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2019年11月

2019年11月30日 (土)

香港人権法成立後はどうなるのだろうか?

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香港人権法が成立しました。香港の未来にとってきわめて重要な曲がり角となるはずです。

「ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主】トランプ米大統領は27日、香港での人権尊重や民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法」に署名し、同法は成立した。ホワイトハウスが発表した。香港に高度な自治を認める「一国二制度」が機能しているかどうか米政府に毎年の検証を義務付けるのが柱。成立を受け、中国政府は28日に発表した声明で「重大な内政干渉だ」と反発。報復措置を発動する考えを示した」(日経11月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52701890Y9A121C1000000/

トランプが署名するかどうかはらはらさせただけに、素晴らしいことです。
まぁトランプとしては署名を拒否しても、議会に戻されて3分の2で成立してしまいますから、抵抗しても無駄だ、やるならカッコつけてということでしょうがね。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52701890Y9A12

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https://www.oita-press.co.jp/1002000000/2019/11/28...

たいへんに素晴らしいことです。
これを急速に悪化する人権状況に追随するべく、通常の手続きを省いた緊急手続きで通過させ、全会一致で可決した米国議会に敬意を表します。
すでに人権調査は先行して開始されており、選挙の惨敗を見て今後さらなる力づくの弾圧を準備しているはずの中国にとっても、大きな抑止効果が生まれるはずです。

ただし民主化の前途はきわめて厳しいとみるべきです。
議席数においては、452議席の85%を民主派が獲得しましたが、それは小選挙区一人区制度で勝ったほうが総取りできたからです。

しかし総得票数においては、民主派が167万票だったのに対し、親中派は123万票で、6対4の力関係ですから、地滑り的勝利といっても約4割の市民は民主派への批判票に投じているわけです。

中国が投票結果を読み間違えたと先日書きましたが、彼らの票読みで勝利確実と出たのは一面で間違っていないとも言えると同時に、この4割の親中層を過大に評価しすぎたともいえます。
中国はこの間の状況のイニシシャチブを握ってきたのが一貫して民主派であるという政治のダイナミックスを忘れてしまったために、静的に香港情勢をみていた結果ともいえるかもしれません。
宮廷内闘争にそのエネルギーの大部分を消費してしまい、まつろわない大衆を力づくでねじ伏せた経験しかない中国共産党にそれを求めるのは無理というものですが。

それはさておき民主派に投じた市民も、独立を望んでいるわけではなく、余りにひどすぎる警察暴力に怒っているだけにすぎないともいえます。
今後、彼ら失うものを持つ階層を納得させるだけの説得力を、民主派が持たねばなりません。

あたりまえですが、香港を破壊し尽くして勝利してもなんの意味もないのです。
実はいまやその守るべき香港の魅力が急激に落ちています。

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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/474926

抗議デモが始まったのは今年6月以降ですが、以来香港は観光客が訪問するにはふさわしくない戦場となってしまいました。
観光客は激減し、ホテルや飲食店や小売店は悲鳴を上げています。
また、投資の格付けが落ちたために、アジアの金融センターとしての地位も崩壊しつつあります。
不動産取引は低迷し、むしろ香港人が外国に逃げて行くほうが目立つようになりました。

この傾向は危険で、民主派がこのまま暴力路線をとり続けた場合、中国につけ入る隙を与えかねません。
元来、香港には中国、特に地続きの深センとの商取引で潤ってきた階層が多く存在します。
彼らの多くは大陸出身で、香港人という自覚に乏しく、彼らが強固な親中派の地盤を形成しています。
彼らからすれば、この6月からはヒドイ目に会い続けてきたという恨みがあるでしょう。
ですから民主化を見る時、このような階層とその支持者が半分存在し、彼らは政治と経済の安定を欲しているということを絶対に忘れないほうがいいのです。

一方中国は人権法をにらみつつ、いままでの血の弾圧路線を修正しないでしょう。
共産党にとって方針修正は自らの誤りを認めたことなり、それは党の権威の失墜につながるからです。
だからいかに現実とそぐわなくても、香港市民の怨嗟を招こうとも、犠牲者の山を作ろうとも、逮捕者だけの収容所をつくらねばならなくなったとしても、知ったことかとばかりに叩き潰そうとするでしょう。
それが共産主義で、彼らはその流儀でやってきました。

ただしあくまでも香港行政庁と香港警察を使っての間接統治でやるしかないことが、中国の弱いところです。
これがウイグルやチベットといった内陸部ならば、外国記者の眼がとどかないことをいいことにナチスばりの民族浄化政策を大規模に展開できました。
世界の眼が集まっている香港ではそれができないところが中国の悩みで、ウィグルならば6月の初めのデモが起きた時点で、武装警察が自動小銃を乱射させて屍の山を築いているはずです。
逆に言えば、今や中国政府の暴力装置と化してしまった香港警察の中に、中国の命令に背く部隊が現れた場合、一気に情勢はひっくり返ります。

中国は自ら引き下がることが難しい位置にいます。
既にかつての香港の国際金融センターとしての魅力は暴落しているのですから、かまうことはない一気にカタをつけるとばかりに弾圧路線に邁進する可能性も
高いと思います。

これに民主派がさらなる火炎瓶で応えるならば・・・。
やめていただきたい。香港の友人として心から忠告しますが、これ以上の破壊は、4割の安定を希望する穏健派市民層を中国につけてしまうことになりかねません。

今後民主派が勝利する可能性が残されているとすれば、有力国に仲介してもらうことです。
適任は英国です。英国はかつての香港の宗主国で一国二制度という折衷案を呑んだ当事国ですから、責任をとっていただかねばなりません。
英国に仲介に入ってもらうためには、香港独立論を封じなければなりません。

米国もやる気ならできないことはありませんが、なにせかんじんのトランプの腰が引けています。
今回の人権法でも署名しないという観測が一部ではささやかれていたほどです。
これはトランプが米中貿易協議で中間的妥協をしたいという気持があって、この時期中国ともめるのは得策ではないと考えられたからです。

トランプはこういう自分の大統領選にらみのディールを打つからいまひとつ信用できないのですが、これに対して議会のほうが強硬でした。
ぶっちゃけトランプにとって香港は票にならない、ただそれだけのことです。
理念保守のペンスなら違ったでしょうが、とまれよくも悪しくも彼はそういうタイプなのです。
彼の票田であるラストベルトや中西部の農村地帯ではホンコン、フェア?ですから、票になるのはあくまでも中国との関係です。
制裁を長引かせれば景気を減速しますからいったん締め、中国製IT製品をブロックしつつ、逆に米国産の大豆やメイズ(飼料用トウモロコシ)を中国に大量に買わせる、これがベストのはずです。
だから香港問題に手を出して中国を刺激するには得策の時期ではない、そう考えていたと思われます。

しかしこのトランプの思惑は、議会によって拒否されました。
議会は大統領の弱腰を強く批判し、今回の法案を推進したのは共和党のマルコ・ルビオなどの共和党保守派で、トランプからすれば次の共和党内での指名にぜひ取り込んでおきたい層です。
一方、ルビオは、ウィグル問題と香港問題をリンクさせて捉えており、人権問題という中国最大のネックをぐいぐいと締めつけようとしています。
また、民主党は元来グローバル民主主義派が多いということもある上に、香港を見捨てようとするトランプの姿を浮きださせるためにも人権法を推進する側に回りました。
つまり、米国は珍しく香港をめぐる対中強硬姿勢で一枚岩となったのです。

それにしても、かつて大量にいた議会やメディアのパンダハガーたちは、いったいどこに消えたのでしょうか。
民主党は人権法で中国と対峙し、あのNYタイムスですら11月16日にはウィグル人権抑圧の中国内部文書を暴露してしまいました。
これは大きなスクープで、「米国の朝日新聞」ですらやる時はやります。

世界の世論はやっとウィグルと香港が、中国の全体主義のもたらした共通の産物だと気がつき始めました。
「竹のカーテン」と戦っている最前線は韓国などではなく、香港だという認識が共有されつつあります。
気がついていないのは、わが国政府くらいなものです。
国賓で招くのはもはや変えられないとしても、これこそが外交カードではないのですか、安倍さん。

 

2019年11月29日 (金)

習近平、独裁権力を行使して慈悲なき取り締まりを実施せよ


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NYタイムスが11月16日にウィグル人権抑圧の中国内部文書を暴露しました。
これは大きなスクープで、「米国の朝日」ですらやる時はやります。

なんどか書いてきていますが、今香港の青年たちが戦っているのは自分たちの未来はウィグルの現在だと考えているからです。

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191118/k1001218...

NYタイムスは、中国共産党の恐怖のウィグル支配を白日の下にさらす403ページにのぼる内部文書をスクープしました。
続いて11月24日には、この国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した文書を、英紙ガーディアン紙、BBC放送など欧米メディアがほぼ一斉にその内容を報じました。

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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52677580X21C1

ここには過去3年間、新疆ウイグル自治区で行われたウイグル族やカザフ族ら約100万人の強制収容所や刑務所への収容などの弾圧政策の実態が生々しく記されています。

中国は従来までこのウィグル人の強制収容所のことを「職業訓練施設」と呼んでいて、独自文化や宗教の自由も認めていると言ってきましたが、まったくのでたらめでした。


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https://www.bbc.com/japanese/50542004

習近平の行った発言が記録されています。
2014年4月、習はウイグル族過激派い テロが起きた後に新疆ウイグル自治区を訪問し、ここて習は「独裁権力を行使して慈悲なき取り締まりを実施し、過激派によるテロ、浸透、分離主義を一掃しろ」と演説しています。

その言葉どおり、ウィグル民族はいまやエスニック・クレンジング(民族浄化)の対象とされています。
習はこの「無慈悲な取り締まり」を実現するために、2016年8月に陳全国を新疆ウィグル自治区の党委員会書記に任命しました。
この陳の任命された時から、この民族浄化は急速に拡大しました。

陳がとった政策は、一切の人権を無視し、ウィグル人を強制収容所に収容し、共産党支配に服従する社会を作ることです。
この根拠となったのが14年の習演説文書で、これを陳はウィグル人に大量に配布しました。
この強制収容所の内情がこのウィグル文書で暴露されています

「文書は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した。
ICIJにはBBCパノラマや英紙ガーディアンなど17の報道機関が参加。今回流出した中国政府の公文書を「中国電報(The China Cables)」と呼んでいる。
文書には、2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安当局のトップだった朱海侖氏が、収容施設の責任者らに宛てた9ページの連絡文書も含まれている。
その連絡文書では、収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう指示。以下の点を命じている。対に脱走を許すな」

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・「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」
・「悔い改めと自白を促せ」
・「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」
・「生徒が本当に変わるよう励ませ」
・「宿舎と教室に監視カメラを張り巡らせて死角がないことを(確実にしろ)」
(BBC11月25日)
https://www.bbc.com/japanese/50542004

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https://the-liberty.com/article.php?item_id=14810

地方当局者はこの陳の民族浄化政策に対して、漢民族とウィグル族との間の緊張を激化させ、経済成長を鈍化させると消極的だったのですが、陳は強制収容所政策に抵抗して数千人を解放するなどの融和政策をとった地方幹部を解任し、投獄刑に処しました。

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陳全国https://savetibet.org/the-origin-of-the-xinjiang-model-in-tibet-under-chen-quanguo-securitizing-ethnicity-and-accelerating-assimilation/

この陳全国という男は、中国におけるいわばSSのヒムラーに相当します。
陳全国の経歴について、チ
ベット自治区の人権問題と民主化に取り組国際団体「チベットのための国際キャンペーン(ICT)」のHP(英文)に経歴が載っています。
河南省出身。2011年、胡錦濤国家主席(当時)にチベット自治区の党委書記に任命され、1989年の大規模デモに対して戒厳令を敷いた胡と同じようにチベット弾圧で頭角を現し、チベット自治区と新疆ウイグル自治区での強硬姿勢で注目を集めるようになりました。

陳全国の暗黒の経歴はこのようなものです。
陳はチベット自治区党書記に就任するやいな、わずか数カ月でチベット民族の隅々まで監視する「グリッド管理」を導入しました。


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https://www.youtube.com/watch?v=eZ_IGY9-vEc

・2011年5月、チベット自治区の党委書記に任命
・同年8月
革新的な治安システムとして300~500メートルごとに簡易警察署を導入。碁盤の目(グリッド管理)のように配置した簡易警察署を拠点に地域社会を完全に管理下に置く
・同年10月、
2500人の警察官を募集。このうち458人はラサに新設された新しい警察署に配置
・11年秋~16年
1万2313人の警察関連職を募集。それまでの5年間に募集されたポストの4倍以上
・11年から15年
チベット自治区の「傑出」した7000人以上の党員が1787カ所のチベット仏教の僧院に送り込まれる。
・2万人以上の党員と幹部をチベット自治区の村と町に派遣

このような陳がチベットでやったことをICTはこう述べています。

「血統の破壊、ルーツの破壊、社会的な連帯の破壊、起源の破壊」

そして陳はこの実績を習に買われてウィグルに転任します。
陳はチベット自治区で実施したこの社会監視システムを、更にバージョンアップして新疆ウイグル自治区に移植しました。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/2019...

 「国際人権団体はIJOPがテロ撲滅の名目で人工知能(AI)による顔認証など最新技術を駆使して情報を収集、独自のアルゴリズム(計算手法)で標的となる人物を抽出すると指摘していた。
 「職業教育訓練センター」と称した収容所でウイグル語でなく中国語を使わせ、民族文化を事実上捨てさせている運営指針も文書で分かった。
 二〇一七年六月二十五日付の自治区共産党委員会の文書は、IJOPが同月十九~二十五日に南部四地区で約二万四千人の「疑わしい」人物を特定したと記載。うち約七百人を刑事手続きで拘束し、約一万五千人を「教育と訓練」のため収容所に送った。
 IJOPは外国籍を取得したり、海外に渡航したりしたウイグル族も監視。一七年六月十六日付文書は、国外の新疆出身者を特定し、テロ関与の疑いがあれば「国境を越えた瞬間」に拘束するか、収容所に送るよう要請した。
 当局が問題視する携帯アプリを使った人物について同様の措置を指示した文書もあった」(東京11月25日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201911/CK2019112502000118.html

また収容所内部の状況も暴露されました。それは職業訓練」とは似ても似かないものでした。

「イスラム教の中国化政策の一環として各地に設置されたのが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によってその実態が判明した「職業技能教育訓練センター」である。 中国語を中心に法律や職業技能の授業が行われているとする同センターでは、(1)中国語以外の使用や、礼拝を禁止された(2)中国国歌や共産党をたたえる歌を繰り返し歌わされた(3)イスラム教が禁じる豚肉を食べるよう強要された-と元収容者たちは明かしている」(産経11月28日)
https://special.sankei.com/a/international/article/20191128/0001.html


ウィグル文書の別な部分からは、ウイグル人の拘束と収容の規模がわかります。最低で181箇所存在すると考えられていますが、実態はもっと多いでしょう。
この強制収容所の規模は、現代においてはナチスドイツのユダヤ人に対するジェノサイド以外、比較する対象が存在しません。 

「(トルコに亡命したウィグル人権団体が持ち出した資料による)拘束者数がいつの段階のものかはわからないが、収容が大々的に始まった17年に作成されたと考えて間違いない。データは1212万人いるウイグル人口の71%をカバーしているが、県レベル以外のデータが明らかになれば、収監者数はおそらくさらに増える。
89万人を超す拘束者数は新疆全域のデータではないとはいえ、この数値からは多くを読み解くことができる。色で囲ったアクス地区、カシュガル地区、ホタン地区はいずれも住民に占めるウイグル人の割合が極めて高い土地で、データ上で明らかになった収監者数の約8割は、こうしたウイグル人密集地域から連れ去られている(アクス地区合計12万6306人、カシュガル地区合計24万8747人、ホタン地区合計31万5755人、ウイグル人密集地域合計69万808人)」(ニューズウィーク2013年3月13日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/89-3.php


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「ある文書は、2017年のわずか1週間の間に、新疆ウイグル自治区の南部から1万5000人が収容施設に入れられたとしている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当責任者ソフィー・リチャードソン氏は、流出文書は検察当局に活用されるべきだと話す。
「これは訴追に使える証拠で、甚だしい人権侵害が記録されている。収容者は全員、少なくとも精神的拷問を受けていると言っていいと思う。自分がいつまでそこにいるのか、まったく分からないからだ。
政府文書が示すところによれば、こうした「職業訓練センター」の周囲には有刺鉄線が張り巡らされ、赤外線カメラも設置されている。内部では、催涙ガスや、テーザー銃などのスタンガン、「狼牙棒(ろうげぼう)」と呼ばれる、とげの付いたこん棒などを与えられた大勢の警備員が、「研修生」を厳しく管理している。
 ある文書には、自治区トップの陳全国共産党委員会書記の次のような発言が引用されていた。いわく、センターは「学校のように教育し、軍隊のように管理され、刑務所のように警備され」るべきだ。

 また、別の文書にはこう記されている。より優れた中国公民を生み出すために、センターではまず、入所者の「血筋を打ち壊し、基盤を打ち壊し、つながりを打ち壊し、出自を打ち壊さ」なければならない──」(AFP2018年12月30日 上地図も)
https://www.afpbb.com/articles/-/3204613?page=2#default

さて、NYタイムズがスクープしたウィグル文書からは、中国共産党がSNSを使いこなす学生を中心にして監視対象にしていることがわかります。
中国共産党は学生たち知識人に、共産党に忠実な公務員や
教員に養成しようとしているのが見て取れますが、それは彼らがSNSを通じてツイッター(微信)やミニブログサイト(微博)の扱いに慣れているからです。
SNSに1回でも共産党が見せたくない現実が乗れば、それは瞬く間に世界をめぐってしまいます。
そのために予防的に学生の家族を強制収容所に閉じ込めて人質としたり、そのような情報を流した場合の想定問答まで作っていました。

おそらく中国は全力を上げて香港の民主派を監視下に置き、実態を押えて支配下に置こうとしていることでしょう。
一国二制度が破壊されたなら、チベットから始まり、ウイグルで完成されたこの「一体化統合作戦プラットホーム」は間違いなく香港にも作られるはずです。
香港の青年たちが戦うのは、まさにこのような「1984年」型超管理社会を許さないためなのです。
そして台湾が強く香港民主派を応援するのもまた、「香港の次」が自分たちだと分かっているからです。

 

2019年11月28日 (木)

日本が韓国に謝罪しただって?

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東アジアの困った君はまだ諦めきれないようで、グズグズとなにか言っているようです。
毎度のことながら、まことに疲れる延長戦です。

「■日本 韓国に外務次官の謝罪メッセージ伝えていた=GSOMIA巡り
(略)
24日に安倍晋三首相が「日本は何も譲っていない」などと話したことが報道されると、青瓦台高官は「その発言が事実なら極めて失望する」として、「日本政府の指導者として果たして良心の呵責(かしゃく)を感じずに言える発言なのか、問わざるを得ない」と指摘。青瓦台の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は、日本側が「韓国が指摘した立場を理解する」として謝罪の意を示したと明らかにした。
 また、日本政府が韓国に謝罪していないと否定したことを受け、青瓦台の尹道漢(ユン・ドハン)国民疎通首席秘書官は25日、「日本側は確かに謝罪した」として、「日本側が謝罪していないなら、公式ルートを通じて抗議してくるだろう」と指摘した。
 外交消息筋は26日、聯合ニュースに対し、「韓国の指摘に対し、日本政府から正式な抗議を受けていない」と述べた」
(韓国聯合11月24日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191126001800882

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チョン安保室長は、日本側が「立場を理解した」と言ったことを謝罪したととったようですが、この表現は外交用語で、「相手が言っていることを理解した」くらいの意味です。
前に米国が韓国の言い分を「理解した」と言ったので大喜びしていましたが、これと一緒。
韓国の言っていることに、賛成したわけでもなんでもありません。
それにしても、
これを「謝罪した」ととるかね、フツー。

むしろ心配は、ひょっとして日本がどこかの水面下交渉で謝罪めいたことを口走ってしまった可能性です。
日本人同士なら、こわばったその場の空気を和らげるために、「いや~、この間お互いに齟齬があったようで、申し訳ないですね」といって軽くペコリていどくらいのことはしますからね。
しかしこの「日本しぐさ」を、一点突破全面展開的に「勝った」とやりたい国相手にするとシャレになりません。
ともかくあの国の歪曲理解はハンパないですからね。

韓国が言いたいことは、煎じ詰めるとどうやらここのようです。

当時、青瓦台(大統領府)の高官は記者団に対し、日本側の発表内容について、「懸案解決に寄与できるよう、課長級の準備会議を経て局長級の対話を行い、両国の輸出管理を相互確認する」「韓日間の健全な輸出業績の蓄積および韓国側の適正な輸出管理運用のため、(規制品目と関連した)再検討が可能となる」などの内容が盛り込まれると説明していた」
(聯合前掲)

どうやら韓国に言わせると、今後も政府間で協議を継続中だ、見直さないっていう日本はウソを言っているんだ、いやそれどころか1カ月で見直すとすら言ったぞぉ、ってことのようですね。

韓国の言い分を整理しておきます。(私って親切)

①韓国はいつでも GSOMIA を破棄できる。
②日本経産省の「個別審査で輸出を許可する方針に変化はない」との発表は事実と異なる。
③韓国政府は②に対する抗議をしたところ、日本側からの謝罪があった。
④日本側は輸出管理強化の撤回には約1ヶ月を要すると述べている。
⑤日本が撤回しなければ GSOMIA の終了を検討する。

なに言ってんだか。(反論する手間をかけてやる私って、なんて親切)

①のGSOMIAは自動更新条項つき協定ですから、2020年11月23日の3カ月前まで廃棄できません。
②③④は韓国得意の言った言わない論議にまきこまれるだけ不毛ですから、きっちり違うとだけいえばよいだけのことです。
後述しますが、茂木外相、梶山経産相はそのように答えていて、菅官房長官もそれを上書きしています。
⑤はやりたければどうぞ。ただそれをすると、次は米国の怒りがハンパないとだけ忠告しておきます。

さて、日本の報道を読んでいると不安になるのですが、日本は局長級の「対話」をすることを元々否定していません。
それどころか、3年前から今までの慣行どおり毎年やれとこちらから促しているくらいです。
韓国は自分のほうで拒否しておきながら、まるで「嫌がる日本を政府間対話の場に引きずりだしてやったぜ」という手柄話ふうに吹聴するからおかしくなるのです。

そのうえ局長級対話をすると、すぐにでも輸出管理規制が元に戻るかのように尾ひれまでつけるからタチが悪い。
考えてもごらんなさい、韓国がWTOプロセス(提訴のこと)を止めたと言ったんですから、自動的に議論の舞台は国際的な場から二国間の場に移るしかありません。
ですから
あくまで日本政府としては、韓国のWTO提訴撤回を受けての措置にすぎません。
日本のメディアはこのWTO提訴撤回という前提を説明しないで、韓国の言いぶんをそのまま報じるから訳がわからなくなるのです。

また局長級対話とやらは開きますが、仮に開催されてたとしても、それは「協議」の場、つまり条件を互いに出して押し合いへし合いするような性質には絶対になりません。
日本側の優秀な官僚が、ペーパー棒読みの「説明」をする、ただそれだけのことです。
そんな「説明」はとっくにやりましたが、こちらの登場人物が課長級から局長級にちょっとえらくなる、ていどのことにすぎません。

④の日本側は輸出管理強化の撤回には約1ヶ月を要すると述べている、といったということですが、それについてなぜここで1カ月という具体的数字が出たのか、説明しておきましょう。
日本は以下の3点を輸出管理規制見直しに必須としています。

①2国間ではムン政権に入ってからの3年間もの間、「ホワイト国」認定に必要な報告義務を怠たり、従来開催されていた政府間対話もネグレクトしてきたので、それを復活させ信頼醸成につとめる。
②大量破壊兵器の素材、部品などに関する輸出管理体制の審査体制・人員の脆弱性を改善する。
③以上の条件が満たされた上で、パブリックコメントと閣議決定が必要だが、それには1カ月間はかかる。

この③の閣議決定とパブリックコメントに必要な1カ月間という数字だけを、韓国は調子よく切り取って、「年内にホワイト国に復帰させると日本は言った」なんてバカ言っているわけです。

いちおう資料として大臣の正式な発言内容を当たっておきます。
まずは梶山経済産業大臣から。
梶山経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 2019年11月26日
https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2019/20191126001.html

・大臣 輸出管理政策対話の日程や議題については、今後課長級の準備会合において調整することとしておりますが、現時点ではそれ以上に合意した事項はございませんということであります。

ここで茂木さんが言っていることは、ムン政権までは毎年やっていた局長級対話を復活させるだけだ、そのために課長級が準備会合をする予定だ、輸出管理規制については従来どおり、以上お終い。

ついでといっては失礼ですが、いちおう茂木外相の発言にも当たっておきます。
こちらは韓国人記者が、日本側が謝罪したことを確認しています。
・茂木外務大臣会見記録 令和元年11月26日茂木外務大臣会見記録
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken1_000072.html

「中央日報 ユン記者】韓国政府は輸出管理にめぐる22日の発表について,24日,合意した内容を意図的に膨らませたという青瓦台から外交ルーツを通じて,日本側に抗議し,日本側が謝罪をしたというふうに発表しました。
また,昨日,韓国の日本大使館の政務公使が外務省の次官のメッセージとして謝罪をしたという報道,また韓国側の説明もありました。韓国と日本との説明のずれがありますけれども,それから,日本側からの謝罪があったかどうかに関しても確認をしてください。

【茂木外務大臣】日本側から謝罪をしたという事実はありません。その上でですね,日韓それぞれの報道に若干の食い違いがある部分があると理解しておりますが,私(大臣)から康京和(カン・ギョンファ)長官の方に言ったのは,大切なことは,輸出管理措置について,これから,日韓の当局間で議論が始まるわけでありまして,しっかり議論すること,これが大切なんだと。言った言わないと,今,そういうことより,これからしっかり議論していくことが大切なんだというを話をして,康京和長官も,その通りであるという話でした。

もうひとつおまけに、菅官房長官の記者会見。

「菅官房長官は、午前の記者会見で、「韓国側の発信の一つ一つについて、コメントすることは生産的ではない。いずれにせよ、政府として謝罪した事実はない」と述べました。
 そのうえで、「輸出管理の見直しは、制度を適切に実施するうえで必要であり、GSOMIAとは全く異なる問題だ。輸出管理については、韓国側からWTOプロセスを中断する通報があったことを受け、今後、関係機関で対応がなされていく」と述べました」(NHK11月25日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191125/k10012190281000.html

というわけで、整理すれば、なーんだということばかりです。

2019年11月27日 (水)

香港選挙で大勝する予想を立てていた中国

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中国は香港で手痛い失敗に会いました。結果を知ってしまってからだと、やや驚きすらかんじるのですが、習近平は香港で勝利を確信していたそうです。
ニューズウィーク誌(2019年11月26日)は、ジェームス・パーマーの記事を掲載しています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13472.php

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NW前掲

「この(選挙)結果に中国の報道機関はパニックに陥った。なんとか中国共産党に有利なように情報操作ができないかと慌てたのだ。香港では民主派の勝利が予想されていたが、中国メディアの編集者たち(と背後の中国政府当局者たち)は、親中派の圧勝を確信していたようだ。自分たちが発信するプロパガンダに操られていたのだ」(NW前掲)

パーマーが取材した中国政府系メディアとは、中国政府系英字紙チャイナ・デイリー、共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙の環球時報、および人民日報の編集者とジャーナリストだそうです。
つまり中国は、なんのことはない自分が作り出して世界に発信しているプロパガンダの一番の信徒が他ならぬ自分自身であった、ということになります。
彼らは現状分析を冷静に行わず、朝日風にいえば「角度をつけた」記事を書き散らしているうちに、自分もその妄想世界の住人となってしまったというわけです。
これが左翼新聞社くらいなら鼻で笑ってすませられますが、大国の政府の息がかかったメディアだけに笑いもこわばってしまいます。

たとえば香港現地でマフィアとのつながりによってひどく評判の悪い地域ボスの何君堯(ユニウス・ホウ) さえ、この男が親中派議員だというだけで言動をたびたび好意的に紹介され続けてきました。
下の写真はホウが万里の長城の上で中国国旗を打ち振っている写真ですが、まぁ、この見てのとおりの人物です。

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この人物が選挙直前の11月6日、テロにあったということで、中国系メディアはまるで鬼の首をとったような騒ぎを演じました。
原文ではホウが「暗殺された」とまで書いていますが、多少刺されたようですが、すぐに活動を再開したていどの傷です。
たぶん茶番でしょう。
「白昼、議員が暗殺され、凶悪犯の暗殺は必要な対処すべてが必要になるになるまでに発展した。 香港警察の担当官は、「これは意図的な殺人だ」歳述べています。
また
、香港市民の個人の安全に対する深刻な脅威であり、香港の法の支配に対する露骨な挑発であり、多元主義、寛容、公正、正義に対する不当な蹂躙手あり、香港社会のすべての部門で大衆の怒りを引き起こした」(2019年11月6日)
君堯遇襲】人民日報:暴徒喪心原文中国語【何病狂走上絕路嚇不倒建設力量 ...
「彼らが必死になればなるほど、暴徒はよりヒステリックで無慈悲になる。 これは明らかに、暴力と闇の黒い恐怖である。 人々を死なせるために、最初に狂気とならねばならない。香港の民主派の凶悪犯たちは、道が終末まで進んでいる。 香港の正しい良心を持つすべての人はそれを容認しない」

スゴイね、今の香港の民主派デモは「暴力と闇の恐怖」だそうで、ホウは悲劇の受難者、「寛容と正義」の守護者だそうです。
香港警察の武装警察化と、三合会という香港マフィアまで動員したデモ襲撃のどこが「多元主義」だというのでしょうか。
そしてこの三合会のデモ襲撃の黒幕とされたのが、他ならぬこのユニウス・ホウでした。

