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2019年6月24日 (月)

トランプは迷走していない、自己矛盾があるだけだ

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トランプがイランへの攻撃10分前に中止したというニュースが入ってきました。まったく冷や汗が出ます。

【ワシントン=住井亨介】トランプ米大統領は21日、イランの精鋭部隊「革命防衛隊」による米国の無人偵察機撃墜への報復として、20日夜にイランに対する軍事攻撃を準備したが、実行の10分前に中止を命じたとツイッターで明らかにした。トランプ氏は、人的被害が出るため「無人機(撃墜)と釣り合わない」と説明した。 ツイッターによると、攻撃計画では3つの目標を選定。犠牲者数の見込みについて「将官から150人との返答があった」とした。トランプ氏は「私は急いでいない。米軍は出動の準備ができている。イランは決して核兵器を持つことはできない」と警告し、なお軍事攻撃の可能性があることを示唆した」(産経6月21日)
https://www.sankei.com/world/news/190621/wor1906210035-n1.html

ツイッターで述べた「3つの目標」とは、イランの無人偵察機を撃墜した対空ミサイル陣地とそのレーダー施設、指令系統に対する限定攻撃だったと推測されます。
おそらく地中海周辺にいるとされる、2隻の空母打撃群が攻撃主体となったはずです。

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「(CNN) 米海軍が地中海にニミッツ級空母の2隻を派遣し、ロシアを牽制(けんせい)する作戦に着手したことが28日までにわかった。地中海における米空母2隻の同時配備は2016年以降、初めて」(CNN4月28日)

皮肉にもこの直前中止は、タンカー襲撃事件以降ひんぱんに流布された米国謀略説を否定してしまったことになりました。
もし謀略説か正しければ、米国はトンキン湾事件のように、あえて無人偵察機をイラン領内に侵入させ、これを攻撃させることで戦端を切るというシナリオにつながらねばウソだからです。

いまでもロシアや中国は堂々と偽情報を発信しますが、米国はこんな古い手は使いません。というか、使えません。
それは懲りているからです。

かつてのネットが存在しなかったベトナム戦争初期と、今やこれだけSNSが発達して、即座に世界中で情報が共有され、数億人単位で検証されてしまう時代に、偽の証拠を出してしまったらすぐにバレます。

イラク戦争のきっかけとなった大量破壊兵器情報が間違いでなにひとつ見つからなかったために、政権がひとつ飛ぶでは済まず、米国の国際的信用までもがガタ落ちになってしまいました。
あれはブッシュ政権の意図にすり寄った情報を提供してしまったインテリジェンス機関の失敗です。

今回の日本のタンカーはすぐに実地検証されるのですし、それは船の運行に関わっていた日本も関与することになりますから、なんらかの政府の発表があるはずです。
もっともそうなっても謀略説が好きな人たちは、トランプとアベが密約を結んでいるんだぁ、なんていうかもしれませんけどね(笑)。

これに限りませんが、謀略論者の皆さんは、世の中を単純に見すぎています。
世界には巨悪と正しい人たちの二種類の人しかおらず、巨悪は常に悪だくみを巡らしているんだぁ、みたいな見方ですね。
初めから悪者は決定されていますから、ラクチンなもんです。

ところが実際は、別にトランプはイランと戦争をしたいわけではありません。むしろそれに消極的です。

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WSJ 6月23日

トランプはイランに報復攻撃を中止させた理由について、ウォールストリートジャーナルはこう解説しています。

「トランプ氏は実のところ望んでいないイランとの戦争へと突入する瀬戸際にある一方、身内の共和党内に自ら反戦感情を高めたこともあり、イランとの戦いに対する国内の支持も限定的にとどまっている。
このジレンマにより、トランプ氏は20日夜、報復措置としてイランへの軍事攻撃を承認しながら、攻撃直前に撤回する事態に至った
(WSJ 6月23日)
https://jp.wsj.com/articles/SB11286504854297084764204585380901906728056

またウォールストリートジャーナルは、トランプが自己矛盾を起こしていると指摘しています。

「トランプ氏は過去2年、相容れない両方を手に入れようとしてきた。
前任がまとめたイラン核合意から離脱するとともに、前例のない経済制裁をイランにかけながら、イランが手荒い報復に出ることはないと踏んでいたのだ。
イランはこれに対し、軍事行動を激化させるのではなく、核合意の再交渉に応じ、ミサイル開発や中東の代理勢力への支援を制限することも取り決めに盛り込むと目論んでいた」(WSJ前掲)

つまり、トランプはイランを甘く見ていたということになります。
従来の経済制裁を更に上回る圧力をかけたのだから、イランが核合意や中東への革命防衛隊を使った「革命の輸出」を制限できると考えていたのかもしれません。

憶測ですが、この流れの中でトランプのほうから安倍氏にイランを訪問することを要請した可能性があります。
いきなり米国相手の譲歩のカードは切れないものの、親しい日本の仲介にならば妥協点を引き出せると期待したのかもしれません。

