日韓首脳会談があってもなにも変わらない
結果は既に見えていますが、とりあえずおめでとうね、と言ってやったほうがいいのかな。
「文在寅(ムン・ジェイン)大統領と安倍晋三首相が24日、中国成都で首脳会談を行うと、韓国の青瓦台(チョンワデ、大統領府)が20日発表した。今回の韓日首脳会談は成都で開催される韓日中首脳会談を機に行われる。
青瓦台の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長はこの日の会見でこのような日程を説明した後、「15カ月ぶりに開催される2国間の首脳会談であり、これまでの厳しい両国関係を考えると開催自体に大きな意味があるといえる」と述べた」(中央日報12月20日)
せっかく喜んでいるのにナンですが、ないない。
事実上の青瓦台のナンバー2、あのシルバーヘア(白髪と呼ぶな)が美しいカン・ギョンファ外相を押し退けて外交関係はこの男が仕切っています。
「金次長は「われわれは米国と十分に意思疎通・協議し、米国はこれに対して希望通り延長されなかったことに失望したと考えている」としながら、「だが重要なのは、この機会が韓米同盟関係をさらに一段階アップグレードできるきっかけになることだ」と述べた」(韓国聯合ニュース8月23日)
今回の日韓首脳会談は「進展のモメンタム」になるかといえば、その可能性はかぎりなくゼロです。
こんな分析をキムが政府に伝えるものだから、当該の産業通商資源相ソン・ユンモ(成允模)までもが、12月22日「日本の輸出管理が一部見直されただけでは不十分」と記者に語ったというニュースが伝わってきました。
「韓国の成允模産業通商資源相は22日、日本の経産省が20日に韓国向けの半導体材料の輸出管理の一部を見直したことについて、次のような認識を示した。
成允模産業通商資源相「日本の措置で若干の進展があったと評価されるが、輸出規制の根本的な問題解決には不十分だ」また、成氏は「7月前の状態への回復とホワイト国への復帰が本質的な要求事項だ」とした上で、「実質的な対話の進展を期待し最善を尽くす」と述べた。
午後、中国・北京で行われる日中韓の貿易担当相会議に梶山経産相と成氏も出席する予定」(日テレ12月22日)
http://www.news24.jp/articles/2019/12/22/10566403.html
「日本の措置で若干の進展があった」ということはなにを捉えて言っているのかといえば、現在輸出規制管理が強化されたレジストの輸出審査方式が、「個別審査」から「特定包括許可」になったということだけの話です。
これを「規制緩和したぞ、日本は折れてきている」と韓国はとったわけです。
「ホワイト国」から落ちて一回ずつ審査することになったのですが、これだと日本側の事務手続きが膨大になってしまうのです。
経済産業省からしても、一回の取引について多くの人員を割いて審査していたら、事務手続きが遅滞する一方です。
別に日本は貿易管理を透明性をもってやってくれと言っているだけで、遅らせることに意味をもたせているわけではないのです。
わが国は淡々と事務処理しているだけで、どこかの国と違ってイヤガラセに国をかけていませんからね。
そのかわり、抜き打ち検査をしたり、予告なしの文書提出などは要求するからね、ということです。
そこで違反事項が見つかれば、元の個別審査に戻して締めていく、ということになります。
あくまでも決定するのは日本ですし、日本からの要求にまともに答えているとは言えない韓国からとやかく言われても困ります。
「(3年半ぶりに日韓の輸出管理を巡る対話) で、日本側にはどうしても押さえておきたい点が2つあった。
第1は、先般の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)延長問題と輸出管理の問題をリンクさせず、輸出管理の世界だけで完結させること。
第2は、輸出管理の運用は各国が自分で判断して決めることで、相手国と交渉するのはなじまないことだ」
細川氏が述べているように、あくまで輸出管理の主権は当該国にあります。
韓国は今まで杜撰な審査方法で、日本から兵器転用な可能な物質が韓国に輸出された後、忽然と消えて中東の国に現れ、それから転売されてイランに渡ったと見られる案件が複数あります。
どうやら、韓国はイランと原油と大量破壊兵器の素材を交換していたらしいという疑惑すら もたれています。
そしてどうやら、イランは再び核兵器を持つつもりのようです。
ですから、日本は核兵器を持とうとする国、イランや北朝鮮に対して、その素材となるような3品目に関しては「輸出管理規制」をするとしたのです。
これを日本のメディアは短絡して「禁輸」と捉えてしまいました。
しかも「徴用工裁判への報復」という勝手な憶測までつけて報じたために、韓国が日本製品不買からGSOMIA廃棄騒動まで引き起こし、韓国の安全保障体制に大きな打撃を与えてしまったわけです。
「徴用工」裁判はただの「背景」にすぎません。
毎度のことながら罪深いことよ、日本メディア。
ですから輸出禁止するしないといった大げさな次元の話ではなく、一定の輸出手続きの基準を満たしているかどうかを審査するというだけの手続き上の問題だったのです。
貿易管理部門を強化するなり、文書構築を締め直すなりすれば対応できるいわば技術的問題にすぎなかったものを、わざわざwtoに貞操するぞとやってみたり、米国に泣きついてみたりしたあげくが「ええい、安全保障上の理由って言うんなら、GSOMIAを廃棄してやる」ですから、まるで子供の自傷行為です。
いまでもテレビで「輸出規制」なんて平気で言っているコメンテーターかいますから、おさらいしておきましょう。
たとえば日本には多くの航空会社が乗り入れていますが、ある特定の国に向けて渡航禁止を政府が命じることが、この「輸出規制」です。
一方「輸出管理」とは、搭乗手続における手荷物検査やパスポート審査などのセキュリティ強化のことです。