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「7月21日の夜に元朗(ユンロン)駅で100名以上の白服集団が無差別に市民を襲撃し45名が負傷した事件に関して、マフィアを含む6名が違法集会の罪で逮捕されました。
警察がすぐに事件現場に駆け付けなかったためマフィアと共謀していると憶測が飛び交っていますが警察は否定しています。白服集団との交流が疑われる親中派議員の何君堯氏は「白服集団は自分たちの家を守ろうとしただけだ」などと発言。また、中国の軍事評論家は「必要であれば、人民解放軍の派遣もありうる」と発言したことから香港メディアのニュースで大きく取り上げられています」(香港BS7月23日 上写真も)
https://hongkong-bs.com/topics/20190723/

さて今回、このようなホウは見事に落選したのですが、中国系メディアは選挙前から当確を打っていたそうです(笑)。

「各紙とも、選挙前夜には親中派圧勝の予定稿を作っていた。その中には、親中派の大物議員として知られる何君堯のような候補が得票数を伸ばすという予想もあった(あとは実際の数字を加筆すればいいだけになっていた)。何君堯はデモ隊に対する悪意に満ちた言動から香港では嫌われ者だったが、環球時報はたびたび彼の発言を紹介していた」(NW前掲)

このニューズウィークの記事を書いているパーマーは、かつて環球時報で7年ほど外部編集員として働いた経験があったそうですが、選挙報道で予定稿を既に作っておいた経験はなかったそうです。
香港現地では民主派圧勝という下馬評が圧倒的だったはずですが、いかにかけ離れた選挙予想を中国系メディアがしていたか分かろうというものです。
パーマーはこう指摘します。

この見当外れの予想からは、厄介な問題が透けて見える。中国共産党の上層部が、香港について自分たちが発信したプロパガンダを信じ込んでいるという問題だ」(NW前掲)

今回の香港選挙に特徴的なのは、70%に達するきわめて高い投票率でしたが、これすらも中国にかかると「民主派デモによって破壊された秩序の回復を願望する香港市民の声」となってしまいます。

「チャイナ・デイリーと環球時報は、投票日当日に出した記事でも親中派の勝利を予想。高い投票率は「香港の混乱がこれ以上、続かないようにという市民の願いのあらわれ」だと主張していた。予想が外れた場合に備えておく試みは、ほとんどなかった。
中国共産党の指導部は、選挙前に親中派が主張していた言葉を、本当に信じていたようだ。親中派は、林鄭月娥行政長官が繰り返し「サイレント・マジョリティー(声なき多数派)」と呼んできた香港の一般市民は、抗議デモを続ける民主派に批判的だと主張してきた」(NW前掲)

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https://note.mu/hawksnuts/n/nbc8f8ebd15cd

もちろん現実の香港市民は圧倒的に中国にノーを突きつけ、民主派デモに支持を与えたのですが、ではなぜ、これほどまでに大きな誤算が生じたのでしょうか。
彼らの情報源は中国政府の出先機関である香港連絡弁公室だとパーマーは見ています。

「最大の問題は、中国共産党から香港の世論操作を任されていた人々が、その成果の報告も自分たちで行っていたことだった。
これを行っていたのが、中国政府の香港出先機関である香港連絡弁公室だ。同機関は本土と香港の統合を推し進めるのが表向きの任務だが、実際には親中派の政治家をまとめたり共産党系の会報を出す役割などを果たしている。また、中央政府のスパイもする。
香港で長引く抗議デモは連絡弁公室にとって大きな失態であり、「サイレント・マジョリティー(声なき多数派)説」は彼らにとって、名誉挽回のための策だった。この説を裏づける資料のみを中国側に提出し、否定的な材料は全てもみ消していたのだろう」(NW前掲)

この香港弁公室は中国の香港統制機関であると同時にインテリジェンス機関ですが、ここが党中央が気に入る情報のみを上げたために、中国系メディアも右へならえしてしまったようです。

独裁体制において、情報にまつわる問題はつきものだ。共産党もそれは自覚しており、情報は複数の手段を使って入手している。時には真実を見つけ出すために、意図的に非公式な情報源を用いており、国営新華社通信のスタッフなどが作成する内参(内部参考資料)もその一つだ。問題は、ますます疑い深くなってきている習近平体制の下では、こうした内参さえもが、その内容を「指導部の望む情報」に合わせるようになっていることだ」(NW前掲)

なぜそうなるのかといえば、習がトップに立って以来、共産党中央がリアルな生情報である内参すら聞く耳を持たなくなっているためです。
「指導部が聞きたい情報」だけを下部が収拾して聞かせるために、方針はいっそう歪み、しかも共産党特有の柔軟性のなさも手伝って、一回決めた情勢分析の上を突っ走り、その結果、まったく現実にそぐわない判断を連発するようになります。

今回、6月段階で適切な妥協をしておけば、香港デモは移送法の撤回ていどの代償で済んだのですが、硬直した判断が祟って香港警察の暴力に頼ったために今や民主派デモの要求は自由選挙の実施まで拡大してしまいました。

これを選挙結果に基づいて冷静に総括するなら、元々あった自由選挙を復活させるしかないのですが、おそらく駄目でしょう。

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というのは、日本の共産党もそうですが、負けた場合自分が間違っていたとは思わず、別な原因に転化する習性があるからです。
香港の場合、内部にもぐり込んだ「米帝の手先」どもがカネをばらまいて民主派の暴徒を焚きつけた、と総括すると思われます。
このような外国侵略の手先に民主派をしてしまえば、「漢奸」(かんかん)に仕立て上げることができるからです。
漢奸とは中国で独特の意味をもっている死のカードです。

「現代中国社会においては中華民族の中で進んで異民族や外国の侵略者の手先となる者を指している。日中戦争の際には、漢奸狩りが実行され、多数が虐殺された」
漢奸 - Wikipedia

そして弁公室の下っぱの何人かが詰め腹を切らされる一方で、香港民主派に対して「漢奸」狩りを命じることになるかもしれません。

 

2019年11月26日 (火)

おめでとう、香港民主派!

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香港における区議会選挙でで民主派が452議席のうち380議席を超え、3分の2を民主派が占めました。
ここまで戦い続けてきた香港の自由を求める市民たちの大勝利を、心から祝福します。
おめでとうございます。ほんとうによく頑張りました。
また、この結果は暴力によって香港の自由の息の根を止めようとした中国にとっては、衝撃的結果のはずです。

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「香港で、24日投票が行われた区議会議員選挙について、香港メディアは、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の80%を超す380議席以上に達し、圧勝したと伝えました。親中派は惨敗し、一連の抗議活動で市民の要求を拒み続けてきた香港政府に対する不信感が明確に示された形です。
24日投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、投票率は、過去最高の71.2%に達しました。
これまでに、ほとんどの選挙区で開票が終わり、香港メディアによりますと、日本時間の午前11時半現在、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の80%を超す380議席以上に達し、圧勝しました。
一方で、親中派は、全議席の10%余りにあたるおよそ60議席にとどまり、惨敗しました。
選挙前の議席は、親中派がおよそ7割に対し、民主派がおよそ3割を占めていましたが、今回の選挙で、勢力が完全に逆転することになり、一連の抗議活動で市民の要求を拒み続けてきた香港政府に対する不信感が明確に示された形です」(NHK11月25日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191125/k10012189921000.html

中国派は惨敗し、大物と言われた現職の何君堯(か・くんぎょう)も落選の憂き目にあっています。

「香港ネットメディア「香港01」によると、民主派は直接投票枠の約85%に相当する385議席を獲得。選挙前は約7割を占めていた親中派は約1割の59議席と惨敗した。親中派の大物として知られる何君堯(か・くんぎょう)氏が敗北するなど、多くの選挙区で民主派新人が親中派の現職を破った」(産経11月25日)
https://www.sankei.com/world/news/191125/wor1911250021-n1.html

何の地盤の屯門地区は中国共産党の力が強い大陸系住民や、その息のかかった香港マフィアが支配する地域であり、何はその頭目格だったからです。
何は手下のマフィアを使って7月21日には元朗駅で民主派デモを襲撃し、大量の重傷者を出しています。

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一方、雨傘革命の指導者である黄之峰は立候補を拒否されたため、代理人を立て、代理人の林浩波は開票と同時に当選を決めています。

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黄之峰

投票率は72%という日本では考えられない高い数字を叩き出しており、投票が強制される独裁国家ではなく、投票行動態が警察によって看視され、妨害を受ける中での選挙だっただけ、これがまさに「民意」です。
日本においては「民意」という概念は安易に濫用されているようですが、真のそれはアグネス・チョオがいうように「一票は香港市民が流した血の一滴」なのです。

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だからこそ、香港市民は中国政府に抗議の意志をつきつけるために、警官隊が投票所を固めて威嚇する中、長蛇の列をなして投票を行ったのです。

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さて香港区議会選挙は、日本でいえば地方議会選挙に相当します。
国会議員選挙に当たるのは立法会選挙ですが、これには説明が必要でしょう。

実はこの区議会選挙は、日本のそれが同じように地域のサービスや福祉といった固有の地域問題について政府に提言する諮問機関のような役割しか持たされていません。
その性格を反映して、18歳以上の自由選挙が実施されています。
区議会の全479議席のうち452議席は、1人1票の直接選挙(小選挙区制)で選出されますから、ほぼダイレクトに「民意」が反映れれます。

ところが、国会に相当する立法会は、定数70のうち直接選挙(比例代表制)で選ばれるのは35議席のみにという前近代的制限選挙が今時まかり通っています。

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産経

直接選挙以外の残る35議席は「職業別代表枠」という聞いたこともない枠組みから選ばれています。
いわば日本の国会選で、自動車工業会枠とか、商社枠があるようなものです。
この職業代表枠というのがクセモノで、この枠には中国との商業関係のつながりが強い団体の代表の指定席です。

「職能別議席は、産業界議席(30議席)と区議会(5議席)に分かれ、産業界議席は、金融、建設業、教育、法律、医療などの産業界ごとに候補を立て、その産業界ごとの職能団体者の投票による間接選挙で選ばれる。 産業界は中国経済との関係から圧倒的に親中派議員が多くなるし、立候補者が少なく選挙自体が行われない無投票当選で決まる場合もある」(福島香織2016年9月20日)https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/218009/092000064/

つまり立法会は、親中派の占める間接選挙組と直接選挙組の二種類の議員が混在していることになります。
前回は直接選挙において親中派が有利でしたから、職業団体枠を含めれば、立法会においては民主派は少数派であり、親中派路線が公然ととられてきたわけです。

また香港政府トップの行政長官は、この職業別団体の代表と立法会議員らで構成する選挙委員会(定数1200)の投票で選出される間接指名制であり、民意は反映されません。
つまり、いまのままの立法会の仕組みが温存されれば、立法会において確実に親中派は半数を確保でき、行政長官指名でも絶対に親中派が勝てる仕組みでした。

この親中派が有利となる仕組みを作ったのは中国です。
中国はわきおこる自由選挙の要望に対して、全人代において香港の普通選挙を否定しました。
一国二制度といいながら、民主主義の根幹をなす選挙制度について中国が「解釈権」を行使し、内政干渉したわけです。

香港返還当初、基本法は2007年以降(実際には2008年実施予定の第4回選挙から)全議席を直接選挙枠(「普通選挙」)に移行できる可能性を示していた。しかし、2004年4月6日全国人民代表大会は解釈権を行使し、「『2007年以降』とは、2007年ではなくとも良い」として、第4回立法会選挙における完全な「普通選挙」化の可能性を否定してしまった」(Wikipedia)

今回の区議会選挙で選ばれた民主派議員は、わずか1割といえど2022年の次期行政長官選出の一票を持っています。
しかし現職の行政長官がこのまま22年まで留任しているとは考えられないため、おそらく近い将来辞任し後継選挙となる可能性があります。
それを選ぶのは立法会です。
それまでに今の非民主的な立法会の選挙システムを変革し、完全な普通選挙を実施させねばなりません。

この普通選挙要求こそが、香港民主化デモの真の天王山となるでしょう。

ところがこのような制限選挙下の立法院すら、新しい潮流が誕生しています。
それは前回2016年選挙において独立派が6議席獲得したことです。

「従来の議会における反中国派の主流は、民主派と呼ばれる民主党を中心とする勢力だが、彼らはあくまで2047年まで維持されるとした一国二制度の枠組み内で香港の民主・自治を守る考えであり、香港返還時に与えたられたミニ憲法・香港基本法に忠実だ。 だが、この新しい政治勢力は一国二制度の枠組みを越えて、香港の未来を香港人が決める香港自決を掲げ、中国と英国が作って香港に与えた基本法も、香港人が新しく作り変えるべきだと主張している」(福島香織2016年9月21日)
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/218009/092000064/

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最多投票を獲得した土地正義連盟党首の朱凱廸。「予算案を否決できる勢力となって、北京との交渉を目指す」(写真:ロイター/アフロ)

香港民主派のゴールが見えつつあります。おそらくそれは、香港独立要求のはずです。

 

2019年11月25日 (月)

なるべくしてこうなった韓国

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韓国が「判定勝ち」だ」などと言っていますが、無視します。寝言は寝て言え。
また、「状況次第ではいつでも韓国はいつでも延長を撤回できる」というような言い方をしていますが、バカ言ってんじゃないよ。

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こういうことを言う人は、条文を一回でも読んだんですかね。

秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定和文(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)
第二十一条効力発生、改正、有効期間及び終了
2 この協定は、両締約国政府の書面による同意によりいつでも改正することができる。
3 この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通
告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される

わかりましたか、GSOMIAは1年間の自動延長条項つき条約で、効力は1年、期間満了の90日前に破棄を通告しない限り、自動延長されるのです。
「いつでも改正することができる」のは、一年後の延長期限の2020年11月23日の90日前からです。
いつでも恣意的に約束を破れるようなら、そもそも二国間条約にはなりません。

今後、韓国は必ずこんなことを言い出してくるはずです。
築地にある青瓦台日本広報室に代弁してもらいましょう。

「文政権が誤った対抗措置のエスカレートを踏みとどまった以上、日本政府も理性的な思考に立ち返るべきである。輸出規制をめぐる協議を真摯(しんし)に進めて、強化措置を撤回すべきだ。 」(朝日社説11月23日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14267636.html

これが韓国が言いたいことです。
ムン閣下はあっぱれな御英断をなされたぞ、汝ニッポン、妥協せよ、というわけです。
NHKだとこれに、日韓関係の悪化は徴用工裁判から始まっているのだから、ニッポンも解決案を出せということをつけ加えます。
いったいどこの国の報道機関だ、なんてヤボはもう申しません、これこそが韓国の言い分であって、想定される韓国政府の今後の対応だ、ということを認識すればいいだけのことです。

さて確かにムン閣下の「御英断」は、米国から滝のような冷や水を頭から浴びせられたことによっています。
日本にも圧力があってアベが負けたぁ、なんて言ってる人もいるようですが、あるわきゃないでしょう。
日米はこのことでむしろ完全に連携してたんですから。

今回のGSOMIAを日韓関係だけで切り取ろうとすると、朝日やNHKのような「アチラも妥協したんだから、コチラもしなくちゃ」みたいな町内会的理解となります。
今回の主役は日本ではありませんでした。ある意味、韓国ですらありません。
それは米国です。

経過を観察すれば分かるのですが、米国はGSOMIA廃棄を韓国が言い出すまで、徴用工判決で日韓がもめようと、はたまた輸出管理規制強化で騒ごうと、ほーという顔で洞ヶ峠を決め込んでいました。
特にどちらの味方をするでもなく、韓国から「日本は自由貿易の原則に反してボクらをいじめているんだーい」という哀訴をうけても、ふーんていどの反応でした。

しかし、韓国が米国をテコにして日本を屈伏させる武器としてGSOMISの地雷を踏んづけた瞬間、米国の怒りが炸裂しました。
ハリス大使の発言です。

「ハリーハリス駐韓米国大使は、韓日軍事情報保護協定GSOMIAに関し、韓日歴史問題が経済的な問題に拡大され、韓国がこの問題を再び安保領域に拡大したと述べた。
ハリス大使は、韓国が過去歴史問題を安全保障の領域に拡大したことに対して失望したと述べ、まだGSOMIA終了までの期限があるのでチャンスがあるとした。
防衛費分担金協定と関連しては、年内妥結は理論ではなく実質的に可能だとし、韓国側が善意を持って誠実に準備した状態で交渉の場に戻ってくるべきだと強調しました」(2019年11月19日)
https://news.v.daum.net/v/20191119203004918

おそらく米国は日本が輸出管理規制強化に踏み切った時に、日本側からこれはワッセナーアレンジメントの疑いが濃厚だからという説明を受けていたはずです。

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この輸出管理規制とは中国、イラン、北朝鮮などの大量破壊兵器を製造している国に対して向けられているワッセナー・アレンジメントの一部だったからです。
で、このワッセナー・アレンジメントを作った国はどこでしょうか?そう、他ならぬ米国です。

この日本がした輸出管理規制強化は、現在、米国が中国のファーウェイ相手にやっている米中経済戦争とまったく同次元なのです。
2019年、米国は国防権限法(NDAA)と米国輸出管理改革法(ECRA)を登場させますが、
これによって米国はいままでの武器類だけではなく、その部品、製造機械、関連技術、AIなどまで含んだ輸出管理規制措置が取れることになりました。

この2本の米国法はかつて冷戦期にあった対共産圏輸出統制(COCOM・ココム)の後身ですが、ワッセナー・アレンジメントはこの国際協定です。
ここで輸出禁止対象国は、北朝鮮、イラン、中国などの大量破壊兵器を作り続け、かつ国際社会に拡散して使用する可能性が濃厚な国々です。

このワッセナー・アレンジメント協定に罰則条項がないことをいいことに、好き放題破っていたのが韓国でした。

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国連北朝鮮不法輸出パネル委員の古川勝久氏は、こう述べています。
「大量破壊兵器関連の規制品をめぐる輸出規制違反事件がこれほど摘発されていたのに、韓国政府がこれまで公表していなかったことに驚いている」、「この情報を見るかぎり、韓国をホワイト国として扱うのは難しいのではないか」(FNN7月10日) 
https://www.fnn.jp/posts/00420563CX

日本が疑念を持つことはまったく不自然ではありません。むしろ3年遅かったくらいです。
韓国は日本が手ぬるいことをいいことにして、毎年出さねばならない管理結果について出さなくなりました。
この時点で日本が厳しく回答を求めれば、3年前にこの事件が発生したかもしれません。

もっとも3年前には米国は、さほど大きくワッセナー・アレンジメントについて関与してきませんでした。
それは先に述べた2本の法律が成立したのが、今年になってからなのを見てもわかります。
その景色が一変したのが米中経済戦争でした。

米国は米国が盟主のリバティ・アライアンスと、中国を盟主に戴くレッドフッグ・アライアンスに、サプライチェーンを再編しようとしています。
たとえば、米国はファーウェイの5Gを導入するか否かで踏み絵を踏ませました。
日本はファーウェイの5Gを拒否しましたが、韓国は軍関係まで含めて既にファーウェイ傘下に入っていました。
これは韓国が、中国に基幹の情報ネットを委ねて、好き放題情報を漏洩させると表明したのと同然だと、米国は考えました。

その上に、もうくどくど書きませんが、この時期に例のムン閣下の「北朝鮮好き好き大好き」路線が被ります。
これが
いわゆる「仲介者」路線ですが、米国には「北は非核化したいと言っていますよ」と言い、北には「米国は妥協してもいいって言ってますよ」ともちかけたんですから、こりゃ罪が深い。
このムン閣下の二枚舌の嘘は、気の毒にも第2回のハノイ米朝会談で
全部バレてしまいました。

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コウモリ男はその正体がバレたら、双方から同時に叩かれるのは世の常識ってもんです。
以後ムンは、どちらからももっとも軽蔑されるハメになります。
米国からは裏切り者、北からもまた裏切り者、というわけです。
上の写真はハノイ会談から引き上げ時の正恩の車内での写真ですが、ムンの言うことを信じたばかりにトランプには席を蹴られて、なにひとつ土産を持たずに帰国させられたのですから、メンツ丸潰れもいいところです。
きっと腹の中は煮えくり返っていたでしょうね。もちろんトランプにではなく、ムンに対してです。

同じくトランプも何の譲歩も見せない北に怒り心頭で、その結果、トランプがG20の帰途に突然立ち寄った板門店での正恩との会談では、韓国は座敷を貸しても顔を見せることすら拒否されるという仕打ち。
今や北に韓国がなにを提案しようと着信拒否、答えは短距離弾道ミサイルの定期便、というていたらく。
そして米国からは準レッド・フラッグ国扱いへと相成りました、とさ。素晴らしき「外交天才」ぶりです。

このように見て来ると、日本がとった韓国への輸出管理規制について米国がよく理解していたのは当然のことで、米国の沈黙は黙認の意味だったことがわかります。
ここで韓国が技術的に輸出管理規制を解決しようとするならば、この時点で解決したものを、なにをトチ狂ったのか「相手が嫌がることをして気を引く」というコリアの哀しい習性丸出しで、一気にGSOMIA にまで問題を拡大させてしまったのですから、なんともかとも。

そもそも韓国は分かっていないようですが、GSOMIAと迎撃ミサイルシステムTHAADはワンセットです。
THAADを韓国に配備するために、平時の北のミサイルについての情報共有が必要だから日韓に締結させたのです。
そしてこのTHAADは、米国本土までも防衛範囲に収める迎撃システムですから、これが揺らげば北が喜ぶばかりか、中露まで大喜びします。
だから米国は先ほどのハリス大使の発言にあったように、「二国間関係のトラブルを東アジア全体の安全保障まで拡げるな」と強く警告したのです。

つまり、米国はとりもなおさず韓国のGSOMIA廃棄を、自由主義連合を捨てて「竹のカーテン」に入る意思表示ではないかと見ました。
こんなことを素直に認めたら、東アジア全体の安全保障環境の激変に繋がる事態ですから、米国は11月中旬にエスパー国防長官とミリー統合参謀本部議長を相次いで韓国に送り込み、21日に米議会上院は、韓国に破棄撤回を促す決議を全会一致で可決するという異常事態にまで発展したのでした。

このことは米国がすさまじい圧力を韓国にかけて(「経済的焼け野原にしてやる」と言ったとのお噂)屈伏させたという意味もあると同時に、GSOMIA廃棄カードをちらつかせれば、いつでも米国首脳が飛んできてなだめてくれるという学習をしてしまった可能性もないわけではありません。
常に自分に都合よく解釈するかの国ですからまたやるかもしれません。
なんせ国際法を破ることに免疫抗体があるみたいな国ですからね。

まぁそうなったら、またこちらも原則外交で臨むしかないのですがね。

 

2019年11月24日 (日)

 山路敬介氏寄稿 「首里城再建問題」から~ 沖縄社会雑感

 

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首里城炎上事件について、ぜひまとまった山路さんの意見を聞きたくて、強引に寄稿をおねがいしました。
無理言ってすいませんでした。ありがとうございます。

今回は一括掲載いたします。

                                                           ブログ主

                                                       ~~~~~  

 
               「首里城再建問題」から~ 沖縄社会雑感
                                                                            山路敬介

首里城再建問題に関しては、ブログ主様はじめosyou様の記事のコメント欄ににて意見を述べていたのですが、そういうシラケ傾向の内容でも構わないので思うところをまとめて述べるようにブログ主様から要請がありましたので、以下に記します。

シラケた内容を皆様に読んで頂こうとは大変失礼な事のようですが、首里城問題は首里城再建問題に限らない沖縄行政の根本的な問題を含んでいて、どうかそういう読み方をして頂けるならば興味深い点もあると思います。
コメントの方で申しましたように私のところの宮古島では今、再建問題をふくめ首里城についての話題が上る事はまずありません。これは、歴史的経緯がどうとか、政治的問題云々の話ではなくて、要するにあまり興味が無いようなのです。この点は本土で心配される方々以下でしょう。

焼失時点で「沖縄のシンボルだった」とか、「心のよりどころ」などと言われても反発する向きはなかったですが、やはり本島は物理的にも心情的にも遠く、そういう温度差になってあらわれたと思います。
私自身にしてもそうで、かつて一度は首里城を訪れたといいましたが、あれは私の勘違いでした。
守礼門の前での集合写真が残っていたのでそう思い込んでいたのでしたが、あれは焼けた建物が出来る前の事でした。那覇に行ったときには遠目に見た事はありますが松山に通うほうが忙しく、首里城に立ち寄った事もなかったです。

ですが、首里城近隣の方々や本島南部の方々の痛みにはいたく共感します。そこにあるべきものが突然になくなったわけですから、その喪失感は相当なものでしょう。
ただ、新聞や政治家に「県民の心のよりどころ」とか、「県民のアイデンティティー」だとか、ある種「県民統合の象徴」のように集約されて言われると、これらは明らかに間違っているし、なにしろ気持ち悪くて仕方ありません。
単にリベラルらしいタテマエ的ウソっぽさがイヤというのもありますが、この「気気持ち悪さ」の原因は言うまでもなく、沖縄県の全体性気質を想起させ、集団帰属意識の延長線上にあると考えるからです。

だいいち、焼けた首里城が「県民のアイデンティティー」っだったというなら、戦災で焼けてから再建までの期間の県民のアイデンティティーはどこにあったのか?
後世の作り物にすぎない建物がアイデンティティーとはけったいで、偶像崇拝的じゃないのか? 等々、そういう愚問も発したくなります。 

焼けた首里城は文化的価値の高いものでした。高良倉吉氏などの学識のある方々の苦労の賜物です。栄華を誇った時代だけに焦点を当てた研究成果には言いたいことも山ほどありますが、それはそういうものと納得して思います。
しかし、考えなければならない点もあるのじゃないでしょうか。
あれを主として請け負ったのは清水建設で、国建など地元業者が協力して工事は行われています。桧の材料は余さず本土からのもので、何とかいうシロアリに強い沖縄県在来種の木材も県内調達ではありません。
大工工事は富山の宮大工があたりました。石材など台湾からの資材協力も欠かせませんでした。工事費はもちろん本土丸抱えです。わずかに赤がーらだけが県内製造です。

そうすると一体、「沖縄県のアイデンティティー」なるものは沖縄県だけが造ったものではありません。
むしろ沖縄県で失われたものは本土などでは大事に残されていて、かつ保存されていた事とともに、その協力体制に重要な意味があると言えるでしょう。それを「沖縄のアイデンティティー」だの何だの、権利意識に代表される流行の言辞を振りかざすのは間違っています。

歴史上、首里城は5回も焼けた事が確認されています。古い写真で確認される先の戦災で焼けた建物は、薩摩の指示と財力で賄われたものです。
それが焼けた跡地に琉球大学を米軍が建て、琉大の引っ越しで空いた所に先日焼けた首里城を建てたのです。
そういう地歴のある重要な土地柄ですから、イベントなどの開催にあたっては、もっと多角的な視野でみた催し物にしてもらいたいものです。

本題に入ります。
本土で沖縄社会の問題点を一番的確に知っている知識人は、あいかわらず篠原章氏です。辺野古問題など篠原氏とは意見が合わない部分も多々あるのですが、そうした方法論は別にして、「沖縄を識る」という事に関しては沖縄県人以上です。
橋下徹氏のように全く的外れで浅薄な知識をもとにした、誤った提言を立場に応じて繰り広げる芸能人兼用弁護士さんとは好対照です。
以下、多くの点で言論テレビ(有料部分含む)の篠原章氏と花田紀凱氏の対談からも参考にさせて頂いています。

まず首里城焼失の原因ですが、篠原氏は真相究明をのぞむ多くの保守派の方々が指摘するように「延長コード」にあるかどうか、これに疑問を投げかけます。確かにコードの焼失痕などを見るならば、そう言えるかも知れません。しかし、先につながっていたのが20W程度のLEDライトが二個程度では、そういう見方は出来ないのではないか?と言います。 

私もそう思うのは、琉球新報がアップしている美ら海財団の二時間あまりの会見(https://www.youtube.com/watch?v=J0S-_35x6EQ&t=90s)を何度か見直しているからです。
彼らの二転三転する受け答えとピントのずれた回答、特に財団の男性担当者はひどく、真相究明する意思の全く無い事、(冒頭でこそ頭をさげていますが)あの責任感など微塵も感じていない様子をみれば、なお隠すべき事があったり、曖昧にして決着を着けたい思惑を強く感じざるを得ません。
美ら海の担当者は収蔵していた文化財点数もまともに答えられず、搬出した文化財の状態も把握していませんでした。今も何がどれだけ焼けて無くなったのか、その発表はありません。

尚泰王の子孫は個人所有する文物が文化財指定された時に、それらを沖縄県ではなく、台東区に寄贈しました。
その後台東区から沖縄県に移管され、同時に尚泰王の子孫と沖縄県の和解がなりました。その中に今回焼失した文化財があったかどうか、それは私にはわかりません。しかし、当時台東区からプライドを賭けて取り戻す事をした沖縄県ですが、文化財を守る行政の資質には欠けているようです。

このような状態ではとても再建そのものに賛成できません。すくなくも「再建」など到底口にすべき段階ではないです。会見では、国の人間が県や財団を擁護している様子もみられ、あせりまくった美ら海財団はたわいもない質問も含め、一切まともに回答出来ていません。

国から県へと、全国でも例外的に管理を移行したのは、県からのたっての要望を受けてのものです。県の思惑は、国管理のままでは規則や管理基準やかましく、自由にイベント等での活用が出来ない事からです。
消防や県警ではいまだに原因を特定していません。その事自体が異常ですが、明らかにイベント関係者が国管理時代よりも遅い時間まで徘徊していた事は事実です。たとえば、イベント用品(仮装用の扇やヒモなど)が正殿内にしまわれていて、その出し入れが火災直前にもありました。そういう事が国管理時代からあったのか? こうしたいくつもの疑問が尽きません。

