正直、頭では可能性はあるかもしれないと思っていましたが、よもやの米国本土の感染爆発です。
しかも爆発した地域が米国経済活動の心臓部のニューヨークです。やや長めですが日経から引用します。こんな長いもん読めるかという人のために引用下に要約をつけておきました。
「【新型コロナ感染者、米で2万人突破 NY州で1万人超
ニューヨーク=高橋そら】米国内の新型コロナウイルスの感染者数が21日、2万人を突破した。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、全米の感染者数は東部時間同日午後4時(日本時間22日午前5時)時点で2万4148人となった。死者数は285人に増えている。感染者数はわずか2日間で倍増しており、政府は対応に追われている。
感染者が最も多いのはニューヨーク州で、すでに1万人を超えた。同州のクオモ知事は21日の記者会見で「どこよりも多く検査しているため、陽性患者が増えている。もっと見つけることが目標だ」と強調した。クオモ氏は20日、同州の全事業者を対象に、全従業員の在宅勤務を義務化すると発表。感染防止策を強化している。
すでにカリフォルニア州やイリノイ州も外出禁止などの強制措置に踏み込んでおり、米国内総生産(GDP)の約3割を占める主要州の経済圏が機能不全に陥る恐れがある。ニュージャージー州も同様の措置を検討中だ。今後、他の州も追随する可能性が高い。影響を大きく受けるのは外食や小売りのほか、宿泊、観光などのサービス業だ。
米商務省の個人消費支出額の内訳を見ると、2019年時点で航空や鉄道など運輸サービスは4780億ドル(約53兆円)、娯楽サービスは5860億ドル、飲食・宿泊は1兆200億ドル。これら合計で年間約2兆1千億ドルと、全体の約14%を占める。雇用や企業活動への影響も甚大だ。全米レストラン協会(NRA)の推計によると、今後3カ月で外食業界は2225億ドルの売上高、最大700万人の雇用を失う可能性がある。米調査会社テレシー・アドバイザリーのボブ・デリントン氏は「家族経営店などは資本が脆弱で最も大きな打撃を受ける」と指摘した。
要約します。
①米国の感染爆発2万人を突破、死亡数340人に到達
②感染の中心はニューヨーク州で1万人を超えた
③ニューヨーク州は従業員に自宅待機を義務化
④カリフォルニア州、イリノイ州も外出禁止措置
⑤米国経済の中枢が大打撃
米国は州知事権限で外出禁止令を発動させることができますし、州兵まで動員出来る権限があります。
一方、日本の県知事には県所有施設の使用すら止められません。
ただし、州知事は止めても補償義務はありません。
ニューヨークが事実上の封鎖に入ったことで、パリ、ロンドンなどのヨーロッパに次いで世界の主要都市が活動を止めた事になります。
世界で閉鎖されない大都市は東京と上海(ウソだろう)くらいなものとなりました。
このままいけば、ヨーロッパ各国は深刻なモノ不足、特に人工呼吸器などの医療機器、薬品などの不足が深刻化すると思われます。
既に、ヨーロッパではモノ不足→買い占め→さらなるモノ不足という悪循環が始まっているようです。
米国はいざとなれば、連邦軍が物資を押さえて物流まで強制的に動かすことが可能ですが、ヨーロッパはEUで国際分業が進んだ上に、軍の統制権は各国が持っていますから、どうなるのか不透明です。
また米国は日本で慎重に運用されているPCR検査を活発化させており、なんとあの韓国で精度がデタラメ、偽陽性続出、医療機関パンク、おまけに感染ハブとなるので悪名を馳せたドライブスルー形式での検査機械まで導入したようです。
このような医療体制の整備を優先せずに検査のみ増やすと、ご承知のとおり韓国やイタリアがやった轍を踏むことになります。
下写真はツイッターで送られたイタリアの病院内部の様子ですが、「黙示録的」と書かれています。
こうなってしまってからでは遅いのです。
検査を増やした事による医療崩壊について、米国病院勤務がある津川友介医師はこのように述べています。
https://twitter.com/yusuke_tsugawa
「例えばUCLA病院では、検査用の車両を出したり、それ専用のテントを用意することで、患者の導線を隔離する予定です。予約外来はそもそも大部分が遠隔診療に切り替えられており、予定手術も半減していますので、新型コロナ以外の理由で病院にいる患者さんの数は減っていると思います」
あるいは軽症者には自宅療養させることでセーフティネットが張れるから医療崩壊はしないと言っています。
う~ん、いかがなものでしょうか。津川氏はUCLA病院のような理想的タイプを想定して考えているようですが、米国には病院にすらこられない無保険者層が一説でかつては4千万人(オバマケア以降減って2千万人台)もいると言われています。
彼らはどこの病院に行くのでょうか?彼らの恐怖はどこで解消されるのでしょうか?
