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2019年10月15日 (火)

台風19号は人災か?

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極めて広域にわたり大きな被害を出した台風19号について、情報が整理されつつあります。
今、ネットやマスコミで一斉に様々な情報が出てきていますが、その中にはあらかじめ結論を定めてしまい、攻撃対象を政治的にしたいという思惑が見え隠れします。
私はこれには賛成できません。まだ、行方不明者のすべてが発見されてもおらず、、現地調査は始まったばかりです。結論めいたことを言う段階ではありません。 
私はできるだけ、客観情報の積み重ねをして行きたいと思います。

地理的条件はおそらく多岐にわたりますが、今回の特徴は河川の決壊が非常に多かったことです。
NHKの集計によれば以下のようです。
2019年10月13日 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191013/k10012128651000.html

●決壊した河川・・・21河川・24か所
●越水した河川   ・・・延べ142河川

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NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191013/k10012128651000.html
河川の決壊現象と越水をNHKは別の現象のように分類していますが、実は同じ事を言っています。
堤防の破壊現象は、2015年9月の
常総水害調査団だった土木学会の山田正(中大理工学部河川・水文研究室)によれば このようなプロセスで発生します。

①堤防に河川の水が満水近くまて押し寄せます。

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②一部の水が堤防の先端を乗り越えて溢れだします。これが越水現象です。図の右側が河川側です。

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③さらに越水が増して、堤防は役割を果たさなくなります。越水した高速の濁流は堤防の裏側の基盤を崩し始めます。

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④越水した水のエネルギーによって、堤防の裏側から崩壊を開始します。

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⑤堤防は裏側からの崩壊により薄くなりもはや、外から流れ込む水のエネルギーに耐えられず、全面崩壊します。
一度そこから堤防が崩壊すると、一気にそこから洪水が引き起こされます。
 

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今回の台風による河川の決壊の多くは、河川に想定以上の水量が流れ込んだために、水が堤防を超えて溢れだしまったことです。
そして、溢れた水が堤防内側を削り取って薄くしてしまった結果、堤防が崩壊してしまいました。

今回もこの越水現象は観測されています。
たとえば今回の19号台風で被害が大きかった千曲川のケースは、この越水現象によるものです。

気象庁によると、台風19号による大雨の影響で、午後8時50分、長野県上田市の千曲川が氾濫した。 東京都災害対策本部によると12日午後2時50分、東京都八王子市廿里町の南浅川、午後3時45分に青梅市成木の成木川がそれぞれ氾濫した。
 静岡県菊川市の牛淵川、埼玉県東松山市の荒川水系・都幾川でも川の水が堤防を越え氾濫した」(産経10月12日)

国土交通省北陸地方整備局によると、2019年10月13日午前2時15分ごろ、長野市穂保地区の千曲川の水位が上がり、堤防が崩れ始めました。

その時の画像が監視カメラに残っています。

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https://mayuponstyle.com/news/7201/

ゾッとするような光景ですが、河川の水が大きく堤防を超えて内側に侵入し始めたことが分かります。
この画像は先述した越水のプロセス図解の②に当たります。
このように堤防をいったん大規模に超えられると、堤防は内側から水のエネルギーで急速に浸食され、わずかの時間で堤防が決壊します。

では、どのように対策したらよいのでしょうか。
堤防を高くするというのは一見簡単そうに見えますし、現実に嵩上げ工事をしているところもありますが、土木学会によれば堤防丈を高くするためには堤防の基礎から下部にかけて補強せねばならず、一から構造計算をやり直すことから始めねばならないそうです。
そのうえ仮にその堤防嵩上げ工事をしようとすると、今回多摩川での決壊場所のように必ず反対運動が起きて社会問題化し、工事に至らないこともたびたびありました。

今回の19号の場合、多摩川はかつての大水害を教訓にして治水事業がされてきましたが、堤防が低い箇所あってそこから洪水が起きたという説もあります。
多摩川氾濫の因果関係は明確にされていませんから、あくまでも今の時点ではそう考えられているということです。
その工事がされなかったのは「二子玉川の環境と安全を考える会」という団体によって建設が出来なかったためです。

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このような一部住民の反対運動によって堤防建設が阻止されたケースは、2018年7月の倉敷市小田川の決壊地点にもありました。
関連記事「小田川合流視点はなぜ決壊したのか ?その歴史的背景を探る」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/httpcommitteesj.html

私は地元で環境保全運動に関わってきましたが、環境を安全の上位に置く思想にはなじめませんでした。
住民の安全が確保されて初めて環境を考えることができるのであって、この多摩川の反対運動のように良い景観を残したいというのもわからないではありませんが、そのために大洪水になって住民の生活を根こそぎ奪ってしまっては元も子もありません。

反対運動をする人には代替案として、河道を掘り下げて流量を増やせばよいという主張する人もいますが、これでは水量がかえって増してしまい、水の運動エネルギーはそのままの勢いで合流点である河川の狭い部分に突入します。
結局、その大きな川と小さな側の合流点がある箇所から水が逆流するというバックウォーター現象が引き起こされます。

私は河川に流れ込む水量自体をコントロールするのが、合理的解決手段だと思います。
たとえばダムでは相当量の水を貯めておくことが可能で、ダムで
流入量をコントロールできれば、あるいは何度かに渡って段階的に処理することができるようになります。
ダムによって河川に一時に大量の降雨が流れ込むことを防ぐことが可能です。

今回何カ所かのダムで緊急放流が事前に宣言された時には、まるでダムが危機を呼び込むような口ぶりのコメンテーターがいましたが、真逆です。
ダムは降雨を貯めて河川流入量を減らしていたのであって、ダムがなければその分の水量はとっくに下流に濁流となって襲いかかっていたはずです。

今回の千曲川のケースの場合、長野県の特殊な地形があります。

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上の地図を見ていただければ、長野県が周囲を山で囲まれていて、その中央の盆地に市街地の長野・松本・佐久・諏訪・伊那があることがわかります。
このうち長野・松本・佐久は、今回の洪水の現場となった千曲川水系です。
つまり、長野県の北半分で降った雨は、必然的に千曲川に流れ込むことが定められているわけです。
このように周辺の山系からの降雨が盆地を流れる河川に集中して流れ込んでしまうことが、千曲川が氾濫した地形的原因です。

 さて、ここで問題となるのは、河川には流せる水量に一定の限界があることです。
今回のように想定を超える水量が河川に流入した場合、河川はその水量の急増に耐えきれずに越水現象を起こします。

上流にダムがあれば、放流量は川の流下能力を考慮して決めるので、安全に流せる量を増やすことが可能です。
ダムだけあってもダメで、ダムと堤防が組み合わさって初めて有効な治水対策となりえます。

ところが千曲川の場合、不幸にも田中康夫知事がダムを全否定してしまいました。
田中氏にかかると、ダムはすぐに埋まり「看視出来ない環境負荷を生み」「公共事業依存体質を生む」そうです。
この主張については次回に検証しますが、彼の脱ダム宣言は波紋を呼び、各地でのダム反対運動につながっていきます。
民主党政権が主導した八ッ場ダム中止もそのながれです。

このことも含めてダムの治水機能について次回に続けます。

 

 

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コメント

 今や安手のリベラル・コラムニストに成り下がった感のある小田嶋隆は、気鋭の新人の頃、
「普段は環境破壊に脅えるシマフクロウの事を思うと胸が痛みますと運動しているが、近所の堤防が決壊すると治水対策の不備を掲げて行政訴訟をする、世田谷区在住の大卒専業主婦」
とデスっていたものです。
 今回何か発言するか楽しみ。

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