篠原章氏は、今後5年程度は再建せず放っておくべきと言います。
ですが私は沖縄観光業の継続的発展のため(というよりも、これから来る沖縄観光業の深刻な沈滞を少しでもやわらげるため)、やはり、早期再建は必要と思います。
それには観光者向けに特化した建築で十分で、文化財を安全に収蔵できるように鉄筋コンクリートでこそつくるべきです。

費用の面も重要です。もし焼失した首里城と同じものを作るのであれば、150億とも200億ともいわれる費用が必要です。火災保険で上限の70億円賄うとしても、あとを寄付金でたりるはずもありません。
しかし鉄筋コンクリートであれば、小型の博物館並みの近代的な設備をしても保険金と寄付で賄えるでしょう。防災設備も完ぺきなものに出来るし、管理も余程しやすくなります。

しかし、政府はすでに沖縄県と再建のための協議に入っているようです。
技術的にはともかくも、後詰めの100億円近い金を国費から捻出する事に国民的合意が得られるでしょうか? 
沖縄県の要望で数千億かけて普天間の移設をし、離党振興や県北部にあてられた国費からの補助金も莫大です。いくら日本の安全保障の根幹を担う米軍基地を多く擁する県だとしても、それを逆手にとった県の増上慢は許されるものではありません。

国が費用を捻出する事には、マスコミによって表向きは大方の国民的合意が得られたように映る事に出来るでしょう。
ですが、本当のところの大部分の「声なき声」、それらはすでに沖縄についての不満があふれ出るくらいのマグマとなって溜まっている事を県民は知るべきです。

いわゆる「沖縄嫌い」とか、「沖縄疲れ」が生じつつある事も自覚すべきなのです。
わが県がどれだけ他県に比して優遇されているか、そういう不公平感を国民の大多数が感じる事になれば、その時こそ何処かの誰かの思うツボです。

沖縄というのは奇妙なところで、赤がーらの職人にインタビューしたところ、最初は「当時の職人が他界しているので、同じものの製造はむづかしい」と答えます。県内で再建熱が高まってくると、その同じ弟子たちが「同じものが造れる」と胸をはります。

篠原氏はそういう場面もみて、「全国的に文化財は丈夫なチタン製屋根材だし、そういうものの方が安全だろう」と言います。そのとおりと思います。
 私の同僚のうち二人のパソコンの待ち受け画面が変わりました。赤々と燃えて崩れおちる寸前の首里城の姿です。どういう操作をしたものか私にはわかりませんが、たしかに美しく仕上がっています。
けれど、青空をバックにした在りし日の堂々とした首里城ではない事に軽く疑問を感じました。
今回の首里城炎上は「焼失したからこそ、その価値を増した」、そういう本質的な事を感じざるを得ない事件でした。


                            文責 山路 敬介

日曜写真館 濃霧の中を火球が上がっていく

 

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太陽が登る前の一時です。遠くには双耳峰が

 

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霞ヶ浦周辺の山々にポタージュの濃霧がかかります

 

196 まるで白亜紀の原始海洋のようです

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 静かに、しかし驚くような速度で火球が上昇します

242 瞬く間に赤く風景を染めます

 

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2019年11月23日 (土)

GSOMIA韓国廃棄撤回、日本完勝

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いやー、正直ビックリしましたね。日本の完勝です。
ここまでパーフェクトに勝つとは思わなんだ。
99%韓国廃棄と思って、予定稿書いていたブロッガーのみなさん、残念でした。

昨日夕方4時すぎたあたりからなにか重大発表がでそうな空気がモワモワと立ち込めていましたが、5時すぎあたりに韓国聯合が速報で「韓国大統領府 間もなくGSOMIA結論発表=「条件付き延長」」と流した時には、おもわずなんだその「条件つき」とはと叫びそうになっちゃいました。

聯合の報じ方は、内容的には「日本政府の対応が変わった」と読めるものです。

「日本が輸出規制強化を解除する条件で、終了期限を延長する「条件付き延長」になる見通し。青瓦台は当初、日本の態度に変化がなければ、終了は避けられないとの立場だったが、日本とのぎりぎりの交渉で、条件付きながらGSOMIA終了を回避する方向で調整したとされる」
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191122003201882

ね、「ギリギリの交渉で日本の対応に変化が現れたので、条件つきでSOMIAを延長してやってもいいわ」、と読めるでしょう。
一瞬イヤーな気分になりましたね。日本はいつもこのテでやられ続けて、しなくていい妥協を韓国にし続けてきたのです。

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仕方がない、私のまったりタイムの相撲中継の真っ最中にかかわらず(くそっ)、テレビのチャンネルを回すはめに。
すると、たまたま見てしまったのがテレ朝。ここが「日本側、輸出規制を一部撤回」なんて流しています。アッチャーです。

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米国が韓国に、全体重を載せたくらいの圧力をかけまくってきたのは見てきていますから、日本にも前夜に強烈な同調プレッシャーをかけたのだろうな、と勝手に推測しました。
とまれ、6時からの日韓政府の正式発表をみるしかないと達観したのですか、その内容はこれです。
官僚の記者会見を真剣に聞いたのはこれが初めてでした(笑)。
少し長いですが、きっちりと報じたのは産経だけですので引用しておきます。

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「経済産業省は22日、半導体材料の韓国向け輸出管理の厳格化をめぐり、解決に向け日韓の課長級の準備会合を経て、局長級の会合を行うと発表した。時期などの詳細は明らかにしていない。記者会見した同省の飯田陽一貿易管理部長は「(半導体材料の)個別審査で輸出を許可する方針に変化はない」と強調した」
(産経11月22日)
https://www.sankei.com/economy/news/191122/ecn1911220027-n1.html

はい、このゴチックの部分がもっとも重要です。
飯田部長は明確に「個別審査で輸出を許可する規定方針に変化はない」と明言しています。
つまり日本は一歩も譲歩していないことになりますから、聯合やテレ朝が流した「日本側の輸出管理についての妥協」は誤報だということになります。

そもそもこの問題の発端は、韓国が日本の半導体材料の輸出管理規制を、日本が示した「安全保障上の理由」という言葉を悪解釈して、「そうか、安全保障上で信用できないならGSOMIAはやめだぁ」としたことにあります。
そして歴史問題がからまってくる(ほんとうは絡まりませんが)徴用工裁判に対する報復と勝手に盛り上がってきたのです。

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勝手に盛り上がるのは自由ですが、日本の経済産業省のお役人は韓国側に対して輸出管理規制をちゃんとすれば元のステイタスに復帰することもありえますよと教えて、文書構築のやり方まで6時間も教えてきたのにナニ聞いていたんだか。
元々輸出入管理規制についてはその概念すらなかった韓国に手取り足取り教えたのが、日本だったんですけどね。

こんな輸出管理規制や「ホワイト国」とするかどうかなどは当該国の内政ですから、二国間協議でやるものではありません。
元経産官僚の岸博幸氏が言っているように、「ただの課長決済案件」だったものを大騒ぎして、外交問題にまで発展させたのは韓国です。
今回も従来どおり飯田氏は、「韓国側が輸出管理を厳格に行う実績を積めば解除への検討もあり得る」と述べています。

しょせん、輸出管理規制強化などそういうていどのことなのです。
まじめに指定された半導体資材の在庫と出庫を記帳し、不正な流出をしていないことを文書で明らかにできれば済むだけのことです。
やましくなければ、どこの国のどこの企業だってやっていることで、それを「日帝の経済侵略」(共に民主党)だなんて反日イデオロギーで逆上するからこじれただけのことです。

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だから今回も韓国は、「WTO提訴は止めてやる」なんて言っていますが、やっても勝ち目は99.9999%ないからにすぎません。
提訴を受けたWTOも迷惑で、そんなことは二国間でなんとか処理しなさいよ、と言われています。

局長級協議をするとかしないとかは重要ではありません。
重要なことはGSOMIAという安全保障上の案件と、輸出管理規制強化をきっちりわけて考えれば、局長級だろうが大臣級だろうがする用意があるというだけのことです。
まぁ、またその席上で同じことを蒸し返せば、元の木阿弥でしょうがね(その可能性は高いと思いますが)。

さて、今回は日本の戦略が間違っていなかったことの証明になりました。
日本の立てた戦略は以下です。

①徴用工裁判は国際法違反である。
②国際貿易のルールに沿って韓国を「ホワイト国」から除外した。
輸出管理は徴用工裁判の報復ではない。

この三本柱戦略を立てたところで、国際社会、なかんずく米国に対して強く訴え続けました。
するとなんとまぁ韓国は、例のごとく逆上してしまったのです。

韓国はここでじっと堪えて、輸出管理規制をクリアする技術的解決を追及するべきでした。
韓国だって後ろめたいことがなければやってできないことではないのです。
アジアでは韓国以外のすべての国があたりまえにやっていることなんですから。

それをなにトチ狂ったのか韓国は、己が民族的伝統に則ってこんなことを開始しました。

①国際社会にイガンジル(告げ口)する→APECやWTOの国際会議で議長に制止されるまで叫ぶ。
②日本へのイヤガラセの連発→日貨排斥、日本渡航自粛、旭日旗、放射能五輪などなど。
③問題をすり替えて対日外交カードにする→GSOMIAの一方的廃棄

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①②は相手が日本だけですから置くとして、③のGSOMIAは米国が肝入りでつくらせたものです。
いわば米韓日三カ国が、いかに北朝鮮や中国と対置しているかを示す連携のシンボル的存在でした。
これを廃棄するなんてすれば、そりゃ墓穴を掘ることになりますよ。
なぜこんな簡単なことがわからないんだろう、この国。

GSOMIAは北朝鮮と中国に対抗するための米韓日三国連携の情報共有条約で、これを廃棄すると脅せばきっと米国が日本に対して「おい日本さん、ここまでいうんだから折れてやんなよ」と圧力をかけてくれる、とでも思ったんでしょうね。バカだねぇ。
これが河野太郎防衛大臣のいう「国際安全保障環境の誤認」です。

「政府高官によると、米国は「トランプ米大統領は安倍晋三首相側に立つ」と韓国側に伝えており、日本政府は米国の韓国に対する圧力が非常に強かったとみている。
 日本政府は、日韓共通の同盟国である米国と課題意識を共有してきた。外交・安保関係者の間では、GSOMIAの破棄で最も影響を受けるのは米国だとの見方が強いからだ。外務省関係者は「首相はトランプ氏に対し、いかに韓国の対応がおかしいかを繰り返し説明してきた」と明かす」(産経11月22日)

このように戦略を誤るともはや小手先の戦術ではリカバリーできないのです。
やればやるほど悪手となり、更に傷が深くなるだけ、というわけです。
少しは懲りたかとおもったら、韓国はなぜか「勝った勝った」と言っているようで・・・、まぁどうぞご勝手にいつまでもやっていて下さい。
もうそちらの国のことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年11月22日 (金)

香港、内戦に突入

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香港は内戦となっています。
香港は中国大陸唯一の民主主義の砦として孤軍を戦っています。
今やキャリー・ラム行政長官は完全にガバナンス能力を失い、ただひたすら警察の暴力で叩き潰すだけとなっています。

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https://twitter.com/FreedomonohKen

日本のメディアが「絵」になるドンパチばかり伝えるために、その背景に香港ゼネストが打たれていることを伝えません。

たとえば民主派学生が香港中文大学に立て籠もって籠城戦をした理由を知っていますか。
それは11月11日からの3ゼネストが打たれたために、大学2号橋から吐露港公路に障害物を落下させてブロックしようとしたからです。
https://www.youtube.com/watch?v=G4y85iqH9u8


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香港では3ゼネストといって大学・高校の授業、職場、商店などの全面ストライキが訴えられていますが、これを説明しないと学生だけが騒いでいるような錯覚を受けます。
現実には、今や香港全体が民主要求の巨大なるつぼと化しているのです。
デモに参加するのは香港のほとんどすべての階層にわたり、、ビジネス街では普通のサラリーマンやOLが、食堂街では親父さんや従業員らが、そして高校では生徒や教師たちが、その持ち場で戦っています。
この中文大学や理工大学の籠城闘争は、そのひとこまにすぎません。

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「「三?」と中国語で表現される3ゼネストは、11月に入って急激にエスカレートする警察の暴力を食い止め、独立調査委員会を設置して警察の腐敗を暴くことを含めたデモ隊の五大要求をのませるための、圧力として、都市交通機能をデモ隊がコントロールしようというのが狙いだ。この作戦を実施するにあたり、香港学生100人以上が、市民に理解をもとめ詫びを入れる書簡を発表している」
(福島香織の中国趣聞 NO.42 )

香港警察は、この籠城戦に対して容赦ない弾圧で臨み、中国軍対テロ特殊部隊が参加したしたとの情報すら流れています。

「警察からは催涙弾、ゴム弾2000発以上が発射され、学生側は火炎瓶などで応戦、70人以上の学生が負傷した」
(福島前掲)

 また、負傷者を救助するために駆けつけた民間医療ボランティアまで後ろ手に拘束しました。

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また、今回、警察側は自動小銃を公然と携帯し、デモ隊に向けて発砲しています。

「またこの大学は、人民解放軍香港駐留部隊のキャンプと隣接しており、解放軍もキャンプ敷地内で、銃剣つきの95式アサルトライフルを構えてキャンパス方面を伺っている様子がメディアのカメラで報じられている」(福島前掲)

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「解放軍香港駐留部隊はこの日、「自発的」にキャンプ外にでて、理工大学前のバリケード撤去、道路の障害物除去などを行った。これは、市民のために解放軍がボランティアで、バリケードを撤去しましたという「イイはなし」ではなく、香港政府の要請なく勝手に中国の軍隊が動いたという点で、香港基本法を無視したことになる。
もっとも解放軍が勝手に動くとは考えにくく、これは中国共産党の命令を受けての行動だろう。こうした軍の動きは、香港の治安維持回復に解放軍出動の可能性があることを香港内外に示し、つまり、最悪、天安門事件を鎮圧したのと同じように、解放軍によって制圧される可能性を、内外に示した一種の恫喝と受け取られている」(福島前掲) 

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また警察が1万発以上乱射している催涙弾は、西側でつくられたものではなく、中国製の危険な催涙弾が大量に使用されています。

「今日香港理工大學の中で、HKGETVさんが催涙弾を爆発後「シアン化物」の濃度が30ppm以上と検出しました。国際の基準は4.7ppmが安全の上限です。50ppmは即命の危険がありますので、30ppm以上は恐ろしい数値です」
https://twitter.com/FreedomonohKen

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このような香港の民主派に、自由主義陣営もやっと重い腰をあげはじめました。

「ワシントン 20日 ロイター] - 米下院は20日、中国が香港に高度の自治を保障する「一国二制度」を守っているかどうか米政府に毎年検証を求める「香港人権・民主主義法案」を賛成417・反対1で可決し、トランプ大統領に送付した。中国との通商協議への影響が懸念されるものの、関係筋によると、トランプ氏は署名する見通しという」(ロイター11月20日)
https://jp.reuters.com/article/hongkong-us-bill-idJPKBN1XU2VM?il=0

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米国上院は、香港人権法案可決し、トランプも署名する見通しなので10日間で自動成立します。
トランプが香港を無視しているかのような対応を取り続けてきたのは、背後に米中経済戦争の中締めがあって、彼としては大統領選の勲章作りのために中国を刺激することは手控えていたようです。
トランプという男は、自分のディールのためにはこういうことを平気でやるところがあるから、いまひとつ信用しきれません。
いっそ弾劾が決議されてペンスが昇格したほうがいいくらいです。
そのペンスは米中協議について、香港に対してこれ以上の暴力を行使するなら妥結出来ないとまで言っています。

しかし今回、上下院ともに全会一致ですので、仮に(ないとは思いますが)大統領が拒否権を発動しても、両院の3分の2で成立します。
こういう民主主を守るという価値観では、いつもは犬猿の仲の共和・民主共に手を携えるのは、米国の美風でしょう。
今回は香港情勢の急速な進展で、通常の法案審議を簡略化して、情勢に追いつこうと努力しています。
首相の足を引っ張ることだけしか頭にない、どこぞの国
の「民主党」、米国議会を見ているかぁ。(いねぇだろうな)

それはさておき、法案が成立すれば90日以内に、香港の人権状況の調査が開始されます。
もう既に一部の調査は先行して開始されており、たぶん多数のCIAスタッフは現地に潜入しているものと思われます。

これらの調査に基づいて、香港において一国二制度が守られていないと議会が判断した場合、香港の特別な地位は剥奪されます。
すなわち、中国本土とは異なる関税、金融面での優遇、入国条件等を一気に失い、国際金融センターの地位を喪失します。
また、人権弾圧に手を染めた関係者や機関に対して銀行口座の凍結や廃止し、さらには入国拒否などが課される可能性が出てきました。

この香港人権法成立により、米国の香港民主派へ連帯の意志が明確に発信されました。 
これは米国が一致して「米国の正義」を掲げた時は、こと次第では戦争も辞さないという意思表示でもあります。
ディールのなりゆきひとつでコロコロ変身するかの国の大統領閣下と違って、きわめて強力なメッセージとなります。

こんな時に香港弾圧の張本人を、国賓で招待する首相の気持が知れません。

Save 、Hong Kong!

 

 

2019年11月21日 (木)

osyou氏寄稿 沖縄と先島 ~ 首里城火災に見た歴史観と政治観 ~

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八重山在住の osyouさんから寄稿を頂戴しました。ありがとうございます。
私は首里城炎上事件について多様な視点を持ちたいと思います。
掲載にあたり、原文を忠実にアップし、流れを大事にするために一括掲載といたしました。

                                                                                           ブログ主

                                                 ~~~~~~~

沖縄と先島 ~ 首里城火災に見た歴史観と政治観 ~
                                                             osyou

10/31の早朝、スマホの画面を確認すると、県紙の速報が配信されていた。
「首里城から火」「正殿が激しく燃える」
題字とともに目に飛び込んできたのは業火に包まれる正殿の画像だった。
NHKの速報動画をスマホで確認してみる。
素材のイヌマキの良さなのか、宮大工の匠の誉なのか、いつもの威厳を保とうとして、漆黒の闇に屹立する紅蓮の炎に包まれた正殿は、「朱塗り壁の赤瓦」普段の豪奢な王朝絵巻を離れ、
妖艶な美を醸していた。
美しいものが最後まで美しくあろうとするかのように。

首里城焼失後、政府はその日のうちにいち早く支援を明言した。
現場検証も終わらぬうちに、韓国への観光誘客トップセールスから帰沖後、飛ぶように上京した知事をはじめ、沖縄選出の超党派国会議員団等が政府や与党幹部に支援要請をする様を、県民は元より他府県の方々はどのような心境でその姿を見ていたのだろうか。

焼失後、県内マスコミを始め、SNS上では当然のように「首里城一色」の記事であふれた。
「沖縄の魂が燃えた」「誇りを失った」といった悲哀に満ちた言葉が飛び交う。
悲壮なほどに打ちひしがれる県民の声を目の当たりにして、軽く驚きを覚えた。
「首里城とはそこまで愛されていたのか」と。
ただ、私の考えを述べれば「象徴としての復元首里城」が燃えたことは残念には思うが、沖縄の魂が燃えたとは思っていない。
沖縄の魂は神や先祖に祈りを捧げる各地域の伝統行事や祭祀にあり、誇りとすべきは三線や舞踊をはじめとした伝統文化を継承してきた先輩方や、次世代に残そうとする若者達、そして何よりその文化の中で生きるオバアや子供達の笑顔こそが「沖縄」なのだと考えている。
そもそも首里城が復元されたのは平成4年で私の少年時代に首里城は無い。小学校の修学旅行で那覇に行った折に見学したのは守礼の門だけである。那覇住まいならまだしも、離島域に住む30代後半以上の世代には首里城は全くと言ってよいくらい馴染みが無いのである。
しかしながら、あの華麗な建築物が一夜で灰になる喪失感は理解はできる。特に首里城近辺で生まれ育った30歳前後の若い人たちは、離島住まいの私などよりは遥かにショックを受けられた方がいることには心を痛める。

閑話休題。
私の住む石垣の友人知人たちのSNS上でもその焼失を悼む声が多数確認できた。
もっとも、SNSで普段から記事を投稿する面々はもちろんこの事件を投稿するのだが、逆に普段記事を投稿する方々でも首里城関連の
記事を投稿しない方々もいた。ショックのあまり投稿できないのか、はたまたシェアしたくなるような思わず膝を打つような意見が無いのか。それはまるで「スルー」するかのように感じられた。その後、SNSのタイムライン上が「首里城募金」の投稿記事で埋め尽くされるまでにそう時間はかからなかった。

そんな折、こんな声がチラリと友人から聞こえてきた。
「寄付の動きがあちこち出ているけど、先島人頭税搾取の象徴たる首里城には、八重山郡民として心情的に募金は出来ない」という声がある、と。
これには軽く衝撃を覚えた。
保守系筋の方からこのような声が聞こえてきたからである。
恐らくだが革新県政の玉城知事に金をビタ一文出したくないが、それを表立って言うことはできない。歴史観と政治観、二重の拒否理由が相まって「先島人頭税」が顔を出してきたものだと推測される。「先島人頭税は現代にまで陰を落とすのか」と思わず唸った。
石垣島では比較的革新寄りとされる八重山毎日新聞。11月16日付の 名物コラムでもこのように書いている。「
首里城はかつて、先島にとって圧政の象徴であった。」と。

事実、私自身の中にも複雑な感情はある。
先島と首里は過去に人頭税があり、更に遡って八重山は首里王府に対し、大浜の豪族オヤケアカハチが反旗を翻した過去がある。
また、郷土の詩人「伊波南哲」の作品「長編叙情詩オヤケアカハチ」から脚本が書かれたアカハチが主人公の子供演劇は石垣島では大人気だ。無論、子供たちの熱演の素晴らしさもあるのだが、アカハチと王府、小さな島を舞台に繰り広げられる物語は、島の人々の(ささやかな)判官贔屓を起こすには十分過ぎるほどなのだ。
それらの過去を考えた時、僅かとはいえ、仄かに暗い感情が頭をもたげてくることは否定はしないし、件の保守系の方の気持ちも十分に理解できる。

しかし、そのような声があるのを承知で、自分自身に言い聞かせる為にも敢えて言う。
「奇貨居くべし」と。
秦の政治家、呂不韋が言ったとされる言葉である。
近年、何かと暗くなる事件や事故が多い沖縄。
左右葛藤のみならず、沖縄県と政府等、何かと対立をする構図が喧しい昨今だからこそ、首里城再建に向けて、できうる限り大同団結するべきであろう。首里城は確かに沖縄の栄華の粋である。光が強く当たるからこそ、先島にも陰は落ちるが、沖縄における「物語」の象徴でもある。故に私はこの言葉を肝に銘じたいと思うのだ。

ただ、原因究明と責任の所在だけは徹底的にするべきだ。
関係者の処分は難しいと思う。あれだけ莫大な時間とお金をかけた建築物の賠償など無理だ。昨今のネット上での集中批難を考えると、それもまた酷である。むしろ、管理責任者として県知事が頭を垂れ、県関係者の謝罪はあって然るべきではないだろうか。
県紙は2022年までに玉城知事が再建計画策定を計画していると報じている。
仮に本土復帰50周年の目玉にしようというのであれば、話は綺麗だが復帰50周年の秋に知事選を迎える為、知事選への弾みと受け取られるような野暮はよした方が良いと思われる。
特に県紙と政治家の方々に強く言いたい。首里城再建まで「政争の具」にするべきではない。
「県民の誇り」とまで言い切るのであらば。

首里城復元のためにその人生を賭してこられた高良先生が御年72歳。
復元工事が始まった当時は、30代の働き盛りであられた。
今、30代、40代の私たち沖縄の中堅世代が生きているうちにでも再建できればそれでいいではないのか。左右葛藤を乗り越え、先島と本島の対立を乗り越え再建する。先の八重山毎日新聞のコラムも人頭税の過酷さを断じながらも結びにはこうある。
「そういう歴史も内包していることを踏まえつつ、早期再建を望みたい。」これには私も同意する。
それでこそ真に「球陽」のシンボルたりえる。

あえて「琉球のシンボル」と呼ばなかったのには理由がある。
私は「琉球」とことさら強調する呼び方は敬遠してしまう。
当ブログ宜野湾くれない丸さんの記事(11月15日付)にあったように、

>>「相反する論説」が重なり続けた結果、「平和国琉球」という「偏った幻想」が広がっていく原因となっていることは事実です。小さな積み重ねが、その後の大きな溝となって噴出してくるのです。

「琉球」と人が語るとき、特に政治家やマスコミが語るときにどうしても「政治的なマジックワード」になってしまっている現実があるように思われる。
同じ理由で敬遠する言葉がもう一つある。それは「ウチナーンチュ」だ。
故翁長知事は「イデオロギーよりアイデンティティー」と説いた。しかし同じ文脈で「ウチナーンチュ」を語ってしまった結果、「ウチナーンチュ」という言葉の政治言語化を決定的にしてしまった。20世紀におけるシオニズム同様、「レキオイズム」と言っても過言ではないだろう。ウチナーンチュという言葉はもはや「思想」に近くなってしまっているのだ。
沖縄県民は郷土愛が強い。私の親の世代は「沖縄人はうるさい」と本土で言われたこともあるかたもいる世代だ。しかし今や沖縄の文化はBEGINや安室奈美恵などのアーティストの活躍もあり、90年代以降その個性を誇れる時代になった。しかしそのアイデンティティーを強調するあまり、県民自らが無意識ながらも本土との違い(線引き)を鮮明にしている。それをマスコミや一部政治家の手によって分断の溝を深く掘られてしまい、利用されている現実があるように思われる。この現象を沖縄の保守陣営は認識すべきだ。
話を「琉球」に戻す。
先に挙げた理由から私は「琉球」という呼称を敬遠してしまう。琉球と王国(王府)はセットになってしまいがちだからだ。
この言葉を首里城再建の文脈で語られた時、先島の住人は「本島との溝」を感じてしまう人間は少なくないはずだ。そこでもう一つの伝統的な美称「球陽」
という呼称をあえて使いたい。

最後に、私は八重山人(エーマンチュ)であると同時に、沖縄県民であり、日本人だ。
無論、同県人として沖縄に対する同胞意識は強く持っている。興南高校が甲子園で春夏連覇を成し遂げた時は飛び上がるほど嬉しかったし、
沖縄水産が夏の甲子園決勝で涙を飲んだときは涙が止まらなかった。橋本モンデール合意の時などは「ようやく山が動いた」と高揚したのも覚えている。
ただ、沖縄本島のマスコミや革新政治家が繰り広げる「対政府与党戦」の政治ショーに付き合わされることには辟易する。先島住民だけでなく、
久米島も含んだ本島以外の離島圏域自治体の本音はここにあると思う。
沖縄本島の政治家やマスコミが「ウチナーンチュ」「琉球」を強調するとき、それは本土との溝だけでなく、
自ら先島との溝を掘っている行為であることにそろそろ気づいてもいいのではないだろうか。それが政治言語として使用された時、(
少なくとも私は)500年前のアカハチの無念と、人頭税の悲しみに嘆息を覚えるのである。

再度申し上げる。「奇貨居くべし」と。

結びに当たり、この場を与えてくださった管理人様に感謝をいたします。
文末に、同じくSNS上で見つけた、沖縄本島の方の投稿記事抜粋を貼って結びとします。

                                                                                                                                                                                             あ「ある友人が言っていたんだけどもさ。
建築用の木材を調達するために山原に植樹公園をつくる。突貫工事ではなく一つ一つ心を込めた作業をするために、そのための琉球宮大工職人を育てる。
そこにお金をかけてみるって、おかしな話かな?
もちろん時間はかかるよ。植樹して木材になるまで数十年はかかる。もしかしたら100年ぐらいかかるかも。
でもそれでいいんじゃねぇの?
その時、今この島に生きている人間は誰も生きていないかもしれない。我々はもうあの朱色に輝くお城を見ることはできないかもしれない。
でもさ。
未来に夢を託せるじゃん。
これからこの島で生まれ育っていく、まだ見ぬ子供たちに「琉球人」としての誇りを手渡すことができるじゃん。この島でしかできない仕事をうけついでもらうことができるじゃん。

時間とともに金もかかると思う。だからさ、100年かけて県民みんなで貯金するんだよ。今この時も既にたくさんの人たちの善意が集まっていると思うけど、その善意にさ、政治色のついた、なにかと引き換えにされそうなお金はくっつけないほうがいいと思うな、俺わ。県民一人一人が小さくても積み上げた気持ちを、次の時代の首里城に託そうよ。
100年かかろうと200年かかろうと、大丈夫だよ。琉球王国の思いは決して死なない。この島に住む人たちが先人に恥じないよう、胸を張って生きていくことができれば再建に要する時間がどれほどかかっても、大丈夫。むしろそれこそが俺たちが首里城に込めた思いだったはずじゃん。

どんなにお金をかけてもどんなに時間をかけても崩れ落ちる時は一瞬だって、あの正殿が身をもって教えてくれたからさ、だから時間は問題じゃない気がするんだよね。
中島みゆきの『命のリレー』はこんな言葉から始まる。
「この一生だけでは辿り着けないとしても命のバトン掴んで 願いを引き継いでゆけ」
これじゃない?
県民一人一人が心を同じくして優しい気持ちで見上げられる首里城をつくる。その為には今、この島に山積する問題を片づけて、次代に引き継ぐのは琉球王国の誇りだけでいい、そう思わん?」

                                                                                 令和元年11月18日 osyou

2019年11月20日 (水)

るいびーー氏にお答えして いずれにしてもちっちゃな話です

しょうがない、書くかな。ああ、気が進まない。
るいびーさんという人から、2回コメントが入っています。
この人、ゼンゼン記事読んでいないですね。

私が書いたのはモノの軽重のことです。
今、日本が直面している被災地救援・国土の治水・韓国の自由主義陣営からの脱落・香港デモなど問題などの重大事と、ホテルオークラの明細書を較べろって、そういうことを無意味っていうのです

るいびー氏はこんなこと書いています。短いから引用しますね。

「ホテルオークラの明細がないって?そんな説明で納得いく国民がいたらそれは阿呆ですよ!」
「安倍政権の花見会を問題視してます。もう言い逃れは出来ません!」だそうです。

はいはい、そうですか。いいかげん自分でイヤになんない。
モリカケだって当時は「国民の大多数が問題視」してたっけね。
世論調査でどうのとかこの人は書いているけど、メディアが「疑惑だぁ」と太鼓叩いてドンドンパッパッとやっいる当座はそれなりに数字が出ちゃうんですよ。
一皮めくれば
事実ではなく、こういう主張をしたいから印象誘導するていどのことにすぎません。

ところがメディアや野党はスキャンダルにしたい一心ですから、肝心なメディアの仕事であるはずの裏取り取材をしていません。
今回なら立憲の議員がホテルニューオータニのパーティで差額を安倍氏が補てんしたから公職選挙法違反だということを報じたなら、裏を取ればすぐヨタだとわかるのですが、まったくとらないでそのまま流してしまいます。
しかもテレビ新聞が総掛かりでそれをやれば、そりゃ瞬間的には「疑惑」っぽく見えちゃうよね。

しかし哀しくや肝心の事実が出ないから(出るわきゃない)、追及内容にはすぐに矛盾が出てしまいます。
裏取りといっても、なんのことは内自分の社内で議員主催パーティに行った記者なんか政治部には掃いて捨てるほどいるはずですから、彼らに聞けばいいだけです。
会費とメシは釣り合ってた?、ってね。
釣り合うはずがありません。

今回のように桜を見る会前夜のパーティのような支持者へのサービスならば安くするし、逆に政治資金集めのそれならベラボーに高くするからです。
そんな基準が曖昧なものに、ホテルからパーティの内訳だせって。馬鹿じゃない。
そもそもそんなもんホテルニューオータニみたいな一流ホテルが出すと思う?

