• 20250119-145554
  • 20250119-142345
  • 20250119-142345_20250119150101
  • 20250119-150249
  • 20250119-152051
  • 20250117-013132
  • 20250117-015927
  • As20241225001545_comm
  • 20250115-143858
  • 20250113-081014

« タンカー襲撃事件で日本のイランとの仲介者の立場は強まった | トップページ | ホルムズ海峡タンカー襲撃事件その2 »

2019年6月19日 (水)

ホルムズ海峡タンカー襲撃事件その1

22-002

ホルムズ海峡タンカー襲撃事件について整理していきます。

ホルムズ海峡とは

まずは場所です。この特殊性が分からないと、この事件は理解できません。
まー、よーこんな危ないポイントを作っちまったんだと、創造主(いたらの話ですが)の意地の悪さを呪いたくなるような場所です。
ここは世界最大のエネルギー積み出し港から出るタンカーのすべてが通過せねばならないポインなのです。
このホルムズ海峡に面する石油積み出し港はこのようになっています。

8e793f990f800b7778bd1f745d222f83dd933211

出典不明

上図を見ればお分かりのように、このホルムズ海峡を封鎖されると、北からイラク・イラン・クウェート・オマーン・カタール・アラブ首長国連邦の石油輸出がストップしてしまいます。とりあえず無事なのはオマーンくらいなものです。
日本向けの原油の8割が止まりますから、日本経済、いや世界経済ははたちまち立ち行かなくなります。

「ペルシア湾沿岸諸国で産出する石油の重要な搬出路であり、毎日1700万バレルの石油をタンカーが運ぶ。日本に来るタンカーの全体の8割、年間3400隻がこの海峡を通過する。船舶の衝突を避けるため幅3kmずつの航行出入レーンが設けられている」
ホルムズ海峡 - Wikipedia

この石油の大動脈の狭い玄関口がホルムズ海峡です。

Strae_von_hormuz

ホルムズ海峡の衛星写真 Wikipedia

Strait_of_hormuz

同上

驚くほど狭い海峡で、大型タンカーが通過できる水深がある最も狭いポイントはたった33キロしかありません。
こういう地形をチョーク・ポイントと呼びます。チョークは「締める」くらいの意味ですから、ここを封鎖してしまえば、世界経済に大打撃を与えることができるわけです。

「水深75m - 100m、最も狭いところでの幅は約33km。イラン本土近傍のゲシュム島ホルムズ島をはじめとして、複数の島が海峡内にある」(ウィキ前掲)

事件概要

6月13日夜明け5時50分、日本の国華産業が運行するパナマ船籍タンカー「コクカ・カレイジャス」から攻撃を受けたとの緊急通報が発信されました。
ほぼ同時、約10カイリ離れた海上二あったマーシャル諸島船籍タンカー「フロントアルタイル」でも、「爆発が起きた」と遭難信号を発信されました。
日本が運用している「コクカ・カレイジャス」は炎上し、漂流を開始します。

00046820hdk

Marine Traffic HP

「コクカ・カレイジャス」からの緊急信号を聞いたタグボート「コスタルエース」が、救助に向かい乗員を収容し、米海軍の「ベインブリッジ」に移送しました。
一方、「フロント・アルタイル」は、近辺を航行していた「ヒュンダイドバイ」に救助されましたが、ここでおかしなことが起きます。

ちなみに米海軍「ベインブリッジ」は、トムハンクス主演の映画『キャプテン・フィリップス』にも登場した艦艇で、世界有数の海賊対応のプロです。

午前9時12分、なぜかイランの小型艇が接近し、この救助船に乗員の引き渡しを命じ、さらには救命艇まで接収していきました。
おそらくイラン海軍の艦船(おそらく哨戒艇)でしょうが、いうまでもなくこんな引き渡しを求める権限はイランにはありません。

同時刻。ホルムズ海峡をパトロール中の米海軍P-8哨戒機が、イラン革命防衛隊が常用するヘンジャン級哨戒艇と、複数の襲撃グループを載せたと見える小型船舶を周辺海域で確認しています。

午前11時頃、米国の偵察衛星は、イランの大型の捜索救命船「ナジ10」が「フロントアルタイル」の近辺にいるのを発見しました。
ちなみにこの時点で、既に両タンカーの火災は鎮火し、乗員の救助も終わっていたので、救難活動ではありえません。

米国は同日、米軍機関紙Stars and Stripes紙で画像を公開しました。これには小型船舶が「フロントアルタイル」右舷に接舷している様子が連続写真で収められています。
https://www.stripes.com/news/middle-east/pentagon-to-send-another-1-000-troops-to-middle-east-as-it-works-to-prove-iran-was-behind-tanker-attacks-1.586429

タンカーの被害状況

6月13日、米国が公表した写真には、日本が運用していたコクカ・カレージャス右舷の被害個所と不発の吸着機雷(リムペット・マインと説明のある物体が写っています。以下の現場写真はすべて米国中央軍HPによります。

