラビアに対し発射しており、一部は首都リヤド近くまで到達している」
2015年イエメン内戦 - Wikipedia
仮にイランの主張どおりフーシ派の仕業だとしても、この武武装組織もイランの息がかかった組織で、イラン革命防衛隊から大量に武器やミサイルを供与されていることにはかわりありません。
長くなりましたので、明日に続けます。
イラン情勢について、多少情報が集まってきていますから、まとめておきます。
明日あたりからホルムズ海峡タンカー襲撃事件についてもう少し詳しく見ていきますが、今日は大枠だけ押えておくことにします。
今回、わが国のメディアの論評を見ているとアベ嫌いにひっぱられ過ぎていますね。ま、毎度のことですが。
たとえばこんな毎日の記事です。
「イランの最高指導者ハメネイ師は13日、公式ツイッター(英語版)で声明を発表し、同日会談した安倍晋三首相を介して、トランプ米大統領から「米国との交渉がイランの発展につながる」とのメッセージを受け取ったことを明らかにした。
しかし、トランプ氏について「意見交換するにふさわしい相手ではない。私からの返答はないし、今後、答えることもない」と突き放し、対話を拒否。相互不信が根深い米国とイランの仲介の難しさが改めて浮き彫りになった」(毎日6月16日)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190613-00000085-mai-int
ハフィントンポスト https://www.huffingtonpost.jp/entry/iran_jp_5d020f...
会談直後に日本関係タンカーへの攻撃事件が発生したために、米国のメッセンジャーなんていいほうで、パシリ、子供の使い、政府専用機の燃料代はアベが払え、なんてことを言っていた人たちもいましたね。やれやれ。
どうぞ、頭を冷やして下さいな。何を焦っているのですか。
いじらしいばかりに、アベ氏に手柄をたてさせてはならんの一心のようです。
安倍氏は天使でもなければ、神通力の持ち主でもありませんよ。
初手はテーブル作りに決まっています。
今回安倍氏が作ったのはテーブルであって、そこでどんな解決を計るのかは、あたりまえですが自ずとまた別の次元なのです。
そもそもイラン核合意調印国も入れて話合わねばなりませんし、ウチの国だけで決められるはずがないでしょうに。
さてご承知かと思いますが、自由主義陣営の主要国でイランに対話チャンネルを持つのは唯一わが国しかありません。
欧州は歴史的な悪行のために憎悪の対象ですし、米国もイスラエルとの関係から対中東外交の選択肢の幅が極めて狭いのです。
となると、日章丸事件以降、イランと強い友情を維持し続け、今もなお制裁に加わっていない国など日本以外にありません。
しかも安倍氏は父親の安倍晋太郎外相秘書官として1983年にイランを訪問しています。
この時は、イラン・イラク戦争でイラクを支持していた米国の隠微な反対を受けたようですが、晋太郎氏は孤立を覚悟の上で、当時大統領だったハメネイ氏と会談しています。
ちなみに、イラン外相の秘書官だったのが、現在のイラン外相のベラヤティ外相でした。
おそらく世界の首脳を見渡しても、かくも濃密な人間関係をイラン政府内部に保有している政治家は、安倍氏以外にいないでしょう。こういうことを外交資産を持っていると言います。
ですから、仲介の労をとることができるのは日本の、あえて限定するなら安倍氏以外いないし、火中の栗を拾ったのは事実ですが、中東和平のキイパーソンに躍り出たともいえます。
この流れから見れば、今後、イランと米国との間に新たな核合意が成立した場合、その交渉場所は東京以外に考えられません。
このハメネイ・安倍会談で、「核兵器の製造も保有も使用もしない」という言質を取り出しました。
①2015年の「核合意」(米英仏独中露・EUが締結)を遵守する意志がある。
②2018年の米国の核合意離脱と、経済制裁を撤回しろ。
この上に立って、ハメネイはトランプとの対話拒否と言ったのです。
ここでご注意頂きたいのですが、では日本との対話も拒否したのかといかば、正反対でむしろ歓迎しています。
そもそも今回のイラン訪問は安倍氏の思いつきではありません。
おそらく膝詰めでトランプと綿密な打ち合わせをしたことは容易に想像がつきます。
つまり、日本の仲介者の立場はいささかも揺らいでいないし、初回の話しあいなど額面どおりのことをいわないと国内勢力が許しませんから、しょせんこんなものなのです。
いちいち勝ったの負けたの、アベが尻にトランプの親書を敷いているぞ(太郎外相が直ちに否定)なんてどうでもいいことでケチをつけないで下され。
さらにイランは間が悪いことには、故意か偶然か安倍・ハメネイ会談と同時にホルムズ海峡でタンカー襲撃事件を引き起こしてしまった疑惑をもたれてしまいました。
イランは否定していますが、現在で浮かび上がった証拠の数々からすれば、8割方は大変に怪しいと言われてもやむを得ません。
イラン国内の一部分子がしたとしても、誰がなんの目的でしたのかについては憶測の域をでません。
となると、イランにとって極めて不利な状況となります。
イランは強固な宗教国家である思われていますが、一枚岩どころか内部分裂しているじゃないかと、国際社会はみるからです。
国家意志としてタンカー襲撃をしたなら、イランはかつてのイラン・イラク戦争時のように堂々と「文句あっか。ホルムズ海峡通ればどいつもこいつも撃沈だ」と宣言してはばからないでしょう。
あの時も、イランは船籍に関係なく、ホルムズ海峡を通るタンカーを無差別に攻撃したという「実績」がありますから、今回も国家意志に沿った軍事行動ならそれ相応の対応をするはずです。
しかし、今回はゲリラ襲撃でした。使用されたのは、革命防衛隊がよく使う小型船舶です。
米中央軍が公開した映像では、イスラム革命防衛隊が不発のリムペット・マイン(吸着水雷)をタンカーから回収している(とみられる)様子が写し出されていています。
これは吸着機雷がついたままだと犯人が特定できてしまうために、はずしに来たのだと米国は主張しています。
https://www.businessinsider.jp/post-192878
ただし、これだけでイランの仕業と特定するのは早計です。
小川和久氏はこのように述べています。(『NEWSを疑え!』第778号(2019年6月17日)
「しかし、よほどの証拠を示さないかぎり、イランと決めつけるのは無理があるかもしれません。
それというのも、2隻のタンカーともホルムズ海峡からアラビア海に出るところで船腹に攻撃を受けていますが、確かに「コクカ・カレイジャス」(船籍パナマ)は左舷に2発被弾し、これはイラン側からの攻撃に見えます。しかし、「フロント・アルタイル」(船籍マーシャル諸島)は右舷に被害を受けており、対岸はオマーンです。
それに、被害個所を画像で見る限り、大型の火砲や対艦ミサイルなど威力の大きなものではなく、どこの武装勢力も備えている肩打ち式の対戦車ロケットRPG-7のレベルのものではないかという印象です。喫水線から上に被害を受けていることから、魚雷や通常の機雷ではないこともわかります」。
RPG-7のレベルの火器だと、よほど沿岸近くを航行していないかぎり、射程距離的に無理があります。
そう考えると、小型の高速ボートでの接近攻撃が可能性として浮かび上がってきます。(略)
革命防衛隊であったにせよ、どこかの武装勢力であったにせよ、タンカー攻撃によってペルシャ湾の緊張をかき立て、原油価格の高騰を狙う勢力による犯行という可能性まで視野に入れておいたほうがよいでしょう」
つまり、イラン革命防衛隊はかぎりなくクロに近いグレイではあるが、米国が追加して決定的証拠を開示しなければ、断定は困難であるということです。
さらには革命防衛隊が国家指導部の命令でしたのかどうかすら判然としません。
政府の命令を受けて襲撃したなら文句なしに制裁対象でしょうし、違うなら国が分裂していることになります。
このように見てくると、不利な状況になったのは日本ではなく(ありりまえだ)、イランです。
今後どのような展開になるのか予断を許しませんが、イランに直接交渉できるのは日本だけであることは揺らがないと思われます。
現時点でトランプは戦争の意志はありません。仮にそんなものがあれば、盟友の安倍氏に仲介役を依頼しないはずです。
またトンキン湾事件のような、すぐバレる謀略などを仕掛ける気はありません。
イラク戦争時の大量破壊兵器がまちがいだったことから、今回もまた陰謀にちがいないという人も出ましたが、あれは米国の分析ミスであって陰謀をしかけたわけではありません。
安倍氏のイラン訪問を市民語に翻訳すれば、こんなところでしょうか。
「まぁまぁアメリカさんそう怒らないで。イランさんもこのままじゃ済みませんよ。
トランプと対話しないと、国内反対派ひとつ押えられない弱体政権かと足元を見られますよ。
緊張を緩和するためには、お土産がいるかもしれませんね。
イランが売られたケンカを買って核合意を離脱するなんていいだすのは損ですから、ハメネイさんの口から否定してくださいな。
経済制裁緩和がご要望なことは重々理解していますが、まずはそこからです」
とまれ、むしろイランが窮地に陥ったたことによって、唯一の仲介者であるわが国の立場はいっそう貴重なものとなったはずです。
明日はもう少し細かくタンカー襲撃事件の詳細をみていきます。
逃亡犯条例の可決が無期延期されました。素晴らしいことです。
光明は見えてきましたが、まだ勝利を手にしたわけではありません。
ここで一気に勝負を決めないと負けます。
「主催した民主派団体「民間人権陣線」によると、約200万人が参加(警察発表では33万8000人)。香港政府は改正の無期限延期を決めたが、参加者はあくまで「完全撤回」を主張し、デモ隊の一部は立法会(議会)周辺の道路を占拠した。
香港の人口は約750万人で、4人に1人が参加した計算。9日の100万人デモを大幅に上回り、香港史上最大級のデモとなった。市民の民意が改めて示された形で、政府は16日夜、トップの林鄭月娥行政長官が「多くの市民の失望と心痛を招いたことを謝罪し、誠意と謙虚さをもって批判を受け入れる」意向だとする声明を発表した。
午後3時(日本時間同4時)に始まったこの日のデモでは、香港島中心部の公園から立法会前までの約4キロを「延期ではなく撤廃を」などと叫びながら行進。林鄭長官の辞任と、12日の大規模な抗議行動で警察が催涙弾などの武力を行使したことへの憤りも併せて訴えた。
参加者の多くが黒い服を着用し、政府や警察への「怒り」を表現。友人と参加した女子学生(17)は「同じ学生に暴力を振るった警察が許せない。改正案も、完全撤廃されるまではまたいつ審議が始まるか分からず、今の状態では納得できない」と話した」(時事6月 16日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190616-00000039-jij-cn
産経https://www.sankei.com/world/news/190615/wor1906150023-n1.html
今まで香港は何回か大規模デモを組織してきた経験があります。
香港でデモが大規模化するのは、日本のような普通選挙という意思表示の場所がないからです。
行政長官すら選挙で選ばれない所な以上、デモだけが意思表示の方法となります。
「香港では、2003年に国家分裂行為などを禁じる「国家安全条例」案が撤回に追い込まれている。この際は民主派グループが50万人規模のデモを組織した。14年に民主的な行政長官選の実現を目指したものの失敗に終わった「雨傘運動」では、学生組織が20万人規模のデモを行った経験がある」(産経6月16日 写真と同じ)
このようにこれま大規模デモを組織しても負けてしまいました。
その原因は闘争が長期化したからです。
闘争は経験的に起承転結のサイクルをとりますが、現時点はその最盛期に当たります。
言い換えれば、持てるエネルギーのすべてを出し切った状態で、リソースは限界まで伸びきっています。
今回の香港デモは指導部なきデモでした。
それは反対デモといえば、必ず共産党の一定数の動員力を頼みにするする日本の国会デモと較べればわかるでしょう。
多くの組織されざる人々が、それぞれの立場で、創意工夫をもって集まったことがプラス方向に現れました。
リーダーをあえて置かずにアメーバー状に拡がったために、リーダーを拘束さえすれば鎮静化できると踏んでいた治安当局は後手後手に走りました。
しかしこの香港デモの性格は、短期集中型だから得られるもので、長期の泥沼に引きずり込まれた場合、その限りではありません。
キャリー・ラム行政長官 ハフィントンポスト
さてそれを知ってか知らずか、行政長官のキャリー・ラムの記者会見はこう言っています。なかなか意味深ですよ。
「「もとは香港への愛情と香港人への配慮から進めたものだった」と釈明。「私たちが至らなかったせいで、香港で大きな対立を引き起こしてしまった。私たちは多くの人を失望させ、悲しませた。私もまた、悲しみ、後悔しました。私たちは誠意をこめて、そして謙虚に批判を受け入れます」と語った。
問題となっている改正案のきっかけは、2018年に台湾で発生した殺人事件。香港人の男が犯行後に香港へ逃げ帰ってしまったため、台湾当局による拘束を免れたのが問題視された。
今回の改正案は、香港が犯罪容疑者にとって「拘束されない地域」として逃げ場にならないように提案された側面もあった。
林鄭長官は、「私たちは法の抜け穴を塞ぐ必要があります。したがって、現段階では法案を撤回することはできない」と述べた。」
(ハフィントン・ポスト6月15日)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d04bb67e4b0dc17ef0a50be
キャリー・ラムはここで「自分は至らなかった」として辞任をほのめかしています。
中国は指導力を失ったラムに見切りをつけ、次の行政長官を選びをしているはずです。
次の行政長官はさらに露骨な中国寄りのやり手がなるかもしれません。
また一見批判を受け入れて審議を年内は無期延期するとはいいましたが、法案を撤回するとはひとことも言っていません。
これはほとぼりが冷めたら、再上程するという意味です。
ダメです。こんな幕引きをしたら、確実に半年後、1年後にやられます。
また台湾との関係をラムは口にしています。
台湾は公式には発言していませんが、蔡政権はこの引き渡し条例には反対のはずです。
皮肉にもラムが配慮したと言った相手の台湾は、今、総統選に向けた党内予備選の真っ最中ですが、負けることが確実と言われた現職の蔡英文総統が予備選で勝利してしまいました。
「[台北 13日 ロイター] - 2020年の台湾総統選に向けた与党・民主進歩党(民進党)の党内予備選は、現職の蔡英文氏が勝利した。頼清徳・前行政院長を破った」(ロイター6月13日)
https://jp.reuters.com/article/taiwan-election-idJPKCN1TE0J3
これは香港の民主デモと無縁ではありえません。
まったく同じ、一国二制度の甘い罠を仕掛けられている台湾にとって、今回の香港デモは彼岸の火事ではありませんでした。
多くの台湾人たち、特に中国に浸食されつつあることに危機感を持つ青年層は、この 香港デモをわがことのように感じたはずです。
習にとって、もっともイヤなはずの香港デモの余波が早くも各所に生じ始めたのです。
一方、習がいったん引くそぶりを見せたのは、香港デモに対して、トランプを初めとして多くの国際社会の支援があったからです。
ここが孤立無援で挫折した30年前の第2次天安門事件や雨傘革命、あるいは台湾の向日葵革命と決定的に違うところです。
特に習にとって痛かったのは、一国二制度の締結相手国の英国から厳しい批判を受けたことです。
メイ首相 ニューズウィークhttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06...
