新しき女王、ヨジョンの誕生か?
いきなり北朝鮮が南北連絡事務所をチュドーンと爆破してしまいました。事務所といっても建て替えた後にはリッパなビルですから、なかなかどうして。動画もあるようです。
https://www.youtube.com/watch?v=GRKEnWIe5oI
「北朝鮮が開城の南北連絡事務所を爆破 韓国統一部
南北共同連絡事務所は2018年4月の南北首脳会談での「板門店宣言」に基づき、同年9月に開城工業団地内に開所した。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)の妹、金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長は13日の談話で、「遠からず北南(南北)共同連絡事務所が跡形もなく崩れる光景を目にするだろう」と建物の爆破を予告しており、それから3日で実行に移したことになる。
韓国側でも同日、開城工業団地の方面から爆発音が聞こえ、煙が上がっているのが目撃された。
軍当局は爆破後、南北軍事境界線での突発状況に備え、北朝鮮への監視を強化している。
北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部はこの日、南北の合意によって非武装化された地域に再び軍隊を投入する可能性を予告していた」(聯合6月16日)
場所は開城工業団地の一角にあり、そもそもこの団地自体がそうであるように「南北融和」の象徴的存在でした。
それをヨジョン(与正)様は、爆破するとおっしゃってからわずか数日で本当に爆破してしまいました。
パチパチ有言実行。思わず、いよ、男前!と掛け声をかけたくなります。
有言不実行のムン閣下とはえらい違いです。
ヨジョンは、肩書は党第1副部長のままですが、いまやすべての対外的声明は彼女の名で出されていて、「正恩代行」といった格です。
正式に正恩の後継者となるかどうかは、現時点では不明です。
だって、肝心の正恩が生きているか、死んでしまったのか、はたまた重症なのかわからないからです。
このことはテーマからはずれるのでここまでとしますが、いずれにせよ、正恩ひとりではどうにもならない権力構造の揺らぎが見え始めたことは確かです。
ヨジョンしか「白頭山の革命の血脈」は残っていませんから、正恩は元気だということにしてこの女性が当面は仕切ることになるのでしょう。
ヨジョンの物腰が柔らかく洗練されているので、韓国は妙に期待していたふしがあったようです。
「(韓国統一大臣)趙氏が語ったところによると、金与正氏ら北朝鮮の高位級代表団が平昌冬季五輪の開幕に合わせて訪韓した際、趙氏は同代表団と「睡眠時、朝食時間を除き、ほぼ24時間一緒にいた」という。そして、そこで接した金与正氏について「こちらをとても楽な気持ちにさせてくれた」とし、「非常に重要な時期に重要な責務を負って(韓国に)来て、用心深くなったりつらかったりしたはずなのに、そんなそぶりは見せず常に笑顔で接していた」と述べている」
(高英起3月6日 デイリーNK)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20200306-00166258/
コロリと見かけでダマされるのはいかにも外見が命の韓国人らしいですが、この甘い幻想はすぐに破られることになります。
度重なる「飛翔体」の発射に対して、韓国がおどおどと抗議すると返ってきたヨジョン様の鞭打つようなお言葉がこれ。
「青瓦台を、「非論理的で低能な思考」「行動と態度が三歳の子ども」「怖気づいた犬ほど騒々しく吠える」などと激しく罵倒した」(高前掲)
そういえば近頃はムン閣下のことを「人間のクズ」なんて呼んでいましたっけね。
ヨジョンは性格的にも強いらしく、兄貴が妹に怒られて「そんなこと急に言うなよ」とたじたじだったシーンも目撃されています。微笑ましいですね。
それはさておき、今回ヨジョンが、お怒りなのは、ムン閣下がいつものとおり約束をまったく履行しなかったからです。
北が韓国に「約束を守れ」と言うとすれば、ひとつしかありません。
それは2018年4月27日に署名した板門店宣言です。