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https://premium.toyokeizai.net/articles/-/20863

ところが、思わざる事態が起きました。
それが革命防衛隊が仕組んだと考えられる日本籍タンカーの襲撃と、それに続く米無人機の撃墜です。

「イランはまだ経済制裁による痛みを感じ始めたばかりだ。その痛みが広がるのを向こう数カ月は静観し、その後イランを交渉の場に引き出し、譲歩を迫るべきかどうか決定するのが最も賢明な措置だ、と米当局者は考えている。
問題は、イランによる米軍の無人偵察機撃墜が、この相互の暗黙の了解となっている限度を超えた動きなのか、単なる誤算なのかどうかだ」(WSJ前掲)

これは想定内であり、想定外でもあるギリギリのゾーンでした。
想定内といえるのは、トランプはイラン政権内の強硬派である革命防衛隊を孤立させ、穏健派との交渉を望んでいたからで、過激派がハネることは折り込んでいたはずです。

一方想定外とは、安倍氏のイラン訪問に合わせて日本タンカーを狙い撃ちにするとまでは思っていなかったことです。
その後の無人機撃墜にしても、相手がロシアならまちがいなく倍返しをしたことでしょうから、どういう了見なのかと米国は思ったことでしょう。

ちなみにトランプがこの無人機撃墜を知って、イランがステルス機を撃墜出来る能力があることを知って驚愕したから攻撃を中止したのだという説をもっともらしく言う人もいますが、ナンセンスです。

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イランが発表したトライトンの撃墜 AFP

MQ-4Cトライトンは大型で滞空時間が長く多くの観察機材を積載できるので海洋監視に使われている機材です。
形状はみればわかるようにステルス性は考慮されていませんし、逃げ足もドン足なので危険な任務には向いていません。

またイランは領内に入っていたからだと言っていますが:それもありえないでしょう。
MQ-4C トライトンは領内に密かに侵入するための機体ではありません。
海洋監視用に作られたために広い範囲を監視可能ですから、わざわざリスクを冒して侵入する必然性がありません。

それはさておき、トランプはよく言われるように、いわゆる戦争大好きのタカ派ではありません。
軍事力は盛大に見せびらかしますので誤解を呼びますが、それを実際に行使することについてはきわめて慎重です。

北朝鮮についてもあれだけ大っぴらにダンビラを振りかざして、さぁぶった斬るぞと大声で威嚇しながら、相手が話あいを望むとコロリと快諾しました。
ただし、誤解なきように言い添えると、トランプがやっていることはただのブラフではなく、本気でやる準備を重ね、後は大統領の命令待ちといったスタンパイ状態でのハッタリだから迫力があったのです。
「対話で国を守る」、なんていうムン閣下とは、本質的にそこが違う点です。
【社説】「対話で国を守る」と主張する韓国軍の笑えない喜劇-Chosun

このイランについても、トランプは本心では戦争をしたくありません。
その理由はトランプが、イラク・アフガン戦争の泥沼に引き込んでしまった共和党主流を激しく批判して大統領になったからです。

「トランプ氏は2016年の米大統領選で、米国を中東での戦争へと巻き込んでいった共和党の姿勢を激しく批判することに重点を置き、民主党と同じくらい、党内のエスタブリッシュメント(支配階級)に激しい戦いを展開した。当時候補者だったトランプ氏は、3度にわたる中東での大規模な戦争(1990 ・2003年のイラク戦争および2001年のアフガニスタン戦争)を経て、一般国民の間では厭戦(えんせん)ムードが根強い、とおそらく正確に読んでいた。「これまでにない共和党候補で、大きく変わった党を率いる」とのトランプ氏のイメージは、少なからずこうした姿勢の上に成り立っていた」(WSJ前掲)

トランプは再選を狙っていますから、ブレたという批判には敏感なはずです。
だから、中東に軍事介入することは極力したくありません。
一方で、欠陥だらけのイラン核合意を、もう少しなんとかまともなものにしたいと思っていることも事実です。
米国民の中東は鬼門だからもうこりごりだという感情に忠実であらんとすれば不介入政策をとるしかなく、一方イランの核開発や外国への干渉は限度を超えたと考えれば、今回の核合意廃棄と圧力路線になるわけです。

実はこの二つの立場は相矛盾しますが、彼の中ではバランスをとっています。
その時、その時でどちらかが強調されことになります。

イラン核合意をチャブ台かえししたトランプの行動自体は、決して褒められたものではありません。
そもそも論でいえば、長期間の多国間協議に基づいて締結された国際条約を、一国の意志でチャラにするなどというまねをしていいはずがありません。
TPPについてもそうですが、こんなことを続ければ、米国とまともな条約を結ぼうという国がなくなってしまうからです。
政権が変わるつど、条約を廃棄されたらたまったもんじゃありませんもんね。

