山路敬介氏寄稿 応募工問題は国際司法裁判所で決着を その1
応募工問題は国際司法裁判所で決着を ~橋下徹氏らの言説から~
山路敬介
最近の韓国の反日政策や言動は多くの日本人の理解はもちろん、日本人の寛容的精神の枠をこえています。エスカレートする何かに取りつかれたような際限のない反日、それらが韓国民自身の安全や国民経済を犠牲にしてまで行なわれる幾多の不合理を我々は見ています。
当然の事のように破られる国際約束や法的枠組みを逸脱する在り様は、もはや驚きや怒りを通り越して、多くの日本人をして逆に冷静な観察眼と集中力をもたらせている結果になっているようです。
ところで今の韓国政府の反日的政策はこれまでの要求型と違い、ねらいは「挑発」そのものにあるようです。反日種族主義の中で朱益鍾教授は「問題を利用して、韓日関係を破綻させるのが目的」(P323)とし、その真意を「韓・米・日の協力体制を崩す事」としています。
少なくも被害者第一主義だとか、いわゆる正義の実行という格好のよい表面的な動機ではない事は、もはや誰の目にも明らかでしょう。
ゆえに、もし日本側が節を曲げていったん譲歩したとしても、それで何か根本的な解決が出来るといった事はありません。一方、後にあげる橋下氏案のような過剰な攻撃的反応はさけるべきで、それでも国際社会の理解を得つつ、毅然とした対応が求められるところです。
このような場合、現段階では「ていねいな無視」対応こそが距離感を整えるだけでなく、理性的な対応のための唯一の方法論だと思います。
日本政府は挑発に乗らずにいかに韓国を国際舞台にのせるか、国際司法の場に引き出せるか、そういう意志を強く持って臨んでいるものと思われます。
しかし、それには日米だけでなく難物の中国の協力も必要かも知れません。そこにも陥穽がひそんでいる可能性もありますが、とりまく状況は日本側にとって悪くはないと考えます。
鈴置高史氏は、文政権ら進歩派の描く未来像を朝鮮半島だけでなく、中国東北部まで含めた朝鮮民族の勃興を図る「大コリア構想」とも見ていて、「南北融和」はそのための「国民への言葉を変えたメッセージ」と言います。
到底達成不可能だし、ただのファンタジックな妄想を相手にしているだけのようですが、非常に平仄が合う洞察だと思います。
韓国人好みのストーリー性もあります。「北は核を持ち、南はその為の潜水艦を作る。現実に軍事費は飛躍的にのび、済州島には「対日用」とわざわざ断り付きの仮装をして空軍基地を作ろうとしている」とは、統一を見据えた場合には現実味があるのではないでしょうか。
日本ではちっとも報道されませんが、たとえば百済や高句麗史の帰属をめぐる問題、渤海國の歴史理解など、中国との領土問題に発展しかねない歴史認識軋轢を韓国は複数かかえています。そのほとんどが中国側の認識が正しいように思いますが、歴史を政治目的に歪曲する中共なればこその鋭敏な反応も示しています。
歴史上、東アジア地域のガンは常に朝鮮半島でした。日本の歴史家はよく「朝鮮半島は大国に翻弄されてきた」と言いたがりますが、「朝鮮は常に大国間の火種となって来た」と理解した方が真実に近いです。そうした点は中国も理解しているようにみえます。
韓国の反日の原因は教育によるところが大きく、それも80年代から激しくなっています。これから反日は縮小していく見込みはなく、逆に増大していくでしょう。
西岡力氏や韓国保守派の洪榮氏が「病根は文在寅」というのは、当座の問題にすぎません。反日は韓国政権の左右にかかわらず、国家の正当性に関わるイデオロギーなので、これからは韓国と適切な距離を保つ事に留意する時代になると思います。
また、韓国の政治状況からみて、自由韓国党など保守陣営が次の国政選挙や大統領選に勝つ見込みは今のところありません。それ以前に保守が一本にまとまる事が困難でしょう。
文政権は憲法の自由民主主義から「自由」の文言をはずす事には失敗しましたが、あきらめたワケではありません。経済崩壊など、なにか決定的な事がないかぎり進歩に有利な選挙制度改革が行われ、検察改革にことよせて高位公職者捜査処のようなゲシュタポ法も成立して民主独裁が決定的になるでしょう。
前置きが長くなりました。応募工問題に関して、河村建夫氏はじめ親韓派御推奨の文喜相議長案についてですが、12/3の外交防衛委員会における外務省答弁では、「韓国の国際法違反の状態を是正することにはならない。解決策にはならないことから受け入れられない」と述べています。めずらしく曖昧さのない良い答弁でした。
また、韓国は12/24の日韓首脳会談で日本の輸出管理強化が解かれるがごとくのストーリーを展開し、例によって朝・毎などがそれに同調する報道をしています。ですが、そのようなプレゼントはあり得ません。韓国のキャッチオール規制には法的根拠がないままなので、日本政府としては対話以上どうしようもありません。部分合意であるとか前向きな対話を続ける、といったところで終わるでしょう。
一方、韓国側の主張によれば40日とか一か月との期限を切った条件付GSOMIA暫定延長との事ですが、再破棄など出来ようはずがありません。もともと米国の圧力に屈して破棄方針を覆したのですから、そのような事態はおよそ想像も出来ません。
アベマTVでの対談などによれば、橋下徹氏はGSOMIA延長は日本の輸出管理強化の解除とバーターだったと捉えているようで、かつ日本の輸出管理強化は「徴用工問題」への報復だったとしています。
そのうえで今回の会談で旧ホワイト国復帰や三品目の管理強化が解除されざるを得なく、最初から報復だと宣言しなかった点で日本は貴重なカードを失なったとしています。
橋下さんは弁護士らしく法的知識を駆使した切れ味の鋭い保守派の論客と見られがちですが、どうも言っている事に一貫性がなく、認識的にも論理的にも破綻するケースが多いようです。
今回は主に出来るだけ「応募工問題」にしぼって、この橋下氏の言論をガイド役にして「国際司法裁判所でも日本側が不利」という言論や、石破茂氏のいい加減な言論など考察して行きたいと思います。
なお、今回の三品目の輸出管理強化やホワイト国除外が日本側からなされたのは、タイミング的に「応募工問題の報復」と言った指摘は橋下氏だけでなく、木村太郎氏も言っております。その根拠は「タイミング」しかないのですが、一方で応募工問題などで信頼関係が損なわれて来た事も根本要因としてあります。
私の推測ではありますが、これはやはり日米共同作業でしょう。少なくもしっかりした意思疎通のうえでの措置です。最近の米国の方針を見ていると、安全保障に関わる物品の輸出に非常な神経を砕いています。
上念司氏は、ココム(対共産圏輸出規制)のような政策もあり得るのではないか、としています。そのような中、機微物品の行方も調査出来ないような韓国への管理強化は当然としても、そういう流れを受けた政策であったのではないでしょうか。
(つづく)
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応募校問題は徴用工問題の間違いですか?
