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2020年1月

2020年1月31日 (金)

首里城炎上は原因不明という茶番

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なにか気の抜けたサイダーといった趣ですが、首里城火災の原因が特定されないまま幕引きとあいなりました。
なんと退屈な予定調和だこと。

当たっても嬉しくもありませんが、私は当初からデニー県政にとっての「理想的解決は誰のせいでもないことにすることだ」と考えていましたが、そのとおりになってしまいました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/11/post-dd5f37.html

まずは琉球新報から。

「昨年10月に発生した首里城火災の捜査終結を発表した県警は29日の発表で「火災の刑事責任は問えない」とも明かした。火災原因が判然としない状況に、県民は「次の防火対策に生かせるのか」と疑問を呈し、国や県、沖縄美ら島財団の責任を問う声も上がる。同時に一定の区切りが付いたとして、十分な防火対策で再建に注力すべきだとの見方もある。
■「国、県、財団に責任」
 那覇市のパート女性(50)は「そもそも燃えやすい木造建築にスプリンクラーを設置しようと考えていなかった時点で、多かれ少なかれ国や県、財団に責任がある」と話す。沖縄のシンボルである首里城は「ぜひ再建すべきだ」とした上で「再建しても火災の可能性がゼロでない以上は、防火対策を徹底してほしい」と語った」(琉球新報1月30日)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1065670.html

見出しからして琉新は「首里城火災なぜ? 原因特定できず捜査終結 県民に戸惑い「防火対策生かせるのか」と、天を仰いで地団駄踏んでいます。
感情量豊富にパートの女性まで引っ張り出して、スプリンクラーの設置しなかったことなとで財団の失火原因の追及がないことを批判させています。初めてこの新聞と意見が一致してしまいました(笑)。

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産経
一方沖縄タイムスですが、異様におとなしさが目立ちます。気のせいか、お義理に書きましたという気分が行間から滲んでいるようです。
ゲスの勘繰りですが、火災当時の深夜までなされていた作業が沖縄タイムス主催のイベント準備だったこととなにか関わりでもあるのでしょうか。

「県警は火元とみられる正殿北東側から配線などの資料を収集。科学捜査研究所で調べたが激しく燃えた状態で、原因特定に至らなかったという。
 那覇市消防局は昨年11月8日に実施した会見で、火元とみられる正殿北東側の電気配線にショート痕の可能性がある破断が見つかったが、損傷が激しく「原因特定は非常に困難」との見方を示した」(沖タイ1月29日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/528217

沖タイは見出しからして、「原因特定できず 首里城火災 収集資料の損傷激しく 沖縄県警が捜査終結」と、まるで全国紙の埋め草記事のような雰囲気です。
今、全国紙は新型肺炎記事で覆われていますから、首里城火災の原因などどこかの埋め草でチョロと書くていどでしょう。
この時期を狙ったとしかおもえない、タイミングのよさでした。
こういうことを官庁はよくやります。なにか都合の悪い発表をせねばならない時には、朝刊の締め切り間際とか、金曜日の夕方、はたまた連休前に押し込んだりもします。
報道がミニマムになるか、うまくすれば蒸発してしまうからです。

県警が県政への忖度をしたいのなら、豚コレラと新型肺炎のこの時期はうってつけのチャンスでした。
どうやら沖縄司法・消防には上司である県知事に対して忖度体質があるようです。
かつての翁長県政だった時は、辺野古警備はユルユルで反対派のやりたい放題に任せ、高江では違法な私的検問を長期間放置したばかりか、そのことによるトラブルに対しても一方的に地元住民にのみ罪が被せ、原因を作った私的検問は不問に付すような裁きを平気でやってきたという「実績」があります。

それはさておき、あれだけ「沖縄の心が燃えた」とまで騒いだ首里城炎上事件も、喉元過ぎてしまえば忘却の霧の彼方であるうえに、いまさら原因が特定できなかったからと言ってナンだつうの、ということです。
デニー氏は談合疑惑で百条委員会の設置を求められていた窮地を救ったのがこの首里城炎上事件でしたから、この原因をうやむやにするのもまた大事件の時にかぎるなんて思っていたかもしれません。

デニー知事は真っ先に国に再建を要請しに行ったあげく、一方で集めた募金が巨額となり、その使途すら決められないありさまですから、いまさら炎上の原因などどうでもいい、というか県の責任だけは回避したいと思っていたのでしょう。
かといって国にも再建のカネをせびった都合上あちらにもいかないことがベスト、強いていえば当夜の警備員に問題あり程度でお茶を濁してもらえればナイスってところです。

そんな県の隠微な思いを知っていた県警察にとって、豚コレラや新型肺炎といった大きな事件が続けざまに起きたことは僥倖でした。
この時期にこんな発表をソっとだしてやるというのが官僚の粋な計らいというものです。こういうことを「忖度」と呼びます。

「県警は火元とみられる正殿北東側から配線などの資料を収集。科学捜査研究所で調べたが激しく燃えた状態で、原因特定に至らなかったという。
 那覇市消防局は昨年11月8日に実施した会見で、火元とみられる正殿北東側の電気配線にショート痕の可能性がある破断が見つかったが、損傷が激しく「原因特定は非常に困難」との見方を示した」(琉新前掲)

火災当時から那覇消防局・山城達予防課長は、「(電気設備以外に)火災の原因となるものが見当たらない。証言においても、火源になるようなものが置かれていたとか、そういったものは、証言でいただいていません」(FNN11月8日)と明言していました。
つまり当初から消防は火元が正殿の東側の配電盤周辺であると特定し、しかもショートした箇所が30箇所もみつかっていたにもかかわらず、焼け方が激しいために詳しいことはわからないということにしてオシマイだということです。

そんなことは初めから予防線よろしく警察・消防は言っていたのであって、なにをいまさらです。
こんな子供だましの報告書書くくらいなら、原因調査なんていらない。

私は当時こう書いています。

ところで沖縄県にとってもっとも望ましい火災の原因は何でしょうか。
それは人災ではなく、不可抗力な自然災害のような事故です。
焼け跡の調査をしている最中に県幹部はこんな恥知らずのことをうそぶく始末です。
県幹部は、出火原因が法的な不備や設備の点検不足などに該当しない不可抗力だった場合、責任の所在は「誰にもないのではないか」との認識を示した」(沖タイ11月2日)
そのとおりです。国は文化財にはスプリンクラー設置を義務づけていなかったから法令違反ではなかった、県も県とて国の指示がなかった以上、法令遵守違反にはならない、もちろん管理財団にいたっておや県の指導はなかったと知らんぷり。
では何を原因にするかといえば、分電盤をネズミがかじってショートして燃えたというストーリーが、最良です」

しかもそのショーと痕も調べたが燃えてしまって分からないですから、もはや誰のせいでもない、ただの天災だということになります。
これにて、美ら海財団はおとがめなし、県の管理責任も不問、あとは一直線に再建だぁ、ということになります。
常識ある為政者なら、再建する以上は出火原因が特定されなくとも、消火体制の不備、警備体制の手抜かり、今後どう新たな消火システムを構築するのか専門家委員会を作って詰めていくのでしょうが、さてデニー知事どうしますか。
サポートする官僚がこれでは、期待しろというほうが無理というものです。

いずれにせよ、私はバカバカしくてこれ以上書く気にもなりません。
とんだ茶番です。大山鳴動、ネズミ一匹も出ず。
デニー知事はこうやって逃げ回って責任回避するだけで任期が終わるのでしょうかね。

 

 

2020年1月30日 (木)

新型肺炎、こういう時にこそソフトパワーを使おう

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感染症を押さえ込むには、できるだけ初期の段階で押さえ込むことです。
時間が立てばたつほど感染は拡がり、より広範囲で対応せねばならなくなります。
今回の新型肺炎の場合、武漢における感染初期で徹底的に制圧すべきでした。

日本政府の対応についても同じで、初動で対応せねばなりません。
日本政府は武漢の邦人の帰国支援を速やかにおこないました。
在外邦人をいち早く救出する手を打ったことは、国内向けには後々さまざまな危機において外国においても日本政府を頼っていいという力強いメッセージとなり、国際社会に対しても日本政府は自国民を守るという意志を伝えました。

このような政府による避難作戦は、別の見方をすれば国際的防疫の一環でもあります。
というのは、これによって政府が正確に「武漢からの避難者」の数と氏名、その居場所を特定できるからです。
これをしないと取り残された邦人は各自思い思いのルートで帰国せねばならなくなります。
そうすると誰がいつ帰ってきたのか、どのルートで帰ったのか、その間に感染の可能性がないかを探し出して遡及調査せねばならなくなります。
感染者が今回も避難者から見つかったといいますから、避難作戦をせねば大海の針となってしまいかねませんでした。

避難者のなかに帰国してからの検査を拒否した不心得者もいたそうですが、とんでもないことで、それは避難者の義務です。
これはただの邦人保護ではなく、感染症にたいする防疫作戦だということをしっかりと理解させ、納得しないなら乗せるべきではありませんでた。

これと同じことを先進各国は考えていて(おそらく各国間で意志疎通していると思いますが)、避難便を出しています。
その意味で国際共同行動でもあるのです。
ですから2便までは邦人のみに限定されましたが、以後は希望する外国人まで含めて避難に協力すべきでょう。

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読売

脱線しますが、これが韓国のムン政権だったらたぶん拒否されることでしょうな。
今回は軍事紛争ではないので、武漢便をもっている全日空が飛びましたが、朝鮮半島が火を吹いた場合民間機は使えません。
自衛隊も入国を拒否されるでしょうから、艦艇も港の外の公海上までしか行けず、邦人は自力で米軍基地に逃げるしかありません。
たどりついても、米国人が優先されるでしょうから、その先は・・・、ということになります。

また素早く指定感染症とした措置も正解です。

「日本政府は、今回の肺炎について、指定感染症とあわせ、検疫法上の「検疫感染症」に指定する。これにより、空港や港で入国者に感染が疑われる場合、国が検査や診察を受けるよう指示できるようになる。入国者が指示に従わなければ、罰則の対象となる。両感染症に指定する政令施行は2月上旬になる見通しだ」(読売1月27日)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200127-OYT1T50245/

これによって武漢から脱出した邦人の隔離生活の補償と、発症した2名の方の治療支援が受けられます。
既に国内で発生している感染者についても同様に支援措置を受けることができます。

今回改めて痛感したのは、このような時の公的隔離施をもたないことです。
成田から降りた避難者が隔離されたのは一般旅館でした。
しかしこれも従業員感染を考えると、空港付近、ないしは空港内にこのような状況で使える専用の医療施設を有した隔離施設が必要だと思われます。
最低で成田にひとつ、関空にひとつは欲しいところです。

また発生してから1週間ていどですから中国からRNAを提供されてはいたとしても、本格的遺伝子解析や血清診断が可能かどうか不安が残ります。
今回の新型肺炎は変異しやすいRNA型ですから、いまから配られようとしている簡易検査キットをさらに増産せねばなりません。
ワクチン作りには着手しているとは思いますが、一刻も早い完成が待たれます。
このへんに関しては日中の専門家同士の緊密な協力が不可欠です。

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https://news.goo.ne.jp/picture/nation/jiji-0033806

新型肺炎という人類の敵に対しての日中協力を醸成する意味で、武漢に向かった政府チャーター便が自治体から寄贈された備蓄マスクを大量に輸送したことはたいへんにいいことです。
できたら、マスクの箱に日の丸のシールをでっかく貼って欲しかったですが。

逆にこういう時に絶対にやってはいけないことは、中国を敵視するあまり、ひたすら排外主義的なことを言い散らすことです。
ネットで既にそのようなことを言う者が出始めていますが、中国国民が感染症爆発の危機に怯えているときに、そんな傷に塩を塗り込むようなことを言って何になるのでしょうか。
外国人憎悪もいい加減にしてほしいものです。

このような時こそ、日本は官民をあげて中国を支援すべきで、それも目に見える形でするのがもっとも効果的です。
募金など送ってもあの国のことですからどこに消えるかわかりませんし、カネは足りているはずですから、やはりマスクなどの衛生用品がもっとも喜ばれると思います。
政府もマスク会社の在庫を丸ごと買って中国に送るていどの男気を見せたらいかがでしょうか。
医師団を派遣するもいいかもしれません。

こんな善意でなんとかなるほど日中関係は甘くないと思う人もいるかも知れませんが、いえいえ、こういう時期こそ軍事力を使わないソフトパワーが強い力をもつのです。
ソフトパワーとはこんな意味です。ね、今の状況に対応できるでしょう。

「国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、 共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことである」
ソフト・パワー - Wikipedia

この状況だとおそらく習は来日が不可能となるはずですから(けっこうなことですが)、こういう形で「恩を売っておく」のも外交的には有効な手段なはずです。

さて一方、ここまではよくできていることでしたが、帰国希望者を武漢に限定したことは誤りです。
既に上海、北京などでも患者は発生しています。
下のオンラインマップは、世界保健機構(WHO)と米国、欧州、中国の疾患管理センターのデータに基づいたものですが、中国全土に拡がりつつあるのがわかります。

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このような状況をみると、WHOの初期の予想は甘すぎました。新型肺炎は潜伏期でもうつることがわかっています。いまや奈良のバス運転手の感染例のように空気感染していることも判明可能性があります。

※コメントでご批判を受けて奈良の事例は例証として適切ではないので削除しました。
あいうえおさんが指摘のCDC 記事については仮訳をアップしておきます。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/index.html

「コロナウイルスは、ラクダ、ウシ、ネコ、コウモリを含む多くの異なる動物種に共通するウイルスの大きなファミリーです。まれに、動物コロナウイルスが人々に感染し、MERSやSARSなどで人々の間で広がることがあります。
MERSおよびSARSで人から人への拡散が発生した場合、インフルエンザやその他の呼吸器病原体の拡散と同様に、感染者が咳やくしゃみをするときに生じる呼吸器の飛沫によって主に発生したと考えられています。人々の間のSARSとMERSの広がりは、一般的に密接な接触の間で起こりました。
ウイルスが人から人へと広がるのは簡単ではないことに注意することが重要です。麻疹のように非常に伝染性の高いウイルスもあれば、そうでないウイルスもあります。このウイルスに関連するリスクをよりよく理解するには、これを知ることが重要です。現在の情報に基づいて、CDCはこれが非常に深刻な公衆衛生上の脅威であると考えていますが、現時点では2019-nCoVから一般大衆への即時の健康リスクは低いと考えられています。
2019-nCoVに関連する伝達率、重症度、およびその他の機能について学ぶことはまだまだあり、調査は進行中です。最新の状況概要の更新は、CDCのウェブページ2019中国の武漢にあるコロナウイルスで入手できます」

このような状態で、中国に邦人を滞在させて置くこと自体が危険です。
できるかぎり希望者には帰国を勧め、政府はチャーター機の増発などの対応をすべきです。

そして、日中のヒトの行き来について、一時的に強い制限をかけるべきです。
今回出た日本の感染例をみると、やはり原因は中国の訪日を無条件で認めたことによります。
政府には、特に発生源の武漢からの観光客を入れてしまったことを強く反省してもらわねばなりません。
このような入国制限は中国人から強い反発を受けるでしょう。
だからこそマスクなどによるフフトパワーの支援が意味をもつのです。 

 

 

2020年1月29日 (水)

武漢肺炎生物兵器説の信憑性

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武漢生物兵器説について藤井厳喜氏が武漢国立生物安全研究所が流出先だとする説を出しています。ユーチューブにもアップされています。
https://www.youtube.com/watch?v=hENfdcX1_Cg

確かに武漢には軍用にも使われているであろう生物研究所が2箇所あります。
Virus-hit Wuhan has two laboratories linked to Chinese bio-warfare program
https://www.washingtontimes.com/news/2020/jan/24/virus-hit-wuhan-has-two-laboratories-linked-chines/

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ワシントンタイムスはこのように報じています。

"The deadly animal virus epidemic spreading globally may have originated in a Wuhan laboratory linked to China’s covert biological weapons program, according to an Israeli biological warfare expert.
Radio Free Asia this week rebroadcast a local Wuhan television report from 2015 showing China’s most advanced virus research laboratory known the Wuhan Institute of Virology, Radio Free Asia reported.
The laboratory is the only declared site in China capable of working with deadly viruses."

イスラエルの生物兵器の専門家によると、世界的に広がる致命的な動物ウイルスの流行は、中国の秘密の生物兵器プログラムにリンクされた武漢研究所で発生した可能性があります。
Radio Free Asiaは今週、2015年から武漢地方テレビのレポートを再放送し、Wuhan Institute of Virologyとして知られる中国で最も進んだウイルス研究所を示しました、とRadio Free Asiaは報告しています
研究所は、致命的なウイルスを扱うことができる中国で唯一の宣言された場所です。
Friday, January 24, 2020
https://www.washingtontimes.com/news/2020/jan/24/virus-hit-wuhan-has-two-laboratories-linked-chines/

武漢国立生物安全研究所が、エボラやクリミアコンゴ出血熱ウイルスなどのヒト感染する病原菌を研究していたということは間違っていていないと思われます。
そのことと下の香港筋からの情報として入ってきた5つの情報がくっつきます。
ただし、この香港情報はソースが特定できませんから、話半分で聞いて下さい。

①武漢の新型コロナウィルスはヒトからヒトへの感染を開始している。
②2018年に南京軍事科学院の発表したコロナウィルスが船山コウモリと類似している。
③船山コウモリはヒトに感染しない。
④自然変異では必ずE蛋白が変化するが、新型コロナウィルスは変化していない。
⑤したがって、武漢で発生した新型コロナウィルスは、船山コウモリのウィルスを人工的に変異させた新型である。

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つまり武漢には世界で最も危険な病原体(バイオセーフティーレベル4)を研究する施設があり、そこから「兵器化された病原体」が流出した懸念があるということのようです。
そして武漢の生物研究所と発生源と疑われている海鮮市場との距離が32㎞だなどということまで傍証となっているようです。
問題は距離ではなく、ヒトやモノの行き来なんですがね。

「兵器化病原体」というのは聞き慣れない言葉ですが、要するに強力すぎる病原体を「薄めて使いやすくする」ことです。
これは核兵器も同じで、威力が大きい水爆が開発されなくなったのは破壊力が大きすぎて現実に使えないものになったからです。
同じように生物兵器も一気に何億人も殺してしまうようなものを使ったら後始末に困ります。

そもそも生物兵器ほど使いにくい兵器はないのです。
生物兵器とはウィルスや細菌、あるいはそれの毒素を使った兵器の総称ですが、そんなものを野外に放出したら敵味方なく攻撃してしまいます。
国際法ではもちろん化学兵器と並んで非人道兵器として禁止されていますが、その理由は攻撃時の一過性で終わらないことです。

細菌やウィルスはいくら撲滅したと思っても、なんらかの宿主をみつけて野外に常在化してしまいます。
野生イノシが豚コレラの宿主となってしまったのでもわかるように、いったん野外化したら最後撲滅は不可能です。
コロナウィルスはコウモリを宿主とし、食物連鎖で他のヘビにまで転移しています。

ですから、A国がB国を生物兵器攻撃したりすれば、侵攻したA国の作戦行動にも制限がかかってしまいます。
ワクチンを打てば大丈夫だとおもっている人もいるかも知れませんが、ウィルスは変異しますからかならず数割の効かない者を生みだします。
一つの部隊で仮に2割患者になったら、それだけで野戦病院は満杯です。

中国の場合、主要な攻撃対象は台湾ですが、ここで生物兵器をつかってしまったら、その後に陸上部隊全員には全員漏れなくワクチンを接種し、防護服を着せて送り込まねばなりません。さもないと味方の兵隊のほうからバタバタ倒れてしまいます。

よしんば戦闘に勝利したとしても、その後の平定期には台湾住民の医療に大変な手間をかけねばなりませんから、占領政策がうまくいくはずがありません。ですから、生物兵器は現実の作戦に「使えない兵器」にすぎません。

また、開発には通常兵器とは比較にならない膨大な資金と期間を要し、保管のためにバイオセキュリティレベル4という厳重な保管施設まで新設せねばなりません。
確かに国連常任理事国のすべてはこのような生物兵器施設を保有していますが、それは仮想敵が保有しているから自国も持たねばコワイからにすぎません。
おそらく生物兵器を実際に使った国は、英国にいる寝返った自国のスパイを暗殺したロシアくらいなものです。
中国も生物兵器攻撃を受ける可能性があると考えており、そのためのワクチン作りのための「素材」を培養していることはありえます。

「SARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的に大流行したとき、東京に駐在していた中国人民解放軍のR国防武官(陸軍少将)が発したひと言です。
「SARSは中国に対する生物戦(生物兵器を使った戦争)だ」(福島香織)

こういう恐怖心が故に、中国は7箇所と言われる生物兵器施設を持っていますが、武漢の生物研究所の設立目的は中国科学アカデミーのジョージ・ガオが言うように「感染病の予防と抑制」です。
もちろん裏の顔として上記②にあるような南京軍事科学院とも提携関係にありますから、開発している可能性もありますが(しているでしょうが)それは盾と矛の関係にすぎません。

南京軍事科学院は純然たる生物兵器の開発施設ですから、武漢生物研究所もまた裏の顔として「兵器化された病原体」を多数保有していたことは事実だろうと思います。ここまではありえる推測です。
しかしだからといって、この研究施設が新型コロアウィルスの流出先とするのは飛躍です。

この推測の出発点は新型コロナウィルスが船山コウモリウィルスから進化したということですから、その真偽が複数の研究者によるクロスチェックを受けないうちはなんともいえません。

複数の研究者によって確証されるまではただの仮説にすぎず、それを論拠にして武漢にも生物兵器研究所があった→だからからそこからの流出だ、というのはいくらなんでも飛躍にすぎます。

さらに藤井氏と同時期に出たツイートではこのようなものに変異しています。

「さらには人民解放軍は予防接種済み?】鳴霞女史「国連は武漢生物化学研究所で 病毒を人民解放軍が作った証拠を発見。武漢市は全部封鎖されたし、死者いっぱい出てくるが、武漢市の人民解放軍は全 員予防注射打ってる。この病毒は2018年に完成していた」

国連のどの機関か知りませんが、そんなことは寡聞にして知りません。武漢に派遣され兵隊がワクチンを打っていたなんてなにがソースですか。
ここまで来るともはや妄想の域に達しています。

このようなパンデミックが予想される時期には多くのガセ情報が流されます。
お気をつけて。

 

 

 

2020年1月28日 (火)

武漢肺炎いっそう拡大

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中国政府は1月27日、発症者は中国本土だけで2744人、死者80人と発表しました。
米国やフランスでも感染者が報告されて、世界規模の感染の序章の様相を呈しています。

国外はともかくとして、中国国内の数字はまったく信用するに値しません。たぶん中国人が一番信じていないでしょう。
お定まりの隠蔽体質もあるでしょうが、中国で患者認定されるには、病院だけではなく地方政府衛生当局の御墨付きが必要ですが、いまのような患者が我がちに病院に押し寄せるようなパンデミック初期にすんなりそんなものが出る道理がありません。
むしろ患者認定されると移動できなくなってしまうので、逃れたいくらいでしょう。
ですから少なめに見積もっても、北大研究チームの推定数で5000人以上です。

「中国の湖北省武漢市で広がっている新型コロナウイルスによる肺炎の患者数について、北海道大の研究チームは25日、武漢市内だけで5千人を超える可能性が高いとの推計をまとめた。
現地の診断・報告システムは不十分とみられることから、中国国外での患者数に着目。統計モデルを使って算出した結果、中国国外で患者1人が発生した場合、背後には武漢市内で数百人に上る未報告の患者がいるとの結果になった。欧州医学誌に発表した」 (共同1月25日)

最大では現地中国人医師による10万人説もあります。

「湖北航天医院の医師が、意を決して外界に訴えたという記事。「湖北省で感染者数は10万人を超え、病院が地獄と化し、助けを求めパニックになっている。が、湖北省政府は事実隠蔽のため、物資は十分あると語り、外部からの援助を拒絶している」と。これが殺人鬼と同義語の中国政府の真実の姿です」
(河添恵子ツイッター1月26日)
https://twitter.com/kawasoe0916/status/1221330194968920065?ref_src=twsrc%5Etfw