正恩がムン閣下を腹でガブっている写真も残されていて、たいそうこの時は仲がよかったようです。
宣言を抜粋しておきます。
■板門店宣言抜粋
南と北は、地上と海上、空中をはじめとするあらゆる空間で、軍事的緊張と衝突の根源となる相手に対する一切の敵対行為を全面的に中止することにした。
差し当たって、5月1日から軍事境界線一帯で拡声器(宣伝)放送やビラ散布をはじめとするあらゆる敵対行為を中止し、その手段を撤廃し、今後非武装地帯を実質的な平和地帯としていくことにした。
後に南北鉄道も作るなんてこともムン閣下は言っていましたが、例によってなにひとつ手をつけていません。
そりゃそうだ、そもそもこんな共同宣言自体が国連制裁決議違反なんですから。
それを承知でこんな宣言に署名するのは、いつものムン閣下の健忘症、あるいは出たとこ勝負で言い散らすという癖の発露というだけのことです。
ムン政権のみならず、歴代の韓国の政権は日韓関係に於いて、約束はその場かぎり、政権が変わるたびに連続性を維持する努力もなく、すぐにチャブ台返ししてきました。
特にムン政権となってからは、韓国の大衆受けする場当たり的政策に終始してきましたが、その毒が回って日韓関係は氷河期の真っ最中です。
韓国にとっては対日関係なんぞぶっ壊れようとどうしようとかまわないと下目に見ているからいいのでしょうが、同胞の北からも同じような眼で見られ始めたのでハレホレというところです。
国際社会から見ればどっちもどっちのライヤーですが、ムン閣下は国家間合意は破るためにあるていどに認識していますから、結局、合同軍事演習はやるわ、南北鉄道はレール一本敷かないわ、脱北団体のビラは飛ばすわ、といった具合でした。
特にヨジョンがカッとなったのは、このビラの中身が風俗週刊誌みたいだったからです。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200615/for200615...
「そして最近、脱北者団体・自由北韓運動連合が北に向けて飛ばしたビラには、北朝鮮の一般国民が決して知ることのできない金一族の「秘密」が書かれている。ビラは、金正恩党委員長には異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏がおり、同氏は「浮気者の金正日」が既婚者であるソン・ヘリム氏と不倫関係となって生まれたと説明。
金正恩氏の母で日本生まれの高ヨンヒと金正日氏も正式な夫婦ではなく「不倫関係」だったとしている。 そして、金正男氏が2017年2月、弟である金正恩氏が放った暗殺団により、マレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害されたことを暴露。その動機は、日本出身の母を持つ金正恩氏に対し、長男である金正男氏こそが本物の「白頭の血統」だったことにあるとしながら、「稀代の殺人鬼」である金正恩氏を「全民族の名にかけて必ずや処断する」と宣言している」 (デイリーNK6月15日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200615/for2006150003-n2.html
ビラはとうぜん徹底的に回収しまくったことでしょうが、全体主義社会はうわさ社会。ビラの中身は、口コミで驚く速度で下々の間を駆けめぐったはずです。
さぞかしこれを読んだヨジョンは怒り狂ったことでありましょう。
実母が日本生まれだから「富士山血統」だとか、父親の愛人にすぎなかったとか、実兄や叔父を殺しただろうとか、全部ホントだから腹が立つ。
あの顔で怒るとコワイだろうな(笑)。
しかし、ひととおり怒った後に、ヨジョンはこう思ったのでしょうね。
これは使える。板門店宣言に対する重大な違反行為ではないか、ってね。
今彼女は、事実上の兄の「引退」に際して、次にその座にすわるのは自分以外にいないと覚悟しています。
父親からお前が男だったらってなんど言われたことか。
ならば、ヨジョンは権力を完全に掌握した証拠を、党と大衆に見せつけねばなりません。
北において王朝交代に際して行われる通過儀礼はなんらかの軍事行動でした。
2010年3月には、韓国海軍哨戒艦「天安」を撃沈して見せ、同10月には延坪島の韓国軍基地にロケット弾を雨あられと浴びせました。
