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2019年10月25日 (金)

八ッ場ダムがなければ中流域・下流域の治水施設が支えきれなかった

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また台風が接近しています。被災地にこれ以上の災厄が降らないように祈るばかりです。
といっても日本人は祈るばかりではなく、日本の内政は古来治水を最重要テーマとして取り組んできました。
今回大きな洪水をもたらした千曲川は信濃川となって日本海に流れています。
下のグラフをご覧いただくと、いかに日本の河川が急斜面をすさまじい勢いでくだっているのかお分かりになると思います。
標高800m強から流れだし、約300㌔でストンと海にゴールします。
かつて日本の河川を見たヨーロッパの研究者は、「これは滝だ」といったといわれています。


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富山和子『川は生きている』

ヨーロッパを代表するロアール川も標高はアルプスですから1200mと高いのですが、ゆるやかに落ちて河口まで1000㌔弱かけて下っていきます。
東南アジアの最大の河川であるメコン川は、標高わずか100mから流れだし、実にえんえんと1000㌔有余をかけて河口に達しています。
これを見ると、日本の河川が世界でもきわめて特異な存在で、急峻な山岳から滝のように河口に流れ込む構造を持つことがわかります。

しかも多くの都市部は、長野県のように周囲を山岳で囲まれた盆地に位置しています。
日本の国土の地形をみてみましょう。

・山岳と丘陵地・・・73%
・台地           ・・・11%
・低地(海抜100m以下の地域)・・・14%
この14%の低地に国民の半分が集まって暮らしています。
それは日本の総資産の75%にも及びます。

東京も長野と変わりません。

000184208
デジタル標高地形図「関東」国土地理院

「周囲を関東地方の山岳が囲み、その北西に位置するや山裾から南東の方向って緩く傾斜し、東京湾に向かって下がっていきます。この広い地域が関東平野なのです。
そしてその一番低い場所、すてわち洪水が起きたら絶対に水が集まって来る場所に首都東京があるのです。
言い換えれば、東京のある場所は元々、関東平野全体に降った雨が山岳地帯から削り取った土砂を集めて堆積させ、わずかに海水面よりも顔をだしたような低い場所なのです」(『首都水没』土屋信行)
さて、このような危うい場所に首都を置いている以上、治水を怠った場合、たちまち東京のみならず多くの国民が住む地域は水没することはあきらかです。
では、今回の19号災害にあって、八ッ場ダムがいかなる働きをしたのかみてみましょう。
これについては民主党政権に対しての政治的立場と重なってしまったために、賛否が民主党政権の脱ダム政策を肯定するか否かで分岐してしまいました。不幸なことです。
本来、治水はイデオロギーと無関係に考えられるべきであることは、言うまでもないことだからです。

しかし朝日新聞にいわせると、「八ツ場ダムの効果称賛、専門家は疑問視「冷静に検証を」(10月17日)だそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASMBJ6F0GMBJUHNB01Q.html
朝日は民主党政権の応援団長のような役どころでしたから、八ッ場ダムの効果を否定したいようで、『論座』でもダム否定派の水源開発問題全国連絡会・共同代表・嶋津暉之氏の論考を掲載しています。
八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか? - 論座 - 朝日

ここで嶋津氏はこう述べています。
「八ツ場ダムの治水効果については2011年に国交省が八ツ場ダム事業の検証時に行った詳細な計算結果がある。それによれば、栗橋に近い地点での洪水最大流量の削減率は8洪水の平均で50年に1回から100年に1回の洪水規模では3%程度である。本洪水はこの程度の規模であったと考えられる」(論座前掲)