いずれにしても、当局発表とは桁が違います。

感染症専門医の忽那賢志氏は ひとりの感染が15人に移したという現地医師の情報を「コロナウイルスの共通する、ある特徴に由来する」としています。



「これまでの患者の発生状況などから、新型コロナウイルスの基本再生産数は1.4-2.5と暫定的に見積もりされています。(略)
元々同じコロナウイルスによる感染症のSARSやMERSは、病院の中で広がりやすいという特徴があります。(略)
もう一つ、SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルスに共通する特徴としてスーパースプレッダーの存在が示されています。(略)
スーパースプレッダーとは、感染症を多くの人に拡散してしまう患者のことで、SARSでもMERSでもこのスーパースプレッダーの存在により流行が広がった経緯があります。
今回、医療従事者15人に感染させたのがスーパースプレッダーであったのかはもっと詳細な情報が必要ですが、その可能性はありそうです」
(忽那賢志 『新型コロナウイルス感染症の「感染力」はどれくらい強いのか?』)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200126-00160384/

ここで忽那氏が触れられた基本再生産数とは、簡単に言うと「1人の感染症患者から何人に感染させるか」を表す数のことで、1 人の感染者が生み出す2次感染者数の平均値のことを指します。

この基礎再生算数が多い場合、下図のようなスーパースプレッダーが既に発生している可能性があります。

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https://allabout.co.jp/gm/gc/455815/

さて、いままでさんざん後手後手を非難されて、権力基盤が危ういとみた習は前面に出てトップダウンで号令を発するようになりました。
これにより中国は、そう名付けてはいないものの事実上の国家非常事態を敷くことになります。
この鶴の一声で、遅きに失しましたが武漢が封鎖されました。
しかも封鎖範囲は、感染源の武漢のみならず湖北省全体13市に拡大して、4000万人以上が移動禁止になっています。

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https://note.com/nanaehasegawa/n/n34c66e8fbf9e

武漢は、中国大陸の交通の要衝で、いわば北海道における富良野のような「ヘソ」の位置にあるために、遮断されると中国大陸の陸路の交通に大きな障害が出ます。
北京への陸路も封鎖され、鉄路と空路のみとなりました。なんとしてでも首都には武漢肺炎をいれないという意志表示したわけですが、たぶん無駄でしょう。
既にウィルスキャリヤーは入ってしまっているからです。言っているそばから北京でも出ています。
ひとりの確定患者の後ろには15名の既にうつした人たちがおり、それがひとりひとりまた別の人にうつしていきます。

「中国で新型コロナウイルスへの感染が広まっている問題で、首都北京の当局は27日、同市で初の死者が出たと発表した。
北京市の保健当局によると、亡くなったのは50歳の男性。今月8日に流行の中心地である中部・武漢を訪れ、7日後に北京に戻った後に発熱。21日に入院し、27日に呼吸不全のため亡くなった」(AFP1月28日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200128-00000001-jij_afp-int

衛生当局は確定患者が移動した鉄道、バスなどに乗り合わせた人を探しているようです。
中国国民は国民監視体制の一環として電子マネー使用を事実上義務づけていますから、こういう患者の遡及調査が可能となります。
日本では監視システムといえるのは防犯カメラくらいですから、まねできません。

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藤田康介ツイッートhttps://twitter.com/mdfujita

また春節という年に一回のゴールデンウィークにもかかわらず、中国からの団体旅行と航空券とホテルのセット販売を禁止し、海外旅行に事実上の制限をかけ始めました。
大型イベントや遊園地の閉鎖が始まるようです。

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ブルームバーク

さぞかし庶民は怒りを鬱屈させているでしょう。なぜなら、本来、春節は中国最大の爆買いシーズンで、庶民は一年間コツコツ貯めたカネを惜しげもなく買い物や旅行に投じる季節だからで、すべてをキャンセルさせられて家にいろというのはムゴイ。
当局は移動を禁止してしまえば、連休はかえって自宅に封じ込めるいいチャンスだと考えたのでしょうが、このまま春節の無期限延長もするとなると個人消費の落ち込みの影響は巨大になります。
これにより、確かにウィルス拡散は多少抑制されるでしょうが、庶民はもう春節の前から移動を開始していますから、当局がかんがえるような効果がでるかどうかは疑問です。

更に500万人が既に武漢から脱出したという噂も出ました。
これは武漢市長談として中国メディアが報じたものですが、武漢の人口は1100万人ですから、ほんとうならその半数が逃げたということになります。
にわかには信じがたい話で、もしその半分でも事実ならば習の武漢封鎖令は頭から無視されて、市民は脱出してしまったということになります。
そうなった場合、ただ習のメンツの問題にはとどまらず(そうでなくても事後には党内反対派から厳しい追及を受けることでしょうが)中国の全体主義支配そのものが揺らぎかねない話です。

確実なことは、個人消費が極度に落ち込み、減速傾向が明らかな中国経済にとって大きな障害がまたひとつ増えたことです。
連鎖して海外貿易もまちがいなく鈍化するはずですから、株式の急落、それによる資金の枯渇などを招来するでしょう。
たぶん国際経済にも大きなマイナス影響をおよぼすでしょうから、日本経済も無事では済みません。

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朝日

また、武漢市の封鎖に続いて、突貫工事による仮設の専門病院建設が進められることになりました。ベッド数は1000だそうです。
スゴイね。習の号令ひとつで、病院もカップ麺みたいに即席で作っちゃうんだ(唖然)。
医療機材はかき集められても、今中国は医師が絶対不足ですから、医師が集められるかどうか。
中国は、生物兵器の攻撃を受けた国家非常事態だと認識した、ということでしょうね。

生物兵器といえば、武漢肺炎生物兵器説というものがあります。
結論から言いますと、私は9割デマだと思いますが、長くなりましたのでそれについては明日ということにします。

 

 

2020年1月27日 (月)

新型コロナ肺炎が世界最悪の悪食国家から生まれたのは偶然ではない

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中国武漢で発生した新型コロナウィルス(2019-nCoV)は海鮮市場から出たので、なんらかの人獣共通感染症ではないかとする説が有力です。
この説によれば、海鮮市場で売っていたヘビを人間が食べたことによって発症した人獣共通感染症だとするものです。

まずは人獣共通感染症について押えておきましょう。
国立国際医療センター研究所の切替照雄研究部長はこう言います。

「病原体は基本的には宿主を選んで生存しています。そして宿主どおしでも、動物は森に住むもの、人は人里に住むものと明確に分かれていたのです。ところが乱開発や土地開発で今までなかった接触がおきて、新しい病原体を生む原因となってしまったのです」

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http://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/reports/2016...

感染症を引き起こすウイルスは地球最古の生物です。それは実に40億年前から地球上で生き抜いてきた原初的な「生命体」なのです。
より正確にいえば福島伸一氏が言うように、ウイルスは細胞膜も外形ももたないタンパク質とRNA遺伝子のみの「生物と無生物の間」の存在です。

このようなウイルスを、ある生物学の研究者は、「古き先住者」と呼ぶほどです。彼らは自分自身では生きられず、必ず他の生物の細胞内に寄生して生きる性格をもっています。「古き先住者」を侮ってはいけない。いや、侮ってきたからこそ、今の事態があるのではないでしょうか。

さて実際に武漢のこの海鮮市場ではヘビも食用として売られていました。下写真の右列上から3番目がヘビです。

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「新型コロナウイルス、ヘビが感染源の可能性 武漢の市場で販売
報道によると、同ウイルスに感染して最初に入院したのは、武漢市の海産物卸売市場の従業員や利用客だった。同市場では食用の動物や爬虫類(はちゅうるい)も販売しているが、水産物のコロナウイルス感染は報告されていないことから、市場で売られていたそれ以外の動物から感染したとする説が有力視されている。
研究チームが2019-nCoVの遺伝子配列を解析して他のコロナウイルスと比較した結果、重症急性呼吸器症候群(SARS)に似たコウモリのコロナウイルスと最も近い関係にあることが判明。2019-nCoVもSARSや中東呼吸器症候群(MERS)と同様に、コウモリが感染源だった可能性があることが分かった。
しかし、2019-nCoVの遺伝子配列についてさらに詳しい生物情報工学解析を行ったところ、このウイルスがヘビから来ていた可能性が浮上した。
野生のヘビはコウモリを餌にすることがある。武漢市の海産物市場ではヘビも販売されていたことから、コウモリからヘビに感染した新型コロナウイルスが人へと広がり、今回の流行を引き起こした可能性が高くなった」(CNN1月23日)
https://www.cnn.co.jp/world/35148385.html

このヘビはコロナ肺炎の宿主であるであるコウモリを食べます。
SARS流行時にコウモリからコロナウィルスが検出され、ウィルスキャリヤーだとされています。

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「2005年、中国4カ所で捕獲された9種類、408匹のコウモリの血液、糞便、咽頭ぬぐい液の検査で3種類のキクガシラコウモリが抗SARSコロナウイルス抗体の保有率が高いこと(2871%)、コウモリから検出されたウイルスは、ヒトSARSコロナウイルスの塩基配列と92%の相同性をもっており、キクガシラコウモリが自然宿主と考えられました」
(吉川泰弘『コウモリと感染症』上図も同じ)
 https://www.ayyoshi.com/%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%81%A8%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/

ところが今まで発症した人の多くは、この武漢の海鮮市場には行っていないのです。
米国での発の感染者は武漢にこそ行きましたが、
「この男性は「武漢の海鮮市場には行かなかったし、身体の具合が悪い人とも接触しなかった」と話している」(飯塚真紀子1月24日)のようです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20200124-00160018/

また、伝染病の感染力を見る指標とされる医療従事者の感染が上げられますが、今回の武漢肺炎においても医療従事者から多くの患者がでています。

ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院・健康安全センターディレクターのトム・イングレスビー氏は15人もの医療従事者が感染したことについて、米ニュースサイトVOX.comで、懸念の色を見せている。
「爆発的流行(アウトブレイク)において、医療従事者が感染するのはまれです。医療従事者が感染したとしたら、それは常に警告信号となります。医療従事者が感染しないよう防護している状況の中で感染したということは、ウイルスは容易に感染する可能性があることを意味しているからです」(飯塚前掲)

空気感染が始まると急激に感染は拡大しますが、現時点ではわかりません。

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https://gachimom.com/entry/pneumonia-prevention

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http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/sars/sars/

上図にある感染キャリヤーからのせき・くしゃみの飛沫を浴びることを濃厚接触と呼びます。距離で2m以内でが、空気感染となるとその時の風向きで遠くにまで感染が拡大することがあります。
ですから空気感染の段階になると、患者数は急激に上昇しますので、現時点で患者数はまだ同じコロナ型肺炎である上図SARSの初期段階に相当する可能性が濃厚です。

また新型コロナウィルスは既に何回か変異して、より強力になっていると言われています。

中国政府の国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は26日の会見で、「ウイルスの感染力が増している傾向がある」と述べた。ただ、その根拠は示さなかった。また、「感染初期は症状が軽くて隠れた感染者が多くおり、防疫が難しい」とした。馬氏によると、潜伏期間は10日ほどで、最短で1日、最長14日間。感染源は特定されていないという。
 河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「ウイルスがすでに人から人へと感染しやすいよう変異していると考えられる」。さらに、「症状が軽い患者は動き回ることができるので、それだけ他の人に広める機会は増えるだろう。感染を完全に防ぐのは不可能だ」と話す」(朝日1月27日)

武漢からの動画で突然に街頭で倒れる人が写っていましたが、初期には発熱もないまま潜伏し、突然高熱が出て重度になるということもあるようです。
軽度の時は自覚症状がないので、通常どおり職場に行ったり買い物に出かけたりするためにウィルスを拡散してしまいます。
先日武漢から来日した2名がこちらで発症しましたが、これもそのケースのようです。

となると水際防疫がいっそうむずかしなると、各国政府は悩んでいます。
いずれにしても
、今後数週間以内に急激に90度近い角度で患者数が増加する可能性が高いと考えられます。

SARSは終息するまで半年近くかかっていますから、習が日本に来られるかどうか微妙になってきました。

 

 

2020年1月26日 (日)

日曜写真館 時計を巻き忘れた郷

091 人が住んでいくようには見えない昼下がりです

 

014 歯医者さんでした

 

072 小さな神社が郷を守っています

 

015 なにが入っているのか見たくなります

 

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セピア色にするといよいよ現代とは思えません

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郵便局です

2020年1月25日 (土)

発生農場からの出荷先を早急につきとめねばならない

 

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沖縄豚コレラは地域の封じ込めにとりあえず成功したようにみえますが、おとといの農水省の発表ですべてが振り出しに戻りました。
おとといの農水省の疾病対策小委員会の記録がアップされています。
「食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会第50回牛豚等疾病小委員会」の開催結果について

この中で疾病小委は感染源が本土由来についてはふれず、このように述べています。

「今回の発生事例では、抗体陽性かつ抗原陰性の結果や農場主の報告では11 月下旬から死亡頭数の増加していたことから、ウイルス感染から長期間経過しており、すでに野生いのししへウイルスが侵入していることが否定できない
また、発生地域は養豚農家が密集しており、今後もCSF 感染リスクが高い状況にある。このため、野生いのししへの浸潤状況調査を早急に進めるとともに、豚といのししにおける感染拡大・まん延を考慮し、沖縄県を推奨地域に設定する」

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この11月下旬から死亡数が増えたという記述は、当初の報道を大きく前倒しするものです。
疾病小委によれば、当初考えられていたより1カ月も前から出ていたということになります。
いままではこう考えられてきました。そのズレはなんと20日以上・・・!

「発生農場で死亡する豚が出始めたのが昨年12月20日。抗生物質や解熱剤を投与して様子を見ていたが、死亡するペースが加速し、農家は異常に気が付いたという。26日までに25頭を食肉市場に出荷していた。また、県は豚の飼料に使う食品残さを加熱するよう呼び掛けていたが、発生農場では非加熱で給餌していたという」(日本農業新聞2020年1月9日)
https://www.agrinews.co.jp/p49679.html

そしてこの農場から家保に通報があったのは、なんと1月6日なのです。

1月6日(月曜日)、うるま市の養豚農場から県中央家畜保健衛生所へ飼養豚が死亡しているとの報告を受け、家畜防疫員による立入検査を実施しました。」
本県におけるCSF(豚コレラ)疑似患畜の確認について(3例目沖縄市)(PDF:89KB)

ということは従来考えられていた発生から通報までの期間が17日間ではなく、おそらくその倍の約36日間もあったことになります。
この間、この初発農場は平常どおり動いていましたから、堆肥場に糞尿を捨てに行き、近隣の農場にも顔を出していたと思われます。
そしてその間に、平常どおり出荷しまた。

「県によると、確認された養豚場では昨年末から豚が死んでいたものの出荷を続けており、感染が拡大している恐れがある」
(毎日新聞  )

農水省は、今回の沖縄豚コレラを本土のウィルスと同型であるとしたことから、(明確には言っていませんが)本土からのウィルスが含まれた加工肉(生肉)が感染源だと見ていると思われます。
つまり、一宮崎人さんが指摘しているように、本土の第1例などにも通報の遅れがあり、その間出荷されてしまったという危惧は残るわけです。
その場合、すでに全国規模で流通してしまって、それがたまたま沖縄に入ったということになります。
そしてそれが食堂の残飯として廃棄され、うるま市の初発農場の残飯に混入していたとしか考えようがありません。

同じ加工肉(生肉)の流通による感染拡大の危険性を沖縄の事例ももったということになります。
農水疾病小委の報告書によれば、うるま市で発生を見た11月下旬、さらにその潜伏期間が2日から14日、感染後5日から14日間は感染をうつす可能性があります。
ですから、死亡豚が急増したという11月中旬からさらに最大14日戻すと11月中旬、そこから1月6日まで感染豚を出し続けていました。
おそらくこの感染豚肉を通して感染が散布されてしまっているはずです。

また許しがたいことに、この発生農場は死亡豚が大量に出ていて、獣医も呼ばず、通報も怠り、その間出荷さえしていました。
獣医を呼んでいないというのは、仮に獣医を呼べば絶対に家保に通報する義務があるからで、獣医師が診断して通報せねば獣医師法違反です。
初期症状は見落としても既にこれだけ死んでいるのですから、獣医師が豚コレラだと診断できないはずがありません。
だから獣医師も呼ばずに素人診断でなんとかなるだろうと考え、むしろ死亡が急増したのを見て、慌てて出したかったのではないかとすら疑ってししまいます。
非常識以前のことで、私は強い怒りを覚えます。

県産豚肉は県内を中心に、本土まで流通し、一部は香港などにまで輸出されています。
畜産は沖縄県農業の農業産出額の45.6%も占め、豚肉は牛肉と並ぶ稼ぎ頭です。
早急に11月中旬から1月初旬にかけての当該農場の出荷先を洗いださねばならなくなりました。

 

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なお、農水省はこの疾病小委で沖縄県に限定的予防ワクチン接種を認めました。

「予防的ワクチンを発生地域から離れた北部及び南部から接種を開始し、発生地域周辺の中部地域への接種を進めること。その際、発生地域(中部地域)周辺は、接種により、野外感染をマスクする恐れがあることから、接種前には農場の清浄性を確認すること」(農水省疾病小委前掲)

遅きに失しましたし、まだ地域も北部と中部に限定されていますが、これはこれでいいことです。

 

 

2020年1月24日 (金)

農水省、沖縄豚コレラは本州からの加工肉・肉の伝播だと発表

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私の記事(23日早朝)と入れ違いに、農水省疫学チームが本州のものからものと同じであったとの報告を出しました。

「豚コレラ(CSF)の感染経路を調べる農林水産省の疫学調査チームは23日、沖縄県で発生した事例の分析結果を公表した。本州から感染した豚の肉製品が入荷されて残飯に混入し、これを加熱せずに与えたことで感染した可能性が高いとした。農水省は残飯の肉を餌にする場合、加熱するルールを順守するように指導を徹底する方針だ(共同1月23日)
https://this.kiji.is/593041211934786657

私が中国由来ではないかと推論した昨日の記事をだした当日の夜ですので、入れ違いのかっこうになってしまいました。

農水省の疫学報告ですが、現時点では詳細な報告は上がっていません。プレスリリースもないようです。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/
ただ、農水省は1月23日午後1時20分から非公開で「農林水産省CSF・ASF防疫対策本部」を開催していましたので、そこにおける発表があったようです。
詳細な疫学報告の公表が早く欲しいところです。

さて今回の沖縄事例では初めて残版が感染源とされましたが、これは野生イノシシが原因だとした今までのものとは初めて異なるものでした。
農水省は従来このような公式見解をだしてきました。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/

CSFウイルスにより起こる豚、いのししの熱性伝染病で、強い伝染力と高い致死率が特徴です。

つまり明確に野生イノシシ由来だとしてきたわけで、これが今回本土からの汚染された加工肉、ないしは肉の残飯への混入ですか、これはこれで大きな問題です。

というのは農水省はいままでこう公表してきたからです。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/consumer.html

CSFにかかった豚の肉が市場に出回ることはありません。
このため、「当店ではCSFが発生している府県の豚肉は扱っていません」といった表示は不適切です。
農林水産省では、こういった表示について調査を実施しており、不適切な表示が見られた場合には、表示の自粛や改善を求めることとしています。

「出回ることがない」どころか、感染農場の加工肉(ないしは肉が沖縄に到来し、その残飯から感染してしまったのなら、野生イノシシに重点を置いた従来の農水省の豚コレラ対策では効かないということになります。
今まで感染した野生イノシシの移動によって拡大してきたと思われてきました。それに沿って防疫指針がたてられています。
感染メカニズムはこのようなものだと推論されてきました。

「現在流行しているウイルスは病原性が比較的弱いため、感染イノシシはすぐには死なず、感染後、ウイルスを体内で増殖させながら動き、他のイノシシにもウイルスをうつし、ウイルスを環境中に排出して回っている、と考えられます。そのウイルスがネズミやネコ、鳥などの野生動物、人の衣服・靴、車などに付き、農場に持ち込まれる可能性も高くなります。こうして、豚コレラの感染エリアがどんどん拡大している、と考えられるのです」
『なぜ日本は豚コレラの流行を止められないのか』松永和紀 2019年9月6日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17264?page=2

下図は野生イノシシの死亡例の広がりをマッピングしたものです。岐阜県で発生した豚コレラは1年かけて広がり、この夏には北陸三県で野生イノシシの感染が確認され、福井県では豚も感染した。そのため、全国の養豚関係者が警戒を強めていると農水省は説明しています。

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赤丸は死亡した野生イノシシ発見場所  出典農水省資料

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これを食い止めるための対策は極めて困難でした。飼育されている豚ならともかく、人間が管理しない野生イノシ相手だからです。

「この流行を食い止めるには、野生動物対策と飼育している豚の対策の両方をとらなければなりません。
まずは大元のイノシシ。経口ワクチンを春、夏、冬と散布してイノシシに食べさせる計画です。しかし、野生イノシシの感染は止まらず、ついには7月上旬に長野県、下旬には富山県、8月下旬には石川県でも感染して死亡したイノシシが見つかりました。つまり、ウイルスが岐阜県から大きく広がり、周辺県でも養豚農家が厳重警戒中、というわけです。 岐阜県や愛知県は、イノシシの行動を制限し広がりを防ぐため森林に防護柵を設置するなどしましたが、流行阻止の決め手とはなりませんでした」(松永前掲)

現実に行われている野生イノシシに対する感染防止対策は蟷螂の斧に似たものでした。偶然に人間が埋めたワクチン入り餌を食べてくれるのを祈るというものだったからです。

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朝日

その一方で、感染した加工肉や生肉がでまわらないようにするとしていたわけですが、これが今回根底から覆されたことになります。
既に感染肉が国内で流通しており、それが遠く離れた沖縄でも感染が確認されるという事態が意味するものとは、警戒範囲を流通路全域にまで拡げなければならなくなったということです。
これは言い換えれば、全国規模で豚コレラが発生する蓋然性が出たということになります。

とりあえずは全国規模での残飯養豚の立ち入り疫学検査からはいるのでしょうが、それだけでは済まない気がします。
というのは発生県の加工肉、ないしは肉に混入している可能性が出たからです。

たとえば沖縄県の場合が典型ですが、本州と同一の型だったからといって「本州由来だけ」と決めつけるのは短絡にすぎます。
おそらく今回の「本州の肉由来」報道で、「そうか、中国からは安全なんだ」なんて二者択一的に妙にはしゃぐ人が出そうです。
親中派の地元メディアと春節ではしゃぐ観光業者は、「あれは本土からのものと決まったから、中国は安心さぁ」などと言い出しかねません。

まったく違います。どちらか一方ではなく、脅威がふたつになったにすぎません。
ひとつがふたつになり、一正面が二正面になったというだけのことです。
いや、新型肺炎までいれれば三正面ですか。

たとえば現状でも沖縄においては、ひとつひとつのクルーズ船や旅客機からの客に対して新型肺炎の検疫をせねばなりません。
本気でやれば米国のように上陸前にサーモグラフィを当てたり、武漢からの客には聞き取り調査や簡易検査をせねばならないので大変ですが、いまのところ厚労省は自己申告で「お熱がある方は自己申告してくださいね」という性善説に依拠しているようですから、この省、国民を守る気あるんだろうか。
そのうえに更に彼らが出す膨大な残飯のトレサビリティ(遡及調査)までかけねばならなくなったわけですが、これもウィルスは本土からだからやらなくてもよしとなれば手抜きも可です。
そしてそのうえに本土からの食肉にまで目を光らせろというわけですから、現場の皆さんにはお気の毒というしかありません。

沖縄は豚コレラで一国の養豚が壊滅寸前に追い込まれた中国と隣接している地理的条件があり、旅客機やクルーズ船で数百、時には数千人単位で沖縄にやってきます。
これら中国人観光客からの感染拡大に警戒を継続するのはあまりに当然のことで、いささかも緩めてはならないどころか春節で強化する必要があるのです。
春節を前にした時期にこんな発表をして、中国経由感染に対する弛緩をうながすかのような農水省の気が知れません。

 

 

2020年1月23日 (木)

感染経路はわからないだろうが


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沖縄のデニー県政の対応があまりに鈍重なので批判を受けていますが、その一つの理由は本土のように野生イノシシに発生がみられなかったからです。
イノシシからの感染は本土の長野とか岐阜のこと、よもやイノシシが空を飛んでくることはあるまい、と思っていたのでしょう。

ところが、はるかに離れた沖縄で出てしまった、それも野生のイノシシがあまりいるとは思えない都市部のうるま市で起きてしまったわけです。
これは感染侵入経路が野生イノシシ経由ではなく、おそらく海外から持ち込まれたものだということです。

うるま市の初発がどこから入られたのか、今後も明確なことは分からないでしょう。
宮崎口蹄疫といった大規模伝染病事例でも、結局は最初のウィルスがどこから来たのかは最後まで分からなかったのです。
当時は韓国人研修生や観光客からだ、いやあれはバイオテロだとか、かまびすしく言われたものでしたが、(実際にそのような証言に私も惑わされたこともありましたが)、全部裏がとれないものでした。