今まで日本は、韓国に対して「ホワイト国」、つまりイミグレなし国待遇としていたのですが、あまりに輸出管理が杜撰で大量破壊兵器を作る材料をアブナイ国に流している疑いが濃厚だったので、これを止めて普通の国と同じような輸出管理をしますよ、というただこれだけのことです。
なんせ3年以上も、経済産業省が韓国に対して輸出管理について話あいましょう、文書を見せて下さいとお願いしても、答えひとつ寄越さなかったんですからね。
それをいまになって、協議しろはないもんです。
一方、韓国は日本が徴用工判決に対して報復しているという間違った理解がベースにあるために、米国にすがろうとしました。
米国は冷やかな対応をとりました。そりゃそうです、当該国の内政に当たる輸出管理をどうのこうの言われても困るし、そもそも日本側の考えは事前に米国へ伝えてあったからです。
この日本の輸出管理規制は中国、イラン、北朝鮮などの大量破壊兵器を製造している国に対して向けられているワッセナー・アレンジメントを根拠にしています。
ワッセナー・アレンジメントを作った国こそ、他ならぬ米国です。
ですから、これを根拠に「ホワイト国」から通常国にした日本の措置をもっともよく理解して支持していたのは米国なのです。
https://slidesplayer.net/slide/11345001/
このワッセナー・アレンジメントは多国間の紳士協定でしたが、米国はそれでは不十分と見て作ったのが、さらに強力な輸出管理規制でした。
たとえば2019年に作られた国防権限法(NDAA)や米国輸出管理改革法(ECRA によって、米国はいままでの武器類だけではなく、その部品、製造機械、関連技術、AIなどまで含んだ輸出管理規制措置が取れることになりました。
ファーウェイへの強い輸出管理規制がこれに相当します。
このような米国の輸出管理規制と、日本が韓国へとった輸出管理規制はまったく同根同質です。
したがって、米国へすがった韓国がすげなくされるのはあたりまえすぎるほどあたりまえだったのです。
では今回の首脳会談はどうなるでしょうか。わかりきっています。
韓国は人治の国で、しかも米国大統領を凌ぐ権限を持つと言われる韓国大統領と、日本の首相を混同しています。
わが国には、当該大臣の頭越しに輸出管理規制緩和を命じる権限は首相にありませんから、首脳会談でどうのこうのということ自体がお門違いです。
しかも最新の世論調査でも7割の国民が輸出管理規制強化に賛成しているのに、今そんなことを首相がやったらブーイングの嵐でしょうね。
とまれ韓国があくまでも「ホワイト国」に復帰するのが悲願ならば、細川氏が指摘するようなことをすればよいだけのことです。
「もちろんこの場で措置撤回の要請をするのは韓国の勝手だ。しかしあくまでボールは韓国にあることを忘れてはならない。韓国が輸出管理の問題を改善しない限り、何も事態は変わらない。
いわゆる「ホワイト国」に戻るために指摘されているのは、韓国政府の輸出管理の審査担当者の数が極端に少なく、体制が脆弱である点だ。他国と比べた場合の法制度の不備も指摘されている。こうした指摘に対して、韓国も人員を5割増やして拡充するという。良い方向に向かっていることは確かだ。
しかし単に審査の人数を増やせばいいのではない。審査には専門知識が必要で、素人がすぐにできるものではない。しかも韓国では本省の役人はわずかで、外郭団体や他省庁の多くの人員が含まれている。はたしてそれで輸出品の最終用途の確認など、機微な審査まできしっかりとできるようになるのか。法制度も不備を直して実効的になることが大事だ」(細川前掲)
細川氏が述べるように、「輸出管理の世界で完結するべき」で、「輸出管理は交渉で決めるものではない」のです。
※冬になりましたので、模様替えをしました。寒そうかな。
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もうねえ、なんというか。。
前日までの山路さんの寄稿記事も含めて、
いったい韓国って「何が言いたいんだ!?」と。
今朝も国営放送でムン・ヒサンの提言がどうとかと延々とやってましたけど(韓国の若者への街頭インタビューとか)・・・全く論外です。
つくづく教育って大切だなぁ!と思わされました。
投稿: 山形 | 2019年12月24日 (火) 10時12分
局長級対話はうまくいったようですね。
というか、輸出管理に対する「認識の基本線」を互いに確認出来た事が収穫でした。ですけど、輸出管理は国家の主権行為である、というような当たり前の事を一から確認し合わなくてはならないという事自体が絶望的のように思えます。
韓国側は、一見、難解に見える共同発表文のすり合わせの方に時間をかけたようで、それがそっくり延長時間分になったとか。
当局レベルでは今回の確認事項に齟齬がない状態にスムーズに至ったわけですが、「それじゃ、この三年半の韓国側の対話無視は何だったの?」という疑問はむしろ深まります。
これで青瓦台と韓国貿易当局の間にくさびを打った形になるのですが、報道はキチンと伝えないですよね。特に韓国国内では。
マウントを取る事だけに血道をあげていたわけではないだろうに、山形さんじゃないが「一体、なにがしたかったの?」って事ですね。
しかし、日本国内で「徴用工の報復だ」と言う考えに染まっていた連中は、こういう流れを絶対理解できないんだろうなと思います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年12月24日 (火) 15時35分
一抹の不安は、外務省やらの一部不良ヤクニンが「もう面倒だわ、
ヤツら(朝鮮)の云う事を受け入れようぜ、仕事量が増えてかなわん
わ、楽して儲かって身分保障されて最後に天下り出来るというから
ヤクニンになったのに、これじゃーかなわんわい」と、結局は過去の
過ちの上塗りをしてしまうことです。内部の敵もコワイですわ。
投稿: アホンダラ1号 | 2019年12月24日 (火) 23時00分