そう思っていたら常識がなさすぎです。

※追記
ホテル側の回答。
「開催時期や人数、食事や飲み物の内容、宿泊とのパッケージか、お客さまの利用頻度など、さまざまなケースがあり得ます。ホテルとの競合になりますので、いろいろな相談をさせていただいている。『端数を切ってほしい』などよくあります。ケースによって、さまざまです」
「一般論として、ホテルはお客さまとの信頼で成り立っています。お客さまの了解がなければ開示できません。会費制のパーティーの場合、参加者全員の了解がなければ無理でしょう」
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/191120/pol1911200006-n1.html

パーティに来たのは多くが宿泊客ですから、ホテルが顧客に関わる情報なんぞ出したら、職業的秘密の暴露です。職業倫理違反。
ホテルニューオータニは信用失墜。もう政治家は、こんなホテルで二度とパーティをしないでしょうな。

辛坊治郎さんが暴露しているように、在京のテレビ局の幹部なら、こんなパーティなんかイヤってほど経験しています。
スポーツ報知の記事です。

辛坊治郎キャスターは今回の問題で「私、関西でメディアやってて不思議なのは、こうやって、けっこう大騒ぎになってますが、在京のテレビ局にしろ新聞社にしろ全員幹部が毎年参加していて実態知らないはずがないんでね」とコメントした。さらにホテルの前夜祭での会費に関する野党の追及について「みんな分かっているだろうって話で。1000人の政治資金パーティーで1000人分食事を用意するパーティーなんてないですから」とし「そんなこと今、追及している人たちは全員分かってるはず。なんでそれを堂々と言うかな? この人たちは」と指摘した」(11月16日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191116-00000041-sph-soci

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http://kitasite.net/b/2013/03/10/8399

辛坊さんが言うまでもなく、一回でも、企業や団体の立食パーティに行ったことがあれば、分かるはずです。
私も何度か経験がありますが、食うもんなんかどこにもねぇや、です。
上の写真にもあるように、あってもつまみのようなものがチラホラ。
酒だけはふんだんにあるが、それも腹が膨れるビールばかり。
食うものは瞬時でなくなり、メーンの豪華なローストビーフの塊なんか5分持たなかったよなぁ。
そんなもんだて、立食パーティっなんて、しょせん、

辛坊さんが言うように1000人いれば1000人分の食事が出るっていうのは、温泉旅館の宴会だけ。
箱膳あって、トックリ乗って一人前なんてこと、ホテルはしませんからね。

だからオオザッパに1000人で立食パーティを頼まれれば、ご予算に応じていかようにでもなるのです。
菅官房長官が言っていたように「5000円でもやってもらえる」というのはそのとおりなのです。
逆にひとり3万円でもしてくれるってこと。
そんなこと立憲だってよーく知ってるはずですが。

もっとも3万円コースでも食うもんはないけどね(笑い)。
だからホテルにとってバンケット(宴会)ほどおいしいものはないのです。
それを、ハイ、今回の立食パーティのお食事は早いもの勝ちでございます、とは言えないから明細書なんんか出してたまるもんですか。

いずれにしても、ちっちゃい話です。

すると今度は論点を変えるのです。
別に金星人が言うように、大魔神のアベが芸能スキャンダルをぶつけたからではありませんよ(爆)。

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親から毎月お小遣いをウン千万円も貰って脱税疑惑が起きた時、うやむやにした異星人にいわれたくないやね。
じゃあ、お小遣い問題が起きた時に、リンゼイさん殺人事件や芸能人麻薬事件が起きていましたが、あれもハト政権の陰謀ですね(笑)。

とまぁ「疑惑」って言っても、しょせん実が入っていない紙風船のようなもんだから、急速に衰える宿命にあっただけのことです。
国民はそれほど暇でもなけれバカでもありませんしね。
引っ掛かるのは、失礼ながらるいびーさんのような情報弱者だけです。

結局、この騒ぎもなにもでないでしょう。
かつてこの事件の比ではない騒がれ方をした事件はありましたが、なにか出ました。
私の記憶に間違いなければ、ウォーカー・メディア(新たに命名。ウォーキングデッド見ている人には分かる)やウォーカー野党は、なにひとつ彼らが言っていた疑惑を裏付ける事実と証拠を出せませんでした。

いいですか、足かけ2年、こればっかりやって政治をマ ヒさせたあげく、大山鳴動ネズミ一匹でした。
違いましたか。私の勘違いですか。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20190...

そのネズミ一匹って、初めは国士だ極右だ、アベ信者だと叩かれ、転向したとたん真逆の「真実の告発者」にまつり上げられた籠池夫妻という詐欺容疑者のことです。
彼になにがなあったのかについては、長男が反省して暴露しています。
籠池氏をよってたかってヒダリの人たちが食い物にしたのですよ。

それはさておき、火の気のない所に煙を立てて大火事にしようという手法自体が無理ありすぎなのです。
初めボヤのうちはおぼろに「巨悪」みたいに見えても、あっと言う間にネットでさんざん検証されて、たちまちなんだこんなことだったの、と鎮火してしまう類のことばかりだったのです。

ここにいちばん腹立つんでょうね、オールドメディアの先生方は。
だって、
かつてのように大新聞が号令すれば、「国民」が一斉になびいて、へへぇ大新聞様の仰せのとおりで、けしからん政権だ、倒せぇと声を揃えてくれた古き良き時代は終わったことが身に沁みますから。
今、いちばん「昭和」を感じるのは朝日新聞ですね。

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たとえば日韓関係を破壊した原因の一つになった慰安婦聞問題など、まさにこの典型でした。
根も葉もない虚報とはこのこと。
日本軍が、暴力で朝鮮半島の当時「日本国民」だった女性を兵隊用慰安婦にしたなんて事実はなかったのです。
このブログでもしこたま書きましたが、軍が自国民を強制連行する必要なんかはありませんでした。
だっていくらでも朝鮮人女衒業者がいましたから。

それを朝日は当時あった女子勤労挺身隊という労働奉仕を、売春にすり替えてしまったわけです。
そう報じたのは1992年の一本の植村記者が書いた朝日の記事からでしたが、あの時期にネット言論があれば以後の展開はまったく変わったはずです。
なんと朝日はこれが虚報だと分かっていながら、実に30年間もシカとしていたんですから、まさに鉄面皮です。
そしてこれは韓国政府の公式見解となり、さらには日本が謝罪して慰安婦財団を2回も作っては潰されるということにまで発展していくわけです。
その意味で、今の日韓氷河期を作った元凶は朝日だと名指しできます。

いまでも、こういうメディアの信奉者は残っていて、その時彼らが言う決まり文句がいまだに「国民は納得しないゾォ」です(脱力)。
ね、るいびーさんとやら、あなた、いつから「国民」とやらの代表になったの。
誰もるいびーさんを「国民の代表」に任命していませんが。
そういう自分の言うことのバックには「国民」がいるみたいな虚勢は、立候補して当選してからいいなさいな。

忠告しますが、もういいかげん学習したほうがいい。
そもそもこういうやり方はもうムリがあるんですよ。
フワフワ風聞と、ナンチャッテ・スキャンダルで政権は追い込めません。
ちゃんと経済や外交を勉強して、調べてから政策で勝負しなさい。

 

※記事の前後を入れ換えました。すいません。

 

 

山路敬介氏寄稿 沖縄県はこれ以上無駄でみじめな「濫訴」をやめよ 完

                                

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     ■沖縄県はこれ以上無駄でみじめな「濫訴」をやめよ 完  
                  ~謝花喜一郎副知事は最高裁決定と同時に辞職しろ 
                                                                         山路敬介


承前

沖縄二紙をはじめ、県内外のリベラル系メディアも罪が重いと言わざるを得ません。
「防衛局、また私人なりすまし」だとか「国有利にあきらめ感も」など、県民への印象操作や誤謬の植え付けに余念がありませんでした。

かつて二紙に登場した「防衛局は固有の資格」と言って、県を焚きつけた何人もの左系行政法学者もすべて今は紙面に登場しません。私は当時それらの学者の論説をつぶさに読んで、おかしいなぁ、俺の知識は古いのかぁといつも考えていました。

思うに彼ら本土の左派勢力に属する学者たちは、自分では責任を取らなくて良い高見から沖縄を使って実験をしたと思います。
ここ沖縄で、「国」と「国民」とを対立的に二つに分け、国と地方の関係も「中央政府」と「地方政府」と規定したがりました。
たしかに国と地方は平等にはなりましたが、それも法の規定によるところの平等です。
各々で違う法を持つ事を良しとしたワケではないのです。

沖縄の人間は人を信じやすいし、もともと大人しく出来ています。
これ以上、本土ですら受け入れられていない左派リベラル志向の注入はやめて頂きたいものです。そうしたものは沖縄には合いませんし、被差別者的待遇をされる事には非常な抵抗感を感じます。

今の沖縄の問題は辺野古移設問題などではありません。そんなものはもう終わった話です。
表層的な言論を言うしか脳のないマスコミとは全く別の、本土の物言わぬマジョリティの沖縄に対する嫌悪感が増大しつつある点が問題なのです。
しかも、彼ら物言わぬマジョリティが沖縄に腹を立てるには合理的な理由がありますし、そこに至るに決して沖縄に対する差別的意識が元々あったわけでもなく、今もないのです。

沖縄はこのような馬鹿げて無駄な裁判を日本政府を相手にするし、その目的はまさしく「金」と「金」に由来する政治的理由でしかありません。首里城問題でもそうです。
そのような沖縄の在り方にごく普通の一般国民が首をかしげるのも当然です。
要するに、沖縄に対する不公平感が彼らの胸にあり、一方でそうした状況を生み出し続ける原動力も本土から来ているのであって、沖縄人自らの自助努力はますます失われつつあるという事です。 

                                                                                                              (了)                                                                                                                                                                               文責 山路 敬介

2019年11月19日 (火)

山路敬介氏寄稿 沖縄県はこれ以上無駄でみじめな「濫訴」をやめよ その2

     

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    ■沖縄県はこれ以上無駄でみじめな「濫訴」をやめよ その2   
          ~謝花喜一郎副知事は最高裁決定と同時に辞職しろ 
                                                                          山路敬介


承前

今回訴訟の県側の主張の中で最も奇怪で馬鹿々々しかったのは、「埋め立て承認撤回処分は謝花副知事が行ったものであり、沖縄県知事がおこなった処分ではない。
つまり処分庁は謝花副知事であり、ゆえに沖縄防衛局は国交省ではなく、謝花副知事の上級処分庁である沖縄県デニー新知事に審査請求すべき事案だ」というものです。まさに左翼脳全開です。(笑)

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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/359306

一般的に誰が考えても謝花副知事は知事の代理執行者です。
しかし、県主張のように確かに「判断」したのは故翁長沖縄県前知事ではなく、謝花喜一郎副知事その人であるとは言えます。
たて付けは富川副知事が第一順位の知事職務代理者で、謝花副知事は富川副知事から事務の委任を受けて謝花副知事の判断で「撤回」したというものです。

しかし、それによって処分庁が細胞分裂のように複数に増えてしまうトリックには、ただ笑うしかありません。
裁判長はこのおかしさには直接にはふれず、県側による関係法令の偏った読み方を否定する方向から判示していて、これを全く容認していません。

県主張によれば、このような無謀な「撤回」の判断は謝花副知事がしたもので、したがってその責任も処分庁たる謝花氏にあるという事になります。
謝花副知事は議会の同意を受けて就任した者ではありますが、選挙による県民の信託を受けている「選良」ではなく、身分は特別職の地方公務員にすぎません。

謝花副知事の判断でなした「撤回」について、当時から自民党などから「ねらいは知事選中に工事を止める事で、政治的効果をねらったもの」という批判がありました。

花氏は「政治的でなく、行政原理の回復」としていましたが、そこに新知事の就任を待たずして決定しなければならない緊急性は全くなく、他に合理的理由もありませんでした。
むしろ、新知事がなすべき判断の芽を摘んでしまった。つまり新知事は謝花副知事の敷いたレールの上を歩かなければならない事となる等、弊害だけがある決定でした。

憲法15条によれば、公務員はすべて全体の国民の奉仕者です。副知事が今回の「撤回」のような重要な案件を判断するのは地方自治法の本旨にも悖るとも考えられ、それによって工事を中断して国に莫大な損害を与えた事、無駄な訴訟費用など、県費を濫用させた事も許しがたい暴挙です。

県政の専横と言ってもいいでしょう。もちろん、最高裁によって県主張が認められるならその限りではないですが、そうでないなら最高裁判決と同時に即時辞職すべきです。

                                                                                                         (次回完結)

2019年11月18日 (月)

山路敬介氏寄稿 沖縄県はこれ以上無駄でみじめな「濫訴」をやめよ その1   

         

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             ■沖縄県はこれ以上無駄でみじめな「濫訴」をやめよ    
                ~謝花喜一郎副知事は最高裁決定と同時に辞職しろ
                                                                山路敬介

 さる10/23高裁那覇支部において、辺野古問題に決着をつける「ダメ押しに次ぐダメ押し」といった体の、県にとっては正しく「悪夢の判決」がありました。
これで沖縄県は6件目とも8件目ともいわれる敗訴となりましたが、県側の主張が従来どおり認められないのは当然の事として、細部においても一切認容された箇所がないという、県にとっては誠にみじめで悲惨な、けれど至極妥当で当然の結果でした。

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https://ryukyushimpo.jp/news/entry-892123.html

10/30県は敗訴を受けて最高裁に上告受理申立て書を提出して、さらに争うようです。
11/11に県HPにアップされた上告理由書60ページ分をさっそく読んでみましたが、国の役割や作用・解釈を極小化するいつもの左派法曹界特有の臭みと、全体を見ない重箱のすみ・こじつけ論法が顕著で、最高裁という舞台でも門前払いは必至です。

ところで、この訴訟は二紙などでは「関与取り消し訴訟」と言っているものです。
その内容は、謝花副知事がなした「埋め立ての承認撤回」を取り消した国交省を相手取って、「それは、国の違法な関与だよ」として、国交省のした(謝花副知事がした埋め立て承認撤回の)取り消しの取り消しを求めた、という一般には結構ややこしいものです。

ただ、この判決のキモや県側の主張の核心は簡単で、沖縄防衛局が沖縄県知事から得た「埋め立て承認」が「固有の資格」であったかどうかに概ね集約されます。
※ 固有の資格=「一般私人が立ち得ない立場ような立場で処分の相手方となる場合」の事をさす。

しかし既に平成28年8月の高裁判決で判示され、続く最高裁でも、沖縄防衛局の得た埋め立て承認は「固有の資格でない」事が確定しています。
先の平成31年4月の国地方紛争処理委員会決定でも同様に、「承認を受ける国(の機関)の立場は免許を受ける一般私人と変わらないものといえる。」としています。

今回の判決について、辺野古移設に肯定的な私のまわりでも「固有の資格」性の意味が分からず、「はじめから国に裁判で勝てるワケはない」だとか、「しょせん裁判所は国の機関だから」など言って変に得心している人は結構います。それで、この事をちょっと説明させていただきたく思います。

分かりやすいよう、よく行政法の学習で使われる実例で例えてみます。
(ブログ「行政書士受験者に幸いあれ」より引用させていただきます。済印先生、ありがとうございます)


「刑法は「賭博」を禁じています(刑法185条・186条)。しかし、実際には競馬、競輪、競艇、オートレースが「公営ギャンブル」として存在しています。東京シティ競馬は「組合」によって運営されていて、 この「組合」は「地方公共団体」であり、また、民間にはあり得ませんから、これに対する業務の停止などの処分は「固有の資格において当該処分の名あて人となるもの」に該当することになります。
一方、バス路線は東京だと都バス(東京都が運営)のほか、東急、小田急、京王、西武など数多くの民間バス会社があり、これに関する処分は地方公共団体である東京都と他の民間会社で異なることはありません。
従って、「固有の資格において当該処分の名あて人となるもの」ではないことになります。」

今回判決ではもっと突っ込んで、沖縄防衛局の立場を「形式的には処分の名あて人が国の機関に限定されていたり、一般私人と違う規制がなされていたとしても、処分の性質・効果や要件などに照らし、当該処分が、一般私人に対する処分と本質的に異なるものでないのであれば、国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場、すなわち「固有の資格」において相手方となるものには当たらない」としています。

この「固有の資格」性は、行審法に基づく救済を認めるかどうかの判断基準になるので、上の例の都バス(東京都交通局)の場合や、今回の沖縄防衛局の場合は処分庁(沖縄県)の誤った処分等があった場合には、一般私人同様の救済措置の機会や手続きが設けられて当然という事です。

さて、それでも納得しない向きの論理として「(都バスと防衛局は違う)、防衛局は防衛や外交という国の「固有の資格」に基づくもの」というような主張を今回の県側もしていますが、そのような言い草は「論理のすり替え」です。
「埋め立て事業」そのものの本質に対する評価をすべき場合だからです。

                                                                                                                                           (続く)



2019年11月17日 (日)

日曜雑感 本当の野党がいない悲劇

187-039

コメント欄に書き込んだのですが、長すぎたので、こちらに。

私が安倍氏を「擁護」?(苦笑)
私、このところ安倍氏には批判的ですが、だからなに。
今のような国際政治が大変動する時期に、彼を除いて日本の舵取りができる人材がいないというのが、日本の悲劇でもあるのです。

国の大方針である外交を外さないでいてくれる、という安心感が安倍氏にはあります。

民主党政権は、政権に就くやイの一番に日米同盟を揺るがしちゃいましたからね。
ハト氏がやったことは、いまのムン政権がGSOMIAを日本憎しで廃棄したのと同じことです。
同盟関係にある国がからむ安全保障上の一方的変更、ないしは廃棄は、二国間関係の根幹を揺るがすのです。
だから、さすがのオバマも怒ったし、怒りっぽいトランプに至っては、おおコワ。
ハト氏があれは沖縄県のことだからでは通用しないのと一緒で、ムンもあれは日本相手だからでは通用しないのですよ。

これはメロンを配った、桜を見る会の名簿を焼いた焼かない、という純粋にドメスティックなレベルとは比較にならないんです。
この国の根幹を揺るがすことですから。

そして野党が眼を覆うばかりに無能だということ。
オレにやらせて下さいというからやらせたら、スラップスティック。国はめちゃくちゃ。
民主党政権の幹部が、この状態を「社会実験」だと言っていたのにはたまげました。
ド素人の「実験」に1億数千万人の国民をつきあわせているのか、実験なら動物実験してからやってくれって心底思いましたね。
で、国民は二度と金輪際、野党に政権渡したら悲惨なことになると深く学習したのであります。

つまり安倍氏の長期政権は、野党の無能が生んだものなのです。
民主党政権の失敗からなにも学ばない、反省していない、一周してかつてのなんでも反対野党に逆戻りしてしまっています。
不勉強だから調査能力なし、政策立案能力なし、実行力もっとなし。
これだけないない尽くしで、与党のスキャンダル探しだけが「政策」ですからね。

今の野党は、自民党のガス抜きのためにある補完勢力です。
だから自民にとっても、こんなていどの野党ならいてくれたほうが助かるわけです。

かつての55年体制は、自民と社会党が裏でツーツーで、表でやり合っているという臭い芝居をしていました。
社会党は自民の派閥領袖の意を汲んで、時の政権の倒閣をしたものです。
本当に野党がコワイのは、自民党内反主流派が野党と裏で手を結ぶ時なのです。
今は、そんな寝業を仕掛けるような政治家はみんな鬼籍に入るか引退してしてしまって、ゲルちゃんみたいな背中から味方を撃つしか脳のない人しかいなくなりました。

しかしそれでは国民には不満が溜まります。
だから、政権にダメージにならない程度にガス抜きをする必要があるのです。
それが、小出しに出て来るメロン騒動や桜を見る会騒ぎなどです。
いっちゃナンですが、こんなもんいわば政界の軽犯罪法違反みたいなものにすぎません。
ある県の県政与党など「うちの県は選挙違反特区だ」とうそぶいているほどで、どこの党も調査されたらシロのところなどないはずです。
だからいくら積もっても、政権にダメージはありません。

そう考えると、今の安倍政権と惰弱な野党という構図は、形を変えた「新55年体制」かもしれません。
あんがい祖父譲りの腹黒いところがある安倍氏なら考えそうな気もします。

ほとんどの国民が私と同じでこれをくだらないと思っているのは、2大臣が更迭された後の最新の世論調査で政権支持率が下がるどころか自民は堅調、立憲は低落して第2党を公明に譲り、、森ゆうこ議員の国民民主なんか、もうゼロ一歩手前の支持率です。


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この人の言っているように、桜を見る会がそんなに大問題なら、ひとつ解散しますか。
そろそろ衆院は解散するにいい時期ですが、やればほぼ確実に自民が大勝します。
それはこんなことしかできない野党に失望感、いや元々期待していないでしょうから嫌悪感があるからですよ。

消費増税反対は私と野党が珍しく一致した意見でしたが、なにひとつ議論をしませんでしたね。
「民主」を党名に被せながら、香港について野党の誰かが発言しましたか?
米国民主党は議会で香港人権法を通しましたよ。
いつも小ネタばかり。それも自分で調べたのではなく文春砲頼み。
マスコミに露出して騒ぐだけが脳。
こういう政局ねらいばかりに終始していると、戦前のように議会無用論が出てくるようになります。
それがいいことなのかどうか、少しは考えるんですな。

国会は政策を論じるところ。
政策で勝負しろと言っているだけのことです。
私はまともな議論が成立する野党が心底欲しいですよ。

 

 

日曜写真館 蒼天にかかる飛行機雲のアーチ

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朝焼け雲に飛行機雲のトレールがかかりました

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実はこの河口に白鳥一家が住んでいます

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朝焼け雲をみると一日がうまくいくような気がします

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あの旅客機にはどの国からの人が乗っているのかな

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梢と朝日は仲がいいんです

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河口を行くと小さな船溜まりがあります。この時間はにぎやかですよ

 

2019年11月16日 (土)

桜を見る会で騒ぐくだらなさ

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桜を見る会、来年中止になりました。
そのうえにホテルでの安倍氏の支持者を集めた前夜祭が、会費5000円なのは安すすぎるだろう、差額が安倍事務所が払ったのなら公職選挙法違反だってことで野党とメディアが騒いでいます。

ハッキリいいます。馬鹿ですか、あんたら。くだらないにもほどがあります。
やれメロンだ、やれ香典だときたあたりで、私はうんざりしていましたが、とうとう、桜を見る会だ、そしてえっ、こんどはホテルのパーティ会費が安い。
カニは甲羅に合わせて穴を掘るっていいますが、まったくそのとおりだねぇ。
国会で1日数億円かけて、他にやることがないんですか。

いくらでもあるでしょう。今、東アジアは大きく勢力バランスが崩れようとする前夜を迎えています。
香港では中文大学で民主派と警官隊が死闘を繰り広げ、ほとんど内乱となりつつあります。
このまま推移するなら、習は返り血覚悟で軍を投入するかもしれません。
ここで、民主主義国家として、なにひとつアクションを起こさずに唯々諾々と習近平を国賓で迎えていいのかどうか、いままさに摘み取られようとしている香港の民主派をこのまま孤立させてよいのか、国会決議一つ出せないのか、数分でも国会で話あわれたのでしょうか。

国内に眼を向けても、消費増税が個人消費に影を落としはじめましたし、台風で治水事業が破綻しかかっていることもわかりました。
台風被害支援だけではなく、今後どういった治水事業をやってどれだけの財政をつけて国民を守るのか、徹底的に詰めねばならない時期なのです。

こういうことで安倍はなっていない、と追及するなら私も応援しましょう。
しかし、なんですって、桜を見る会がぁ、ホテル代金がぁ安いぃですって(脱力)。
常識で考えても、コンプライアンス厳守が常識の一流ホテルが、客の情報をペラペラしゃべるはずがありません。
現に流出させたと名指しされて迷惑したホテルオークラは、「特定顧客と比較するような見積もりを出すことは絶対に無い」と見積書の提供を強く否定しています。
またこれを出した立憲の石川議員事務所も、「国会に出した見積もりは、石川事務所が開催する宴会として安倍首相の名前を出さずにホテルに条件を指定したもの」と認めています。
なんだ馬鹿馬鹿しい。引っかけでホテルから情報を聞き出したのですか。
https://ksl-live.com/blog27372

これで安倍氏を公職選挙法違反連座で失職に追いこめると張り切ったいつもの連中が、安倍事務所までおしかけて「調査」するってんで すから、もはやこの人たちウォーキング・デッドです(まだシーズン3ですが、深みにハマってます)。

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桜を見る会なんてただの慰労会です。
招待される人の多くは、各地で陽が当たらない苦労をしている消防団や交通安全協会、JAなんかの人たちです。
こういう人たちは自民議員の後援会の人が多いので、自然と政権支持母体の慰労会のような空気になりますが、仕方がないでしょう。
その中には彩りとして、タレントもいれば歌手もいる、キャバ嬢もいる、かつては爆笑問題も呼ばれたし、レンホー女史もいたってていどのことです。
それを政権の人気取りだといわれてもねぇ。
 

野党が政権を取った時には、ハトさんも派手に支持者を呼んでいたと聞きますが、当時野党だった自民がそれを追及したなんて話はついぞ聞きません。
初めからあんな会ソンなもんだから、野暮は言わなかっただけのことです。
自民は地域の後援会関係を呼び、民主党系統は地域に根がないから労組を呼ぶというだけのことです。
だから
調べていませんが、たぶん民主党政権で3回開かれたはずの桜を見る会は、さぞ労組関係者が多かったと思いますよ。

何度も言いますが、そんなもんなんですよ、そもそも桜を見る会なんて。
それを政権を忖度したとか便宜を図った、支持者ばかり集めたというなら、そんなことはあたりまえじゃないですか。
だって元々政権が主催するごくろうさん会なんですから。
そういう体裁で吉田茂が始めて、もう60ナン年やってきたんです。
安倍氏になって突然始めたんだったらまだしも、慣行行事なんですよ。

招待客の選考基準には、慣行として政府には裁量権が認められていますし、法的な縛りは一切ありません。
だから公職選挙法違反で安倍氏の首をとるのは、100%無理です。

安倍政権はさっさと来年の開催を止めましたが、やりすぎです。
弱みがあるとメディアが喜んでいるじゃないですか。
検討します、ていどで押えておけばよかったのにと思います。
アホな野党とメディアが成功体験と勘違いしちゃうじゃないですか。

さて、桜を見る会は枕のはずだったのに長くなりすぎました。ああ、くだらない問題にかかずりあっちまったぜ。
韓国に先日米統合参謀本部議長のマーク・ミリー大将が訪問しました。
彼はただの軍人ではありません。米軍4軍を束ねる制服トップです。
そしてほぼ同時期には、エスパー国防長官が訪韓しています。
この2人が相次いで訪韓したのは、桜を見に行ったんじゃありませんよ(あたりまえだ)。

テーマはひとつしかありません。韓国がこのままGSOMIAを23日に失効させる気なのか、最後の説得に行ったのです。
制服と文民の国防ツートップを送り込んだのですから、トランプがいかに本気なのかわかるはずです。