それを頭においたうえで、あくまでも可能性として考えた場合、可能性は三つです。
①野生イノシシ
②食品残さに残った中国製食肉・加工品)
③ヒトから

まず①のイノシシですが、この可能性は捨てていいでしょう。
というのはうるま市は野生イノシシが見つかることは稀で、発見の南限にあたっています。
発生農場近辺に現れたという証言も出てきません。
そうである以上、イノシシから持ち込まれたという可能性には無理がありすぎます。

③のヒトですが、発生県はすべて本土ですから、本州からこの農場に来訪したことがない以上、この可能性は消えます。
あるいは外国人が訪問した記録もいまのところは出てきません。
ただし、その後の連鎖発生は、おそらくは初発農場のヒトが持ち回ったものです。
感染した長靴の足跡を踏んだだけでうつるのです。

となると消去法で②が残ります。
この初発農場はすべてではありませんが 、一部で残飯養豚をしていました。
農水の飼育衛生指針にはこのような一項があります。

飼養衛生管理基準
【留意事項】畜産物を含む食品残さの適切な処理について
畜産物を含む食品残さの処理は、次に掲げるいずれかの方法による。ただし、当該食品残さの原材料が既に同等の条件で処理され、その汚染のおそれのない工程を経て給与されていることが確認される場合には、この限りでない。
1 70℃、30分以上の加熱処理
2 80℃、3分以上の加熱処理

残念ですが、このうるま市の養豚場では加熱処理していない食品の残さ(残飯)を豚のえさに使用していました。
この加熱していない残飯の中に、中国からの豚コレラウィルスが入った加工肉や生肉が入っていたことはありえます。
那覇空港では2015年から検疫犬まで置いて(ものすごく可愛いですが)没収していますが、それをくぐり抜けたのかもしれません。

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いずれにしても、いったん発生してしまえば野生のイノシシに拡大する手前で撲滅せねばなりません。
野外化した場合、島に豚コレラウィルスが半永久的に「いつもそこにいる」ことになるからです。
うるま市だけで封じ込めろと言っているのはその意味です。

実例としては、今の朝鮮半島はにおいては口蹄疫とトリインフルが野生動物に広く感染拡大しているためにこの脅威から自由になる日は来ません。
一回野外生物に感染が常在化すれば、ウィルスの撲滅は事実上不可能だからです。
よく農水省は安易にトリインフル対策として野鳥が媒介するから接触させないようになどと言いますが、その野鳥をブロックできたとしてもその糞にハエがたかったらそこからも伝染するわけで、一回野生生物にでたら防ぐ方法などないに等しいのです。
だからワクチンを使わせろと私は言っています。

本土では野生イノシの感染拡大を止めるために、空中からヘリでワクチン入りエサをバラ撒いていますが、ワクチン入り餌をたまたま食べてくれることを祈ってやっているようなもので、農水のやっているアリバイ作りにすぎません。
ですから、イノシシが多いやんぱるに入られたら、以後の防疫対策はほとんど意味をなさなくなるのです。

このような切所に立っているという切迫感がまるでデニー知事にはありません。
危機における護民官こそ知事の最重要な仕事なはずですが、この人それが分かっているのでしょうか。
まぁ、それは危機だと思っているから危機感をおぼえるのであって、認識していなければどうにもなりませんがね。

その上に、こともあろうに同時に新型肺炎が中国から到来します。
沖縄はふたつのウィルスと立ち向かわねばならくなったわけで、ため息がでてきます。

 

2020年1月22日 (水)

春節大移動でバラ撒かれる新型コロナウィルス

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中国でまた新型感染症がパンデミックの様相を呈しています。それもヒトからヒトへの感染が確認されてる新型ですからタチが悪い。
しかも中国においては春節とよばれる旧正月休暇で、民族大移動が開始されようとしています。
発生地域の武漢から、一挙に中国全土へ、アジア各国に、そしてわが国にウィルスが開放されるということになりました。
ちなみにわが国が海外渡航先のトップです。

「ネット旅行代理店中国最大手・携程(シートリップ)がまとめた春節の海外旅行先ランキングでは日本が第1位だった」(時事1月21日)

インバウンドだ、観光立国だなんて浮かれている場合じゃありません。観光国家というのはウィルスに対して抵抗力がないということなのですから。

中国も多少の危機感があるとみえて、習が「断固効果的な措置をとれ」なんて言っていますが、なに言ってんだか。
そもそも武漢からの移動は制限すべきです。
いまやっと武漢への団体旅行の禁止ていどが打ちだされましたが、手ぬるい。本来は、武漢を封鎖してもいいくらいなのです。

習の「効果的予防措置」とやらの内実は、「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めるよう」(NHK1月21日)だそうで、なんだ予防知識の普及かい、ってところです。
まるでデニー知事の豚コレラ対策が「消毒をしましょうね」だったのと五十歩百歩です。まぁ、なにかのまじないていどの御利益はあるでしょう。
今回中国は殊勝にも、「2003年のSARSの時の情報の隠蔽を繰り返してはならない」(「環球時報」1月20日社説)と言っていますが、私はまったく信じていません。
いちおう中国中央電子台や各地の保健当局の発表によれば、患者数はこのようなものです。((NHK1月21日)

・武漢・・・198人、
・北京・・・5人、
・上海・・・1人、
・広東省・・14人
計          218人
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200121/k10012252781000.html

「情報隠蔽を繰り返すな」と言っているそばからウソです。こんな小規模なはずがありません。
中国政府の発表する数は、都合のいい情報は100分の1に、悪い情報は100倍にしてリテラシーしておかねばなりません。

「中国の武漢で新型コロナウイルスの感染が拡大している問題で、イギリスの研究者らは、実際の患者数は地元当局の発表の40倍近くに達する可能性があるとの見方を明らかにした。
これはWHO(=世界保健機関)などにも助言を行っているイギリスのインペリアルカレッジ・ロンドンの研究チームが公表したもの。
中国の武漢市当局は、新型コロナウイルスによるとみられる肺炎患者を、これまでに45人確認したとしているが、研究チームは今月12日の時点での推計として、実際の患者数は1700人あまりに達している可能性があると発表した。
その上で、「武漢以外の都市の肺炎による入院患者すべてを監視対象に含む必要がある」などと警告している」(NNN1月18日)
http://www.news24.jp/articles/2020/01/18/10580566.html

英国の研究チームによれば実際の患者数は1700人以上で、しかも武漢以外でも増加しているとみています。
中国政府が武漢の発生地域内も、武漢から外への移動も制限していないのですからあたりまえです。

新型感染症を封じ込めるのは、家畜の感染症対策と原理的には一緒です。
発生点で封じ込めて撲滅するしか方法はありません。
ただ家畜とヒトは違いますから、殺処分にはできないだけのことで(あたりまえだ)、厳重に封鎖して、発生箇所からサーベイランスを徹底して患者の動いた跡を洗い出して消毒しまくり、患者を隔離し投薬する、これしか感染拡大を防ぐ方法はありません。

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パンデミックを起こした地域を封鎖せずに、春節でさぁどこにでも行きやがれとばかりにやったら結果はやる前からわかりきっています。
2003年のSARS時の、中国全土と北京市の患者数と北京における初期段階での患者数のグラフがありますので、みてみましょう。
移動を制限しないことによって、患者が爆発的に急増していくのがわかります。

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統計でほとんど90度近い急角度で患者数が増えてしまうのは、ひとつには中国当局が徹底的に情報を隠蔽するからです。
この時は人民解放軍の病院に入れてしまって、患者隠しまでしました。
常識的に見ても、初期の患者数がこんなに少ないはずがありませんが、ひとつの理由は徹底した情報統制のせいでした。
当時、在留邦人がメールでSARSと書いただけで、当局からブロックされてしまったそうです。

その上にこれを監視すべきWHOからして事務局長がマーガレット・チャンという中国女性が牛耳っていましたから、新型感染症について中国に聞くこともしなかったというていたらくです。

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マーガレットチャン事務局長 なんか顔まで今の香港のキャリーラムみたい

この御方は、香港出身ですが中国のカネの力で事務局長にねじ込んだ人物で、在任中は新型トリインフルやSARSやMARSなどのコロナ新型ウィルス、そしてエボラにいたるまで、中国のいいなりとなって隠蔽に協力し続けたトンデモ事務局長でした。
やった「功績」といえば、台湾の表記を「中国台湾省」としたことくらいですか。

そしてもうひとつの当局発表の初期患者数がおかしい理由は、闇労働者の存在が無視されているからです。
その数すら不明で、中国社会の底辺を移動する「民工」と呼ばれる底辺労働者ですが、彼らの存在自体統計には出てきません。
したがって中国当局はこれを「いないもの」として扱い、闇労働者たちには国家による医療が与えられていません。
彼ら民工の大部分は農村出身で
 農村籍しかないために農村で医療を受けるしかありませんが、そもそも農村部は医療が大幅に都市より遅れている上に、帰るキップ゚代が半年分の収入なので、もぐりの医院に診てもらうしかないのです。   

実はこの民工階層のさらに下に中国が進出したアフリカからのもぐり労働者がおり、もはやその数すら不明です。  
のような底辺労働者は病院は相手にしませんから、闇のもぐり医者頼みです。
ロイター(2013年3月27日)はこう書いています。

「中国政府が医療制度の改革を掲げる中、闇診療所は相変わらず繁盛している。北京の街の片隅、裸電球一つの粗末な「部屋」は出稼ぎ労働者である張雪方(ジャン・シュエファン)さんからすれば「一番いい病院」である。環球時報(電子版)が伝えた。 北京市民ではない張さんは市内の公立病院でもっと安い治療も受けることができず、遠く離れた故郷の医療補助金を受け取ることもかなわない。病気になった時には、北京に暮らす数百万人の出稼ぎ労働者同様、不衛生で無秩序な「闇診療所」に頼るしかないのだ」  

このような医療に見捨てられた人々は、中国において2億3千万人以上潜在すると言われています。もちろん公式統計はありません。  
このような人たちこそが、新型コロナウィルスの温床なのです。
この階層を調査することなく、病院に入ることができる裕福な特権階層だけを調べて「ヒト・ヒト感染が確認できない」と言っていたのが中国当局と中国のエージェントであるマーガレット・チャン率いる当時のWHOでした。  

彼ら底辺労働者は、春節になると一斉に帰郷します。それを楽しみで一年間の過酷な労働に耐えて来たのですから。

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彼らが中国全土に新型コロナウィルスをバラ撒いて行くことになるのです。

また富裕層は海外旅行にいきます。もっとも好まれているのが日本です。

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上図は旅客機における感染拡大をあらわしていますが、このように瞬く間に客室で感染拡大していきます。
しかも伝染病は、うつされたヒトからまた別のヒトにうつるというネズミ算のような現象を起こしていくからやっかいです。

「中国武漢市衛生当局が19日に発表したところでは現地で新たな17人の新型コロナウイルス感染例が出ており、うち3人が重症例だという。1月25日前後から始まる春節大移動では百万単位の人間が武漢を出入りするとみられており、各界はこの人的移動に伴う武漢コロナウイルス感染の拡散を恐れている」
「BBCによれば武漢の人口は1900万人、毎日3400人が国際便で行き来している。流行病統計学的に推測によれば、すでに1723人に感染している可能性があると、ロンドン帝国大学グローバル感染症分析医学研究会センターの科学者は指摘している」
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.54 2020年1月20日

もう泣いても笑っても春節は始まっています。


2020年1月21日 (火)

豚コレラ予防ワクチンを解禁しろ

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豚コレラについて獣医師の「一宮崎人」さんから貴重な情報を頂戴したので、あらためてこちらにも転載させていただきます。

「豚を専門にしている同僚獣医師の話では、現状日本にあるマーカーワクチンはオーエスキーと口蹄疫だけらしいです。豚コのワクチンは残念ながら現状はマーカーではないとの事でした。ただ、このまま感染拡大が続くならマーカーの導入も考慮されるとは思います。
あと、今回の一連の豚コ(中部地方からの)騒動の初期段階では、どうも弱毒株であったようです。臨床症状が極めて分かりずらく、典型的な豚コの症状は呈していなかったようです。言い訳になるかとは思いますが、それも感染を拡大させた一つの要因であるようです」

なるほど、豚コレラについては現状でマーカーワクチンはないそうです。
もちろん技術的には製造可能なはずで、国の方針が緊急ワクチンとして接種すると完全に舵を切りきったわけではないので、業者団体や行政が強く押せば製造に踏み切ると思われます。
まだ、業界も行政ももうひつ切迫感がありません。よその県の動向を横目で見ているというところでしょうか。

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現況で、日本養豚協会(JPPA)は「地域限定で予防ワクチンを打て」という言い方をしています。

「日本養豚協会、地域限定で飼養豚へのワクチン接種を吉川農水相に要請
日本養豚協会(JPPA)の香川雅彦会長は去る8月2日、農水省を訪れ、豚コレラ被害拡大防止に関する要請書を、吉川貴盛農水大臣に提出した。要請書では、地域限定での飼養豚への予防的ワクチン接種の検討、野生イノシシの豚コレラが清浄化するまでワクチン接種を継続すること、摂取した豚・豚肉の円滑流通への配慮を求めた」(2019年8月9日日本食品産業新聞)
https://www.ssnp.co.jp/news/meat/2019/08/2019-0809-1726-14.html

ワクチンをやらねばならないという切迫感が業者団体に出たのは、野生イノシシに発生が拡大したからです。

 「香川会長は要請後の取材に対し「JPPAとして、富山、福井で野生イノシシの豚コレラ感染が見つかり危機感を持った」(食品産業新聞前掲)

野生イノシシに感染が発見されてしまった地域では、ワクチン以外予防方法がありません。
いったん発生すれば全頭殺処分です。補償はあることはありますが、支払われるまでに時間があき、その間のつなぎ運転資金がパンクしてしまうなどの理由で多くの発生農家が再建を断念した歴史があります。
つまりはいったん出たらそうとうの確率で廃業なのです。
しかもこれが農家レベルに止まらず、県の畜産全体の壊滅につながりかねない様相も呈してきています。
たとえば岐阜県養豚協会の吉野会長はこのように述べています。

「岐阜県では5.8万頭が殺処分され、流通も含めて壊滅状態にある」(食品産業新聞2019年8月6日)
https://www.ssnp.co.jp/news/meat/2019/08/2019-0806-1412-14.html

これは発生頭数をみれば一目瞭然です。侵入された県の畜産の打撃の深さは計り知れません。
ここまで大きな打撃を生産農家が受けると、食肉加工場も仕事がなくなって共に倒産の危機にさらされてしまいます。
そして供給が途絶えた間に、他の地域にシェアをとられて、再建したころには出来ても売れないという憂き目に合うことになります。

とくに安い外国産豚肉に市場を奪われる可能性が高いでしょう。
それでなくてもTPPと日米貿易交渉による豚関税を下げる措置が始まりますから、二重の打撃が重なります
つまり、いったんこのような海外悪性伝染病に侵入されれば、生産のみならず流通・市場にいたるまで縦に壊滅状態となるのです。
そしてそれは一年間では止まらず、復興後数年かかる場合がでるでしょう
それまで生産農家の体力が持つかです。

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https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190926-39218.php

このような危機感から、発生県に隣接する東海5県でもワクチン接種しろという動きが起きています。

「豚コレラを考える会に350人が集結、愛知・岐阜・長野・三重・静岡の養豚協会などが地域限定ワクチン接種要請を決議、東海農政局・富田局長に提出
ワクチン接種については、野生イノシシでの豚コレラ感染が常在化し、今年末から来年にかけて関東まで拡散する可能性を示唆した上で、野生イノシシ感染地域において、良好な防疫衛生対策を実施している農場においても感染を防ぎきれない事例が続く以上、農場・養豚業界を守るため、何らかの形でワクチンに頼るほかない、とした。また、ワクチンの接種地域については、当面は東海5県(岐阜、愛知、三重、静岡、長野)、または野生イノシシでの感染が確認されている中部10県(5県に加え、山梨、福井、石川、富山、新潟)で接種を開始し、関東、その他の地域は状況に応じていつでもワクチン接種が出来る体制を整える必要性を訴えた」(日本食品産業新聞前掲)

ここでも業者団体が要望しているワクチン接収とは、発生農場周辺に対する緊急ワクチンと発生県に隣接する地域の予防ワクチンの「いつでも接種できる準備」にすぎないことに留意下さい。

2019年9月20日、江藤拓農林水産大臣は就任早々、豚コレラの防疫指針の改定によって飼養豚への予防的なワクチン接種を可能とするように農水省の防疫方針を大きく転換することを表明しました。実に使える農水大臣です。
豚コレラの蔓延を放置すれば、日本の食糧安保などは机上の空論にすぎなくなるからです。

しかし農水省は豚コレラ緊急指針第13項「早期発見と患畜及び疑似患畜の迅速なと殺を原則とし、平常時の予防的なワクチンの接種は行わないことと」を完全に改訂する気はないようです。
許容したのは限定的に発生を見た地域周辺、たとえば今回の沖縄県の場合ならうるま市近辺だけであって、北部地域や離島が予防ワクチンを使用するのははあいもかわらずノーです。

谷口信和・東大名誉教授はこのように述べています。

「あくまでも解禁したのは、「発生農場におけると殺及び周辺農場の移動制限のみによっては、感染拡大の防止が困難と考えられる場合には、まん延防止のための緊急ワクチン接種の実施」を農水省が決定することができる。その際、予防的殺処分は認められていない」(農業協同新聞2019年9月26日)
https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190926-39218.php

つまり全国レベルで予防ワクチンを解禁することに対して農水省も業者団体も消極的なのです。
この理由はOIE(国際獣疫事務局)が指定する「清浄国」カテゴリーの地位から脱落して、外国からの豚肉輸入かふえるのではないかという危惧があるからのようです。
しかしOIEも既に方針転換しており、ワクチン接種で防げるものは防いで行かないと、わが国のように清浄国ステイタス確保の目的のために無用に家畜の殺処分を増やすという傾向が見られたからです。これでは動物福祉もなにもあったもんじゃありません。
そこで新しいOIE方針は、ワクチン接種してもそれによるカテゴリー変更を一国規模でとらえずに、接種地域だけとする考え方でした。

「ワクチン接種と域内の豚肉・豚肉製品流通によって他の地域を清浄地域とする方向が探られているようである。ブラジル・コロンビア・エクアドルの3ヵ国で採用されている方向である。これによって、清浄地域からの豚肉等の輸出が可能になるというものである」(谷口前掲)

このような国際的動きはあるものの、現時点では国の考え方も業者団体・自治体の考え方もバラバラで整理されていません。
まずはこれを整理し、とまれ緊急ワクチンを打つ打たないという初歩的なゴタゴタには終止符を打つべきです。

12月20日に発生してからすでに1カ月たって、未だ緊急ワクチンすらやるかやらないか決めかねている沖縄県の対応は「それ以前」です。
感染拡大をブロックする緊急ワクチンは当たり前であって、すでに問題は発生地域外の予防ワクチン接種に移っているのです。
沖縄県は周回遅れだということを自覚すべきです。

 

2020年1月20日 (月)

伊方3号機がまたまた停止仮処分

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伊方3号機がまたまた停止仮処分で゙停止になる可能性がでました。これでなんと2回目です。またですか。

「愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について広島高等裁判所は、地震や火山の噴火によって住民の生命や身体に具体的な危険があるとして、運転を認めない仮処分の決定を出しました。現在は定期検査のため停止中ですが、検査が終了する4月以降も運転できない状態が続く見通しになりました。伊方原発3号機が司法判断で運転できなくなるのは平成29年以来、2度目です」(NHK2020年1月17日下写真も)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200117/k10012249231000.html

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呆れたとしかいいようがない高裁判決です。
これには既に最高裁判決がでているのですから、下級審がそれを覆したことになります。
わずか3人の訴訟で何年もの歳月と莫大な費用をかけてできた安全対策も、それをまた膨大な時間をかけて審理した規制委員会の判断も、短期間でヒッくり返せるのですから、裁判所とは気楽な稼業ときたもんだ、です。
関連記事
樋口
判決 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c2ac.html
山本判決http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-32fe.html

既に地裁ではこの訴えは退けられており、更に最高裁でも判決は確定しています。
まずは
最高裁判決を見てみましょう。よい機会ですので、判例要旨を転載しておきます。
この最高裁判例は最高裁判決だからというだけでなく、裁判所がどこまで原発の稼働に踏み込んだ判断ができるのか、その限界を明確にしめしています。法律文章が頭が痛くなる方は下に飛んで下さい。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54276


■ 最高裁判所第一小法廷
 伊方発電所原子炉設置許可処分取消 平成4年10月29日
● 裁判要旨 一 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべき(略)
二 (略)被告行政庁の側において、まず、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要(略)

ここで最高裁は、「原子炉施設の安全性に関する審査及び判断は極めて高度な最新の科学的専門的技術的知見に基づいてなされるから、それらに看過し難い過誤、欠落、不合理な点が無ければ、行政庁の判断を尊重すべきである」という判示をしめしています。

最高裁判例には拘束力があります。今回のような新たな判例が出た場合、高裁の上級審の最高裁判例が優先するからです。

「異なる判例がある場合、優先順位としては、上級審の判例が優先され、同級審の判例同士では新しい判例が優先する。特に最高裁では、「判例変更」の手続が取られて新しい判例が出来た場合、「古い判例に対する違反」を上告理由とすることが出来なくなり、古い判例の「先例」としての価値が無くなることから、新しい判例の優越性が明確である
判例 - Wikipedia

つまり最高裁は、専門家が最新の技術的知見を結集した行政判断を簡単にはくつがえせないよ、するなら新たな科学的知見が発見されねばならないんだから、そうでもない限り最高裁判例に従ってもらうからね、と言っているわけです。
下級審がなにをどう判断するかは自由だが、判例としては最高裁判例、つまり「最新の知見による行政判断を尊重せよ」、ということです。

では新たな科学的知見はあったのでしょうか。
この奈良県香芝市から伊予灘を経て愛媛県の佐田岬に達する全長360キロの断層帯 活断層が、原発敷地沿岸部に走っているということを判決の根拠にしています。

「広島高裁は、「十分な調査をしないまま活断層が存在しないとして、再稼働の申請をした」とし、敷地の近くに活断層の存在が否定できず、問題がないとした原子力規制委員会の判断には「過誤や欠落がある」と認定した」
「広島高裁は、「敷地2キロ以内にある中央構造線が横ずれ断層の可能性も否定できず調査は不十分」としている」
(加藤成一『広島高裁「伊方原発差止」決定は異議審で取消される』
http://agora-web.jp/archives/2043858.html

さてさてこの高裁判決でもまた出ました、「(リスクは)否定できない」という論法です。
実はすでに2回に渡ってこの活断層は海底ボーリングや海上音波調査をされています。

ひとつは地震調査委員会は、この断層帯の状況による長期評価をしており、また四国電力も独自調査をしています。

四国電力側は、前記の通り、原発敷地沿岸部海底の地層の状況について、「海上音波探査」をして、活断層の不存在を確認している。海上音波探査とは、調査船により海底に向けて一定の間隔で音波を発生させ、その反射した音波を観測し、海底の地質構造を調べる方法であり、日本では活断層の分布を明らかにするために広く利用されている。
さらに、四国電力側は、上記沿岸部海底深度2000メートルの「ボーリング調査」も行い、地下構造を原因とする顕著な地震動の増幅がないことを確認し、その結果を平成30年10月19日原子力規制委員会に報告している(平成30年12月21日付け「四国電力報告書」より)」(加藤前掲)

よくあるメディアや運動団体が法則的にやる論法が、この「事故は避けられたはずだ」「予知できたはずだ」というものがあります。
このような議論を私は「はずだ論」と呼んでいますが、この判決でも「ずれる可能性は否定できない」というお定まりの論法が登場しました。

「危険を否定できない」という言い方にはさんざんつきあわされました。代表的なのは、低線量被曝の「危険を否定できない」論でした。
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00ベクレル以下の低線量域での発癌などの健康被害は、ないか、無視し得るリスクにも関わらず、一部の学者とマスコミは「危険を否定できない」という言い方で恐怖を宣伝し続けました。
低線量被曝の健康被害が確率論であることを逆手にとって、「危険の可能性がある」という言い方です。
現実には他のリスクに紛れ込んで無視しえるノイズていどの「危険」であっても、このような人にかかるとあたかも無限大の「危険」に膨張します。