20190618125223

米国中央群さらに6月17日には、吸着機雷を外した跡と磁力吸着装置の残存物だとする画像が公開されました。

2_10

さらには「コクカ・カレージャス」の右舷で何らかの作業をするイラン革命防衛隊海軍とおぼしき映像も公開されました。

「当局者の1人によると、映像は米軍機が上空から撮影。イラン艇が攻撃を受けたタンカーと並んで航行し、船体から「リムペットマイン」と呼ばれる水雷を取り除く様子を捉えた。映像には、この艦艇に乗った人物が水雷をつかむ場面も映っているという。
現場海域には米海軍艦「ベインブリッジ」と米無人機、P8哨戒機が4時間にわたりとどまっていたが、イラン艇はその後も動きを続けていた。米国防当局者は、イラン側が攻撃への関与を示す証拠を回収しようとしていたと見ている」(CNN6月14日)
https://www.cnn.co.jp/world/35138493.html

"Imagery taken from a U.S. Navy MH-60R helicopter of the Islamic Revolutionary Guard Corps Navy removing an unexploded limpet mine from the M/T Kokuka Courageous."
米国海軍MH-60Rヘリコプターが撮影したイスラム革命防衛隊がコクカ・カレージャスから不発のリンペット機雷を除去する画像

Image_1
20190618130628

この破孔とこの写真の接舷してなんらかの「作業」をしている位置が同じ場所なことから、この写真がコクカ・カレージャスの破孔を撮ったものであることはほぼ確実です(イランは否認)。

この撤去した後に残された機雷と見られる部品の一部の写真です。

D9s4ix7uiaapzwc

さらに国防総省は、攻撃されたタンカーから不発の爆発物を撤去し、現場から立ち去る監視船のものとされる写真も公開しました。
ただこれらの写真が示す事実は、革命防衛隊がコクカ・カレージャスの右舷船腹から機雷らしきものを撤去して持ち去ったということであって、着けにきていたものではないことに留意下さい。
これは爆発した2発以外にもう1発不発弾があったので回収しにきたのか、あるいはイランがこの海域の安全を守るために撤去していたのか、現時点では決定的なことは言えません。

米海軍哨戒機はこの現場に実に4時間も滞空していたのですから、大量の証拠を持っているとおもわれます。今回、公表したのはそのごく一部です。
同盟国首脳には内々に開示することでしょうが、一般公開は池内恵氏が言っているように、「これ以上開示すると戦争せざるをえないからしない」のかもしれません。

2019061800000014mai0002view

なお、この襲撃現場は革命防衛隊海軍ジャースク基地の目の前です。出来すぎたというえば言えますが、彼らのなわばりではあります。

D9u7zgtucaeeg2o

出所 黒井文太郎氏ツイート

いずれにせよ、この小型船舶は、当時この海域で救助活動をしていた米海軍艦載ヘリからの映像で、きわめて解像度が高くイラン革命防衛隊の船舶であると断定してかまわないとおもわれます。

イランの反応

午前8時30分に事件の第1報を報道。
9時47分、「1隻のタンカーが沈没している」と誤報。
11時25分、「乗組員44人全員イランが救助した」と放送。現実にはイランへ移送された23人は強制的に「ヒュンダイドバイ」から拘束せされたもの。はんぶんの21人の乗員は米駆逐艦に移送されています。
イラン外務省報道官声明。「我々はホルムズ海峡の安全には責任を負っており、今回も敏速に船員たちを救助した」
午後1時33分、イラン国営放送IRIBの報道。「米国は最初の映像なるものを放送したが、それは一昨年1月イェメンの反政府武装組織フーシがサウジアラビアのフリゲート艦をミサイル攻撃した時のものだった」

イランの主張としては、この事件において「ホルムズ海峡の安全に責任を持つ」イランが救助活動をしていただけで、接舷して「作業」している革命防衛隊の船舶は、イエメンのフーシ派がサウジ海軍艦艇を攻撃した際のものだ、ということのようです。

ちなみにここでイランが言っているイエメン・フーシ派はこのような武装組織です。

「フーシ派はイエメン国軍から接収したもののほか、イランから供給された可能性がある弾道ミサイルを80発以上、サウジアラビアに対し発射しており、一部は首都リヤド近くまで到達している」
2015年イエメン内戦 - Wikipedia

仮にイランの主張どおりフーシ派の仕業だとしても、この武武装組織もイランの息がかかった組織で、イラン革命防衛隊から大量に武器やミサイルを供与されていることにはかわりありません。

長くなりましたので、明日に続けます。

 

 

« タンカー襲撃事件で日本のイランとの仲介者の立場は強まった | トップページ | ホルムズ海峡タンカー襲撃事件その2 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« タンカー襲撃事件で日本のイランとの仲介者の立場は強まった | トップページ | ホルムズ海峡タンカー襲撃事件その2 »