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2019年9月20日 (金)

トランプがボルトンを切った訳とは


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「トランプの暴走」という表現をメディアは好みますが、違うんじゃないかなとこのところ思うようになっています。
トランプは「迷走」などしておらず、一貫して「トランプ」なのです。
彼にとって閣僚はいわば使い捨ての駒のようなもので、本気で彼らの言う政策を実行する気はありません。
彼のディールにとって必要なら使うし、不要ならマティスやマクマスターのように辞任を求めるし、公然と楯突いてくるようなボルトンならば追い出すだけのことです。

私はトランプは暴走して核戦争も辞さないどころか、通常兵器による軍事介入すら喜ばない「平和な紳士」だと思っています。
たとえば朝鮮半島海域に3隻の空母を並べて見せるのも、北朝鮮を交渉の場に引きずりだすための仕掛けだったのであって、その巨大な軍事力を行使する気など初めからありませんでした。

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-...

ボルトンを補佐官という強面を中枢に据えて見せたのも、おい正恩坊や、おとなしく会談に出てこないと痛い目に会うぞ、ということを分かりやすく伝えたかったからであって、ボルトンの主張する「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)というパーフェクトゲームをやる気は元々なかったのです。

ただ、交渉開始前には、ディールのハードルを目一杯高くしておかねば値切られてしまいますから、思い切り高い要求を突きつけたのであって、本気でボルトンが望んだ完全非核化など夢物語にすぎないと、トランプは冷めた頭のどこかで考えていたことでしょう。
だから、第1回直接会談で「朝鮮半島の非核化」という絶対に呑んではならない文言を呑んでしまい、これで北朝鮮の非核化とは在韓米軍の撤退とイコールだということを公式に認めてしまいました。

トランプにとって韓国はいわば67年前の朝鮮戦争が残した不良債権そのものであって、早くこんなものは処分してしまいたいはずです。
完全編成の陸軍第2師団を対北朝鮮対応だけの目的で韓国に貼り付けおくことは、彼ならずとも馬鹿馬鹿しい軍事的リソースの濫費でしかありません。
第一、在韓米兵にとって韓国は居心地の悪い国ナンバーワンなのです(日本は米兵にとっていたい国のトップですが)。
ましてや、受け入れ国が手を替え品を替えて嫌がらせを仕掛けては追い出しにかかっているわけですから、米国ならずとも馬鹿馬鹿しい限りで、トランプからすればいかにスマートに米国のメンツを保ったままで撤退するかが関心事だったと思います。

最低でも2022年の戦時統制権返還時までには、在韓米軍は引き上げさせたかったと思います。
戦時統制権はよく話題になるテーマですが、軍隊の編成・指揮権を意味し、ハッキリ言えば韓国軍は米軍の言うがままに動け、勝手に動くなという権限です。
この権限に基づいて、米軍は韓国軍の要所要所に連絡将校という形でお目付役を配置しました。
勝手に北進されたり、クーデターを起こされてはたまらないからです。

それそもこんなヘンな形になったのは、朝鮮戦争時に、大統領の李承晩が敵前逃亡をするなど韓国軍が悲惨なまでに使い物にならなかった祟りです。
米国は以来、軍事的に韓国を全く信用していないし、米韓合同司令部の形で、自分の指揮下に置いておきたいと思ってきました。
話が逸れますが、よくネットには韓国軍が対馬に攻めて来るということを言う人がいますが、韓国軍が戦時統制権を握られているかぎり、米軍がそんなことを許可するはずがありませんから無理です。
やる気なら別枠の特殊部隊(特戦団)か海兵隊を使うかしかありません。
実際に、軍事政権時に起きた光州暴動の鎮圧には特戦団を投入しました。
ですから、現実問題として韓国の日本攻撃は、特殊部隊や海兵隊を使ってやればできるが、そのていどの小部隊の攻撃しかできないということになります。

話を戻します。
まぁ韓国からすれば屈辱的な半主権状態にあったとも言えるわけですから、しつこく返せ返せと言い続けてきました。
で、返還に合意したわけですが、裏を返せば韓国軍みたいな者の指揮下に在韓米軍が入る気などみじんもないということです。
米国には外国軍人の指揮下に米軍将兵を千人以上置いてはならないという法律までありますから、戦時統制権の返還イコール在韓米軍は自動的に消滅ということになります。

では在韓米軍が完全撤退してしまうのかといえば、それは米韓合同司令部の枠内だけのことで、国連軍は埒外ですから、米軍は一定数の軍人を国連軍名義で駐屯させることができます。
国連軍司令官は米軍人ですから、その権限で韓国軍を統制することも不可能ではありません。