反原発運動にはこのような詭弁論理が多すぎます。
確かに「可能性」としては残るわけですが、科学に100%がない以上、「危険は残る」わけです。

「残る」のは確かですが、コンマ以下のリスクなどは確率論として無視しえるのです。
ですから、こういう表現をとって「危険」を必要以上に煽る人たちを、私はあまり信用しません。
こういう言い方を真に受けると、今回の高裁のように阿蘇山の噴火が大昔あったから「爆発することを否定できない」ということになります。

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今回の高裁判決はいわば、隕石がぶつかったら原発は壊れるぞというようなもので、9万年前の阿蘇のカルデラから火砕流が流れて、海を渡って130㎞伊方原発に達するということを述べています。 

これについて、田中俊一前規制委員長がこうクールに言っています。

「最近の研究によりますと、カルデラ噴火の場合には噴火の数十年前くらいからマグマの大量の蓄積があるということです。当然地殻変動とか何かっていうことが察知できるというふうに判断されています」(2014年8月25日議事録【PDF:416KB】 - 原子力規制委員会

まだ福島第1事故の時に言われた貞観地震(869年)のほうが、はるかにリアリティがありました。せいぜい千年に一度ですからね。
それを言うに事欠いて9万年前ときたもんだ。もう私、開いた口が塞がりませんでしたよ。
万年単位で危険性判定ができるのなら、地上にあるすべてが「危険」です。
Aso4は阿蘇山最後の破局噴火と呼ばれていて、現在の阿蘇山がAso4レベルの大噴火を起こす可能性は、かぎりなくゼロです。
破局噴火 - Wikipedia
阿蘇山 - Wikipedia

科学にゼロはありませんから、ありえないとは言いませんが、火山学者ですぐに起きるという人がいたら、そうとうにレアな人でしょう。
では、もしAso4レベルの大噴火が起きたらどうなるのか、ラフ・シナリオを描いてみましょう。

火砕流によって地元の熊本はおろか、大分、長崎、佐賀、宮崎県北半分、山口県南端は短時間で全滅します。
時速200㎞の火砕流から、この範囲の住民1千万人は逃げる術すらないでしょう。

Aso4九州全域はほぼ人が住めなくなり、降灰は本州、四国、北海道、朝鮮半島にまで達します。
判決がいうように、火砕流は伊方にも海を渡って怒濤のように押し寄せるでしょうから、伊方原発はたちまちその下に埋没してしまって、ちょうどいい「石棺」となって放射能を遮蔽してくれるかもしれません。(もちろん悪い冗談です)
Aso4の降灰は40㎝にも及び、沖縄、鹿児島、宮崎南部を除いて、北海道においても地層として今でも地層年代測定の目安になっています。

すなわち、再びAso4クラスの噴火が起きるとすれば、九州、西日本のみならず日本列島全部を火山灰に埋没させてしまいます。
だから原発うんぬんというレベルをはるかにこえたメガ災害であって、こんなものを「リスクの可能性」と呼ぶなら科学文明を一切やめますかという事になります。
裁判所は、その下に活断層が無数に走っている日本の道路を走る自動車や鉄道、工場などは運用停止の仮処分を出さねばなりません。

これはあながち冗談で言っているわけではなく、Aso4 クラスの噴火が起きれば必然的にそうなります。
下の絵は1783年の浅間山の噴火を描いたものですが、Aso4よりはるかに小規模でしたが、江戸時代の3大飢饉の1つ天明の大飢饉が引き起こされました。
それは噴火によって火山灰が成層圏まで吹き上がって地表を覆うという「火山の冬」が訪れ、夏がなくなったからです。

Photo_3http://blog.livedoor.jp/nara_suimeishi/archives/51782666.html

特に、東北の南部藩、津軽藩の冷害と旱魃、それにより引き起こされた飢饉は地獄を思わせるような悲惨な状況だったことが記録されています。
この降灰は民家や工場、公共施設の屋根に積もり、やがてラハール(土石流)となって倒壊させます。
土石流 - Wikipedia

交通インフラは寸断され、自動車は通行すらできなくなるでしょう。航空機は降灰をエンジン・タービンに吸い込むとストール(失速)を起こしますから、陸も空も交通機関は壊滅状態になります。
かつての東日本大震災は関東東部と東北地域に限定されていましたが、これを遥かに凌ぐ規模で、しかも全国規模で引き起こされ、工業、農業共に致命的打撃を受けます。
この時点で、日本経済は死滅します。経済だけに止まらず、政府機能も急速に失われていきます。
そして短期間にもはや居住することすら不可能な列島に変貌するでしょう。
ですからこういう数万年に一度という極端な想定をしてしまうと、建築基準法も自動車の安全基準もすべて無意味となります。
だったらいっそのこ、そんな「リスクの可能性」のある列島に住むのを止めますか、という事になるのです。

私がこのテの「はずだ論」は、科学の仮面をかぶったノストラダムスの大予言みたいなもんだと思っています。
そもそもこのような国のエネルギー政策を、司法が裁くこと自体がナンセンスなのです。 
司法は短時間の審理で、規制委の専門家の意見を否定したわけですが、どこでそんな素晴らしい知見を民事専門の野々上裁判長閣下がいつ蓄積されておられたのでしょうか。
あくまでも広島高裁判決は「司法としての判断」であって、国の「政府としての判断」でもなければ、再稼働審査の権限を持つ「規制委の判断」でもないからです。
司法に 国の判断も規制委員会の判断も超越できる権限を、一体誰が与えたのでしょうか。

そもそも、福島第1原発の事故はどうして起きたのでしょうか。何万年に一回あるかないか誰にも分からない、広島高裁のいう活断層が原因だったのか、阿蘇の大噴火の火砕流が原発に到達して起きたのでしょうか。
いいえ、その
どちらでもありません。これについては、とっくに規制委が事故原因の結論を出しています。
福島第1は巨大地震に耐えましたが、その後の津波による配電盤の水没によって全交流電源ブラックアウトに陥りました。これが事故原因です。

にもかかわらず、「最新の科学的知見」とやらで活断層が見つかったとか、阿蘇山の溶岩が攻めてくるぞとか、もはや妄想の域に達しています。
いいかげんにしてほしいものです。

 


 

2020年1月19日 (日)

日曜写真館 少し派手な太陽もいいかなと

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今日は珍しくハレーション気味です

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印象派風にはなかなかいきません

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少しこわいような日の出です

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水上の林の向こうから太陽が昇ります

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厚い雲をこじ開けるようにして太陽が顔をのぞかせました

 

2020年1月18日 (土)

ワクチンを家畜防疫員(獣医)だけのものにするな

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おとといにも転載しましたが、琉球新報が便利な感染経路図を作ってくれたのでご覧になって下さい。

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琉球新報

初発はうるま市の農場ですべてはここから始まっています。
今後農水省から報告書が出るでしょうが、これら発生農場には共通点があります。

①同一の経営者
②近隣農場
③共通の堆肥施設を利用

いったん海外悪性伝染病に侵入を許すと、家畜・ヒト・モノを媒介してどんどんと感染を拡大していきます。
豚は群飼しますから、一頭の感染がまたたくまに(おそらく一晩で)その群すべてを冒し、更に別の群へと飛び火していきます。
いったんこのような連鎖感染が開始されると、江戸時代の破壊消防のように燃え広がらないように火事場近くの家を壊したような殺処分をするしかてがなくなります。
つまり、発生源からリング状に豚がいない空白地帯を人工的に作るのです。
ここまでは陸自の力でなんとかこぎ着けました。

そしてさらに他の清浄区にも飛び火を防ぐために緊急ワクチンを投与します。
今、ここでストップしている段階で、これを急がないとまだ感染していない豚に抗体が発生せず、無防備状態が続いてしまいます。
おそらく来週初めの対策会議でやる方向にはなるとおもうのですが、国は既に沖縄県に緊急備蓄してあったワクチンを持ち込んでいるはずで、今度は誰がそれを打つのかということになります。

現行では家畜防疫員という資格が必要です。聞き慣れない用語ですがこれは獣医のことです。
「宮崎人」さん(獣医師でいらっしゃいますが)の下のご指摘のとおり、豚コレラワクチンはこの家畜防疫員、つまりは公務員獣医師しか打てません。

「今回の豚熱に対するワクチン接種は、家畜防疫員が、実施するそうです。つまり家保の先生が実施します。民間の獣医師は出来ません」

宮崎人さんのおっしゃるように、感染拡大が始まると、獣医は目のまわるような忙しさになります。
発生動向を調査、殺処分だけでおそらく50人程度の県の公務員獣医は身体がふたつほしいような状況のはずです。
だから発生動向調査のほうに手抜かりが生まれる余地が出てしまいます。
その上に、ワクチンを獣医がしろだと冗談もほどほどにしろ、これか偽らざる現場の声のはずです。

こうなってしまったのには理由があります。
そもそも農水省は海外悪性伝染病全体についての緊急ワクチンの投与そのものを否定してきました。
農水省豚コレラ緊急指針にもこう麗々しく書き込まれています。

農水省豚コレラ緊急対策指針
「第13 ワクチン(法第31条)
1 豚コレラのワクチンは、感染を防御することができるが、無計画かつ無秩
序なワクチンの使用は、清浄性確認の際に支障を来たすおそれがある。
このため、ワクチンの使用については、慎重に判断する必要があり、我が
国における本病の防疫措置は、早期発見と患畜及び疑似患畜の迅速なと殺を
原則とし、平常時の予防的なワクチンの接種は行わないこととする。

「清浄性確認に支障をきたす。殺処分一本でいけ」というのは、農水省の昔からの言いぶんですが、なにぶん古い。
昔のOIE(国際獣疫事務局)の見解のコピーにすぎず、OIEすらとうに方針を転換しています。

ほんとうの感染と見分けがつかないだとか、接種したら肉が食えないだの、接種範囲が決められないだの、輸出がしんどくなるだの、獣医師が足りないなどとグダグダと言っていても、その気になってやれば、要するに出来るのです。
この中でも特に最後まで固執した理由が、ワクチンをすると自然感染との区別がつかないということでした。
ワクチンを接種するととホントに自然感染した個体と、ワクチン接種した個体に同様に抗体が出来てしまって見分けがつかなくなり、診断が不可能になる、というわけです。

一見もっともらしい理由ですが、ほとんどウソです。
マーカーワクチンを使えば、瞬時でワクチン由来か否かは判別できてしまうからです。
マーカーワクチンはNSP抗体という特殊なものを作るために、自然感染かワクチンによる感染かは簡易検査キットで容易に判定できます。
こんな簡易検査キットはいまから20年も前にできていて、OIEも2002年の総会でNSP抗体陰性が確認されれば6ヶ月で清浄国に戻れるという条件を承認しています。

非清浄国から輸入が増えると言いますが、半年で清浄国に復帰できるのですから、現実にはわずかそれだけの期間で輸出体制を整えられる国はありません。
逆に輸出にしても、そこまで日本は豚肉輸出に依存していませんから、実害は少ないはずです。

このような反対のための反対と化した農水省の考えがあるために、わが国は緊急ワクチンは邪道とでもいわんばかりの固定観念に支配されていました。
ですから下のグラフをみると全国の自治体においても判断にバラつきがあります。

「国が示した豚への予防的なワクチン接種を可能にする防疫指針案は、イノシシから豚への感染リスクが高いエリアを「接種推奨地域」とし、都道府県知事が接種を認めるとしている。接種推奨地域は、野生イノシシの感染状況や生息状況、周辺の農場数などの環境要因から、専門家の意見を踏まえて設定する見通しだ」(日本農業新聞2019年10月10日)

農水省は野生イノシシの発生があるなしで分けていて、その表現も「推奨」ですからやってもやらなくてもいいよといわんばかりです。
野生イノシシに県境はないのですから、全国で統一した緊急ワクチン指針が必要で、やらない県には家伝法違反を問える法的たてつけがいるのです。

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日本農業新聞 https://www.agrinews.co.jp/p48960.html

しかし現場の農家、特に発生を見た地域の農家は圧倒的にワクチンを要望しています。

「昨年9月に岐阜市の養豚場で国内26年ぶりに発生した豚(とん)コレラ対策として、東海3県の養豚場などで25日に始まったワクチン接種。胸をなでおろす農家が多かった一方、ある感染農家は「自分の豚が殺されたことが悔しい。もっと早くワクチン接種に踏み切ってほしかった」と怒りをにじませた」(毎日2019年10月25日)

うれしいことに、江藤大臣になって大きくワクチンに舵を切りました。

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江藤拓農相は20日、豚コレラの感染拡大を食い止めるため、飼養豚への感染を予防するワクチン接種を可能とする防疫指針の改定作業に着手すると表明した。改定すれば都道府県知事の判断で接種できるようになるが、接種地域の設定などクリアすべき課題は多い。(略)
現行の防疫指針は予防的ワクチン接種は認めていない。江藤農相は指針の改定に踏み切った理由について、昨年9月の国内での初確認から1年が経過したことや関東の養豚地帯に感染が広がる懸念があることを挙げた。
 防疫指針を改定するには今後、接種する地域や接種の順序、接種した豚の流通規制をどうするかなどを定める必要がある。農水省は、食料・農業・農村政策審議会牛豚等疾病小委員会で検討していく」」(日本農業新聞2019年9月21日)

この江藤大臣の英断で大きくワクチン容認へと変化しようとしていますが、いまだワクチンの実戦的使用を想定しているとはおもえない縛りが存在します。
それが家畜防疫員に接種作業を限定している縛りです。

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https://www.youtube.com/watch?v=hx4SFi0jcWg

ワクチンなんか農家が日常作業としてピスターを使って接種しています。
誰にでもできる仕事なのです。
これは殺処分と一緒で、家畜防疫員は指示書を発行し、せいぜいが立ち会うていどのことに済ませるべきです。
実際やるのは県職員でもボランティア誰でもいいのです。

来週からワクチン接種は始まることと思われますが、家保獣医にしかやらせないとなると、終わるはいつの日になることやら。
これでは緊急対策になりっこありませんね。
他県の家保獣医を借りてくるしかありませんが、どうするつもりなんでしょうか。

 

■追記  広島高裁が伊方原発3号炉の仮処分決定をしました。

「愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について広島高等裁判所は、地震や火山の噴火によって住民の生命や身体に具体的な危険があるとして、運転を認めない仮処分の決定を出しました。現在は定期検査のため停止中ですが、検査が終了する4月以降も運転できない状態が続く見通しになりました。伊方原発3号機が司法判断で運転できなくなるのは平成29年以来、2度目です」(NHK1月19日)

原発や今回の海外悪性伝染病の防疫などに、専門家以外をかかわらせてはダメだということです。
これではなんのために専門家による規制委員会という3条委員会をつくったか分からなくなります。
今まで数年をかけて規制委員会が審査しても無意味です。
司法が規制委員会の上に君臨してしまい、短い審理でちゃぶ台返ししているのですからたまったものではありません。

高裁の言っている理由は阿蘇山の噴火。(またかい)
九州が壊滅するようなことを想定すること自体がナンセンスです。
九州全域が溶岩の下になるなら期歩の噴火なら、九州、四国、西日本、いや西日本自体がアウトです。
ならばもう電力供給する対象がなくなってしまう。
こういう極端な想定をして、それに耐えられないからダメとするという論理がもはやカルトです。

 

2020年1月17日 (金)

防疫の指揮権を為政者から取り上げねばならない


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あいかわらず腰が重いことで、なにデニー知事のことです。
一見接種を開始する決断をしたのかと勘違いしますが、その検討に着手したていどのことです。

「玉城デニー沖縄県知事は、16日、県庁で定例記者会見を開き、豚コレラ(CSF)のワクチン接種プログラムの策定を長嶺豊県農林水産部長に指示したことを明かした。接種を決めたわけではなく、接種する場合の迅速対応が目的。
週明けに開催する国や市町村、有識者、生産者団体などでつくる県CSF防疫対策関係者会議で議論し、接種を判断するという」(沖タイ1月16日)

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週明けにまた会議して決めるんだそうで、こうやっているうちにも貴重な初動の時間は大幅に超過しています。
会議がそんなに重要ですしょうか。
今、大火災が燃え広がろうとしているのに、火の前であーでもないこーでもないと鳩首協議しているのがこのヒトたちです。
ウチナータイムは飲み会だけにしてくれと言いたくなります。

必要なことは速度であって、議論ではありません。
現時点でできているのは、とりあえず第3例までの殺処分が終わったということにすぎません。
初発の発生は12月20日、既に27日間も経過しています。既に1カ月弱ですから、致命的な遅れです。
既に充分遅れているのに、来週また会議をして決めるさーですか、開いた口がふさがりません。

とりあえず今は治まっているようにみえますが、それはただの見せかけです。
豚コレラはその急激な死亡個体によって判断できますが、死亡数が急増しても実に17日間も農家は通報を怠っていたわけで、この間この農家がどこに何を移動したのか、その動線を徹底的に遡及調査せねばなりません。

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たぶんこの農場には豚コレラウィルスが蔓延していたはずで、これを無自覚に持ち歩いてバラ撒いていたのですから、かんべんしてくれと言いたくなります。
それも去年12月20日に死亡豚急増を確認といいますから、おそらくそれ以前から患畜は潜在していたと思われます。
豚コレラの死亡するまでの潜伏期間は10~20日ていどだと言われていますから、死亡豚が出た12月20日から遡って、12月初旬からその農家がどこに行ったのか、何を履いてでかけたのか、誰とどこで会ったのかなどを、家族まで含めて徹底的に洗い出さねばなりません。
仕事関係だけではなく、交遊関係まで含めてです。

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農研機構 http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/niah/swine_fever/explanation/classical_swine_fever/019953.html

気の毒ですが、この発生農家にはプライバシーはありません。発生農家はウィルスキャリヤーだからです。
洗いざらい申告してもらい、行った先々を特定し、できれば行った先々に消毒用石灰を撒きたいくらいです。
宮崎口蹄疫やトリインフルエンザなどにおいては、養豚場で使う長靴を履いてでかけた食堂にウィルスが持ち込まれ、そこをハブにして次の感染農場が生まれ、そこからまた発生が出るという連鎖発生をしました。
ですから、第4例が移動制限区域内から出たというのは、初回の発生動向調査が杜撰であったか、さもなくばたまたま検査した日が潜伏期間だったからにすぎません。

したがって、今もなお多くの潜伏期間の個体が潜在していると見ねばなりません。
つまり、今沖縄は豚コレラという火薬庫の上で、ともかく最初の種火は消したという段階にすぎないのです。
まだこの火薬庫には導火線に火がついている爆弾がどれだけ眠っているのかさえ、まるで分かっていないわけです。
だからこそ、今この火薬庫にワクチンという水を入れて発火しないようにする、これしか方法はありません。

ところで私は、家伝法(家畜伝染予防法)が宮崎口蹄疫の後に改訂された時に、重大な箇所を修正していなかったと思っています。
それがこの条項です。
http://www.mmjp.or.jp/yokojyuu/low/low/low_019.html#id_17

第17条の3

   農林水産大臣は、指定地域及び指定家畜の指定をしようとするときは、当該指定地域を管轄する都道府県知事の意見を聴かなければならない。

この条項を楯にして、自治体知事はまるで自分が最終決定権者であるかのようにふるまっています。
移設問題において県は公水面の認可の裁量権限で自分にあるかのようにふるまってきましたが、実はただの環境アセスメントをする権限ていどのものでした。
それを手を変え品を変え、何度となく裁判までして国と対決してきた悪い癖が、沖縄県はまだ抜けていないようです。

この豚コレラの防疫について第17条の3は「自治体の意見を聴くていどはしていいよ」と書いてあるだけで、県知事が最終決定をしろとは書いてないのです。
今回も江藤大臣が8日の時点でワクチン接種を提言したのに、それから既に9日間も経過して、そこから更に「来週に皆んな話あって決めるするさぁ」ですから、なんともかともです。
デニーさん、あんたにはいい悪いを決める権限なんかないのです。ただどうですか、と国から聞かれているだけなんですから。

防疫は原発事故の処理と一緒で政治家にやらせてはいけません。
原子力事故においては、当時の原子力安全委員会と政府・官邸の職務権限が明確になっておらず、首相だった男のあまりの無知な指揮ぶりが収束を遅らせました。
その反省から政府から独立した権限を持つ3条委員会として原子力規制委員会が生まれたのです。

同じような性質のものを防疫にも設けるべきです。
政府・官邸や農水省安全局からも、そしていうまでもなく地方自治体からも独立しした全国防疫対策センターのような機関です。
防疫に精通した獣医師専門家が一貫して指揮をとり、政治家はその責任をとればいいのです。

かんがえても見てください。デニーさんが豚コレラのなにを知っているのでしょうか?防疫について関心があって学んできたとでも?
この防疫を知るには畜産を知り、家畜防疫学を学ばねばなりませんし、ケーススタディとして宮崎口蹄疫事件くらいは頭に入っていなければ話になりません。

もちろんデニーさんは知らなくていいのです。
問題は知る知らないではなく、知らないことを前提として専門家の指示に従うこと、そしてその結果責任を行政官トップとして取る覚悟だけです。

だからこういう過度に「民主的」なご意見拝聴条項などは削除しないと、「聴いた」地方自治体の素人たちがする学級委員会が済むのを待たねばならなくなります。
今回は幸いに速やかに自衛隊の災害派遣要請が出ましたが、これがもっとヒダリの知事なら「私が知事の間は、軍靴の音を響かせない」なんて言っていたかもしれません。
その場合、今頃まだ延々と県の事務職員たちが泣きながら殺処分をやって、そこかがまた感染ハブになるという悪循環が生まれていたことでしょう。

ですから、緊急時には決められたマニュアルどおり国が責任をもって防疫にあたり、その遂行にあたっては一切の政治家の恣意は許さない仕組みがいるのです。

無能な為政者は天災よりひどい。


 

2020年1月16日 (木)

やんばるに豚コレラを侵入させないためにワクチン接種を急げ

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沖縄県で豚コレラ(CSF・クラシカル・スワイン・フィーバー)の4例目がでてしまいました。
あらかじめお断りしておきますが、豚(トン)コレラは人間のコレラやアフリカ豚コレラとはまったく別種の伝染病です。
高い感染力と死亡率を有しますが、人には感染しません。

さて4例目は今まで発生が確認されてきたうるま市の農場の3キロ圏内、つまり移動制限区域の中で発生しました。

「沖縄県は15日、うるま市の養豚場で県内4例目となる豚コレラ(CSF)の感染を確認したと発表した。県の聞き取り調査では1825頭を飼育しており、殺処分の対象となる。県は14日に、同市と隣接する沖縄市で3例6養豚場の全7326頭(速報値)の殺処分と埋却作業を終えていた。殺処分の総数は9千頭を超える見込みとなった。
 県内ではうるま市の養豚場で8日、1986年以来の感染を確認。県によると、今回の養豚場は約100メートル先にあり、14日に豚が死んでいると通報。精密検査で15日に判明した。(共同1月15日)

ひょっとしてまだ感染拡大が眠っているかとも思いましたがやはりそうでした。
まだ情報がほとんどない中で決めつけることはしたくないのですが、殺処分に追われて発生動向調査がしっかりされているのか不安が残ります。

海外悪性伝染病が発生した場合、直ちにせねばらないのは発症発生動向調査(サーベイランス)です。
通報と同時に発生農場を封鎖し、移動を禁止した上で、その農場の周辺の農場はもちろん、その農場に入っている飼料系統・糞尿処理場所、その農場から出荷される屠場、そして系列農場に至るまで徹底的に洗い出して、ウィルス拡散がどの程度なのか、どこに飛び火しているのか、いないのかを突き止めねばなりません。
これを血清学的発生動向調査と遡及調査と呼びます。

今回、これがおろそかになっていはしまいかという危惧があります。
今回の第4例で問題視されるべきは、県の発生動向調査による発見ではなく、死亡を発見した農家からの通報で分かったことです。

「新たに確認された農場は、これまでに確認されていたうるま市など3例の農場から移動制限区域内(3キロ)にあり、監視対象となっていた。 14日に農家から「豚が死亡している」との通報があり、県が立ち入り検査を実施。15日午前、感染の疑いが強い疑似患畜と判明した」(沖タイ1月15日)

宮崎県口蹄疫の場合、現場の獣医師に大きな負担がかかりました。
一般的にどの県も県家保(家畜衛生保健所)の獣医師は50人ていどにすぎません。
この数少ない獣医師が6千頭もの大型家畜を殺処分できる道理がありませんから、実際にするのは診断書、殺処分指示書の発行と方法の指示、立ち会いまでです。
現実に殺処分をするのは、家畜の所有者とその依頼を受けた人たちです。
といってもこれだけの膨大な数の殺処分が積み上がった場合、他県からの支援があったにせよ、数すくない家保のマンパワーには限界があります。

宮崎口蹄疫の昼間報告書は、発生動向調査が不十分だったことを認めています。
殺処分の重圧で発生動向調査がおろそかになっていたのです。
今回も発生農場のわずか3キロ圏内ででるようだと、もう一つの重要な仕事である発生動向調査を徹底しきれたとは言えないと思われます。
早急にうまるま市、沖縄市全域にまで拡げて血清検査をされることをお勧めします。

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琉球新報

さて、やっと県はワクチンを接種することにしたようです。
腰の定まらぬデニー知事にさんざん焦らされた関係団体は、とりあえずほっと一息ついたと思います。
沖縄の養豚関連団体は、強くワクチン接種を要望しており、デニー知事の頭越しに江藤農水大臣に陳情しています。

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「沖縄県でブタの伝染病のCSFいわゆる豚コレラの感染が広がっていることを受けて、沖縄の農業団体の代表が江藤農林水産大臣に早期のワクチン接種と特産のアグーの保護を求めました。
JA沖縄中央会の大城勉会長など沖縄県の農業関係者が15日、農林水産省を訪れ、江藤農林水産大臣に要請書を手渡しました。
要請書では、養豚業への影響を最小限に抑えるために必要な量のワクチンを確保し早急に接種できるようにすることや、特産のブタ「アグー」について繁殖を担う原種のブタが感染しないよう、厳重に保護することを求めています。
これに対して江藤大臣は「ワクチン接種やアグーの隔離による保護も、沖縄県からの要請があれば迅速に対応できるようにしたい」と応えました」(NHK1月15日上写真も)

沖縄の養豚団体が焦れたのは、デニー知事があの人らしくやるでもなくやらんでもないという煮え切らない態度をしてしまったからです。
豚コレラだと確認される江藤農水大臣はすぐさま8日に沖縄に駆けつけました。

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https://mainichi.jp/articles/20200108/k00/00m/040/...