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聯合

にもかかわらず、トランプの本気を理解していないムン閣下はニベもなくこう応えてしまいました。

「【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は15日、青瓦台(大統領府)でエスパー米国防長官と会談し、失効期限が迫っている韓国と日本の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)と関連し、安全保障上信頼できないという理由で対韓輸出規制を強化した日本と軍事情報を共有するのは難しいとの立場を改めて伝えた上で、韓米日間の安保協力は重要で持続的な努力を傾けるとの意向を示した。青瓦台の高ミン廷(コ・ミンジョン)報道官が会見で伝えた。
文大統領の発言は、日本が対韓輸出規制強化を撤回すればGSOMIAの終了決定を再検討することができるとする韓国政府のこれまでの立場を改めて示したもので、現在の韓日間協議の状況を勘案すれば、GSOMIAはこのまま失効する可能性が非常に高いとみられる。
 韓日両国が歩み寄る姿勢を見せない場合、韓日GSOMIAは23日午前0時に失効する
」(聯合11月15日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191115004300882

ある意味、スゴイ度胸だね、ムン閣下。ここまてやるとはさすが私も思いませんでした。

かねがね私はムン閣下は黒光りするような馬鹿だと思ってきましたが、一代で国潰す奴なんて聞いたことない(苦笑)。
あんがいムン閣下は気分が高揚していて、「歴史は私に無罪を宣告するだろう 」(byカストロ)なんて思ってたりしてね。
つき合わされる国民はたまったもんじゃありませんが。

韓国は完全にコーナーを曲がりました。
後はジェットコースターのように自滅へ一直線です。
かくして11月23日はちょうど一週間後ですが、この時をもって韓国は事実上自由主義陣営から脱落します。
在韓米軍はおそらく撤退するでしょう。
トランプはこれを切り札にして北と交渉する気
ですし、在韓米軍が引いてもやり方はいくつか残っているからです。

たとえば在韓米軍のうち大所の第2師団は撤収させ、ピョンテク基地に有事備蓄を残します、同じく在韓空軍はウルサン基地に有事即応備蓄を残して飛行隊だけ撤退し、在韓米軍司令部のみ横田基地に移動するということもありえます。
その場合、南北がバカな統一などに走らないように米韓安保は絶対に廃棄しません(意地悪だねぇ)。

またトランプは韓国に対して駐留経費5倍にとどまらず、経済制裁を発動するかもしれません。
韓国系企業の米国市場の参入禁止、韓国製品の関税強化などメニューには事欠きません。
もはやムン閣下が敵対陣営に与すると言ったのも同然なのですから、一種のセカンダリー・ボイコットのようなものです。

と、対応はいくとおりも考えられるのですが、東アジア情勢が激動することだけは避けられません。
日本は韓国にムンがいるかぎりなにも変わらないと達観しているようですが、それだけでいいんでしょうかね。
最悪、中露北韓の四カ国包囲網をつくられるかもしれないのですが。

とまれこんな時期に、桜を見る会如きで浮かれていられる人たちがうらやましい。

 

2019年11月15日 (金)

宜野湾くれない丸氏寄稿 首里城は、メディア、アカデミズムがつくりあげた幻想であるとも言える

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 宜野湾くれない丸さんから寄稿を頂戴しました。ありがとうございます。

頂戴した記事にあった首里城の城壁の曲線についてですが、私見をいえば、そもそも軍事施設というのは、軍事的合理思想と美意識の融合なのです。
日本の城砦も同じです。
現代では軍艦や航空機などにも、民族の美意識と合理性が共存しています。
どちらがではなく、その双方の接点なのです。

たとえば、城壁の積み上げ方は、矢や銃で撃つ場合に死角ができないように配慮され設計されています。
だから本土の城壁は複雑なジグザグを成しています。
首里城も同じで、王府を防衛する軍事施設である以上、簡単に攻め落とされては困ります。
ですから、わざわざ建設に困難であるが攻めにくい山の上に作っています。
王府の権威を見せるためだけなら首里の市中に作ればいいのですが、あえて石材を運搬するのに大変な山の上に持ってきたのは攻めめにくくするためと、海に向かって権威を誇示するためだと思います。

また下写真2枚のように城壁を高く築いて、いざという時に場内に敵を入れないために入り口を極度に狭くしています。
また入り口の上には上から攻め手を攻撃できるやぐらも設置されていますし、城門脇を高くして抱え込む形になっているのは横矢を撃つためだと思われます。

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今回、消防車が入れなかったのはこの
城壁に妨害されたからです。
城壁も、曲面で構成することで攻め手の逃げる場所を封じています。

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https://www.flickr.com/photos/95528214@N08/3883555

この軍事的合理性で作られた城砦を、固有の美意識で建設すると、かたや角張ったものとなり、かたや局面を多様することになります。
ただそれだけといえばそれだけのことですが、その美意識の側だけ取り出すと、「沖縄は優雅な曲線だが、本土は戦闘的な鋭角的だ」という無意味な比較に走ってしまうことなります。

さらにこれを平和イデオロギーに接着すると、「平和的な琉球王国vs好戦的ヤマト」という沖縄タイムス好みの記事になります。
一回、こういう色眼鏡から離れて沖縄の歴史を見てみませんか、という宜野湾くれない丸さんのご意見はまさに卓見です。

                                            ~~~~~~~

  ■首里城は、メディア、アカデミズムがつくりあげた幻想であるとも言える
                                                                             宜野湾くれない丸

「沖縄研究には沖縄観光の集客のための戦略が色濃く影を落としてきたのではないか」、とは吉成直樹氏(法政大学沖縄文化研究所元所長)の言葉です。
昨年2月、ある出版社のホームページに掲載された約1,600字そこそこの簡潔なレポートの冒頭にこのフレーズがありました。
それ以来、私はこのフレーズに引っかかっていました。
何故ならば私が肌で感じている「沖縄の違和感」がここに凝縮されていたからです。
氏の沖縄に関する文献は、よく知られている沖縄・琉球の歴史観に「一石を投じる役割」を持っているという感想を私は持っています。
だから私の中でバランス感覚を保つという意味あいもあり、氏の文献は毎度興味深く読ませて頂いています。


「あるひとつの論説に、対極する論説が出てくる」ということは、アカデミックな世界において大変に建設的で健全なことであると同時に、歴史を背景に生きる「生活者」としても重要なことであると思います。
つまり「偏った見方や考え方」が行き過ぎると、不健全になってしまいバランスを失ってしまった自身にさえ気が付かない不安定な状態となってしまうからです。それが自身にとって「幸」なのか、「そうではない」のかはまた別の話として・・・。


吉成氏のレポート詳細は以下のサイトをお読み頂ければと存じますが、氏の言わんとするところは、1975年以降に始まった沖縄観光キャンペーンのことを「ここで注意したいのは、行政、沖縄県民、メディアとともに研究者も一体となって推進された点である』(※)という
ことであろうと私は理解しているし、私自身そう感じています。
https://www.7gatsusha.com/column/182/


具体的には、このフレーズの「研究者も一体となって」という点が私の「違和感」を醸し出すところなのです。

適例かどうか疑問ですが、直近のことなので一例を挙げると、首里城消失後の11月4日のタイムス「大弦小弦」で県立博物館・美術館の前館長、安里進氏の言葉を引用しながら、「直線は緊張を生む。あえて逃げ道をつくり、緊張を避ける琉球独自の美意識が育った。城壁も緩やかな弧を描く。角が鋭い本土の城壁とは対照的だ」(阿部岳記者)と書かれています。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/493286


一方で、吉成氏は「グスクの特徴である美しい曲線を描いた城壁を作ったのも、防御のための工夫だった」(「琉球王国がわかる」107頁)と述べ、更に「鉄が農具のために使用されることはあまりなく、そのほとんどは武器か武具の製造に回された」とも述べています。(同107-108頁)。
城壁ひとつをとっても「曲線美を強調」する見方と、「敵からの防御策」として「工夫」した結果だと述べている相反する論説です。
どっちが正しいのか?どっちも正しいのか?専門家でも「分からない」ということなのでしょうか?
例えば、この両者について、どっちから一方の声が大きく、しかも政治・メディアがバックアップする勢力が背景にあったとすれば、おそらく「そちらの論説が主流となってしまう」わけです。
これは「県民の不幸」であることには違いありません。
逆に「幸」とするのは一体どこの誰なのでしょうか?


このような「相反する論説」が多いのが、これまた沖縄関連の特徴でもあります。
特に歴史の分野において多い気がします。
歴史の素人、一般市民、生活者から言わして頂ければ、そのような場合はなぜ「論議をかわさないのか」不思議なのです。
なぜなのか白黒をハッキリさせろ、と強調するのではありません。
少なくとも「そういった相反する論説が存在する」ことを一般人としては「理解」したいだけなのです。それは「偏った考え方」に陥らない為の方法論としてなのです。
「あー、この件は色んな見方、言い分、研究成果があるよな」という状態が「精神的健康」なのです、少なくとも私にとっては。


ブログ記事にも掲載されてましたが、上記にあげたような小さな「相反する論説」が重なり続けた結果、「平和国琉球」という「偏った幻想」が広がっていく原因となっていることは事実です。小さな積み重ねが、その後の大きな溝となって噴出してくるのです。

ましてや、歴史観と政治は切っても切り離せないほど密接な関係性と危険性をもってます。
「利権」や「イデオロギー」的な問題も絡むからなおさらです。
であるからこそ「バランス」が必要不可欠なのでは?判断基準となる「バランス」なのです。つくづくそう思います。
歴史家や政治家、経済人、教育者が講じる「歴史」なるものは、はてさて先ずは「疑ってみる」ことが第一なのだろう、と。
そして自身のリサーチでこの「判断基準」を構築していくことが、「今を生きる者」として第一義なんだろうという事を痛切に感じます。


不謹慎な言い方ではありますが、「首里城消失事件」は私にとって「様々な見方・考え方が浮き出てくる絶好のチャンス」でもある、という思いがあります。
それは「県民の為の県益」を取り戻すことに繋がると。
「復元ありき」で進行する風潮に「今一度立ち止まって考えてみましょうよ」と感じています。
先に挙げたタイムス「大弦小弦」で安里進氏はこうも述べてます。「

再建は急がなくていい。左右も上下もなく、多くの県民が参加できるようにしてほしい」。また、以前の復元に尽力された高良倉吉氏もテレビのニュースで同様な発言をされてたと思います。

「国益」「県民益」を考えましょうよ。観光施設として27年間働き詰だった首里城の役割は「そんなものではない」、と私はそう思ってます。
大切なものであればあるほど。

 

2019年11月14日 (木)

首里城をもっと相対的に見ませんか

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ちょっと驚いたのですが、燃えてしまった首里城を「歴史的文化遺産」とか「世界遺産首里城が燃えた」と言っている人がいました。
もちろん違います。燃えたのはレプリカにすぎません。
高良倉吉先生を筆頭にした血の滲むような努力の結晶を前にして傲慢のそしりを覚悟でいえば、「しょせんレプリカ」にすぎません。
ですから法隆寺が燃えた、清水寺が燃えたというのとは次元が違うことなのです。

いや、世界遺産ではないかという声もあるでしょう。
たしかに「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として登録されましたが、それは床下に眠る城跡であって、建造物とは関係ありません。

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よく比較されるノートルダム寺院火災と首里城火災との違いを、元外務省国際文化協力室長・高橋政司氏はこう述べています。

「今回、「世界遺産焼失」の報道を受けて、「世界遺産の価値が失われたのか」という質問を複数の方からいただいた。パリのノートルダム大聖堂の尖塔の焼失の際も同じ質問があったが、実は、この2つの建物の焼失は、登録されている構成資産が何かという点で異なっている。
ノートルダム大聖堂は、焼失した尖塔を含め大聖堂全体が世界遺産であるのに対して、首里城は、「首里城跡」が構成資産の価値として認められている。
どういうことか。本殿の下の「遺構」、すなわち、石積みの部分に世界遺産の価値が認められているのである。従って、地上の建物の焼失をもって世界遺産としての価値を失ったことにはならない

(高橋政司
『首里城が世界遺産としての価値を失わない2つの理由と、平和の砦としての価値』)

つまり、燃えてしまった正殿1階からガラス越しに照らされてみることができた遺構が世界遺産です。
今回の燃えたレプリカ首里城は、かつての遺構の上70㎝に底上げされて作られました。
ですから戦前の焼失前の首里城は国宝でしたが、このレプリカ首里城は国宝指定からも文化遺産指定からもはずされています。
まぁ、外されたことによって文化庁の防災指定が甘くなってしまい、それをいいことに県はただの観光スポット化してしまったのですがね。

世界遺産というならば、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」は首里城だけではなく、中城城跡、勝連城跡、座喜味城跡、今帰仁城跡、斎場御嶽 (せーふぁうたき)などもそうです。

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ユネスコはあくまでもこれらの城跡を総合して世界遺産に指定したのであって、新築された首里城の上物は無関係です。
首里城を「世界遺産」と呼び、「沖縄の象徴だから再建を急ぐべきだ」とまで言うならば、これら中城、勝連、今帰仁などの立場はどうなるのでしょうか。

これら「その他」とされた城跡は、しょせん中山王に敗北した者たちの遺物にすぎないから首里城より価値が劣る、とでも県はいうのでしょうか。
また首里城の主たる尚王朝(中山)によって侵攻され過酷な支配を受け続けた八重山・宮古、あるいは奄美にとって、首里城焼失を「沖縄の象徴」の喪失とは受け取らなかったはずです。

高橋氏のように「平和の砦」というのも思い入れが強すぎます。
首里城は城砦でした。それは高い城壁と狭い門という構造をみればわかるはずで、実際に戦闘に使用されたこともあります。
戦後の琉球王朝非武装論によって歪められましたが、琉球王朝は軍隊を持っていました。

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この時期の琉球王府軍の装備や装束は明らかではありませんが、上の「沖縄風俗絵図」にあるような甲冑を身につけて、日本刀を持っていたようです。
http://blog.goo.ne.jp/nasaki78/e/d99023d577b22ba4c50214b03e79c3bf

琉球王国の軍隊は、種子島に鉄砲が伝来する以前に、既に中国から輸入した火矢(ヒャー)という中国式小銃を装備していた資料があります。
つまり日本本土より先に銃で武装していたと思われます。
ただし、それはこの時代に生きたすべての王国に共通のことだったにすぎません。

「平和の砦」などというのはただの「神話」にすぎません。
どんな「神話」なのか、ちょっと覗いてみます。

山崎孝史大阪市立大学教授『戦後沖縄における社会運動と投票行動の関係性に関する政治地理学的研究』第4章より
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/yamataka/08chapter4.pdf


「沖縄平和運動センター76は1995 年の普天間飛行場を包囲する「人間の鎖」行動に際して以下のようなアピール文を発表した。
・声明文 「平和」、「基地」
沖縄はかつて琉球王国の時代に、平和外交を国是とする「武器を持たない国」として、東南アジア諸国を含む広い海域を舞台に長期にわたって中継貿易で栄えた大交易時代を経験した誇れる歴史を持っています。しかし、一六〇九年の薩摩侵攻にはじまり、一八八七年の琉球処分というように、時の権力間の都合によって振り回されるようになりました。また、太平洋戦争では国内唯一の地上戦を強いられ、あまりにも多くの命が奪われました。」(沖縄タイムス1995年5月15日)

これについて山崎氏はこう解説しています。


「15 世紀における非武装の琉球王国は大田(昌秀知事)の歴史認識の中核の1 つであり、彼は「沖縄の心」と呼ばれる沖縄県民の平和主義の起源をその時代にあるとした」

つまり、太田知事は、琉球王国こそが沖縄の平和主義の起源で、その理想的モデルに戻れと言っているわけです。 
太田氏が信じている琉球王国、武器を持たない丸腰平和国家という通説はこんなものです。


・[通説1]尚真王が武器を捨てて、世界最初の「非武装中立国家宣言」をした。
・[通説2]ナポレオンが武器のない琉球の話に驚いた。
・[通説3]19世紀、米国平和運動の文献に、「平和郷のモデルとしてリリアン・チンという琉球人が登場し、好戦的米国を批判している。
・[通説4]琉球王国は軍隊がなかったために、薩摩藩の軍事侵略に無抵抗だった。

残念ながら、これらすべては事実ではありません。
そもそも尚真王は、非武装中立宣言なんかしていません。
彼の在位は1477(成化13年)~1527年(嘉靖5年)ですが、
「成化」という聞き慣れない元号は、明のものです。
琉球王国は、中華帝国の属国でしたから、明の年号を使っています。

燦然たる首里城に象徴される琉球王国の繁栄は、明の冊封と海禁体制のなかで、唯一琉球にだけ特権的地位に支えられていたためでした。
琉球王国は海産物、硫黄、黒砂糖などの特産品をもち、「僻地」ではなく、東南アジアからインド洋にかけての広大な貿易圏を持つ国でした。

高良先生が言うように、当時琉球王国は東アジアのみならず、アジア交易圏という車輪の中心位置(ハブ)にありました。
これが琉球王国の空前の繁栄をもたらした秘密だったわけですが、
琉球王国は確かに明の属国でしたが、ただの従順な下僕ではなく、明確な自らの意志を持ち、貪欲に栄えることに邁進する、山椒は小粒でもピリリと辛いような国だったのです。

尚真王時代、琉球王国は黄金期を迎えます。 

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では、当時の尚王朝(第二尚氏)の時代背景を見てみましょう。 
尚真王は琉球王国が最大版図になった功労者であり、沖縄史に輝く「大英雄」です。 
彼がしたことは、「非武装中立宣言」どころか、真逆の沖縄の武力統一でした。 
時は1500年代初頭、本島を征服した尚は、次の版図拡大を八重山と久米島におきます。 

八重山への征伐軍の規模は、3000余とされていますから、当時の渡海能力からすれば最大限のものでした。
ちなみに1世紀後の、薩摩軍の琉球侵攻時の総勢は3000人、80余艘を使用していますから、ほぼ同じ規模です。

「武器を持たない国」どころか、東アジア指折りの軍事国家だったと言ってよいでしょう。

迎え撃ったのは、石垣島の大浜生まれの遠弥計赤蜂(おおやけ・あかはち)でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/

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アカハチこそが、まさに英雄と呼ぶにふさわしい人物でした。
彼は王府の過酷な課税要求に対して島民をまとめ上げて、レジスタンスの戦いを繰り広げます。
結局、刀折れ矢尽きて戦死しますが、今に至るも八重山に深く残る「沖縄」への怒りをまさに体現した男でした。

またこの時期既に琉球王国は、尚徳王(在位1461年~ 1469年)時代に奄美の軍事支配も完了しており、後々まで残る王府による苛烈な収奪政策を残していきます。
尚徳王 - Wikipedia

尚徳王が喜界島侵攻時に動員した兵力は、約2千と言われています。
彼は奄美大島諸島の奄美大島、徳之島、永良部島、与論島などを支配しました

このように八重山、奄美の軍事侵攻において、琉球王国は一回につき平均2千から3千人の兵力の海を渡った戦力投射能力を有していたと考えられています。

つまり琉球王国は普通の軍隊をもち、それを育成し、国内を武力統一した後には近隣地域にまで版図の食指を伸ばした国だったのです。
このどこが「平和国家」なのでしょうか。
琉球王国がほんとうに丸腰の「平和国家」になったのは、薩摩に侵攻された後になるまで待たねばなりませんでした。

相対的な歴史観が忘れ去られたままで、首里城を「平和の象徴」と呼び、栄耀栄華の昔をもう一回再現しようとするなら、なにかもっと大きなものを置き忘れてしまったような気がします。

 

※大幅に加筆しました。

2019年11月13日 (水)

分裂を始めた沖縄地元紙


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昨日の記事で、沖縄タイムスの論調が不自然なまでに、原因は「大家の国」だと叫び始めたことを取り上げました。
奇怪ですね。まだ正式な報告を消防局はしていないんですよ。
それなのに、もうなにかに怯えているかのごとく、「犯人はアッチ、アッチ」と騒ぎだすのですから、なんだかなぁ、です。

沖タイは首里城を「沖縄の象徴」とまで持ち上げるのですから、その炎上事件について地元紙は徹底的に原因究明する義務があります。
「象徴」を燃やしてしまった「犯人」を予断で裁くのではなく、事実は事実として語らしめねばなりません。

たとえば、火災の責任を問う上でもっとも重要な管理の所在について、沖縄タイは県と美ら海財団のいいぶんをそのままな報じています。
こういう調子です。

「『国が整備した施設で、消火設備は、きちんとしているはずなのに』。10月31日、午前7時半すぎ、県幹部は、県庁で首里城の正殿が焼き尽くされていくテレビニュースの映像を横目に、うなだれた」(『失われた象徴 首里城炎上』 沖タイ11月7日)

このフレーズで県幹部の嘆き節の主語は「国が」で、それを受けた述語が「うなだれた」ですから、まるで県は国の不適切な消防体制によって被害を受けたかのようです。
なんのことはない、沖タイにかかると、県は国が置いていった自動消火装置もないような遅れた防火施設を、国の指示がないために改修することすら出来ずに泣く泣く使ってきたところ、今回の炎上事件となってしまった、というストーリーとなります。
このストーリーには、なにひとつ「沖縄の立場」というものがでてきません。
全部受け身、全部被害者です。

沖縄県がその「遅れた防災整備」をどう考えたのか、どう対処しようとしたのか、ただただ受容したのか、それとも「法に則っていればいい」と放置したのか、あるいは改善しようとしたが及ばなかったのか、私はそこを知りたいと思います。
この県幹部の言い方では、沖縄には自分のかんがえなどなく、すべて本土政府から押しつけられて、泣く泣く受容したということにすぎません。
これは基地問題で必ず出てくるポジションで、
いわゆる「やられた」論です。
本土にやられた、国にやられた、本土にだまされたと言っていさえすれば、なんとか乗り切れるというわけで、実に退嬰的です。
そこには自分の頭で考え、自分の足で立とうとする沖縄の姿はありません。

一方、今回琉新は、この沖タイの「やられた節」と較べて至ってクールです。
原因究明をまともにしようとしているかに見えます。
琉新は泣きまねをする県をまるでつきはなすように、原因と推定される延長コードについてこのように書いています。

「一方、延長コードは今年2月から正殿内に取り付けられていたことも関係者への取材で分かった。
 市消防によると、木造の正殿は燃え方が激しく、火の巡り方の検証が困難という。北東の部屋で火災原因の特定につながる唯一の痕跡は床下の配線と延長コードの2点だけだった。」(琉新11月8日)

さらっと書いていますが、決定的な部分です。
なぜならご承知のように延長コードこそが出火原因だからです。
それが「今年2月からとりつけられていた」という以上、責任の所在は明確に県にあるということになります。
私は初めて琉新を読んで、へぇーと思いました。
沖タイも県が管理していることは分かっているのに、シラばっくれて「大家は国」論にも持っていこうと企んでいるのに対して、琉新はそうはさせじとばかりに「いや、出火元の延長コードをつけたのは県だよ」と書いているからです。

初めて一枚岩だった県紙が割れました。
メディアは意見がちがって当然ですから、妙な一枚岩のようだったほうがおかしいので、たいへんに健全なメディアのあり方だとはいえます。

ところで、しゅりんちゅさんも書いておられるように、首里城炎上事件において、沖縄タイムスは第三者ではなく当事者のひとりです。
というのは、昨日も取り上げたイベント準備は翌日に予定された首里城祭に向けたもので、このイベントの主催者が他ならぬ沖タイなのです。
この行事とは、翌日の11月3日12時30分から開催予定だった「
琉球王朝祭り首里古式行列」です。
http://oki-park.jp/shurijo/event/182

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首里城サイト

このイベント準備に当夜1時05分まで関係者66名、職員3名が作業をしていました。
現時点で私の元に入ってきている情報を抜粋すると、このようなことになります。

①このイベントの主催は沖縄タイムス。
②元請けがきまるのが遅く、仕事が押した。
③御庭回りと観客席の設営は下請け、照明・音響は孫請け業者、正殿張出しは地元有志。
④主催者の沖タイから組み踊りの演目変更が
要請されていっそう混乱した。
⑤当夜深夜まで残っていたのはリハーサルのため。

ただし、このイベント準備が直接に火災原因となったかは不明です。
ひこーさんが書かれておられるように、正殿から電気を延ばす必要はなかったからです。

「これはありえないと思います。まず、財団は9時35分に施錠後、誰も正殿には入っていないと説明を変更しています。また、出火当初から最初に書いたように、奉神門の電気室には変電設備がありますから大容量でも問題ありません。
ここの配電盤から仮設電源を取るのが一般的です。「電源は他の建物から取っていた」という証言もあったはずです。
第一、この分電盤はイベントのある庭の裏側に位置しています。わざわざこんな位置から取る必要はありません。
第二に、正殿には空調機もないそうです。照明とコンセントだけだと大容量の仮設で使うような電気は給電されていないはずです」

ただし、かつての国営時は正殿前でイベントをすることすらできなかったそうで、県が管理するようになってからこのようなイベントが度々おこなわれているのは、首里城を観光の目玉としたい県の方針があるからです。
火元となった正殿北東部分にも国営時は入室が制限されていたはずです。
これらの安全措置がグズグズとなり、観光客目当ての舞台となってしまった首里城が、果たして「沖縄の心」の扱いとしてふさわしいのかどうか、もう一度考え直したほうかよいでしょう。

ただの観光の目玉ならば、税金をかけてまで再建する必要はないわけで、更地にして小規模な首里城歴史記念館でも作ればよいだけのことだからです。
そこの議論がまったくなされないまま、「沖縄の心が失われた」という感情論に走って募金まで募っているのが現状です。

それにしても那覇市が募金を募って、いったいなにをする気なのでしょうか。
次に復元されるとすれば、100%国のカネで国有地の上に作り、完全に国が管理するようになるわけですから、那覇市の募金はどこに納まるんでしょうかね。
ただし、沖縄県が一括交付金でもらっている3千億円の予算から、ビル一棟分ていどを首里城にまわすくらいの心意気がありさえすれば、少しは違うかもしれませんが。

とまれ、今回の炎上事件で沖タイが当事者のひとりとなってしまったことを「薄々知って」「大家は国」論を驀進し、一方その理由を「薄々知って」原因究明をしているのが、商売仇の琉新ということのようです。 

 

2019年11月12日 (火)

「大家の国」が防災をジャマしたと言い始めた地元紙


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沖縄県は、首里城炎上の責任は国にあると誘導したいようです。
沖縄県準広報紙の沖縄タイムス11月7日の記事からです。

「「大家さんは国だ」 首里城、スプリンクラーが未設置だったワケ
[失われた象徴 首里城炎上](6)夜の屋内火災

 「国が整備した施設で、消火設備は、きちんとしているはずなのに」。10月31日、午前7時半すぎ、県幹部は、県庁で首里城の正殿が焼き尽くされていくテレビニュースの映像を横目に、うなだれた。別の県幹部は、「今回の火災は、想定外だった」と声を落とした。閉館後の正殿のように、人がいなくても火災を早期に感知し、自動的に消火するスプリンクラーは、設置されていなかった。
 首里城を整備した所有者の国によると、「正殿復元はできるだけ昔使われた材料と伝統的な工法を用いて、往時の姿に戻していく」考えが基本にあった。法律を順守し、「厳正な復元を目指した」とスプリンクラーが設置されなかった経緯を説明。消火設備の妥当性については、「法律を順守した」との立場だ」(沖タイ11月7日)

すっと読むと「大家」の国が杜撰な防火設備しかない施設を残したから、県は「心の象徴」を燃やされてしまって大きな損害を被った、あげて責任は国にある、再建費用とは賠償金のことだ、とでも読めてしまいます。
この私の邪推が正しければ、今本土に来ている那覇市長や、火災があってあたふたと駆けつけたデニー知事などは、実は陳情ではなくて、「賠償要求」に来たんですかね。
いくらなんでも違うと思いますが、ここまで被害者意識丸出しで言い募られると、ひょっとして、と勘繰りたくなります。

沖タイさん、問題をすり替えないで下さい。
「大家は国」、では国が首里城の管理責任を持っているとでも?
ならばこの首里城火災原因がなんと推定されているのか、そこからいきましょう。

発火したのは正殿1階北東側からです。そこには分電盤がありました。
そして焼け跡には、分電盤から2本の延長コードが延びていて、溶けた痕が30数カ所残っていました。
※1本は床下配線、1本は延長コードでしたので、訂正します。

「電気系統設備が最も集中している正殿北東の部屋が出火場所とみており、その部屋の分電盤の床下配線と、分電盤側面のコンセントに取り付けられていた延長コードが見つかった。その両方に、溶融痕があったことを明らかにした」(琉新11月8日)

火の気がない夜間の火災の原因の多くは、電気配線からの発火です。

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https://sonaeru.jp/hazard/fire/residential-fire/h-...

