トランプの安保撤退論を笑う
トランプさんはああいう自己顕示欲が強烈なご仁ですから、色々言いますが、あまり一喜一憂しないで下さい。
正恩に対して「恋人みたいただ」と言ってみたり、習にだって「友人」くらいのことは平気で言う人です。
いちいち真に受けていたら、こっちの身がもちません。
ただ、彼は馬鹿ではないので行ったことの「目的」ははっきりとあります。
それを見極めれば、いかに表現がひどくても、いかに常識はずれであろうか、彼は彼なりに戦略的目的のためにああ言っているのですから、これもディールのうちだとかんがえましょう。
絶対に一球目は、内角高め危険球を投げると誓っているようですから、鼻先を通過する球に驚いていてはいけません。
あれはこちらが驚いて、フォームがバラバラになるのを期待しているのです。
修行が足りない政治家だと、たまげて唯々諾々くと法外な要求を呑んでしまうことになります。
ああ、またホワイトハウスで、プロレスWWEのマイクパーフォーマンスをやっているなと思えばいいのです。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20181110001...
G20直前に、ふたつばかり言っています。
ひとつは安保廃棄論。
いまひとつは、ホルムズ海峡の自国タンカーは自分で守れ論です。
前者の安保廃棄論は話になりませんが、後者のタンカー防衛論は一理あります。
分けて考えて、あくまでも自分の国の国益に沿って対応をすればいいだけのことです。
ブルームバーク The USS John S. McCain destroyer at the Yokosuka Naval Base in Japan.
まずは安保廃棄論から。朝日界隈は涙を流さんばかりに歓喜しているようですが無視して下さい。
なんと言っていたのか、ブルームバーク (6月25日) の原文にあたってみます。
"President Donald Trump has recently mused to confidants about withdrawing from a longstanding defense treaty with Japan, according to three people familiar with the matter, in his latest complaint about what he sees as unfair U.S. security pacts.
Trump regards the accord as too one-sided because it promises U.S. aid if Japan is ever attacked, but doesn’t oblige Japan’s military to come to America’s defense, the people said. The treaty, signed more than 60 years ago, forms the foundation of the alliance between the countries that emerged from World War II."(仮訳)
この問題をよく知る3人の人物によると、ドナルド・トランプ大統領は最近、彼が日米安全保障条約に苦情をもっており、日本との長年の
防衛条約からの撤退について自信をもっていた。
トランプ氏は、日本が攻撃されたことがあれば合衆国の援助を約束しているが、日本の軍隊がアメリカの防衛に来ることを義務付けていないため、この合意は一方的すぎると考えている、と述べた。 60年以上前に調印された条約は、第二次世界大戦から出現した諸国間の同盟の基礎を形成する」
元ネタを読まないと、朝日(6月26日)のように「『日米関係は最強』と蜜月をアピールする安倍(晋三)政権だが、衝撃と不安を隠しきれない」というリアクションになってしまいます。
朝日は元ネタを洗って書いているのでしょうか。
ブルームバークは続けてこうも書いています。
"Even so, the president hasn’t taken any steps toward pulling out of the treaty, and administration officials said such a move is highly unlikely. All of the people asked not to be identified discussing Trump’s private conversations. While Trump’s repeated criticism of security pacts around the world has alarmed allies from Seoul to Paris, he hasn’t moved to withdraw from such agreements the way he has with trade deals."
(仮訳)
「そうであっても、大統領は条約からの撤退に向けたいかなる措置も講じておらず、行政当局者はそのような動きはまったくありそうもないと述べた。 トランプの個人的な会話のために、全員が身元を明らかにしないよう求めた。
トランプ氏が世界中の安全保障条約について繰り返し批判したために、ソウルからパリまでの同盟国を不安にさせたが、彼は協定から撤退することに動いていない」
なんだ、ネタ元のブルームバークですら、現実にはありえないことだと行政当局者に言わせて、トランプもいままでさんざん言ってきたが、そんなことをしたことはないと書いているじゃないですか。
このもの騒がせに聞える安保撤退論は、ボルトンに言ったようですから、即座にボルトンにからこう諭されたことでしょう。
「大統領閣下、まだこんなことを言ってんですか。日米安保から合衆国が撤退したら、はしゃぐのは中国とロシア、それにイランですぞ。もし本気なら、ボンペオと私の首を切ってからやって下さい」
またトランプはこんなこともFOXTVで言っていたようです。
https://video.foxbusiness.com/v/6052501492001/#sp=show-clips
「日本が攻撃されたら米国は第3次世界大戦を戦う。いかなる犠牲を払っても日本を守る。でも米国が攻撃されても日本はわれわれを助ける必要はないし、その様子をソニーのテレビで見てられるってわけだ」
おお、なんと頼もしきお言葉を、合衆国大統領から頂いたものです。いいですか、トランプはこう言っているのですよ。