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一方、逃げる準備は着々と整えられていて、在韓米軍はいまかつてのワイヤートラップの位置であったソウル以北から、半島中部のピョンテク(平沢)のキャンプ・ハンフリーズに集中させています。
上の地図を見ると、この位置まで在韓米軍司令部、国連軍司令部、第8軍司令部を下げた意味が分かると思います。
ちなみにどうでもいいですが、この図は米軍出所ですが、シー・オブ・ジャパンって書いてありますね。韓国さん米軍に抗議しなくっちゃ。なんせイケアの店内地図にすら噛みついたもんなぁ(笑)。

それはさておきピョンテク移動が意味することは、北朝鮮が38度線に集中させているロケット砲や大砲の射程外に出てしまうということです。
いままでは北朝鮮は南進しようとすれば、38度線のすぐ南に駐屯していた米軍第2師団に引っ掛かってしまい、自動的に米国と交戦状態になってしまいます。
このような自動参戦戦略をワイヤートラップと呼びますが、中部のピョンテク移動が意味するものは、もう米軍は韓国の楯の役割はしない、という意味です。

その上、頭が不自由なムン政権はソウルにある米軍施設のヨンサン(龍山)基地 の返還まで求めたようで、どうせやくたいもない反米民族主義を鼓吹したいのでしょうが、正気の政府ならやりません。
だって首都ソウルに米軍基地を置いてある意味は、 ここに米軍がいることによるワイヤートラップ効果を狙っていたのですから。
ソウルを「火の海」にすれば、米軍も自らの頭上に降ってくる砲弾を浴びねばなりませんからね。
ですから、ムンがヨンサン基地撤去を求めたことは、自分から頭を差し出してソウルを撃ってくれと頼んでいるようなもんです。

ちなみに沖縄に米軍基地があるのも、同じワイヤートラップ戦略ですから念のため。
沖縄に米軍がいることによって中国や北は攻撃すれば、自動的に米軍も攻撃してしまうことになりますから、ためらいます。
米軍がいるから抑止が効いた状態でいられるわけです。自衛隊だけならためらわず撃ってきます。
だからヒダリの人たちがよく言う「米軍がいるから戦争になる」のではなく、「米軍がいるから戦争にならない」のです。

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さて冒頭のトランプに話を戻します。
トランプからすれば、北朝鮮が再び南進しないと約束し、米国に届く長距離弾道ミサイルを撃たなければ、一定の核施設を閉鎖すれば、多少の核保有は認めてやってもいいと考えていているフシがあります。
これらの不安定要因があるから米軍はいつまでも韓国に駐留せねばならないのであって、それさえなくしてしまえば、米軍が韓国に駐留する意味はなくなるからです。

ところが頑固な哲人軍人のマティスはぜったい同盟解消に繋がるようなことには賛成しなかったし、ボルトンに至ってはかつての成功体験のリビア方式の焼き直しであるCVIDに固執しやがって、オレの華麗なディールをジャマしやがる、この頭の堅い奴らめ、とトランプが思っていても不思議はありません。

海野素央明大教授はこう述べています。

「北朝鮮との核・ミサイル交渉において、ボルトン氏は「負の存在」になりました。トランプ大統領は、ボルトン氏解任後に行われたホワイトハウス記者団とのやり取りで、同氏が北朝鮮との交渉の場で「リビア方式を持ち出したのは大きな誤りであり、これで交渉が後退した」と明かしました。
リビアのカダフィ政権は、核を全面的に放棄した後に制裁を解除する「リビア方式」に応じました。しかしその後、政権は崩壊しました。体制維持を最優先する金正恩朝鮮労働党委員長にとって、リビア方式は到底受け入れられない手法です」
(WEDGE Infinity9月15日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/17364?page=2

まぁそうでしょうね。
トランプ御大の口から直接に、ボルトンが進めてきたCVIDを「リビア方式をもちだしたのは間違いだった」とまで言われてはホワイトハウスにいる場所はありませんもんね。
正恩にとってボルトンがいることによって体制護持の約束が阻まれていると考えるでしょうし、第2回会談を破綻させたのはこのボルトンの野郎のせいだ、と大いに憎んでいたことでしょう。
一方、それが北との妥協点だと考えていたトランプにとって、もはやボルトンは目障りだったのです。

いまのトランプの頭の中を占めているのは実にシンプルで、再選の二文字です。
かつてトランプにとってボルトンという「強硬」の記号をホワイトハウスに置くことで御利益はありました。
米国と敵対する諸国は軍事オプションも辞さないとするボルトンがトランプに耳打ちすることを恐れていました。
だから、ボルトン流の正論がトランプ外交となった時期もあったのですが、これでは交渉がなにひとつまとまりゃしないぜ、どうすんだ成果なしと国民から言われるぞ、とトランプ翁は心配を始めたのです。

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https://webronza.asahi.com/national/articles/20161...

