小泉進次郎大臣が恥をさらしているようです。
「「日本の存在高まった」と小泉氏 石炭祭りと日本批判を自嘲
スペイン・マドリードでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)に参加した小泉進次郎環境相は15日、帰国前に会場で報道陣に「交渉成立に向けて積極的に貢献し、日本のプレゼンス(存在感)が高まった」と成果を強調した。
小泉氏は9日に現地入りし、11日の閣僚級会合で演説した。二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電を巡り批判の的になり「冒頭は石炭祭りだった」と自嘲気味に話した。批判は日本への期待の裏返しだとも主張した。
一方で合意を目指し各国閣僚らと30回以上、会談を重ねたと積極姿勢をアピールした」(共同12月15日)
なぁにが自嘲ですか。こんなCOP25になんかでたら、必ず化石燃料の使いすぎ批判の十字砲火を浴びること覚悟の上だったはずで、「自嘲」などしてナンの足しになるのでしょうか。
共同
日本はありがたくもかしこくも、化石賞などを頂戴してしまいました。
「【マドリード共同】世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は3日、地球温暖化対策に後ろ向きな姿勢を示した国に贈る「化石賞」に日本など3カ国を選んだと発表した。日本は、梶山弘志経済産業相が同日の閣議後記者会見で、二酸化炭素(CO2)の排出が特に多く、温暖化を悪化させる石炭火力発電の利用を続ける政府方針を改めて示したのが理由。
スペイン・マドリードでの気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の会場で発表した。同ネットワークは、世界は脱石炭にかじを切りつつあると指摘し、日本の方針は「パリ協定を軽視し、人々を危険にさらすものだ」と厳しく批判した」(共同12月4日)
やれやれ、まるで日本吊るし上げ大会ですが、小泉さん、なぜちゃんとした説明をしてこないんですかね。
日本とヨーロッパとは違った条件に置かれていること、そしてなによりも化石燃料が増大したのは原発を止めているからだという事実、この2点を大臣として説明しないでどうするんです。
●EUにおいて2030年までの石炭火力廃止宣言を提出した8カ国
・フランス ・・・22年まで
・イタリア、アイルランド・・・25年まで
・スペイン、オランダ、デンマーク、ポルトガル、フィンランド・・・30年まで
国際環境経済研究所所長山本隆三氏『石炭火力で分断されるEUの温暖化目標』によれば、 EU諸国の2018年時点の石炭火力の発電量比率は下記の通りです。
この廃止宣言を提出した8カ国のいずれも石炭火力比率が相対的に低い国々ばかりです。
山本隆三 欧州諸国の火力発電比率
※ 2018年実績値 出所:国際エネルギー機関(IEA) http://ieei.or.jp/2019/08/yamamoto-blog190826/
ここにトリックがあります。
典型的なのはフランスです。どうしてこの国が石炭火力の比率をわずか1.9%などという法外な数に押えられているのか、そりゃ簡単です。原発大国からです。
下のグラフは福島事故以前のものですが、白い部分に着目してください。
フランスは原子力に訳8割強依存していますから、そりゃ石炭火力は少なくて当然です。
一方日本は原子力24%、石油27%というバランスのいい比率でしたが、一挙に原子力がゼロとなりました。
だから、その代替エネルギーで石炭火力が増えたのです。
2013年9月15日に大飯発電所4号機が停止してから足かけ2年、日本は48基全ての原発が凍結状態になっていました。
今稼働しているのはわずかに9基です。
「2018年7月12日時点で新基準にパスして再稼働にこぎ着けているのは、大飯(関西電力)、高浜(関西電力)、玄海(九州電力)、川内(九州電力)、伊方(四国電力)の5発電所の9基。一方で、19基の廃炉が決まった。(略)
政府は2018年7月に閣議決定した第5次エネルギー基本計画で「2030年度に原発による発電比率を20~22%にする」としている。そのためには30基前後の原発の稼働が必要だが、実現までの道のりは遠く険しい」
(日本の原子力発電マップ 下マップも同じ)
https://www.nippon.com/ja/features/h00238/
日本社会はエネルギーの基盤となるベース電源の実に3割弱相当を喪失したために、大きななしわ寄せを受けました。
現状日本は9割、化石燃料依存です。
