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2019年8月17日 (土)

習近平の香港鎮圧の意図を阻むものとは

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香港情勢が煮詰まってきました。
おそらく1週間以内にキャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官は、9月に予定されている一帯一路サミットの治安維持の条件が整わないとして、中国政府に軍事介入を要請するはずです。
それは通常、このような大型の国際会議においては1カ月前に警備計画が確立していなければならないためです。
この機を逃してしまうと、中国治安軍(武装警察)が介入する機会を逸します。

「大和証券キャピタル・マーケッツ香港の頼志文(ケビン・ライ)エコノミストは、人民解放軍動員以外の「最悪のシナリオ」には香港での戒厳令発令や非常事態宣言が含まれると、7月25日の顧客向けリポートで予測した」(ブルームバーク8月2日)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-02/PVL3TB6TTDS001

この予測を裏付けるように、中国治安軍は演習を口実に、香港まで10分ほどの距離にある深圳湾体育中心(センター)に終結を完了しています。

中国深センの香港との境界に近い競技場では15日、中国人民武装警察(武警)が演習を実施しているのが確認された。香港で続いている抗議活動に対するけん制とみられる。
 深センの競技場からは、迷彩服姿の男性らが声を挙げたり、警笛の音が聞こえた。競技場の駐車場は100台以上の武警関係車両で埋め尽くされ、ホールローダーが少なくとも3台、放水砲を搭載した車が2台あった。
 中国共産党機関紙の人民日報は、ソーシャルメディアの微博(ウェイボー)に、武警は騒乱やテロリスト攻撃に対応すると投稿。中国の劉暁明駐英大使は、香港の抗議活動の一部参加者にテロの兆候がうかがえるとし「香港情勢がさらに悪化すれば、中央政府は座して傍観していない」と警告した」(ロイター8月15日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190815-00000074-reut-cn

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https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/mainichi-20190815k0000m030200000c.html

上の衛星写真を見ると、スタジアムを覆いつくさんばかりの数百両の軍事車両がひしめきあっているのが確認できます。
台湾からの未確認情報では、11個師団・11万人の軍隊が動員されているというものもあります。

もはや政治的威嚇でも恫喝でもありません。
その時期は終わりました。
いま、待機しているのは、キャリー・ラムからの支援要請を待っているだけのことです。

もちろん、中国が軍事力を行使することのリスクは、習がよほど頭に血が登っていないかぎりわかりきったことです。
その最大の理由は、香港というカネのなる木を切り倒してしまう可能性か高いからです。

「最大の懸念は「天安門事件」が繰り返されることだ。1989年6月、北京の天安門広場に集まった民主化を求める学生らを武力弾圧したのが人民解放軍だ。同様の状況となれば、米国が香港に付与する貿易上の特権を撤回する可能性もある」(ブルームバーク8月2日)

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ブルームバーク前掲

しかし驚くべきことに、これについて奇妙な楽観論が中国政府にはあるようです。

同時に、中国の民主化運動が武力弾圧された1989年の天安門事件にも言及し、香港で天安門事件が繰り返されることはないと強調。「米国は30年前の混乱を材料に中国を威嚇することはできなくなるだろう。中国ははるかに強力で成熟しており、複雑な状況をコントロールする能力は大きく向上した」と主張した。 」(ロイター前掲)

怖いほどの中国の自信ですが、この自らが天安門事件時よりはるかに強大になったという言葉は、もう少し慎重に使ったほうがよい。

米国務省は、香港の自治に対する侵害が続けば、米国法の下で享受している経済上の優先的地位が危険にさらされると指摘。
またボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、香港が英国の元植民地であり信頼できる司法制度があるからこそ、中国本土に対する投資の約6割が香港を通じて行われているとし「中国政府の誤った判断により香港の評価が失われれば、中国に多大な経済的影響が生じる」と警告した」(ロイター前掲)

ここでボルトンは、中国が香港に武装鎮圧に走った場合、 米国は香港に対しても「優先的地位」を剥奪すると述べています。
おそらくこれだけに止まらず、米国議会はいま進行中の中国に対する経済制裁の妥協を拒否し、いっそうの強化を要望するはずです。

香港は中国本土とは切り離した特別区であり、貿易上特別な地位として扱われてきました。

「香港特別行政区政府は2017 年11 月、香港・ASEAN 自由貿易協定(AHKFTA)およびASEAN・香港投資協定に調印しました。両協定には、物品貿易、サービス貿易、投資、経済・技術協力、紛争処理解決メカニズムに関する内容が盛り込まれています。このうちAHKFTA については、調印後、ASEAN10 カ国のうち4 カ国が国内手続きを完了した時点で発効に向けた手続きが開始されることとなっており、最短で2019 年1 月での発効が見込まれています。
これまで香港は長期にわたり「中国へのゲートウェイ」として役割を担ってきましたが、両協定の発効後は、香港からASEAN へのビジネスアクセスの向上とともに、香港の「ASEANへのゲートウェイ」としての役割発揮に期待が寄せられています。
加えてASEAN は、中国政府が推進する「一帯一路」戦略における重要な地域として位置付けられており、香港政府は、同戦略に積極的に参画する姿勢を強めています。両協定の発効に伴い、ASEAN における香港のプレゼンス向上につながることも期待されています」
(ジェトロ『香港・ASEAN FTA にかかる調査報告書』)

