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2019年7月12日 (金)

韓国、大量破壊兵器関連物資違法輸出リストが出る

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昨日の産経1面に韓国政府が作った「戦略物資無許可輸出摘発現況」がでてきました。
これは産経記事でも情報ソースとして出てくるように、常識的には経済産業省からリークされたと思われます。
これはよくやられる方法で、政府が公式にいえないことを、懇意にしている記者に漏らして、そちらで火を着けて世論形成をします。

疑い深い私は、欲しい時に欲しいモノが出てくると、眉に唾をつけたくなる損な性分なもんで、昨日の記事にするのを見送りました。
あんまり都合よすぎるので、ひょっとしたカウンター・インテリジェンス(偽情報)を仕掛けられたのか、と勘ぐっちゃったもんで。
しかし、どうやらホンモノのようです。

まずはスクープした産経記事から見てみましょう。少し長いので、すでにお読みのかたは飛ばして下さい。

「生物・化学兵器を含む大量破壊兵器製造に転用可能な物資をシリアやイランなど北朝鮮の友好国に不正輸出したとして、韓国政府が複数の韓国企業を行政処分していたことが10日、日本政府関係者への取材で分かった。
日本側は韓国向けの輸出規制強化の背景として、「輸出管理上の不適切な事案」を指摘。韓国側は世界貿易機関(WTO)の物品貿易理事会で「貿易をゆがめる措置だ」などと撤回を求めているが、多数の企業が不正輸出を企図し、摘発されている事実は、韓国における戦略物資の不正な国際流通に対する甘い認識を浮き彫りにした格好だ。
 政府関係者によると不正輸出企業への行政処分の状況は、韓国で貿易管理を担当する産業通商資源省が作成した「戦略物資無許可輸出摘発現況」で判明した。
 文書には2016年1月から今年3月までの間に142件が処分対象となった事実が記載されている。
 またそれぞれの不正輸出について、「処分日時」「違反業者」「輸出物資」「輸出先」「金額」のほか、行政処分の種類と抵触する国際取り決めが記されている。
 北朝鮮との友好関係にある国々への主な不正輸出では、化学兵器原料に転用できる「ジイソプロピルアミン」がパキスタンに、サリン原料の「フッ化ナトリウム」がイランに、生物兵器製造に転用可能な「生物安全キャビネット」がシリアに、致死性ガス原料の「シアン化ナトリウム」が赤道ギニアに-といった事例が明記されている。
パキスタンやイラン、シリアに生物化学兵器関連物資を不正に輸出する行為は国際的な貿易管理の枠組みである「オーストラリア・グループ」に触れ、加盟各国が不正流通を強く警戒している。 また、日本政府による規制の対象となった「フッ化水素(酸)」もアラブ首長国連邦に密輸されていた。
 韓国政府は不正輸出について刑事事件の対象となったかどうかや個別の企業名を公表しない姿勢を取っている。不正輸出が後を絶たない背景には、韓国の罰則や処分の運用が甘く、抑止効果を発揮できないことがあるとの指摘も出ている。(産経7月9日)
https://www.sankei.com/world/news/190711/wor1907110002-n1.html

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FNN
FNNのほうは、北朝鮮の制裁破りを取り締まっていた国連パネル委員の古川勝久氏が登場してこのようなことを述べています。
「国連安保理北朝鮮制裁委員会のパネル委員だった古川勝久氏は「大量破壊兵器関連の規制品をめぐる輸出規制違反事件がこれほど摘発されていたのに、韓国政府がこれまで公表していなかったことに驚いている」、「この情報を見るかぎり、韓国をホワイト国として扱うのは難しいのではないか」とコメントしている」(FNN7月10日) 
https://www.fnn.jp/posts/00420563CX
この情報自体は特に目新しいものではなく、「韓国国会議員の調査結果」としてすでに朝鮮日報(2019年5月17日)で報じています。
「保守系野党「大韓愛国党」の趙源震(チョ・ウォンジン)議員が産業通商資源部(省に相当)から提出を受けた「戦略物資無許可輸出摘発現況」によると、2015年から今年3月までに政府の承認なく韓国の国内業者が生産・違法輸出した戦略物資は156件に上った。
2015年は14件だった摘発件数は、昨年は41件と3倍近くに増えた。さらに今年は、3月までの摘発件数だけでも31件に上り、急増する様子を見せている」(朝鮮日報前掲)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/05/17/2019051780021.html
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産経前掲