下層階級やブルーカラー階層は、このコロナパニックで職場から放りだされ、ウサを晴らしに出かけることもできずに自宅で雪隠詰。
レイオフされるわ、補償はないわ、くしゃみは出るわ、なんとなく熱っぽいわ、医療保険には入っていないわとなると、引き出しから銃を取り出しかねません。
津川氏は米国エリート層特有の、この下層階級の心理的パニックが起きた場合を想定していないような気がします。
私は、イタリアで破綻したPCR検査優先方針を進めると、確実に軽症者と無症状陽性者の隔離ばかりが増えていくことになりはしないかと心配です。
一方、日本はPCR検査の使い方は、ドライブスルーなどしてガンガン検体を増やすことはしませんでした。
なぜなら新型コロナをPCR検査した場合、感度(その病気にかかっている人が、陽性と判定される確率)は70%、特異度(その病気にかかっていない人が、陰性と判定される確率)は99%で、偽陽性を大量に出してしまうし、偽陰性もわずかですが出るからです。
むしろ無闇やたらと検査をすることは有害でもあるのです。
それに米国と違って、国民が安く医療を受けられる皆保険制度は心強いですしね。
ですから日本は、難しい重症肺炎と思われる患者には何回かCTを撮って、その結果ウイルス性肺炎の疑いが出ればPCR検査にかける二段仕立てでのぞんで医療崩壊を防ぎました。
その端的な結果が、36人という世界の中でも少ない数字です。
米国はまだ判っていないと見えて、増加を想定してニューヨークなどで、米軍工兵隊まで投入してホテルを改造した隔離施設の改造に着手したようです。
「アメリカで、新型コロナウイルスの感染者が最も多いニューヨーク州の医療態勢を強化するため、アメリカ国防総省は、現地のホテルの客室や大学の寮の部屋など、1万室以上を病室に改装する計画を検討していることを明らかにしました。
これは、アメリカ軍で建物や道路などの建設にあたる陸軍工兵部隊のセモナイト司令官が20日の記者会見で明らかにしたもので、ニューヨーク州で現在、使われていないホテルの部屋などを改装し、室内の気圧を低くして、空気が外に出ないようにして感染者を隔離する計画だということです。
ニューヨーク州では、感染のさらなる広がりに伴って、医療施設が今後、不足することが懸念されており、国防総省は、すでにニューヨーク市の港に病院船を派遣することを決めています」(NHK3月23日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200321/k10012342941000.html
米国はなまじパワーがあるだけに、隔離施設を用意すりゃ済むとでも思っているのでしょうか。
陰圧室まで作るということですから重症患者用ということもあるのでしょうが、病院船まで向かわせているというのですから、スゴイというべきか、そもそも初めのボタンを掛け違っているとおもうんですが・・・。
このところウォーキングデッドをズッとみていたので(シーズン9で挫折しましたけど)、あたしゃマジでコワイ。
とまれ、ニューヨークタイムスの感染爆発のアニメーションを見るとゾっとします。日本の対策を散々嘲笑していたNYタイムズのお尻に火が点いたことがわかるでしょう。
See how the virus spread across America.