このように香港は、単独の経済拠点であるばかりではなく、一帯一路政策におけるアジアに向けた「ゲートウェイ」の役割を果たしてきました。
これが可能となるのは、あくまでも香港に自由な経済、自由な人権が保障されていてこそであり、中国共産党支配下の大陸とは異なると認識されているからです。
中国軍が征服し、米国から優遇政策を断ち切られた香港などは、自由であり繁栄した都市の死骸でしかありません。

そしてもうひとつ習の鎮圧路線を阻む内部的要因があります。
中国政府報道官の強気の発言とは裏腹に、共産党内部で逡巡が生じた可能性があります。
その一つの兆候は、昨日触れた8月9日の李鵬元首相の葬儀で現れました。
胡錦濤元国家首席、朱鎔基元首相、温家宝元首相が揃って欠席したのです。

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産経 習近平総書記(中央)。右は江沢民元総書記、左は胡錦濤前総書記

これは極めて異常な事態だと石平氏は見ます。

「この2人(※ふたりの朱元首相)の健在は今年になってからも確認されている。告別式の不参加は、さまざまな臆測を呼ぶような意外な行動であった。 つまり、江沢民氏を除いた政権内の長老格である胡錦濤・朱鎔基・温家宝の3氏がそろって告別式に参加しなかったのは、事前のすり合わせによる「ボイコット」である可能性が十分に考えられる」【石平のChina Watch】異変うかがわせた「李鵬告別式」 8月15日)
https://www.sankei.com/column/news/190815/clm1908150002-n1.html

石平氏は、この長老たちのボイコット行動が習の進めようとしている香港に対する武力鎮圧方針に反対したものではないか、と見ます。

「しかしそれだけでは、党内のしきたりや慣例に反して告別式の参加を拒否した2人の行動を解釈できない。現在でも一定の政治的影響力を持つ長老の胡・朱・温氏の3人がそろって李鵬告別式をボイコットしたのであれば、そこには必ず、何かの政治的意図があるはずだ。
 一つの可能性として考えられるのは、習近平政権が李鵬氏の訃告(ふこく)において天安門民主化運動の鎮圧に当たった李鵬氏の「功績」を高く評価したことに対し、上述の3人の長老が告別式の不参加をもって「不満と反対」を表明しようとしたことだ。
そして、中国の政治文化において、このような不満と反対の表明はそのまま現実の政治にも向けられる。つまり胡錦濤氏ら長老たちはこのような形で、鎮圧も辞さないという、香港デモに対する習近平政権の強硬姿勢を暗に批判し、反対の立場を鮮明にしたのである 」(石平前掲)

長老世代は第2次天安門事件の経験者です。
あの虐殺事件の後のおそろしいばかりの国際的孤立と、それに続く経済制裁も身に沁みて知っています。
ちなみに助け船を出して、窮地に陥った中国を助けたのは日本です。まったく馬鹿なことをしたものです。
とまれ、習には第2次天安門事件の経験がありません。
あの男は文革にしても第2次天安門事件にしても、妙に観念的なのです。

この共産党長老たちの集団ボイコットが起きたの時期に注目下さい。それは長老たちが現政権に対して意見を言う場である北戴河(ほくたいが)会議の前日だったことです。
常に北戴河は、権力ゾンビである長老たちと、元執行部との抗争の舞台でした。

「このような動きが、毎年8月に開かれる「北戴河会議」の前にあったことも意味深長だ。長老たちも参加するこの非公式会議が、香港問題や米中貿易戦争への対処において失策と失敗を重ねた習政権への「批判会議」となる可能性もあるからだ」(石平前掲)

この北戴河会議は今月の上旬から始まり15日に終了しました。

「北戴河会議では、米国との貿易戦争に加え、抗議活動が続く香港への対応も大きな焦点になったとみられる。
 香港基本法第18条は、全人代常務委が「制御不能の動乱」と判断し「香港の緊急事態入り」を決定すれば、「中央政府が全国の法律を実施できる」と規定。
香港に隣接する広東省深セン市への集結が伝えられる人民武装警察(武警)を香港に投入する場合、この規定を根拠にすることが想定され、全人代常務委の今後の動向が注目される」(時事8月15日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019081501065&g=int

ここでなにが議論されたのかは公表されていませんが、習の対米政策の失敗、そして香港政策の失敗がやり玉に上がったことはまちがいないところです。
このように、習の香港鎮圧方針は、内外で強い抵抗に合っています。

 

 

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