「日本が攻撃されたら第3次大戦を戦う。いかなる犠牲を払っても日本を守る」
渋々尖閣は安保第5条の範疇だと認めたオバマとはエライ違いです。
日本を守るためには第3次大戦も辞さないというフレーズを切り取りなさいよ、、朝日さん。
トランプが言っているのは日米安保の片務性という、延々と昭和の時代から議論されて来た手垢のついた議論にすぎません。
2016年の大統領選挙時にはもっと露骨にこの片務性を攻撃し、やれ駐留経費を上げろなどと吠えていました。
駐留経費は十分に払っています。日本を除く26カ国の合計より多いくらいです。
元々少ない上に、支払いを滞らせているドイツとは違います。
●2002年の米国の資料による各国米軍駐留経費負担率比較
・日本 ・・・75%
・ドイツ ・・・33%
・韓国 ・・・40%
・イタリア・・・41%
ちなみにトランプは就任前には日本は核を保有すべきだ、なんてことも言っていました。
その後に引っ込めますが、潜在的にその考えは眠っていると思われます。
トランプが本気で安保撤収論を言っているなら、その論理的延長上には日本の独自核武装が待っていますので、彼は彼なりに一貫したロジックがあるようです。
ところで、米国を守れといわれましてもねぇ、です。
日本が米国領土を防衛することはできません。ただし、たとえば海上に浮かぶ米海軍艦艇という「領土」が攻撃を受けた場合、それを守るために戦うていどのことは安保法制の刷新で可能になりました。
https://www.mag2.com/p/news/357373
実際に去年9月の日米首脳会談では、このような会話があったそうです。
産経6月27日抜粋
https://special.sankei.com/a/politics/article/20190627/0001.html
「トランプ氏 「米軍が日本の安全を守るために、相当の費用を費やしていることも忘れないでほしい」
安倍首相 「だからこそ安全保障関連法を成立させ、今や米国と助け合うことができるようになった。米軍の防護もやっている」
トランプ氏 「それは素晴らしい。ただ、米国は駐留米軍のために相当の負担をしている」
安倍首相 「日本はどの国よりも駐留経費を負担しているし、基地も提供している。駐留米軍の経費は、米国内にいるときよりも安くついている」
トランプ氏 「あなたは、反論の天才だな」」
ね、今更でしょう。あの人いつも言っているんです、このていどのこと。
そして毎回毎回、安倍氏に正しく反論されては、受け流されているんです。
今回も、なんとかアベの外交失点に結びつけたい界隈が、参院選がらみでことあれかしと騒ぎたてているだけのことです。
もうひとつ、今年横須賀におけるヘリ空母「かが」においてはこんなことも言っています。
日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45318230X20C19A5MM0000/
「トランプ氏は横須賀基地について「米海軍艦隊と同盟国の海軍艦隊が並んで司令部を置く世界で唯一の港だ」と強調した。「かが」にF35Bの搭載が可能となることに言及し「この地域とより広い領域を様々で複雑な脅威から防衛する」と語った。
その後、トランプ氏はヘリで同じ横須賀港の米軍強襲揚陸艦「ワスプ」に移り、米兵を前に「私たちには力による平和が必要だ」と演説した。米軍の装備刷新に言及したうえで日本のF35戦闘機の調達計画にも触れ「F35戦闘機の数は米国の同盟国の中でもっとも多くなる」と指摘し、日本による米国製の防衛装備品の購入を評価した。「日米同盟はかつてないほどに強固だ」とも述べた(日経5月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45318230X20C19A5MM0000/
日米同盟が、日本防衛のためだけにあるわけではないことは、トランプは百も承知のはずです。
このことについては私はなんどとなく書いてきましたが、米国の国際戦略の要はまがうことなく横須賀です。
横須賀を米国が喪失することにになれば、米国は対中・対露・対北、さらにはインド洋、ペルシャ湾、アフリカ東部の軍事的抑止力のすべてを失うことになります。
「米軍の横須賀海軍施設は燃料補給も艦艇のメンテナンスもできる世界第一級の海軍基地です。中国にはまだ後方支援ができる海外基地はなく、外洋で作戦行動できる範囲は限られています」(香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
仮に、米国が日米同盟からの撤退を選択するとすれば、米国が中国に次の覇権国の地位を譲り、北米大陸に籠もる時のみです。
したがって、日米同盟は朝日の切ない願望のように揺らいでもいないし、ましてや米国が安保から撤退することなどありえないことだと断言できます。
ホルムズ海峡のタンカー防衛については、安保撤退論よりはるかに現実味があることなので、明日に回します。
« 中国、香港をG20でとりあげてはならぬ | トップページ | トランプ ホルムズ海峡を通るタンカーは自分で守れ発言の真意について »
コメント
« 中国、香港をG20でとりあげてはならぬ | トップページ | トランプ ホルムズ海峡を通るタンカーは自分で守れ発言の真意について »
まあ、これを受けての共産党の志位さんなんかは「安保破棄は大歓迎」だそうで・・・
日本共産党の真髄が久々に見られましたね。
こんなことで何を踊ってるのやら。。
投稿: 山形 | 2019年6月27日 (木) 07時23分
途中で投稿ボタン押しちゃったので連投失礼。
トランプさんは根っからのビジネスマンでリアリストですから、前任のオバマでさえ「我々はエネルギー輸出国になったから、イラクからアフガンに転進する」を、さらに進めて「ホルムズ通過する国は自国の船くらい自分で護れやぁー!」と言ってるわけですな。
それは一理あります。
ソマリア海賊対処みたいに各国がホルムズに海軍送るのですかねえ。私は充分に有り得ると思います。
特に我が国は中東原油への依存が80%と圧倒的に高いですから、最も影響があります。
朝日は論外ですね。
兎に角安倍政権にケチを付けられれば、どのようにでも曲解報道します。自分とこのブラックぶりにはお構い無し。
オスプレイ導入やCH-53部品落下であれだけ大騒ぎして煽っておきながら、テレ朝のヘリがエンジン停止不時着という「重大インシデント」にはダンマリです。。
投稿: 山形 | 2019年6月27日 (木) 07時38分