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2020年5月27日 (水)

中国の失速鮮明

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中国全人代で初めて成長率が示されなかったので波紋が拡がっています。
まず李克強の政府活動報告の前半は、退屈な「コロナ勝利宣言」なので、無視してよいでしょう。
偉大な領袖・習近平同志の英雄的奮闘のかいあって制圧したものの、防疫の最高指揮官だった李克強はこんな本音もチラリととのぞかせていたようです。

「感染予防コントロールにおいて、公共衛生応急管理などの方面で、少なからぬ弱い部分も暴露してしまったので、群衆から出た意見や提案は重視されるべきだと、全体のトーンとしては、政府の力不足をにじませており、弱気な印象だった」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.75 2020年5月26日)

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https://www.jiji.com/jc/p?id=20200522182050-003478

リアリストの李としては、かんじんな防疫作戦にはまるで役に立たないくせに、武漢の感染が終わったとなると真っ先に飛んで行ってエエカッコしいの習に辟易していたのかもしれません。
たぶん共産党としては「コロナにうち勝った偉大なる中国共産党」という部分だけを強調したかったのでしょうが、ではダメージを受けた経済をどう建て直すかになるといきなりショボくなります。

「復興の柱は財政出動と金融政策の2本立てで、早期の平常モード復帰を目指す。ただ、中国を巡る経済情勢は国内の需要不足に加え、依然としてコロナ禍が収束しない海外の混乱による輸出の先行き不安が強まっている。米国との対立が再び先鋭化するというリスクも抱えるなど極めて流動的なため、通例となってきた成長率の目標値提示を今回、初めて避けた」
(5月22日 日本経済研究センター湯浅 健司  首席研究員兼中国研究室長 下グラフも同じ)
https://www.jcer.or.jp/research-report/20200522-2.html

な、なんと「成長率命」の中国が初めて成長率の目標値をだしませんでした。
ご承知のように、中国は「右肩上りでどこまでも経済が伸びている」というフィクションがあって、いくら牢獄のような国であろうと、農民暴動が頻発しようと、貧富の格差がひどかろうと、民主的権利のかけらもなかろうと、少数民族が民族浄化されようと、はたまた香港で火が吹いていようと(以下略)、生活がよくなるんだからいいじゃん、とでもいうような成長率神話がありました。

この成長率神話は「保八」と呼ばれて、成長率8%という高度成長成長をズッとキープしてきた、今後も任しといて、と中国は言い続けてきました。
実に景気のいい話で、永久エンジンじゃあるまいに、永遠に続く高度成長なんてこの世にありません。
この「保八」が初めて破れたのが2012年上半期のことです。しかし、やぶれたといえど公称7.8%ですから、誤差の範囲です。

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もちろん、李克強自身が認めていたように、中国の統計数字は電力消費量、輸出入以外ぜんぶウソの塊で、ハナから8%すると政府が決めたから8%なのです。
でなければ14億人のGDP統計が、わずか1週間で出てくるなんてできっこありません。これじゃあ統計数字なんか意味ねぇだろ。

それはさておき、中国はいわゆる「中進国の罠」と呼ばれる、いかなる国も遭遇する通過儀礼を頭から浴びている真っ最中でした。
この「中進国の罠」とは、高度成長が終わって安定成長に移行する際に、どの国にでも現れる社会現象で、今までの中国の驚異的成長を支えていた若年層の労働力人口が急速に減少しました。

特に中国は人口抑制政策のために一人っ子政策を基本にしていたために、恐ろしい勢いで少子高齢化が進んでいきます。
結果、労働力不足による賃金の高騰を招き、それが労働市場を圧迫し、外国企業は中国に生産拠点を置くことにメリットを感じなくなります。
このような少子高齢化が進み、生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が上昇することで社会保障費などがかさみ、経済成長を阻害する現象を「人口オーナス」(重荷)と呼びます。

