トランプと正恩の板門店ランデブー
トランプがG20日本からの帰り、ちょっとそこまでという調子で板門店で正恩と握手しました。
まるで、ジェットコースターみたいです。が、はは。
「【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)は30日午後、板門店の韓国側でのトランプ米大統領との立ち話で、「トランプ大統領が対面する意向を示したことに驚いた」と述べた。
また、「トランプ大統領と正式に対面することは事前に決まってなかった。分断の象徴であり、敵対関係にあった両国(米朝)が平和の握手を交わしたこと自体が昨日とは違う今日を表す」と強調した。
一方、トランプ氏は「米国の大統領として板門店の軍事境界線を越えることができ、光栄に思う。こんな歴史的な瞬間をつくってくれた金委員長に感謝する」とコメントした」(韓国聯合6月30日)
韓国聯合前掲
正直言って、ここまでやっちゃうとは思いませんでした。これを予想しえた人は日本はもちろん、世界でもごくわずかしかいなかったでしょう。
なにせ現役合衆国大統領が、ツイッター一本で呼び出した北の指導者と手を取り合って38度線を超えるんですからね。
まだ正式な和平合意はなされておらず、形式的には「戦争が終了していない敵国」です。
おそらく大統領の安全上の点検にはそうとう配慮したはずで、G20以前のどこかで板門店ランデブーは企画されて、日本側にも通知されていたことだとおもいます。
推測の域をでませんが、思いつきはトランプ、それを具体化したのはポンペオ、同意したのは安倍氏、そして事前にバックチャンネルで北に通知したかしないか・・・、いずれにせよぶっつけ本番で当日の運びとなったと思われます。
どっちにしても、北にとってはビックリ仰天のオファーだったはずで、知らされたのも直前だったことでしょう。
その驚きぶりは、「驚いた」、と妙に正直なことを正恩が言っていることでも分かります。
本来は敵の盟主からツイッター一本で呼びだされるのはそうとうにカッコ悪いはずですが、「米帝の頭目があちらから会いにくるのだから度量の大きなところをみせねば」、とおっとり刀で駆けつけたのでしょう。
ま、見栄ですね。ほんとうは腰を抜かさんばかりだったんでしょうよ。
あの国はメンツをことのほか大事にしますから、「驚いた」なんて軽々に言うタマじゃありませんから。
通常だと正恩の移動は、暗殺を恐れて厳重な警備態勢を準備しますから、さぞかしパニくったことでしょう。
北が断れる立場じゃありませんから、死に物狂いでふっ飛んできたのでしょう。
完全なトランプペースです。
え、ムン閣下ですか。まったく蚊帳の外でしょう。
お前、オレのツイッター読んでいるか、北に誤ったシグナル送るんじゃねぇぞ、って言われているような人が、頭を突っ込める案件ではありません。
今回、日本のメディアで「ムンの仲介外交の成果」といったような報じ方がされていましたが、なにを言っているのか。
ムン閣下の「仲介外交」こそがここまでこじらせた元凶であって、韓国を無視しないと何事も進まないことを米国はとうにわかっています。
今回、ツイッター一発で正恩を呼び出せたわけですから、今後これだとトランプと確信したでしょうね。
今回冷厳に頭越しをされてしまったムン閣下、どう取り繕うのでしょうか。
日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46780880Q9A63...