朝鮮日報が言っている「戦略物資無許可輸出摘発現況」とは、今回現物がでてきた産経記事にあるものと同一です。

ちなみに「戦略物資」という表現は日本でも使う場合がありますが、わが国では「大量破壊兵器関連物資」と呼んでいます。
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/sobi-gijutsuiten/sonota/pdf/05/001.pdf

韓国が違法輸出した大量破壊兵器関連物資の内訳はこのようになっています。整理しておきましょう。

韓国から違法輸出された内訳
・BC兵器系列関連・・・70件
・通常兵器関連    ・・・53件
・核兵器関連      ・・・29件
・弾道ミサイル関連・・・2件
・化学兵器関連    ・・・1件
・計                    155件

またこの韓国が違法に輸出したとみられる大量破壊兵器関連物資中で特に目立つのが、核兵器関連です。

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韓国から違法輸出された物資
・15年9月・昨年3月・・・BC兵器関連物資を北朝鮮と武器取引をしているシリア・アサド政権へ
・2017年10月、原子炉の炉心に使われるジルコニウムを中国へ、
・2018年5月、ウラン濃縮のための遠心分離器をロシア、インドネシアなどへ
・日時不明・・・生物・化学兵器(BC兵器)の原料となる「ジイソプロピルアミン」がマレーシア、パキスタンへ
・日時不明・・・ウラン濃縮材料のフッ化水素をUAEに
・日時不明・・・BC兵器製造のためのバルブをイランに
・日時不明・・・BC兵器(サリン)製造のためのフッ化ナトリウムをイランに

毎年摘発件数は右肩上りです。

違法輸出摘発件数
・2015年・・・14件
・2016年・・・22件
・2017年・・・48件
・2018年・・・41件

このリストにあるシリア・アサド政権は化学兵器を使用した実績がありますし、マレーシアに渡ったジイソプロピルアミンは、北朝鮮がマレーシア・クアラルンプール国際空港で金正男を暗殺する際に使った神経作用剤VXの材料物質となったとみられています。 

このリストか本物なら、現実にテロで使用された兵器製造に韓国が関与していたということになります。
これは重大なことで、もしそうなら韓国はG20から追放されるだけでは止まらず、テロ支援国家指定を受けることになります。

この記事で、韓国政府が言いたいことは簡単で、要は「これだけ韓国政府はやっている、日本の言っていることなどとっくに分かって取り締まっている。行政処分も出した」、と言いたいようです。
いうまでもなく日本政府がこのタイミングでリークしたのは、韓国がWTO会議で日本が主張する安全保障上の理由を示せと言ったタイミングを狙ったのでしょう。
あのレーダー照射事件の時のように知らぬ存ぜぬ、オレこそ被害者だ、と白ばっくれた鼻先に、軽くジャブを入れたということです。
なかなか経済産業省のお役人もやりますな。 

通常、不法輸出はどの国にもつきものですが、大量破壊兵器関連物資の場合、外為法によって輸出管理はおろか貯蔵管理まで明らかにせねばなりません。
それが韓国では、「摘発を受けた」だけのことで、同じ業者が再犯を繰り返し、摘発件数は年間二桁から上昇し続けてます。
おそらくは政府の監視が極度に杜撰であったか、摘発しても微罪で済むという政府の事実上の黙認があったのかもしれません。
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FNN
日本の場合、違法輸出だと知ろうと知るまいと、経済産業大臣の許可がない「無許可の貨物輸出」として外為法69条、70条で罰金か禁固を言い渡されます。
特に大量破壊兵器関連物資は最も罪が重くなっています。
また行政罰と社会罰も同時に科せられ、摘発を受ければ最大3年間、貨物技術提供が不可能になりますから、輸出ビジネス業を営むことができなくなります。
この日本の大量破壊兵器関連物資規制の前身であるココム(COCOM/対共産圏輸出統制委員会)では、1987年、東芝機械がソ連の原潜のスクリューを加工する工作機械を売ったという容疑で摘発されて、処罰を受けただけにではなく日米外交問題にまで発展しました。