「メイ首相は「われわれは条例の改正が香港の英国民に潜在的な影響を与えることを危惧している。しかし、重要なのは、香港における容疑者の受け渡しは必ず『中英連合声明』に記載されている、『香港市民の権利及び自由を保証する』という部分を満たさなければならないという点である」と発言した。
「中英連合声明」は中国と英国が1984年に共同発表した声明で、中国が香港の社会・経済制度、生活様式を当時のまま50年間は変更しないこと、『一国二制度』の下、香港に中国とは異なる自由と司法の独立を約束することが含まれる。しかし、中国外交部は17年、「『中英共同声明』はただの歴史的文書にすぎず、いかなる現実的意味合いも持ち合わせていない」との立場を示した」
(レコードチャイナ6月13日)https://www.excite.co.jp/news/article/Recordchina_20190613019/
レームダックの極みの状況にありながら、民主主義発祥の地の矜持を守ったメイ首相に拍手します。
メイまでもが沈黙してしまったら、これほどまでの国際社会の支持はありえなかったからです。
一方、習中華皇帝は、時もあろうにG20 直前に潰されてしまった恨みを、忘れないはずです。
彼が恐れたのは、G20の場で自由主義諸国から集中砲火を浴びることです。
そのようなことにでもなれば、党内反対派は狂喜乱舞し、彼を中華皇帝の椅子から引きずり下ろそうと画策することでしょう。
なぜなら、香港でこのような自由を許したら、中国は同様の民主主義的権利を新疆ウィグル自治区で、あるいはチベット自治区で認めねばならなくなるからです。
民主派はここで法案の白紙撤回のゴールまで走りきらねばなりません。
撤回の言質をとらずに「一定の成果が上がった」として鉾をおさめてしまえば、それは負けたも同然です。
追撃し、撤回まで持ち込まなければ、結局はかつての雨傘革命の二の舞となります。
中国は、総力を上げて、ウィグルで使ったIT監視技術を香港に投入するはずです。
SNSは本土と違って露骨な検索ワード拒否はないでしょうが、それに代わって徹底した監視を受けます。
中国におけるSNS監視システムは「天網」(スカイネット)というターミネーターに登場する人類の敵みたいな名称です(ホント)。
このスカイネットが中国全土を24時間監視しています。
そして、この「天網」は、通信部門をファーウェイ、監視カメラ網をハイクビジョンとダーファが受け持っています。
さらに、アイフライテックのAI音声と声紋認識システムによって、どこまでも本人追跡ができます。
また現金が駆逐されつつあり、今やアリペイなどの電子マネーにとって替わられています。
電子マネーなら買い物さえすれば、個人の行動履歴と資産状況が洗えるからです。
これらのIT関連会社は、2017年の「国家情報法」で当局の情報提供の求めに対して拒否することが禁じられていますので、国家に個人情報・動向がだだ漏れです。
ちなみに、米国系グーグル、フェースブック、アマゾンなどが中国進出を断念したのは、彼らもまた中国当局に情報提供を強要されたからです。
彼らはビックデーターを保有していますから、彼らが屈した場合、自由主義諸国の国民の情報まで、中国の手の内にあることになります。
それはさておき、中国当局はこの情報を集約し、すべての国民に点数を与えて、職業歴、学業成績、犯罪歴、政治傾向など技術によって、減点していくスコアリング・システムを完成させようとしています。
これが完成すれば、中国治安当局はいながらにして14億人を「電子の檻」に閉じ込めることが可能となります。
まったく悪い夢のような社会を作ったものです。
考えられうるかぎりで、人類が作り出した最強最悪の管理社会です。
中国版スカイネットが自己学習して、「自我」を持つようになれば、あな恐ろしや、「ターミネーター」ワールドがほんとうに現出することになります。
すでに香港には、この監視システムが部分的に持ち込まれているといわれています。
今回の「逃亡犯引き渡し条約」は、この監視システムでスコアリングし、本土移送するためのものです。
今後、撤回されずに推移した場合、今回のデモの主要なリーダーやデモ参加者は、静かに香港社会から消えていくかもしれません。
目立たない規模で、ひとりふたりとどこへともなく消えていくのです。
これはただの危惧ではなく、中国はそういうことを平然とやってのける国だからです。
かつて民主派の拠点だった銅鑼湾書店事件では、関係者は大陸に拉致されて取り調べを受けました。
それが桁違いの規模で行われてしまう社会となるわけです。
最悪シナリオとしては、ラムが混乱の責任をとって辞任して幕引きとし、次の行政長官が一切の審議にかけずに、全人代名義で「引き渡し条例が存在していることを確認している」という事務手続き一枚で成立させてしまうことてす。
この方法を中国はかねてから検討していたはずで、G20さえ終わってしまえばれば怖いものはないと思ったとしてもなんの不思議ではありません。
いずれにしても、こうしたことを未然に防ぐ意味でも、ここまで高まった反対運動を引くことなく、完全かつ最終的な勝利をもぎ取らねばなりません。
加油、民主香港!
宜野湾くれない丸さんからエッセイを頂戴いたしました。ありがとうございます。
私はダラダラと分析じみたものは書けるのですが、こういう随筆は書けないんですなぁ。ほんとうに嬉しい限りです。
くれない丸さんが指摘する、「被害者沖縄」のイメージどおりにふるまう沖縄、という指摘は大変に貴重です。
本土のメディアの沖縄報道を見ると、「被害者沖縄」のワンパターンの繰り返しです。
これで終われば、絵になるものを求めるメディアのただの浅はかさで終わるのですが、困ったことはこれが実態の沖縄にも反映されてしまうことです。
たしか大久保潤氏は柳田国男の『遠野物語』によって、現在の遠野がそれに合わせて変化してしまう様を書いていました。
似た現象は沖縄でも起きています。
多少、読みやすくするために編集をしてあります。今回一回の完結です。
それにしても、デニー氏とロックですか似合わねぇ、ぶ、はは。
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デニー知事からは「ロック」は感じない
宜野湾くれない丸
『玉城デニー沖縄県知事、フジロック出演へ「アーチスト」として7月28日のステージに』という沖縄タイムス(6/10)の電子版の記事を読みました。
「えっ、デニー知事のどこがロックなの・・・!?」「薄っぺらいな、この企画は」・・・・というのが正直な感想です。
広告宣伝という視点からは「おっ!」というニュアンスを与えますが、記事によると「アーチストとしての出演」であるとのことだが、「歌う」にせよ「ギターを弾く」にせよ「基地問題についてメッセージを発信」するにせよ、いずれにせよ「無難にこなす」こと以上の期待と効果はないでしょう。
なぜならば、私はデニー知事に「ロックを全く感じない」からなのです。
「いつのまにか、沖縄人は大江健三郎と筑紫哲也が言う被害者沖縄のイメージ通りに振る舞うクセが付いてしまった」という高良倉吉氏の言葉を以前このブログの記事で引用しましたが(「沖縄の不都合な真実」大久保潤、篠原章142頁)、まさしくこの「被害者意識の代弁」的なものの延長にあるのが「デニー知事のフジロック出演」でしょう。
「政府への反旗を下ろさないデニー知事」、フジロック主催側の「そうあって欲しい沖縄像」をデニー知事本人が(意識する・しないを別として)「演じている」ことが重要なことだからです。
しかもデニー知事はバンドをやってた経緯もある。バンド、ラジオパーソナリティー、沖縄市議会議員、国会議員、沖縄県知事という彼のこれまでの「舞台映えする経歴」と父親が米軍人である、ということもあり、主催側の「そうあって欲しい沖縄像」にまさしくピッタリなのだから。が、しかし決定的に「欠ける何か」にお気づきであろうか。
この沖縄側の「演技」は、先の「沖縄の不都合な真実」でも取り上げられてますが、「幻想の島沖縄」でも随所にそのニュアンスは取り上げられています(「セレモニー化する反基地運動」など)。
私は過去にこのブログにて、沖縄の日本復帰当時に広く県民に歌われた「沖縄を返せ」の作詞作曲者は「沖縄の人ではない」のは「何でなんだろうか?」「こんなにも芸能が盛んな島々なのに?」という素朴な疑問を取り上げたことがあります。
つまりこのことも「代弁者が作ったもの」を「演じる(歌う)」という根本は同じところから発生しているからです。
ネーネーズというコーラスグループが歌う「黄金の花」も同様に作詞は沖縄の人ではありません(作曲は知名定男氏)。「代弁者によって構築される己らの想像の共同体」とでも言うのか・・・・。
沖縄はロックしてません、よ。ロック「もどき」をやっているだけです。「沖縄島」はロックしてない」というのが正確かもしれません。
本土側から見ると沖縄は「宮古も八重山も全部含めて『沖縄』」と感じている人が多々いるかと思いますが、「沖縄島」は周辺の島々からすると「権力の島」なんですよ、今も昔も。
これに「奄美群島」も絡んできたりするんで少し複雑になりますが、言えることは「沖縄島はロックしてません」ね。なんせ沖縄島には「補助金もらってロック」する輩がいますしね。
「補助金ロック」と揶揄されたりしてますし。あんがいロックしているのは「周辺の島々」ですよ。権力に「楯突く」のは「周辺の小さい島々」です。
音楽のカラーで言えば、「ブルースの奄美」、「パンクな宮古」、「大陸風の八重山」、そして沖縄は「哀愁ラテン」。
フジロックさん「デニー知事はロックを感じない権力者なんです」よ。
緊迫する香港の情勢は、とりあえず20日の審議再開は回避されたようです。
「【香港時事】香港で身柄を拘束した容疑者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案に関して、立法会(議会)は14日の審議再開も見送った。
立法会は先に、20日にも採決すると発表したが、反対デモの勢いに押され、予定通りの審議は困難な情勢。一方、民主派団体「民間人権陣線」は、16日の日曜日に再びデモを実施すると発表した。
立法会の梁君彦議長は11日、残りの審議時間を66時間に設定した。日程を考慮すると、最短7日間で審議は終わるとされるが、デモによる混乱ですでに遅れが出ている」(時事6月13日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190613-00000130-jij-cn
民主派は次の日曜日にも総力戦でデモをかけるとしています。
メディアの「逃亡犯条例」という表現にダマされて、日本人はよくある犯人引き渡し条約のひとつだというていどの狭い認識しかないようです。
あるいは、中国だって世界第2位の大国なんだから香港に国内法を適用したいのはあたりまえだろう、と解説するテレビ解説者もいました。
そんなにわかりきったことなら、なぜ香港で7人にひとりの人が立ち上がったのでしょう?
今日はそこから考えていきます。
出典不明
中国には司法の独立がありません。すべての意思決定は中国共産党が行います。
したがって、思想・信条・結社の自由はありません。
自由な考えを持つこと、それを表明すること、そして仲間を作ること、それ自体が犯罪とされる国なのです。
デモは官許のものしか許されませんし、SNSには厳重な監視の目が光っています。
仮に中国において、今回のような民主要求のデモが起きれば、集まった段階で武警が飛んで来て容赦なく政権転覆扇動容疑者として逮捕され、収容所送りとなります。
そして政治犯は臓器売買の対象とされます。
では逆にどうして現時点でこの香港だけでは、自由なデモができるのか、そこが分からないと今回の100万人デモが理解できません。
それは香港は中国ではないからです。
え、中国大陸にあるだろうと思われるかもしれませんが、それは地理的な話。
今の繁栄する自由な香港を作ったのは英国です。
中国政府は香港を実効支配したことはないし、いまも不完全にしているにすぎません。
なにより、香港に住む香港人が自分のことを「中国人」とは考えていません。
「香港に住む人の大半は民族的には中国人で、香港は中国の一部だが、香港人の大半は自分たちを中国人とは思っていない。
香港大学が行った調査によると、ほとんどの人が自分は「香港人」だと考えており、自分は「中国人」だという人はわずか15%だった」
(ロイター2019年6月10日)
https://jp.reuters.com/article/hongkong-politics-extradition-idJPKCN1TB0Q2
香港は台湾と似た性格があります。
それは、中国大陸に地理的に付随していながら、中国の支配が及ばなかった地域だということです。
台湾は、中華文明の外にあり続け、マラリアの猖獗する「化外の地」(けがい)でした。
中国の時の権力も、中国の権力・法律が行き届いていない地方だと認めていました。
だから、日本の支配を認めたわけですが、香港もまた別の意味で「化外の地」でした。
英国の通信社であるロイターはこう述べています。
「香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だった。香港島は1842年のアヘン戦争後にイギリス領となり、その後、イギリスは当時の清朝政府から「新界」と呼ばれる残りの地域を99年間租借した。
それからの香港は活気ある貿易港となり、1950年代には製造業のハブとして経済成長を遂げた。また、中国本土の政局不安や貧困、迫害などを逃れた人たちが香港に移り住むようになった」(ロイター 前掲)
英国が中国から香港を奪ったという表現をよくしますが、それ事実の反面にすぎません。
かつての中国において、香港は唯一の先進地域でした。
なぜなら軍閥が勝手気ままに割拠する地で、唯一香港のみが近代的な法の支配が行われ、それ故に自由経済が発展した都市だったからです。
「犬と中国人は立入禁止」というプロパガンダがありますが、そのような人種差別的側面がなかったとは言いませんが、当時の香港は混乱の巷であった中国大陸で唯一の自由が保証された土地でもあったのです。
http://www.scentoflifediscovery.com/shanghai-bund/
ですから、ロイターが書くように「国本土の政局不安や貧困、迫害などを逃れた人たちが香港に移り住むようになった」のです。
これはいまでも変わりません。香港こそが第2次天安門事件30周年を追悼できる、中国大陸唯一の場所だということを考えれば、多少お分かりになるでしょうか。
返還後の香港は香港特別行政区となり、その自治がおびやかされる一方でしたが、いまもなお独自の法制度や国境を持ち、表現・結社・信条の自由などの権利も保障されています。
ここが決定的に、香港が「中国の一地方都市」ではない本質的理由です。
この香港の自治が揺らいだのは、英国の租借期限が切れる1999年の10年前から始まった中英交渉にあります。
英国と中国は大枠で返還に合意していたものの、一点でおりあいませんでした。
それが返還後の香港の法律を、中国の法支配とするか、従来の香港の法律を維持するかでした。
結局、英国と中国は折衷案として、50年間と期限を切って外交と国防以外では従来の香港独自の法律を認めるとしたのです。
つまり、法と行政においては自治権が認められたわけです。
これがひとつの国にふたつの制度という変則的な「一国二制度」でした。
英国は時代には逆らえないと諦めていましたし、中国は唯一の西側への窓口であり、かつ、世界有数の金融センターである香港の存在が、開放経済のテイクオフには必要だと判断したからです。
ところが中国は、おとなしく中英合意に従うようなタマではありませんでした。
中国はまだ50年の半分に満たない時期から、香港の「高度な自治」の城壁を壊し始めました。
それはまず言論の自由を奪うことから始まり、言論機関を中国系で買収していくことが進みました。
「人権団体は、高等法院が民主派議員の議員資格を剥奪したなどの事例を挙げ、中国政府が香港の自治に介入していると批判する。香港の書店員が次々と姿を消した事件や、ある富豪が中国本土で拘束されていることが分かった事件なども懸念を呼んでいる。
アーティストや文筆家は、検閲の圧力にさらされていると話す。英経済紙フィナンシャル・タイムズの記者が香港独立を目指す活動家を招いたイベントを司会をしたところ、香港への入国を拒否された」(ロイター前掲)
主要紙であったサウスモーニングポストは中国系資本に買収されて沈黙し、反骨社主が主宰する蘋果 ( りんご)日報は存続の際にたたされています。
英国は危機感を感じて中間査察を要求しましたが、中国は拒否しました。
ここで英国がチャイナマネーの魅力に負けて引っ込でしまったことが、香港を見捨てることにつながっていきます。
こうしてうるさい言論界を黙らせた中国が次狙ったのは立法と行政の中国化でした。
「香港政府トップの行政長官は現在、1200人からなる選挙委員会で選出される。この人数は有権者の6%に過ぎず、その構成はもっぱら中国政府寄りだ」(ロイター前掲)
立候補を認めないとする選管の通知書を手にする民主派候補https://withnews.jp/article/f0181220000qq000000000...