当時正殿は鍵がかかっており無人でした。
ストーブなどの火の気はありませんでしたから、原因はこの分電盤から延びた2本の1本の違法(※)コードとみるしかないのです。
しかも2本とも杜撰な素人細工で、市販品のコードを廊下に放置して見学者が多数通る床にのたくらせてありました。
違法判定についてはひこーさんのご意見を頂戴して「違法とまではいえないが適切な使い方ではない」とします。

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通常、こういう電源の延長工事をする時には、専門の電気工事士に依頼して、分電盤の漏電遮断器を経由して取るものなのです。
しかし電気について無知な財団職員がやったのでしょうか、漏電遮断器を通さずに電気をとってしまいました。
結果、電気コード自体の損傷か、あるいは電線に取り付けた器具の不具合によって発火したと考えられています。

では誰がこんなものを取り付けたたのでしょうか。いうまでもありませんが、管理財団です。

沖タイさんは「国が大家」と言っていますが、それはあくまでも国有財産だというだけのことで、管理は完全に県に委譲されていました。
あの違法延長コードも県に委譲されたとたんに取り付けられたのです。
それは琉球新報も認めています。

「一方、延長コードは今年2月から正殿内に取り付けられていたことも関係者への取材で分かった」(琉新11月8日)

裏返せば、国が管理してさえいれば、こんな違法工事はやらせなかったということです。
これは私もイベント関係者の間接的聞き取りで確かめています。

国有施設だった当時は、電気関係の管理にはことのほかうるさく、分電盤から電気をもらったりすることは御法度だったそうです。

それが県営に移管されたと同時に、すべてが「ゆるやかに」なったそうです。

沖タイは「国が大家」だから出火の原因も 国 にあるとでも強弁したいようですが、短絡するにもほどがあります。

出火の責任は県にあります。ここから逃げては話になりません。
今後再建についての具体的作業に入るでしょうが、再建される新首里城は国が管理しきるしかないでしょう。
とてもじゃないが、沖縄県にその能力はありません。

次に防火体制についてですが、こう沖タイ記事は書いています。

実際の管理運営を担う沖縄美ら島財団は、「(既存の)設備を前提に、指定管理を受けているので、これを最大限に活用して対処する」との立場。県も財団も、スプリンクラーなど、屋内の出火に対応する自動消火設備の検討はしてこなかった。
文化庁は、今年4月、パリのノートルダム寺院火災の発生後、文化財の防火対策の徹底と点検を呼び掛けていた。通知の対象は国宝と重要文化財の建造物で、首里城は対象外だった。
木造建築物への防火意識が高まる中でも、国や県は、体制の見直しを行っていない。県幹部は「大家さんは国だ」と例え、「スプリンクラーなど、勝手には新しい設備は付けられない」と、所有者と管理者の関係性を説明する

「勝手につけられない」という言い方で、スプリンクラーの設置を国が認めていなかったような言い分ですが、果たしてそうでしょうか。
文化庁は、ノートルダム火災を受けて今年4月に文化財の防火についての見直しを進めていました。
この対象から首里城がはずれたということで、県は免れたと勘違いしたようです。

問題は「国が大家」であるかないかではなく、「沖縄の象徴」とまで首里城を言うならば、防火体制に万全期するべきだったということです。
文化庁がいやスプリンクラーが室内の文化財を濡らすというなら、不燃ガスによる消火など別の手段で対案を出し、国と協議すればよかったのです。
それでもなお国が、これ以上の防災システムなんかいらない、つけるべきではないと頑迷なことを言うなら、その時こそ国としっかりと対決すればいいのではありませんか。
それを低い水準で妥協して、あれは「大家が国だから」と小声で愚痴をいう、それが「沖縄の象徴」を守る者の言葉だとすれば、恥ずかしい。

沖縄県は首里城をただの観光スポットとしてしか考えていませんでした。
だから夜間はおろか、昼間にもまともな消防訓練をしていません。
国が管理していた2018年には消防訓練も行われています。

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https://sonaeru.jp/hazard/fire/residential-fire/h-...

この2018年1月8日の消防訓練の設定はなかなか現実的で、早朝に正殿から出火したと想定しています。
この時に放水している放水銃の位置を確認してください。
現実の火災時には、すべての放水銃は稼働できず、左端の放水銃(下写真赤丸)もまた使用されていませんでした。

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その原因も地元紙にかかると「国が撤去したからだ」ということになって国のせいだぁとなるわけですが、だとしても全部が使用不可能というのはいったいどうしてでしょうか。

現時点で分かっているのは、警備員が熱気と煙で接近出来なかったからだと言っていますが、そこまで火災が拡がったのは燃えてから警備員が駆けつけるまで相当時間が経過していて、正殿内部は手もつけられない状況になっていたからです。
そもそも一般的には、感知器が適正に作動して、それに連動して室内・屋外の消火装置が自動消火を開始するのが定石なのです。
それを建物に接近できないくらい燃え盛ってから、消防訓練もしていない素人の警備員が手持ち式の消火器を持って行ってもなんの役にも立たなくてあたりまえです。
文化財の自動放水銃など珍しくもない施設ですから、「大家の国」と話合ったらいかがだったのでしょうか。

さらによしんば警備員が近づいて放水銃にとりついたとしても、役目を果たせていたかどうかはなはだ疑問です。
というのは、ビジネスジャーナル(11月6日)によれば、当夜、イベント準備が前庭で行われていて、大規模なステージが建設されていたからです。

それが 下写真の正殿前舞台です。

ただし、今回のイベント用舞台は更に大規模だったようです。

「特に御庭にあったステージはかなり大きく、高さも正殿の半分くらいあった」(ビジネスジャナル11月6日 )

焼け焦げた大規模な舞台と大型照明機材が多数設置してあるのが確認できます。

何度か書いていますが、これだけのイベント設置をしていれば大量の電気が必要なのはあたりまえですので、分電盤から電気を貰った可能性が高まります(※)。
※ひこーさんのご指摘どおり、正殿裏の分電盤からは遠く、他の棟からとったようですので、この可能性はありません。

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正殿付近で実況見分が行われる首里城。奥に御庭とステージが見える(毎日新聞社/アフロ)Business Journal 11月6日

ビジネスジャーナルはこう報じています。

「大手キー局社会部記者は次のように話す。
「どれだけ影響があったのかわかりかねますが、西の『御庭』にあった2基、東側の1基の計3基の放水銃格納庫と正殿の間に、当日まで開催されていたイベントのステージや工作物が設置してありました。現場を取材した記者によると、放水銃の上にその瓦礫が崩れていたそうです。
 那覇市消防局に放水銃と工作物の位置関係を尋ねたところ、次のように説明があった。
「確かに地面下の放水銃格納庫の扉は開くようにはなっていました。ただ、かなり工作物が(格納庫に)迫っている状態だったことは確認が取れています」。

 会社の非常口を形だけ空けて資料を積む。防火水槽指示位置の枠に入っていないけれどギリギリまで寄せて車を駐車する。そして、イベント設営の際に放水銃や消火栓設備の規制ラインギリギリまで寄せて工作物を設置する。明確に違法行為ではないが、万が一の際にそうした行為が命取りになるのは、これまで多くの火災が実証してきた」( ビジネスジャーナル 11月6日)

たぶんそのとおりです。放水銃格納庫の扉の上にはイベント準備の機材は置いていなかったものの、仮に放水銃を警備員が使えたとしても、その前にそそり立つような巨大な舞台がそびえ立って妨害したことでしょう。
だとするならば、観光イベントのほうが防災より重要だったと県が考えていたことになります。

このようなていたらくで、「大家は国だ。われわれは国に言われたとおりにしていただけだ」と言い張れる人たちの厚顔無恥ぶりに呆れるばかりです。

2019年11月11日 (月)

首里城火災 電気設備技術基準違反の違法コードから発火


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首里城の火災において、決定的な証拠が見つかってしまいました。ほぼ決まりです。
整理しておきます

①火災は深夜人気のない正殿1階北東側で起きた。ここにはバックヤードがあった。

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②バックヤードには分電盤があり、そこから延長コード2本が差し込まれていた。一本は壁にそって延びており、もう一本は床下にあった。
下の写真を見るとわかるように、この延長コードは大容量のケーブルではなく一般の市販品で、その先にLED照明を点けていた。

③この写真の場所は、管理が国から県に移った2月以降に「見学可能エリア」として開放されていたが、写真でも確認されるように延長コードは漫然と床にのたくっており、見学客が踏む可能性があり、近辺に可燃物も写っていた。
通常の管理ならば、このような見学ルートに電線を敷設する場合、ケーブルを壁際に沿って敷設し、保護カバーをかけて保護せねばならない。

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④那覇市消防局の調査によれば、この2本の延長コードいずれにも30箇所の熔融痕があった。
那覇市消防局・山城達予防課長の証言。「電気設備以外に火災の原因となるものが見当たらない」 (FNN)

「那覇市首里当蔵町の首里城正殿など主要7棟が焼失した火災で、那覇市消防局は7日、市銘苅の同消防局で記者会見した。電気系統設備が最も集中している正殿北東の部屋が出火場所とみており、その部屋の分電盤の床下配線と、分電盤側面のコンセントに取り付けられていた延長コードが見つかった。その両方に、溶融痕があったことを明らかにした。今後、消防研究センター(東京都)で出火原因との関連を鑑定する。一方、延長コードは今年2月から正殿内に取り付けられていたことも関係者への取材で分かった。
 市消防によると、木造の正殿は燃え方が激しく、火の巡り方の検証が困難という。北東の部屋で火災原因の特定につながる唯一の痕跡は床下の配線と延長コードの2点だけだった。
 溶融痕は周辺の火災熱によって配線の断面が溶けて球形上の塊ができるものだが、機器が出火した際にできる短絡痕である可能性もあるとした上で、山城達予防課長は「出火原因を特定する物は出てきていない。今の状況から特定は非常に困難だ」と調査の長期化も予想されると説明した。
 市消防によると、床下配線には1カ所の熔融痕が確認された。火災前は3~4メートルの1本のコードだったとみられる延長コードは、焼けて数センチごとの細切れの状態で見つかった。30カ所以上の熔融痕が確認された。
 当時、正殿内の照明などへ配電するブレーカーは落ちていたが、延長コード側のブレーカーは通電していた。延長コードには二つの発光ダイオード(LED)ライトが接続されていた。 関係者によると、延長コードは国から県に管理が移行した今年2月以降に設置。同月に正殿裏手に位置する御内原エリアが開園し、正殿内の順路が変更されたため、足元を照らすための措置だったという。
 また、火災発生当時の様子を正殿外の2台の防犯カメラがとらえていたことも判明した。1台は正殿の北東側にある「女官居室」周辺に設置され、火災直前に白い発光体が映っていた。もう1台は正殿裏側の「世誇殿」周辺のカメラで、出火直後に正殿から炎が吹き上がる様子が映っていたという」(琉球新報11月8日)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1022120.html

この琉新の記事にはふれていませんが、当初管理財団は9時30分に正殿を施錠し、ブレーカーが自動的に下りたために正殿には電気がなかった、また火災前に巡回していたと説明していましたが、すべて虚偽です。
実際は9時30分以降も、正殿前庭には翌日のイベント関係者(県職員も含む)が多数残って作業をしていました。
今の時点では憶測とお断りしておきますが、このイベント関係者が仕事を終了した1時43分にもう一回ブレーカーを落とす作業をしていることから、イベント関係者は分電盤から延長コードで電気をとっていた可能性が高いと思われます。
もし彼らが小型発電機を持ってきていれば、このような作業をする必要がないからです。
それは下の時系列表で確認できます。

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以下、電気に詳しい九州Mさんのコメントを参考に原因を究明していきます。

まず、このブログで当初から疑問点としてきたことは、「なぜブレーカー(遮断器)が正常に機能しなかったのか」ということでした。
常識的に考えてブレーカーが正常に作動していれば、配線がネズミによって食われるようと、あるいは分電盤自体が故障して発火しようと、瞬間的に漏電ブレーカーが落ちて火災を防ぐ仕組みになっているからです。

その理由は簡単です。
火災を起こしたコードが、漏電を遮断するブレーカーを経由していていなかったからです。

「この仮設配線は24時間通電の防犯カメラや火災報知器の電源と同じような回路からとっていたようです。
つまり、少なくとも午後9時半に自動的に落ちるブレーカは経由しておらず、仮設配線・コンセントの電源は遮断されずに通電状態であったということです」(九州M氏コメント)

上の写真で分かることは、財団には電気による火災に対して危機感が希薄なことです。
管理財団には電気管理の専門家がひとりもいなかったために、ブレーカーを経由せずに安物のコードを無造作に突っ込み、おそらくテーブルタップでそこからタコ足で電気を取ってと思われます。
ですから、平気で見学順路にブラブラと延長コードが放置させていました。
とうぜんこのような杜撰な「工事」ともいえないようなまねを、消防局の許可を得てやったとは思えませんから、管理財団の勝手な違法工事です。
これだけで管理財団は電気設備技術基準違反として追及されるべきです。

「今回の火災のステップを想像してみました。
①延長コードが何らかの原因(被覆損傷等)でショート
  →過電流で被覆が燃焼・・・分電盤内の分岐ブレーカの二次側からの仮設配線であれば、この時点で分岐ブレーカーが落ちて大事にはならないはずだが・・・もちろん近くに可燃物があればこれだけでも十分火災になる。
②延長コードがショートした後も分電盤のブレーカーは作動せず通電状態が続き、その火が分電盤内の配線ケーブルに引火しショート。
③分電盤内で過負荷になり遮断器(リミッター)が落ち、建物内のすべの電源(防犯カメラ、火災報知器を含む)が落ちる」(九州M前掲)

また九州M氏によれば、コードが破損しなかったとしても取り付けられていたLED照明の機器が故障したり、あるいはLED照明以外に別の機器が接続されていた場合、過負荷になって延長ケーブルが発熱し、被覆が燃焼した可能性もありえるそうです。

なぜか消防局は調査結果公表には時間がかかると言っていますが、現時点において因果関係は鮮明になっています。
発火箇所は分電盤から延びた延長コードであり、なんらかの不具合によって火災が発生し、ブレーカーが作動せずに燃え広がったと思われます。

この 「延長コードは今年2月から正殿内に取り付けられていた」(琉新前掲) 、すなわち国から県に管理が委譲された後に、県のお粗末な管理によって火災を引き起こしたことはほぼ確定しました。
地元紙もデニー県政を忖度せずに、その責任をしっかりと認めたらいかがでしょうか。

 

2019年11月10日 (日)

日曜写真館 湖の上を滑る白鳥


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泳ぐのではなく、まるで氷の上のように滑っています

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地上を歩いているときは見ないでくださいね、短足なんてす

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驚かせないように、そっと覗きにいってみましょう

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美しい首の曲線が自慢です

 

 

2019年11月 9日 (土)

香港デモ、死亡者出る

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香港で民主化デモの死亡者がでました。
いままでも警官隊は公然と銃器を使用していましたし、原因不明の死亡者が相当数でてきていたので、このような悲劇がいつ起きても不思議がない状況でした。
殺されたのは周梓楽(アレックス・チョウ)さんです。享年22歳でした。

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【香港=藤本欣也】香港警察への抗議活動が行われていた新界地区で建物から転落した香港科技大の男子学生(22)が8日、死亡した。反政府デモを続ける若者らは「警察の暴力による死者が初めて確認された」と反発を強めており、抗議活動がさらに激化する可能性がある。 同日夜には香港各地で学生の追悼会が催された。
 学生は4日未明、新界地区の住宅街にある立体駐車場の3階から2階に転落。頭を強く打ち、8日、搬送先の病院で死亡した。
学生がどのような状況で転落したかは不明。ただ、警官隊は当時、市民らを排除するため立体駐車場に向けて催涙弾を撃っており、「学生は催涙弾から逃れようとして転落したのでは」との見方が浮上した。 警察は「催涙弾を撃った場所は現場から120メートル離れている」と釈明したが、警察が救急活動を妨げたとの証言もあり、「学生は警察の暴力によって死亡した」と信じる若者が多い」(産経11月8日)https://www.sankei.com/world/news/191108/wor1911080012-n1.html

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https://twitter.com/kaori0516kaori

警官隊がデモを排除しようと圧力をかけ、押されて学生が転落したのはこの立体駐車場の3階からでした。
頭蓋骨骨折による死亡です。

私は70年安保の経験者なので、何度か似た状況に立ち会っています。
今回の事件が起きたような一般市民の眼から隔絶された空間で武装警官隊が圧力をかけてきた場合、デモ隊には抵抗の術がありません。
一見ヘルメットなどを被って勇ましそうですが、しょせんは組織されない烏合の衆にすぎませんから、訓練された現在の香港警察の敵ではありません。
一方的に押しまくられて、確実にパニックになり将棋倒しになりながら逃げ場を求めます。

こういう状況においては、一種の「戦場の論理」が発生しますから、警官隊は法の執行を逸脱した暴力集団と化します。
警官隊が一定の暴力を許容されているのは、法の執行によって市民生活・生命を保護するためのはずですが、権力の「敵」を抹殺することが目的と化してします。
このような状態となった警察は、容赦ない暴力によって「敵」を完膚無きまでに叩き潰そうとします。
亡くなった青年は、この暴力の渦の中で殺されたものと思われます。痛ましい限りです。

「殺された」と記したのは、このような暴力警備をすれば死亡事件が必然的に発生することはわかりきったはずだからです。
これは未必の故意です。
これは、「犯罪事実の発生を積極的には意図しないが、自分の行為からそのような事実が発生するかもしれないと思いながら、あえて実行する場合の心理状態」(大辞林)のことですが、まさに現在の香港警察の状況そのままです。

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https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11...

アグネス・チョオ(周庭)は、このように福島香氏とのインタビューで述べています。
福島香織の中国趣聞:NO.40

「周 香港の警察は、香港人なのですが、非常にデモの参加者、メディアを憎んでいます。だからデモの参加者だけでなく、メディアも標的にされています。まず警察というものは、生きている世界が私たちと違います。警察になるには徹底的に、教育を受けます。メディアは警察の仕事を邪魔する存在だとか、そういう教育にそまった雰囲気の中で生きている人たちなので、政治的なスタンスの話しだけでないと思います。
 もともと警察は市民の安全を命を守る責任があるのですが、今香港警察はまったくそういう責任を負っていません。市民を傷つける側になったということは非常に悲しいことだと思います」

また福島氏の「デモが暴力的になっていることはどう思いますか?」という質問に対して彼女はこう答えています。

「周 私たち香港人は民主主義のために、この20年間、いろんな手段を使ってきました。今回の運動の中でも、デモやストライキ、授業ボイコットなどさまざまな平和的手段をつかいました。でも、こういう手段を使っても香港政府はまったく民意に向き合わなかった。私はもともと非暴力を主張してきましたが、日本のみなさんにはまず、香港人の怒りを理解していただきたいと思います。
デモが激しくなったことで、政府にかけたプレッシャーは確かに大きくなったのは事実です。普通の平和的デモには政府も慣れてしまった。だから、全く動かない。今のような激しいデモになって、経済にも影響が出て、予測できない事態が起こりうるようになって、政府にとってプレッシャーが強くなりました。条例改正案撤回を発表したのも、デモが過激化してからです。平和的手段と急進的な手段、両方も必要だなと今は思いますね」

-では、要求が通るまで運動は続くと思いますか?」

周 今、なぜ、みんなの怒りが続いているかというと、五大訴求の問題だけでなく、警察や政府からの弾圧がどんどん強くなっているということが大きいんです。武器の使用も増えました。ケガをする人も増えました。この弾圧が引き続くかぎり、運動も続くと思います。弾圧をまずやめないと、終わらない。
-まず、警察の暴力が完全に止まることが最初の条件、ということですか。
周 はい。ですが、残念ですが香港政府はまったく、警察権力乱用について言及していません。これはすごく残念なことです。だから外部調査委員会がまず必要なんです」

さて、同時期にあたる10月末に中国共産党の中央委員会総会(4中総会)が開催されました。
この4中総会で、香港について中国共産党の「法治」が香港・マカオにまで及ぶことを宣言しました。
このまま状況が推移した場合、国家分裂を罰することができる香港基本法23条に基づく国家安全条例を実施する可能性があります。

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https://www.cnn.co.jp/world/35144910.html

また11月4日、習は香港行政長官のキャリー・ラム(林鄭月娥)と会談しました。
習は、一時期更迭説が流れたラムと会い、強い信任を与えました。
その時に習は、信任の代償として、「香港における暴力と動乱の制止と秩序回復」を「最重要任務」としています。
習にかかると、香港の民主化デモはただの「暴力」であって、「法治」の名の下に徹底弾圧をするということで、それをやり切る「任務」をラムの肩に載せたということです。

ただし、ラムの支持率はいまやわずか11%なので、習の支持なくしてはもたないというか、果たしてラムも本心からこのまま行政長官をやっていたいのかさえも不明です。

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この香港統治の強化は中国共産党の大方針のようで、今回の中共4中総会でも最重要議題として「国家統治を強力に引き締める方針」を決議しています。
その中には「国家の安全維持」のために、「法律制度と執行メカニズムの整備」という一項があり、これはモロに香港弾圧強化を意味します。

念のためにご説明しておけば、中国共産党がいう「法治」とは、民主主義国家のそれと同じ言葉を使っても、まったく別の意味です。
民主主義国家における法の支配とは、いかなる権力者であろうと法の下における平等を保証すること、三権分立によって行政府に司法が支配されないことが前提です。
ところが共産主義国家における「法の支配」とは、国家の上位概念である「党」の支配を意味します。

何度か書いてきていますが、習は追い詰められています。
香港を鎮圧できなければ、習の中華皇帝の地位は大きく揺らぎます。
かといって武力鎮圧してしまえば、香港の国際経済都市としての生命を終わらせることで中国経済に大打撃を与えるばかりではなく、中国は政治的にも完全に孤立します。

国慶節前夜は武力介入をする数少ないチャンスでしたが、北戴河会議で長老たちの強い反対に会って押えられてしまいました。
中国は仮に国際的孤立に遭遇してもかつての第2次天安門とはパワーが違うから平気だと強気ですが、いまの米中経済戦争が収拾がつかない状況下では読めないからです。

武力介入するにせよしないにせよ、いずれにしても香港を鎮圧できねば、党内反対派からこんなちっぽけな香港すら満足に支配できないのかといわれることになるのは同じです。
つまりどちらにころんでも、なにがなんでも香港が独力で鎮圧してくれないと困るのです。

ならば習はどうするのでしょうか。
おそらく先ほど述べた緊急事態法を使って国家分裂罪を適用するか、同じく基本法18条の「香港警察が統制できない国家統一や安全に危機が発生し緊急事態を宣言した場合、中央政府は国内法をもちいることができる」ことを使うかのいずれかです。
この条項を使えば、中央政府に対して香港行政庁からの「要請」があったという形式を踏んで、中国軍や武装警察を投入することが可能となります。

武力介入するリスクは同じですが、その合法的言いわけが可能となりますし、緊急法を使うこと自体に抑止効果があると行政府が思っているのでしょう。
といっても武力という刀は抜くぞ抜くぞと言っているうちがハナで
、抜いてしまったらただの凶器なんですがね。

実際に覆面法では緊急法を使って、衣の下の鎧をチラリと見せて恫喝しましたが、効果はゼロで、かえって反発が強くなりました。

いままでこの「要請」を可能とする環境を、香港行政庁は人為的に作り出そうとしてきました。
香港警察の暴力化だけではなく、広東から香港に警官隊を大量に移動させて暴力をふるってみたり、三合会というマフィアを使って襲撃をしかけたりまでしてきました。
元々香港警察はジャッキーチェン(大の親中派ですが)のイメージとは違って、マフィアとの癒着が噂されるような腐敗した警察組織だったようです。
それはさておき、このような身も蓋もない攻撃は、今、かろうじてある大多数の平和的デモと暴力的デモの均衡が崩れさせて、緊急事態法18条の適用を行うための地ならしです。

今、香港における焦点は移送法から普通選挙の実施へと要求が変化してきています。
アグネス・チョオは選挙についてこう言っています。

「民主主義が日本人にとって当たり前だからだと思います。でも私たち香港人はそんな当たり前の権利すらなく、そのあたり前の権利を獲得するために懸命に戦い、犠牲になっている人もいるのです。民主主義があるのに、自分の持っている権利を大切にしない日本の人たちに対しては、実は悔しい気持ちがいっぱいあります。私たちは命をかけて選挙する権利のために戦っているのです」(福島前掲)

現行では行政長官は、親中派が有利になるようにできている立法府からの選任で決まっています。
そして民主派の立候補は、さまざまな難癖をつけられて阻まれてきました。
ですから、わずか11%の支持率しかない行政長官でもやっていけるわけです。

そしてさらに今回の4中総会で、法制責任者から、香港の行政長官を中央政府の任免制にするべきだという意見もでています。
これは名実共に香港を中央政府の下に置くことになるはずです。

ただしこれもすんなりとはいきません。
今や国際社会は香港人権法を米国議会が通したように、強い関心を持っ香港をみています。
親中派のフランスさえ、首脳会談で懸念を伝えたほどです。
主要国で無関心なのは日本政府くらいなものです。

当然、香港市民の強い反対に遭遇するでしょう。
だからこそ、基本法23条、18条といった既成の法律を使って香港警察の力だけで鎮圧してみせねばならないのです。
この死亡事件を受けて、明日のデモは追悼一色となります。

亡くなられた周青年が、自由香港の尊い礎とならんことを願います。
Freedom Hong Kong !

 

2019年11月 8日 (金)

首里城炎上事件処理のストーリーが見えてきました


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首里城炎上事件以後初めて県・公団・国の三者が顔を揃えての記者会見をしました。

首里城火災「空白の5時間」に質問集中 当初の50分から拡大
首里城火災
を受け、設置者の国、管理者の沖縄県、運営管理する沖縄美ら島財団の3者が6日、初めてそろって会見した。財団側は、出火元の正殿から最後に関係者が退出した時間を当初の説明から訂正するなどちぐはぐな回答。
一方、高台にあり二重の城壁に囲まれ、消防による消火が困難を極めた首里城の屋内には自動消火設備がなかった。妥当性を問われても、国側は「法令を順守した」との見解に終始した」(沖タイ11月
7日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191107-00494615-okinawat-oki

ここまでが沖タイのリード部分ですが、スッと読むと気がつかないかも知れませんが、せっかく当事者が顔を揃えた三者会見だというのにどこか抜けていませんか。はい、県が抜けていますね。

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沖タイ 前掲

リードだけではなく、記事本文にも責任者である沖縄県の発言が欠落したままで終わってしまっています。
それどころか、記事の結びは「国が会見を打ち切った」ですから、これでは国が都合の悪いことを隠蔽しているように読めてしまいます。

「火災の経緯で、配布資料には「31日午前1時20分 警備員巡回開始(城郭内)」と明記。この時間、警備員は正殿を巡回しておらず、最後の退出は財団職員の「30日午後9時35分」で、火災に気付くまで約5時間の空白があった。しかし1日の財団の会見では、警備員は午前1時20分に正殿を巡回し、空白の時間は50分との説明だった。
 「前回の説明の根拠は何か」。報道陣から質問が集中し、財団の西銘宜孝事務局長は「勘違いがあった」と釈明。警報発動で駆け付けた警備員が開けたシャッターを閉めたのかを問われ、当初は閉めたとの認識を示すも、「はっきり分からない」と修正するなど、見解は二転三転した」(沖タイ前掲)

記事のタイトルにもなっている「空白の5時間」とは、財団の警備巡回が当初言っていたことと食い違っているではないか、ということのようです。


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沖タイ前掲

ここで沖タイは「空白の5時間」という表現を使っていますが、それは当初の記者会見で財団が言っていたことと食い違いが発生したからです。
小さいので見えにくくて恐縮ですが、上の時系列表の赤字で記された部分には警備員が実際に正殿内に立ち入って巡回したのは21時30分が最後と記してあります。
なおこの9時30分には、正殿の電気ブレーカーが自動的に切れるようにセットしてあったそうです。

ここで警備員は正殿を施錠しましたが、ご注意いただきたいのはこの時点では翌日のイベント関係者66名と職員3名がまだ正殿前広場に残っていたことです。
このイベント業者が仕事を終えて退出したのが、日付をまたいで1時05分です。
つまりここで4時間の間、首里城はイベント関係者だけが残って仕事をしていたことになります。
彼らが自家発電機を持参していたのかどうか知りたいところですが、それについての情報はありません。

イベント関係者が撤収した15分後に、財団は「正殿内を含めて巡回を終えブレーカーを落とした」したと公表していました。
しかし、現実には正殿内部には立ち入っておらず、1時43分にはSECOMの機械警備に移行しています。
ここで不思議なのは、9時30分に一回落としたブレーカーを、なぜまた1時43分に再度落としているかです。
正殿内部に警備員は立ち入っていないはずですから、再度ブレーカーを落とした理由がわかりません。

憶測にすぎませんが、9時30分に落ちた自動で作動するブレーカーとは関係なく、分電盤から電気が取れたのではないでしょうか。
あくまでも仮説ですが、正殿内部の分電盤からなんらかの方法で電気をもらっていたのかもしれません。
だからイベント関係者が電気を使い終わって、もう一回分電盤のブレーカーを落としたのかもしれません。
この時、ブレーカーの後ろからとれば安全ですが、直前から取るとブレーカーが作動しなくなって危険です。

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那覇消防局も記者会見で、分電盤から延びていた延長コードについて言及しています。

「首里城火災から1週間となった7日、沖縄・那覇市消防局が会見をし、火災の原因は、分電盤などの電気設備の可能性が高いとの見立てを、あらためて示した。
7日の会見で、消防は、正殿の北東側にある分電盤に電力を供給する引き込み線や、分電盤のコンセントに差し込んでいた延長コードに、焼けた跡が30カ所以上見つかったことを明らかにした。
深夜の時間帯においては、防犯カメラや1階の照明LED(発光ダイオード)につながるコードには、分電盤を通して電気が供給されていたという。
那覇市消防局・山城達予防課長は、「(電気設備以外に)火災の原因となるものが見当たらない。証言においても、火源になるようなものが置かれていたとか、そういったものは、証言でいただいていません」と話した」(FNN11月8日)
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20191108-00426889-fnn-soci

この消防局の会見は、財団がこのように言っていたことを否定しています。

「正殿内部のLED照明をめぐっては、首里城を管理する「美ら島財団」は火災発生前日の30日午後9時半に自動的にブレーカーが落ちており、通電もしていなかったと説明していた」(産経11月7日)
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/1107/san_191107_1632433393.html

ブレーカーが9時30分に自動で落ちたとしても、抜け穴があったということです。
取った箇所は不明ですが、延長コードで電気はとられていおり、ここからショートした可能性が大変に高い、ということです。

今回の火災とは関係のないあるイベント関係者は、国が直接管理していた当時、国営施設の分電盤の管理は厳しいために、そこから電気をもらうことは禁じられていたそうです。
しかし県に管理が移行した後は、管理が「ゆるやかになった」といいます。

話を戻します。
2時34分に機械警備が感知装置が作動したことを探知し、首里城警備室からSECOMに連絡が行き、同時に警備員2名が正殿に駆けつけますが、後はご承知のように、正殿には火が回りきった状況で手がつけられませんでした。

初動鎮火の完全な失敗です。
というか、初動鎮火を試みたのかさえ怪しいと言わざるを得ません。
2本消火器を使ったと言っていますが、当時の現場は正殿の扉を開けたら煙で前がまったく見えないような状況で、警備員が決死的消火をしても手持ち消火器では話にならなかったはずです。
問題は警備員の勇気に頼るのではなく、システムとして防災出来なかった防火対策の欠陥です。
最後に見回った時間うんぬんよりも、なぜ感知器と連動して自動消火がおこなわれなかったのか、というシステム上のことを問題にすべきなのです。

それは消火設備だけの問題ではなく、鎮火にどうして11時間もかかってしまったのかです。
簡可燃性の木造建築、塗料、城の閉じられた敷地の構造など原因は多々あるでしょうが、最大の問題は消防車が正殿に接近出来なかったことです。

消防への通報は2時41分、感知器が火災を知らせてから10分後です。
さらに消防車が到着したのは2時50分、初めの警報から到着までわずか16分後という素早さでしたので決して遅くはありません。
しかし、ここから首里城の城壁に阻まれてホースが届かずに、消防隊は苦闘を続け、鎮火したのはなんと11時間後でした。
おそらくホースを接続して延ばすだけて、小一時間はかかったのではないでしょうか。

沖タイが問題視しているのは、財団が警報を出したのが「巡回約50分後」だった」というのが嘘だというような枝葉末節のことばかりです。
もちろん警備が正殿に立ち入り巡回したのは正しくは9時30分ですから、確かに5時間前なことは確かですが、
だからなんだっていうの、ていどのことです。大げさに「空白の5時間」なんて書きなさんな。
そんなことは単なる財団の勘違いでしょう。
財団はマニュアルどおり9時30分に最終立ち入り警備を終えたというだけのことで、その点については彼らに非はありません。
むしろ論点にすべきは、感知器が警報を出した2時34分には、既に正殿内部には火が回って手がつけられなくなって、初動鎮火どころのさわぎではなかった、ということです。

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産経

私が疑問点としたいことは三つあります。

①なぜ、分電盤から発火したのか?
②なぜ、感知器と連動する室内、室外の自動消火システムが設置されていなかったのか?
③なぜ、炎上する正殿前まで消防隊がホースを到達させるまで時間がかかってしまったのか?