江藤氏がこの感染時に国側のカウンターパートであったことは幸運でした。
彼は自分の選挙区で宮崎口蹄疫の大爆発をその目で見て、民主党政権に提言を出し続けた人だからで、国会議員の中でも有数の知見を持っている人だからです。

江藤氏は、宮崎口蹄疫が殺処分とワクチンの二本立て対策でかろうじて宮崎県東部地域から出さなかったことを熟知しています。
大臣は当初から国としてはワクチン接種を前提に対策をたてていることをデニー知事に直接伝えたはずです。

ところがこれに対してデニー知事はこのように答えてしまっています。

「ワクチン接種実施のための推奨地域指定は国が行うが、都道府県の意向が前提となる。
玉城デニー知事は県の対策会議で「農家の意向を聞きながら検討したい」と語った。 これ以上感染を拡大させないためには、感染が発生していない養豚場にウイルスを持ち込ませないよう人や車の消毒を徹底するなどの防疫対策が必要だ 」(沖縄タイムス1月12日)

このデニー知事の躊躇の理由が解せません。
「農家の意向」もなにも、おそらく彼が養豚関連団体に一本電話をしてみれば、即座にワクチンを打つしか対策はないという答えが返ってくるはずです。
「人や車の消毒は大事」だって。なにをあたりまえのことを。
昨日危機に際してはリーダーを立てろと言っておきながら、自分で破ることにしますが、デニーさんあんたは馬鹿か!
伝染病が猛威をふるって死者まででている時に、手をよく洗いましょうね、うがいはしっかりね、と言っているようなものです。
デニ氏には、もうそんな初歩的なことでは済まないという危機意識が欠落しています。

デニー知事が「感染を拡大させないためには、感染が発生していない養豚場にウイルスを持ち込ませないようにしたい」(沖タイ前掲)ならば、発生農場から3キロ圏内の豚をすべて殺処分にするしかありません。
その場合、処分する豚は数万頭に達するはずです。もちろんアグーなどの貴重種も例外ではありません。

だから、畜産の被害を最小限に押えるためにワクチンが必要なのです。
実は今後心配されるのは、中部から北部への感染拡大です。
感染が発見されたのがたまたまうるま市であったことは、幸運でした。
これが北部だったらとおもうとゾっとします。野生のイノシが北部には大量に生息していているからです。

岐阜や長野の例から、この野生のイノシシがウィルスに感染し、常在化させる大きな原因となっています。

「豚コレラに感染したイノシシが19日、合計1008頭に達した。感染は6県53市町村に広がり、うち31市町村852頭と8割以上を岐阜県が占める。検査や狩猟の体制が整っていない県もあり、検査していないイノシシにも陽性が広がっている可能性があり、防疫対策の徹底が重要になっている。
 19日までの各県発表で岐阜の他、愛知県5市76頭、長野県9市町村64頭、福井県4市町7頭、富山県3市5頭、三重県1市4頭。」
(日本農業新聞2019年8月20日 下図も同じ)
https://www.agrinews.co.jp/p48496.html 

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上図の感染イノシシの分布図に、発生農場を重ねてみます。発生農場と感染イノシシが重なるのがお分かり頂けると思います。

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沖縄北部の深い森にイノシシは多く生息しており、養豚農家も多く存在します。
言い換えれば、やんばるにウィルスを侵入させてしまえば、ウィルスはイノシシの身体に常に存在し、イノシシを一頭残らず駆逐しない限り豚コレラは半永久的に沖縄に居続けることとなります。

だからこそ、イノシシがほとんど稀なうるま市で感染拡大を止め、ワクチンで予防の壁を続かねばならないのです。
それを消毒すればですか、呆れてものがいえません。

ところが、家伝法においては一義的には県が決定権者ですから、県がストップさせてしまえばワクチンは使えなくなります。
おそらくデニー氏は、県庁の役人からこんなことを聞いたのではないでしょうか。

「ワクチン接種推奨地域に指定された場合、精肉や加工品は推奨地域外に流通できる一方、生きた豚を推奨地域外に移動できず、種豚や小豚の自由な販売に支障が生じる可能性がある」(沖タイ前掲)

たしかにワクチン接種すると、国際獣疫事務局(OIE)から「清浄国」の格付けが外され輸出が制限されます。これが農水省が口蹄疫やトリインフルに対して接種をためらう理由の一つとなっています。

一般的にワクチンに消極的な理由はこう説明されています。
農水省 ワクチン接種のデメリット 関係者間の合意形成が大前

1) 緊急ワクチン接種(地域限定)
① 野外感染豚とワクチン接種豚との区別ができないことから、接種豚のトレーサビリティや移動制限等が必要になる
② 非清浄国となれば、他の非清浄国からの豚肉輸入解禁の圧力が強まる可能性がある
③ 消費者がワクチン接種豚の購入を控えることなど風評被害が生ずる可能性があり消費への影響が懸念される
④ 農家の飼養衛生管理水準を向上しようとする意欲がそがれ、アフリカ豚コレラ等の農場への侵入リスクが高まる可能性がある。

宮崎口蹄疫でさんざん議論されてきたことですが、①のワクチンを打つと自然感染したものとの区別がつかないということですが、特定のワクチン特有の痕跡を残すマーカーワクチンを使えば解決できますし、②は防疫問題を貿易問題にすり替えています。
③の風評被害などもそれに負けない宣伝を打つほうが、このまま「沖縄、またまた発生!豚コレラ蔓延」のニュースを流されるよりよほどましなはずです。
④もなに言ってんだか、です。ワクチン接種を実施している農家はむしろ防疫に積極的です。

実際に宮崎口蹄疫時には、感染拡大速度を落とす目的でのみ接種され、その後すべてが殺処分となっています。
この消極姿勢が変化したのは豚コレラが岐阜での発生して1年後でした。

これはOIEの清浄国への復帰が今までより早くなったことと、もはやワクチン以外では感染拡大を阻止できないことをやっと農水省も悟ったからです。
そりゃそうでしょう、野生イノシシに出てしまえば、もう事実上防ぐ方法はないに等しいからです。

心配されたワクチンの備蓄状況ですが、現在、ワクチンは足りているようです。

「昨年末までに250万頭分を増産しており、さらに今年3月までに250万頭分を製造する予定で、ワクチンは足りそうだ」(沖タイ前掲)

デニー知事の逡巡によって貴重な初動におけるワクチン接種のタイミングが失われましたが、まだ遅くはありません。
離島も含めて沖縄県全域の豚に対してワクチンを早急に接種せねばなりません。

 

 

 

2020年1月15日 (水)

沖縄で豚コレラ発生


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沖縄で豚コレラ(CSF)が発生しました。現時点では一戸2農場、都合3例です。
あらかじめお願いしたいことは、イデオロギーをもちださないでいただきたい。
私は宮崎口蹄疫事件を百日以上追跡した経験をもっています。※カテゴリー「口蹄疫問題」を検索下さい。
その経験から言えるのは、海外から侵入する悪性伝染病が、地域の畜産のみならず、地域経済そのものまでも破壊し尽くし、地域住民に数年に渡る塗炭の苦しみを与えることです。
その恐ろしさを知ったうえで、戦わねばなりません。

沖縄県が一丸となって海外悪性伝染病と戦わねば勝てないのであって、政治的利用は厳に慎むべきです。
私はデニー知事に対して一貫して冷やかな見方をしてきましたが、そのような政治的立場と伝染病との戦いはまったく別次元です。
宮崎口蹄疫事件時においては、東国原というポビュリスト知事がことごとく足を引っ張り続けました。
デニー知事に防疫の知識は皆無でしょうし、危機においてリーダーシップを取れるタイプにも見えません。

しかしだからといって、頭から「デニー知事だから」「オール沖縄だから」という色眼鏡で見ることはしません。
危機においては、いかに頼りなかろうが常日頃批判し続けていようが、リーダーの下に団結せねばならないのです。
泣いても笑っても、デニー知事にがんばってもらいましょう。

前置きはこのくらいにして、感染の概要を押えておきます。

「沖縄県内で豚やイノシシの感染症、豚コレラ(CSF)の感染が発生している件で、県農林水産部は11日、うるま市での発生に関連して、沖縄市内の養豚場の豚から陽性反応が出たことを明らかにした。隣接する養豚場と合わせて1897頭が殺処分の対象となる。沖縄市内での感染確認は10日に続いて2件目となった。これで豚コレラ感染に関連して殺処分される豚は6養豚場で合計6683頭となり、県全体の飼育数20万6828頭(2018年12月末現在)の3.2%に上っている」(琉球新報1月12日)

また、殺処分は現時点では完了したようです。これは大変にいい知らせです。
殺処分に携わった多くの人々に心から敬意を表します。ご苦労さまでした。

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「豚コレラ(CSF)の発生を受け、沖縄県が実施していた県内6養豚場の豚の殺処分が14日午後5時すぎまでに、全て完了した。
豚コレラ感染に伴い殺処分された豚は6養豚場で計7326頭に上り、県全体の飼育数20万6828頭(2018年12月末現在)の3・5%を占めている。  
豚コレラは8日にうるま市の2養豚場で確認され、10日には沖縄市の養豚場でも見つかった。うるま市の養豚場で飼育される豚2001頭ついては、殺処分と埋却などの初期防疫作業が11日までに完了した」(琉球新報1月14日 上写真も)

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琉球新報 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1055900.html

沖縄県のプレスリリースです。

令和2年1月10日
2 経緯
(1)1月6日(月曜日)、うるま市の養豚農場から県中央家畜保健衛生所へ飼養豚が死亡しているとの報告を受け、家畜防疫員による立入検査を実施しました。
(2)同日、県中央家畜保健衛生所及び家畜衛生試験場での検査によりCSFの疑いが生じたため、材料を農研機構動物衛生研究部門に送付し、遺伝子解析を実施したところ、本日(1月8日)、CSFの患畜であることが判明しました。
(3)このため、当該農場の飼養豚について防疫処置を講じるとともに、当該農場と飼養者が同一である農場(うるま市)の飼養豚もCSFの疑似患畜とし、防疫措置を講じます(防疫措置対象:825頭(1戸2農場)。
本県におけるCSF(豚コレラ)疑似患畜の確認について(3例目沖縄市)(PDF:89KB)

初発から3例はすべて同一の養豚業者です。経過はこのようです。
追記 同一経営ではないと当該経営者がツイートしています。1月24日

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「発生農場で死亡する豚が出始めたのが昨年12月20日。抗生物質や解熱剤を投与して様子を見ていたが、死亡するペースが加速し、農家は異常に気が付いたという。26日までに25頭を食肉市場に出荷していた。また、県は豚の飼料に使う食品残さを加熱するよう呼び掛けていたが、発生農場では非加熱で給餌していたという。
 同県畜産課は「残さに含まれた肉の加熱が不十分でウイルスが生きていた可能性もある」と指摘した」(日本農業新聞2020年1月9日)
https://www.agrinews.co.jp/p49679.html

この初発の農場の対応は強く批判されるべきです。
昨年12月20日頃から死ぬ豚が急増したにもかかわらず、県への連絡はなんと年を越して1月6日でした。
その間実に17日間も時間をロスしてしまっています。養豚家として信じられない対応だと言えます。

この初発報告が遅れたことが、今回の沖縄豚コレラ事件における最大の失敗です。
豚コレラについては、家保から厳重な警戒要請がきているはずで、24時間体制での通報受け付けもあるはずです。
通報義務があるにもかかわらず、個人では手がつけられなくなってからやっと腰を上げたような対応を見る限り、この農家に当事者意識があるようには思えません。

「8日午前5時50分、豚コレラ感染の疑いがある豚が出たうるま市の養豚場に続く細い農道は、「立入禁止」の紙を張り出した軽トラックでふさがれていた。午前6時30分を過ぎ報道各社が集まり、午前7時頃1台の軽トラックで養豚場の管理者が現れた。規制で入場できずに引き返そうとしたところで報道陣の取材に応じ、「最後に餌をあげようと思った」とまだ現実を受け入れられないような戸惑った表情で話した。」(琉新1月12日)

「最後にエサを上げようと思った」というのは気持では理解できますが、今やるべきことではありません。
疑似患畜が出た場合、やるべきことは、家保の指示に従って移動をせずに消毒し、殺処分するだけであって、ウィルスが蔓延している畜舎をうろつき回るなどもっての他です。

それはさておき、このような死亡する患畜が出た場合、農家はかならず獣医を呼びます。
呼ばないで素人考えでなんとかなるだろうと思うような者は、そもそも畜産などすべきではありません。
すべての家畜伝染病は、初めの段階で止める、これが大原則だからです。

ではこの農家は指をくわえて毎日急増する患畜をながめていたのでしょうか。わけはありません。
本能的に畜産家は家畜が死ぬのに平気でいることは不可能ですから、抗生物質や薬剤を投与したはずです。
ところがこの投与するには獣医師の投薬指示書が不可欠ですから、獣医を呼んだはずです。
ところが17日間も遅れたのですから、なぜか獣医を呼ばなかった可能性が高いと思われます。
獣医を呼べば必ず届け出がなされるはずで、豚コレラとおぼしき症状がでているにもかかわらず届け出なかったら獣医師法違反です。
ですから、発生から10日以上たっても出ていない以上、獣医は呼ばなかったと判断するかありません。

次に家伝法の定めに従って、発生農場からの移動は一切禁止され、3キロ以内は封鎖され、チェックポイントを作らねばなりません。

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https://mainichi.jp/articles/20200108/k00/00m/040/...

次に確かに豚コレラであることを確証するために東京の動物衛生研究所(動衛研)にウィルスサンプルを送付せねばなりません。
出先の県では精密に同定する施設がないからです。
これでもわかるように県は国の支援なくしてはまったく自力対応することができないのです。
そして県からサンプルが送られたのが6日、動衛研から返事が返ってきたのか8日です。
ここまでで発生から既に19日が経過しています。

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出典不明

ここからやっと殺処分が始まります。県からの災害出動要請が自衛隊に速やかにだされたことは大変によかったことです。
ここで変にイデオロギッシュになってしまわれると、主力の自衛隊を初動で投入できなくなってしまうからです。

「1986年10月以来となる沖縄県内での豚コレラ(CSF)の発生から9日で丸1日が経過した。発生農家では72時間以内に初期防疫作業を進める必要があり、豚舎内の全頭殺処分と埋却、消毒作業など感染封じ込めの作業が進められている。県は全庁体制で職員を動員し、家畜防疫員やJAグループなどからも加わって人員は2日間で延べ280人に上る。さらに県の災害派遣要請を受けて自衛隊も約390人を動員。現場を取材する担当記者が報告する」(琉新前掲)

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https://www.sankei.com/life/news/190208/lif1902080

常に海外悪性伝染病において殺処分の主力をなすのは自衛隊です。
本来は農水省が責任を持って殺処分できる全国体制を構築すべきですが、その問題意識自体がこの役所にはありません。
それについては今回は置きますが、いずれにしても、専門知識もなければ豚に触ったこともないような県の事務職員に手に負えるような生易しいものではないのです。

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宮崎口蹄疫事件においては殺処分が遅れに遅れ、患畜が積み上がりました。
宮崎県も県の職員が全力で殺処分にあたりましたが、まったく無力でした。

怯えて暴れる豚を押さえつけて殺すのは、人間にとっても生易しいことではないからです。
毎回、彼らの悲鳴が耳について離れない、肉が食えなくなったという作業者が大量に出ます。
専門教育を受けている獣医師ですら大型動物の何千頭もの殺処分など教えてもらってはいないのです。

「作業に携わる人たちの精神的なダメージは避けられない。自衛隊などは作業に当たる隊員へのメンタルヘルス教育を実施しているという」(琉新前掲)

それをズブの素人で、日常はペパーワークしかしていない県庁やJA職員にやれというほうがムリです。
それも6千頭を超えるような患畜に対して、2日で延べ280人ではお話になりません。1日当たり100名前後しか投入できていないのです。
しかも全員が殺処分に回るわけではなく、消毒チェックポインや、発生動向調査(サーベイランス)にも人手をさかねばなりません。

宮崎口蹄疫の場合、初期には県庁職員が当たったために、殺処分待ちの患畜が増え続け、感染がいっそう拡大するという悪循環が生まれました。
これを防ぐには72時間以内という初発の段階で、一時間でも早く現場に大量の要員を一括して投入せねばなりません。
これは災害時における72時間以内救助の原則とまったく同じです。
それが可能で、しかも後方支援がいらない自給型組織は日本において唯一自衛隊しか存在しません。

皮肉にも反自衛隊闘争をしている陣営が選んだ知事が自衛隊にすがる事になったわけですが、陸上自衛隊第15旅団は即応体制で対応しました。
自衛隊をこのように使うのなら(それ以外選択肢がないわけですが)、日常的に沖縄県は災害時や悪性伝染病において、演習をくりかえさねばなりません。

自衛隊は全国で多くの修羅場を経験し、このような悪性伝染病に対しても災害派遣という名目で出動に備えてきました。
このような自衛隊にこたえるだけの対応を沖縄県がしてきたのでしょうか。
日頃から緊密に連絡をとりあい、自衛隊と県・市町村の統合訓練を行ってきたたのでしょうか。
それがないといざ有事の場合、うまくいきません。

「県はこれまでも、豚コレラが発生した場合を想定した防疫演習を実施してきた。昨年6月12日には農林水産部の職員ら約80人が那覇市の八汐荘に集まり、防護服の着用方法や初動防疫の流れなどを確認し、危機管理に備えていた。しかし豚コレラの発生が現実となり演習通りに行かない場面もあったのか、作業に遅れが出る場面もあった」(琉新前掲)

琉球新報の記事にもある去年6月の貿易演習にも自衛隊は呼ばれていなかったようです。
確認はとれていませんが、主力部隊を呼ばない予行演習なんて無意味です。
これでは現実に起きてうまく動く道理がありませんね。
日頃は白い眼で見ておいて、いざこのような事態になると、手のひらを返したように便利だからと自衛隊に頼りきりとなり、埋却地がたりないとなると米軍にすらすがる、なんとムシがいいことよ、と思います。
おっと、政治臭くなってしまった(汗)。

長くなりましたので、ワクチン接種問題と感染経路については次回に致します。

 

 

2020年1月14日 (火)

国民党の自壊は「中華民国」の再編につながる


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今回の台湾総統選挙は、蔡英文の信任といえないこともありませんが、ハッキリいえば習近平の自爆です。
煎じ詰めると、蔡英文の勝利は4つの要因によります。

ひとつは習があまりに外交が下手くそだったこと、ふたつめは蔡が「一国二制度」をきっぱりと拒否したこと、三つ目はなにより香港デモの大爆発が台湾にまで延焼したこと、そしてよっつめは国民党の自壊現象に助けられたことです。

蔡英文はこの選挙に惨敗するだろうと予想されていました。
というのは、必ずしも内政において成功していたとはいいがたい状況で、私の耳にもいい噂がまったく入ってきませんでした。
蔡政権は親日的であり、かつ中国に抵抗しているために意外かもしれませんが、台湾民進党は実はリベラル政党の色彩が強い政党なのです。

唐筱恬(台湾「今周刊」)によれば、蔡政権はこのような内政の失敗を重ねてきました。
https://toyokeizai.net/articles/-/191525?page=2

たとえばひとつめは台湾版働き方改革とでもいうべきもので、週休完全2日制を実現しようとして労働基準法の改正にとりくんだのですが、失敗に終わりました。
というのは、これは日本の働き方改革にもいえることですが、中小企業主には不評で、肝心な労働者からも収入が減るとして抵抗を受けてしまいました。
また年金改革は公務員を対象としたために、軍人も含めて大きな抵抗を受けました。

このふたつで労働団体と公務員・軍人団体を敵にしてしまったところに、極めつけは同性婚の法制化と反原発政策でした。
なんでわざわざこんな政策をせにゃならんのか、理解に苦しみますが、反原発政策が原因の大停電を引き起こしてしまいました。

「グリーンエネルギーの発展を盛り込んだ改正「電業法」が成立し、民進党が核心的な価値とする2025年までの原子力発電所廃止は、その姿勢を簡単には変えることができない重要政策の1つだ。
今年(2017年)8月15日に台湾全土で発生した大停電は、人為的な操作ミスを原因とする事故によって発生したものだった。だが、この停電から見ると、与党・民進党は反原発の代替策として掲げている、グリーンエネルギーと天然ガス燃料による火力発電の導入について、現在のスピードでは原発廃止で電力供給の減少分を補えないことがはっきりとしている」(唐前掲)

中国によって簡単にオイルロードを切断されるリスクがあり、エネルギー自給ができない台湾が原発を25年までに止めてしまったら自分で自分の首を締めるようなものです。なんでこんな簡単なことがわからないのでしょうか。
現実に原発を事実上ゼロにして苦吟するわが日本のエネルギー事情を見ればわかりそうなものを。
エネルギーの自給は、いつ何どき中国の制裁でエネルギー供給源を断たれるかもしれない台湾にとって死活問題なはずです。

一方、経済政策では国民党政権の中国に強依存する政策を改めました。これは中国市場にあまりにも依存すぎた経済構造によって、台湾製造業が空洞化してしまったからです。
製造業は賃金が安く、消費市場に近い中国本土に工場を移転させてしまった結果、台湾の青年層の失業率を大きく増大させてしまいました。

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日経

「台湾の若者が職探しに悩んでいる。主計総処(総務省統計局に相当)によると、20~24歳の2019年1~5月の平均失業率は11.7%。2~3%程度の30歳以上に比べ突出して高い。若者の低賃金も社会問題となっており、大卒初任給は18年に2万8849台湾ドル(約10万円)にとどまる」(日経2019年7月13日)

この中国依存の経済体質をあらためようと、蔡政権はTPPや各国とのFTAを推進する政策をとってきたことは評価できます。
これは「中国様におすがりしていれば万事うまくいく」という国民党の経済政策とは大きく違います。
ただし、これもその結果がでるにはまだ至っておらず、総じて未熟な内政が多く、次はないなと私は憂鬱な気分で眺めていたものです。

ところが、総統選挙にとんでもない「カミカゼ」が吹いてしまったのです。
しかも吹かしたのは台湾にとって最大の脅威であるはずの習皇帝陛下その人ですから、世の中というものはわからないもんです。
習がやった最大の「功績」は、選挙の1年前になって「習五条」を台湾につきつけたことです。
おそらく総統選まで1年の間よーく考えろと習は「犬のしつけ」をしたかったのでしょうが、これによって選挙のテーマは一気に内政から対中政策へとシフトチェンジしてしまいました。
習のほうから蔡英文の得意とする土俵に乗ってしまったといえます。

なにせ「習五条」なるものは、昨日も書いたように、「一国二制度による平和統一」と「武力統一」のどちらかを選べと迫っているのですから、もうムチャクチャ。これで台湾の人が燃えない道理がないわけです。
しかもこの「一国二制度」なるもの内実は、6月から始まる香港デモで、世界の誰もが知ってしまったのですから、結果論とはいえ習は馬鹿なカードを馬鹿な時期に出したものです。

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上の支持率グラフをみればお分かりのように、初め韓国瑜(かんこくゆ)が大きく引き離していたものが、香港デモが激化する8月から一気に逆転しそのまま韓国候補はスロープを直滑降するようにして視野から消えていきます。

つくづく習という男は内向きに出来ているのです。
腐敗一掃という名で、アンチ習派狩りばかりやって井の中の蛙をしているからこうなるのです。

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  韓国瑜 https://jp.rti.org.tw/news/view/id/91864

習が本気で台湾を内部から瓦解させて中国に吸収したいなら、国民党候補に実績もなにもない、韓国瑜なんてポピュリスト候補を持ってくるべきではありませんでした。
韓について福島香織氏はこう評しています。

「韓国瑜のような”下級国民党”、政策実績などなにもなく、なんかおもろいおっさん、というだけの人物。彼が急に高雄市長になったのは、中国の世論誘導工作、浸透工作の成果だということは、目下、多方面の情報機関の共通の分析結果ですが、ようは、国民党のプロパー政治家が国民党候補になれず、なんか中共がねじ込んでくる、ビジネスマンのテリー・ゴウだとか、中共の工作でうっかり人気ものになった下品はおもろいおっさんとかが、候補になってしまう」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.53 2020年1月13日)

つまりは候補者選びの段階で負けていたのです。
元来国民党の本命は鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏、16年の総統公認候補の朱立倫氏などが名乗りを挙げていました。 しかし国民党予備選で世論調査方式を採用したため、オモロイ発言で人気の韓が勝ち残ってしまったようです。
このことによって国民党は、韓と国民党有力者の郭や朱、王金平たちらとの関係が悪化し、最後まで修復ができないまま、国民党はバラバラな状態で総統選を戦ってしまったようです。

国民党が蒋介石と共に台湾島に逃げ込んだ国民党の残党らによってできているのは知られていますが、福島氏によればその時にエライさんとして逃げてきた「上級国民党」と、ただの下っぱで銃と鍋をかついで逃げて来ただけの兵隊たちの「下級国民党」にくっきりと別れているそうです。
今までの国民党の政権を担った政治家や優秀な官僚は皆この「上級国民党」出身だったそうで、前回総統選の国民党候補者だった朱立倫は典型的な正統派の「上級国民党」だったようです。
彼ら「上級国民党」にいわせれば、韓のような「下級国民党」に総統になられるくらいなら、台湾大学出の蔡英文のほうがよっぽどまし、ということのようです。

「こうした正統派国民党はプライドが高いのです。彼らの中には、下級国民党の指導者に従うくらいなら、台湾人の支配下に入った方がいいわ、と考えるくらいの下級国民党への差別感があるとか」
「もう、その時点で「国民党おわったな」という空気が、国民党正統派党員の間で流れていたようです。それが選挙運動の着手の遅さ、団結のなさにつながった。韓国瑜を国民党の古株は誰も応援していませんでした」
(福島前掲)

つまりは、今回の選挙ではっきりしてしまったのは国民党が長年の中国共産党の浸透工作によってグダグダになってしまった結果、国民党に残っていた優秀な正統派政治家たちが雲散霧消してしまい、中国のカイライそのもののような軽い奴しか選べなくなってしまったということです。
そしてこれを全世界に告知してしまったことで、「中華民国」という虚構もまたこの国民党とともに消滅してしまったということになります。

この選挙後に大きな台湾政治の再編がおこなわれるかもしれませんが、その時の選択肢からは「ひとつの中国」派と劣化した国民党は転げ落ちることとなることでしょう。

 

 

2020年1月13日 (月)

蔡英文再選おめでとう!