「1988年(昭和63年)3月22日東京地方裁判所において判決が下され、東芝機械が罰金200万円、幹部社員2人は懲役10月(執行猶予3年)及び懲役1年(執行猶予3年)の量刑が下された。親会社である東芝は佐波正一会長および渡里杉一郎社長が辞職をした」(ウィキ)

今回のような大量破壊兵器関連物資を大量に輸出することなど、日本では考えられもしません。
だから北朝鮮はダミーの会社を作ったり、第3国を経由したりとあの手この手で北に資材を密輸出せざるを得なかったのです。
これがこと韓国になると、なんと「摘発」とやらの数カ月後に輸出業者の資格を喪失するどころか、平然と再犯ができてしまうというお気楽ぶりです。
韓国政府がいう「行政処分」が、いかに杜撰極まるデタラメなもので通り一遍のものだったのかがわかります。

※参考資料  https://hunade.com/yushutukanri-bassoku

また摘発リストを見て不思議に思うのは、この摘発が事前だったか事後だったかわからないことです。
事前ならば、違法輸出品は司直が押収したでしょうが、事後ならばすでに現物は渡ってはならない国に手渡された後ということになります。
推測の域をでませんが、マレーシアの正男暗殺事件など実際に起きた事件から見ても、事後の帳票類の「摘発」である可能性が高いと思われます。
だとするならば、なんのことはない大量破壊兵器関連物資は、北朝鮮やイランの手に渡ってしまってからアリバイ的に「摘発してみました」、ということになりかねません。
というのは韓国政府は「行政処分した」と言っているものの、押収して処分されねばならない物資についての行き先についてなんの表記もないことです。
廃棄処分にしたとも、韓国から製造国(大部分は日本ですが)に返還したとは書いてありませんから、ただの書類チェックを一覧表にしただけのことのようです。
そうでなくては前述したように、同じ業者が何度となく「行政処分」を受けるはずがありません。
このように韓国がいう「適正な摘発の実態」とは、形だけのもの、いや形にすらなっていないアリバイ作りにすぎないようです。
だから、韓国はムン政権になってから再三再四の日本側の問い合わせに対して、返答ひとつ寄越さずにシカとし続けたのです。
おそらくこのような「摘発」は巨大な氷山の一角にすぎず、違法輸出は恒常化していたものと思われます。

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コメント

おはようございます。
リストにあるAGとWAは、抵触する国際輸出管理レジームを指しているのではないかと考えております。
日本は、ワッセナー・アレンジメント(WA)、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、原子力供給国グループ(NSG)の4種類に参加しております。
この情報は序の口で、本当にヤバい情報は隠し玉にしているのではないかと考えております。

: ボーンズ さん。ありがとうございます。そうかもしれません。この部分を削除しました。

またまた韓国はアメリカで「告げ口外交」のようで。
「日本こそ北朝鮮にフッ酸輸出して摘発されてる」って96年の話(まだ金日成時代ですぜ)まで盛ってるというねえ。

東芝機械のCOCOM違反事件、ありましたねえ。ソ連原潜のスクリュー音が劇的に減ってアメリカが激怒したという。
子会社の不祥事だから東芝本体は関係無かろうと、業界からは慰留されたようですがまだ若い渡里社長は潔く辞めてしまいました。
COCOMってのもパリに本部があるというだけで、一切謎の組織でしたけど。そんなのに叩かれてしまいました。今なら有り得ませんね。
ちなみに90年発売の任天堂スーパーファミコンにも「東側への輸出・持ち込みはCOCOM規制に抵触します」というステッカーが貼られていましたね。それだけ東西の半導体やソフトウェア技術に差があったということですけど。

10年後にはSONYのプレステ2をアメリカ軍が大量に買って並列処理のスパコンまで作っちゃうんですけどねえ。。

>また摘発リストを見て不思議に思うのは、この摘発が
>事前だったか事後だったかわからないことです。
>事前ならば、違法輸出品は司直が押収したでしょうが、
>事後ならばすでに現物は渡ってはならない国に手渡
>された後ということになります。

確かに。ここが大事なポイントですね。
あちこちでこのニュースは聞きますが、この指摘は見たことがありません。

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