下の2枚のグラフを見てください。紫の原子力がグラフ右端では消滅して、替わりに火力のピンク色が激増しているのがわかりますね。
これが、「原発ゼロ」のリアルな結果です。
(図電源別発電電力量構成比 - 電気事業連合会)
代替電源は化石燃料以外に道はなく、主にLNG(液化天然ガス)に頼ったために、2011年から14年までで既に12.7兆円もの国富が海外に流出したとみられています。
私たちは家庭用電気料金の方に目が行きがちですが、実は家庭用向け電気料金は政策的に安く設定されていますので、ほんとうの電気料金値上げの負担はむしろ産業部門に重くのしかかりました。
電気料金は民主党政権が始めた「原発実質ゼロ」政策のために右肩上りの上昇を続けました。
下図を見ると、化石燃料コストと電気料金値上がりが、同調しているのがわかります。
(図 東電HP)
この原因は、ひとえに電力会社が原発を停止し、燃料コストを増大させたからです。
原発を止めてしまった以上、代替エネルギーの選択肢はふたつしかありません。
一つは化石燃料を主体とするか、もうひとつは再生可能エネルギーに頼るかしかありませんでした。
再エネがもっとも光り輝いて見えた時期でしたが、それはただの偽薬にすぎませんでした。
いまでも毎日新聞などはチャラっとこんなことを書いています。
「だが、日本のエネルギー基本計画が規定する将来の電源構成は、石炭に過度に依存している。(略)
基本計画を見直し、温暖化対策に真剣に取り組む姿勢を示すべきだ。基本計画は30年の原子力への依存度についても「20~22%」と明記するが、再稼働が困難な現状から目をそらすものだ。再生可能エネルギーの活用にかじを切る時だ」(毎日社説2019年2月13日)
https://mainichi.jp/articles/20191213/ddm/005/070/021000c 。
毎日のご託宣では、化石燃料を止めて再生エネに切り替えよ、さすればニッポンは救われるであろう、とのことです。
こんな記事を事故直後の8年前ならいざしらず、いまでも平気で書ける神経がわかりません。
馬鹿も休み休みいいなさい。いつまで同じことを言っているんですか。結果は既に見えたんですよ。
脱原発を決めた民主党政権は、FITという全量固定価格買い取り制度を作りましたが、促進のためにベラボーな高額買い取りをしたために太陽光バブルが発生し、太陽光発電を中心として再エネ発電設備の導入は飛躍的に伸びました。
※ここに入っていた2枚のグラフとその説明部分は筆者の間違いでしたので、削除します。
しかしメガソーラーの合計の最大出力は、定格で2万kWていどで、発電実績はさらにそれよりはるかに低い数値でなのす。
立地や設備によっても異なりますが、10分の1、あるいは8分の1とか言われています。
再エネで言う定格出力とは、「精一杯ガンバレば、これだけ発電が可能ですよ」、というスペックにすぎず、実際の発電実績ではありません。
なんと笑えることには、再エネには「旬」があるのです。
・潮汐発電(満潮と干潮の海水面の高低差で発電)・・・満潮、または干潮の一日数分から数十分間だけ
・風力発電(風力によってプロペラを回して発電) ・・・風が吹いている時だけ
・太陽光発電(太陽エネルギーで発電) ・・・太陽が出ている時だけ
再エネの宿命的体質は、このようにその瞬間「だけ」の一時的な発電量にすぎないのです。これが決定的に他のエネルギー源と異なるところです。
こんな恒常性がない電源は、一定の電力を安定的に発電する必要があるベースロード電源にはまったく適していません。
それを知ってか知らずか、「再エネを30%にするぞ」とか、「いや全部まとめて再エネだぁ」とか、はたまた毎日みたいに「石炭火力やめて再エネでいけぇ」などという景気のいいことを言う人たちがいますが、頭のネジが吹き飛んだとしか思えません。
日本においては、石油発電と原発はこちらを選べばアチラが立たずというトレードオフの関係なのです。
ここが決定的にヨーロッパとは異なる点です。
ドイツがとった「脱原発」の方針は二つでした。
ひとつは火力発電所の大増設計画です。
ドイツ環境諮問委員会の資料によれば、現在計画中の石炭火力発電所により1000万キロワット、そして天然ガスによる火力発電所で更に1000万キロワットを補填する計画です。
このうち石炭火力発電所は2013年までに早期完成させ、天然ガスのほうも2020年までに竣工させるという計画をもっています。
この計画を立てた時点でドイツは、脱原発を選んだ代償としてCO2の排出削減という環境政策を捨てたことになります。
ドイツはとの思いで火力発電を建てたとおもったら、こんどはCOPで石油火力を捨てろですから、踏んだり蹴ったりです。
