日米首脳会談 安保撤退論議題にもならず
なかなかスゴイものになっていますね、いえ、G20のことです。
内容的には詳細はまだ伝わって来ないのですが、画像的になんとも圧巻です。
たとえば私がたまげたのはこの一枚。左向きゃにトランプ、右向きゃ習。気の弱い人だったら気絶モノの構図です。
G20公式ツイート https://twitter.com/g20org
香港ではG20前夜にテーマとしてほしいというデモまであったそうですが、日本は議長国という制限の中でこのように触れています。
「香港政府の「逃亡犯条例」改正案を巡る問題で、首相は「一国二制度」の下で自由で開かれた香港の繁栄が重要だとの認識を伝達。新疆ウイグル自治区での人権問題も念頭に、人権の尊重や法の支配など普遍的価値の重要性を指摘」(日経6月29日)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46674680X20C19A6PP8000/
これに対して香港のひとたちの素直な感謝か多く寄せられています。
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3114.html
「安倍は香港問題を習近平の前で取り上げた初めての外国の首脳」「本当にありがとうございます」
「日本が世界で一番初めに香港のために声を上げてくれた。ありがとう日本」
「こういう発言を最初にしてくれるのは、英米日のどれかだと思ってた。でも日本が最初になったのは自然な流れだと思う。歴史的に良好な関係を築いてきたわけだから」
もの足りない、全体議題にしろという人もいるでしょうが、それはかつて中国と香港の一国二制度を取り決めた英国の仕事です。
たぶんメイさんはやるでしょう。プーチンにも「安定は壊すな」と直言していますしね。
もう彼女にはこわいものはありません。最後の花道を飾って欲しいものです。
日本政府としては、これができる精一杯の外交的努力でしょう。
日本は緊張-緩和-緊張というサイクルの中で、時間をかけて民主党時代の尖閣国有化によって破壊された二国間関係を修復しています。
そのかいあってか、習に訪日を約束させるまでになってきています。
中国は分かりやすい国で、日米同盟が堅固な時には必ず妥協してくるのです。
強い者には弱く、弱い者には権高に、これがチャイニーズ・スタイルです。
よく誤解している人がいますが、中国に対して自由主義陣営に属する国として原則的な発言を止める必要はありません。
しかしかといって、徒にこちらから外交的テンションを上げるのは愚策なのです。
なぜなら、日本は中国正面に位置する前線国家だからです。
日米同盟を堅持していれば、中国につけ入る余地はありません。
ところで『表現者 クライテリオン』 という同人誌がありますが、その主宰者・藤井聡氏がこんな巻頭言を書いていています。
「経済と軍事双方で圧倒的な大国となり果たした中国、戦争が真剣に危惧される状況から一転してアメリカとの歴史的会談を実現した北朝鮮。(略)こうした核武装国家と隣接しながら、いまや軍事力、政治力のみならず経済力すら喪失し、20世紀の遺物ともいうべき米ソ冷戦構造の中で作られた日米関係を堅持する以外に大きな外交方針を見いだすことのままならぬ状況に置かれ、わが国の国力、国勢は日に日に衰弱し続けている」
藤井さん、あなたは専門の国土強靱化だけしゃべっていたらどうですか。
日本が長期デフレで国力を絞り尽くしたという指摘はそのとおりですが、根本的に外交情勢認識を間違っています。
北朝鮮は「戦争が危惧される状況から一転」などしてなどいません。
なんどか書いてきていますが、北はいまや南北そろって袋小路状態で、掛け値なしにデッドエンドです。
ですから藤井氏が讃える「北の外交力」とやらは、トランプ劇場の中だけで許される小芝居にすぎません。
第3次会談があるとすれば、ハードルは限りなく高いですよ。
同じ回答ではまた第2次会談の繰り返しで、もう次はありません。
おまけにこれも南北そろって、国内経済は火の車です。
共に政治に火が着くのは時間の問題です。
これは中国もそうですが、共産国家は外圧では倒れません。
倒れる時は、内部から軍隊の一部を味方にした勢力がでなければなりません。
すぐにそのような勢力は現れないでしょうが、弱体化した3代目政治、どこまで持ちますかおなぐさみです。
早めに亡命先をお探し下さい。