しかし高度成長を続けているという政府の甘い声に従って、中国の現役世代は我も我もとシャンパンを抜きまくりました。
個人消費もけっこうですが、国がきちんとした老齢化に備えた制度設計をせねばならなかったのです。
労働人口の過半を占める国有企業や役所、教育機関が今までの「鉄碗」に馴れて、ゆりかごから墓場まで国が面倒を見て当然だという社会主義的意識を変えられなかったのです。
「鉄碗」意識を変えられないまま、シャンパンを抜き放題でつっ走れば、結果は見えています。

「より根本的な問題として、中国は途上国のままで高齢化を迎える(未富先老)可能性が高い」
(2012年8月3日 大和総合研『—成長は保八から破八へ、そして高齢化へ3つの懸念』)
https://www.dir.co.jp/report/asia/asian_insight/120803.html

話を全国人代に戻しましょう。今回の全国人代の要点は以下です。

●全人民代表の李克強報告の要点
①GDP目標設定しない理由
②赤字率(インフレ率)3.6%で1兆元出動、特別国債1兆元、地方債1.6兆元の3.6兆元出動(GDP比3%)という小粒経済刺激策
③投資は限定的。リーマンショック後の4兆元の反省。
(福島前掲)

GDP目標設定しない理由はこのようなことが原因だと見られています。

「GDP目標が設定されなかった理由について、李克強は「グローバルな感染状況と経済貿易情勢の不確定性が非常に大きく、わが国の発展への影響が予想しがたい。このようにした方が(目標を設定しないほうが)各方面は精力を集中して“六穏”“六保”をしっかりしていくのに有利だろう」とした。
中国のエコノミストたちによれば、理由は主に三つほどある。
1)感染状況の見通しが不明であり、経済に対する影響の不確定性が大きいこと。
2)目標を設定すると逆に、マクロ政策に手法に枷をはめてしまう可能性がある。状況によっては、“水をじゃぶじゃぶ灌ぐ”式の経済刺激策をとらざるを得ない。
3)もし目標が実際的でなければ、地方政府は“データを捏造する”などの対応をやりかねない」(福島前掲)

まぁ、ざっぱくに説明すれば、李は地方政府があげてくる統計数字をまったく信用していません。
彼は上が目標を決めれば、下はかならずそれに表面的には従うそぶりをみせて、内実はただの数字合わせをしまくってきたことをよく知っているからです。平時ならいざ知らず、こんな恐慌の淵で、そんな目標なんか立てても無意味なばかりか逆効果だとすら考えているようです。
俗に「上に政策あれば、下に対策ある」といわれるように、下手に中央政府が目標を口にすれば、地方政府は数字上だけで達成しようとするでしょう。
そして地方政府がやることはひとつです。
リーマンショックの時のように、銀行に放漫融資をさせて、結局山のような不良債権を作ってしまうに決まっています。

いったいリーマンの後に、全国に無人の幽霊都市の廃墟がいくつ出来たとおもってんだか。
ところが地方政府はこんな不良債権を山ほど作っても平気です。
要は、共産党の連中が融資に際して袖の下をどれだけ取れるか問題で、最後の帳尻は「鉄碗」の国が面倒をみてくれるとなめてかかっています。
この面従腹背を知り抜いているから、李は虚しい目標なんか示さなかったのです。
このような上は下を信ぜず、下は上にオベッカばかりいうくせに腹では舌を出してワイロを取る、これがこの中国という国の文化です。

そしてもう一つの理由は、リーマン移行に天文学的に膨張した不良債権を放置し続けたために、ここで金融緩和のアクセルを踏もうもんなら、一気に強インフレとなる可能性があるからです。
だから、金融緩和という景気浮揚の特効薬をとれないのです。

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「グラフは中国の銀行融資残高と銀行不良債権の推移である。銀行融資は2008年9月のリーマン・ショック以降、年率15%前後、一直線で増加してきた。不良債権のほうは12年から徐々に増加し始め、15年から前年同期比50%前後のペースで急増中である。
 融資残高に占める割合は今年3月末時点1・4%で、日本の13年当時の水準並み(16年3月は0・97%)である」
(田村秀男『深刻さを増す中国の“債務爆弾” IMF分析では中国当局データの10倍 』上図も同じ))