沖タイは、ここで妙に財団の発表間違えをことさら叩く一方返す刀で、国の責任を追及するという毎度おなじみのスタンスで記事を締めくくっています。

「沖縄総合事務局国営沖縄記念公園事務所の鈴木武彦事務所長は 過去に屋内の自動消火設備の設置について「議論はあったと思う」と述べた。
往時の厳正な復元を目指した結果と説明したが、正殿内には往時にはない車いすの昇降設備はあった。 約2時間の会見は国側が打ち切るように終了した」
(沖タイ前掲)

車椅子対応のことなんか誰も聞いていないんですが、総合事務局さん、しっかりして下さい。
答えになっていませんね。「往時の厳正な復元を目指す」のは結構ですし、そうしたのは正解でしたが、それと自動消火装置の設置はまったく別です。
先日も書いたようになにもスプリンクラーにこだわる必要はまるでないのであって、炎感知型と煙感知型警報器を併設し、それと連動して自動的に作動する内外の消火装置を設置すればよかっただけのことです。
この方式なら不燃ガスを放出するだけですから、「往時の復元」は無傷だったはずです。
建造物外周からは、地中埋め込み型の放水銃を自動運転させればよかったのです。

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なぜこんな簡単な対策ひとつ打てなかったのか、管理移管したあとの県の責任もありますが、国の責任もあるのですよ。
「議論した」と国は言っていますから、なんらかの文科省とのやりとりはあったのでしょうが、なぜそれが出来なかったのか、明確に説明する義務があります。
だから、沖タイにまるで会見から逃げたように書かれるのです。

ところで気がつかれているでしょうが、沖タイ記事には一度も県が登場しません。
まるでこの事件において、県は無関係だったが如くのようです。
県は、財団の警備体制に問題があった、国は自動消火について県になにも指示していなかった、いうストーリーで乗り切りたいようです。
やれやれ、最大の責任者は県のはずなのですが、この記事を読むと、なにがなんでもデニー知事を守りたい一心の沖タイの「忖度」が透けて見えてうんざりします。

 

2019年11月 7日 (木)

ムン・ヒサン議長閣下の二番煎じ

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ムン閣下がストーカーもどきの「会談」をしたそうで、なにやらかまびすしいことです。
ふたりに随行していたのが英語しかわからない通訳で、ムン閣下は英語がまったくダメですから、この「会談」はムン閣下のコリア語を英訳して安倍氏の英語通訳が聞き取って日本語に和訳して、今度は安倍氏の言ったことを英訳して韓国側の英語通訳が聞き取ってコリア語に直す、ああメンドー。

この様子を見ただけで、これが本気で話あいをしたいのではなく、米国と国内向けのパーフォーマンスにすぎないと分かります。
ね、ボク、こんなにアベと話あいを求めているんだよ、この誠意分かってよ米国さん、だからGSOMIA復帰をジャマしているのは日本なんだーい」ってわけです。
自分でやらかしたことなのに大騒ぎしてきりきり舞いしてるんですから、頭がクラクラしますが、これがあの人たちの頭の中では整合性がとれているようですから不思議です。

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https://www.afpbb.com/articles/-/3253011

相手国の通訳も準備しない首脳会談など絶対にありえませんから、日本側からすれば一種のアクシデントみたいなもんです。
ムン閣下は
安倍氏の控室で待ち伏せしていたそうで(す、すまん笑いが)、あれあれと思う間にラブチェアーに連れ込まれたようです。
このラブチェアーみたいな狭いソファーも、韓国がご用意いただいたものだとか(そこまでやるか)。
ここまでして会談をしたいのなら、日本語通訳くらい連れてこいって。
なにか状況を打開できる案のひとつもあって、「ぜひ聞いてくぇ」と言っているならともかく、なにも新提案の持ち合わせがなくてただ会いたがるってヘンな人。

今、日本側が検討するに足る韓国側提案はひとつしかありません。

徴用工(応募工)裁判について、従来から韓国政府が一貫してとってきた立場を堅持する立場に復帰する、これ以外ありません。

別に難しくもなんともないはずです。
なにか特別に新しいことをしろと言うわけではなく、元の韓国政府の立場を確認するだけのことですからね。

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https://www.asahi.com/articles/ASMC56R03MC5UHBI02V

行政府の長の大統領閣下がストーカーを働いているときに、今度は立法府の長までが日本に来てこんなことを言い出しています。

「来日中の韓国の文喜相(ムンヒサン)・国会議長は5日、東京の早稲田大で講演し、元徴用工問題の解決に向けて、日韓の企業や国民から幅広く寄付を募り、補償に充てるという私案を発表した。実現のため、関連法案を韓国国会に提出することも検討しているという。 文氏は講演で、昨秋に韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決をめぐり、解決のためには韓国側にも新たな立法的努力が必要だと強調。解決策は元徴用工問題だけではなく、慰安婦問題なども含めて「包括的に解消する内容でなければならない」と訴えた。
そのうえで、補償の財源確保のためには、徴用工問題に関係する日韓の企業が資金を出し合うという韓国政府の「1プラス1」案では難しいと指摘。これに代わる私案として、元徴用工問題とは無関係の日韓企業や両国民からも「自発的に寄付を募る方式」を提案した。日韓慰安婦合意で設立され、文在寅(ムンジェイン)政権が解散した「和解・癒やし財団」の残余金の60億ウォン(約5億6千万円)も、「(財源に)含める」と語った」(朝日11月5日)
https://www.asahi.com/articles/ASMC56R03MC5UHBI02V.html

内容的には陳腐で、検討するにも値いしましません。
ただ、
先日取り上げた日韓議員連盟の河村案と瓜二つで、いかにこの団体が韓国の主張の呼び水の役割をしているかあらためて分かってしまいました。
早くこんな有害無益な団体なんか、解散しちゃいなさい。

ちょっと河村案と違うのは、慰安婦財団の残余金もこの基金にいれようという部分ですが、あのね、この財団つぶしたのは他ならぬムン政権なの、忘れたかなぁ。
そっちの都合で条約破って勝手に潰したんだから、残余金が発生したら速やかに返却して下さい。
それにしても、よくこういうことを恥ずかしげもなく言えるよなぁ。

それはさておき、あらためて押えておきますが、この「徴用工」問題をムン政権が起こした目的は、戦前の日本国による朝鮮半島統治を違法な植民地支配として糾弾したいからです。
慰安婦や徴用工といった個別の問題を蒸し返すことで、日本統治全体を違法とし、それに対する謝罪と賠償を勝ち取るのが目的です。
したがって、日本がこれに応じれば自動的に1965年の日韓請求権協定は消滅し、それに代わるなんらかの新日韓条約を結ばねばならなくなります。

なかなか壮大な企みですが、お気の毒にもムン閣下はとった戦術を間違えました。
初めから大統領府が直接に日韓請求権協定の廃棄を言い出したならそれなりに筋が通っていたのですが、妙に気弱なところがあるムン閣下はその言い出しっぺを、最高裁という司法府に押しつけたのです。

ムンが地方の下級審から抜擢した最高裁長官は、「徴用工」原告側の訴えを全面的に認め、日本企業に賠償の支払いを命じました。
もちろんこれは日韓請求権協定の否定ですから、日本政府は正式に抗議したのですが、この時小ズルいことに大統領府は、「あれは司法府の判断だ。うちの国は近代的な三権分立だから、行政府は介入できない」と突っぱねてしまったのです。

いかにも元人権派弁護士だったムン閣下の考えそうな浅知恵です。
これで韓国政府は矢面に立たずに済む、外国政府が相手国の司法判断に文句はいえないからカンペキな戦略、と思っていたのでしょうね。

ここでムン閣下がとったのは、あくまでも日韓基本条約を覆したのは司法判断だ、ということです。
つまりこの司法判断には行政府も立法府も介入できないはずだから、一見無敵な方法に見えたのです。
ムン閣下は経験則としてここまでやれば、日本政府は恐れ入って河村氏のような「大人の対応」をすると想定していたはずです。

ところが日本政府がとった対応は、シンプル、かつプリンシパルな対応でした。
仰天したムン閣下が出すのがことごとく悪手ですからヘルプレスです。
日本は「徴用工」の報復だなんてひとことも言っていないのに勝手に盛り上がって、とうとうやらかしたのがGSOMIA廃棄でした。
バカだねぇ。安全保障揺るがしたら、全部が揺らぐのですよ、ムンさん。

これに激オコしたのは日本ではなく、むしろ米国でした。
一挙に在韓米軍撤退、米韓同盟廃棄が現実味を帯びてきてしまったのです。
これが致命傷でした。
かつてのパククネを牢獄に叩き込んだと同規模の100万人デモが、連日のようにソウルを覆い尽くします。
ムン閣下の支持率がどうのという段階ではなく、今や韓国の国論は真っ二つにされてしまったのです。

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http://agora-web.jp/archives/2041054.html

これに驚いたのはムン閣下と与党です。
もう三権分立だから、なんてコジャレた言い訳は出来なくなりました。
そこであたふたと出てきたのが、ムン・ヒサン韓国国会議長殿です。
彼が「解決私案」を作り、国会で責任を持って通すから、なんとか手打ちができんだろうか、ということのようです。
でもそれやると、ムン議長殿が大統領府と諮ってやったならまだしも、立法府の独走による単独政治解決となっちゃいますぜ。
すると、ムン閣下の鉄壁の三権分立論がガラガラと中からくずれてしまうわけで、こういうのを自壊現象というのでしょうな。

このムン・ヒサン提案の「共同基金」案は、またゾンビを引っ張りだしたのかいといった二番煎じです。
「共同基金」案とは要するにこういうことです。

「日本は「賠償」と名がつかなければいいんだろう、じゃあ「経済協力」という名分として、民間企業にカネ出させて政府が関与していないって体裁作りゃいいんだよね」

なんのことはない、これは1965年6月の日韓基本条約の時使ったレトリックの二番煎じ、三番煎じゃないですか。
韓国側やヒダリ方向の人達は、日本がまるで個人請求権を否定して逃げ回っているというような言い方をしますが間違いです。
現時点においては日韓関係に個人請求権が存在しないといっているだけのことで、その理由は既に個人請求権は支払い済みだからです。

日韓基本条約交渉時において、個人請求権を初めに言い出したのは日本側でした。
日本側は元「徴用工」や慰安婦などの韓国人民間人に対して謝罪の意を伝えた上で、賃金未払い、軍票の処理などについても支払う用意があると申し出ていました。
それを拒否したのは韓国側です。
韓国側は賠償金を一括して韓国政府に支払ってほしい、その後に韓国政府が責任をもって民間人に個別支給するから、と繰り返し要望しました。

そこで日本は その主張を受け入れて「経済協力」の名目で、韓国に5億ドルを供与しました。
当時の日本は敗戦から立ち上がろうとしている時期で、国民の多くがまともな住宅にも住めなかった時代です。
5億ドルは当時の日本の外貨準備高の実に3分の1近くに達し、貴重なドルを使ってしまえば、原材料や食糧の輸入が困難になるというリスクを承知で支払ったのです。

この資金で韓国はインフラを整備して、「漢江の奇跡」を成し遂げました。
これは歴代の韓国政府はよく知っていたはずで、だからこそ日韓基本条約の中身を国民に開示しなかったのです。
開示してしまうと、全部韓民族が自力でやったはずの「漢江神話」が崩れる上に、個人請求を韓国政府に請求されてしまいますからね。

ここで日韓政府が使った苦しいレトリックが、本来「賠償」と呼ぶべき内容にも関わらず「経済協力」としたことです。
すっと聞き流さないでくださいね。
韓国を除くアジア諸国には、たとえばインドネシアやフィリピンのように戦時賠償という形で支払っています。
韓国だけが例外なのですが、なぜでしょう。
答えは簡単。それは韓国が敗戦まで日本だったからです。

そもそも1948年に独立するまで「韓国」なんて国はありませんでした。
今になって「共に民主党」は日帝の侵略なんて言い方を好んで使っていますが、どうやったら自分の国を侵略できるんでしょうか。
だって日韓は交戦関係になかったどころか、国際的に認められた日本の正式な領土でしたから、
日本が日本の一部に賠償するなんて出来っこありません。

それを認めたくない韓国のヒダリが言い出したのが、いや1911年に大韓民国臨時政府を作って日本と戦い続けたんだ、スゴイだろというフィクションでした。
もちろん全くの空想非科学小説にすぎず、上海の亡命抗日サークルのことをそう自称しただけの事にすぎませんから、戦後処理では連合国に相手にもされませんでした。

脱線しますが、韓国が北に対して妙なコンプレックスがあるのは、実態は山賊のようなものでも、まがいなりとも抗日軍をキム・イルスンが組織していたことです。
とまれ与党の「共に民主党」などは、この「亡命政府」とやらを根拠にして、日本と交戦関係であったと主張しています。
だから韓国には戦時賠償の権利が発生している、なにが経済協力だ、ごまかすなという理屈です。

それはさておき、当時の日本人はお人好しというか誠実というか、なにより敗戦国特有の贖罪意識が濃厚にあったために、事実上の「賠償」に応じてしまいます。
戦争になって迷惑をかけた、せめても韓国の独立をできるだけ援助してやりたいの一心で、賠償という言い方ではまずいために「経済協力」という名分にして妥結してしまいます。

ですから、外形的には日本は他のアジア諸国とは異なって、韓国には戦後賠償は払っていないことになっています。
後にここだけ強調したのが韓国で、我々はビタ一文日本から受け取っていない、という「韓国人の常識」につながっていきます。
また韓国政府を信頼して個人賠償分まで一括して渡してしまった報いは、今の慰安婦・「徴用工」問題につながる禍根となってしまいました。

このようなかつての「大人の対応」の縮図が、今です。
それすら韓国は覆そうとしたのですから、日本はひたすら韓国政府がとってきた今までの立場に戻れ、と言い続けるしかないのです。
蒔いた種は刈り取らねばなりません。その時期がいまなのです。

 

2019年11月 6日 (水)

いちばん「理想的原因究明」は誰のせいでもないことにすることだ

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昨日、私は蟷螂の斧だと思いながら、首里城再建慎重論を書いていました。
私のような、もう少しゆっくりと県民で議論してからでも遅くはないのではないか、という意見はおそらく極少派のはずです。
沖縄、本土にかかわらず、マスコミ、政界共にベタ一色で再建するのはあたりまえだというところから出発しています。

この早期再建論はもはや「島ぐるみ」圧力を形成してしまっているらしく、沖縄自民からオール沖縄までいうことはほぼ一緒です。
オール沖縄の皆さんは、30年前に首里城再建の声が起きた時は、王侯が人民から搾取した富で作った奢侈な王宮など復元するのはもってのほか、とおっしゃっていたことを都合よくお忘れのようです。
いつのまに首里城がかけがえのない「沖縄の心」になってしまったんでしょう。

この人たちの下心は見え透いていています。
デニー氏に持ち上がった談合疑惑が、百条委員会を設置するかしないかでもめている最中でしたから、一気にこれをウヤムヤにできるうえに、「沖縄のシンボル」再建で、本土政府からカネをもぎ取ってくれば、よくやったデニーの手柄というわけです。
うまくすれば、きしみがめだつ県政与党内部のゴタゴタすら、先延ばしにすることができます。
ここではなにがなんでも「島ぐるみ」で首里城を再建するぞぉ、文句あっかというところで走るしかありません。

そしてエモーショナルな報道が溢れかえっています。
龍柱が焼け残ったからどうのこうの。
「美しい首里城よ「もう一度」 猛火に耐えた大龍柱、焼け跡に希望」(沖タイ11月5日)ときました。
おいおい、東日本大震災の時の奇跡の一本松は樹木だから奇跡だったのであって、コンクリート製の柱が残るのがそんなに珍しいことでしょうかね。
正殿は木造だから燃え落ちたのであって、残したければ(仮に次があるならですが)コンクリート製にしますか、というだけのことです。

一方、沖縄自民は国場氏が早々と「政治利用じゃない。再建一直線だ」なんて妙なはしゃぎ方をしています。
あいからわらず軽いね、この人。
真逆です。大いに「政治的」に利用すべきです。
ここで、国から管理移管されてわずか8カ月で全焼させてしまった県の責任を追及しないでどうするんですか。

しかも首里城は県の財産ではなく、れっきとした国有財産です。
それをしっかり県が直接管理したのならいざしらず、下請けの「美ら海財団」に丸投げして燃やしてしまったわけです。
これでは沖縄県が文化財管理能力がないと、大声で叫んでいるようなものです。
この財団はコメントの横須賀ヨーコさんも指摘されていましたが、海洋博跡地を管理するために生まれたもので、例のアクアポリスを国から管理移管してもらって、瞬く間にサビだらけにしてオシャカにしてしまった曰く付きの団体です。

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https://www.spf.org/opri/newsletter/32_1.html

アクアポリスには建造費として国税123億円が投じられ、それを「沖縄県のこどもたちに」ということでたった2億円で譲渡してしまいましが、たちまち使い道に困りさびだらけの残骸をさらしたあげく、中国にスクラップで二束三文で売られていきました。あれあれ。

「海洋博終了後の「アクアポリス」は、管理財団・開発公社・株式会社・第三セクター・台湾企業への売却等、話題は豊富で、それ相応の経緯があったことは事実だが、結果としては、実に虚しい実りの少ない結末であった」
(佐久田昌昭 『「アクアポリス」の教訓~トータルライフサイクルコストの議論を~』)

 ここにも首里城と同じ構図が見られます。
国が巨額な国庫支出で建造し、早期に県へ無償ないしはタダ同然の譲渡をし、県はそれを財団への無償譲渡するという経路です。
首里城は形式的には国有財産のままでしたが、アクアポリスと一緒でこの「美ら海財団」が受け皿になって管理運営をしています。
問題なのは、こうやって権利をころがしているうちに、いったい誰が責任者なのかわけがわからなくなることです。
しかも受け皿の財団は天下り役人の巣で、彼らには企画能力や管理能力が致命的に欠落しているときています。
官僚の気風そのままに、前例踏襲、因循姑息、言われたことしかしない。

まぁ、普通の私企業なら懸命に使い道を考えるでしょう。
アクアポリスほど大きい施設だと、営繕保守といったランニングコストだけで馬鹿になりませんからね。
まず買う前に購入から廃棄までふくめていくらかかるのか、日常的管理運営コストはどのていどに登るのかを計上してから買います。
この対応をまちがえると、たちまち赤字製造機と化すからです。

ところが沖縄県はそんなことも考えずに、安値で譲渡してもらった気安さで、もらってから使い道を考えるような始末だったようです。
で、県は天下り財団に丸投げ。

佐久田氏によれば、県から管理財団への無償貸付した後にも株式会社、第三セクターへの吸収合併と転々としたあげくに破産宣告されて、スクラップとして米国企業への売却され、さいごには中国に売られるというプロセスを辿りました。
これが沖縄県の子供のために、と言って譲渡された国有財産の哀れな末路です。

まさにバブルの頃に全国にころがっていた、国と地方自治体がらみの投資事業の失敗事例そのものです。
思い出しましたが、当時第三セクター事業などことごとく大赤字を出して失敗。
この不良債権を税金で尻ぬぐいした、なんて例はゴロゴロしていましたっけね。
こんな馬鹿なことをしても、国も県も財団も、誰からも文句を言われない、というのが公共事業のいやらしさです。

首里城も同様です。

沖縄県は1日、沖縄美ら海水族館(本部町)と首里城正殿などの有料区域(那覇市)の管理を始めた。今後は県が指定管理者に指定した沖縄美ら島財団(本部町)が両施設の実質的な管理・運営を担う。指定管理の期間は2019年2月1日から23年1月31日まで。これまで両施設は国が管理してきたが、県へ管理が移行した。
 今後も両施設の所有権は国が持つため、県は国有財産使用料として年間約7億円(美ら海水族館約5億円、首里城約2億円)を国に支払う。財源は両施設の入場料と売店収入で賄うため、県の財源からの支出はない。現在、入場料の変更なども予定されていない。
 県は管理移行に合わせて、安定的な運営維持のために「沖縄県国営沖縄記念公園内施設管理等基金」を設立。財団が毎年県に納める固定納付金(年間約9億円)と歩合納付金から成り、大規模修繕や整備が必要になった場合に支出する。
 県は現在、両施設の利活用に関する新たな基準の制定を進めている。これまで首里城正殿などの有料区域は、国の取り扱い要領で禁止行為などが定められてきた。だが県は観光や文化振興に関連付けた施設の利活用をより柔軟にできるよう、県独自の基準の制定に取り組んでいる。
 県土木建築部の担当者は「県が主体となって両施設の利活用の幅を広げることで、地域の活性化につなげていきたい」と話した」(2019年2月4日琉新)

おもしろいのは県が管理安定基金を作っていることです。
このファンドから年に約9億のカネがでています。
もちろん大部分は公園の整備などにあてられたにしても、正殿が復元されてから約30年たっているのですから、少しずつでも防火対策を改善できたはずです。
ところが、その形跡がみられないというのは一体なぜでしょうか。

しょせん県が身銭を切らずにタダで国からもらったものだから、管理がチャランポランだったといわれても仕方がないでしょう。
驚いたことには、財団には電気や防火の専門家も置いていなかったようです。

 首里城の火災を受け、沖縄美ら島財団の花城良廣理事長は1日の記者会見で、スプリンクラーの必要性を問われ「設置義務があったかどうかは、私どもは関係しない」と述べた。その上で「県、国を含めて検討するところ」と述べ、財団を含めた三者で話し合うべき課題との認識を示した。火災を巡っては1日時点で出火原因が特定されておらず、責任の所在が定まっていない。 (略)
県都市公園課の担当班には、機器の専門的知識を持つ、電気技師と機械技師が1人ずつ所属している
(沖タイ11月2日)

財団に防火の核心となる電気関係の専門家がいなかったのなら、県の公園課が直轄で管理すべきでした。
いや、それも無理というなら、初めから能力不足の県に管理委譲をするべきではありませんでした。

さて、今回の首里城火災においての最大の失敗は、初期鎮火の失敗です。
おそらくチロチロと燃えだして、警報機が感知するまで1時間以上経過していたと思われます。

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琉球新報11月2日

その原因は、この管理財団がまともな防火計画をもっていなかったからです。
真面目に防火計画をかんがえたのなら、煙感知器が必須だったでしょうが、これも旧式な炎感知型でしたから、発火してからなんと1時間以上経過して、正殿から白煙がたち登ってやっと火災発生が遠く離れた警備会社に伝わるというていたらくでした。
警備員がおっとり刀で手持ち消火器を持って駆けつけた時には、中庭から正殿に続く階段を登ることさえできなくなっていました。

これなどは煙感知型警報器をつけて、それと連動して自動的に作動する室内消火装置を設置すればよかっただけのことです。
スプリンクラーは国から言われていないとか、いやあれは大事な文化財が濡れてしまうから使えないというなら、不燃ガスを放出する設備をつければよかっただけのことです。
不燃ガスは、室内に濡らしてはならないものがある場合によく使われる消火設備です。

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「不活性ガス消火設備は、消火剤がガスの為、消火後の汚染が少なく、電気絶縁性と冷却効果に優れている為、電気室や美術館、精密機械、電気通信機室等に設置されるもので、消火剤による汚損が少なく、復旧を早急にすることが必要な施設に設置されるものです。
不活性ガス消火設備 | 一般社団法人東京防災設備保守協会 ...