なぜこうなったのかといえば、中国に抵抗する人たちの立候補がことごとく取り消されたからです。
ある女性候補は「香港の将来の政治体制は独立を含めて香港人が決める」という立場をとっていました。これは自分たちが将来を決める立場なことからから「自決」と呼ばれ、香港の若者の間では多くの支持を得ています。
「香港の選管は10月中旬、劉さんの立候補を認めないという決定をしました。「劉さんは香港独立を選択肢の一つにしており、香港は中国の一部という規定を受け入れていない」と判断したからです。劉さん自身は立候補の直前、香港独立を支持しないと明言しましたが、それでも過去の主張が問題視されました」(益満雄一郎2018年12月20日)
香港の民主派と中国政府との攻防が最終局面に入ろうとしています。
ラム行政長官は、強硬姿勢を崩しておらず、審議を強行しようとしています。
「【北京=西見由章】香港で中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求める数万人のデモ隊が12日、香港政府や立法会(議会)付近に集結し、鉄柵をバリケードにして幹線道路を占拠した。警官隊はデモ隊の一部を「暴徒」とみなしてゴム弾や催涙弾を発射し、立法会周辺から強制排除。70人以上が負傷した。香港メディアなどが伝えた。
盾や警棒などを持った警官隊が出動。黒い服装にマスク、ゴーグルを身に着けたデモ隊との間で断続的に衝突が発生した。香港政府は12日、この日再開を予定していた条例改正案の審議を延期する方針を示した」(産経6月12日)https://www.sankei.com/world/news/190612/wor1906120019-n1.htm
審議強行に対して抗議する民主派は、路上にバリケードを作って抵抗しました。
それに対して警官隊は容赦ない鎮圧をしたようで、催涙弾が投擲され、70名以上の負傷者がでたようです。
一部では、警官隊が麻布に包んだ鉛弾を投げているとか、ゴム弾の水平発射をしたという情報もありますが、未確認です。
産経前掲
私は今回のような民主派の実力阻止という手段を評価しません。
目的は手段を合理化しないからです。
審議が阻止されたこと自体は評価しますが、短期的戦術としては成功しても、中長期的に見た場合、疑問があります。
まず第1に、このような暴力的反対運動をすれば、必ず権力の倍する弾圧を招くことは明らかです。
今回もラム政権はよほど習から尻を叩かれていると見えて、上の写真にあるようにいきなりこん棒をふりかざした制圧活動をしました。
CNガス(催涙弾)も大量に発射されたようです。
日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46006080S9A61...
このような暴力的抗議行動を私は批判します。どうぞ、指導部の人たちは冷静になって、統制ある抗議行動に徹して下さい。
路上を占拠することは厳密には交通法に抵触するでしょうが、それでも数十万の人たちが街頭に溢れた状況ではやむを得ないとは思います。
しかし昨日のような一部の者による議事場敷地への突入や、バリケードは明らかな行き過ぎです。
暴力の応酬といった局面に引きずり込まれれば、絶対に反対派は勝てません。
のぼせて戦った気になるのは勝手ですが、失うものが多すぎます。
絶対に暴力には手を出さないで下さい。
第2に、民主派の人たちは、この抗議行動が世界の注視の中で進行していることを肝に命じるべきです。
かつての「雨傘革命」や、台湾の「ひまわり革命」は共に節度ある抗議を続けました。
たとえば、「ひまわり革命」は、議場を占拠するという行為をしつつ、汚したり破壊したりすることをせずに、撤収時には清掃して引き上げています。
だから、世界の自由を愛する人たちから支持されたのです。
フランスの黄色のベスト運動には一理ありますが、商店を焼くというどうしようもない破壊行為まで支持する人はいません。
むしろ私のように、暴力に対する嫌悪感から否定的な感想を持つようになります。
今後ですが、仮に審議入りが有効に阻止された場合でも、香港人の意志とは無縁に全人代が香港の基本法を改変することが可能です。
現在の香港警察は、深センにまで進出してきている中国政府の治安機関の直接の指揮下にあるという噂も流れています。
今日に予定されている審議を力で再度強行し、一気に採決に持ち込む構えです。
そうなった場合、中国政府は香港の頭越しに引き渡し条例を押しつけることが可能です。
しかしそれで終わりだと考えて諦めないで下さい。
民主派はそのゴリ押しを予想して、現時点でその危険性を世界にアピールせねばなりません。
これこそまさに中国政府の反民主主義的姿勢そのものであって、こんな暴挙を国際社会は許すのか、とアピールすべきです。
傍観者でいてよいのか、香港を見殺しにするのか、と自由主義社会に問うて下さい。
国連に提訴して下さい。
国連は役立たずのどうしようもない機関ですが、国際世論を喚起することくらいはできます。
いったん審議が阻止され、次の一手を互いに模索している今こそ、言論戦で中国に勝たねばなりません。
優秀なスポークスマン(出来たら女学生)に言論を一本化して、世界のメディア相手に大規模な記者会見をするときです。
隣国の日本では、「犯罪人引き渡し条例」について、全くといっていいほど内容的な報道はありません。
ただ100万人デモが起きたとか、衝突があったと上っ面を報じるだけです。
これは日本メディアの度し難いダメさもありますが、民主派の発信力の弱さもあることを自覚してください。
老婆心ながらひとこと付け加えると、犯罪人引き渡し条例が可決された後は必然的に運動は焦点を失い雲散霧消していきます。
いかなる運動もその運命から自由ではありません。
中国政府は大量不当逮捕をするはずです。
しかも香港の場合、そこで運動すること自体、本土に移送されて、収容所送りになる危険があります。
いったん中国政府に逮捕・収監されてしまえば、社会に復帰する可能性はありません。
ですから、この事態に備えて第2指導部を海外に作っておく必要があります。
必ず来るであろう中国政府の民主派狩りから、メンバーを守って国外逃亡させ、海外で持続的運動を続けねばなりません。
この運動が64天安門事件30周年に起きたのも、なにかの巡りあわせを感じます。
ここで負けたら、香港の自治と自由はなくなります。
それは香港だけのことにとどまらず、中国国民と少数民族の自由が復活する道が閉ざされることを意味します。
民主派の奮闘をお祈りします。
~~~~~~~
産経(6月12日)になぜ民主派は反対しているのかについてのQ&Aが掲載されていましたので、転載させていただきます。
https://www.sankei.com/world/news/190612/wor1906120020-n2.html
■「逃亡犯条例」改正案とは 「一国二制度」事実上崩壊の懸念
Q 「逃亡犯条例」改正案とは A 香港が犯罪人引き渡し協定を締結していない国・地域の要請に基づいて、容疑者引き渡しを可能とするものだ。香港政府が4月に立法会(議会)に提出した。
現在、香港は米国など20カ国と犯罪人引き渡し協定を結んでいるが、中国本土やマカオ、台湾との間にはない。香港紙、星島日報(電子版)によると中国は55カ国と犯罪人引き渡し条約を調印していて、中国の特別行政区である香港とは結んでいない。香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げっか)行政長官は「法の抜け穴をふさぐため」必要な措置だと強調している。
Q なぜ条例改正の動きが出たのか
A 昨年2月、香港人の男が台湾で恋人を殺害し、逮捕される前に香港に戻るという事件が起きた。香港政府は、犯罪人引き渡し協定がない台湾への身柄移送ができないことを理由に、このような事態を解消するため条例改正が必要だと主張している。
Q 反対運動が起きているのはなぜか
A 香港は1997年の中国返還後も「一国二制度」で高度な自治が50年間認められているのに、条例改正により同制度が事実上崩壊すると反対派は懸念している。香港政府は引き渡し対象となる犯罪を限定するなどしているものの、実質的に香港市民も中国当局の取り締まり対象になる恐れがあるためだ。香港の根幹をなす「一国二制度」が揺らぐことで、世界の経済・金融センターとしての地位低下も心配されている。
Q 具体的に想定されるケースは
A 香港で活動する活動家など中国政府に批判的な人物が、容疑を作り上げられて中国本土へ引き渡されるといった懸念を反対派は挙げる。香港を訪れた外国人ビジネスマンや観光客も、引き渡し対象になる可能性が指摘されている。
Q 今後の展開は A 林鄭氏は改正案を撤回しない方針を10日の記者会見で表明し、立法会で20日にも採決が行われるとの見通しが伝えられている。立法会は親中派が多数を占めており、採決に至れば中国政府が支持する改正案が可決される可能性は高い。
ただ、9日のデモ参加者は主催者発表で103万人(警察発表は24万人)と返還後最大規模となり、反対の声は学生や労働者、ビジネス界など香港社会の幅広い層に広がっている。反対運動により12日午前に予定されていた改正案の審議は延期された。反対運動の盛り上がりが改正案の大幅修正や撤回にまでつながるか注目される。
香港の引き渡し条例について、続けます。
なにもする気のない日本政府や、金融庁の広報ミスのほうが大事だと見える日本メディアと違って、国際社会は強い関心を寄せているようです。
ちなみに老後に2千万不足という話は、貯蓄が1800万円ある人をモデルに計算しただけのことで、国民全体が足りる足りないという次元のことではありません。
こんなただの金融庁が書いたモデルケースにすぎないことを、「第2の年金消失事件」と騒ぐほうがどうかしているというお粗末です。
あーあ、イヤになる。なら、内閣不信任案でも出して衆参同日選挙しますか。
それはさておき、まずは米国務省の反応です。
「【ワシントン=黒瀬悦成】米国務省のオルタガス報道官は10日の記者会見で香港政府が刑事事件などの容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を発表したことに関し、「重大な懸念」を表明した。
オルタガス氏は香港が進める条例改正の動きについて「香港の『一国二制度』の枠組みが骨抜きにされ続けることで、国際的に長らく築き挙げられた香港の特別な地位が危機にさらされている」と批判した。
その上で、現地で10日に展開された「100万人デモ」は「市民らが改正案に反対していることを明確に示すものだ」と指摘し、「米政府は、改正案が香港の自治権を侵害し、長きにわたって保護が図られてきた人権状況や基本的自由、民主的価値観に悪影響を及ぼす恐れがあるとする、多くの香港の人々の懸念を共有する」と強調した。
また、条例改正による香港のビジネス環境の悪化や、香港を訪問・滞在中の米国民が中国の「予見困難な司法制度」にさらされることへの懸念も示した」(産経6月11日)
https://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/sankei-wor1906110007.html
出典不明
とうとう米国が動き出したようです。
トランプはこの問題を、生きた人権問題として米中経済戦争の燃料に使うはずです。
旧宗主国で一国二制度の査察を求めたこともある英国も、黙殺するわけにはいかなくなりました。
英国はこの「高度な自治」を中国に約束させた当事国であるだけではなく、香港とはカナダ・豪・NZなどと同様にコモンロー(慣習法)で結ばれていました。
このことによって、英国は金融センターのネットワークでいまも強く香港と繋がっていますが、これが断ち切られることになりかねません。
いいんでしょうか、ブリテンさん。そうじゃなくてもブレグジットが及ぼす経済的マイナスが大きいのに、また悪い材料が増えてしまいますが。
一方中国は、この犯罪人引き渡し条例改正反対運動に、「海外勢力」がバックにいると考えているらしく、断固としてやり遂げると表明しています。
「【北京】中国は、香港で9日に大規模な市民デモが発生したにもかかわらず、犯罪容疑者の本土送還を可能にする「逃亡犯条例」の改正を断固として進める方針だ。 中国の国営メディアや当局者は10日、香港特別行政区政府による条約改正の取り組みを引き続き支持するとの立場を表明。デモは、地元の反体制派が外国勢力と共謀して市民の怒りをあおっていることが要因との見方を示した。
中国外務省の耿爽報道官は定例会見で、条例改正への政府の支持を改めて表明した上で、「一部が無責任な発言を行っている」と指摘。「香港の立法への外部介入に断固として反対する」と述べ、名指しは避けながらも、中国に批判的な海外勢力による介入の可能性をほのめかした」(ウォールストリートジャーナル6月11日))
https://jp.wsj.com/articles/SB10964890201208694149804585357543531842292
中国国内では報道管制が敷かれていて、ほとんどの中国国民は知りません。さすがはデジタル共産主義の国だけあります。
「香港のデモは世界各地で大きく報じられたが、中国ではほとんど伝えられていない。ソーシャルメディア上でも厳しい検閲により、デモに関する話題はほぼ全く見られない状況だ」(WSJ前掲)
何を中国当局は恐れているのでしょうか。それは知れています。
国内でこの香港の反対運動に追随する動きが出て、連動した動きが出ることを恐れているからです。
だから、キャリー・ラム行政長官が仮に動揺しても、習はそれを許しません。
ラム行政長官と習 https://www.afpbb.com/articles/-/3134142
ラムは揺れています。
なぜならこの条例をこれだけの強い反対にあいながら強硬すれば、アジア有数の金融センターとしての地位を揺るがしてしまうからです。
