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2019年12月26日 (木)

北朝鮮の潜在的最大脅威は中国だ

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正恩がクリスマスプレゼントをするぞなんて吹いたもんで、まさかねとは思いつつ気にはしていました。
結局は、正恩サンタは現れなかったみたいですが、長距離弾道ミサイル用と見られるロケットエンジンのテストをしました。
これだけでじゅうぶんに国連制裁決議違反ですので、制裁強化をする口実になりえます。

そもそも12月22日はクリスマスプレゼントどころか、2017年12月の国連制裁決議の目玉まであった「収入を得ているすべての北朝鮮労働者の送還」を求めたタイムリミットでした。
中国はカエルのツラになんとやらといった風情で、シャラっとこのタイムリミットを無視しました。

「北朝鮮の核やミサイル開発の資金源を断つため、国連は制裁決議で各国に対し、22日までに北朝鮮の労働者を送還するように求めています。ただ、北朝鮮の友好国・中国では依然として多くの労働者がとどまっていて、北朝鮮の外貨獲得を黙認する形になっています」(NHK12月22日)
「北京の外交筋は「中国の決議履行状況は各国の外交官やメディアが見ている。米国を刺激するような明白な決議違反はないだろう」と話す。実際、中国政府は労働ビザの新規発給や更新を止めたとみられる。だが中国政府の強調する決議順守が形式的で、北朝鮮の資金源遮断までは踏み込んでいないフシがある」(東京12月22日)

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東京新聞

東京の記事にあるようにおそらく中国はビザの新規発給・更新はしないものの、現に働いている北の労働者にたいしては黙認するかまえのようです。
また今までとは別枠で「実習生」名目での受け入れを盛んにしているようです。

北朝鮮から海外に渡って働く労働者は約10万ともいわれ、米国務省の推定では中国で5万人、全世界で十万人の北朝鮮労働者が年約550億円規模のカネを稼いでいます。
わかりきったことですが、これこそが北にとって最大の資金源で、ポンポン撃っている弾道ミサイルの資金源はこれです。
したがってこのパイプを遮断せぬかきり、北は今後もクリスマスプレゼント作りに精出せるという仕掛けです。

中国は北を本気で干上がらせる気はありません。国連制裁を遵守しないどころか、むしろ制裁を緩めて北との「貿易往来の強化」をしろとまで公然と言い出す有り様です。

「すでに中朝両政府は労働者の送還期限後を見据えて協議しているとみられる。六月に習近平国家主席が初訪朝して金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談し、経済や民生分野での交流促進を確認して以降、訪朝した中国高官は「人員と貿易往来の強化」(遼寧省政府トップ)や「領事交流の促進」(外務次官)などについて口々に言及する。
 十六日には中国はロシアとともに、北朝鮮への制裁緩和を求める決議案を安保理各国に配布した。北朝鮮労働者の送還撤回も含まれる」(東京前掲)

一方、ロシアは国連制裁を守る方向で既に動いています。

「ロシアにはおととし12月の時点で3万人余りの北朝鮮の労働者が登録され、人口の少ない極東地域を中心に建設業や農林水産業の現場で働いていました。
しかし、国連の制裁決議が採択されるとロシアは順守する姿勢を示し、去年12月の時点では1万1500人ほどに減り、ことし3月の時点では4000人ほどにまで減ったと見られています。今月に入るとウラジオストク空港とピョンヤンの空港を結ぶ便が大幅に増便され、連日、多くの荷物を抱えた北朝鮮労働者が帰国していました。
北朝鮮の労働者が帰国した影響で、ウラジオストクでは中央アジアや東南アジアなど別の国の労働者を代わりに雇い始めた現場や一時的に建設が止まった現場もあるということです」(NHK前掲)

このように中露で温度差が出たのはなぜでしょうか?よくある通俗的解説はこのようなものです。

「北朝鮮が対米交渉の期限を年末に指定して挑発を強める中、中国は北朝鮮の後ろ盾として振る舞い、米国への外交カードとする狙いもあるとみられる」(東京前掲)

違うでしょうね。
北と首脳間交渉が成立している以上、中国に借りを作ってまで口ききをしてもらう必要はありません。
むしろ米国は中国の制裁のザル状況を熟知しており、北労働者の送還決議を守らない中国に対して国防権限法などを使って制裁できてしまいます。
つまり北への圧力は中国の手にはなく、いまや米国の中国に向けたカードに転化しているのです。

中国が北に甘い最大の理由は、ダイレクトに核ミサイルで中国中枢を狙えるからです。
北の弾道ミサイル実験は、常に地球の自転方向に打ち上げて日本海に落とすというパターンのために、逆向きの西にも撃てるたことをつい忘れがちですが、発射地点から射程の円を描いてみればすぐにわかります。
中国の首都北京、北方艦隊の拠点青島、工業の拠点天津などはすっぽりと北の核ミサイルの射程内にあります。