投稿: さばっち | 2019年12月20日 (金) 17時30分
徴用工ではなくて、実態は、応募してきた朝鮮人がほとんどであったことから応募工としたものでしょう。
投稿: ueyonabaru | 2019年12月20日 (金) 18時53分
さばっち さん
呼称にさしてこだわりはないですが、先の大法院判決の原告の中には一人も徴用令で日本で働いた人はいません。
政府は旧朝鮮半島出身労働者問題とか言ってますが、それだと長すぎるので、応募で来たのだから「応募工」といってます。
投稿: 山路 敬介 | 2019年12月20日 (金) 21時19分
ueyonabaruさん
ありがとうございます。納得できました。
投稿: さばっち | 2019年12月20日 (金) 21時40分
山路さんもありがとうございます。
投稿: さばっち | 2019年12月20日 (金) 21時44分
さばっちさん。いわゆる「徴用工」という韓国の表現には裏があります。
あの国は儒教国家らしく名分(絶対正義)を常に必要とする国です。
かつては勤労動員の少女を強制的に兵隊用娼婦にしたという虚構の大義名分をつくりだすために、「従軍慰安婦」という言い方を使いました。
この「従軍」は元来日本作家が使ったのが由来ですが、当時はありませんでした。
それを勤労動員が全員「従軍慰安婦」にされたというトンデモ歴史を贋造するために、こういう言い方をしたのです。
ちなみに韓国が20万人の朝鮮女性が強制連行されたというのは、この勤労動員の数を使っています。ついでに12歳の少女までもが、というのも一緒です。
この「応募工」も同じことで、戦争当時の日本が強制的に朝鮮人労働者を「徴用」し過酷な奴隷労働に従事させたという虚構をつくるためにこの「徴用工」という表現を使っています。
本来は山路さんが述べられているように、ただの「応募工」にすぎませんし、今回提訴したひとたち全員が応募工です。
この被告たちは、徴用が実施される以前に、自分の意志で当時「内地」と呼ばれた日本に渡航しています。
被告らは募集に応じて面接を受けたと言っていますから、このどこが強制動員なのでしょうか。
実はこの被告たちが渡航した時期は、条件のいい内地に密入国してでも行きたい者たちが溢れていた時期で、強制どころか行けてラッキーの時代だったのです。
まったくの自由意志によるいわば「就職」だったわけで、そこに強制性の要素はひとかけらもありません。
だから山路さんがそうしたように「応募工」と呼ぶのが正しいのです。
これは本来は歴史認識といった高級な領域ではなく、第一歩の歴史の概念既定にすぎません。
(ちなみにあの国にはまともな歴史学がない国です。国語を全部ハングルにしてしまった結果、漢字文書が読めなくなってしまったらです)
第一歩から韓国は狂っているので、初めのボタンを掛け違うと最後にはしまらなくなるのです。
ところがこれでは日本を訴えられません。無理やり被害者ヅラをせねば賠償金がとれません。
そこで彼らは自らの支援組織名称を「抗日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会」(長い)としたように、自由渡航した労働者ではなく、あくまでも強制動員の犠牲者だということにしたのです。
これを受けて韓国最高裁は判決で「強制徴用」という言葉を6回、「強制動員」にいたっては実に70回も景気よく散りばめています。
韓国は官斡旋や募集工員までも全員がすべて「強制動員」「強制徴用」としたいのです。
ですから、私も自分の記事では「徴用工」裁判とカッコをつけて「いわゆる」という意味を付与しています。
いちいち面倒ですが、政府・司法までも挙げて反日に狂奔している以上、いたしかたありません。
ほんとうに煩わしい限りですが、あの国は慰安婦にしても、「徴用工」にしても、常に本来の意味から離れた恣意的な意味転換を行って政治的用語にしてしまうところなので、用語にも気を使わねばないというわけです。
投稿: 管理人 | 2019年12月21日 (土) 02時53分