米国の感染爆発のすさまじさは下の爆発速度のグラフにも現れています。USの線はヨーロッパをしのぐ爆発速度を見せているのがわかります。
もう一枚爆発速度を見てみます。
AFPが作った米国の感染拡大のグラフでも90度の角度を描いて感染が爆発的に増加していることがわかるでしょう。
米国と日本を1万人あたりで比較してみます。感染者数だけでは人口が米国は2倍あるのでわからないからです。
米国の感染者は26,747人で死亡数340人、1万人あたりで0.81人(世界3位)、日本は感染者1046人、死亡者36人、1万人あたりで0.08人(世界16位)です。
ちなみに「オーバーシュート」という言い方をメディアは好んでつかいますが、どうも専門家会議で使ったのをカッコイイのでマネしているようですが、パンデミックという一般的な用語がある上に、「感染爆発」という日本語もあるのですからそちらを使って下さい。
ちなみにオーバーシュートは、世界的には下図右のような意味で使われています。
米国は既に日本に2月25日にCDCアラートがクラス2に引き上げました。
当時は日本が世界3位の感染国で、クラス3に引き上げられると、原則と渡航・滞在禁止地域となります。当時は中国と韓国が指定されていました。
クラス3となった場合、ビジネスマン、観光客だけではなく在日米軍の軍人とその家族も中国同様の引き上げ勧告や引き上げ命令が米国政府から出る可能性がありました。
https://wwwnc.cdc.gov/travel/notices/watch/coronavirus-japan
これは経済問題にとどまらず、国防問題にも直結しかねない事態で、日本政府が休校・イベント自粛などのクラスター潰しを必死でしたのはこの背景があったからでした。
防疫は国防の別の言い方なのです。
ところがいまや、日本がなんとか感染爆発を抑え込んでいるに対して、米国のほうがクラス3に該当するような事態となってしまったのは皮肉な結果です。
日本政府は米国に渡航制限をかけました。
日本がホットスポットだとして、チャーター機を使って引っさらうようにして自国民を帰国させたあの頃が遠い昔のような気がします。
恒例の各国データーを掲載しておきます。
おなじみのジョンズポプキンス大学のサイトから 3月23日現在)の 感染状況を見ます。さまざまな偽情報が錯綜する中、JHUと厚労省サイトは信用がおけます。一日一回でいいですからのぞいてみてください。
くだらないテレビのワイドショーなどばかり見ていると、コロナブルーになっちゃいますよ。
Modeling the Spread of 2019-nCoV/ The Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at JHU
●世界の感染状況(3月23日午前4時30分現在)
81,397 China
59,138 Italy
31,057 US
28,603 Spain
23,974 Germany
21,638 Iran
14,485 France
8,897 Korea, South
7,014 Switzerland
5,071 United Kingdom
4,216 Netherlands
1,378 Canada
1,314 Australia
1,306 Malaysia
1,209 Brazil
1,086 Japan
●死亡者数
イタリア・5476人
中国・3261人、
スペイン・1720人、
イラン・1685人
日本・36人
●各国の感染者数 左から感染者数 ・死亡数・1万人あたりの感染者数・死亡率(2020年3月22日現在)
https://medley.life/news/5e390f2d6158e140a8122862/
中国 |
81,346 |
3,265 |
0.57 |
4.0 |
イタリア |
53,578 |
4,825 |
8.84 |
9.0 |
スペイン |
25,496 |
1,381 |
5.43 |
5.4 |
ドイツ |
22,364 |
84 |
2.68 |
0.4 |
イラン |
20,610 |
1,556 |
2.49 |
7.5 |
アメリカ合衆国 |
26,747 |
340 |
0.81 |
1.3 |
フランス |
14,485 |
562 |
2.16 |
3.9 |
韓国 |
8,897 |
102 |
1.74 |
1.1 |
スイス |
6,652 |
80 |
7.79 |
1.2 |
英国 |
5,067 |
234 |
0.77 |
4.6 |
日本(クルーズ船を除く) |
1,046 |
36 |
0.08 |
3.4 |
クルーズ船 |
696 |
7 |
- |
1.0 |
その他 |
40,294 |
577 |
- |
1.4 |
総数 |
307,278 |
13,049 |
- |
4.2 |
東京五輪の延期を容認すると首相が表明しました。これについては明日に。