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読売

ちなみに北の弾道ミサイルはこのようなものですが、ほぼすべての弾道ミサイルが中国を射程に納め、かつ、核兵器を搭載可能であることがお分かりになるとおもいます。
しかも中距離弾道ミサイルがこのような目と鼻の先で発射された場合、日米のMD(ミサイルディフェンス)ですら迎撃が困難でしょう。
ましてMDを一切持たない中国にとって、北の弾道ミサイルこそがもっともリアルなリスクなのです。

KN-02 短距離(SRBM) 射程160km
スカッド(C,ER)「火星」短距離(SRBM) 射程500km
ノドン「木星or火星7号」準中距離(MRBM) 射程1300km
テポドン1号「白頭山1号」中距離(MRBM) 射程2000km TEL(移動型)
ムスダン「?」中距離(MRBM) 射程3000km TEL(移動型)
テポドン2号「銀河2号,3号」大陸間(ICBM) 射程6700km 地下サイロ発射型
KN-08「?」 大陸間(ICBM) 射程6000-9000km TEL(移動型)
テポドン2B号 大陸間(ICBM) 射程8000km?

北朝鮮の立場になってかんがえれば決して不自然ではありません。
北は陸続きで中露と接しています。

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実際に、中国は朝鮮戦争時には当初前線に投入された部隊だけで20万人、後方待機部隊を含めると100万人に達する中国正規軍を北に送り込みました。
下の写真は鴨緑江を歩いて渡河する中国軍ですが、このように容易に北を陸上から大規模な地上軍で侵攻できるのは、世界広しといえど中国しか存在しません。

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Wikipedia

これがいかに北にとって悪夢なのか、彼らの立場になればわかるはずです。
朝鮮戦争のみならず、現代においても中国は常に北中枢内部に親中派を扶植して、金王朝の交代を画策していると正恩は思っています。
金王朝は中国派(延安派)との残忍な党内闘争に勝ち抜いて成立したものです。
金日成は満州派でしたが、当初党内でもっとも強力で軍にも強い力を持っていたのが延安派でした。
彼らは満州で日本軍から逃げていただけの経験しかない金日成たちとは異なり、国共内戦を経験した猛者揃いでした。
延安派は個人崇拝で権力を固めようとする金日成を批判し主導権を握ろうとしますが、逆に根こそぎ粛清されてしまいます。
つまり、金王朝は中国の影響力と戦って生まれた政権なのです。

「朝鮮戦争の時点で、すでに朝鮮労働党に対抗しうる政党は存在しませんでした。朝鮮戦争停戦後に注目すべきなのは、労働党内部の派閥闘争の激化です。南労党派の一掃後も、延安派、ソ連派は存在しました。スターリンの死後、ソ連でスターリン批判が始まったことで、延安派・ソ連派は金日成批判を始めます。これでいっきに対立が深まりました。
金日成は粛清を行いましたが、ソ連や中国の介入があり、粛清には時間がかかりました。延安派は中国の、ソ連派はソ連の影響力がありましたから、両国は彼らを救おうとしたわけです。金日成はこれを跳ね除け、徐々に有利な状況を作りだし、最終的に両派を一掃します。1960年には満州派による朝鮮労働党の支配体制が確立しました」」
北朝鮮の独裁的な軍事体制はなぜ崩壊しないのか 宮本悟×荻上チキ

いまでも北は、中国との物資のやりとりを通じて党内に多くの中国派を抱え込んでいます。
彼らの頭目がチャン・ソンテク(張成沢)という正恩の叔父にして事実上の北のナンバー2でした。 
チャンを粛清するに当たっては、わざわざ党大会当日を選び、幹部たちの目前で連行し、わずか4日後に党幹部の前で機関砲でバラバラにして、死体は犬の餌にされました。 
チャンは部下であった2人の男の処刑台の横に座らされ、20ミリ機関銃で処刑された部下の大量の肉片と血がチャンの頭から降り注いだそうです。
チャンは気絶し、蘇生させられてから、彼自身が処刑台に据えられたそうです。

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彼をこんな残虐なやり方で抹殺したのは、新王が権力を掌握したことを臣民に知らしめ、中国にへつらう奴らは皆殺しだと宣言するためでした。
まさに古代王朝の粛清劇のような惨劇が展開されたといいます。
処刑はチャンの党と軍の部下たちだけにとどまらず、中華文化圏特有の九族に及びました。
 