こういう南のヘナチョコ政権に対する断固とした軍事攻撃こそが、金王朝の新しき王の誕生宣言となるというのが、金家の家訓です。
このご遺訓に従って、ヨジョンはまず警告を与えました。
6月4日からヨジョンは数回に渡ってこう言っています。
「南朝鮮当局が応分の措置をとらなければ、金剛山観光廃止に続き、開城工業地区の完全撤退になるのか、北南共同連絡事務所の閉鎖になるのか、あってもなくても変わらない南北軍事合意の破棄になるのか、しっかりと覚悟はしておかなければならない」
「開城の南北共同連絡事務所が形なく崩れる悲惨な光景を見ることになるだろう」
「「問題は、人間の値打ちのないクズどもが、みだりにわれわれの最高尊厳(金委員長)に手を出し、『核問題』をめぐって無礼に振る舞ったことである」
「バカ者ども」「野獣にも劣る人間のクズ」「悪臭を放つ口の手入れもできず、吠え立てる者ども」「トンケ(駄犬)と言わざるを得ない」
(西岡省二6月4日)
いやー、参りました。
ほとばしるような悪口雑言の想像力。こき下ろし、蔑み、唾を吐きかけ、踏みつけ、さすがは親日派の墓暴きをする国だけあります。
この時点で既にヨジョンは、「南北連絡線を遮断する」、つまり電話にはでないというだけのことですが、と言っていたのに加えて南北融和の象徴的建物だった連絡事務所の爆破も予告しており、実際そのとおりにしたわけです。
口だけの韓国と違って実際に軍事力を行使したというのがキモで、たぶんもう一回北の軍隊を使ってなんらかの攻撃をしかけるはずです。
たとえば、南北境界線近辺の韓国軍基地をロケット攻撃するとか、非武装地帯に軍を入れて監視所を爆破するとか、なんでもありでしょう。
いくら好き放題やっても韓国が手出しできないことを充分に北は知り尽くしていますから。
だって、ムン閣下はこれだけ足蹴にされてもこんな寝言を言っているんですから。
「文大統領、6・15宣言20周年に「北朝鮮は対話の窓を閉じないでほしい」
くねくねと流れても最後には海に向かう川の水のように、南北は楽観的な信念を持って民族の和解と平和統一の道を一歩ずつ進まなければなりません、 北朝鮮の激しい“言葉の爆弾”攻勢の中で迎えた6・15南北共同宣言20周年記念日。 これ以上の事態悪化を防ぎ、北朝鮮を再び対話の場に呼び戻そうとする韓国政府と与党の努力が一日中続いた」(ハンギョレ6月16日)
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36956.html
なぁに寝ぼけてるんだか。河は最後に海に向かうって、自分じゃいいこと言ったとおもっているんでしょうが、内陸で止まっちゃう河なんていくらでもありますし、途中で消滅する河なんて珍しくもありません。
くねくねしているのはお前のほうだ、とヨジョンは思ったことでしょう。
まともな主権国家なら、こういうことを一方的にやられたらガツンと原則的に応じねばならないんですが、ま、言うだけ無理か。
それがやっと分かってきたのがわが国政府ですが。
北の目的はまたもや瀬戸際外交の完全復活です。
情勢を常に破滅寸前まで追い込んで、相手をビビらせて、食料や燃料、時には原発までもむしり取ることに成功してきました。
これが金家のお家芸ですが、歴代使いすぎて足元を見られ、トランプが仕掛けた直接会談の甘い罠にはまってしまいました。
米朝関係ではこの罠をはずすのは難しいし、最後の命綱として保存しておきたい色気もあるかもしれません。
しかし、韓国ならかまうことはありません。お家芸の大復活です。
最後にトランプがどう出るかですが、実際に本格的軍事攻撃をしかけた場合、報復措置としてなんらかの軍事オプションを選ぶ可能性もないわけではありません。
空母も3隻太平洋にいますし、物理的には可能ですが、なんとも言えません。
分裂しかかって見える国内を引き締めるために一発パンチをかますこともありえないわけではありませんが、それをすると米朝会談はこれでもう開かれなくなり、それではトランプの外交的実績のセールスポイントを自分で壊すことになりかねません。
いずれにしても、ヨジョンはもう一回軍事攻撃をしかけてきます。
ムン閣下がふ抜けなのは分かりきっていますが、この時、トランプがどうでるのかに注視しましょう。
