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2019年9月24日 (火)

海外悪性伝染病は国が管理すべきだ

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もう少し海外悪性伝染病について続けます。
今回は江藤農水大臣のワクチン決断で一息ついた形になっていますが、現代において海外から(狭く言えば中国、韓国ですが)侵入する強力な伝染病について阻止体制が整ったわけではありません。
問題は先送りされています。

今回の豚コレラやかつての宮崎口蹄疫、あるいはトリインフルなどの特徴は、余りに感染速度が速く、旧態依然たる防疫指針では対応しきれていないということでした。

もはや地方自治体では対応出来ず、処理しきれないのは明白です。
結局各県がそれぞれの対応をしてしまい、有効なひとつのシステムとして機能していませんでした。

モデルとなるのは英国です。
かつての英国はヨーロッパにおける家畜伝染病大国でした。
言っちゃナンですが、今の中国か韓国のようなもので、いったん発生すれば当該国はおろか近隣諸国にまで感染をひろげて世界規模のパンデミックを引き起こすという迷惑国でした。
たとえば、有名なところでは口蹄疫、BSEなどがあります。

この原因は公共事業費の削減です。
英国の場合、サッチャーの事業仕分けでした。
伝染病予防はなにも起きなくてあたりまえ、日常的には国民の眼にふれませんから、恰好の予算削減の対象にされます。
国は国家財政を緊縮させて「小さな政府」を作りたいために、本来国としてやるべき全国規模の防疫を、地方自治体に移管させました。
結果、政府の省庁、各地方自治体がバラバラの意志で動いた上に、不十分な予算で初動制圧できなくなった結果、全国的パンデミックとなっていき、ヨーロッパ中から袋叩きに合うはめになります。

その反省から生まれたのが、2001年に作られた「英国口蹄疫緊急対策」でした。
この冒頭に書かれているのは、 英国における海外悪性伝染病は「国が直接に対策に当たる」ことです。
なんだあたりまえじゃん、と思わないこと。
日本は今でも国は指針は出しますが、やるのは地方自治体ですからね。

001_edited1「英国口蹄疫緊急対策」マニュアル NHKクローズアップ現代「口蹄疫初動はなぜ遅れたのか」(2010年6月7日放映)以下図版は同じ
http://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=63680187&blog_id=610475

「英国口蹄疫緊急計画」と日本の防疫体制を比較しながら検証してみましょう。
まず最初の農家からの通報からいきましょう。

農家からの通報の流れ
・英国/ 農家⇒英国農水省(DEFRA・デフラ)の通報窓口
・日本/ 農家⇒地元民間獣医⇒県家畜保健衛生所⇒国立動物衛生研究所(動衛研)⇒県

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英国は口蹄疫などの海外悪性伝染病の緊急対応窓口を常にオープンしています。
日本なら自治体の家保に通報するところですが、いきなり農家から国単位の窓口に通報できるという点が根本的に異なっています。

日本は台風や地震でも明らかになりましたが、建前上の救援は一義的には自治体で、手にあまったら国です。
しかし地方自治体は財政基盤が弱いためにヒトモノカネの三要素が足りていませんから、常に国をあてにしています。
国も国で家伝法などの指針は作って大枠は決めていますし、いざとでったら手もカネもだすのですが、その境界が曖昧です。
あいまいだから、初動時にうまくまわらなくなります。

宮崎口蹄疫の場合、第1頭目が単独で出たために、第2頭めが出るまで16日間の間があき、その段階まで口蹄疫の可能性のまま留保されることになってしまいます。
農家は速く確定してほしいと要求しますが、県の腰は重く、結局、東京の動衛研にウィルスを送り、そこからの回答が戻って確定されるまで実に20日間も浪費ししてしまいました。
この初動の致命的遅れがすべてを決定しました。

そして次に発生した事例が海外悪性伝染病であると確定された場合、英国ではどのような対応をとるのでしょうか。
第2に、この緊急対応の流れを比較します。

確定後の情報共有の流れ
・英国 /通報を受けた英国農水省⇒家畜衛生局、保健省、外務省、警察、国防省、首相官邸など30箇所以上の関係組織に緊急連絡し、緊急会合を開催。
・日本/
動衛研⇒県、農水省消費・安全局(宮崎口蹄疫当時)※ただし、現在は首相官邸に連絡。

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英国が確定と同時に招集したのが、農水省家畜衛生局は当然として、防衛、外務、そして首相官邸まで招集がかかります。
とくに外務と防衛まで声がかかるのがすごいですね。
外務はEUがらみでの対応となるからですが、防衛は英国にかぎらず米国も同じで、感染症は狭い意味で殺処分を軍隊に頼むからだけではなく、国民の安全保障にダイレクトに関わるからです。