九族とは直系の九親等をさしますが、現実には関わった多くの人たちをも巻き込んだ大粛清劇であるのが一般的です。 

チャンの姉と夫のチョン・ヨンジン(全英鎮)駐キューバ大使、甥のチャン・ヨンチョル(張勇哲)駐マレーシア大使、及び彼の20代の息子2人も、ピョンヤンに召還されて相次いで処刑されています。 
また、チャンの2人の兄(故人)の息子や娘、孫まで探し出して処刑するという徹底ぶりです。 

逆に仮にこのチャンのクーデターが成功していた場合、正恩派との内戦になり、チャンは当然中国軍に平和維持軍の名目での介入を要請するでしょう。
金王朝はその場合文字通り跡形もなく消滅しますが、崩壊する可能性はこのクーデターによる中国軍介入のシナリオだけしか私には思いつきません。
したがって北にとっての潜在的脅威のナンバーワンは遠く離れて地続きでもない米国ではなく、ダントツトップが中国、次いでロシアなのです。

このことは米国もよく分かっているし、中国はなおさらリアルに理解しています。
ですから生かさず殺さず世界最貧国のまま、韓国との干渉地帯となってくれている今がもっともいいのです。

このように考えてくるとなぜ中国がほんとうに北を絞め殺してしまうことになりかねない労働者送還をネグレクトし、むしろ「中朝貿易を活発にする」と言い出しているのか分かると思います。

 

 

 

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コメント

確か先代の金正日になったばかりの頃には、親ロシア派でハニトラに掛かってロシアに情報流していたヤツが見つかって、親ロ派も徹底的に粛清してるんですよね。。

正恩は中共を蛇蝎のように嫌ってますね。正日の遺言は「中国を信用するな」でした。習近平の前でメモを取るしぐさとか、乾坤一擲の演出だったと思います。

一方、鄧小平の頃と違って、経済成長した中国は北の中距離ミサイルに相当ブルってるでしょう。心底、恨みを買ってると理解してますし。

正恩は半島からの米軍撤退を必ずしも強く要請しなかったし、中共がいうような六か国協議も指向していないようです。
トランプさんはトランプさんで、北の短・中距離ミサイルをあえて問題視しない動きもありました。

私は正恩のクリスマスプレゼントは、延坪島事件のように韓国に犠牲が出る事になるのじゃないかと思いましたが、米国との関係をご破算にする愚をやりませんでした。

これからどうなるのか全然予想がつきませんが、韓国だけが宙に浮いている感じのまま推移してます。
だれも戦争状態は望んでいないでしょうが、韓国が腹を決めないと混乱が続くと思います。

北がアメリカの核の傘に入る、なんてウルトラC説がありますが、これはこれで一番丸く収まるんじゃなかろうかと私の中で妄想しております。
かの徳川慶喜公の如く、身の安全と引き換えに金王朝は終わりますが、米の傀儡民主国家&在北朝鮮米軍が実現し、北と南が同盟後、アメリカによる高麗共和国の成立なぁんて、難民の発生も抑えられる、夢のような話だけど、実際は中露北朝鮮連合軍vs米朝革命軍による第二次朝鮮戦争でもっと混沌と化すかな。
年末くらい、いい夢みたいものです。

すみません。 まだよくわかりません。 徹底的なアンチ中国で蛇蝎のように中国を嫌っているだけでなく、直接的に北京への核の脅威になっている北朝鮮をなぜ絞殺さないのか? ブログの説明記事では納得できないのですが。 

>中国軍・・・介入・・・金王朝はその場合文字通り跡形もなく消滅します……したがって北にとっての潜在的脅威のナンバーワンは・・・ダントツトップが中国・・・なのです。

はい、中国が北にとって一番の脅威であることはわかりました。 そして北朝鮮の核が北京にとっても脅威であることも最初の説明でわかりました。

だったらなぜ↓のような結論になるのですか?

>ですから生かさず殺さず世界最貧国のまま、韓国との干渉地帯となってくれている今が(中国にとってーですよね?)もっともいいのです。

論理的な結論になってないと思うのですが。 金王朝が中国寄りの国であり、その核が北京への脅威でないならば韓国との緩衝地帯であることにメリットが大ですが、 自国を恨んでいるだけでなく現実の脅威となっている北を支援する理由がどこにあるのかブログの説明ではよくわからないのですが?  


つまりこういうことですか? 

中国を大嫌いな北をもし怒らせて自分(中国)と戦争にでもなったら、あるいは金王朝政権の転覆を下手に画策して失敗でもしたら(万が一)核が飛んくるかもしれない。 

そんなことにでもなったら大事なので、触らぬ神に祟りなしでそっとしておこう。 わがままも聞いてある程度の面倒はみてやろう。

そうして今の貧乏な状態のままいつまでもそこにいて(韓国と対峙)くれれば御の字だと。

ーそういうことですか?

「とおりすがりのおっさん」様。
記事でお答えします。

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