それ次第では一気に朝鮮半島情勢はきな臭くなります。
こじれれば北はなにをするかわかりません。
こんなときにイージスアショアを中止すんなよ。
実際に使うかどうかは別にして、あれは日本に対する核攻撃をためらわせるに充分な抑止力なんですから。
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コメント
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朝鮮半島がこのような状況の中で拉致被害者の救出オプションは見いだせるのでしょうか。
投稿: hum | 2020年6月17日 (水) 08時22分
逆に、この時期にわざわざイージス・アショアの停止を発表したのは、何かしら北へのメッセージだったのではないかと勘ぐっています。
というか、なんの裏も無いのでは、日本政府は間抜けすぎます…
投稿: あいうえお | 2020年6月17日 (水) 11時39分
結局、どの国に対しても国家間の約束事より国内法というか国民情緒というかその時の感情を優先させてきた結果が今の体たらくってことですかねぇ。ムン閣下はヨジョン女王様に踏まれたら喜びそうなくらに鼻の下のばしてた様にすらみえましたし。
チュドーンになんか萌えましたwww
投稿: クラッシャー | 2020年6月17日 (水) 12時13分
共に民主党は「終〇宣言を促す法案」を国会に提出するそうで、そうとうズレてますね。北の対韓政策に明らかに変更があったからこうなっているので、北朝鮮に言わせれば原因を作ったのは文政権です。
南北融和を国民に誤信させ、これを利用して自らの地位を固めている文在寅は単なる裏切り者以上に〇クイ存在となりました。今後、延〇島や天〇艦と同水準の軍〇攻〇があるとみるべきで、その場合トランプ政権はこれまでの米政権と同じく韓国側をなだめすかす事になるでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年6月17日 (水) 16時36分
代替策も言わずに中止を発表した河野大臣には、合理性はあっても政治センスはありません。
ただ、問題の核心は別にあって、事実上の戦時下同様になってさえ万全を求める首長とか、マスコミの想像力のなさが引き起こした顛末だと思います。やがて日本の何処かにミサイルが落ち、多数の犠牲者が出ないかぎり治らないのではないかと嘆息します。
沖縄二紙で「必ず出る」と確信してた記事が予想通り出ました。
辺野古を中止しない「二重基準論」です。保守系に理解がある知識人からも「河野大臣による辺野古中止もあるかも」とか言ってる人もありますが、全くそのような事はあり得ません。
辺野古を中止する事は「普天間の危険性を除去しない」と決めたときであり、日、米、沖縄県の合意という巨大な政治案件を河野大臣一人で覆すことなど出来ません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年6月17日 (水) 17時09分
20200617 相模吾です。与正氏は考えや行動が不明なため微妙なバランスで安定している北―米韓の関係を一気に壊す可能性すら感じます。 拉致被害者の返還交渉の相手としてはどうなのだろう。冷酷そうな見た目通りか、母性を期待できる女性なのか。そろそろ日本も半島情勢を分析して強い対応ー拉致被害者返還。日本に手を出さないーを打ち出す時ではないでしょうか。よくも悪くも弱小北朝鮮を一身に背負う女性をみていると日本の政治家の弱さが情けない。
投稿: | 2020年6月17日 (水) 21時23分
新型コロナで疲弊した経済と混乱した国内のうっ憤を外に向けるためだと思います。すなわち韓国に対し金よこせだと思います。
衣食足りて礼節を知る。貧すれば鈍する。頼みの綱の中国との交易も新型コロナで閉鎖。そんな国内事情もあるのでしょう。飢えたネズミの戦いですから必死です。軍事境界線に軍隊を終結させたようです。
世界には立派な女性指導者もいますが、得てして歴史上女性が権力を握った女性の評判は良くないですね。
投稿: karakuchi | 2020年6月18日 (木) 01時24分