こういうできることをやらない怠惰な不作為を積み重ねた結果、世界遺産にして国有財産の首里城を移管後わずか8カ月で燃やすことになるのです。

ところで沖縄県にとってもっとも望ましい火災の原因は何でしょうか。
それは人災ではなく、不可抗力な自然災害のような事故です。
焼け跡の調査をしている最中に県幹部はこんな恥知らずのことをうそぶく始末です。

県幹部は、出火原因が法的な不備や設備の点検不足などに該当しない不可抗力だった場合、責任の所在は「誰にもないのではないか」との認識を示した」
(沖タイ11月2日)

そのとおりです。国は文化財にはスプリンクラー設置を義務づけていなかったから法令違反ではなかった、県も県とて国の指示がなかった以上、法令遵守違反にはならない、もちろん管理財団にいたっておや県の指導はなかったと知らんぷり。

では何を原因にするかといえば、分電盤をネズミがかじってショートして燃えたというストーリーが、最良です。
コメントで電気関係のお仕事をなさっている九州Mさんはこう書かれています。

電気系統のトラブル。例えばケーブルの被覆をネズミ等の小動物がかじってのショートし発火する場合です。
分電盤より後ろ(屋内側)がショートすればリミッターや漏電遮断機が働いて、分電盤内で自動的に遮断され火災にはなりません。
また、作業終了後分電盤で手動で遮断したのが事実なら、そのショートし発火する場所はごく限られてきます。分電盤より前の回路です。
昨日の報道では分電盤内からの発火説が疑われているようです。
この場合考えられるのはリミッターや漏電遮断機の機器の故障です。しかしこれらの機器は異常時は安全側(回路を切る側)に働くようにできていますにで、これからに発火説には無理があります。
またどのような分電盤だったかにもよりますが、分電盤内への小動物説も仕組み上(隙間、侵入経路等)考えにくいと思います」

そしてこのように発火の可能性をひとつひとつ丁寧に排除していけば、残るのは当日の夜間まで続けられたイベント準備の時に、どこから電気を取ったかに絞られます。

「イベントの時にありがちなのは、仮設の配線を分電盤から直接とる場合です。
安全装置(リミッター等)の後ろ側から取ればまだいいのですが、作業し易さから遮断機の直後から取ると安全装置が効かなくなるので危険な状態になります。
仮設の配線はあったのか?あったとすればどのような配線だったのか?
関係者にヒヤリングし、現品(ケーブルに被覆は燃えても、銅線や締め付けのボルトは残る)を見ればわかると思います」

このようにイベント準備が中庭でされたことで、イベント準備は当初から無関係とされてきましたが、専門家の意見ではそうとはいえなくなりそうです。
イベント準備の時に電気を分電盤からとったのかとらなかったのか、取ったとすれば分電盤のブレーカーの前から取ったのか、後ろから取ったのかなどの調査報告を知りたいものです。

それらの調査報告が出揃って、初めて再建話がでてくるのであって、順番が違いはしませんか。

2019年11月 5日 (火)

なぜ首里城を再び再建せねばならないのか、から考えていきませんか

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メディアではウン億集まったとか、いやいやノートルダムはウン千億だった、などという戯れ言を流布しているようです。
あえて言います。
もう泣く時期は終わりました。泣いても首里城は戻ってきません。
ならば再建するのかしないのか、そこにまで遡って議論をすべきです。

燃えた首里城がなぜ輝いていたのか、一度考えてみて下さい。
それはただかつての琉球王国の栄光の時を再現したからではなく、琉球文化が14世紀の東アジアにおいて独立した文明圏として屹立していたからです。
琉球文明圏は、日本文化圏とも中華文化圏とも異なる独自な文明のあり方でした。
やがてその琉球王国の輝きは急速に衰えていくわけですが、その輝きの最後の残光がこの首里城でした。
だからこそ、首里城には琉球文化が到達した最高のものが、そこにはあったのです。

建造物の美しさ、室内装飾の華麗さ、収められた什器、美術品の輝き、それは建築用材、瓦、塗料にいたるまで神経を張りつめたように散りばめられていて、まるで東シナ海に浮かぶ宝石のようでした。
だから500年後に、沖縄の歴史学者や職人たちが実に30年もかけてその輝きを再現しようと決意したのです。


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https://www.asoview.com/base/154038/

そして首里城は11時間炎上し、事実上地上から消滅しました。
しかも熊本城のような天災ではなく、おそらくは人が防ぐことができた人為的過失によってです。
沖縄県は国から管理を移管されて、わずか8カ月でこの宝石を焼失させてしまったのです。
そのことになんともいえないやり切れなさを感じます。

ですから募金だ、クラウドだと騒ぐ前に、もう少しだけでいいから、このやりきれなさや喪失感に浸っていて欲しい。
湧き出る悔しさを噛みしめて欲しいのです。
何を亡くしたのか、何を失ったのか、どうして失ってしまったのか。
沖縄県民の手に管理が渡った瞬間燃えたのはなぜだったのか、少しでも思いを致していただきたいのです。

ましてや早々と政府の支援を要請するなど、恥ずかしくはないのですか。
首里城が「沖縄のアイデンティティ」とまでいうなら、首里城は間違いなく沖縄の自立の象徴であるからです。
自立のシンボルである首里城が燃えたからといって、すぐに知事が本土政府にすがりに行く浅ましさ!
管理団体は自分の責任ではないといい、県幹部は不可抗力だった、誰にも責任がないとうそぶく卑しさ!
この人たちにはプライドがないのか。

高良倉吉先生がおっしゃるように、「前回と違って図面も知見も残っているからゼロではない」のは確かです。
資金もかき集めればどうにかなるかもしれません。
ならば、今、欠けているのはなんでしょうか。
それを立ち止まって考える時間があってもいいのではありませんか。

 

2019年11月 4日 (月)

無責任体制のまま募金を募るな



つまりは、県から管理委託を受けている「美ら島財団」に言わせれば、既存の設備を前提にしろと県から指定管理を受けているので、これを最大限に活用するのがあたしら財団の仕事ですから、ということのようで、徹底的に逃げを決め込みました。

つまり防火設備に関してなにも県からのお達しがないんですから、あたしらにいわれてもねぇ。え、じゃあなんで謝罪しているんだと言われれば、そりゃ「おさわがせしてご迷惑をおかけした」からですよ、もう勘弁してくださいよ、あたしらただの下請け業者なンですから、チャンチャン。
もう怒るというより脱力します。天下り組織によくある空気です。

一方財団からオレの責任にするな、責任は県だろうと言われた逆切れされた県は県で慌てて、いやそれは国の責任だと言い出しました。 

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「首里城焼失 国が防火設備撤去 安全管理の見通しの甘さ浮き彫り
那覇市首里当蔵町の首里城の正殿や北殿、南殿など計7棟が焼失した火災で、正殿の外に設置されていた「放水銃」と呼ばれる消火設備5基のうち1基を、2013年12月までに国が撤去していたことが1日、分かった。沖縄総合事務局の担当者は本紙の取材に「火災発生時にも放水銃4基で対応できると判断し、代わりの防水設備を設置しなかった」と回答した。今回の火災は、スプリンクラーなどの消火設備の不足が大規模な延焼につながったと専門家らは指摘しており、安全管理の見通しの甘さが改めて浮き彫りになった。
 首里城公園を管理する沖縄美ら島財団によると、放水銃は正殿外部の初期消火や延焼防止のために設置され、火災発生時に手動で正殿の屋根上部まで放水できるようになっている。(2019年11月2日 琉新 上図版も)

琉新のこの記事のタイトルは「国が」です。
国の安全管理の見通しが甘かったからあんな大火災になったのだという筋書きです。
電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、首里城がもえたのも、皆んな皆んな政府が悪いのよ、ってことのようです。
なら、本土政府に支援要請すんなよ、と思いますが、それにしてもなんか既視感がある風景です。
自分でなにかやらかしておいて、大ごとになると一転して被害者ヅラに変わる・・・、どこかの国の得意のやり方だったような。

またこの記事で放水銃を撤去したことが大火災の原因であるかのように琉新は書いていますが、放水銃って使い物にならなかっんでしたよね。
そもそも放水銃を使った人に取材して書いていますか。
私は村の消防団員に聞きましたが、放水銃は高圧で迸るために、しっかりとした訓練をしないと筒先すら保持できないのだそうです。
消防訓練をまともにしていたとも思えない財団職員には装備していても操作すら出来なかったことでしょう。

だから本土の文化財は、煙感知器に連動して自動消火できるようなシステムを備えているのです。
放水銃は地中埋め込み型で、出火と同時に自動的に地上に出て放水を開始します。
室内には自動消火器もあります。
さらには文化財の収納庫には防火扉を設けて、キセノンなどの不燃ガスを注入しているところもあります。

どうやら県としてはスプリンクラーの設置をしっかり指導せずに、放水銃を1基撤去した国の責任、ということにしたいようです。

県幹部は、出火原因が法的な不備や設備の点検不足などに該当しない不可抗力だった場合、責任の所在は「誰にもないのではないか」との認識を示した。」
(沖タイ11月2日)

え、この大火災は「不可抗力」ですか・・・(絶句)。
まぁ、たしかに文科省なんてなくてもいい官庁のトップですが、彼らの指導責任はあるとして、一義的には現在の管理者が誰なんでしょう。
何度も書いてきていますが、それは沖縄県です。
その沖縄県が「あの大火災は不可抗力だ、だから誰にも責任はない」で世論が許すと思える神経のほうがおかしい

当該管理団体は県にいわれたとおりやっていたといい、県は「不可抗力で誰の責任でもなかった」と言い募る。
なんともかともグロテスクな絵です。
国費を240億投入し、30年かけて沖縄の叡知を集めて作られた「沖縄の心の象徴」を全焼させても、不可抗力だからその責任は誰もとらないでもいいというなら、そんなものは二度と作らないほうがましです。
こんなことを県幹部が言ってのけられるのは、最高責任者の知事が責任を回避しているからです。

こんなところにまた税金を投入するのでしょうか。
私はお断りです。
 

 

2019年11月 3日 (日)

日曜写真館 南アフリカ優勝おめでとう

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南アフリカのラグビーワールドカップ優勝、おめでとうございます。お祝いの紅葉のシャンパンかけです

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イングランド優勢の下馬評を覆しました。試合開始直後にスクラムの大黒柱を失ったのは気の毒でした。たびたびスクラムが崩れて、ペナルティをとられて失点してしまいました

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コリシ主将インタビーで1996年の優勝にふれて 「あの優勝が国に何をもたらしたかは覚えています。あんなに皆がスポーツで1つになるのは見たことがない」

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南アフリカ・コリシ主将の背負った6番は、1995年優勝時にフラソワ・ビナールとマンデラがつけていた番号です。
試合後のインタビ ュー
「祖国は実に多くの課題に直面しています。しかし南ア国民は私たちを応援してくれました。みんなに感謝します。祖国はいま本当にたくさんの問題を抱えています。それぞれ違うバックグラウンドを持つ人たち、異なる人種からなるチームがゴールを目指して一つになれました」

2019年11月 2日 (土)

首里城は沖縄文化の最高の到達点だった

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首里城炎上から1日たちました。色々な意見がでています。
多くは「沖縄の心のよりどころを失った」とするものが多数を占めますが、保守系の一部からは、文化財としても意味があるのは世界遺産に登録された礎石だけで、建造物は中華帝国に媚びへつらった彩色がなされているし、むしろ燃えてしまったのもよかったとでもいわんばかりの意見もでているようです。

これはかつて首里城再建プロジェクトが持ち上がった時に、左翼陣営の一部から、首里城は「支配と搾取と奢侈の象徴である王族の城など復元しても無意味だから再建する必要はない」(批評.com) とする意見の裏返しです。
だからなんなのです。
14世紀から15世紀にかけて作られた首里城を後世のイデ
オロギーで斬ってみて、なにか意味があるのでしょうか。
500年以上後の時代の人間が、ある者はアレは抑圧の象徴だといい、あるものはコレは中国に媚びているといったところで、そんなものは今の価値観で言っているだけにすぎません。

当時にはそんな人民史観などなかったし、中華風だと言われても中華帝国は琉球王国を冊封していたのですから、中国の紫禁城に模してあるのは当然です。
その時代にその時代なりの理由があってそうしたのであって、それが琉球王朝のあり方でしたし、それを含めて沖縄の歴史なのです。

再建作業当時元の色彩がわからずに、紫禁城の赤色を選択したのですが、後に見つかった下写真のような後に米国公文書館で見つかったというカラー写真の色とは異なっています。
瓦の色も違うようです。

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仮にこのカラー写真が正しいのなら、全体にぐっと渋めとなるでしょう。

ただし上の写真が見つかったのは2014年のことですから復元作業当時には、このカラー写真は見つかっていませんでした。
とっくに塗ってしまった後になって、どうやって参考にするのでしょうか。
見つかっていれば、大分違った色になった可能性もありますが、なかったものはどうしようもありません。
だからといって、復元に携わった人たちがまるで中国に媚びるためにあの赤色を選んだかのようにいうのは、いかがなものでしょうか。

そもそもあの写真が撮られたのがいつかはわかりませんが、いずれにしても完成時から数百年経過して現代となってからのものです。
首里城再建事業がめざしたのは完成時の姿でした。
したがって完成直後に撮られたカラー写真ならいざしらず、こんな数百年後に撮られた写真と比較されてもねぇってかんじです。

この写真だってひどい退色現象を起こしているじゃありませんか。
あくまでも再建事業が目指したのは首里城の完成時のものですから、比較すること自体意味がありません。

かつての平安京ですら、真っ赤な中華レッドで彩色されて金をあしらったど派手な色だったのです。
それが何百年も立って今見るような渋い色になったわけですが、もし完成当時を再現するなら首里城のような色になるかもしれません。

また、意味があるのは世界遺産登録された礎石だけで、建造物に意味がないというのも暴論です。
当時いかなる木材で作られてきたのか、いかなる塗料を使用していたのか、その下地にはなにを用いていたのか、どのような内装で、どんな彫刻がなされていたのか、きわめて緻密な歴史考証が多くの歴史研究者によってなされてきた結晶として、あの再建首里城があったのです。
いわば現代沖縄歴史学と沖縄文化到達点との出会いが、あの首里城なのです。

再建プロジェクトのリーダーを務めた高良倉吉氏はこう述べています。

「たんなる支配・搾取・奢侈の象徴大工や職人を中心に当時の琉球の大衆が身につけていた技術と文化の結晶が首里城なんだなどではない” といってもなかなか理解されなかった」(篠原章批評.com)

たとえば正殿の赤い塗装には沖縄独特の「桐(とう)油が使われていますが、お手軽にやるなら化学塗料を塗れば済んだのに、あえてこの困難な選択をしたわけです。
それは桐油が古くから沖縄で
灯油、油紙、雨合羽、傘に用いられた自然塗料だったからです。
一方でこの桐油は容易に燃えやすく、今回の火災を広げた原因となってしまいました。

また下地塗料に琉球漆を用いたのも、琉球独特の紅漆や螺鈿の漆工から推察すると、尚巴志王当時に既にあったという歴史考証によっています。

屋根瓦の色がカラー写真と違うという指摘もあるようですが、これもそうとうに突っ込んだ議論が専門家でなされています。
結局、戦前の在りし日の首里城を見た老人を集めて話を聞いても、あるものは赤だったといい゛ある人はいや黒だったというふうに意見がわかれたのです。
結局、当時使われたであろう琉球瓦を使用することになったのですが、それを作れる技術は奥原製陶ただ1軒しか残っておらず、4代目主奥原崇典氏の尽力によって瓦が復元されました。

そして建造物自体をイヌマキ(ちゃーぎ)としたのは、沖縄において古くから木造住宅の高級建築材として利用されており、国の重要文化財の中村家などにも用いられているからです。
これはイヌマキが強い抗蟻性をもち、住宅の天敵のシロアリに耐える力があるからだといわれています
イヌマキほど沖縄の風土に適した木材はないのです。
しかし、再建事業の時には、沖縄で一本も残っていませんでした。
高良先生たちは、首里城を再建するために、イヌマキの森を再生するところから始めたのです。

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「1992年まで行われた首里城の大規模な復元工事の際に、首里城公園友の会事務局の副会長で、首里城復元の委員だった高良倉吉さんは信じられない事実を知った。
「沖縄県内で調査をしてみたら、首里城の復元に使えるイヌマキは一本も見つからなかったんです。“一本も”ですよ…」
結局、当時の首里城の修復には、沖縄以外の場所のイヌマキを使うことになった。
「私達は戦争で首里城を失っただけではなく、それを支えるイヌマキという木さえも失ったんだと…。ショックでしたね」
首里城の修復で悔しさを感じた高良さんは、1993年からイヌマキの植樹を始め、今では毎年2回行われる植樹祭には多くのボランティアが参加するようになり、草刈りや肥料入れなどの樹木管理を行っている。
琉球王朝時代に行われていた、首里城の修復などのための計画的な森林保護が復活していた」
(『沖縄にゼロからイヌマキの森を作る。首里城を守るためにできることとは?』 フューチャーランナーズ~17の未来~)

https://www.fnn.jp/posts/00355220HDK
http://www.fujitv.co.jp/futurerunners/archive.html

このように首里城の再現事業は、中華帝国に媚びるためでもなんでもなく、かつて500年前には首里の丘の涼しい風になぶられるようにして確かにそこにあった、首里城という沖縄文化の最高の到達点をいまに蘇らせることだったのです。
その意味で、首里城は「沖縄の心のシンボル」たり得たのです。
仮にその色が紫禁城風だとしても、その価値を落とすことになりません。

だからこそ、これを燃やしてしまった県の責任は厳しく問われなければならないのです。
政治的に利用するのでもなんでもなく、国の管理時からスプリンクラーがなかったという言い訳は聞き苦しい。
文部省・文化庁が文化財の火災に対して的確な指導をしなかったことは事実です。
文化省は仕事をしない省庁として有名ですが、彼らもまた責任を問われるでしょう。
しかし文科省の責任と県の責任は分けて考えるべきです。

文科省もスプリンクラーをつけなかったから県の責任はない、といわんばかりの議論をするなら、それは責任転嫁です。
国から県が管理を受け継いだ以上、もはや県の管理に入っているのであって、万全の消火体制をとるべきでした。
文科省は遅ればせにスプリンクラーの設置を推奨する文書をだしてはいました。
しかし首里城を管理している団体は、それすら把握すらしていなかったのです。

「那覇市消防局によると、消防法によるスプリンクラーの設置義務はないが、文部科学省は今年9月に文化財にスプリンクラーの設置を推奨する文書を配布した。指定管理者の美ら島財団首里城公園管理部首里城事業課の町田宗紀課長は文書について「把握していない」と述べた」(琉球新報11月1日)

結果論で言っているのではありません。
最低限やればできることを
しなかった無作為が問題なのです。
たとえば、今日の報道によれば、警備員が正殿前の階段を上がった時点で煙がたちこめ息も出来ない状況だったそうです。
警備員は手にした消火器を使うこともできず、消防に電話するだけで精一杯でした。
おそらくチロチロと燃えだして、警報機が感知するまで1時間以上経過していたと思われます。

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琉球新報11月2日

これも報知器を熱感知ではなく煙感知方式のものにしておけば、警備員による初期鎮火が可能だったかもしれません。
煙感知報知機などはいまではビルのトイレにすらついています。
そして感知できたとして、駆けつけた警備員が備えられた消火銃を使用できたかとなるとわかりません。
消火銃は高圧で、訓練がない人間には、筒先を握っていることすらできないからです。

ですから煙感知報知機と連動し、自動的に消火を開始するスプリンクラーが必須の設備なのです。
スプリンクラーがなかった事に対してこのような擁護する説もあります。

「文化財のスプリンクラー設置について、工学院大学理事長の後藤治教授は「中の美術品などを濡らしたくないため、スプリンクラーを設置している国宝や重要文化財は少ない。スプリンクラーの設置は人命救助を基準に決まるので、建物の文化財としての重要性とは無関係」だ」(AbemaTV)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00010019-abema-soci

そうでしょうか。当時正殿に濡らしてまずいものがあるなら、防火扉があった北殿に集中させて収納すればいいのであって、正殿は美術館ではありません。

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琉球新報

後藤氏は勘違いしているようですが、むしろ正殿を含む首里城そのものが美術品なのです。
人命保護がスプリンクラー設置の要件だというなら、今回は鎮火まで実に11時間かかり、強風に煽られて周辺住宅地域まで火の粉が降り注いで、避難指示がでたほどです。
まさに人命にかかわるような大火だったのです。

仮に文化財だからという理由でスプリンクラーをどうしてもつけたくないなら、初期消火はすべて人力となるわけです。
したがって自動消火器なき人力に頼る消火訓練を積み重ねてきたのか、消防署が速やかに正殿正面の広場にまで進入して消火活動にあたれたのか、消火栓の数は適当だったのか、真剣に検討したのでしょうか。

消防官たちはまるで「巨大なストーブに向けて消火したようなかんじだった」(那覇消防局)と証言しています。

また数十台の消防車が駆けつけましたが効果的な消防が困難でした。
その理由を那覇消防局はこう語っています。

「首里城直近にある2つの防火消防水槽から取水して放水するためには、城壁を迂回しながらホースを延長するために時間がとられた」(産経11月2日)

このようなことは、消防訓練をなんどかしていれば洗い出せたことのはずです。
それをせずにいきなりぶっつけ本番を迎えてしまったのです。
県がこの首里城再建プロジェクトの重さを知っているなら、そこに使われている木材、塗料、下地材にいたるまできめ細かくチェックして防火対策を立てるべきだと思うのです。 
自然素材の集合体であった首里城をいかに火災から守るか、防火専門家たちの知見を集めればこんな惨事を呼ばなかったのではありませんか。

しかし県は首里城を観光の目玉ていどにしか考えていなかったようです。
自分たちの文化を守り、引き継いでいくことは、結果として観光資源になるのであって、観光に使えるから文化があるのではありません。

そのくせ燃えると真っ先に出る第一声が、「国の援助をいただいて再建したい」と、ふだんは国の政策に抵抗することを目的化させているような県知事が平気で言い出すのはおかしくはありませんか、と私は思います。

 

2019年11月 1日 (金)

デニー氏の仕事は「心の喪失感」を訴えることではない


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衝撃的な事件がおきました。
首里城が炎上し、その大部分を失いました。言葉もありません。
喪失したものはあまりにも大きく、その中には二度と復元できないものも多く含まれています。
下の写真の正殿が焼け崩れる様を、多くの県民、国民は間のあたりにしました。
この光景は、私たちの中で長くつらい記憶として刻まれることでしょう。


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https://www.youtube.com/watch?v=2eGJ8wNrhqk

今日の午前から消防の現場検証が始まります。
炎上直後に消防車が駆けつけていますが、正殿(「唐破風」からふぁーふー)から出た火は、 折からの強風に煽られて手の施しようがないほど延焼の速度は速く、瞬く間に炎に包まれてしまいました。
当初はイベント準備作業からの失火かといわれていましたが、この準備作業は正殿前の御庭(うなー)で行われていて、建造物内部には立ち入っていませんでした。

放火の疑いは残るものの、正殿は施錠されていました。
正殿内部の漏電による失火がもっとも可能性がありますが、爆発音がしたという証言もあり、解明を待たれるところです。
まだ焼け跡から煙がでているような時期に、安易なテロ説を流すのは厳に謹んで下さい。

今後検証されるべきは、安易な犯人探しではなく、この宝石のような文化遺産の火事がどうしてこれほどまでに拡がってしまったかについて検証することです。

第1に、消防車は速やかに到着しましたが、現実の消火活動には手間取りました。
それは城壁の石垣に阻まれて敷地内部に消防車が進入できなかったことです。
そのために、本来ならば消防署は最初に炎上した正殿正面の広場(うなー)に十数台の消防車を並べて消火活動をしたかったでしょうが、ホースを数百メートルに渡って継ぎ足し継ぎ足しながら消火することになってしまいました。
とうぜん水圧も落ち、十分な
数の放水ホースを確保することすら難しかったと思われます。

第2に、そもそも失火を正殿内部でくい止められなかったことです。
ここで食い止められれは、他の建造物への延焼はなく建造物内部を一部焼いただけで済んだかもしれないからです。

「正殿には他の建物からの延焼を防ぐため、外壁に沿ってカーテン状に水を噴出する「ドレンチャー」が設置されていたが、今回の火元は正殿内部とみられ、市消防局は「本来の効果を発揮できなかった可能性が高い」とする。
 木造の歴史的建造物は火の回りが早いため、消防法は国宝や重要文化財に指定された建物について、面積にかかわらず消火器や自動火災報知機の設置を義務づけ、文化庁も消火設備の整備に力を入れている。
 しかし、首里城は戦前、正殿が国宝に指定されていたが、1945年の沖縄戦で全焼。城跡の上に復元され、今回の火災で焼失するなどした正殿など7棟は、いずれも戦後に復元された。このため文化財保護法に基づく文化財には指定されておらず、防火対策の対象にはなっていなかった」(読売10月31日)

ドレンチャーとは建造物の外部に水の壁を作って延焼を防ぐ消防装置のことです。

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上の写真は高野山の金剛峯寺・御影堂でのドレンチャーの実演風景ですが、首里城に設置されたドレンチャーがほとんど役にたたなかったのはなぜでしょうか。

また驚くべきことには、首里城は国宝や重要文化財でもなかったために、もっとも重要な室内消火設備であるスプリンクラーすらなかったことです。

沖縄タイムス(11月1日)によれば、正殿の赤い塗装には沖縄独特の「桐(とう)油(ゆ)」を使っており、これが自然発火やすく延焼しやすかったとしています。
また下地の漆も
島袋弘樹那覇消防局長は「漆を塗った建物はいったん燃え出すと簡単に消せない」としています。
このような塗料の燃えやすさに加えて、スプリンクラーのような消火設備が欠落していたことが致命的でした。

「一方、正殿の屋内にはスプリンクラーがなかった。設置義務はないが、屋部憲右(文化財建造物保存技術協会) さんは「沖縄の代表的な建築物なのだから、しっかりした設備があるべきだった」と疑問を呈した。
建築防火工学が専門の東京理科大の大宮喜文教授も「木造で、しかも壁で仕切られない大きな部屋があり、火災の広がりは早いと考えられる。だが、スプリンクラーがあれば全焼に至らなかった可能性がある」とみる。
 復元工事を手掛けた国の国営沖縄記念公園事務所の記録によると、正殿にはホースを引き出して放水する屋内消火栓があった。大宮教授は「内部で火災が大きくなった場合は人が入れずに使えなくなる」と説明する。
 また、正殿の火災報知機には空気の熱膨張を感知する「空気管」方式が採用されていた。目立たない代わりに反応が遅く、大宮教授は「景観に配慮したのではないか」とみる。
 建物外部には水のカーテンを作って他の建物への延焼を防ぐ「ドレンチャー」があったが、結果として南殿や北殿にも火が回った」(沖タイ11月1日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00491971-okinawat-oki

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このために、スプリンクラーが装置されていれば、本来内部で初期鎮火できたはずのものが、たちまち正殿を焼き尽くして、他の建造物にまで延焼していったのです。
なぜこんな初歩的な消火装置が欠落していたのか、なぜ沖縄県は取り付けようと考えなかったのでしょうか。

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https://www.sankei.com/life/news/191031/lif1910310

そこで第3の問題です。この火災の責任を問わないわけにはいきません。
デニー知事はこう述べています。

「言葉に言い表すことのできない喪失感に包まれ、本当に胸が痛む思いでいっぱいです。しかし、それと同時に琉球王国の象徴であり、歴史と文化の心に彩られた首里城を必ず復元させなきゃならないという強い思いも湧き上がりました」
(毎日10月31日)
https://mainichi.jp/articles/20191031/k00/00m/040/257000c

ならばデニー知事に問わねばなりません。
「言葉に言い表すことのできない喪失感」は誰の責任で生じたのでしょうか。
それを明らかにする義務が知事にはあります。
なぜなら首里城の管理責任者は他ならぬデニー氏が知事を務める沖縄県だからです。

たとえば先述したようにスプリンクラーが設置されていれば、これだけの大事にならずに済んだのです。
防火専門家が指摘するように漏電が原因なら、どうしてここまで放置されてきたのか、まともな防火点検をしてきたのか、防火計画はあったのかさえ怪しいものです。
たとえば消防車は敷地内に入れない、消防ホースは継ぎ足してやっと敷地に届くようなありさま、敷地内の消火栓は足りない、スプリンクラーがないから正殿で止まらずに延焼が始まる、ドレンチャーはものの役に立たない、こんなないない尽くしだから全焼したのではありませんか。
まともな防火計画があれば、広場まで消防車が入れるようななんらかの仕組みを作っていたし、そもそもスプリンクラーも取り付けていたはずです。
違いますか、デニー知事。

あえて冷たい言い方をしますが、あなたの「胸が喪失感で一杯」になろうとなるまいと知ったことではありません。
知事は哀しむことが仕事ではないからです。
知事がやるべきことは、行政の責任者として、まずは何がこの大火の原因かをあきらかにすることです。
それができて初めて、「政府や国内外の関係機関、県民および国民や世界のウチナーンチュ(沖縄の人)の皆様の協力」(毎日前掲)を要請出来るのです。

さて今後ですが、この首里城復元プロジェクトの中心を担った高良倉吉琉球大学名誉教授はこのように述べています。

「太平洋戦争末期の沖縄戦(1945年)で灰燼(かいじん)に帰した首里城。89年から始まった復元に関わった高良倉吉(たからくらよし)・琉球大名誉教授(72)は31日午前4時ごろ、共に復元に取り組んだメンバーからの電話で出火を知った。那覇市の自宅から見える赤々と燃え上がる炎を「信じられない」とぼうぜんと見つめた。
 沖縄戦で多くの資料が失われた中、関係者が調査や研究を重ねて、正殿復元では建物内部の構造も琉球王国時代を忠実に再現。「完全木造で琉球王国で使用された往時にかなり近づけた」と自負する。北殿は資料散逸で内部まで再現できなかったが、沖縄の歴史に触れられる資料館として「他県にはない沖縄の歴史的象徴」をよみがえらせた」(毎日2019年10月31日)

世界遺産として認められたのは石垣などの城址だから、建造物が燃えてもまた作ればいいというコメントを出している人がいました。
そんなに簡単ではありませんよ。いったい誰が再建するのですか?

おそらく、今、再度作れば300億から500億はかかるでしょう。
そんなカネを誰が出すのでしょうか。国か県でしょうか。
菅氏は国が支援するという言い方をしていましたが、内情は厳しいはずです。
というのは、国は今回の打ち続く大災害の復旧と再建で予備費を使い切りつつあるからです。
文化的復旧よりは、目の前の被災地復旧が優先される時期にたまたま当たってしまったのです。

奇しくも来年度予算の折衝時期が始まりますが、沖縄県が国におんぶにだっこで出してもらう気ならお止めなさい。
それでは国に借りを作ることになりますよ。
国はなんとかやりくりしてその程度の財源はひねり出すでしょうが、あくまでもそれは沖縄県が自助努力を尽くしてからのことです。
デニー知事は募金を募ると言っていますし、地元2紙も大規模に募金活動をするようです。
沖タイや琉新が社屋を売れば数百億など簡単です。

首里城が「沖縄の誇り」と言うならば、それはかつて独立国だった琉球王朝が常に心にあるからです。
ならばいっそうのこと、本土政府のカネに頼るべきではありません。
広く県民に「首里城再建基金」を募るべきです。
沖縄県予算も身銭を切るべきです。
それでどれだけ積みあがるか分かりませんが、無意味な「ワシントン大使館」やデニー知事の道楽のような万国津梁会議などの冗費を省いただけで違うはずです。
大事なことは、沖縄が自力で首里城を再建してやる、という気構えなのです。

しかしそれでもなお再建は困難を極めるでしょう。
というのは、資金だけの問題ではないからです。
高良先生たち、この復元プロジェクトに関わった人たちの思いを、篠原章氏はこう書き記しています。

「高良先生はしばしば、「復元作業の過程で左翼陣営の人たちから、“支配と搾取と奢侈の象徴である王族の城など復元しても無意味だ”と批判された。“そうじゃないんだ。大工や職人を中心に当時の琉球の大衆が身につけていた技術と文化の結晶が首里城なんだ。たんなる支配・搾取・奢侈の象徴などではない”といってもなかなか理解されなかった」と語っておられた。ぼくは高良先生この言葉に感動を禁じえなかった」(批評.com
https://hi-hyou.com/archives/8889

高良先生たちは、建設当時の大工や職人、そして木材に至るまで宝石のようにすくい取ろうとしました。

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https://www.fnn.jp/posts/00355220HDK

「平成の復元に当たって高良先生は、首里城の建材に用いられていたイヌマキの木(チャーギ)が沖縄に残されていないことに気づき、断腸の思いで沖縄以外の地域にイヌマキの木を求めたという、その苦い経験をもとに、高良先生は次の首里城の修理に使うためのイヌマキを植林している。
が、そのイヌマキはまだ幼木で使える状態にはない。いちばんの問題は、復元に携わることのできる人材もすっかり高齢化し枯渇しているということだ」(篠原前掲)

そして首里城は今年1月に御内原エリアの復元が終了し、予定された復元作業は一段落しようとしていました。
その矢先に、それをあざ笑うようなこんな事態を迎えてしまいました。

問題は山積しています。
コンクリート
製の外形だけのものを作るなら「速やかな復元」が可能です。
しかしそれでは「沖縄の誇り」としての首里城を再建したことにはなりません。
首里城再建を担った高良先生を継ぐ若者が現れ、イヌマキの森を育てていく時間が必要です。

私は再建を焦る必要はないと思います。
焦って魂のこもらないものを作ってもしかたがありません。
時間を味方にして、県民のみならず国民から広く浄財を集め、かつての高良先生のような情熱を持った人を育てていくことから初めてもいいはずです。

そう考えると、来年のオリンピックの聖火リレーがこの無残な首里城焼け跡から始まるというのも、なにか意味があることのように感じます。

 

※改題しました。すいません。

 

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