それは再選の大統領選挙が1年先に迫ったからです。
米国大統領は2期でワンセットと考えていますから、何かなんでも再選を勝ちとらねばなりません。
当選した2016年の米大統領選挙で、トランプは海外に駐留している若い米兵を本国に戻すと支持者に約束しました。
この公約の一丁目一番地を、トランプはまだ履行できていません。

ですから外国からの米軍撤退の完遂に無理筋でも目鼻をつけねば支持者にどのツラ下げて出るんだ、という思いに駆られているようです。
実際に、共和党の支持基盤の中西部でも米軍撤退の希望は強いのです。

「これまでに筆者(海野氏)は、中西部オハイオ州シンシナティなどで開催されたトランプ集会に参加して支持者を対象にヒアリング調査を実施してきました。彼らは軍事介入に否定的で、駐留米軍撤収に肯定的です。仮に18年にもわたるアフガン戦争に終止符を打つことができれば、トランプ大統領は来年の選挙においてかなりの政治的得点を稼ぐことができます。
 例えば、民主党大統領候補とのテレビ討論会で、トランプ大統領はジョージ・W・ブッシュ元大統領とバラク・オバマ元大統領ができなかったアフガン戦争を終わらせ、自分は「偉業」を達成したと強調して、相手候補にノックアウトパンチを浴びせることができるかもしれません。アフガニスタンからの米軍撤収はトランプ大統領の再選戦略に組み込まれています」
(海野前掲)

このトランプ再選の悲願ともいえるアフガン撤退のためにトランプは、キャンプデービットにタリバンの代表を呼ぼうとして、ボルトンと激しい口論になったといわれて います。
ボルトンはいま米軍が撤退すればアフガンまた元のタリバンが残虐な支配をし、軍閥と内戦を続ける修羅の国に戻ると見ています。
その意見はまったく正しいのですが、これはトランプの再選戦略にはまったく敵対するものだったわけです。

イランもしかりで、ボルトンが主張したイランへの攻撃などトランプからすればとんでもないことで、火種をこれ以上増やして米兵を外国で殺すのか、ということになります。



「米メディアによれば、ボルトン氏はトランプ大統領がイランとの核問題に関してロウハニ大統領と会談をして、関係を築くことにも反対の意を表明しました。来年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で議長役を務めるトランプ大統領がプーチン露大統領のサミット復帰を提案すると、ボルトン氏はこれにも反対の立場をとりました」(海野前掲)

もうこうなると、ボルトン路線はことごとくトランプの方針とぶつかるわけで、とうとうトランプは切れたのでしょう。
そのように考えてくると、トランプはある意味で変わっていません。
彼は一貫して自分の都合に合わせた「駒」を選んでいるだけで、それがその時その時で変化しているにすぎないからです。

私の見立てが間違っていることを祈ります。

 

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コメント

結局トランプのやっていることはオバマの「脱世界の警察路線」とほとんど変わらないですね。
そのうちシリアからも完全撤退するのでは。

北朝鮮に関してもCVIDを諦めるのは、最初の期待値の高さからするとガッカリです。

何をするかわからない狂犬ぶりこそがトランプの交渉の武器だったのに、軍事オプションは採るつもりが無いということが露呈してしまいました。これからはお得意のディールもままならなくなるでしょう。再選は厳しいと思います。

 ブログ主様の見立ては正しいと思います。

ボルトンの言うように、リビア方式とかCVID以外の合意であれば、何の意味もありません。
トランプ大統領は、たとえば合意が成ったとして、それがどう担保されるのか? そこを説明できないのであれば支持者は離れるでしょう。

ただ、北朝鮮は変化しているようにも見えます。
統一や対中方針に関して、「韓国とは考えが違う」という事をしきりにPRしているようにも思えます。
また、ウランバートルでは度々日朝交渉が行われている由で、それは拉致問題ではなく合意時の経済援助に関してであるとはいえ、そういう姿勢はあるようです。

専門家ではありませんが、「北朝鮮は中共や韓国ではなく、日米寄りの決断をするはず」との見解も出て来ています。
にわかには信じられませんが、トランプ大統領のたぐいまれな忍耐力は見るべき長所であろうし、頭をやわらかくして考える必要もあるのかな、とは思います。


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