ロシアの調子は国際原油価格をみればわかる
朝鮮半島を考えるときに、もっとも見えにくい東アジアもうひとりの登場人物がいます。
それはロシアです。
東アジアでの存在感は希薄ですが、なにかいい介入のネタがないか、カネになるものはないかと常に眼を光らせているというお方です。
さていきなりですが、ロシアはなにで食っているかご存じでしょうか。
原油です。
ロシアにはありていに言って、他になにも売るものがないと言ってさしつかえないでしょう。その意味で、サウジやUAEなどの中東産油国以上の原油依存国なのです。
中東諸国は今は金融業が大きいですから、ロシアほどモノカルチャーではなくなっています。
ウラジーミル・プーチンは、1998年のロシア金融危機で打撃を受けた経済を建て直し、大きく経済成長させましたが、それは原油・天然ガスの輸出に徹底的に依存したからです。
そのためにプーチンはガスブロムなどの大手石油関連公社を垂直統合させ、独占体制を作り上げ、そこに国が集中投資しました。
元来、天然ガスと生産量は世界2位の石油の生産量を持っていたために、この生産体制の再編により、ロシア政府の財政収入の半分はいまや石油・天然ガス輸出収入に頼っています。
ロシアには原油以外に輸出して外貨を稼げる商品がありませんから、もはや原油なくしては生きられない石油中毒体質というわけです。
プーチン支持率はやや低下傾向にあるもののいまだにすさまじい高さを誇っていますが、その理由は一にも二にもロシア経済を発展させたからです。
ロシア経済はプーチンが首相になった1999年から7%程度の経済成長を続けています。
ソ連崩壊による国家存亡の危機とその後の金融危機から、一転して中国並の高度経済成長に突入したのですから、国民が民主主義を踏みにじられようと、言論を抑圧されようと、はたまたイランと結託して中東で火遊びをしようと、つい支持してしまうのはわからないでもありません。
え、西側の制裁を招いてしまったウクライナですか。あれは民族主義をくすぐる材料にこそなれ、マイナスにはなりません。
これはプーチンひとりの手柄というより、原油国際市場がプーチンが政権を握ったあたりから見る見るうちに急騰したからです。
下図はロシアの経済成長と国際原油価格との相関関係を見たものですが、グラフ赤線の原油国際市場価格に注目してください。
国際原油価格は1999年あたりからバレル20ドル台からぐんぐん上昇を続け、2005年にはとうとう倍以上の50ドル台に乗せ、2008年にはとうとう100ドル一歩手前という異常な高価格にまで達しています。
いやー、ロシアにとってはたまりませんなぁ。経済成長率も落ち込みがひどかった分、政権掌握翌年の2000年には8%を叩き出し、以後おおよそ7%台前後を推移しています。
この時期にプーチンはガタガタになったロシア軍を再建して、再び米国と並ぶような精鋭な軍隊に建て直しています。
ソ連帝国を再建し、西側をギャフンといわしてやる、これが彼の政治的理念のすべてです。
前掲
と、ここまではイケイケだったのですが、上図の後の時代をみると2014年はこんな暗転が待ち構えていました。
2014年後半以降、原油価格が急落し、ルーブルは急落し、政府収入をそれに頼っていたためにロシアは財政危機に直面します。
まぁそののちに国際市場価格が持ち直していまはなんとか凌いでいますが、この石油と国家経済が連動してしまうというシンプルさが、ロシアの大きな特徴だといえるでしょう。
要は、ロシアは国際原油価格が良いときは鼻柱が強く、低迷すればいきなり弱気になっちゃうのです。中国とは別の意味で、ロシアも分かりやすい国だともいえます。
ですから、ここのところの原油価格をみればロシアの調子がだいたい想像ついてしまいます。
【原油(WTI原油先物)チャート】 https://www.matsui.co.jp/market/report/stock_info/201801_01.html
直近は下図ですが、現在のWTI価格はバレル60ドル近辺でもみあっている展開となっているようです。
https://news.livedoor.com/article/detail/9594772
60ドルはひとつの指標ラインでここを超えると、買いが入って40ドルあたりまで下げるという上限ラインです。
こういう時期に北方領土交渉をしても厳しいでしょうな。やるならソ連崩壊直後か、2016年あたりだったかもしれません。
ま、それはともかくロシアは2本のパイプラインを作ると言っています。
ひとつはノルドストリーム2と呼ばれるロシアと欧州を結ぶ石油パイプラインです。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20171218000
もう一本は、シベリアから中国への初の天然ガス・パイプラインです。
https://togetter.com/li/1438394
このうちのロシア、ドイツなどの欧州諸国を結ぶノルドストリーム2について、米国は激しく反対し、もしやるなら国防権限法を使って制裁するぞとまで言っています。
一方、シベリアと中国を結ぶパイプラインにはいまのところ沈黙を保っています。
この温度差はどこからくるのでしょうか。
というところで、ああいかん、前置きが長すぎて紙数が尽きてしまいました。次回に回します。
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2008年というと、夏にガソリンが高騰してオレの当時の燃費悪いスポーツカー(タンク61リットル)をハイオク満タンにしたら万札飛んだ!なんて時でした。
当時の野党が「ガソリン値下げ隊」なんていうパフォーマンスをやってましたね。
いざ政権奪取したら全く知らん顔をするというね。
連中の毎度ながらの悪い癖です。
批判する側になってる時だけはご立派。
蓮舫さんや辻本さんは、結局自らは「説明責任」なんかしないし、その気も無いようです。
投稿: 山形 | 2019年12月27日 (金) 06時39分
うん。 ここはとても良いブログですね。
これからちょくちょくお邪魔することにします。
投稿: 通りすがり | 2019年12月27日 (金) 19時35分
ソチ五輪の時は雪不足の中で大量の雪を運んでスキー競技を運営しました。その頃が原油100ドル台、オリンピック経費捻出のため必死で高値を維持したと思われ、年末には半値に下げました。
今も高騰していますが、反動は必ず来るはずです。再び半値に下がれば、その時こそ北方領土回復のチャンスですね。
投稿: プー | 2019年12月28日 (土) 00時01分