また中国の強大化も事実ですが、「圧倒的大国化」したかどうかは疑問です。
中国が相手の弱みにつけんで手を拡げた一帯一路は、各地で拒否されています。
なにより、藤井氏は米中経済戦争に否定的なようですが、この「戦争」は大統領選を前に緊張と融和のサイクルを辿りながら必ず長期戦となります。
なぜなら、トランプが自由主義陣営の大原則である「人権」「民主主義」を大テーマに掲げてしまった以上、後戻りはできないからです。
今日に予定されている米中首脳会談は、互いの言い分の言い合いで終わるでしょう。
習が前回反故にした米中合意の線に戻れば、話は別ですが、いったん蹴ったものを再度辞を低くして受け入れることは、習の国内権力の終わりを意味します。
ですから、互いに主張を言い合うとしかなりようがありません。
つまり、新しい「冷戦」は既に始まっている見るべきです。
かつての米ソ冷戦も緊張-融和の波を刻んだように、この米中新冷戦もまたそのサイクルを歩みながら、10年以上のスパンで続くことでしょう。
体力気力がもたなくなった国が敗者となります。
この米中新冷戦の自由主義陣営最大の軍事的・政治的根拠地がわが国です。
ですから、日米安保を藤井氏のように「米ソ冷戦期の遺物」と理解するのは、どこを見てそんなことを言っているのでしょうか。
ここさえしっかり押えておけば、日米同盟が簡単に崩せるものでないことが分かるはずです。
したがってとうぜんのことですが、朝日の期待をよそに日米同盟の見直しなど議題にすらなりませんでした。
なぜって、今更日米首脳にはわかりきったことで、昨日も書いたようにトランプの安保懐疑論なんか日米合作のパフォーマンスにすぎませんからね。
「日米首脳、貿易早期合意へ交渉加速 安保の重要性確認
日米安保については、両首脳が同盟を一層強化する認識で一致した。トランプ氏は26日の米メディアのインタビューで「米国が攻撃されても日本は必ずしも助けてくれない」と話すなど、日米安保条約への不満を漏らす発言があった。西村氏によると、首相は一連の発言について触れず、トランプ氏からも日米安保条約の見直しなどに関する言及はなかった」(日経6月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46674680X20C19A6PP8000/
日本は米中冷戦の自由主義陣営の策源地でありながら、いや逆にそれが故に直接的緊張緩和に努力すべきです。
これはまったく矛盾することではありません。
いつも棒調子でワーワーと批判だけしていればいいわけではありません。
緊張は軍事的にも政治的にも多大の出費を伴うロスで、国力を削ぐからです。
わが国には憲法をはじめとして、ほんとうに戦えない構造が数多く残っています。
これがかつて安保に庇護されて「戦っているふり」さえしていれば済んだ第1次冷戦との大きな差です。
今回の第2次冷戦において、日本はかつての米ソ冷戦のドイツのような位置にあります。
仮に第4次大戦があるとすれば、それは日本の領海と離島を舞台にする可能性が高いのです。
しかし今の日本には、ドイツのようなNATOの集団安保体制も核シェアリングもありません。
今や英仏を凌ぐに至った核大国・中国に対して丸裸に等しく、最低の核防衛力すらありません。
ないない尽くしを言っても始まりません。
今すべきことは、短期的な政治緊張を巧みに回避しながら、中国の核ミサイルに対処可能な地上イージス・システムの完成を急ぐべき時期です。
それすら出来ないで、藤井氏たちグループが言うような「独自外交」もなにもあったものではないからです。
ちなみにどーでもいいですが、ムン閣下とうちの国の首相とは8秒間だったそうで、この「外交天才」は夜は寂しく在日と飯をくったそうです。
少しは韓国の置かれた孤立した立ち位置が身に沁みたでしょうか。
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コメント
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それにつけても、安倍さんとトランプ大統領の親密ぶりに象徴される米国との蜜月(?)は外交的財産といっても過言ではないと思います。
アメリカとの同盟、友好こそが、いまの日本にとっての生命線だと思います。左翼がいかに口汚く罵ろうと。
投稿: ゆん | 2019年6月29日 (土) 07時33分