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2019年10月 3日 (木)

トランプの北中距離ミサイル発射への反応に注目

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北朝鮮がおそらく潜水艦からと見られる水中発射準中距離弾道ミサイルを打ち上げました。
北極星」(KN15) のようです。
ただし、現時点ではロシアから買った1950年代製博物館所蔵品なみのロメオ級しか保有していませんので、仮に実験に成功したとしても(失敗したという説もありますが)、実戦配備可能かどうか、きちんとした精密誘導ができるかなどは詳細は不明です。

公表されている射程は3000~5500キロで、外観上は1960年代にソ連が開発したRT-15/RT-2Pと酷似していますが、細部で異なっています。
おそらく北朝鮮の弾道ミサイル開発は、ロシア専門家の指導の下で行われていることは確実で、たぶん開発に必要な設備、部品などは細かく分解されて民生機器に混ぜられて輸出されたようです。
ロシアは知らぬ存ぜぬと言うでしょうが、北朝鮮の核開発には常にロシアの影がつきまといます。

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北極星kN15

それはさておき、韓国軍が日本にGSOMIAに基づいてデーターを要求してきたようですが、まだ期限は来月ですので防衛省は教えたと思われます。
恥を知れ、お前のほうが廃棄したんだろう、という声もありますが、日韓防衛当局者としては双方ともに当然といえば当然の行動です。
だって地平線の向こうはレーダーでは見えませんからね。
日本も見えないし、韓国も見えません。

日本は情報衛星を持っているからアドバンテージがあるということを言う人もいますが、常に張りつきで朝鮮半島上空にいるとはかぎりません。
逆に日本にとって、前回の短距離ミサイルをロストしたということを韓国は妙に喜んでいましたが、失探してもしょせん韓国の頭上に降ってくる短距離ミサイルですから、こちらとしてはまぁねということです。
同様に今回の日本海に落としたミサイルを韓国がわからなくなっても、それはしょせん日本に落ちるだろうということで、やっぱりあちら様はまぁね、です。

つまりは北朝鮮の弾道ミサイルについての情報収集に関して、奇妙な住み分けができてしまったということが問題なのです。
韓国ざまぁということより、本来スムーズに受け渡しができて日米韓で共有化されるべき北朝鮮関連のデーターに、パーテーションが出来てしまったことを問題視すべきです。

JSFさんの見立てでは日本を標的にしています。

「推定最大射程は2000km弱となり、日本まで届くがグアムまでは届かない準中距離弾道ミサイルとなります。つまりこれは日本の安全保障に対する直接の脅威となるミサイルです」
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20191002-00145072/

さて、今後トランプがどのような対応を見せるかが見物です。
実務者会談は既に日程に登っているわけで、正恩はここで潰したくないという米国の気分をしたたかに読んで、グアムや米本土には届かないが、日本は射程に納まっているというギリギリの準中距離を撃ったわけです。
ながらアッパレな瀬戸際戦術です。

これを今までの20発のようにトランプが容認すれば、これで米国は中距離弾道ミサイルまでは容認するという意思表示となります。
となると、トランプの北朝鮮相手のディールのゴールラインがはっきり見えたわけで、なんのことはない米国、ないしはグアムに到達しなけりゃいいということになり、短・中距離はどーでもいいということになります。

ボルトンは閣外に去った後に、はっきりと「北には核を手放す気はない」と明言していましたが、このまま推移すれば未完成の長距離核の開発中止と、ガラクタ核施設のいくつかをスクラップにしてみせれば、オーケーという可能性が高まりました。

だとした場合、大山鳴動ネズミ一匹ということになります。

その場合、トランプの「怖さ」は、ほんとうにコイツならやるかもしれないという、マッドマンセオリ(狂人論理)が終焉を迎えたということになります。
トランプはこれまで北朝鮮に対して発した「炎と激怒」「完全破壊」、あるいは「金体制は長くは続かないだろう」といったストレートすぎる脅迫的台詞は、まさにこの狂人理論を実践したものでした。

たとえばこんなことをしてみせます。

「ホワイトハウスに軍高官とその配偶者を集め、写真撮影を行った際に発した「嵐の前の静けさ」や、自身のTwitterに書き込んだ「一つのことしか機能しないだろう」といった真意を読みづらい発言も、狂人理論に基づく発言です。その狙いは敵=金正恩の心を乱し、北朝鮮首脳部を不安にさせることです」
(海野素央2017年10月16日 現代ビジネス)

軍幹部を呼んで「ひとつのことしか機能しない」といえば、一般的に軍事攻撃を意味するとしか取りようがありませんが、これもただのディールのためのブラフにすぎません。
空母を3隻朝鮮半島沖に集結させたのも同じ文脈です。

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https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11...