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1年前の蔡英文惨敗予想を完全に覆しての圧倒的大差での勝利でした。
実に得票数817万231票という台湾民主選挙史上最高得票数で、これはあの熱烈な親中派だった馬英九の得票数765万票を遥かに超える得票数でした。
投票率は74.9%で前回より9ポイント上回りました。
おめでとうございます。自由の民は、民主主義を選ぶという鉄則が証明されました。

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上の写真は最後の訴えを済ませた後の蔡英文の写真です。彼女は中央にいますが、いい写真を選びましたね。
彼女がどのような思いで戦ったのか、そしてなにを祈ったのかがよく分かる一枚です。

ただし、手放しで喜べないのは得票率です。
4割弱を国民党ががっちり握っているという現実には変わりありません。

・得票率
・蔡英文・・・57.13%(前回2016年時は56.12%)
・韓国瑜・・・38.6%
・宋楚瑜は・・・4.2%
cf.  2008年時における馬英九の得票率・・・・58.44%

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一方、同時に行われた立法院選挙はこのような結果でした。

立法院議席数
・民進党・・・61議席(△7)113議席中で単独過半数確保
・国民党・・・38議席(+3)

このように、国民党は立法院では、民進党の単独過半数を許したものの、しぶとく3議席増やして野党第一党を確保しました。
蔡英文の勝因は習近平という頑迷な中華帝国皇帝にあります。
この男なくしては蔡英文の再選はなかったはずです。

昨年1月早々に習が台湾に対していいだしたのがいわゆる「習5条」でした。東外大小笠原欣幸氏によればこのような内容です。
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/xifivepoints.html

●「習五項目」の骨子
第一:統一促進と中国の夢
第二:一国二制度と民主協商の呼びかけ
第三:一つの中国原則と台湾独立反対
第四:両岸融合と同等待遇
第五:中華民族アイデンティティ

ここで習が台湾につきつけたのが例の「一国二制度」でした。
「一国二制度」を台湾に対して言ったのは、意外なことに習が初めてでした。
胡錦濤は台湾の反発が強いことを知って封印していました。
習政権となってから台湾に対して口にするようになり、馬政権時に初めて出した時にはさすがの親中派の馬もこれを拒否したという経緯があります。
中国と距離を置こうとする蔡英文政権時にこれを再び言い出したのは、「台湾を飼い馴らす」つもりではないかと東外大・小笠原氏は見ます。

「習が今回「一国二制度」を正面から主張したことについて,「習近平は台湾の状況をわかっていないから」という解説があったが,それは違うであろう。台湾社会で反発がかなり大きくなることは2014年9月の経験でわかることだ。そうではなく,正面から突きつけ繰り返していくことで,「一国二制度」への心理的抵抗感を徐々に下げていく策略であろう。台湾を「飼いならす」つもりではないか。
 国民党としては,「統一」と「一国二制度」をあまり強調してほしくない。それに構わず突き進むのが習近平流で,ここが胡錦濤との違いである。表面的には江沢民と似ている。しかし,江沢民時代は台湾の反発を押し切るだけの実力がなかった。習近平は,台湾人の反発を計算に入れ,なおかつそれを押し切る硬軟両様の手段を用意している。ここが江沢民時代との違いである」
小笠原欣幸
習近平の包括的対台湾政策「習五項目」を解読する』

つまり、習は自分が歴代政権と違って「台湾の反発を押し切る」だけの力を持ったと錯覚していたのです。

さらに、習はこうも台湾に言い放っています。
「中国人は中国人を攻撃しない」、「武力使用の放棄は約束しない」
露骨なまでの武力による威嚇ですが、この表現もいままでも「紅八点」などの党内文書では登場しますが、こうまであからさまに台湾に対して言うことはありませんでした。

このように習は、いままでの歴代政権が押えてきた本音をあえてぶつけるべき時期、すなわち見せかけの融和路線ではなく武力を背景とする力による統一のプロセスに入ったと判断したようです。

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https://www.sankei.com/world/news/200101/wor200101...

何度も書いていますが、この習が「一国二制度」を台湾に言ったその年の6月に香港で民主化デモが火を吹きました。

「台湾人は妙にリアリストでコスト主義なので、戦争の脅威があるなら、中国とうまく付き合っていける方法を選ぶ可能性はあったようです。「香港の若者たちが命と血涙を贖って一国二制度がダメだと教えたくれた」のです。香港の若者たちの抵抗運動はまだ続くと思いますが、少なくとも一つ大きな成果をだしました。台湾の民主を救ったということです」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.52 番外』 2020年1月12日)

習が香港民主化デモに対して何らかの現実的な融和政策をとれたならば、台湾総統選挙の構図も白黒反転していた可能性があります。
ところが習ときたら、あうことか香港警察に血の弾圧を命じ、順調に香港市民の怒りを拡大させてしまいました。
香港における市民の戦いを対岸で見ていた台湾の人々にとって、「今日の香港は明日の台湾だ」ということが、連日映し出される映像によって肌身でわかってしまったのです。

そして同時期、中国当局は蔡英文政権締めつけのために得意の「犬のしつけ」をしていました。
そのひとつが、 2019年8月から台湾への個人旅行を暫定的に停止させる制裁です。
観光収入が大きい台湾で観光客を止めてしまえば干上がり、その怒りは中国の「ひとつの中国」に反対している政策をとっている蔡英文政権に向かうに違いないと思ったようです。

しかし、習には気の毒なことに、皮肉にも中国大陸からの観光客は大幅に減ったものの、それを補って日本からの観光客が去年8月~11月の前年同期比11%しました。
また日本への観光を禁止した韓国も台湾へと向かい33%増加しています(苦笑)。
この時期に、観光資源が豊富な上に治安がよく食べ物が美味しい台湾が一気に人気観光スポットに定着してしまったのは、皮肉なことです。

また、折からの米中貿易戦争によって中国の対米輸出入製品に高関税がかけられた結果、中国への外資は逃避を開始し始めました。
この余波で台湾の対米輸出が上昇する追い風が吹き輸出産業が持ち直しました。

すると、「中国に支配されるのはイヤだが、かといって中国抜きでは商売があがったりだ。だから台湾は独立なんて過激なことを言わず微妙なバランスをとって欲しい」という多数派が、「なんだ国民党のいうように中国と組まないと経済回復ができないというのはウソだ」と気がついてしまったのです。

その上は、水に落ちた犬状態となった習に更に追い打ちをかけるように起きたのが、オーストラリアにおいて現役中国スパイ王立強が寝返って、中国の台湾工作を洗いざらい暴露してしまったことです。

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王立強は、中国当局が1月の台湾総統選挙に向けて、蔡英文を落選させる工作として、50以上のインターネット会社やメディアを買収して宣伝と扇動活動を行っており、海外の団体名義で2018年の台湾の地方選挙時、国民党・韓国瑜候補に2000万元(約3・1億円)の選挙資金を提供したと暴露してしまいました。
この王の暴露を裏付けるようにオーストラリア政府治安情報局(ASIO)は19年12月2日、外国勢力の干渉抑制とスパイ対策を強化し、8800万豪ドル(約65億円)を投じて新たな専用部隊を設置することを発表しました。

このように習はやることなすこと全部裏目。これではムン閣下といい勝負です。
とうとう習の手によっては台湾の統合は無理だということが内外に知れ渡ってしまいました。
まことに台湾紙自由時報の社論がいうように、「習近平が蔡英文の最有力支援者だった」のです。
台湾総統選の焦点を、民主主義か中国型一党独裁か、自由か隷属か、に持っていってくれた最大の功績が習にあることは疑い得ません。

 

2020年1月12日 (日)

日曜写真館 降り出した雪の朝

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明け方から降り出した雪の朝に、月がポツンと帰り損なっています

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見る見るうちに雪が村を白く染めていきます

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実際は雪になれば外仕事は大変ですが、なぜかわくわくします

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2020年1月11日 (土)

ソレイマニ殺害を国際法はどうみるか?

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ソレイマニ空爆事件を受けて、改めて「戦争」ができる基準は何か考えてみます。
静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏は「ニュースを疑え」第828号(2020年1月9日号)はこれには二種類あって、一つは自衛権の発動と、もうひとつは戦時国際法における「正戦論」という倫理的基準があると指摘しています。

自衛権という範疇は米国民に被害が出た場合に発動されます。
今回これがなかったことで、武力反撃はせずという結果になりました。
もうひとつは戦時国際法の要件を満たすかです。
これが「正戦論」という考え方で、いまも国際社会のルールとして生きています。

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58855

では発端となったソレイマニ司令官の殺害を振り返ってみます。
ソレイマニは一般的な軍人でもないし、ましてや政府要人一般でもありません。
彼が正規軍の司令官であり、よくメディアがいうように「イラン政権ナンバー2」というだけなら、これを殺害してしまっては国際法的に逆ねじをくらうでしょう。
朝日などは「清廉な部下思いの人」なんて人物評を報じていますが、そんなこととはどうでもいいことで、彼が革命防衛隊の国外介入特殊工作部隊であるコッズ部隊の最高指揮官であり、この部隊がイラクで何をしていたのか、シリアでどのような市民虐殺をくりかえしていたのかが問題なのです。

シリアでのアサド政権による市民虐殺を長年追及してきた黒井文太郎氏はソレイマニの所業についてこうツイートしています。
https://twitter.com/BUNKUROI

・ソレイマニのシリアでの手法 アサド兵士がデモ殺しに躊躇すると怒鳴りつけて発砲させる。
・アサド軍が弱い戦線にヒズボラやイラク民兵を配置し、住民ごと殺させる。
・ 反体制派が強い町を封鎖して餓死地獄にする。
・ 反体制派捕まえたら拷問。
・ ISはクルドに任せる。
・ アサドが負けそうになるとロシアを引き込む

黒井氏はソレイマニはテロリストとよぶより「虐殺者」とよぶべきだろうと述べています。

ちなにみ山本長官の暗殺を引き合いに出していた馬鹿な米国人もいたようですが、山本はテロリストではなく正当な戦争行為における指揮官にすぎませんでした。
真珠湾作戦のような先制攻撃は国際法上かならずしも違法とはいえません。(宣戦布告なき戦争を米国もしょっちゅうやっています)

では、これが戦時国際法ではどのように判断されるのでしょうか。

正戦論の倫理的基準は、戦ってもよい(始めてもよい)戦争の条件と、戦い方の条件に区別される。戦ってもよい戦争の条件は、次の5つがもっとも重視されている。
1)正当な目的があること。
2)紛争を平和的に解決する合理的な努力が尽くされ、戦争が最後の手段となったこと。
3)正当な権力が戦争を許可すること。
4)戦争の目的に比べて、戦争がもたらすと予測される損害が上回らないこと。
5)目的が達成可能であること
(西前掲)

次に「戦い方の条件」はこのようなものとして定義されています。

1)戦闘員と非戦闘員を区別し、非戦闘員は攻撃目標にしないこと。
2)攻撃目標の軍事的価値に比べて、巻き添えとなる非戦闘員と非軍事物の損害を、不釣り合いに大きくしないこと」
(西前掲)

ソレイマニ空爆事件に当てはめてみます。
ソレイマニは革命防衛隊の海外テロ作戦専門部隊の最高司令官であり、革命防衛隊司令官としては国内で血なまぐさい国民虐殺をくりかえしてきた人物でした。これは別々な事象ではなく、一体の流れでみねばなりません。

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https://the-liberty.com/article.php?item_id=16481

昨年10月、バグダッドの反政府デモは全国的な反イラン・デモに拡大しました。
これはイラン国内の反政府デモに呼応するように起きたものでしたが、日本では桜騒動に浮かれて、どういうわけかまったくといっていいほどしか報じられていませんでした。
イラン国内だけで、革命防衛隊の弾圧によって1000人以上の死亡者を出しています。

「米国務省のブライアン・フックイラン担当特別代表は記者団に対し、「イラン政権は反政府デモの開始以降、市民1000人超を殺害した可能性がある」と述べ、マイク・ポンペオ米国務長官の呼び掛けに応じてイラン人3万2000人から送られてきた写真や動画などに基づく数字だと説明した。
 この数字は、情報の裏をとるのが困難なために慎重になっているという国際人権団体アムネスティ・インターナショナル発表の208人を大幅に上回る一方、米政権と親密な関係を築き上げてきたイラン反体制派組織「ムジャヒディン・ハルク(イスラム人民戦士機構が4日に発表した1029人とはほぼ一致している。
 アラブ系少数民族が多く暮らすイラン南西部マフシャフルから送られてきた映像には、機関銃を据え付けたトラックに乗った精鋭部隊である革命防衛隊が、デモ隊を湿地帯に追い詰める場面が映っていた。この弾圧だけで100人もの人々が殺害されたという」(AFP19年12月6日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3258307

またソレイマニはイラクの反政府デモに対しても、親イラン民兵を使って武力鎮圧させました。

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産経

「イラク国内で拡大している反政府デモで、ロイター通信は4日、全土で計44人が死亡、数百人が負傷したと伝えた。デモは昨年10月に政権が発足して以来、最大規模となっている。 イラクでは2年前、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に対する「勝利宣言」が出され、国家再生に期待が集まったが、汚職や経済低迷が改善されない現状に民衆が怒りをぶちまけた形だ」(産経2019年10月4日)

そしてそのイラン・イラク両国民の革命防衛隊への反感を米国へそらすため、カタイブ・ヒズボラなどのテロリスト組織は、12月31日には米国大使館の占拠を試みました。乱入した後の大使館にはソレイマニの名がそこら中に落書きされていたそうです。

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https://www.fnn.jp/posts/00049648HDK/202001061730

その前日の12月27日には、イラク北部のK-1空軍基地がロケット弾で攻撃され、米民間人(通訳)1人が死亡しました。米軍はこの時カタイブ・ヒズボラ施設を空爆して報復しています。
これを受けて、トランプは元日に、ポンペオ国務長官の持論だったソレイマニ司令官殺害を決断し、空爆作戦が1月3日に実施されました。
つまり米国はピンポイントでテロリストを狙ったわけです。
なお一部でポンペオが反対していたかのような報じ方をされていましたが、むしろこのソレイマニ空爆をかんがえたのは彼です。

ソニイマニは殺害された時も、イラクで大規模なテロを準備して、最新兵器をイラクに移送する準備をしていたと伝えられます。
したがって西氏はこう結論づけています。

「端的にいえば、ソレイマニ司令官はイラクで米軍や米関連施設への攻撃を指揮していた戦闘員なので、米軍の待ち伏せ攻撃は暗殺ではない」(西前掲)

このように戦時国際法の要件である自衛権の行使であり、かつ「正当な目的」があったと判断されたために、米国と一定の距離を持っているヨーロッパ諸国も即座に支持を表明したのです。

ただし問題はこの後だと西氏は問いかけます。
つまり米国が「自衛以外なにかしたのか」という大きな平和戦略のアフターフォローです。

「米国はそのような目的を示していない。正戦論は、報復の応酬ではなく、平和の回復を目的とする戦争しか正当化しない。しかし、2010年代のイラクやシリアにおける米国の戦略は、モグラ叩きのようにテロ組織を叩く一方で、テロ組織を生んだ状況は放置していた。
トランプ氏が批判する「終わりなき戦争」を米国が続けてきたのは、米国にもイランなど近隣諸国にも受け入れ可能な条件で平和を回復するための、外交交渉や復興支援が面倒だからである」(西前掲)

いままで米国が中東のみならず、世界各地で米国のテロが起きるたびに自衛戦闘を行い、そしてそれが報復の連鎖を呼んできたという批判は一面の真実なのです。
それは米国の自衛戦闘が、「全体として平和を実現する戦略」(西)に組み込まれていないという根本的欠陥あるからではないでしょうか。
トランプがあえてソレイマニ殺害という火中の栗を拾ったなら、その後にどうやって中東に平和を確立するのか示さねばなりません。
それが真にトランプが言う「中東火薬庫からの足抜き」なのです。

 

 

2020年1月10日 (金)

イラン情勢をめぐるさやあて合戦

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昨日書くはずでしたが、ゴーンの会見があったために一日遅れになったとおもったら、今度はイランにおいてウクライナ航空機が「撃墜」されました。これについてはイラン撃墜説がでていますが、詳細は不明です。
追記・カナダ首相も認める発言をしました。ほぼイランの誤射で間違いないようです。

さて、今回のイランの攻撃は、「正確に目標から外す」ということをしているようにも見え、実はイランが革命防衛隊をなだめるためのなんちゃって攻撃だという報道もなされました。

「イランによる弾道ミサイルの標的となったイラク西部の基地の最新の衛星写真を分析したところ、軍用機の格納庫や倉庫などがピンポイントで破壊されていることがわかりました。アメリカ軍に大規模な人的被害が出ないよう、標的を慎重に選んだことがうかがえます」(NHK1月8日)

CNNが着弾前後の衛星写真をアップしています。

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CNN

「目に見える一番大きな違いは、滑走路近くのコンクリートの1区画だ。建物がクレーターとなっているように見える。5つ並んだ中の真ん中の建物や近くの建物に被害が出ているようだ。専門家によれば、ヘリコプターが見えることから、米軍が使用していた箇所が攻撃を受けた可能性があるという。
そのほか、約610メートル離れた建物などにも損害が見られた。こうした建物が何に使われていたのかは不明」(CNN1月8日)

「現時点でイランは合計15発の弾道ミサイルを発射したことが確認されていると米国防当局が発表。
• 10発はイラク西部のアル・アサード航空基地に命中。
• 1発はイラク北部のアルビールの軍事基地に
• 4発は失敗」(米国ABC)

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イランが使用した弾道ミサイルはスカッドCだと言われています。北朝鮮が輸出したノドン系のミサイルだという情報もありますが、イラン・イラク戦争においてリビアから輸入したとみられ純正スカッドを177基発射していますので、真偽は定かではありません。
ただし、北は核兵器と弾道ミサイル開発において同盟を結んでいますから、イランへ現在弾道ミサイル技術を供給する国は世界広しといえど北しかいないのは確かです。

着弾した米軍基地は4箇所です。

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BBC

 

2020年1月 9日 (木)

ゴーンのパブリシティ戦略に負けている日本

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ゴーンの会見は新味がありませんでした。
特に新たな情報はありません。
ひょっとして日本政府関係者の名前でも口走るかとおもいましたが、それもありませんでした。
おそらくレバノン政府からヤメロとでも言われたのでしょう。

それにしてもたまらない気分にさせられるのは、日本の関係者です。
彼らは日本が何を発信しているのか、今進行しているのが情報戦だということに気がついていないのです。

会見前日になって、妻キャロルに逮捕状を出したり、おっとり刀で駐レバノン大使が大統領と面会している様など馬鹿もここまできたのかと思いました。
こんなことをすれば、いかにも日本政府が悪しき圧力をかけて、「正義」をねじ曲げようとしていると写ります。
いいですか、今ゴーンをめぐって展開しているのは何かを認識して下さい。
それは端的にいえば情報戦です。言い換えれば、パブリシティの主導権争いだと言ってもいいでしょう。

日本の検察は「無実」であることと、「無罪」であることをゴッチャにしています。
ゴーンが犯した国際経済犯罪は「無実」ではない、だから「無罪」にはしない、これが日本検察の発想です。
まことに日本というインナーサークルだけで生きてきた検察らしいかんがえ方です。

しかし世界はそう見ません。
極端に言えば、ゴーンが犯罪を犯していようと、どうしようと気にしていないと言うべきでしょう。
それは世界を代表するメディアじあるウォールストリートジャーナルが、ほぼゴーンの言い分のみを鵜呑みにして報じているのをみればわかります。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54167560Y0A10...

