中国、香港をG20でとりあげてはならぬ
中国の上目線というのはもはや身に染みついた習性なのでしょうかね。中国がこんなことを言い始めています。
「北京=西見由章】中国商務省の王受文次官は24日の記者会見で、大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた米中首脳会談をめぐり、「一方(中国)だけでなく双方が譲歩しなければならない」と述べ、貿易協議の妥結には米国側の譲歩も必要だとの立場を強調した。中国外務省の張軍次官補も同じ記者会見で「G20で香港問題を議論することは許さない」とし、同問題を提起する方針を示したトランプ米大統領を牽(けん)制(せい)した。」(産経6月24日)
https://www.sankei.com/world/news/190624/wor1906240037-n1.html
なぁに言ってんだかですが、こんなことを言っているのも、中国特有のお家の事情です。
「中国は、5月に貿易協議が事実上決裂した原因は米国にあると国内メディアを通じて宣伝。
協議再開に道筋が付いた場合、一方的に譲歩したと受け止められるのを避けるため、今回のG20ではより強い表現で米批判を展開する可能性がある。 一方で中国当局は、香港の混乱をめぐり各国から批判を浴びる事態を懸念している。
中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について香港政府は作業の完全停止を発表したが、張次官補は条例改正が法律上の欠陥を補うために必要だとの認識を改めて表明。「どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない」と米側にクギを刺した」(産経前掲)
中国国内向けには貿易協議が決裂した責任はあげて米国にあると宣伝してきたのですが、実際は米中合意はできて、米中経済戦争は中締めの方向に向いていたのです。
双方の事務方が泣きながらとりまとめた150頁もの合意文書を、こともあろうに習の鶴の一声で50頁分削除してしまい、その中には中国の国有企業への不当な補助金などといった根幹に触れる事柄があったためにトランプが切れて、制裁第4弾発動の運びとなったのです。
フツー合意文書の署名まで行った段階で、一方が3分の1削除しろなんて言い出したら、ワヤになりますがな。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20180...
中国はそもそも今の米中経済戦争のフレーミングが気に入りません。中国にとってあくまでもこうじゃなくちゃならないのです。
それは「自由貿易の旗手の中国VS保護主義の米国」 という絵です。
「一方で、トランプ政権を念頭に「一部の国が一国主義や保護主義を実行し、ほしいままに貿易相手国に関税をかけている」と非難し、G20で多国間主義への支持が一層高まることへの期待感を示した」(産経前掲)
なんと倒錯した絵でしょうか。自由主義陣営の盟主たる米国が「ほしいままの保護主義」と批判され、社会主義を標榜する中国こそが「自由貿易を守る砦」だと言いたいようです。
実はこのような馬鹿な図柄を作ってしまったのは、米国自身にも責任を感じてもらわねばなりません。
ヒト、モノ、カネが無制限に往来できるグローバル化の世界を作り出したのは、他ならぬ米国自身だからです。
米国は冷戦が勝利で終結した後、もはや覇権争いは二度と起きないと慢心していました。
ところが21世紀の開始と共に始まったのが、このグローバル経済を目一杯利用した中国経済の台頭でした。
安い賃金、広い土地、14億市場を求めて、先進諸国が我先にと中国に殺到したのです。
結果は、今、私たちの眼前に拡がっているとおりです。
中国は外国の技術を盗み、コピー商品によって世界市場を制圧しました。
そして有り余ったカネを、IT技術と軍備におしげもなく投入されました。
それをを象徴するのが、ファーウェイと南シナ海の軍事人工島です
https://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/776f0b42ced...
一方、米国ほど自由主義の優等生はありませんでした。
米国はWTOを作った国として、もっとも外国企業に市場を開放してきました。
もちろん農業保護や自動車産業に対する関税などはやりましたが、おおむねこの国ほど自由主義貿易の良き子はいなかったと評してよいでしょう。
この相手国が市場を閉ざされていようと気にせずに、世界の商品をじゃんじゃん買いまくるきっぷの良さが、世界経済を活性化させたともいえます。
中国深セン http://japanese.china.org.cn/life/txt/2011-02/25/c...
これは、当時発展途上国からテイクオフする段階に差しかかっていた中国にとって、まさに願ってもないスプリ,ングボードでした。
中国はこの絶好の好機を逃さず、すさまじい短期間で経済大国にのし上がります。
皮肉にも、次の覇権国を作り出したのは、米国自身だったのです。
この超高速経済大国化は、信じがたいほどの貧富の差と、とり返しのつかない環境破壊を生み出しましたが、経済が右肩上りなうちは明るい未来があると思った国民には圧倒的に支持されました。
ただし、一方の米国にとっては、米国発祥の大企業がこぞって生産拠点を中国に移動させ、メイドインUSA、実はメイドインチャイナという産業の空洞化と競争力の減退をもたらしたのです。
つまり米国は、意識せざる形で自国経済を犠牲にして外国の繁栄を助けることで、グローバル経済の中心にいたということになります。
ただし中心といっても、それは消費だけが期待される馬鹿殿様としてですが。
出典不明
この状況に怒ったのが、米国の滅亡寸前だった工業地帯の労働者を支持基盤としたトランプの登場でしたた。
トランプは、ワシントン主流とは異なって臆面もなく「アメリカ・ファースト」を掲げ(なかなか東部インテリには言えません)米国の利益をことさらに強調することで、グローバリズムに待ったをかけたのです。
これは米国に望まれていた覇権国としての役割の放棄を宣言するに等しい行為でしたが、トランプはこれを中国という「敵」を作り出すことで説明しました。
共産党独裁の国家が、外国資本をほしいままに技術提供させているが、いいのか?