その全貌すらつかめぬほど巨額な不良債権ですが、どのくらい積み上がっているのでしょうか。

「IMFが4月中旬に発表したグローバル金融安定報告によると、融資残高に対する中国の不良債権比率は14%、国内総生産(GDP)に対する比率は20・7%に上る。円換算の不良債権額は中国当局データから算出すれば、3月末23兆円だが、IMF報告ではその10倍、230兆円へと膨れ上がる」
(田村前掲)

不良債権額・推定で230兆円・・・!(絶句)。
日本がバブル期に作った不良債権はいかにも多そうにみえますが、45兆円ていどです。
これを公的資金を投入して約16年で解消させています。

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https://news.mynavi.jp/article/heiseieconomy-6/

しかもこの中国の不良債権の推定値は、親中派のラガルド専務理事が弾いた数字ですらこうですから、実際はどれだけあることやら。
こんな自由主義経済ではやりたくてもできない不良債権を山積みできるのは、貸す方も借りるほうも共産党だからです。

「ここで気をつけなければならないのは、中国の不良債権認定基準のいい加減さである。日米欧の場合、企業など借り手が90日以上返済を延滞すると不良債権として分類するのだが、中国の銀行は銀行が担保などを高く評価して「回収できる」と認定すれば、不良債権に計上しなくても済む。
 大手国有商業銀行は主な貸出先が国有企業であり、共に党官僚が支配している。党の裁量がものを言う。貸し倒れはありえないと国有大手銀行は判断すれば、当局が追認するというわけである」(田村前掲)

このような共産党官僚が共産党官僚に巨額融資をしてきた積年の弊害が、一帯一路において爆発したのは、昨日見てのとおりです。
そしてそれは国外だけに止まらず、中国国内の不良債権という火薬庫にも誘爆していくことでしょう。

なんとか経済が回ってさえいれば、マネーフローでやりくりできたのかもしれませんが、いったん数カ月間完全停止したらどうなることやら。
だから武漢をまだ余燼くすぶる中に解除したのでしょうね。

中国の失速はこの国だけにとどまらず、大きな世界経済の地殻変動をもたらします。
それにしても、コロナ制圧も中国が勝った、その後の世界も中国が真っ先に復興すると、チャイナ総取りのようなことを言う人、どこを見て言ってるんでしょうか。




●お断り 本日から感染者数速報を停止します。また感染拡大があれば再開します。気を引き締めていきましょう。

 

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コメント

いくら失速しようとも覇権国家
国際社会と協調して頭を押さえつけておかなくてはなりません
間違っても国賓招致なんていう助け舟を出しませんように…

遅ればせながら、ブログ12周年おめでとうございます。
宮崎口蹄疫騒動の時に、何か信頼に値する情報はないかとネットを色々探していて、このブログにたどりつきました。それ以来、震災、原発、辺野古、そして今コロナ等々いつも貴重な情報を提供していただきありがとうございます。これからもお体に気を付けて、有益な情報の発信者となっていただけたらと思っています。まずはお体第一が一番ですが。
昨今、アメリカと中国の対立が益々先鋭化してきている気がします。
中国が香港に対して、力で押さえつけに行けば、アメリカは先に制定した香港法によって、何らかの遅行処置をとるのは明らかでしょうし、今、時々ニュースになっているアメリカ株式市場での中国企業締め出しもきつくなるでしょうし、益々中国は経済的に追い詰められるのは間違いないと思います。ただ、そんな経済的に追い詰められ、国内情勢が不穏になってくると、中国が必ずやるのが、反日暴動にみられた、外敵への攻撃です。今回も恐ら日本がターゲットにされそうですね。その兆候は尖閣で徐々にみられていますし、石平氏のツイッターでは、中国政府が日本国内にいる在日中国人に何らかのアクションを起こしているらしいです。いったん事が起きれば、日本国内で様々な行動を起こしそうです。昨年、東京半蔵門に所用があって行った時、そこらの飲食店は中国系が多いのにびっくりしました。
国会議事堂や警視庁、果ては皇居もでもが、目と鼻の先の場所にこんなに中国系が多いのって本当に大丈夫?と素人ながらに感じたものです。ポストコロナの時代がどう動くのか全く分かりませんが、大きな戦争などない世の中であってほしいと思います。でもなんかやっぱり最近きな臭いきがしてるのは、私だけでしょうか?