今、ゴーンが仕掛けているのは、3段仕立てです。
第1に、ゴーンは「容疑には根拠がなくすべて検察のデッチだ」ということ。
第2に、脱走したのは、日本の司法制度が「人質司法」のように推定有罪という前近代的な考えに立っているから自由を求めたのだということ。
第3に、情にからめて「家族との愛を引き裂かれた」ということ。

実に達者なもんです。
ひとつめについてですが、ゴーンはマネーロンダリングやタックスヘイブンまで使って、日産のカネを私物化していたことなど、世界が関心を持っていないことを知り抜いています。
そんなことをいい始めたら、GAFAのボスたちはことごとく手が後ろに回るからです。
不愉快ですが、グローバル企業の経営者が眼の玉が飛び出るような高額報酬を得て、しかも租税回避地を使ってマネーロンダリングしているのがグローバルなスタンダードだからです。
私たちにとっては天文学的な高額報酬も、一緒に逮捕されたケリーが『月刊文春』で言っているように、有能な経営者の引き抜き防止のための知恵だというのも、一面の真実ではあるわけです。
確かに高いが、それ以上に株主に利益を出しているだろう、プラマイで考えなよ、ということです。
ですから、オリンパスのような粉飾決算を長期間に渡ってしていたような、株主報告に偽りを報告するような行為とは次元が違うと、欧米のメディアは見ます。

ここで私たち日本人は、国際社会での「真実」と「正義」が微妙にズレていることに気がつかねばなりません。
私たちの多くは検察が上げたゴーンの罪状に納得し、許しがたい罪だと思っています。
そして「真実」を法廷で語るべきだと思っているでしょう。
しかし残念ながら国際社会はそんなことには関心ないのです。

ゴーンが演出しているのは、「不正義からの脱出」であって、それは市民的自由を求めるための「正義」の行い、すなわち善です。
たとえばゴーンが会見でもっとも力説したのは「人質司法」でした。
これこそが、彼のもっとも国際社会にアピールしたいキモなのです。
なぜなら、それは指摘としては的を射ている部分があるからです。

たとえば今回の逃亡劇でなぜGPSをつけなかったのか、それをどうして裁判所は認めなかったのかということのみに焦点が当たっていますが、これは拘留期間の長さとワンセットで捉えるべきことです。
たとえば佐藤優氏の場合実に512日間もの拘留を受けていますし、ゴーンは108日間もの長きに渡りました。

有罪ならば刑期に繰り入れられますが、 では彼らが無罪だったらどうするつもりでしょうか。
この拘禁の日を、検察がすいませんでしたと返してくれるとでもいうのでしょうか。
このようにいったん検察がクロと断定すれば、一切の保釈を許さず「私がやりました」と自白するまで留め置くのですから、前近代的と批判を受けても致し方ありません。
こんなことをあたりまえにしているから、後に法廷で「あの自白は強要でした」と覆ることが何度あったことか。

これは検察が戦前から変わらぬ自白に頼った取り調べをしているからで、基本的な取り調べをした後には早期に下写真のようなGPSを装着させて保釈させればよいのです。
欧米ではそれが常識になっており、カナダで逮捕されたファーウェイ副会長の女性もアンクレット型GPSを足首につけていました。

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アンクレット型GPS

逃亡のおそれがあるという検察の理由づけは、もはやテクノロジーの進化で理由にはならなくなっています。
このような馬鹿な制度があるために、日本検察はゴーンの犯罪事実を主張する前に負けてしまっています。

ゴーンが日本の司法を「推定有罪」だという批判も当たっています。
日本検察はには有罪率9割とかいう馬鹿げた幻想があるようです。
有罪率うんぬんは盛った話だとしても、日本の検察は無罪となったら面目が失墜すると感じるようです。
いやー、無罪で自由になれてよかったね、ではなく、オレたちがクロと断定したんだから無罪になられては検察の信用に関わるという心理になるようです。
だから学歴エリートは嫌だ。
またメディアも、同じように有罪率9割の神話を信じていますから、無罪ともなれば検察を袋叩きにして快感を味わいます。
このような隠微な風土から生まれたのが、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件や東京地検特捜部の虚偽捜査報告書事件といった検察不祥事です。
こんな不祥事が生まれると反省するどころか逆に発奮して、次こそ有罪にしてやろうとするからいっそうおかしくなります。

また検察は有罪率神話を維持するために、検察の作ったストーリーをのべつまくなしにリークします。
これは典型的な検察による情報操作です。
これが報道によく見られる「関係者の話によると」という情報ソースですが、「関係者」とは捕まっている被告人が言うはずがないので、検察官以外考えられません。
こんな検察の情報リークによる情報操作の協力者が取材能力のない日本メディアです。

また、弁護人ぬき取り調べや、録画なき取り調べにいたっては、いったいいつの時代の話かと思います。
ビデオなどテクノロジーの進化というのも恥ずかしいようなことで、さっさと可視化を進めるべきです。

このような脇の甘さが、ゴーンの主張の「正義」の楯を強化することになっていることに、いい加減日本の司法は気がつくべきなのです。
ここまで鈍いと、ゴーンのパブリシティ戦略にテもなく負けてしまって、欧米メディアの望みどおり「遅れた日本」を絵に描いたようになるでしょう。

最後に念のために書き添えますが、だからと言ってゴーンの逃亡が合理化出来るわけでもなんでもありません。
修正されるべき制度であろうとなかろうと、裁きの場から逃亡することは許せない犯罪です。
ゴーンの脱走を認めると、カネさえあれば裁判から逃れられるということになりかねません。
とんでもない前例を作ってしまったわけで、これを認めれば司法そのもののよって立つ根拠がなくなります。

日本政府はレバノンに対してゴーンの引き渡しを求めるべきです。
ただし、あくまでも狡猾に。
舞台が既に国内というインナーサークルから国際社会に移ってしまっていることをお忘れなく。

 

 

2020年1月 8日 (水)

なんともややっこしいイラク


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速報
テヘラン=水野翔太】イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」は8日、イラクにある米軍基地に地対地ミサイル数十発を発射したとの声明を発表した。米軍が革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のスレイマニ司令官を殺害したことへの報復だという。
 【ワシントン=蒔田一彦】米国防総省のホフマン報道官は7日、「イラクに駐留する米軍と有志連合軍に対して、イランが十数発以上の弾道ミサイルを発射した」との声明を発表した。少なくとも2か所の基地が標的になったという。被害状況については調査中としている。」(読売1月8日 9:31配信)

参考見解
「イランの最高指導者ハメネイ師とトランプ米大統領はいずれも強硬発言をしているが、双方とも全面戦争への関心を示しているわけではない。とはいえ、軍事衝突の可能性は排除できない。
ハメネイ師が自制を呼び掛ければ、国内や周辺国の親イラン組織から弱腰と受け止められかねない。このため同氏は小規模な報復を選ぶかもしれない。
カーネギー国際平和財団のシニアフェロー、カリム・サジャドプール氏は、ハメネイ師は対応を慎重に検討しなければならないと指摘する。「弱腰では面目を失うリスクがあり、過剰反応は自分の首が飛ぶリスクがある」という。
米国防総省情報局は昨年12月の報告書で、イランの主要な軍事力として(1)弾道ミサイル計画(2)産油国地域であるペルシャ湾全域の船舶航行を脅かし得る海軍(3)シリアやイラク、レバノンなど周辺国の親イラン民兵組織──を挙げた。
イランによれば、ペルシャ湾岸の米軍基地をたたくことができ、仇敵イスラエルに到達できる精密誘導ミサイルや巡航ミサイル、ドローン兵器がある」(ロイター1月7日)

                                                                  ~~~

予想どおりですが、トランプは各所から批判を浴びています。

「ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのファワズ・ゲルゲス教授(国際関係)は「トランプ政権は、イランの策略にはまるという大きな誤算を犯した」とし、司令官殺害は 「イラクのほとんどの政治勢力を反米国で団結させ、イランのイラクでの立場を良くした」と分析した。
過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いにも影響が出た。米主導の有志連合はイラクのISに対する作戦を中止し、最近攻撃を受けた基地の防御に集中する方針を明らかにした」(ブルームバーク1月6日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-06/Q3O7LMT1UM0W01

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ブルームバーク

イラク議会は既に5日に米軍撤退決議を出しており、法律化されていないために実効性こそないもの、この空爆事件で更に反米意識を強固にする結果を招いたようです。
5000名(300人増派)が駐屯する在イラク米軍にとって、敵の海の真っ只中に駐留しかねないことになり、イラク領内のIS掃討作戦にも影響がでるとおもわれています。

ただしブルームバークが報じるほど親イラン・反米で一枚岩というわけではありません。
日本ではまったくというほど報じられていませんが、コッズ部隊司令官カセム・スレイマニと同時に死亡した8名の中に、イラクのイスラム教シーア派武装勢力「人民動員機構PMF)」のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官が含まれています。

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スレイマニ(左)とムハンズィス(右)

イラク情勢は複雑なので解説しておきます。そうとうにこみ入っていますからご用心。
このムハンディスが指揮していたPMFはカタイブ・ヒズボラ(神の党旅団)を抱えもつ過激派テロリスト団体で、イラン革命防衛隊のいわばイラク出張所といったところです
そして呆れたことには、イラク政府から予算を貰ってイラク内務省管轄の治安部隊におさまっています。
今やこの親イラン民兵組織が、イラク国軍へ指示を出すという倒錯した状況になっています。
一般の国では絶対にありえないことですが、イラクのように政府と軍が崩壊し、その後に内戦を経験し、その過程で外国から援助される強力な民兵組織がゴロゴロしている国にはままあることです。

そしてこの親イラン民兵組織を育成し、軍事訓練を行い、武器を与えてきたのが、他ならぬスレイマニ率いるイラン・コッズ部隊です。
昨日も書きましたが、コッズ部隊の最高指導者がハメネイ師で、スレイマニはナンバー2として直轄軍の革命防衛隊を率いていました。

スレイマニは亡くなる直前の会議で、イラクに対空ミサイルやロケットランチャーを移動させ、イラクの親イラン武装組織に本格的な米軍攻撃をすることを命じていたとロイターは報じています。

「この会合の2週間前、ソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊に対し、2カ所の対イラク国境検問所を経由して、自走式多連装ロケットランチャーやヘリコプター撃墜能力のある携行式ミサイルなど先進的な兵器をイラクに移動させるよう命じた、と民兵幹部やイラク治安当局者は話した。
さらに同氏は、別荘に集まった幹部らに、イラク軍基地に駐留する米軍に対するロケット弾攻撃を実施できる新たな民兵グループを組織するようもとめた。米国側に顔の割れておらず、目立たないメンバーであることが条件だった。会合について報告を受けた民兵組織関係者によれば、ソレイマニ司令官は、ムハンディス氏によって設立されイランで訓練を受けた軍団「カタイブ・ヒズボラ」に、この新たな計画の指揮を執るよう命じたという」(ロイター1月7日)
https://jp.reuters.com/article/iraq-security-soleimani-idJPKBN1Z5111?rpc=122

革命防衛隊は、イラン国軍よりも優先的に予算や装備を支給され、命令系統もまったく別な「国家の中の国家」です。
ちなみに在日イラン大使館の駐在武官は国軍から派遣されているために、よく彼らのことはわからないそうです。

こんな国軍と別系列での「党の軍隊」は世界でも稀ですが、実は身近にもあります。
それがわれらが隣国中国の「人民解放軍」で、実は彼らは国軍ではなく共産党中央軍事委員会指揮下の「私兵」です。
ICBMや空母を持つ「私兵集団」ですから、コワイ。
ただしも別系列の軍隊がないために、国際的には国軍として遇されていますから、二本立て軍隊というのは世界でもおそらくイランだけではないでしょうか。

なお米国は革命防衛隊をテロ組織として指定しています。

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イラン革命防衛隊 日経

この親イラン派が引き起こしたのが、2019年12月31日にイラクの首都バクダッドで起きた米国大使館襲撃事件です。
デモ隊は大使館の外壁を突破し、「米国に死を!」と叫び声を上げながら占拠することを狙いました。
デモ隊といっても、明らかに組織されている「群衆」で、各所の検問を通過し大使館の壁に殺到し、内部に突入を企てました。
この時、イラク治安部隊はまったく大使館警備を放棄しました。
イラク治安部隊は前述したように親イラン派の命令で動いていますから、当然といえば当然です。
しかし米国側の素早い対応で、なんとか大使館は守り抜かれました。

このような警備側がデモ隊が癒着してその暴走を黙認するケースには、去年あった韓国の米大使公邸占拠事件があります。
ムン政権はこの事態を甘くみているようですが、米国はこの事件を境にして韓国政府を見離すようになってしまいました。

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大使館で神の党の旗を振るデモ隊

おそらくイランが考えそうなことは、1979年に起きたイラン大使館占拠事件の再現です。
当時米大使館を占拠したのは過激学生たちでしたが、実態は革命防衛隊の仕業でした。

実際にはこの学生らによる行動は、シーア派の原理主義者が実権を握った革命政府の保守派と革命防衛隊が裏でコントロールしていたため、原理主義者が実権を握る新政府のお飾りでしかなかった、穏健的なメフディー・バーザルガーン首相ら政府閣僚および、革命政府の指導下に入った警察はこれに対する制止活動は事実上できなかった」
イランアメリカ大使館人質事件 - Wikipedia


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イラン米大使館占拠事件 ウィキ

大使館員の拘束はじつに444日続き、ここからの脱出劇は映画『アルゴ』にもなっています。

米国がこの事態を重く見たのは、この直後の空爆後のトランプのツイッターに「52箇所を報復する」という」数字にも現れています。
「52」とはイランで捉えられた大使館員の数です。

このバグダッド米大使館占拠未遂事件の後の1月4日夜にも米大使館付近や市内2カ所にロケット弾が1発ずつ撃ち込まれ、バラド空軍基地にもロケット弾2発が発射されました。
これらの攻撃で米民間人が1名が死亡し、数名の米兵が負傷しています。

イラクでは、アブドルマハディ首相からしてバリバリの親イラン派、 政府機関や議会も親イランが強力、そして米軍が育てたはずの国軍もいまやテロリストの下回りと化していますが、ではイラク国内がそれで一枚岩かといえばそうでもなさそうです。
事実、スレイマニと一緒にイラクの親イラン派のボスが死ぬと、イラク国内の反イラン市民が街に出て歓声を上げたと言われています。

というのは同じシーア派であっても、イランのイラクへの介入に反対する組織が存在するからで、彼らの勢力は親イラン派と拮抗していると言われています。
この反イラン急先鋒は、ムクタダ・サドル師に率いられる 「行進者たち」と呼ばれるグループです。
彼らもまたご多分に漏れず自前の民兵組織「マハディ旅団・JAM」を抱えています。
どれもこれも似たような名前の上に、なんとか「旅団」、かんとか「軍」とついても、全部なんちゃって軍隊ですから念のため。

ただし彼らも反イランであっても親米というわけではなく、彼らの党派は議会多数派でありながら、米軍撤退決議では親イラン派と手を握ったようです。
しかしこれも当面の敵である米国と戦っている最中だからなだけで、緊張が緩和すればシーア派内部の親イラン派と反イラン派、さらにはシーア派とスンニ派まで巻き込んでの確執が再度表面化することでしょう。

これらすべての勢力は民兵組織を要していますが、戦闘にまで発展しなかったのは米軍という重しがあってこそでした。
ですから米軍撤退要求というのは、言い方を変えれば、重しの米軍をどかして好き勝手に内戦をさせろということであって、それがイラク国民にとって幸福かどうかとは別のことです。

それにしても表面を見ているだけでは中東情勢はわかりません。
ああ、ややっこしい。

 

 

2020年1月 7日 (火)

イラクと日本はまったく違います

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寄せられたコメントにお答えする中で、今回のイラン革命防衛隊司令官空爆事件について考えていきます。

HN「保守(戦後の)」さんのコメントです。

イラクの空港でイランのナンバー2を空爆して殺害したことを良しとするなら、元米軍関係者が「日本」の主権を侵害して、ゴーン逃亡を請け負ったり、今後米軍が駐留国「日本」の主権を侵害して、日本に招待されて来た「北」のナンバー1や「イラン」のナンバー1を「日本の空港」で空爆して殺害しても文句は言えないと思います」

あなたは米国が無法者だと思っているようですが、たぶんあなたが考えるより米国は国際法を守っています。
なぜなら、国際法を犯して軍を動かすと、後から中露はいうに及ばず、ヨーロッパ、さらには米国議会からも逆ねじをくらって国際的孤立を招くからです。
国際社会の盟主を自認する米国が孤立してはシャレになりません。

トランプは印象として横紙破りが好きそうですが、あんがい国際法の枠内でやっています。
今回のソレイマニ空爆にしても、イラン領内から出てきて、戻る寸前に攻撃をしかけています。
このイラン帰国寸前というのがキモです。
昨日も書きましたが、ソレイマニがイラン領内にいる場合に攻撃すると、主権国家への攻撃にあたるからです。
イラク国内にいる場合には、イラクにおいてシーア派テロの指揮を執っているのはこのコッズ部隊司令官のソレイマニですから治安的排除という説明がつきます。

同じように、よく米軍が明日にでも北を攻撃するようなことを無責任に言う人がいますが、ありえません。
それ相応の国際社会を納得させる理由が希薄だからです。
現時点は、米朝首脳会談後も継続されている交渉期間中と考えられます。
交渉中に相手国に攻撃を仕掛けることは、国際法の考え方からいっても認められません。

ですから米国が軍事攻撃を仕掛けることができる唯一の条件は、北が「先に手を出す」ことです。
これが俗に「最初の一発は相手に撃たせる」という米外交の基本です。
かつての真珠湾作戦でも山本が苦慮したのはこの米国の癖を知っていたからで、結果として日本は「先に手を出して」しまいました。

北の場合、正恩が盛んにブラフしている「戦略的兵器」なるものを国連決議に反して使用した場合がこれに相当します。
国連決議違反だと国連安保理にかけねばならないのでけっこう面倒ですが、直接に米国を標的とした長距離核ミサイル実験なら米国の意志次第です。
あるいはオットー・ワームビア事件のように米国人を不当に拉致拘禁した場合も、外交的返還交渉もするでしょうが、裏で実力奪還作戦も準備するはずです。

今回も米大使館攻撃や米国人への攻撃の指揮をソレイマニがとっていたことが、斬首作戦に踏み切らせた直接の原因でした。
リーパーという無人機を使っての空爆ですから、まがいなりとも一国の要人を抹殺する方法としては褒められたものではありません。

北の場合、斬首作戦の用意もありますが、同時に核施設やミサイル基地に対しての空爆も実施されるでしょう。
ただしこれも地上軍をどこまで入れるか、入れないのか、慎重に見極めてからの決断となるので、安易にこうなったらこうなるというシナリオを描くのは早計です。
私見では、地上部隊を入れるにふさわしい地理的条件がないので、そうとうに難しいと思います。
このように軍事的能力があるということはただの前提条件であって、それを使うことは政治的判断となります。

ではイラクの場合です。
日本とイラクを並列すること自体がナンセンスです。
置かれた立場がまったく違うからです。

米国イラク安保は、イラク戦争の戦後処理に基づいていますか、日米安保は双務的な(といっても限界があって、それはそれで問題ですが)同盟関係を基礎にしています。
したがって当然のこととして、
日本の安保条約に基づく日米地位協定において、駐留米軍には治安任務は与えられていません。
いくら米軍基地のゲートにデモ隊が押しかけても、機動隊が対応するだけで米軍のMPがでてくることはありませんね。
ただし、米軍施設内に侵入して乱暴した場合、米軍セキュリティが対応することになりますから、撃たれても文句はいえません。
米軍基地前の道路なら日本国の法律の適用内ですが、基地施設内部は米国の主権に準じるからからです。

このように米軍は、日本国内の治安について関与できる余地をまったく認められていません。
先日、日本にロンハニ大統領が訪問しましたが、米軍が彼を空港で空爆することなどは万が一にもありえないし、「保守(戦後の)」さんがいうようにゴーン逃亡劇に元米軍兵士が関わっていようとなかろうと、その場合は一義的には警察が、手に負えなければ自衛隊がお相手することになります。
その場合、「文句はいえない」どころか、安保条約はこちらから廃棄通告を出すことになり、日本は最大の同盟国を、米国はアジアにおける最大の策源地を失うこととなります。

ではイラクはどうでしょうか。
治安任務は日米安保のように当該国が行うのが大原則で、イラクのような国内秩序が崩壊した国ではそれが不可能なために米国が肩代わりしているにすぎません。
駐留する意味がまったく違うのです。

先日イラク国会は、米軍の国外退去を決議しましたが、あくまでも「決議」であって現時点では拘束力はありません。
ただし、トランプはそうとうにお冠だそうです。

「議会の最大勢力であるシーア派の反米指導者ムクタダ・サドル師のグループは議会で「決議では生ぬるい。即時に条約を撤廃し、米軍を屈辱的な方法で撤退させるべきだ」とするサドル師の書簡を読み上げた。議会の第2勢力を率いる親イランのハーディ・アミリ氏も「今こそ米軍を追放するため、イラク国民が団結する時だ」と米軍撤退を求めた。
 決議を民兵組織が「米軍施設攻撃への免罪符」(スンニ派国会議員)にすることも懸念される。親イラン・反米の民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」は4日、イラクの治安部隊に対し、米軍が駐留する基地から1キロ以上離れるように警告を出した」(読売1月6日)

https://www.yomiuri.co.jp/world/20200106-OYT1T50071/

このようにイラクは今やイランの強い影響下に置かれています。
だから、隣国のテロリストの最高指揮官が公然と出入りしていたわけで、それが分かっている米国からすれば4千人もの米兵の犠牲者を出したかの地が、気がつけばイランの属領と化していたということになるわけで、冗談じゃねぇという気分はわかります。

当然、トランプは怒りの会見をしています。

「イラク議会が5日、法的拘束力はないものの、170対0で駐留米軍に国外退去を求める決議を可決したことについて、トランプ氏は大統領専用機で記者団に対して、「我々はあそこに、ものすごく高い空軍基地を置いている。建てるのに何十億ドルもかかった。向こうが払い戻さない限り、出て行かない」と述べた。
さらに、イラクが米軍に退去を強制するようなら、「向こうが一度も見たことがないような制裁を科す。イランへの制裁がやや穏やかに見えるほどのをやる」と話した」(BBC1月4日)

それではこれ以上の米国のイランに対しての攻撃があるかといえば、それはイランの出方次第ということになります。

「一方でアメリカ政府は、革命防衛隊とコッズ部隊をテロ組織と指定し、ソレイマニ司令官をテロリストと呼んで殺害した。これに対してイランが「厳しい復讐」を誓ったほか、バグダッドの米大使館近くにロケット弾の砲撃が続く事態を受け、トランプ氏は5日、ツイッターで「この一連のメディア投稿は、米連邦議会への通達となる。もしもイランがいかなるアメリカの国民や標的を攻撃した場合、アメリカは直ちに全面的に反撃する。不相応な形での反撃もあり得る。こうした法的通達は不要だが、それでもやる!」と書いた」(BBC前掲)

「ゆん」さんの革命防衛隊と正規軍については過去記事を再掲載しますので、お読み下さい。

                                                                 ~~~~

イランはいわば二重権力になっています。
ハメネイ師とロウハニ大統領です。
下の産経(2019年6月12日)のイラン国内関係図を見てください。

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https://www.sankei.com/world/news/190612/wor190612...

最も上位にあるのは赤丸がついているハメネイ師です。
ロウハニ大統領と違って選挙で選ばれていませんから、国民は辞めさせるわけにはいきません。
国会などというややっこしい民主的手続きも不要です。

一般国の元首に相当しますが、他国のそれが権威的存在であるのに対して、なんと軍隊を二つも握っていて牽制し合わせています。
国軍と革命防衛隊(IRGC)の指揮・統帥権、さらには警察・司法もハメネイの掌中にありますから、なんだ絶対的独裁者じゃん、ということになります。

黒井文太郎氏の説明によれば、このハメネイは細々としたことまで決めているわけではなく、実際に決定権を行使しているのは、彼を補佐する側近集団「最高指導者室」であり、そのなかの安全保障政策担当「最高指導者軍事室」(室長ムハマド・シラジ准将)です。
その最高指導者軍事室の指揮下に「イラン軍事参謀総長」(現在はモハマド・バケリ少将)が指揮する国軍最高指導部が置かれています。
今回イランがかかわったのなら、このシラジ准将が企画立案の責任者のはずです。

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日経

また一方の強大な軍事勢力である革命防衛隊や、民間人を取り締まる司法も同様にこの「最高権威」の下に属しています。
逆に言えば、大統領という世俗権力が掌握できるのは、経済や社会の純粋に民間の部門にのみ限定されていると言っていいでしょう。
とりあえず外交権は内閣が持っていますが、それさえも政府とは無関係に革命防衛隊がそこかしこに軍事介入したり、工作員を浸透させたりしていて引っかき回していますから、存在感は希薄です。

国軍と革命防衛隊は、比喩が正しいかどうか分かりませんが、ナチスドイツにおける国軍と親衛隊の関係に似ています。
革命防衛隊はナチス親衛隊(SS)から発展した武装親衛隊(Waffen-SS) のようなもので、国軍並の装備と兵員を抱えています。
このいかにも革命国家らしい組織は、イラン革命の時に故ホメイニ師の親衛隊として発足しました。

初期の革命時期には荒事を一手に引き受け、1979年に権力を握った後は反ホメイニ狩りの急先鋒として親衛隊化しました。

そしてイラン・イラク戦争(1988年~88年)で、前線に国民を動員する働きをし、優先的に予算を与えられて国軍をしのぐ軍事勢力として武装親衛隊化しました。

実はイラン革命の指導者たちは国軍がパーレビのものだったためにまったく信用しておらず、革命防衛隊を対抗勢力に仕立て上げて、国軍の監視をさせるつもりだったようです。
この関係はいまだに変わらず、国軍と革命防衛隊はいまでも水と油、犬と猿の仲です。
現在この革命防衛隊は、ハメネイ最高指導者が君臨する「最高指導者室」の直系です。

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https://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/190613/wor19...