「もし林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官がメッセージを無視すれば、米国や欧州連合(EU)、そして他国の政府は、香港との関係を見直す可能性がある。それは香港と中国両方にとっての損失だ」(ロイター6月10日)
https://jp.reuters.com/article/hongkong-extradition-march-breakingviews-idJPKCN1TC0JC
冒頭に述べたように米国がこれを国際的人権問題だと認定した場合、香港はいままでの「中国とは区別された特別な地域」ではなく、中国の一部として同様の制裁の対象となりえます。
「最悪のシナリオは、米政府が香港の自治が損なわれたと判断することだ。
中経済安全保障検討委員会が5月に発表した報告書は、「逃亡犯条例」の改正案によって、1992年の米国・香港政策法が見直される可能性があると指摘している。この同法は香港を中国本土とは異なる地域として定義しており、これなしには香港は関税やビザ規制などの対象となる。とっぴな話に聞こえるかもしれないが、現在の貿易摩擦のありさまを見れば、絶対にないとは言い切れない」(ロイター前掲)
この可能性は非常に高まったといえます。中国が先述したように強硬突破する構えだからです。
「香港のキャリー・ラム行政長官は10日、条例改正案を進める方針を改めて表明した。改正案の審議は12日に再開される予定。 ただ、中国の専門家は、ラム長官が改正案の成立に失敗したとしても、中国当局が直接介入できると話している」(WSJ前掲)
条例案が可決されれば、仮に香港で条例反対デモで逮捕されば、中国本土へ移送されて中国の政治犯として国内法で裁かれることになります。
今回、日本のメディアは刑事犯引き渡しという部分のみを報じているようですが、真に問題なのは思想犯・政治犯といった非人道的な刑罰の範疇がある国との引き渡しだということです。
日本は世界で米韓二カ国としか犯罪人引き渡し条約を結んでいませんが、それは犯罪人の処遇を決めることは国の主権の一部だからです。
引き渡し要請に従って移送した結果、非人道的な政治裁判をされて処刑された場合、その責任の一端はわが国もあると理解されます。
ですから無条件に引き渡すのではなく、一件一件吟味せねばなりません。その権利を主権国が持つということです。
とまれ仮に否決されたとしても、中国はこの香港の自由の芽を完全に摘み取るまで手を緩めないことでしょう。
この場合、米国は香港の特権的な地位を見直し、「中国の一地域」とみなしますから、金融センターとしての香港がこのまま存続するかどうかはなはだ不透明となります。
反対派にとっての勝機はひとつしかありません。
国際社会の共感を得て、その支持を取り付けることです。
人権の根幹に関わっていると国際社会が認識するかどうか、国際社会が自らの責務として香港人の自由を共に守れるか否かに香港の未来はかかっています。
香港で巨大なデモがありました。
「事件を起こしたあと、香港に逃亡してきた容疑者の身柄を中国本土などに引き渡すことができるようにする条例の改正案をめぐって、これに反対するデモが9日行われ、中心部の道路が埋め尽くされるほどの市民が集まりました。
香港政府は、香港の外で事件を起こしたあと、逃げて来た容疑者について、個別に身柄の引渡し協定を結んでいない中国本土などに引き渡すことができるようにする条例の改正案を議会に当たる立法会に提出し、審議が行われています。
本会議での審議が12日から始まるのを前に、民主派の団体がデモを呼びかけました。
民主派の政党や団体は「中国の当局が事件をでっちあげ、香港で中国に批判的な活動をする人などの引き渡しを求めるおそれがある」などとして、改正に猛反発しています。
集まった人たちは「悪法を撤回せよ」「市民を中国に引き渡すな」などと声を上げています」(NHK6月9日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190609/k10011946611000.html
そのデモの風景ですが、まさに「埋めつくす」という言葉そのものです。主催者発表で103万人、警察発表で24万です。
これは97年の中国への主権移譲以来、文句なく最多です。
スペースをとりますが、あえて縦アングルでアップしておきます。その迫力がお分かりいただけるかとおもいます。
香港の人口は707万1576(2011年現在)ですから、警察発表でも35人に1名が参加したことになります。
ではこれだけの人たちが危機感を持ったのはなぜでしょうか。
身柄引き渡し条約が中国との間で結ばれる可能性が高まったからです。
「条例改正案は香港が中国などの要請に基づき、刑事事件などの容疑者拘束やその身柄を中国への引き渡しを可能とする内容。反対運動が拡大しているのは、条例改正によって、中国の国内法が実質的に適用され、香港の一般市民も中国の治安当局の取り締まり対象になる恐れがあるためだ。
香港の経済界は、自治の後退によって世界の経済・金融センターとして香港のの地位が低下することを懸念。米中貿易摩擦が激化する中、中国と同化が進むことによって香港も対中報復措置の標的となることを警戒している」(産経6月10日)
https://www.sankei.com/world/news/190610/wor1906100014-n1.html
この引き渡し条約が成立すれば、事実上、中国は国内法で香港の人たちを裁くことが可能となります。
たとえば香港には新疆ウイグル自治区の収容所列島化に対して反対する民主活動家がいますが、これは中国国内法では「国家の治安を乱した罪」となってしまい、拘束され短期の裁判で収容所送りとなります。
武装警察の手を逃れた場合でも、容疑者として指名手配され、草の根を分けても探しだされるでしょう。
中国の世界最先端の住民管理システムがものを言うことになります。
ところが、この14億人を「電子の檻」に入れたこの住民管理システムも、ひとつだけ盲点がありました。
それが香港です。
中国公安の追及は香港にまで及ばないのです。香港は、建前上の主権は中国が握っていますが、1997年の旧宗主国の英国との国家間条約で50年間は自由主義経済と民主主義制度を守ることが決められていました。
したがって、米国が米国・香港政策法で規定しているように、中国政府とは分けて捉えられる「別の地域」なのです。
いまでも香港はオリンピックなどに中国としてではなく「地域」として独自参加しています。
香港「地域」旗
従来は、民主運動家が香港住民だった場合や、あるいは香港に逃げ込めば、中国公安のあぎとから逃れることができました。
英国の置き土産の一国二制度で民主主義が保証されていたからです。
香港は香港の刑事法で判断し、拘束するかどうかを独自に判断することが可能でした。
これがこの引き渡し条約が出来てしまえば、不可能になります。
中国には近代的な法制度がありませんから、三権分立などというシャレたものは薬にしたくともカケラもありません。
政治が立法・司法のすべてに優先し、政治とはイコール共産党のことです。
欠席裁判は常態化していますから、仮に被告人が香港人だった場合も、被告人も弁護人がいない法廷で検事が求刑し、即刻裁判官が判決を言い渡してワンラです。
このような欠席裁判を裁判とは呼びません。欠席裁判は、いうまでもありませんが、権力犯罪の温床です。
今回のデモに多く参加したといわれる香港商工人たちにとって、この条約が適用されれば、中国国内の共産党がご都合主義で決めている粗雑な「商法」に抵触した場合、香港に居ても逮捕され、本土に送られることになります。
この条約が成立すれば、中国の法の支配下に香港の自由は置かれることになり、一国二制度は事実上消滅します。
1997年以来、中国共産党は目の上のたんこぶの香港をなんとか骨抜きにしようとしてきました。
50年どころかその半分にみたない時間で香港の自由が骨抜きにされたことを警戒した英国議会は、2016年に一国二制度の検証を要請しましたが、中国から拒否されてしまいました。
中国は英国に香港の民主主義の崩壊の実態を見せたくなかったのです。
この22年間は、自由を奪おうとする中国政府と、自由を守ろうとする香港の住民との闘争の歴史でもありました。
象徴的な事件は「銅鑼湾書店」のケースです。
「以後、香港は真綿で首を絞められるように徐々に自治を失い、「一国両制度」の原則が守られず、言論活動はすっかり窮屈になってしまった。
「銅鑼湾書店」事件では、習近平批判本を連続発行してきた書店のオーナー、社長、従業員ら五人が拘束された。
オーナーはなんとタイのリゾート地で拉致され、中国に連行された。主権侵害、強権政治と、抗議活動が展開された。しかし銅鑼湾書店は閉鎖に追い込まれ、批判の自由は奪われ、銅鑼湾は広報、出版活動の場を台湾へ移管するとした」(宮崎正弘6月10日)
香港言論の大黒柱だった「サウスチャイナ・モーニングポスト」は、現在は中国資本のアリババが最大株主ですし、頑固な自由主義者である頼智英が主宰するリンゴ日報も数々の暴力事件にさらされ、広告主に中国が圧力をかけたために経営的な窮地に陥っています。
台湾もそうですが、大部分のメディアは中国資本の支配下に買収されてしまいました。
https://withnews.jp/article/f0170701002qq000000000
そしてこのような中国の圧迫に反対して立ち上がったのが、香港青年たちによる2014年の雨傘革命でした。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-4aa2.html
デニー知事という人は歯ごたえのない人です。
前任者の翁長氏のようなアクがや渋みがなく、どこまでも軽薄で、深く物事を考えない軽量級の政治家だと思っています。
ですから私も、翁長氏の時のように、批判するにしても全力でもの申す気にはなりませんでした。
翁長氏が亡くなった時には、喪失感さえ感じたものでしたが、反面、今のデニー氏は語る食欲もわきません。
そのデニー氏ときたら、中国には「沖縄を一帯一路の入り口にどうぞ。おじゃまな沖縄漁民は叱っておきましたから」とゴマをすったかと思ったら、今度はロシアを相手にまたやらかしました。
琉球新報 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-902747.html
デニー知事が訪露する数日前の記者会見です。
「また、6月5~9日にロシアを訪れ、サンクトペテルブルク国際フォーラムに参加すると表明。沖縄とロシアの経済交流の拡大を模索するとともに、空手などを通した地域間交流の促進に向けたきっかけ作りが目的と説明した。
ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使からフォーラムへの招待を受けたという。
5月14日付で駐日米大使や在日米軍司令官に送付した「普天間飛行場の運用停止を求める書簡」の中で、「米国は海軍と空軍によって中国、北朝鮮問題に対応できる」と明記した理由では、「県議会でも海兵隊の撤退決議が可決されている。一部専門家も海兵隊不要論を発表している。海兵隊が沖縄に駐留しなくても日米の安全保障体制に支障がないこともあるだろうと考えている」と説明した」
(沖縄タイムス6月1日)https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/426689
このロシアの国際フォーラム」の性格はこのようなものです。
「2019年6月8日からサンクトペテルブルグで開催されていたロシア主催の「国際経済フォーラム」のメイン・ゲストは習近平だった。
プーチンと並んで「貿易は自由であらねばならない。保護主義はよくない」と述べて、自由貿易圏を驚かせる一方で、習は「トランプ大統領とは友人である」と述べ、作り笑いを演じた。
他方、プーチンは日頃の憂さを晴らすかのようにアメリカを名指しで批判し、「保護貿易主義に反対してきた米国が制裁だの、排斥だのと言うのは、時代錯誤だ」とファーウェイの5Gプロジェクトの排除をきめたトランプ政策を批判した。
この席で、派手な政治演出があった。ロシア最大のプロバイダーMTS(モバイル・テル、システム)が、ファーウェイの代表と固い握手を交わし、5Gを採用する正式契約に署名した」(宮崎正弘 2019)6月10日)
要は、ファーウェイと露MTSが制式契約をして見せることが目玉のような、中露の反米総決起集会のようなシロモノです。
こんなものに呼ばれて、「沖縄に海兵隊はいらない」なんて言いながらホイホイ行くんですから、なに考えているのやら。(なにも考えていないんでしょうが)
ロシアから一首長でありながら、正式ご招待を受けたこと自体で、デニー知事がどのような目で中露から見られているのか分かろうというものです。
「おお、我らがタバーリシ( 同志)デニー」といったところでしょうか。
ところでデニー氏の沖縄海兵隊についての現状認識は、こんなレベルです。
辺野古移設が中止されたら普天間が固定化するのではないかという、だれもが思う疑問に答えてこんなことを言っています。
「違う。アメリカが海外の海兵隊を前線から下げると計画している以上、ならば新たな基地を作らずに普天間の土地と権利を所有者へ返せ!と言っている」(2018年9月27日ツイート)
誰に吹き込まれたのでしょうか。軽い人特有の短絡です。
海兵隊はグアムへの移動はとっくに決まっている規定方針で、「前線から下げる」のは第3海兵遠征軍全体ではなく、キャンプ・コトニーにいる司令部要員だけのことです。
米軍にかぎらず、司令部が前線部隊の後方にいることは特に珍しくもなんともありませんので、日米両政府の負担軽減政策の一環としてグアムに移動します。
ただそれだけのことで、いつ普天間やシュワブなどの前方展開基地を撤収するなんて日米両政府が言ったのでしょうか。
政府はこの沖縄海兵隊司令部要員のグアム撤収を踏まえた上で、普天間移設を進めているわけで、「海兵隊が皆んないなくなる予定だから、普天間もいらないんだーい」という理解ではまるで頭の悪い中坊です。
いちおう政府のグアムへの司令部要員の撤収についての見解を見ておきます。