一方日本では、その時の農水大臣の資質によって左右されます。
かつての赤松氏のようなボンクラが座ると悲劇になりますし、経験豊かな江藤氏なら素早く動くでしょう。
しかしこれでは困るのです。システムは属人的であってはならないからです。

政府に国として対応するという意志がないために、農水省の中ですら通報は安全局に止まり、ましてや他の省庁に通報するなどは農水官僚の頭をよぎることさえなかったはずです。
ですから赤松敵前逃亡事件が発生するのであって、
これを政治的に批判しても意味がありません。
なぜなら、それを可能としてしまった硬直した防疫システムを見ねばならないからです。

かくして、宮崎口蹄疫事件においては、官邸にはおろか、ウィルス封じ込めのための道路の管理統制をする警察、空港などの消毒体制に権限を持つ国交省はわれ関せずでした。
ましてや、殺処分の主力となるはずの防衛省はカヤの外。
このように宮崎口蹄疫事件における初動において、日本には政府がなかったも同然だったのです。

一方、英国口蹄疫緊急対策計画のシステムがもっとも力を注いでいる点は、この省庁間、首相官邸との一刻も早い「情報の共有」です。日本になかったのは、単に口蹄疫の現場での検出を可能とする簡易機材だけではなく、いかに政府が情報をいち早く共有し、時間単位で進行する口蹄疫を撲滅するために国家を上げて動く危機管理体制そのものだったのです。

英国の口蹄疫緊急対策のもっとも重要な考えは、「数時間以内の初動制圧」です。このことを可能にするために英国はその障害となる要素をひとつひとつ解決していきました。

第3に緊急対応をみます。
●緊急対応
・英国/農水省から緊急即応処理チームを投入。
・日本/家保が受け持つが、能力を超えた場合は自衛隊に災害派遣を要請。

まずバラバラであった責任や権限体系を国が一元化しました。
さきほど述べたように口蹄疫と疑われる牛が出た場合、国への通報窓口に直接にコンタクトできるシステムが確立され、英国農水省の口蹄疫対策即応チームと処分チームが現地に飛びます。
そして判定がクロだとなった段階で移動禁止・殺処分が開始されます。

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下の写真は、要員と機材を載せたコンボイです。常時待機しています。

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いちいち日本と比較して恐縮ですが、宮崎の場合、処分を誰がするのか、獣医師か、当該農家か、はたまた県職員か、自衛隊かでもめました。
一般の県職員は大型家畜の殺処分は勿論初めてで役にたたず、家保、獣医師は全国に応援依頼してもまだ数が足りず、自衛隊を災害派遣してもらい、更には全国から民間の獣医師ボランティアが大勢手弁当で駆けつけてなんとか凌ぐありさまでした。
一方、英国は逡巡なく英国農水省が緊急投入した専門チームがこれにあたります。

同時進行で、国は農水省、首相、閣僚、官僚など関係30組織に口蹄疫の緊急速報をかけます。そして確定判定が出た段階で、「中央危機管理委員会」が立ち上がり、国内のすべての牛の移動は即時凍結されます。

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実は、このときに動いているもうひとつの緊急対策ブロックがありました。それが査定人グループです。英国においては国が指名した査定人グループが常設されているのです。

そこで第4に殺処分される家畜の査定について比較します。
査定
・英国/査定人が殺処分と同時に訪問。
・日本/国が提示

査定人は常に最新の家畜相場を把握した査定のプロです。
日本の東国原宮崎県知事のように殺処分に当たって当初は「財産権があるので処分は難しい」とゴネ、数日後には事態に慌てふためいてとんでもない補償金額を口走って混乱に輪をかけてしまうような失態が起きないために、国があらかじめ選んだ査定人を選任してあります。

口蹄疫が確定されたと同時に公定査定人は農家を訪れ、補償金額の取り決めをして処分が直ちに行われるようにセットします。処分にかかる費用も国が負担します。

このように確定判定-処分-査定の三つのフェーズが同時に進行しているわけです。
逆に言えば、この三つが揃わなければ初動制圧は困難だということになります。
2007年の口蹄疫発生時にはこのマニュアルが実地に検証されたのですが、確定から処分官僚・終息までかかった時間はわずか12時間でした。

 

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コメント

生物・化学災害の重大性を考えると、英国のようなシステムにならざるを得ないと思います。
県の○○課というなかで、その分野の専門知識がある人員は10人いないと思います。移動などで人員も変わるようなので、重大案件を決定するのは、難しいですよね。知事さんがその分野で精通してる訳もありませんから。
官庁さんといのは、省益が命のようなことを聞いてますが、せっかく優秀なエリートさんがいっぱいいるので、もう少し国家、国民のことも考えてもらいちです。
野党も下らないことは言わないで下さい。

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