まさにトランプ節全開。
これほどまでにテンポが早い大統領というのは知りませんから、いつも認識が後追いとなります。
少したってから、ああそういうことだったのねとわかるわけで、今回もそうなるはずです。
トランプがいままで北を相手にどうしてきたのか、今後どうしたいのか、トランプ節を理解するには、前後のシークエンス(流れ)を見ねばわかりません。
トランプは来年に迫った大統領選を前に、3方面で外交戦を演じています。
第1に中国、第2にイラン、そして3、4がなくて5番目に北です。
この主導権を握っているのは、お間違いなきように、習でもなければイランでもない、ましてや北であるはずがありません。
あくまでもトランプ御大です。
そのことが、今回の板門店ランデブーで分かったでしょう。
こういう一時の緊張緩和タイムを与えるのもトランプ、先につながるんじゃないかという淡い期待をいだかせるのもトランプ、です。
トランプにとってなによりも重大なのは大統領選であって、そこまで戦争をする気はないでしょう。
戦争から離脱するといって大統領になった人物は多くいますが、戦争を多方面で拡大しながら大統領になろうというのはそうとうにキツイ。
トランプが今切っているのは、妥協ではなく一時的緊張緩和です。
G20で、中国に対してはファーウェイに対しての部品供給の緩和など、少々譲って見せました。
譲ったといっても、「安全保障上さしさわりがなければ」という但し書き付きですから、現実にはどうとでも解釈できますし、そもそも共和・民主双方の議会がそんなことを許さないのは計算済みです。
つまり、妥協したと見せてちっとも妥協していないのです。習に時間をやっただけのこと。
北に対してもまったく同じです。
かんじんな非核化問題はなにひとつ解決もしていないわけです。
第3回会談なんて日本のメディアは浮かれていますが、事務方の交渉団なきランデブーは、ただのショーにすぎません。
トランプにすれば、とうぶん静かにしていろよということを満面の笑顔で優しく正恩に説き聞かせたというだけのことなのです。
トランプは、将来的には北に、シンガポールのような開発独裁国家に変貌して、中国の緩衝地帯になってくれればめでたしといういう思いはあるでしょうが、まだまだずっと先の話です。
今度、正式会談を持つことにになるが、しっかりとハノイ会談で出した宿題やっておけよな、さもないと経済制裁解除はおろか、もっと大変なことになるぞというトランプ親父からのコワイ伝言でした。
扉写真 カカオの花です。
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この訪問が拉致問題解決にどう結びつくのか、プラスに作用するはずがありません。
また、北の完全な核放棄のためににも非常に悪影響と思います。だいいち、これでは日朝会談を正恩がするはずがありません。
今後を見てみないとわかりませんが、「百害あって一利なし」じゃないでしょうか。
数日前にFOXニュースでこのサプライズの可能性をかなり詳しく予想していて、それによれば石炭の輸出と繊維製品の輸出について一年間の期限付きで制裁解除する予定と報道されています。
実際にトランプさんは正恩の前で、(北が行動を見せたらの条件付きですが)制裁解除の可能性に言及しています。「ノーベル賞狙い」などとの揶揄が、なにやら信ぴょう性をおびます。
文のメンツがつぶれる事も結構なようですが、一国の大統領にあそこまで道案内させておいて、会談に参加させないどころか全く映像に出てこない位置に置くような事はどうなのか。
トランプさんにはどうしてもアジア人蔑視のような匂いを感じてしまうし、そこが安倍総理をして反中共にカジを切りきれない要因としてあるのかな、と考えてしまった珍事でした。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年7月 1日 (月) 10時28分
山路さん。コメント、ありがとう。お待ちしておりました。
トランプはそういう人です。
トランプの行動はもはやいい悪いではないですね。中国、イランと戦線を拡げてしまった段階で、彼の北への関心は急激に低下しているのです。
トランプにとって長距離核なき北など脅威足り得ません。日本に配慮して拉致問題をテーブルに乗せてくれているだけ感謝すべきていどに考えていたほうがいいんじゃないでしょうか。
日本は独力で切り開くしかないのです。
トランプはペンスやボルトンのように理念型ではないぶん、彼は「自由」なのですよ。
ただし、ポンペオとボルトンを解任しないかぎり、おっしゃるようなFOXの妥協の見立てはどうなのかな?