「米軍は沖縄に2万8,000人いるといわれてますけれども、そのうち9,000人の海兵隊が県外に出て行くというそういう状況を出来る限り早く作っていきたい」(官房長官記者会見 2016年8月4日)
これが沖縄海兵隊の9千人移動計画です。
菅氏は沖海兵隊が全体で2万8千人と言っていますが、それは定員一杯の数で(充足率は7割ていどとも言われていますが)、常にローテション配備で、常にあっちこっちに出払っているために、常時沖縄にいる海兵隊員の数は1万人前後と言われています。
司令部移動についての日本政府と米国政府の交渉はとっくに終了していて、グアム移転のためのインフラ整備のための費用は、2012年米会計年度で全体で86億ドルとされていました。
日本政府も、最大31億ドルを負担するという予算措置までしています。
このように日本政府は着々と沖縄基地軽減策に手を打ってきています。
それを悪読みして、「沖縄から海兵隊を撤収させる計画がある」というタチの悪いデマを飛ばしていたのが、いま国会議員をやっている元宜野湾市長当時の伊波洋一氏たち「オール沖縄」陣営でした。
デニー氏の「前線から下げる」から普天間はいらない」とする発言は、このヒダリの人たちの常識をそのまま言ったにすぎません。
このていどの認識に立って、辺野古移設阻止・普天間返還とやるのですから、たまらんなぁ。
さて、デニー氏はこんな海兵隊不要論を引っさげて、訪露したわけですが、直ちにすんばらしい反応がプーチンその人から返ってきました。
「【サンクトペテルブルク共同】ロシアのプーチン大統領は、沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題を念頭に「地元住民や知事が反対しているのに建設が進んでいる」と指摘。日本の他の地域でも米軍施設が建設され、ロシアの安全保障に影響する恐れがあるとの懸念を示した」
(共同6月6日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190606-00000215-kyodonews-int
打てば響くようなプーチンのリアクションです。
デニー氏がロシアでこのテのことを言ってしまったという報道はありませんが(あれば大問題ですが)、かねがねデニー知事という駒をどう使うか、中国だけの独占にしておくのはもったいない香ばしいキャラだと考えていたプーチンが、これに飛びついたようです。
プーチンからすれば、北方領土を返還すれば、米軍が日米同盟に従って駐屯することを恐れています。
これがロシアがグダグタ言って引き延ばしている最大の原因です。
仮に米軍が監視部隊でも置くことなると、クリル諸島からオホーツク海にかけての軍事バランスが一気に崩れることとなることを危惧しています。
実際は米軍進駐計画はないし、日本はしないと明言していますが、ロシアの返さない口実に使われています。
こういう時に、日本のもう一方の扉である沖縄で、反基地運動に尻を押されて当選した知事が、「沖縄に海兵隊はいらない」と言ってロシアに来るというのですから、ロシアにとってこれほどおいしい話はありません。
もちろん駐日ロシア大使はそれを期待して、フォーラムに招待したのです。
そこでプーチンは、直ちにこのデニー発言をまんまと利用して、北方領土交渉のハードルを高くする一方、ロシアとはなんの関係もない辺野古移設まで口を突っ込むという一粒で二度おいしいことをしたのです。
今後、北方領土交渉において、ロシア側が移設問題をテーブルに出したら、デニー氏はどうするつもりなのでしょうか。
いずれにしても、訪露直前にこんな「沖縄海兵隊不要論」を言えば、このように政治利用されるに決まっているではありませんか。
こういうことをペラペラしゃべり散らして、移設問題を更にこじらせただけではなく、北方領土交渉まで難しくさせてしまった利敵行為は許すわけにはいきません。
こういうことを後先を考えずにやってしまう、デニー氏の幼稚さがたまりません。
韓国に対する外交スタンスが政府内で乱れているのではないでしょうか。
韓国との直接の対応窓口は、現時点でふたりです。ひとりは河野外務大臣、いまひとりは岩屋防衛大臣です。
そして衆目の見るところ、この舵取りをしているのは、他ならぬ安倍首相自身だと言われてきました。
だとすれば、先日のシンガポールにおけるシャングリラ会合での韓国防衛大臣との非公式会合の「手打ち」は一体どう解釈すればいいのでしょうか。
まずは鬼の首をとったように「オレらの言い分をキッチリ言ってやったぞ。日本は折れてきたゾ」と喜ぶ韓国中央日報の記事です。
「チョン長官はこの日の会談を終えた後、記者たちと会って、「日本の防衛相と日韓の防衛協力についてよい会談となった」とし「哨戒機近接脅威飛行関連しても虚心坦懐に率直な意見を交わした」と述べた。そして「これから両国が緊密に協力しながら、今後このようなことが再発しないように発展させていこうのに意見を一致させた」と説明した。
この日の会談でチョン長官は、岩屋防衛相に韓国艦艇の射撃統制レーダー照射について明白な根拠があることを説明した後、日本哨戒機の飛行のための国際法遵守を強調した。問題の本質は海上自衛隊の哨戒機による近接脅威飛行形態にあるという理由からだ。
チョン長官は続いて「韓国と日本は、隣接する友好国として国際社会で起こるすべてのことについて緊密に協力して協力をする必要がある」とし「協力して発展させてべきという意見の一致を見た」と話した」(中央日報6月1日 写真も同じ 楽韓様和訳による)
なんですか、こりゃ。
こういう記事を韓国側に書かれるに決まっているから、そもそも日韓直接会談なんかこの時期にするべきではなかったのです。
もちろん岩屋氏も日本側の主張を言うには言ったのでしょうが、韓国紙はサラリと流してしまっています。
NHKがわずかにこう書いているだけです。
「この中で岩屋大臣は、レーダー照射問題について、「自衛隊機の飛行の在り方は適切だった」と述べ、再発防止を求めたのに対し、チョン国防相は、事実関係を認めない従来の姿勢を崩さず、主張の隔たりは埋まりませんでした」(NHK6月1日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190601/k10011937711000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002
そりゃあなた、「隔たり」なんか埋まるはずがありませんよ。埋まったら奇跡です。
なぜなら、韓国にとって事実は問題ではありません。
一体なにが起きたのか、その原因はなんだったのか、どう解決したらよいのかという、通常トラブルが生じた場合に二国間でとるべき発想そのものが欠落しています。
韓国にとって、自分の側の「事実」だけが唯一絶対の真実であって、それがほんとうの事実とは食い違っていたなら、事実のほうが間違っていると考えるのです。
たとえば空飛ぶ円班が目の前に降りてきても、「宇宙人はいないのだから、目の前に円盤があるほうが間違っている。これは夢だ」と叫ぶようなものです。
ま、眼を開けてもそこにいるんですがね。
このレーダー照射事件の後に、いきなり「自衛隊機が危険な接近をしてきたのが原因だ」といいだして、下の画像のような覆いがぶさらんばかりの超低空飛行をしている合成写真まで作りました。
これをご丁寧にも、12カ国語バージョンまで作って世界に流布させたのですから、イガンジルもここまでくると、まことに恥を知らないというか、手がこんでいることよ、とおもわず感心してしまいました。
もちろん、韓国海軍は原因はわかっています。いちおう、ああ見えても軍事テクノクラート集団ですからね。
誰がレーダー照射を命じたのか、日本機がおおいかぶさってきたから照射したのか、否か、そんなことくらい調べるも調べないもありません。
そもそも朝鮮半島海域から遠い日本のEEZで海軍が何をさせられていたのか、海軍上層部が知らないわけがありません。
それを国防省が、嘘に嘘を連ねた反論をするのですから、海軍の現場も少しは恥ずかしかったのではありませんか。
元海将・伊藤俊幸氏は、海自と韓国海軍が現場同士のバックチャンネルを持っていることを述べています。
想像以上に仲がいいようです。
防衛大学で学んだ韓国海軍将校も多くいますし、いままでなにかと現場交流を重ねてきた歴史があるからです。
伊藤氏は、韓国海軍は恥ずかしくて顔もあげられないだろうと言っていましたが、でしょうな。
そのうち何か現場情報が漏れてくるかもしれませんので、楽しみにしていましょう。
それはさておき、下は韓国国防省の反論動画に出てくる画像です。
実際の韓国艦艇との距離は国際ルールに基づいていて、このようなものでした。
https://trafficnews.jp/post/82525
しかし、韓国人の心証に写ったのは上のほうなわけで、いかに海自がフライトレコーダーの記録を出してもムダなのです。
どこまで行っても韓国は「思いたいように思う」わけで、いまの国際情勢も過去の歴史も同じ発想でぶった切ってきました。
これは最強ですなぁ。
だって事実とは無関係に、常に真実は我が方にありと思えるんですからですから、負けっこないやね、これは。
一方、和をもって尊しとなす民族は、すぐにあやまらなくてもよい場所で頭を下げて場をなごやかにし、そこから話し合いをするなんて「悪習」がありますが、こと韓国だけにはこれをやったら負けです。
ああ、なんてめんどくさい人たち(苦笑)。
今回のレーダー照射事件などは、慰安婦問題や「徴用工」問題という歴史認識が絡むテーマとは違って、韓国政府がどういう言い逃れをするか、どう事実をつごうよく歪曲して、開き直っていくのか、果てはこちらに謝罪を求めるてくるという白黒反転を平然とやるのか、について素晴らしくいきたお手本を見せてくれました。
嫌韓うんぬんではなく、この事件で韓国がいかにヘンかが肌身で理解してしまった日本人は多かったことでしょう。百の説法よりひとつの事件です。
だから大方の日本人は現在の政府の、対話するには早すぎるという現状認識に賛成したはずでした。
改めて確認しますが、日本政府の対韓外交の基本は、この「原則貫徹・対話拒否」です。
ですから河野外相は韓国外相とは、おおよそ「友好国」同士の会談とは思えないようなハードな言い合いをしたわけです。
そして来るG20でも、唯一ムン・ジェインとだけは首相は面談しないという対応も示しました。
つまり日本政府は、約束を平然と破って条約は一方的に廃棄するわ、慰安婦合意はちゃぶ台返しするわ、果ては軍事的挑発までする韓国に対して、「信頼関係自体が崩壊しています。こんな時になにを話あっても無駄ですから、そちらの頭が冷えるまで待ちましょう」と言ってきたわけです。
そこに飛び出したのが、今回の岩屋防衛大臣の今回の「手打ち」事件です。
この人はワセダの弁論部出身なくせに、説明能力がありません。
先日の宮古への部隊配置で揚げ足を取られた時も、唯々諾々と反対運動側の主張に応じて、弾薬庫を撤去してしまいました。
弾薬庫がない駐屯地という、世界で唯一の国境の防衛部隊とあいなってしまったのですから、有事が起きた場合、島民や自衛官の生命はどうやって守るのでしょうか。
無能は害悪だとつくづく思います。バカな上司は、現場を危険にさらすからです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190602-000000
今回も岩屋氏は同じ轍を踏んでいます。
いままで2回の実務者歓談でなんの進展もなく平行線だったのですから、放っておけばよかったのです。
おそらく、米国からの一定の圧力があって、シャングリラ会合で日韓防衛大臣を開くことにしたのでしょうが、日本はこれは二国間問題だとはねつけるべきでした。
「また「隣接した友好国として、国際社会で起こっているすべての問題について緊密に協力する必要性がある。両国関係が改善できるよう積極的に努力していく」と述べて、北朝鮮問題をはじめさまざまな問題で連携することを確認したとみられます。
これについて韓国の連合ニュースは「出口のない攻防戦を繰り広げ、防衛協力を全面的に中断してきた両国が、少なくとも対話と交流正常化に向けた糸口を確保したと評価される」と肯定的に伝えています」(NHK前掲)
結果、いつのまにかこの会談が、韓国メディアが言うように「対話と交流正常化に向けた糸口を確保した」と理解されることになってしまいました。
ここで岩屋氏などという無能の人にではなく、むしろ安倍氏に聞きたいのですが、ならば、G20ではムンと面談して「対話と交流正常化」を約束するのですね。
中国という国は決して外交が上手とはいえない国です。
特に状況が悪くなればなるほど、おいおい大丈夫か、また悪手かよ、ということを繰り返すようになります。
たぶん、日本のヒダリの人たちと一緒で、彼らの価値観は一にも二にも党内権力闘争にあるからです。
勝てば他党派の息の根を止め、負ければ今度は自分が豚の糞掃除に励むとなります。
なにせ、中国の場合、ほんとうに命がかかっていますから、彼らの力の8割はこれに費やされますから、余力で外国に対応しているというところです。
今回もしかりです。米国に負けて要求を呑んでしまえば、他の党内派閥からこの日和見主義者めとクソミソに批判されて、下手をすると権力の座から引きずり下ろされかねません。
ですから米国への対応は、イヤでもつっぱったゆとりのないものにならざるをえないのです。
さて、今回、中国は「オレを甘く見んなよ」とすごんでみせました。
「5月29日付の中国共産党機関紙「人民日報」が第3面の「国際論壇」のコーナーで、「アメリカは中国の反撃能力を甘く見るな」という見出しで、「勿謂言之不預」という言葉を用いた。
これは直訳すれば、「警告しなかったと言うこと勿(なか)れ」だが、平たく言えば「中国が警告しなかったとは言わせない」となる。
中国が本気で戦闘を開始する前に「開戦警告」ときには「開戦宣言」として使われてきた常套句だ」(遠藤誉 6月6日)https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20190606-00129067/