外国企業は不当な資本規制にあっているが、かまわないのか?
中国の大企業はことごとく国有企業で不当な補助金をもらっていて競争にならないが、これを認めるのか?
儲かったカネを中国は空前の軍備拡大に回しているが、これを許すのか?
5Gを制覇して、世界を中国共産党の監視下に置こうとしているが、排除しなくていいのか?
このようにトランプは、従来からあった米国一国主義という批判を、このような中国の反民主主義、反市場主義に対する普遍的な批判に置き換えることで新段階を迎えたことなります。
そして今回、香港の大規模デモを経て新たに加わったのが、これまた米国人の誰もが否定できない正統派の理念である「人権」です。
私からみれば、とうとう伝家の宝刀を抜いたかという気分にさせられました。
米国が民主主義に基づく人権といったカードを持ち出す時は、もうこれ以上譲れないという最後通牒の響きがあるのです。
中国が作ろうとしている「自由主義開放経済の中国vs自分の国しか考えない米国」という構図は、この米国の「人権」批判で完全に雲散霧消します。
中国はそれを分かっているからここそ、いまや「たかだか一地方」の問題にこれほど必死なのです。
「一方で中国当局は、香港の混乱をめぐり各国から批判を浴びる事態を懸念している。
中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について香港政府は作業の完全停止を発表したが、張次官補は条例改正が法律上の欠陥を補うために必要だとの認識を改めて表明。「どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない」と米側にクギを刺した」(産経前掲)
出典不明
「いかなる国の内政干渉も許さない」という弱々しい中国の言い分は、民主主義を守れと叫ぶ香港のデモの奔流に飲み込まれていこうとしています。
中国はG20で香港問題が議題になると、いままで一切封じてきた香港問題を隠蔽できなくなります。
それが堤防のひと穴となって、同じ問題を抱えるウィグルやチベットにまで波及することを中国共産党は心底恐れています。
だからラム行政長官に「このままいけば廃案になるかも」といった、あいまいな言葉でG20前の幕引きを図ったのです。
馬鹿な日本メディアはこのフェイントに見事に引っかかりましたが、もちろん中国が廃案を許す道理がありません。
今やそれほどまでに香港問題は巨大な位置を占めるようになったのです。
ならばそうか、そんなに中国がおイヤなら、自由主義諸国は奮ってG20で香港問題をとりあげて下さい。
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米朝合意破棄の責任は中共政府にあります。
それが分かった現在においても、日本国内の報道では曖昧のままです。
習が用いた「合意しておいて、土壇場でひっくり返す」この中共伝統のやり方は、これまで主に格下相手に功を奏してきた手法です。経過と友好を重視する民主主義国においての、マスコミや官僚の立場やあり方を逆利用した非常にあくどいやり口です。トランプ大統領はさすがに引っ掛かりませんでしたが、この不信は決定的でしょう。
どうも櫻井よし子氏のロングインタビューなどみると、G20で議長国として日本は人権問題を取り上げる事に消極的に見えます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年6月26日 (水) 20時53分
山路さん
人権問題を日本が取り上げることには消極的であるとのことですが、ウイグルもあり香港問題もあるのが人権問題だと思いますが、これについて何の言及もしないというのではとても情けないことです。もしそのように安倍さんがおやりになるのなら、私は安倍さんに抗議したい気持ちになりますね。
沖縄では尖閣のこともあり、台湾のことも重要な問題です。安倍さんは今回のG20の会議を大きな議論が起こることを避ける方向で行こうとしているのでしょうか。過去のG20がどのようなものであったかは詳しく知りませんが、今回の会議が争いのないものになるとは到底思えないのです。 結果がどうなのか、とても関心があります。
投稿: ueyonabaru | 2019年6月26日 (水) 21時52分
ueyonabaruさん。無理言わんでください。
日本は議長国ですから、全体の議論の調整役です。
安倍氏がどう考えているにせよ、参加国に批判が集中することををテーブルに載せることは困難です。
おっしゃる「争いのないものになる」かどうかは、国際世論次第であって、議長国は争いにはすることは回避せねばなりません。
私が書いた期待は議長国たる日本に対してではなく、その他の主要国が対象ですから誤解なく。
投稿: 管理人 | 2019年6月27日 (木) 02時21分