かつてはテヘランの米国大使館占拠などもやり、かなり長期に渡ってパレスティナのヒズボラやイエメンのフーシ派などのテロリストに対する資金・武器供与や軍事軍連、果ては直接にシリアアサド政権の軍事支援にまで関わっています。
いまや中東最凶の団体として、米国からテロ団体指定のお墨付きまで得ています。
先日の日本タンカー襲撃事件もたぶん革命防衛隊の仕業であることが濃厚です。

ロウハニ大統領はまったくこのイランの国軍・革命防衛隊の指揮権を持っていません。
ペルシャ湾で日本タンカーが襲撃されても、へぇーってなもんだったでしょう。

やや説明が長くなりましたが、この普通の国にはないイラン特有の国内勢力図がわからないと、今回の事件は理解できなくなります。
というのは、常識的にかんがえると、なぜ「いまの時期にサウジを攻撃するのか」がわからないのです。

「攻撃のタイミング自体に、大いに怪しむべき点がある。攻撃が行われたのは、まさにドナルド・トランプ米大統領が今月下旬の国連総会の場でのイラン大統領もしくは外相との外交交渉を可能にするため、厳しい対イラン経済制裁の若干の緩和を検討していた時だった。
フランスも、まさにこうした若干の関係改善に向けて、精力的な働きかけを行っていた。 しかし、突然始まった外交的動きを好ましく思わない勢力も多い。
そのうち一部は、動き始めた外交プロセスを停止させるような危機を生み出すため、ミサイルを活用できる立場にある。恐らくこれが、週末の出来事の説明になると思われる」(ウォールストリートジャーナル9月17日)
https://jp.wsj.com/articles/SB12696131808382783557304585555240552165732?mod=WSJ_article_EditorsPicks_3

トランプは現在イランと「前提条件を作らない」直接交渉しようと考えていました。
相手はもちろんハメネイではなくロウハニです。そのためにイラン制裁を緩めてもいいというシグナルを送っていて、その一環が強硬派と言われたボルトンの解任でした。
また日本も、ロウハニを通じて仲介を準備している直前でした。
日本タンカーの襲撃など、安倍氏が訪問した矢先でした。

この緊張緩和の動きを壊したい連中、即ち強硬派が、今回のサウジ攻撃を仕掛けたのです。
ウォールストリートジャーナルはこのように指摘しています。

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「容疑者リストの筆頭に挙げられるのは、イラン政府内の強硬派だ。国際社会のみならずイラン国内でも、多くの人々は、オバマ前政権下でまとめられたイラン核合意からの離脱をトランプ氏が決めたことを危機と捉えた。しかし、イラン国内の一部強硬派は、これを好機と受け止めた。
 イラン革命防衛隊の指導者を含む強硬派は、そもそも核合意を好意的に受け止めていなかった。むしろ核合意が廃棄されれば、核および弾道ミサイル開発の取り組み強化の論理的根拠になると考えている。

 またイランの強硬派は別のことも知っている。米国との外交的なダンスをやめることに加え、サウジの石油施設を攻撃すれば、欧州とアジアの指導者たちを怖がらせ、米国の経済制裁に対する何らかの救済措置を引き出せるかもしれないことだ」(WSJ前掲)

ハメイニに率いられた革命防衛隊などのイラン強硬派は、イラン核合意を邪魔者だと考えていました。
こんなものがあるからイラン悲願の核武装ができないのだ、軟弱モンがオバマにだまされやがって、核さえ握ればイスラエルを海に蹴落とし、サウジを叩き潰し、中東の覇権国となれる、これが強硬派の本音でした。
そこにトランプが別な思惑でイラン核合意を壊すと言い始めたので、皮肉にもトランプと平仄が合ってしまったわけです。 

 

2020年1月 6日 (月)

イスラム革命防衛隊司令官が空爆で死亡

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少しは正月くらい静かに送れないかと思いますが、ゴーンは逃げるし、IR汚職が発覚し、おまけに米国がイランのテロリストの親玉を空爆で殺害してしまいました。
死亡したのはラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官です。Img_1de8a6e49a18e8e93b21ad7a622ba1ce1632

空爆されたソレイマニが乗った車両 AFPhttps://www.afpbb.com/articles/-/3262018?pid=21984218

「【ドバイ】イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官が米軍の空爆で死亡した。イランはこの10年、ソレイマニ氏の指揮により中東での勢力拡大に成功したが、今回の事件はそれを中東の市民が脅かしつつあるタイミングで起こった」(ウォールストリートジャーナル2020年1月4日)
https://jp.wsj.com/articles/SB11303255049055914463404586118503243037610

「米国防総省は今回の作戦がドナルド・トランプ大統領の命令によって実施されたことを明言する一方で、作戦の詳細な内容は明らかにしていない。
 空爆は、バグダッドの国際空港に通じる路上にいた車両2台に対して行われ、ソレイマニ司令官はこの車両のうちの1台に乗っていた (AFP1月4日)

使ったのが無人機であるか、ヘリであるのかは不明です。
いままで米国は一貫して正確を期するためにアルカイーダのウサマ・ビンラディンやISのバグダディには特殊部隊を投入してきましたが、今回は空爆という手段を使いました。
これは作戦の実施に緊急性があり、特殊部隊の準備が整わず、監視活動をしていた無人機が攻撃した可能性もあります。

「米国はここ数か月間にわたってソレイマニ司令官の動向を注視してきており、より早期の作戦実施も可能だったはずだ。 米国防総省は、同司令官が「イラクと地域各地にいる米外交官・軍人を狙った攻撃を積極的に画策していた」と説明している。 
マーク・エスパー米国防長官はこれに先立つ2日、米国は攻撃計画の情報があった場合「先制行動」も辞さないと警告。イラク北部キルクークで先週発生した軍事基地に対するロケット弾攻撃で米国人民間業者が死亡したことにより、「情勢が一変した」と述べていた。ロケット弾攻撃は親イラン派勢力が実施したとされている」(AFP前掲)

典型的な斬首作戦ですが、いずれにせよ米国が排除を決めた対象に対して恐るべき精度で追跡し、ピンポイントで抹殺可能なことがわかりました。
この作戦のヒューミントはモサドが提供したとおもわれますが、詳細は明らかにされないでしょう。
おそらく北朝鮮に対しても同様の作戦をスタンバイしているはずで、正恩は影武者を増やさんといかんなと冷や汗をかいたはずです。

また今回ソレイマニが死んだのはこのバグダッド空港そばのイラク領土内で、おそらく現地のヒズボラを指導している時に殺されたと見られています。
今回のソレイマニ殺害事件で一部の日本メディアは「米国の主権侵害だ」というニュアンスで報じていますが、米国はイラクと協定によって駐屯しており、イラン領内での攻撃ではありません。
今回の作戦はおそらくソレイマニがイランに戻る寸前に実施したもので、戻られるとイラン領内への空爆と見なされます。
米国はそのへんまで考えてギリギリの線を狙ってきています。

これで第5次中東戦争となるゾ、と騒ぐ人たちでいますが、なるわけはありません。
ひとつは中東各国が冷静なことです。
中東各国はむしろせいせいしたというのが本音のはずで、時事は「米非難相次ぐ」と報じていますが、こんなメンツです。

「米軍の空爆でイラン革命防衛隊コッズ部隊ソレイマニ司令官らが殺害されたことを受け、関係各国・組織から3日、米国を非難する声が相次いだ。 
 国営シリア・アラブ通信(SANA)によると、シリア外務省筋は、「裏切りの攻撃」と糾弾し、イラク、イラン両国への連帯を表明。ロイター通信によれば、イランが支援するレバノンのシーア派組織ヒズボラやパレスチナのイスラム組織ハマスも「大罪」などと反発し、ソレイマニ司令官の遺志を継いで戦い続ける意向を示した」(時事1月3日)

シリア・アサド政権の軍事的スポンサーはこのイラン・コッズ部隊です。
アサドはイランとロシアの手を借りて自国民の大量殺戮をしてきました。
レバノンのシーア派やパレスチナのハマスにいたっては、コッズ部隊から弾丸からミサイルにいたるまで丸抱えで支援を受けているいわば「手下」です。 

また米国もそのような大規模戦争を起こす気はありません。
米国が戦争をする気なのか否かを計る目安は、陸上部隊を投入するかどうかです。
空爆だけでは決着がつかないからです。

米軍は先日中東に3千人増派しましたが、本気で米国が戦争を構えているならこんな規模の兵力集中では済まないからです。
井上孝司氏は米国が湾岸戦争やイラク戦争時の予備役動員数のグラフをアップしています。

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https://twitter.com/kojiinet

いずれも20万人規模で、3千の増派などはただのテロに対応しての警備強化にすぎません。
また中東における戦争には最低で空母打撃群を3個集中しますが、いずれの空母にもその動きはありません。

さて日本のメディアはカセム・ソレイマニをただ「司令官」と肩書をつけて報じているので誤解するむきもあるかも知れませんが、彼は「コッズ部隊」(ゴドス)と呼ばれる革命防衛隊の海外作戦司令官であって、イラン正規軍の司令官ではありません。

コッズ部隊はイランが「イスラム革命の輸出」をするために、革命防衛隊の出先として作ったものです。
この最高指揮官兼政治指導者がソレイマニでした。
革命はイデオロギーが国境を超越すると教えていますから、イランにとって国境はあってなきが如しのものでした。
イランは取り巻くすべての中東諸国に介入し、時には現地のシーア派武装組織を使って現地政府を攻撃してきました。

「レバノン、イラク、シリアと場所を問わず、攻撃を計画したり現地の親イラン派を後押ししたりして、イランの影響力拡大を推進した。その中心に長年いた立役者こそ、ソレイマニだった」(CNN1月4日)

WSJによれば、イランがこの間行った中東での動きはこのようなものです。

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https://toyokeizai.net/articles/-/323012

もっともイランが力を入れているのは、かつてイラ・イラ戦争を戦ったことのあるイラクとシリアでした。
イラクでは親イラン武装勢力の「神の党旅団」(カタイブ・ヒズボラ)が昨年12月31日にバグダッドの米国大使館を襲撃放火事件を起こしています。
この米大使館襲撃事件は、一説によればイランがかつてのイラン大使館占拠事件の二番煎じを狙っていたと言われています。
その真偽は定かではありませんが、トランプはイランの報復宣言に対して「52箇所報復できる」と言っており、この52とはイラン大使館で444日におよぶ虜囚生活をよぎなくされた大使館員の数です。(※大使館員の数が53名という説もあります。)
これが今回の殺害事件の直接のひきがねとなりました。

シリアにおいて史上まれに見る悪逆な政権であるアサド政権を助けて、自らも市民虐殺に手をかしてきました。

「シリアではコッズ部隊とレバノン、イラク、アフガニスタンなどから集まったシーア派武装勢力の支援により、内戦が9年近く続く中でもバシャール・アル・アサド大統領がまだ権力の座を維持している。だがここでもやはり支配力を強めようとするイランの取り組みは、イスラエルの空爆、さらにはロシアとトルコによる新たな調停の動きによって揺らぎつつある。
その一方でイランに「最大限の圧力」を加えるとする米国の制裁により、コッズ部隊が中東で協力先に提供できる資金は枯渇し、イラン国内での社会不安にもつながっている」(WSJ前掲)。

革命防衛隊は自国民にも容赦なく、去年起きたイラン国内の反政府デモの武力鎮圧を命じたのもソレイマニです。
いまイラン国内は報復一色のような報じられ方をしていますが、そんなに一枚岩ではなさそうです。

ちなみにゴーンが逃げた先のレバノンは、親イラン政権でヒズボラが実効支配していると言われており、昨年12月から反政府抗議行動が激化し、内戦の可能性もあるようです。
ゴーンはガチガチの親イラン派が支配する国に逃げてしまったわけで、おそらくイスラエル渡航が厳しく追及されるはずです。
まったくとんでもない国に逃げたものです(笑)。



2020年1月 5日 (日)

日曜写真館 迎春の岸辺

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生まれたての太陽が、新しい春を言祝いでいるようです

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黄金の道ができました

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黄金の水面に白鳥が踊っています

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太陽は蓮のたんぼのすぐ先まできています

 

 

2020年1月 4日 (土)

ゴーン逃亡事件は人権ではなく主権問題です

 

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カルロス・ゴーン被告の国外逃亡事件についてかんがえてみたいと思います。
ゴーンは自らの逃亡について、「正義から逃げたのではなく、不公平と政治的迫害から逃げた」、あるいは、「日本の司法制度は、国際法・条約下における自国の法的義務を著しく無視しており、有罪が前提で、差別が横行し、基本的人権が否定されています」 といういかにもフランスで高等教育を受けた者らしい修辞で、近代的人権と未開な日本の司法制度との戦いであったと主張しています。

このゴーンの言い分を支持する人たちは、この問題を日本の法制度がロシアや中国並に遅れたシステムに原因がある人権問題であると捉えています。
特にこのような意見は欧米メディアに強く、「近代的人権vs前近代的日本の法制度」という図式で捉えているようです。
おそらく8日に予定されているゴーンの会見もこのトーンで押し通すことでしょう。

さて私は日本の法制度の礼賛論者ではありません。
弁護人ぬきの取り調べ、可視化の遅れ、常態化している検察リーク、そして今回問題となっている長期拘留のあり方などについて、別途日本国民が議論を重ねるべき点だとかねがね思ってきました。

日本の司法制度に矛盾があるなんて、言っちゃナンですが、常識の範疇です。
たとえば沖縄で問題となって久しい日米地位協定が変えられない一番の理由は、米国が日本の司法制度に対して不信感があるからです。
日本は日米地位協定第17条5(C)により、日本で裁判を受けるべき被疑者であっても、米国が先にその身柄を拘束した場合は、1次裁判権は米国がもっています。

では先に日本の警察が犯人を押さえても、犯罪を犯した米兵が留置場から脱走したとしたどうでしょうか。
そしてどこかの外国でシャラっとして、「弁護人ぬき取り調べを強要された。ビデオも回っていなかった。正義から逃げたのではなく、不公平と政治的迫害から逃げたのだ」なんてヒーローヅラして言えば、大部分の日本人はふざけるなと思いますね。
それはこの男が日本の法制度から逃げたのではなく、刑罰から逃げたにすぎないことが見え見えだからです。

ゴーンのケースも同じです。
彼は日本の法制度と戦いたくて逃げたのではなく、己の罪による裁きから逃げたかっただけなのです。
彼が狙っているのは、レバノンが引き渡し条約がないことにつけ込んで、裁判それ自体をさせない事にあります。

なるほど日本の法制度には修正が必要です。
ただしここが重要なのですが、あくまでもそれは「別途」であって、そして主語は「日本国民が」、です。
ここをゴッチャにして、ゴーンという一外国人が犯した法制度からの脱走を許容してしまうなら、日本はもはやまともな主権国家とはいえません。

「国家」という概念は、なんとなくある「日本人のあつまり」ではありません。いい機会ですからおさらいします。
国家の要件は、1933年の「国家の権利義務に関するモンテビデオ条約」で定められています

①永続的国民
②明確な領土
③政府
④その政府が外国との交渉能力を持つこと
"The state as a person of international law should possess the following qualifications: a ) a permanent population; b ) a defined territory; c ) government; and d) capacity to enter into relations with the other states"

さらに「国家」の属性である「国家主権」についても押えておきます。これには三要素があります。

①国家の統治権(国民および領土を統治する国家の権力)
②他国の支配に服さない最高独立性(対外主権)
③国家の政治のあり方を最終的に決める権利

ですから、国民と領土を保護するために国家は軍と法を持たねばなりません。これが国家の自然権と呼ばれる概念です。
9条は、そもそもこの国家の国家たる自然権の自己否定なわけで、憲法が自国民を保護することを放棄したと宣言するに等しいトンデモ条項です。
したがって「軍隊を持つことができる」という権利ではなく、「持たねばならない」義務なのです。
おっと、こっち行くと長くなる(汗)。
それはさておいて、司法制度はこの中の重要な柱ですから、外国からとやかくいわれる筋合いではありません。

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ロイター

ところで前置きが長くなりました。
まず前提となるゴーンの逮捕容疑から洗っておきます。

①報酬額の過小記載で金融証券取引法違反で2018年11月19日
②別期間の金融証券取引法違反で同年12月10日
③私的投資損失の日産への付け替えによる会社法違反で同年12月21日
④日産の支出を私的流用したことによる同法違反で2019年4月4日

ここで興味をひくのは、③④の私的投資の日産への付け替えの舞台となったのが、いずれも中東であることです。
中東はマネーロンダリングの世界的ハブであり、ゴーンはオマーンルートと呼ばれる資金貫流ルートも持っていました。

「起訴状によると、ゴーン元会長は2017年7月~18年7月、日産子会社「中東日産会社」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」に計1000万ドルを送金させ、うち計500万ドル(約5億5500万円)を元会長が実質保有する預金口座に還流させたとされる。
元会長の不正をめぐる起訴は今回が最後となる見通し。ただ、検察幹部は「すべての不透明な支出の解明に至っていない」としており、公判に向けた証拠の収集は今後も継続する。資金はゴーン元会長の妻や息子が関与する会社にも流れたとされ、特捜部は中東各国や米国に関係者の聴取などで捜査共助を要請している」(日経 2019年4月22日)

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日経

時系列を追っていきます。

まず2018年のこと、ゴーンは新生銀行との間で金融派生商品で約18億5千万円という巨額損失を出しました。
ゴーンは本業以外に金融通貨取引に手を出していました。それば巨額のカネが動くスワップ取引でしたが、これが08年9月のリーマンショックで破綻します。
このために新生銀行側は追加担保を求めました。

ここでゴーンは、新生銀行に対して「取締役会で契約の移転を決議する」というウソの約束をしました。
まったくヒドイ話で、自分の私的取引の失敗を会社に被せて、オレは日産に独裁権があるから会社にケツを拭かせるさ(下品で失礼)、と言ったのです。
そして実際に
、同年10月、評価損を抱えた金融派生商品を日産に移転させてしまいました。
会社の私物化そのもので、このようなことができてしまう日産という会社が、いかにコンプライアンスもナニもない「カルロス・ゴーン商店」と化していたかわかります。

ところが会社にツケてホッとしたのもつかのま、監視機関である証券取引委員会から付け替えの違法性を指摘されてしまいます。
仕方なしに翌年の09年2月、ゴーンは自身に渋々再移転しますが、新生銀行側はその際に追加担保を求めました。

さてここから中東が登場します。
ゴーンは、知人のサウジアラビア人実業家ハリド・ジュファリに約30億円の「信用状」を外資系銀行から新生銀行へ送らせて、追加担保とします。
ゴーンはこのサウジ人のジュファリに対して、日産から30億円の融資を出させようと目論みますが、さすがに社内承認が得られず頓挫しました。
そこでゴーンは、09年6月~12年3月の期間に、自らの判断で使うことのできる「CEO予備費」から「販売促進費」の名目で、ジュファリ氏が経営する会社に1470万ドル(16億円)を振り込みました。
「販売促進費」と称するもののジュファリにはそんな実態がなく、追加担保提供に協力した見返りです。

つまりは、ゴーンは自分の私的バクチで大損をこき、その焦げ付いた個人投資の損金を知人に保証させ、そのツケを日産に肩代わりさせた、ということになります。

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国際裏金融に詳しい猫組長こと菅原潮氏はこのように述べています。


「 最初の疑義は、評価損を抱えた金融派生商品を、ゴーン氏→日産→ゴーン氏と短期間で目まぐるしく移転できたことだ。何よりこの金融派生商品は、追加担保を求められる(マージンコール)ほどの負債の場合、ロスカット(負債額の強制決算)を行うのがルールだ。マージンコールされるほどの負債額を抱えながら、所有者(ポジション)を移転するというのは、通常では考えられない」
「こうしてひもといていけば、ゴーン氏が行ったことが単なる「特別背任」でないことが理解できるだろう。ジュファリ氏が額面よりはるかに安い金額で入手したSBL/Cをゴーン氏に差し入れ、ゴーン氏が日産の「名前」と「資金」を利用できるだけ利用し、最終的には決裁権を持つ予算から1470万ドル(現在のレートで16億円)を振り込む──。これは「マネーロンダリング」の構造そのものだ」
(菅原 『ゴーン事件を「壮大なマネーロンダリング」ではないかと疑う理由』)

菅原氏が指摘するように、この事件はただの「特別背任」という経済事件ではなく、国際金融を舞台にした大規模マネーロンダリングだと思われます。
検察もその線で捜査しており、複雑な構造を解明するために長い期間を要しているようです。
長期拘留となって原因はそのへんにもあり、それを「人質拘留」のひとことでかたづけるのは乱暴です。

ですからただの私企業に検察がクチバシを突っ込んだというものではなく、国際的金融犯罪なのです。
レバノンはマネーダリングのハブですが、フランス司法当局は既にゴーンの金融犯罪の捜査には着手しているようです。
なお、ゴーンの犯罪についての詳細な分析は、菅原氏のダイヤモンドオンライン記事をお読みになることをお勧めします。
ゴーン事件を「壮大なマネーロンダリング」 - ダイヤモンド・オンライン

ゴーン逃走劇について触れる余裕がなくなりましたが、それは次の機会に譲ります。

※タイトルを替えました。すいません。

 

 

2020年1月 1日 (水)

明けましておめでとうございます

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明けましておめでとうございます。
本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
皆様方のご健康とご多幸を
祈念いたします。

かぎやで風

今日の誇らしゃや
なう何なうぎやなぎゃな譬るたてぃる
つぃぶでぃる花
露行つぃゆ逢たちゃたごと     

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NHK

新年早々の蛇足

カルロス・ゴーンが、国外逃亡したことがわかりました。しかも映画よろしく楽器のケースに隠れて偽名を使ってプライベートジェットで逃げたとか。
逃走経路は関空からトルコのイスタンブールまでプライベートジェットで行き、そこからレバノンに渡ったようです。
事前準備の段階から妻のキャロルが付き添っていて同行しています。この妻が計画したという情報もあります。

レバノンメディアがいうように、これは「準軍事的作戦」です。
作戦を立案・実行したのは、海外の民間軍事会社(PMC)です。このような傭兵部隊が日本で行動したということ自体驚きです。

また偽装パスポートを使用しての脱出作戦は、レバノン政府の協力なくしては到底可能ではないとかんがえるべきです。
ゴーンのパスポートは3種類あり、いずれも弘中惇一郎弁護士が保管することが保釈条件でしたが、なぜかゴーンは所持していました。
ならばゴーンに手渡したのは弁護人以外ありえず、厳しく追及されねばなりません。
レバノン政府は正規の入国手続きを経たと言っていますが、ほんとうとは思えません。
ゴーンのような国際的に有名になった犯罪事件の容疑者が出国停止だと知らなかったという事などありえませんから、事前に鼻薬を嗅がされたか、そもそもグルなのかのいずれかです。

レバノンでゴーンは早速プロパガンダに励んでいます。
ヨーロッパ人権思想の耳に快いことをアピールして、自分は「不公正と政治的迫害を逃れて自由を求めた」パピヨンだといいたいようです。たぶんフランスのメディアと政府を味方につけたいのでしょう。
まぁ、ここまで当該国の司法制度を真っ正面から踏みにじった行為をすれば、メディアはともかくマクロンはかばいようがないでしょうけど。

なにが「迫害を逃れ」ですか。自惚れもいい加減にしなさい。ゴーンはただのマネーロンダリングなどの違法な手口を使って会社のカネを私物化し巨富を築いたカネの亡者にすぎません。
このような逃亡をすること自体が犯罪の自白も同然だと、日本の裁判所はかんがえることでしょう。
それにしてもゴーンは裁判は受けると言っていますが、どのような方法で受けるのか見物です。
日本に入った瞬間に収監されて裁判が終わるまで出られませんからね。
よもやレバノンで裁判を受けさせろとか言うんじゃないでしょうね。

今後日本は直ちにレバノン政府に容疑者引き渡しを求めるでしょうし、出入国管理法違反の逃亡犯としてインターポールを通じて国際手配にするはずですから、レバノンから外国に渡航することは不可能です。
したがって、ゴーンは今日からは、パピヨンどころか、レバノンでの捕らわれ人となったということです。

本当に日本をなめた愚かな人です。


今日のうれしさは
何にたとえられるだろうか
蕾(つぼみ)のままだった花に
露(つゆ)がついて花開いたようだ。今日のうれしさは
何にたとえられるだろうか
蕾(つぼみ)のままだった花に
露(つゆ)がついて花開いたようだ。



 

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