遠藤氏は、中国が「勿謂言之不預」(警告しなかったというな)という人民日報の一句を、事実上の中国による米国に対する 「開戦宣言をした」という見立てのようです。
遠藤氏は1969年の中印国境紛争時や、1978年の中越戦争を例にとっていますが、相手がまったく違います。
強力な軍隊をもつインドが相手だとはいえ、たかだか高山の国境線をめぐる紛争にすぎなかったケースや、まちがっても負けるはずがないとタカをくくって侵攻したあげく戦争馴れしたベトナム軍に追い返された2回目と、今回の米国とは格が違います。
同じ「警告しなかったとはいわせない」という決めゼリフを吐いたからといって、前例と並べるべきではありません。
遠藤女史は、狭い意味の軍事衝突ではなく、「本気度」のことだと注釈を入れていますが、中印、中越と並べるから誤解を招くのです。
言いすぎたと思ったのか、文末で氏は「戦争はしない」と書いてはいますが、これもまたどうでしょうか。
戦争は中国が望まなくても、偶発的に始まってしまう場合もあるし、米国が先に中国に一発目を撃たせるように仕向けて来る場合すらあるのです。
だから後述する弾道ミサイルの発射のような軍事的緊張を高めるようなことは、この緊迫した状況下では厳に慎むべきです。
米国が経済戦争の隠し味にしているのは、米国の太平洋艦隊とグアムの空軍力です。
今回、トランプが米海軍が嫌がるのを承知で、母港の佐世保から横須賀に回航して「かが」と並べ、日米両首脳がそこに降り立つというパーフォーマンスをした相手は、北などはどうでもよく、直接に中国に対する外交メッセージでした。
一方、中国もまたその返答として、6月2日に新型SLBMを発射してみせました。
https://www.litenews.hk/%E3%80%90%E8%BB%8D%E4%BA%8B%E7%89%B9%E7%A8%BF%E3%80%91william%EF%BC%9A%E5%B7%A8%E6%B5%AA3%E5%9E%8B%E5%AF%86%E9%9B%86%E8%A9%A6%E5%B0%84%E6%89%80%E9%80%8F%E9%9C%B2%E7%9A%84%E8%A8%8A%E6%81%AF/
中国が「新型SLBMという以上、配備済みのJL-2(巨浪2)ではなく、JL-3(巨浪3)ではないかと見られています。
ただし、今回の新型と称するJL3の飛距離は、推定で水平距離にして2000キロとされています。
これでは旧型のJL2の射程が7200キロあるのですから、かえって短くなっています。
ポンっと垂直に打ち上げるロフテッド軌道の可能性もありますが、なぜ短くなってしまったのか分かりません。
失敗した可能性もあります。
核戦力は、一般的にICBM、空中発射ミサイル、水中発射弾道ミサイルの三枚が揃わないと役に立たないと言われています。
中国は、この3枚目の水中発射弾道ミサイルが苦手です。
JL2は射程が短く、それを載せた原潜は、日米の哨戒機が常時パトロールしている日本海北部まで進出しないと、米本土には届きません。
おまけに、この米国を狙う核ミサイルを搭載した094型原潜は、2015年12月から核抑止パトロール航海を行っているとされますが、そのあまりの騒音のひどさは有名で、「ドラを鳴らして奴が来る」と揶揄されているほどです。
秘匿性がない潜水艦は潜水艦とは呼ばれません。
094型原潜
では、どうしたらよいのかといえば、自分のホームグランドの周辺海域でジッと息をひそめて動かないことです。
そのためには射程が1万2000キロ~1万5000キロの水中発射弾道ミサイルが必要です。
これがないことには、仮に習が切れて米国への核攻撃を命じた場合、第1撃の地上発射型ICBMは発射できても(ほぼ完全に米国のミサイルディフェンスで撃墜されるでしょうが)、直ちに米国の報復核攻撃を全土に浴びることになります。
そうならないためには、そうそう簡単に日米の哨戒機に捕まらない場所に、第2撃を隠しておかねば、ほんとうの核抑止力となりえないのです。
煎じ詰めていえば、完全な3枚の核戦力のカードを持っている2国間が対峙しているケースだと、共に滅びてしまうために戦争にはなりません。
この戦争は通常兵器の戦争も含めてです。
旧ソ連と米国との関係がこれでした。現代でこの拮抗関係が世界で唯一成立しているのは、米露関係だけです。
結局、体力勝負となって、冷戦は一発の弾丸も交えずにソ連が敗北したのです。
しかし一方だけが完全な3枚を持っていても、片方が2枚しかもっていない場合、片方は生き残るが、片方は滅びてしまうことになります。
このケースの場合、通常兵器も核戦争も起きる可能性がありえます。
しかもミサイルディフェスが高度化した現在は、この非対称性は高まる一方なのです。
この片方だけが滅びるケースが、現在の米中関係、あるいは米朝関係です。
この場合、前者とは違って、通常兵器の戦争を含めて戦争はありえます。
核戦争という歯止めがないからです。
皮肉にも核兵器は、大国間の通常兵器の戦争をも封じ込める「ピースキーパー」(米国のICBMの名称ですが)として機能したからです。
逆に言えば、この相互確証破壊の考え方に沿えば、いくつかの条件が整えば米中戦争は起きてしまうことになります。
中国には、前述したように、この相互確証破壊の3枚のカードが揃わないからです。
したがって、仮に米中間で偶発的に戦闘となっても局地的戦闘で終結し、本格的な核を用いた全面戦争には発展しないという担保がありません。
ですから、中国は米国に向かってキャンキャン吼えることはできても、本当に戦争を構えられないのです。
戦争というこん棒を持たないのに「警告は言った」とイキがっても、あんたバカですかと言われるだけです。
にもかかわらず戦争に踏み切れば、遠藤氏がいうように、こういうことになります。
「中国が今、武器を使った戦争をアメリカとなど出来るはずがなく、もし武器を使った戦争などをしたら、現状で言うならば、「100%!」中国が敗けるのは明白だ。だから中国が「武器を使った戦争」をアメリカとなどやるはずがないし、またそのようなことをすれば一党支配体制崩壊につながるので、さらにやらないと断言してもいい」((遠藤前掲)
そのとおりです。戦争になった場合、中国の勝機はかぎりなくゼロです。
通常戦争でも勝てませんし、核戦争ではなおさら勝てません。
だから、正面戦で勝てないから、61398部隊と呼ばれるサイバーアタックに特化した独立軍やファーウェイを使って搦手から混乱をさせようと狙っているのです。
いま中国がしていることは、米国の同盟国を恫喝して回ることや、フォードに罰金をかけたような米国企業への嫌がらせ、あるいはファーウェイとの関係を切った企業のブラックリスト作りていどすぎません。
レアアースはいかにも切り札のように報じられていますが、それは10年前に日本の尖閣国有化の時にやったでしょうに。
一時的には価格が高騰しますが、中国製以外にも入手可能であり、需要が満たされればたちどころに暴落して、自らの首を締めることになります。
どうして側近たちはこんなわかりきったことをこと習に教えてやらないんでしょうか。
習はとっくに裸の王様になっているのかもしれませんね。
これらの水中発射弾道ミサイル実験、米国企業への不当な締めつけ、レアアースの禁輸措置などは、ことごとく悪手です。
やればやるほど、確実に米国にさらなる報復措置の理由を提供しているにすぎません。
しかもこの対中強硬方針は、日本のメディアの報じ方のようにトランプが独断でやっているわけではなく、議会も全面支持しているのですから、逃げ場なしです。
老婆心ながら中国に忠告すれば、恥も外聞なくここは柔軟な譲歩をすることです。
妥協する以上、前回の米中合意文書を丸呑みする以外ありません。
悪知恵をつければ、実施段階でサボタージュしてグダグダにすればいいのですから(得意でしょう、こういうの)、文書の3分の1を削除しろなどというようなちゃぶ台返しはやるべきではありませんでした。
これで決定的に米国を怒らせて報復の口実を作ってしまったのに、今度はさらに勝つ戦略もないのに「警告は発した」ですか。
中国さん、拳をふり上げるのは簡単ですが、握った拳を下ろすほうがよほど難しいのですよ。
こんなに状況が悪化したのは、党内の敵対派閥が恐ろしくてエスカレーションゲームを下りれない習の弱さに起因します。
ですから、この「警告」うんぬんの台詞は、中国の対外パーフーマンスにすぎず、国内向け、いやもっと狭い党内向けにすぎません。
トランプさんの外遊は続いています。今度は英国です。
米英は、世界の国数あれど「特別な関係」(Special Relationship)と呼びならわされててきました。
このスペシャル・リレーションシップという表現は英国首相のチャーチルが、冷戦の開始を告げたフルトン演説で使ったのが初めと言われています。
この両国が、ただのアングロサクソン族つながりではないことを知るために、押えておきます。
"Neither the sure prevention of war, nor the continuous rise of world organization will be gained without what I have called the fraternal association of the English-speaking peoples.
This means a special relationship between the British Commonwealth and Empire and the United States of America."
私が英語を話す人々の間の友愛による連帯を呼ぶものなしには、戦争の確実な防止や世界組織の継続的な立ち上がりは得られません。
これは、英連邦と帝国とアメリカ合衆国との特別な関係を意味します。
http://www.kyoritsu-wu.ac.jp/nichukou/sub/sub_gens...
いきなり「英語を話す人々」ときました。これでもチャーチルは気をつかっているのです。
ほんとうはアングロサクソンと言いたかったのでしょうが、これからソ連相手に鉄のカーテンを張ろうという時に、うかつにそんな言葉を使えば、ソ連の下腹であるトルコはイスラム、その先のギリシアはギリシャ語、アジアで太平洋に立ちふさがる日本は日本語、東側と国境を接するドイツはドイツ語ですから、なんだ自由主義同盟はアングロサクソンのものかということになってしまいます。
当時、英国は第2次大戦を、大西洋を超えた米国の支援でどうにか戦勝国に滑り込みましたが、続く冷戦を一国で戦う気力体力も尽き果てていました。
そこで出てきたのが、この米国に向けての「英語を話す人々」の同盟で冷戦を戦おうや、という言葉です。
では、このアングロサクソン同盟の中軸である米英が、ずっと仲がよかったのかといえばそんなことはありません。
そもそも大喧嘩して当時世界最強国家だった大英帝国をおん出たのが始まりで、以後米英戦争では英軍にホワイトハウスを焼かれたりしています。
なまじ同じ英語国民だけに腹が立つ、という同族嫌悪といったほうが近いのではないでしょうか。
アングロサクソン同盟が言葉化されたのは、第2次大をはさんだこの冷戦期が最初のはずで、米国もソ連との大喧嘩の真っ最中でしたから、「そうそうオレらは特別な二国間だかんね」、というふに調子を合わせてくれました。
ただし、細谷雄一氏は「『特別な関係(the special relationship)』という概念は、とても問題がある。というのも、一般的にはそれは、より力の小さい国がそれを必要としているからだ」(『米英関係とアメリカ外交―「特別な関係」の歴史と実際』)と述べているように、この「特別な関係」はより国力の小さな英国が遥かに巨大な世界の覇者たる米国に対してよく使う表現なのです。http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/h22_nichibei_kankei/08_Chapter1-6.pdf
この両国間は、基本的には細谷氏の指摘のように常に非対称であって、イコールパートナーではありませんでした。
というか、この表現自体が登場したのが大英帝国衰退期であって、「七つの海の支配者」を懐かしむノスタルジーの香りがプンプン漂っているのです。
かといって、今でもアングロサクソン同盟とでもいうべきものは隠然と存在します。
先日記事にした「ファイブアイズ」、つまりは5ツの情報共有グループは、米・英・加・豪・NZという英語圏だけで構成されていました。
フランスやドイツ、そして日本は、プラス3という形で付け足されているにすぎません。
NZはちいさな島国ですが、英語国家であることで、ファイブアイズに加わっています。
前置きが長なりました。トランプの訪英でしたね(汗)。
ホスト(いやホステスかな?)は1週間後辞めると言っているテリーザ・メイ首相ですから、よりもよって辞める人相手をナニを話しても無駄だとは思うのですが、まぁとっく行くことが決まってたんでしょうね。
現在、米英関係は良好とはいえません。降雨確率80%といったところです。
なにせ野党は来るなと言っていました。
野党であったとしても日本とは違って「政争は水際まで」が徹底している労働党までが、反トランプデモをしたのですからシャレになりません。
労働党は女王主催晩餐会に欠席し(ありえない非礼ですが)、左派出身のコービン党首は下の写真のようにデモにまで参加しています。
労働党は日本の野党諸雑派とちがって、政権党になる可能性もじゅうぶんあるわけですから、いいんですかね、こんなことやったら首相になったらさぞかし米国と気まずいと思うんですが、ま、とっくに気まずいからいいのか(苦笑)。
実はトランプも負けてはおらず、他国の最大野党の党首のコービン党首をつかまえてクソミソに言っていますし、イスラム系のロンドン市長までやり玉に上げていますから、内政干渉もいいところで、どちらもどちらです。
https://www.afpbb.com/articles/-/3228453?pid=21337...