 昔から全人代での内容から「中国のこれから」の意味内容をさぐって来たところですが、習独裁体制になってから全人代の在り方自体も大本営的に極度に悪く変わったと思います。

もはや成長率を示す事すら出来ない現状は見えるのですが、それに対応する方針が見えて来ません。
武漢肺炎拡散について「遺憾の意」程度も示さない事はもちろん、あいかわらず「人類の発展~云々」とか吐き気をもよおす戯言を言って、世界の誰も信じない「全中国新規感染者ゼロ」をブチあげています。

総じて今回の全人代は「自国宣伝」、「軍事力の増強」、「香港への威圧」に終始した点で、大国としては恥ずべきものにすぎなかったとの評価が大勢でしょう。

日本政府としては、中国の軍拡や孤立化を止める事を課題としているようですが、せつないくらい無駄な努力に終わるでしょう。

ウイグル人権法などの米国内法により、中国進出した日本企業も撤退もしくは中国事業の縮小を余儀なくされるでしょうし、米主導の中国排除の経済圏構想に早期参加を表明すべきです。
せめて台湾政府がかねて念願するTPPに加入させる方向でカジを切るべきでしょう。

最初は痛みをともないますが、コロナ禍克服を通じて私たちの孫子の代への未来をこそ保障すべきです。
ちなみに、習が李克強に代わったところで中共は変わりません。
経済成長で増長した中国人の意識まで容易に変わる事がないからです。

一宮崎人さん同様、宮崎の口蹄疫の問題について書かれたブログを拝見して以来、必要に応じて、圧倒されつつ感心しつつブログ参考にさせていただいています。
海外資産差し押さえるといった訴訟は起こるに任せ、新型コロナウィルス肺炎の責任問わず、外圧加えず、内政問題に向き合わざるおえなくなると、一党独裁が瓦解するのが加速すると観点から、何もせず傍観していくのが一番なのかもしれませんが、少数民族弾圧、香港一国二制度の形骸化、発展途上国の港湾施設が取り込まれていくの心情的に看過できません。
面と向かって物申す桜井良子氏らが発起人となって、寄付者が特定されない、小口のクラウドファンディングが立ち上げられ、少数民族弾圧、香港の一国二制度の形骸化、発展途上国港湾施設取り込みを進める国の元首を国賓として迎えるのですか?といった意見広告が新聞やテレビに出せるようになればと思います。
その一方で、5Gが普及する中、当該国の端末を使って、こういったコメント記すだけで、IPアドレスなどと紐付けられ個人が特定され、家族や所属する団体組織に危害を加えられる時代がそこまで来ているのかもしれないと思っています。(的外れなコメントですみません)

日曜日の写真も含めていつも楽しみに拝読しております。考え方は必ずしも私と同じでなないこともありますが、根拠となる資料を示されての説得力ある論説は、不遜な言い方で恐縮ですが信頼させていただいております。

さて、いよいよ中国の終わりが始まったようですね。人民元は未だソフトカレンシーですから、香港で為替が止まり外国からの投資がない状態で人民元を刷りまくれば、国内でパイパーインフレになってしまいます。中国は世界最大の食料輸入国なので、アメリカはお金に加えて世界に包囲網を作ってここを締め上げてくるように思います。
かつて日本はABCD包囲網で石油を締め上げられ、ドイツを当てにして真珠湾攻撃をやってしまいましたが、世界中に味方がいない中国は軍事行動に出るに出られず、国内の混乱の中で人民解放軍が各地で軍閥化して崩壊していくのではないかと思っています。

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