また、満水時の八ッ場ダムは7500万立方メートルの水を溜め込むことができますが、19号洪水を防げたのは、たんに試験運用の段階にあってほぼ渇水状態だったからにすぎず、本格運用が始まれば湛水力はとうぜん小さくなると考えています。
したがって、元来、八ッ場ダムが洪水防止に寄与する削減率は3%ていどにすぎず、それも今回はカラだった偶然によって多少貢献したにすぎないというのが反対の論旨のようです。
こういうダム反対論に対して長年ダムに関わってきた写真家・大村拓也氏は、日経クロステック(有料会員記事)に実態を報告。
篠原章氏が大村記事を紹介したフェースブックから引用させていただきます。ありがとうございます。
常時湛水の本格運用が始まっても、貯水余力は6500万立方メートルあり、「これで十分」とまでいえないまでも「効果なし」というも難しい。「八ッ場ダムの評価は専門家の検証を待つべきだ」という意見はもっともらしく聞こえるが、すでに現段階でも「効果なし」ないとはいいにくいだろう。著者の大村氏は、「埼玉県久喜市栗橋にある利根川の観測所では、13日午前3時に氾濫危険水位8.9mを上回る9.61mの水位を記録。計画高水位の9.9mに迫った。
今後の検証が不可欠だが、八ツ場ダムがなければ水位がさらに20cmほど上昇していた」というが、湛水後であっても、このダムの貯水力に救われる可能性は高い。清水建設JVによる500日の工期短縮という提案は素晴らしい判断だったと思う」

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ここで、出てくる清水建設JVとは

自民党政権下の2014年、国土交通省は八ッ場ダムについてあらためて入札を実施し、500日を越える工期短縮(=工費節減)を目玉とするプランを示した清水建設JVが落札した」

この500日早めた清水建設の判断の結果、幸い今回の19号に間に合ったわけです。

このように見てくると、先日の「八ッ場ダムだけ見ていてもわからないこと」にも書いたように、日本の治水はこのような仕組みで成り立っています

・上流域のダム群
・中流域の遊水池群
・下流域の堤防
・都市部地下の外郭放水路

これらが組み合わさって一本の河川の氾濫を防いでいるのが「総合治水」です。
ですから、八ッ場ダムを否定して建設しないとなると、中流域・下流域・都市部のすべての治水施設に背負いきれない負担をかけることになります。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-b080f1.html 

 

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コメント

毎日、記事の更新を楽しみにしております。その該博なちしき

先程は、作成中の駄文を操作ミスで送信してしまいました。大変失礼いたしました。前回、今回と水害防止は堤防を高くすればいいとの単純なものではなく、総合的で長期的な国家の営みであることを教えていただきました。普段から農業、災害防止等の蒙を啓かされる記事に富み、有り難いブログであると感謝しておりましたが、この度は、自分の無知にため息が出ました。有難うございます。天候不順な折ですので、御自愛されますよう。

 3%の効果しかないと専門家の方がおっしゃいますが、この3%が洪水の大被害から住民を守ったことになるのかもしれないとも思われます。江戸時代からの努力があって洪水は防げているのですね。

 3%の効果しかないと言うや八ッ場ダムに否定的な学者たちは、ほかにどのような洪水防止策があるとお考えなのかご説明いただきたかったです。

永野川、思川の水量の問題で、吾妻川はそんなに意味なかったんだが。

群馬県にはいくつダムがあるか知ってるかい?利根川の支流がいくつあるか知ってるかい?川全体の流水量はどれだけあるか知ってるかい?ひとつのダムで賄いきれるわけがないじゃん!

ダムがなくてもフロンティア堤防があれば良いという意見がありますがフロンティア堤防のメリットデメリットについて管理人さんはどのように評価されてらっしゃいますか。

KOUさん、川辺川ダムの国交省と反対派との対立点ですね。
国交省はフロンティア堤防が技術的に確立されたものではなく、部分的なものしか実例がないことを否定理由にあげていたようです。
一方反対側は当時流行のダム悪玉論に乗って、ダムがなくてもフロンティア堤防があればいいという内容だったようなきがします。

私はどちらかを選べということではないと思いますよ。
ダムで大きく防ぎ、ハザードマップで危険区域はあきらかなのですから、その部分はフロンティア堤防にしていけばよいのではないでしょうか。

これが18年前ですから、この後熊本県知事がいう「ダムに頼らない治水」がどうされたのか、私も知りたいくらいです。
失礼だが、なにもしていない。地元反対派が反対し、民主党政権が正式に川川ダムを中止し、やがて他ののダムも解体され、フロンティア堤防で代替するわけでもなく、漫然と今回のような大災害が来るのを待っていたようなきがしてなりません。

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