ところで、英米両国は次の4点を巡って完全に物別れ状態です。
①ファーウェイ5Gネットワークの英国参入問題
②英国のEU離脱交渉とその後の英米貿易協定
③)米国のイラン核合意廃棄問題
④気候変動問題
①のファーウェイ排除は部分的だと英国国防相がリークしてしまい大騒ぎになったように、英国は既にファーウェイに5G基地局工事の一部を発注してしまっています。
シティの金融業が主力産業の英国にとって、中国は下にもおかないお客様で、チャイナマネーとのねっとり、かつ隠微な関係は強固に続いています。
いまさらファーウェイ止めろと言われてもねぇ、というのが英国の本音のはずです。
②のEU離脱については、トランプはとうぜんのこととして反EU断固支持立場で、ブレグジットもっとやれ、とことんやれ、米英でFTA作ろうぜ、と檄を飛ばしています。
トランプに応援されているのがボリス・ジョンソンで、合意なき離脱もかまわんからさっさと離脱しろと叫んでいますが、もちろん具体策があるわけでもなく、自分が首相にでもなったらメイさん以上にふざまなことになるのは必定です。
③のイラン核合意に関しては英国はまぁまぁとなだめるしかできず、フランス・ドイツなどの他のヨーロッパ諸国とも絡んでくることなので、そうそう簡単に米国の尻馬には乗れません。
これは④の温暖化対策も同じことで、EU全体で結んだ協定な以上、ブレグジットかどうなるのかわからない現状では英国の発言権はなきが如しなのです。
つまりは、両国間にとっくに解決済みの貿易問題ていどしかない、いわば降雨確率10%以下の日米関係と違って、新味のある回答を出せる状況に英国はありません。
お気の毒、メイさん。イヤな時に困った奴が来たと内心思っていたでしょう。
とリあえず女王陛下がいたからとりつくろえたわけで、持つべきものは王室です。
皇室(王室)がいかに大きな外交資産かわかりますね。
このように見ると、トランプにとって安心して頼れるパートナーは、日本しかないとわかるでしょう。
こんなくったくない笑顔ができるのも日本だけかも。
ここまで良好だとかえって気味が悪いくらいですが、とまれ、英国に代わって今やスペシャル・リレーションシップなのは我が国なのです。
1989年4月、100万人を超える学生や労働者たちが民主化を求め、北京の天安門広場を占拠しました。
民主化デモは、約1カ月半にわたって続き、北京だけではなく中国各他の都市や大学にも拡大しました。
彼らの要求は、共産党による独裁体制の打倒、言論結社の自由、インフレ対策の実施、賃金の上昇、住宅事情の改善などでした。
これを弾圧することに決めた共産党は、1989年6月3日夜、天安門広場に軍の戦車と部隊を出動させました。
これは地元の軍ではなく、遠くの地区から連れて来られた「よそ者の軍隊」でした。
彼らは、4日の朝にかけて丸腰の市民に向けて無差別の発砲を繰り返す、という大量虐殺事件を引き起しました。
これは正規軍が無辜の自国民に銃を向けた事件でした。
その虐殺数は記録に残られておらず、幅がありますが、数百から1万の間だと見られています。
「英国で新たに公開された外交文書によると、中国当局が民主化運動を弾圧した1989年の天安門事件で、中国軍が殺害した人数は少なくとも1万人に上ると報告されていることが明らかになった。
「1万人」という人数は、当時のアラン・ドナルド駐中国英国大使が1989年6月5日付の極秘公電で英国政府に報告した。大使は、「中国国務院委員を務める親しい友人から聞いた情報を伝えてきた」人物から入手した数字だと説明している。
国務院は中国の内閣に相当 し、首相が議長を務める。
天安門事件の死者数はこれまで、数百人~1000人以上と、様々に推計されていた。」(BBC2017年12月26日)
https://www.bbc.com/japanese/42482642
中国治安当局は後日、発砲による死者はゼロだと主張しましたが、それを信じるものはひとりもいません。
それどころか、この事件をないものとして葬りました。
いまだにこの事件に関わる出版物、外国のネット情報はブロックされており、中国国民のほとんどはこの事件自体を知りません。
さて、ニコラス・クリストフの事件25周年にあたってのコラムをご紹介します。
これが1989年6月3日の夜、に起きた中国軍による自国民虐殺の夜の出来事です。概説よりもより心に響きます。
ニューヨークタイムスの北京支局長だったクリストフは、第2次天安門事件(六四天安門事件)に関する報道で、1989年のピューリッツア賞を受賞しました。
私はクリストフがこのコラムで書くような、経済の発展が中産階級を生み、彼らが民主化を求めていくことによって、一党独裁国家からゆるやかに民主国家に生まれ変わっていくとする考え方は、残念ながら幻想だと思っています。
一般的には、多くの国はそのコースを辿りましたが、中国は世界唯一の巨大な例外として変化を拒んでいます。
それはあの事件から30年間変わらなかったし、今後30年間変わらないかもしれません。
なぜなら、飯がたらふく食える間は民主化要求は二の次にされるからです。
そして今や中国共産党は、ジョージ・オーウェルが描く「1984年」もかくやと見紛うような超管理社会を作り出しました。
ビッグブラザーたる中国共産党は、30年前のように人民解放軍を使うことなく、ITによって14億人を支配できると考えています。
唯一の民主化の「希望」が残るとすれば、経済が右肩上りの発展を止めた時に、どうなるかです。
その意味で、米国が仕掛ける経済戦争は、米国による「民主化要求戦争」の側面も持っています。
「フランスの田舎から世界を見ると土野繁樹の21世紀探訪」様から転載させていただきました。ありがとうございます。写真は引用者がいれたもので、改行を施しています。
わたしが生きている限り、決して忘れない光景がある、それは、戒厳令軍に撃たれた重傷の学生を病院に運ぶ、人力車の車夫のほおから流れていた涙である。その人力車の車夫は勇気のある人だった。わたしより上等な男だった。
1989年6月3日の夜、われわれ(外国人記者とカメラマン)は天安門広場に隣接する長安街にいた。中国人民解放軍は学生の民主化運動を粉砕しつつあった。
あの夜、解放軍はまるで外国軍のように首都周辺の各所から北京に侵攻し、動いているものはかたっぱしから標的にした。天安門広場からはるか離れた場所で、わたしの友人の弟は自転車に乗って職場へ向かう途中で射殺されている。解放軍の侵攻がはじまると、わたしは自転車に飛び乗り天安門広場へ駆けつけた。長安街では学生を守ろうとする群衆が撃たれた。
6月4日未明の惨劇のなかで、最も英雄的だったのは人力車の車夫たちだった。いつもは、彼らは三輪自転車の荷台に品物をのせて運搬するのだが、その夜は射撃が停まり次の射撃が始まる前に、彼らは兵士がいる方向に人力車のペダルを漕ぎ、殺された学生と傷ついた学生を拾い上げていた。
学生の遺体と負傷した学生を収容しようとする救急車にも、兵士たちは情け容赦なく銃撃していたが、車夫はそれをもろともせず救出作業を続けた。彼らの勇気ある行動は、わたしの心を激しく揺さぶった。
なぜなら、その春、外国人と中国人官僚から「民衆の教育レベルも洗練度もまだ十分ではない中国では、まだデモクラシーは機能しない」と繰り返し聞かされていたからだ。
わたしが目撃した一人の車夫のことを、いまでも鮮明に覚えている。Tシャツを着たたくましい体格をしたその人は、高校卒でさえなかっただろう。だが、なんという勇気の持ち主であったことか。彼は倒れている若い男の方に向かった。
わたしは彼が射殺されるのではないかと思い、息を呑んでその姿を見ていた。彼は若い男の体を抱えて荷台に置き、ペダルを踏んで生きたままわたしたちの所に戻ってきた。彼のほおには涙が流れていた。
その人は外国人であるわたしと目を合わせると、三輪車の向きを変えゆっくりとこちらの方に近寄ってきた。わたしに政府がやったことの証人になってもらいたかったからだ。その夜の体験は戦慄すべきものだったから、彼の言葉を正確には覚えていない。
しかし、彼が言いたかったのは、あなたはここで起こったことを世界に伝えるべきだ、ということだった。その人はデモクラシーを定義できないかもしれない。しかし、彼はデモクラシーのために命を賭けていた。
中国が過去4半世紀で巨大な進歩を遂げたこと事実である。収入は飛躍的に増え、住宅環境も向上した。人力車の車夫だったあの人には選挙権はないが、彼のこどもは大学に通っているかも知れない。その進歩は議論の余地がない。
しかし、人間の尊厳はライス(パン)だけでは保たれない。人権をも必要とする。中国の偉大な作家、魯迅は「筆で書かれた虚言は、血で書かれた事実を隠すことはできない」と言っている。
中国の繁栄が続き、教育ある中産階級社会になると、彼らは政治参加への要求を強めるだろう。わたしはポーランドから韓国まで世界のデモクラシー運動を取材してきた。その体験からすると、いずれ天安門広場であの夜殺害された人々を追悼する式典が行われるだろう。
わたしはそれを確信している。そして、その式典の記念に人力車夫の像が建てられることを願っている。
このところ、中国が尖閣水域に公船を大量に入れているようです。
この中国海警の侵犯行為は、4月中旬から始まり、トランプが来日した5月25日まで実に44日間連続し、滞在中の3日間も延々と更新し続けています。
この記録は、それまでの最長記録だった、 2014 年9月の43日連続記録を上まわる、史上最長のものです。
中国海警察のHPには「尖閣諸島は我が領土」と主張するページがあり、尖閣諸島に接岸せんばかりの距離を航行する公船の写真も紹介されています。
彼らにとっては「領海侵犯」ではなく、れっきとした自国の「パトロール」なのであって、中国海警は海保が接近すると「ここはわが国領海である。貴船は領海を侵犯している。即刻退去しなさい」と警告しています。
盗人猛々しいというか、なんともかとも。
中国海警局HP
さて、この中国公船(←中国語)の連続侵犯が、トランプ訪日前に活発になったことに注目下さい。
今回のトランプ訪日が「観光旅行だった。安倍はツアーガイドか」などと浅いことを言っている人もいるようですが、5月28日にトランプが安倍首相と共に護衛艦「かが」に乗り込んだという意味が分かっていないようです。
産経 https://www.sankei.com/politics/news/190528/plt190...
もちろんこれは「観光」で行ったわけではありません(あたりまえだ)。
この時、米国はあえて佐世保を母港とする強襲揚陸艦「ワスプ」を横須賀に回航して「かが」に並べています。
この日米両海軍(海自は軍隊ではないなんてヤボはいいっこなし)の最新鋭のF35Bを運用しうる2隻の大型艦艇が、米国の東半球最大の根拠地である横須賀軍港で揃い踏みしたことになります。
しかも5月27日です。
この日は、米国(東部時間)にとって戦没将兵メモリアルデーにあたり、さらに世界の海軍関係者にとってあまりにも有名な記念日でした。
忘れているのは日本人だけです。
この5月27日は、104年前の1905年、日本海軍が対馬沖でロシア・バルチック艦隊を迎え撃ち、パーフェトゲームで壊滅させた日です。
この日本海海戦は、世界の海軍士官学校の教科書に載っていて、海軍関係者で知らなければモグリです。米国のメモリアルデーと重なったのは偶然ですが、この5月27日に米海軍が海外に擁する最大の軍港において、両国首脳が手を携えて日米海軍の最新鋭艦に乗艦するという行為が、偶然なはずがありません。
直球で中国に対して、なめたまねすんじゃねぇぞと言っているわけです。
当然、これがわからぬ日本の野党やメディアとは違って、習は鈍くありませんから、訪日スケジュールに合わせて、日本の尖閣諸島海域を荒らし回ってみせたわけです。
八重山日報 尖閣諸島に出漁した仲間均市議の漁船を追尾する中国公船「海警1501」=5月24日午前(仲間市議提供)
日本にもこの国際常識がわからない国境の首長がいます。デニー知事です。
デニー知事は、自分の行政管轄水域に外国艦船が実に40日以上も荒し回っていることに対して、漁民のほうに「刺激するんじゃない」と言いました。
本来、普通の知事に言ったらあたりまえのことを言うなと怒られますが、知事の職務は「日本政府」(と彼らは呼びますが)に抗議することではありません。
知事の職務の一丁目一番地は、自県民の保護のはずです。「尖閣諸島で領海侵入を繰り返す中国公船に関し、玉城デニー知事が「中国公船がパトロールしているので、故意に刺激するようなことは控えなければならない」と述べたことに、1日、八重山の漁業者らから「領海内で漁をすることの何が悪いのか」と反発の声が上がった。尖閣問題だけでなく、台湾との「日台漁業協定(取り決め)」などで、離島の漁業者が被害を受けているとの指摘もあった。
八重山漁協に所属する漁業者、名嘉秀三さん(55)=石垣市=は「中国公船が日本の領海である尖閣周辺でパトロールすること自体がおかしい。領海侵入であり、中国のほうが日本を刺激している」と知事の認識を疑問視。「中国漁船は最近、宮古島や波照間島周辺まで徐々に進出してきている」と危機感を示す」(八重山日報6月4日)
https://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/7292
自分の管轄海域で正当な漁業を営む漁民が、外国船によって追尾されたり、今や宮古や波照間周辺まで進出されたりしていることに対して、抗議の声ひとつ上げることなく、出たセリフがよりにもよって「中国様には逆らうな」ですから、アキサミヨーとしかいいようがありません。
この人、知事が県民の護民官である自覚があるんでしょうか。ここで、知事が抗議の声を中国に向けて言わないということは、この海域を中国の領海と認めたに等しい行為と受け取られます。
とりもなおさず尖閣諸島から宮古・八重山海域を外国艦船が「パトロール」することを、沖縄県が公式に「容認」したと受け取られるでしょう。
以後やりたい放題やろうとも、それは「安倍反動政権」のやることで、地元沖縄県は歓迎してくれている、そう中国は解釈するでしょう。
先日も「一帯一路の入り口にしてくれ」とわけのわからないことを言っていましたが、今回の「気をつけるのは漁民のほうだ」発言もそうとうなものです。
デニー知事には、保守とか革新とかいう高等なレベルではなく、それ以前の知事としての適格性が問われます。
ファーウェイに対する制裁が、実は米中覇権戦争であることは、多くのメディアも報じるようになってきました。
では、なぜファーウェイが主戦場となったのかお分かりでしょうか。
中国が米国にダンピング輸出しているのは鉄鋼など多くありますし、輸入関税は今やメイドインチャイナの米国ブランドにもかけられるようになってきました。
ならば、ファーウェイである必然性がないようにもみえます。
私もなんどか書いてきましたが、ファーウェイが通信機器やソフト内部に潜ませたバック ドア から、情報・通信内容が中国当局にダタ漏れになるというリスクの指摘もあります。
それはそれで正鵠を得ているとおもいますが、それだけではファーウェイ排除の 真の 理由はわかりません。
問題は 、ファーウェイが5G市場を独占してしまうことなのです。
下図は日本の携帯基地局のシェアですが、ファーウェイとZTEという中国系国営企業だけで41%にも達します。5G世代になれば、このシェアは5割を超えるだろうと言われています。
「5Gを構築する通信インフラ分野で日本は、既に世界に後れを取っている。今や携帯基地局市場では、ファーウェイを筆頭にエリクソン、フィンランドのノキアの大手3社で市場の約8割を占めている。
日本メーカーのNECと富士通の世界シェアは、それぞれ1%前後に過ぎず、NTTドコモ向けのビジネスで生き延びている状況だ」
(上図も同じ 「5G幕開けで変わる産業構造、出遅れる日本の通信業界」 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14825?page=3)
ご承知のように、5Gとは、高速・大容量化、超多数端末接続、超低遅延、超高信頼性などを備えた通信システムのことですが、日本では一般的に自動運転の実現や通信容量の飛躍的増大などといったことでしか語られていません。
たとえば、「車対車通信による事故回避や、ロボットの遠隔制御等が高信頼性のユースケース」などが、いま世界の自動車産業が血眼になっている自動運転のキイテクノロジーとして注目を浴びています。
※参考資料 「第5世代移動通信システム「5G」とは?」
https://5gmf.jp/about-5g/
https://5gmf.jp/about-5g/