そのような制限解除の見返りがなにかですが、寧辺核施設の施設廃棄ていどなら、もう2回目で拒絶しているわけですからね。
寧辺核施設に限定した査察の受け入れくらいかな、今の思いつくのは。
これは一回オヤジの時にやっていますし、いつでも追い出せますから。
だから私は北のこれ以上の妥協はないと思っています。妥協するしないではなく、出来ないのです。
だから少しずつ解除してもらっって、ダラダラやる。ダラダラやっているうちに次の大統領になってまたオバマみたいな奴が来ることに賭ける。
一方、トランプは鈴置さんにいわせると、今は小型核の完成までの時間稼ぎをしているそうですが、どうかな。鈴置さんとはこのごろ意見があわなくて。
軍事オプションの目はもう8割方ないと私は思います。
トランプは大統領選挙前に成果を急いでいるくせに、しかし安全保障スタップにうるさ型が揃っているために安易な妥協もできないでいる苦しい立場なのだと思います。
すぐにでも米朝事務方の折衝が始まるみたいですから、結果はすぐに分かると思います。これで第3次会談が開かれるようなら、なにか進展があるのかもしれません。
ちなみにムンに対しての同情は私にも一切ありません。おっしゃるような人種差別論は考えすぎです。安倍氏も同じイエローですがすこぶるいい関係ですしね。
あのトランプという男は、人の好き嫌いがハッキリしているのです。
オバマやメルケルみたいな青なりの唐なすのインテリは大嫌い。
プーチンや安倍氏のような自分で決められる現実主義者タイプとは肌が合うようです。
ムンみたいな、人権派弁護士出身、米中二枚舌、裏切りを働いていておいて口ではキレイゴトという人物が好かれる道理がありません。
投稿: 管理人 | 2019年7月 1日 (月) 11時02分
山路さん
「FOXニュースでこのサプライズの可能性をかなり詳しく予想」
ううーん、どうなんでしょうか。
確かにこの板門店行きにはびっくりで、トランプ氏がなにを狙ってなのかは、わからないのですが、この間のトランプ氏の言動を見ている限り。ここで北への経済制裁を緩めるとは思えません。
これはこれで、パフォーマンスにの1種にすぎず、実際の政策にはに変わりはない、というあたりでは、というのがわたしの見立てです。
投稿: ゆん | 2019年7月 1日 (月) 11時23分
まあ、根が四回破産したことのある不動産屋のオヤジだもんで、
ついで視察が身に付いてしまっているんですわ。
「よっ、シンゾーのトコに来たら、お前っ家は目と鼻の先だったわ、
んで、寄らせてもらったからよ」「なに、特に用は無ぇんだけどよ、
お前ぇの顔を見ておこうと思ってな」と、グイッと正恩クンの目ぇ
を睨みつけて、影で(イラン?)コソコソしてんの判ってんだからな
オイ!と、折角の東アジア行きだもんで、ついでに釘差して来た
ってか?
お互いの二重スパイ(韓国・中共)の可能性を、なんらかの符丁
でトップ同士が確認したのかも知れません。ムンさんシーさんが
机の下に隠れてなんやらしているのがバレた?
人気取りも目的でしょうが、それだけではないでしょう?
投稿: アホンダラ1号 | 2019年7月 1日 (月) 23時06分
幸福実現党の及川氏は今回のトランプ氏の北朝鮮訪問を大統領選挙との関係で分析しております。ちょうど民主党の大統領候補選がアメリカでは行われており、これに水を差すことが一つの目的であり、また周近平氏がG20会議の前に米中貿協議を有利に進めるため北朝鮮を訪問した意図をくじく目的があったとしております。その効果はてきめんであり、アメリカのマスコミではトランプ氏の北朝鮮訪問を大々的に報じており民主党の大事な大統領候補者選びの報道は地味なものになったようです。米中貿易協議は北朝鮮への歴史的なアメリカ大統領訪問で話題性はまったくなくなってしまいました。
北朝鮮問題の今後ですが、私は米中の対立の帰趨が北朝鮮の在り方を決めてゆくのではないかと思っております。中国が米中貿易戦争に敗北すれば、共産党独裁は継続不可能になるだろうし、同じ政体をもつ北朝鮮という小国は中国と同様の道行となるのではないか。それには、長い行程があるかもしれない。
一番の関心事は、米中貿易戦争の行く末ですね。
投稿: | 2019年7月 2日 (火) 00時04分