山路敬介寄稿 応募工問題は国際司法裁判所で決着をその4
応募工問題は国際司法裁判所で決着を ~橋下徹氏らの言説から~
山路敬介
■ 実は韓国側には請求するものなど無かった請求権協
韓国とは何でしょうか? どのような出自で生まれた国か、日本人はそうした経緯を正しく理解する必要があると思います。言うまでもなく、朝鮮半島は1945年まで日本国の領土でした。日本の敗戦にともない、単に「日本から分離独立した地域」というのが国際法上の位置づけです。
この事は非常に重要で、つまり、もちろん「戦勝国」ではありませんし、植民地被害国というような位置づけでもないのです。もともと国際法や国際関係に植民地被害に対する賠償というような慣習法はなく、しかも連合国がそう規定したのは当然で、当時の朝鮮半島には植民地解放運動など気運もなく、内鮮一体となって日本の戦争遂行に一致協力体制が増進していた事実のとおりの判断でした。
よく話に出て来る上海臨時政府などというものもあるにはありましたが、数十人規模の覚束ないもので、内紛ばかり起こしている銭ゲバ集団にすぎませんでした。李承晩など目先が効いた方で、いち早く袂を分かってハワイに逃げましたから利口なものです。もちろん、こういった匪賊集団が国際社会の認知を受けられるはずはなく、当の国民党政府ですらも認めていません。
余談ですが、この上海独立臨時政府なるものは、1944年に国民党から三民主義を採用するように求められています。財政は中国丸抱えで、軍隊は中国軍の一部となり、国是まで中国と共有する手はずでした。韓国憲法では、このようなものの法統をついだのが現在の韓国だというのです。
この「日本国から分離独立した地域」という地位こそが、請求権協定の枠組みを決めました。
ですから、康京和外相ら韓国外務省が「我が国はサンフランシスコ平和条約に参加していないので、その取り決めは関係がない」と言ったところで、これは空しい響きにしかなりません。
もちろん、当時の李承晩政権はこのような枠組みや流れは承知していたので、被害賠償ではなく、財産返還に対する請求を計画しました。それが「八項目の要求」というものです。しかし、それも詐欺的欺瞞に満ちていて、金・銀を返せと言っても、そいうものは日本との商行為の対価であったので、当然に認められるところとなりませんでした。
そうした中で日本政府も最初から算定に含めて認めたのが、被徴用者未収金や補償金でした。それに細々したものを足して7000万ドルが上限の提示額となったのです。(それを今になって再度よこせと言っているのですから、お笑いです)
しかし、それでは十数年続いた交渉でもあり韓国側も国民の手前、困ってしまいます。日本としては54億ドルにも上る在韓資産を米軍に放棄させられているので、それ以上に情を出す必要もないのですが、今後の事もあるのでやむなく経済協力金として無償3億ドルと有償2億ドルを与え、韓国側は請求権資金を受け取るというカタチにしました。
計5億ドルとは、そういう性質の金なので、池田信夫氏などは「つかみ金」(ゆえのない金)と言ってさげすむのです。
■ 35年で5億ドル? フィリピンは三年で5億5千万ではないか。
これも良く聞く韓国人の戯言ですが、韓国は35年間占領されて5億ドルにすぎず、フィリピンなど三年程度の占領で5億5千万も賠償された、というものです。
上で述べましたように、もともと韓国に賠償というようなものを支払う理由はありませんし、フィリピンの場合は戦争の賠償金です。日本は朝鮮半島を軍事占領していたわけではなく、合意のもとに批准・調印された正式な条約で併合していたのです。当時の国際社会もこれを認めています。
当時の韓国では天候不順で多数の餓死者が出たりして、100万人の日韓合邦嘆願書が出たりしていました。寄らば大樹じゃないですが、そいういうようなものだったでしょう。
■ 結語
平和条約の締結の前提には、それまでの両国間の過去一切の行きがかり、問題点がすべて解決したとするのが国際法の常識です。ですから、韓国大法院のいうように「植民地清算がまだだ」とか、「これは別口だ」と言うような主張は通用しないのです。
唯一例外はナチスの蛮行のように民族撲滅を企図したようなケースだけですが、たとえ人民の死傷や財産の損害を招来したケースであっても、そのような例をナチスの場合と同じように例外的に見る国際慣習法は今のところ成立していません。
国際法の権威である山手治之教授によれば、「「完全かつ最終的に解決した」とは、韓国及びその国民が、どのような根拠に基づいて、日本国及びその国民に請求しようとも、日本国およびその国民はこれに応じる法的義務はないという事である」と述べています。
最後に橋下氏に賛同できる部分も付け加えますが、橋本氏は国際司法の場における判断について、日本に有利な判決になるだろうと予測しています。
「(個人の請求権が残っているとしても)日本の裁判所と同じように、「日本側に対しては裁判で実行することはできない」という話で終わる。米連邦裁判所の例も、ギリシャ住民の例も、最終的には個人の請求権は退けられました」、「ここで韓国に主張を認めてしまえば、例えばサンフランシスコ講和条約などの世界中の和解条約が、全部吹っ飛んでしまう。世界中で個人の賠償問題が吹き上がってきて、戦後秩序が崩壊してしまいます。国際司法はやはり、自国政府が自国民に補償するという原理原則徹底し、相手国側への請求は退けます」
(文藝春秋11号 106P)
全面的にその通りだと思います。
条約解釈の大原則のうちの一つに「有効性の原則」があることは古くから学説や判例で認められている。
有効性の原則とは、「およそ物事は、これを無効ならしむるより有効ならしむるを以て可とす」との法格言に基礎をおいている。
条約法条約31条は「条約の解釈は~用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする」と規定するが、この条の起草にあたった国連国際法委員会は、ここでいう「誠実」な解釈とは有効性の原則を意味するとしている。(萬歳寛之早大教授 ジュリスト30号 p72)
(了)
文責 山路敬介
« 山路敬介寄稿 応募工問題は国際司法裁判所で決着をその3 | トップページ | 日韓首脳会談があってもなにも変わらない »
コメント
« 山路敬介寄稿 応募工問題は国際司法裁判所で決着をその3 | トップページ | 日韓首脳会談があってもなにも変わらない »
山路さん
史実にも新しく知るものがあり、法理論においても学ぶものがありました。
韓国が正常な世界認識をできるようになるよう願っております。
投稿: | 2019年12月23日 (月) 17時03分