ところで、このフーウェイ排除は、米国が始めたと勘違いされていますが、最初にファーウェイ排除に踏み切ったのは意外にもオーストラリアでした。
ご紹介するロイターの記事にもあるように、オバマ政権はこのことについてむしろ鈍感で、オーストラリアが初めにその脅威の意味に気がついたのです。
このいきさつに関して、ロイターが詳細なレポート記事を出しています。これを読むと、何故ファーウェイが焦点とならざるをえなかったのかが理解できます。
「特別リポート:ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争 (ロイター2019年5月21日)
https://jp.reuters.com/article/huawei-usa-5g-idJPKCN1SU041
こと始まりは2018年初頭、オーストラリア通信電信局(ASD・Australian Signals Directorate )の行った、「戦争ゲーム」と名付けられたハッカー攻撃演習から始まっています。
このハッカー演習は「あらゆる種類のサイバー攻撃ツールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えることができるか」(ロイター前掲)という内容でした。
ハッカーに無制限に社会を攻撃させた場合、いかなる社会的損害が生じるのかを予測 しようとしたようです。
この演習結果は、ASDを青ざめさせるに十分でした。
「このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。5Gの攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが攻撃対象となった場合、完全に無防備状態になる」(ロイター前掲)
すでにASDは既存の通信網において、ファーウェイの通信システムがスパイ行為をしているとにらんでいましたが、5Gシステム攻撃がとてつもない広範囲を破壊できることが判明したわけです。
「5Gがスパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリスクを理解したことで、豪州にとってすべてを一変させた、と関係者は話す。それは5Gが、電力から水の供給、下水に至るすべての必須インフラの中枢にある情報通信で必要不可欠な要素になることだ」(ロイター前掲)
図前掲
5Gを支配することで、電力供給、上下水道、自動車や鉄道などの交通インフラ、車の自動運転、病院の管理などのシステムのハッキング攻撃が可能となってしまうのです。
「5G通信技術によって通信速度と容量の飛躍的な向上が見込まれている。
データをダウンロードするスピードは現行ネットワークの100倍となる可能性がある。
それだけではない。アップグレードによって「スマート冷蔵庫」や自動運転車といった、5G網に接続可能なデバイスが劇的に増える見通しだ。「多数のデバイスを使う人が増えるだけでなく、機器同士、デバイス同士の通信が5Gによって可能になる」とオーストラリアのバージェスASD長官は3月の講演で述べている」(ロイター前掲)
5Gの主導権を中国が握れば、随時情報通信内容をモニターてきるだけにとどまらず、いったん中国がその気にさえなれば社会全体を麻痺させることも十分に可能だということになります。
このオーストラリアの「発見」が、ファーウェイ排除を米国が「安全保障上の問題」として決意させるに至った最大の理由となっていきます。
「もしファーウェイが世界の5Gに足場を築けば、中国政府は、重要インフラを攻撃し、同盟国間の共有情報に侵入する、かつてない機会を手中に収め、これには公共施設や通信網、重要な金融センターに対するサイバー攻撃が含まれる、と西側の安全保障当局の高官は指摘する。
遠く離れた場所に対して銃弾や爆弾を使わず、封鎖もなく経済的な損害を与え、市民生活を寸断できるこのようなサイバー攻撃は、戦争自体の性質を劇的に変化させることになる。もちろん中国にとっても、米国やその同盟国からの攻撃にさらされる」(ロイター前掲)
オーストラリアは後にファイブアイズと呼ばれるようになる、米国・カナダ・オーストラリア・NZ・英国といったアングロサクソン圏の国々にこの恐るべき情報を伝えました。
そしてこの演習の翌年の2月、このファイブアイズに日独仏を加えた「ファイブアイズ+3」が作られました。日独仏は部分的情報の共有にとどまっています。
ちなみに、かつて野党とメディアがあれほど強硬に反対した特定秘密法がなければ、そもそもこの枠組みに接することすら不可能だったはずです。
毎日
「「ファイブアイズ」と呼ばれる米国や英国など英語圏5カ国の情報機関が、日本、ドイツ、フランスの3カ国と連携し、中国などのサイバー攻撃に関する情報共有の新たな枠組みをつくった。
サイバー攻撃に共同で対処するのが狙いで、5カ国は日独仏に対策強化を要請。日本が政府調達から中国企業の通信機器を事実上締め出す方針もこれを受けたもので、今後はインターネット上で大量のデータを管理する「クラウドサービス」についても、政府への納入業者を対象にした厳しい安全基準を策定する方針だ」(2019年2月4日)
https://mainichi.jp/articles/20190203/k00/00m/010/166000c
習近平とその盟友であるファーウェイ会長の任正非 出典不明
中国は国家戦略の重要な柱としてITを位置づけて、惜しげもなく巨額の国費を投じてきました。
日本がデフレによって、5G分野で遥かに出遅れたこととは対照的です。日本の富士通やNECなどはトコモのお情けでやっと基地局のシェアにささやかな居場所を得ているにすぎません。
情報インフラが日進月歩を遂げた時代のデフレが、いかに深刻に日本にダメージを与えたのかわかります。
「中国深センで1980年代にひっそりと誕生したファーウェイは、2018年の売上高が1000億ドル(約11兆円)を超える強大な資金力に加え、技術競争力と中国政府の政治的後ろ盾を持つファーウェイに代わる企業は、世界的に見てもほとんど見当たらない」(ロイター前掲)
一方、米国は中国の5G支配について甘い考えしか持っていなかった、とオバマ政権の高官は語ります。
「昨年半ば(2018年半ば)まで、米政府は、ほとんどこの問題に「関心を持っていなかった」と、オバマ前政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジェームズ・ジョーンズ元海兵隊大将は指摘する。米政府高官が行動へと突き動かされたのは、5Gが何をもたらすかが、突如として明らかになったためだ、とジョーンズ氏は言う」(ロイター前掲)
ファーウェイに5Gの覇権を委ねることは重大なリスクが生じると認識したのは、このオーストラリアから情報提供を受けたトランプ政権からのことでした。
「ポンペオ米国務長官は5月8日、訪問先のロンドンで、5G通信網へのファーウェイ参入を禁止していない英国に鋭い警告を発した。
「安全性が不十分な状態では、信頼できるネットワークで行われる一定の情報共有を行うことが難しくなる」と長官は述べた。
「これはまさに中国の思うつぼだ。西側の同盟を、銃弾や爆弾ではなく、バイトやビットで分断したいと願っているのだ」と」
「ポンペオ米国務長官は3月、「ファーウェイは中国の国有企業で、中国の情報当局と深い関係がある」とさらに踏み込んで発言したが、同社は中国の政府や軍、情報当局のコントロール下にあるとの見方を繰り返し否定してきた。
「ポンペオ国務長官は間違っている」との声明を出し、同社は社員が保有していると説明した。
米国のゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使は2月にロイターに対し、5Gは社会のあらゆる側面に影響を及ぼす技術だと述べた。その上で、「常識的な判断として、悪質行為を行ってきた勢力に、社会全体の鍵を手渡すべきではない」と強調した」
(ロイター前掲)
残念ですが、日本政府がこのようなリスクをじゅうぶんにわかった上で、ファーウェイ排除に追随したのか、私には疑問です。
おそらく、オーストラリアや米国のこれに関する情報は手渡されてはいるとは思いますが、ハッカー対策後進国のわが国がどこまで中国の5G支配の恐ろしさを分かって対策を立てているのか、はなはだ怪しいものだと思われます。
日本は性善説にたって、このような公共インフラはハッカー攻撃は受けないとハナから信じきってきました。
先日のシーサイドラインの自動運転システムが二重三重のセーフティを無視して逆走しましたが、このようなことはハッキングによって簡単に行うことが可能となります。
JR東日本は山の手線の自動化も現実化する寸前だそうですが、ハッカー対策が検討され、予算が割り振られているとはついぞ聞きません。
仮にアジア某国(あえて名を秘す)が5Gを利用してハッカー攻撃を日本に仕掛けた場合、自動車は暴走し、信号はデタラメに点滅し、鉄道は逆走し、広域停電が生じ、果てはダムは放流を始め、原発なども暴走するかもしれません。
中国は既にそのようなハッカー攻撃の部隊もスキルも有しています。
もちろん現時点では私の杞憂にすぎませんが、日本社会が世界指折りのハッキングに膳弱な社会だということを肝に銘じて、ファーウェイ問題をかんがえるべき時なのです。
北朝鮮で大規模な幹部粛清があったようです。
「韓国の朝鮮日報は31日、北朝鮮が2月の米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問い、金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表、および事務レベルの交渉を行った複数の外務省担当者を処刑した、と伝えた。
同紙が匿名の北朝鮮筋の話として伝えたところによると、金革哲氏は4人の外務省幹部とともに3月に平壌の美林飛行場で処刑された。いずれも米国のためにスパイ活動を行った罪に問われたという。
同筋は朝鮮日報に「交渉に関して米国の意図を適切に把握しない不十分な報告を行ったため」、金革哲氏はスパイの罪に問われたと述べたという。
ロイターは、この報道の信憑性を確認できていない。」(ニューズウィーク6月1日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/post-12233.php
5月30日付け労働新聞はこのように報じています。
「労働党の機関紙『労働新聞』は30日、「表では首領をあがめるふりをして、裏では背を向けて別の夢を見る同床異夢は、首領に対する道徳・義理を破ってしまう反動的、反革命的行為。こうした者たちは革命の冷厳な審判を免れなくなった」
ここで労働新聞が「背信者」と決めつけ「反革命行為」とまで罵るのは、2013年9月のチャン・ソンテク(張成沢)以来のことです。
今回粛清されたと見られるのは、ハノイ会談で正恩の横にいたキム・ヨンチョル(金英哲)統一戦線部長(当時)と、キム・ヒョクチョル(金赫哲)対米特別代表(当時)、キム・ソンヘ(金聖恵)統一戦線策略室長です。
出典不明
最も大物の党副委員長であったキム・ヨンチョルは労働改造所送りと言われています。
キム・ヨンチョルは、ご承知のように、この間一貫して対米外交の責任者を務めた人物でした。
元々はあまり大きな声ではいえないような危ない男でしたが、今は背広を着て外交官もどきのことをしていました。
今回は、正恩に失敗のツケを全部まわされたようです。
あえなく労働教育改造所送りとなり、ろくに飯も与えられず馴れない炭鉱堀りでもさせられるのでしょうか。獄死することは確実です。
https://www.sankei.com/world/news/190120/wor190120
一方、キム・ヒョクチョル(金革哲) は飛行場で処刑だそうです。わざわざ広い飛行場で処刑されたとなると、気の毒にもチャン・ソンテクのように高射砲で撃たれたのかもしれません。墓に入れるものも残らなかったことでしょう。
こういうスプラッタな殺し方は正恩の趣味です。
このキム・ヒョクチョルは外務官僚です。
2019年3月に北朝鮮反体制派の襲撃を受けた在マドリード北朝鮮大使館で、以前の17年までスペイン大使を務めていた人物でした。
この反体制派は、PCや文書を持って逃げたとされていますが、彼らの目的はキム・ヒョクチョルの情報だったとも伝えられています。
彼は大使の離任後の外務部に戻り、今回は米国担当特別代表として、裏交渉をしてきましたが、おそらく米国は妥協するだろうという甘い読みを正恩に伝えたと言われてます。
米国は首脳会談が行われるまで一切手の内を見せずむしろ楽観的観測を意識的に流したながら実際に蓋を開けてみると、会談の場でボルトンが書いた一枚の文書を手渡しました。
ここには「核の完全撤去なくして制裁解除なし」という内容が書かれていて、正恩は聞かされていたこととのあまりの落差に青ざめたと言われています。
というわけで、「最高尊厳」様に恥をかかせた罪で、「米帝スパイ」として死刑です。
もっとも間違った観測を教えて死刑になるなら、同様の楽観論を伝えたムン・ジェイン閣下などはどうなるんでしょうかね。
https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/2019053...
次に、上の写真中央でキム・ヒョクチョルと並んで写っている女性のキム・ソンヘは、強制収容所送りだと言われています。
この人物も外交官僚ですが、上司のキム・ヒョクチョル同行している様子も撮影されています。
ちなみに強制収容所に送られた場合、当該の人物の家族、親族も同じく同様の処分を受けます。この連座制と密告制度が、北の体制を内部崩壊させにくくしている秘密です。
家族は家族内でおかしな動きがあれば積極的に密告し、この連座制から逃れようとするからです。
それはさておき、この人物は日本とって失うことがもっとも痛手となる人物で、拉致問題の北側カウンターパートをしていました。
今回は、会談で通訳をしていましたが、トランプが去りぎわに「ひとつ提案がある」と言った言葉を、とっさに訳せなかった罪を問われたようです。
これまた、このていどで強制収容所に入れていたら、日本の外務官僚などは命がいくらあっても足りないでしょう。
また正恩の実の妹のキムヨジョン(金与正)は謹慎処分だそうです。理由は「出すぎた行動」だそうです。
「白頭山の血脈」でなければ、強制収容所送りだったことでしょう。
正恩は余りに母親に似ているこの妹にだけは甘いようです。
正恩にとって、田中真紀子よろしく「人間には、敵、家族、使用人の3種類しかいない」ようです。
正恩の「使用人」とは、国民のことだから始末におえませんが。
https://www.businessinsider.jp/post-190285
常識的には多くのメディアが昨夜報じたようにハノイ会談の失敗の責任を取らせたということでしょうが、ならば上の写真でキム・ヨンチョルと並んで左右を固めていたチェ・ソンヒ(崔善姫)が粛清を免れた理由がわかりません。
一部メディアは、チェ・ソンヒ以外は楽観論だったという解説をしていますが、彼女はゴリゴリの対米硬派ですから、正恩は融和派の幹部を切り、強硬派路線に乗り換えたということでしょうか。
この可能性もこの間のイスカンデル・ミサイルの発射を見るとないとは言い切れませんが、そこまで決意しての今回の粛清であるかどうかははまだ分かりません。いずれ明らかになることでしょう。
黒井文太郎氏のように、北特有の「NO2殺し」とする見方もありますので、つけ加えておきます。
狡兎死して走狗烹(に)らるという成句がありますが、北ではウサギを捕れない犬もどんどん殺されてしまうようです。
「彼(キムヨンチョル)はどのみち「そろそろ粛清される頃合い」だった。なぜなら、彼はもう長い期間、北朝鮮権力中枢において、実力組織出身の最高ランクの実力者というポジションにあったからだ。
このポジションは、北朝鮮ではきわめて危険な立場だ。この国では、政治的に突出したナンバー2、あるいは軍や秘密警察で強権を代行した実力者は、これまでほぼ全員が失脚あるいは粛清されてきた。独裁者の権力を脅かす存在だと疑われるからだ。
金英哲も、北朝鮮の独裁政権を維持するため「力を行使」する地位を歴任した。ただの官僚的なエリートではなく、真の実力者だ。金正恩からすれば、そろそろ排除しておきたい人間だった。
(黒井文太郎 ビジネスインサイダー)https://www.businessinsider.jp/post-190285
いずれにしても、北は確実に首脳会談以前の場所に復帰しているようです。
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