また当時国務長官だったティラーソンがしていたバックチャンネルを駆使しての外交努力について、こんなひと言で切り捨てます。

「これに対して同大統領は、自身のツイッターに「私はすばらしい国務長官に、『キミは小さなロケットマン(金正恩氏)と交渉しようとして、時間を無駄にしている』と伝えた」と投稿し、同長官の外交努力を否定するようなメッセージを発信しました」(海野前掲)

これは当時、ティラーソンの「優しい刑事」役と、トランプの「強面の刑事」役を使い分けて揺さぶりをかけているのかとも思いましたが、さっさとティラーソンをクビにしてしまったところをみると、これもただのブラフだったようです。

要は、交渉相手から「予測不可能な狂人」と見られることこそが狙いで、交渉テーブルに着かせればいいだけのことです。

ところで米国政治研究者の海野氏は、このトランプの「狂人戦法」には、ニクソンからの影響が強いとみています。

「トランプ大統領がこうした信念を持つきっかけとなったのは、1987年12月21日、まだ41歳の実業家にすぎなかった彼が、1通の手紙を受け取ったことでした。その手紙には、リチャード・ニクソン元大統領の署名がありました。(略)
確かにトランプ大統領の言動には、そのはしばしにニクソン元大統領の影響を見てとることができます」(海野前掲)

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55872

そこにはキミのテレビショーは素晴らしい、ぜひニューヨーク知事に立候補してみたまえという内容だったそうで、いまでもこのニクソンからの手紙はトランプ家の家宝だそうです。
たぶん今では大統領執務室に安置されているのではないでしょうか。
トランプは、以後ニクソン師をまねて「物言わぬ大衆」を味方にしてエスタフリッシュメントを叩きながら、交渉相手を脅し上げて交渉を有利に運ぶという手法に徹してきました。

ボルトンを閣内に招聘したのも、このマッドマンセオリの一幕にすぎず、ボルトン流CVIDを掲げて見せることで、お前もリビアのカダフィのような末路になりたいのかと正恩を脅したわけです。
これもトランプからすれば、狂人のふりを装うディールにすぎなかったようです。

トランプには一定の手法があると海野氏は指摘します。

「トランプループ」には「アジェンダ設定型」「無理難題型」及び「意表型」の3種があります。
議論の場においてトランプ大統領は、相手よりも先に勝手にアジェンダ(議題)を設定したり、無理難題を押し付けたり、意表を突くような言動をとります。
そうすることによって、まず相手を心理的に揺さぶり、イライラさせるのです。
トランプ大統領が巧みなのは、相手がイライラし始めると、今度は突然、一転して相手を安心させる言動に出るところです。いったん相手が安心したところで、再び不意を突いて翻弄する言動をとり、議論や交渉の主導権を握っていくのです。
その過程で相手は、あたかも無限ループにはまったかのように、堂々巡りの議論を強いられることになります」(宇野前掲)

一度トランプのテに乗ると、交渉相手にとって無理難題を吹っ掛けられます。
北朝鮮の場合は完全非核化で、彼らからすれば核を手放すなんて話にもならない要求です。
核がなけりゃ、ただの世界最貧国にすぎませんからね。
通常の外交なら、ここで職業的外交官同士が延々と実務交渉を積み上げるのですが、トランプは一切無視して、いきなりトップの大統領がドーンと議題を設定しイエスかノーかを迫るわけです。

ここでビビるともう負けで、着きたくない交渉テーブルにおびき寄せられてしまうことになるという手筈です。

今回の北朝鮮に対しては典型的にこの「トランプループ」を使っています。

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55872

ただし今回勝手が違ったのは、正恩が米国との直接交渉を熱望していたというトランプそっくりさんだったことです。

つまりは、そっくりさん同士のダマし合いということです。

では、着いた後どうするのかといえば、後はできるだけ自国にとって有利な結末で妥結させるという予定調和に入ることになります。
北朝鮮の核の場合、米本土に届かない核ミサイルは廃棄する代わりに、米国に体制護持を認めさせるという妥協点です。
北朝鮮にとって体制護持を最も危うくさせている策源地は在韓米軍ですから、これを撤退させろということになります。
これが北朝がいう「朝鮮半島の非核化」という意味です。

ま、ご承知のようにトランプの持論は就任前から在韓米軍撤退論ですから、別にそれ自体は障害とはなりません。
たぶん憶測ですが、第2回ハノイ会談で、トランプはボルトンがノーといわなければ、このへんで手を打ったかもしれませんね。

一定幅の北朝鮮の核保有を容認し、米本土を核の脅威から守るということで、これで北朝鮮と米国はウィン・ウィンとなるという寸法です。

「米朝にとっては「本土優先論」と「核保有容認論」の取引には確実なメリットが存在します。一見、これらは二律背反のようにも思われますが、双方は補完し合い両立し得るものです。
北朝鮮は核保有国として容認され、金体制維持が保証されます。言うまでもありませんが、金委員長は国内における権威を一層高めることができます。
一方、仮に米朝の交渉が成果を上げた場合、トランプ大統領は「私の交渉能力及び取引のスキルによって、米軍や一般市民の血を一滴も流さずに米本土を守り、問題を解決した」とアピールできます。その暁には、25年もの間、歴代米大統領や政権が手を焼いてきた難題を、自分が平和的解決に導いた、そう国民に訴えるでしょう」(海野前掲)

残念ですが、海野氏の観測があたりそうな気配ですが、それを見極めるために今回の中距離弾道ミサイルの発射にトランプがどう反応するかが試験紙となるでしょう。

※ 秋の模様替えをしました。いかがですか。

 

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コメント

初めまして、いつもブログを拝読しており、勝手ながら応援しております。
ところで今回の北朝鮮ミサイル発射の件で、『よもぎねこです♪』という方の10月2日ブログ記事の内容について、是非ご意見を賜りたいと思いコメント致しました。上記ブログでは、『北朝鮮は現状維持勢力であり、韓国は現状打破勢力である』というものです。私個人はその理由について妙に納得させられ、驚きましたので、この記事について是非違う方のご意見を賜わりたく、宜しくお願い申し上げます。

トランプさんの反応は案の定、会談に重きを置いた矮小化された内容だったと思います。

ただ、今回もそうですが、最近の発射は米国に通知済みだったように感じられます。

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