しかし一方で、なんどか書いてきているようにイラン核合意は、一定年数が立てば自動的に再度の核開発が可能ですし、弾道ミサイルの保持にも制限がかかっていないという抜け穴だらけの失敗作です。
これをより厳しい条約にする必要は確かにあります。

ですから、この二つは分けて考えるべきです。
トランプのやり方は間違っていたものの、言っていることは正しいのです。
合意離脱が間違っているから、イラン核合意が正しいことにはならないし、その逆も間違いなのです。

このようにトランプのイラン対応は自己矛盾に満ちています。
しかも、過去の言動や公約に忠実であろうとすればするほど、自己矛盾が増大してしまうようです。

今回、トランプがギリギリで停止したのは、イランのタンカー攻撃も無人機撃墜も、イランなりに米国の出方を見るという観測気球だと読んだからです。
イランには、吸着機雷など使わなくても撃沈できる手段はありますし、有人機を撃墜してパイロットが死亡したりでもすれば、米国は無条件で大規模な報復攻撃に出るのは分かりきっていたからです。

「問題は、イランによる米軍の無人偵察機撃墜が、この相互の暗黙の了解となっている限度を超えた動きなのか、単なる誤算なのかどうかだ。トランプ氏は誤算だったかもしれないとの見方を受け入れようとしているようだ。
トランプ氏は米国人に犠牲者が出ていない点に言及。イランに犠牲者が出ることも望んでいないからこそ、米国が軍事行動を撤回したともにおわせた。 そのため米国とイランの双方が引いた一線は、本音では戦争を回避したい大統領によってそのまま放置され、今でも維持されている可能性はある」(WSJ前掲)

このように米国とイランの間のギリギリの駆け引きはまだまだ続きます。


 

 

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コメント

トム・クランシーの軍事スリラー小説'THE SUM OF ALL FEARS' (邦題「恐怖の総和」)では、東西冷戦末期の世界で、アメリカの主導と宗教指導者たちの和解努力でようやく実現する中東和平に強烈な不満を抱くテロリストグループが、手に入れた核爆弾をアメリカ本土のスーパーボウルを狙って爆発させる。
相互不信が燻る米ソは互いに策略を疑い、疑心暗鬼を重ねた末に、双方の大統領が核のボタンに手を置くに至ってゆく。
この小説の映画化作品(邦題「トータル・フィアーズ」)では、テロリスト達がアメリカやヨーロッパの極右の連合という無理くりな設定に変えられているし、小説であれ映画であれ娯楽には違い無い。
のだけれど、疑心暗鬼と恐怖の連鎖のコントロールが難しいこと、他者に疑心暗鬼を起こさせることがいかに効果的であるか、これは普遍性のある問題だなと、読んだ当時を思い出しました。
恐怖は生き残りに必要な本能であり、ゆえに恐怖を煽る者はあり続けますが、昔と今の決定的な違いは、仰る通り、嘘も多いが検証もまた多くなされる世界になっていることですね。
恐怖をコントロールしろ、コントロールする術を見つけろ、これに尽きると思います。

宜野湾よりさん。
ものすごく府に落ちました。トータル・フィアーズはイスラエルの核爆弾が中東で墜落したイスラエルのA-4から回収されてがアメリカでテロ核攻撃に使われる話でしたけど、たぶん同意見です。

トランプ大統領が10分前に攻撃停止させた!のツイートで、真っ先に産経が載せた時点から「んなの大袈裟な!アクション映画の見すぎじゃね?」と怪しいと思ってます。全く否定できないのが歯痒いのですが、かなり盛った話だと感じてます。
但し、実際に反撃能力があるのが米国というのは事実。

限定攻撃で無ければ泥沼の総力戦になりますが、そんなのイラクやシリアより無理!ってことくらい、ビジネスマンでリアリストのトランプは解っているでしょう。
ティラーソンやマティスといった「良識的な軍人上がり」を追い出して歯止めが効かなくなることを危惧していましたが、どうやら冷静にディールしているようです。ギリギリではありますけどねぇ。。。

  トランプ大統領が登場して以来、国際情勢の動きを毎日フォロ-するように私はなっている。この方は、自分の思っていることをツィッタ-で語るということをする。これは国民へ直接語りかけているということになる。歓迎すべきことかもしれない。安倍首相もそのようにしたらどうかと思うのである。

 安倍さんの性格ではそういうことはできないのだろうか。

 安倍さんができないのであれば、だれか代わりの者が安倍さんの意を体してやることはできないか。安倍さんの政治手法は面白味がない。憲法改正にしても直接国民へ自分の考えを訴えれば改憲機運も盛り上がるだろうに と思うのだ。選挙で憲法改正を訴えるのは当然ではあるが、ツィッタ-も使うぐらいでなければと思う。

 トランプファンの私としては、今日の記事ではトランプさんを好評価してくれているように思え、嬉しかった。彼は、いまのアメリカの好景気を演出した男だ。願わくば、大方の方々が安心して見ていられるような落ち着いた振る舞いができますように。

 

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