まぁ、自分でやったことですからしょうがないですが。
ドイツはそれでもなんとかやっていけました。
なぜなら、もうひとつのセフティネットがあったからです。
それはドイツには欧州送電網がついているからです。
下の図をみるとヨーロッパ地域において電気はただの貿易品だとわかります。
電気をお互いに融通しあって、電気に色はありませんから、その電気が原発由来か再生エネ由来か消費者にはまったく判別できないのです。
最近ヨーロッパでの流行りは、由来を明らかにして付加価値をつける商法が登場しているほどです。当然再エネのほうがお高い。
熊谷徹『脱原発を決めたドイツの挑戦 再生可能エネルギー大国への道』
上図のように互いに融通しあっているからこそ、ヨーロッパでは脱原発や脱化石発電が可能だったのです。
つまり原発依存国や石油発電をしている国から、電気を買えばいいだけのことだからです。
このように書くとかならずドイツは脱原発をしても電力輸出国だという人がいますが、それはあくまで一時的なことで、ドイツのエネルギー・ネットワーク庁の責任者はこう明解に言い切っています。
「今多くの人は、ドイツが数週間フランスに電力を輸出したと喜んでいます。しかし2011年全体でみれば、ドイツはフランスに対してかつての電力輸出国から輸入国へと転落しています。都合のいい数字ばかりではなく、事実を見つめるべきです。」(フランクフルター・アルゲマイネ紙)
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-6147.html
つまりドイツは大きなヨーロッパ送電網の中に位置しており、電力が余剰の時は旧東欧諸国に輸出し、不足した場合は火力発電所を調整してもらっています。
その上にロシアからは天然ガスのパイプラインが走っていますから(だからドイツはロアに強く出られません)、十重二十重にエネルギーのバックアップは万全なのです。
まさに大陸の強みです。こればかりは島国の日本はまねできません。
だからメルケルには脱原発ができたし(半分ですが)、火力依存もスムースだったわけです。
いまドイツが脱石油でもたもたしているのは、国内に炭鉱を抱えているために、社会政策上一気にゼロというわけにはいかないからです。
そのヨーロッパですら、石油火力の削減については大きく分裂しました。
「ドイツとイタリアが名を連ねていないことが話題になった。
その後、ドイツのメルケル首相は5月中旬にベルリンで開催された環境関連会議の場で、ドイツは2050年純排出量ゼロをいかに達成するかを議論すると発言し、自国で設定していた2050年に2005年比80~95%削減目標を引き上げることに言及した。
ドイツが支持の姿勢を示したものの、6月20、21日に開催されたEU首脳会議で提案された2050年ゼロ目標にエストニア、ポーランド、チェコ、ハンガリーの4カ国が反対したため、まとまらなかったと報道された。
4カ国とも石炭をはじめとした化石燃料の比率が高い。また、下図の通り、ハンガリー以外の3カ国は1人当たりのCO2排出量が相対的に多く、ゼロ目標達成は困難と判断したものだろう」(山本前掲)
山本前掲 1人当たり温室効果ガス排出量
※ 2017年実績値 出所:欧州連合(EU)統計
ヨーロッパでは8カ国も脱石油発電をしたと報じられていますが、その舞台裏では原発依存国から電気を融通してもらったり、東欧各国のように従来どおりの石油依存を続けている国ありとさまざまなのです。
ですから小泉先生におかせられましては、お父上のスットンキョンな脱原発論の強い影響下にあるとおもわれますが、今脱炭素・脱火力発電をするためには、原子力と火力発電はトレードオフの関係だということにさっさとお気づき下さい。
脱原発して火力発電切るなんて100%むりです。
現実には社会をきずつけないように配慮しながら、折り合いをつけるかないのですよ。
さもないと、「セクシー」といったり「子供が生まれる」とか、わけのわからないことでお茶を濁すことだけが達者になりますよ。
あ、それと世界で一番炭酸ガスだしているのは中国だかんね、そこもよろしく。
チャイナはこういう時だけ「うちは発展途上国だ、別枠だ」(よくいうよ)と言い出すんで、そこんところもね。
https://www.jccca.org/global_warming/knowledge/kno...
とまれ、大臣として行っているんで、個人の進次郎で行ってるんじゃないからね。
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