米国第二波到来と「自治区」騒ぎ
米国が第2波の感染拡大を迎えています。
「アメリカ 経済活動を早期再開した州中心にコロナ感染者急増
アメリカでは、経済活動を早い時期から再開した南部や西部の州を中心に新型コロナウイルスの感染者が急増していて、一部では人工呼吸器が足りなくなるおそれが指摘されるなど、再び感染拡大が深刻化する懸念が強まっています。
このうち、南部テキサス州では17日に報告された新たな感染者数が3129人と、1日当たりとしてはこれまでで最も多くなっています。
また、西部アリゾナ州ではおよそ1800人と、先月の同じ時期と比べおよそ4倍の水準にまで増え、これにともなって、医療機関の集中治療室の利用率が83%にまで上昇し、人工呼吸器などが不足するおそれが出ています。
さらに南部アラバマ州では、地元のメディアが一部の地域で集中治療室の利用率が96%に達したと報じています。
アメリカでは、先月以降、すべての州で経済活動が再開されていますが、人の移動が活発になったことが感染者が急増している理由の一つとされています」(NHK6月19日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200619/k10012476181000.html
米国は既に症例数は約225万5000件、 死者12万で、世界最大の感染拡大の発信源となっています。
この数字は米国が経験した戦後最大の米国人の死亡事件で、ベトナム戦争や朝鮮戦争をはるかに凌いでいます。
つい先日、経済上の理由で都市封鎖などの対抗措置を緩和したとたんテキサス、フロリダ、アリゾナ各州をはじめとする20州以上で新規症例数が記録的水準で増加しました。
特に激烈なのはテキサス州で、6月17日に過去最高の3129人、アリゾナ州でも先月の4倍の1800人の新規感染者数が報告されています。
ICU利用率をみると、アリゾナ州で83%、アラバマ州でも96%というまったく余裕がない状況のようです。
規制緩和で州境を開放したためか、いままでの感染拡大の中心だった北東部から中西部、南部、西部へと移動しているようです。
下図(COVIDトラッキングプロジェクト)を見ると、ニューヨークなどを中心とする北東部が3月に感染爆発をした時には、他の地域はさほどのことはありませんでしたが、ここが4月にピークアウトしたとたん中西部が徐々に増加し5月にピークを迎えています。
そしてまるでリレーのバトンを手渡されたように、南部と西部が1カ月ズレで6月にピークを迎えようとしています。
北東部、中西部はほぼ終わったようですが、南部、西部はまだピークアウトしていません。
https://cd-pf.s3.amazonaws.com/yelab/photo/442a5826-cdf1-4bd4-834c-1f14c1ea7833.jpg
上図の感染の山を見るとわかるように、感染がピークに達すると、ほぼ1カ月間でピークアウトしますから、まだ感染拡大が続いているとはいっても南部、西部も6月下旬から7月初旬にかけてピークアウトし、その後は急激に終息に向かうと思われます。
ただし、ここで注意せねばならないのは、今は重症患者の快方期のようなもので、慎重な取り扱いが必要です。
日本のように段階を経てゆっくりと業種別に規制緩和を積み重ねていき、危険な兆候が見られれば直ちにアラートを発して規制を再び強化していきます。
これがハンマー&ダンスと呼ばれる防疫の手法です。
日本はよく外国から異端だといわれますが、なんのまさに王道を通って終息に向かいつつあるのです。
ところで米国ではまた第2波どころか第1波すら終わったかどうかわからないこの時期に、呆れた事態が引き起こされています。
なんとシアトルで「独立」騒ぎが起きました。すいません、私、耳を疑いました。
大規模デモもこんな三密時期に非常識だと思いましたし、アンティファの火付け強盗に至っては呆れ果てましたが、こともあろうにとうとう「独立」ですぜ(苦笑)。
シアトルのデモ隊が一街区を占拠して打ち建てた「自治区」のエントランス(6月13日) Goran Tomasevic-REUTERS
「黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に暴行された事件をきっかけに広がった抗議デモの一部は11日、ワシントン州シアトル市の一角に「キャピトル・ヒル自治区」を発足させたと宣言した。
これはシアトル市のイースト・パイン・ストリートを中心とする一帯で、周辺からこの区画に入る地点には、「これよりキャピトル・ヒル自治区」といった立て看板などが置かれている 。
現地を取材した米NBCニュースによると、「ノー・コップ・コープ(無警察組合)」と名づけられた配給所で食料が無償で配られ、警察の施設には「シアトル人民の資産」という横断幕が掲げられている。その他、コロナ対策としてマスクなどが配布され、診察所なども設けられているという」(ニューズウィーク6月15日)
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2020/06/post-92.php
これを主導している連中は、ひとことでいえば極左無政府主義者らが集まった烏合の衆です。
これ自体は、私のような70年代ブラックパワー運動を知っている人間から見れば、珍しくもなんともありません。
こんなものは日常的風景で、そこかしこの黒人コミュニティは銃を持ったブラックパンサー党が支配していたものです。(また復活したとか?)
この米国社会の深層に眠っていた過激思想がフロイド事件を奇貨として復活を狙っているだけのことで、あの時代をもう一回繰り返すなら、結果も自ずと同じとなります。
70年代のブラックパンサー党
もっとも彼らは「独立」したわけではなく、国の一部をなすの「自治区」だと言っているようです。
これも特に新しい考え方ではありません。
歴史的にはフランス帝政末期の1871年のパリ・コミューンの頃から存在するコミューン思想です。
コミューンは直訳すれば共同体ていどの意味ですが、国が自分たちの手にないときに、人民は自らの力でその支配をはねのけて自分たちで物事を決める力を持つとする考え方です。
この延長にコミューン主義、つまりコミュニズムが誕生しました。
この過去の亡霊が蘇るには二つの条件が必要です。
ひとつは、自分たちの意志を表現する場が閉ざされている非民主的な政治環境。
ふたつめは、国民の生命を危機にさらす大義なき対外戦争。
この二つの条件がなければ、仮にいったんは蘇ったとしても短命に終わることでしょう。
結論を言えば、現在このようなコミューン思想が蘇るチャンスは皆無です。
なぜなら米国は、かつてのフランス帝政と違って、自分たちの意志を選挙を通じて実現することが可能だからです。
なんせ大統領なんか、実に2年間にも及ぶ長期の選挙戦を戦った後に選ばれるのです。
トランプがイヤなら、間近の大統領選で別な者を選べばよいだけのことです。
選択は自由です。大統領選には社会主義者からリベラリスト、そしてトランプまで多彩な候補が並びます
この選択の幅があること、そしてそれを自由に誰にも強制されずに投票できること、これが民主主義の基本なのです。
この「自治区」の連中も、国民の一人である以上同じ土俵に乗っているはずです。
ブラックマターでも、警察解体でも好きに主張するばよい。
ただし国民に自らの主張を説得してからにしてください。
ところがこの暴力で作られた「自治区」は、自分と意見が異なる人への説得をあらかじめ放棄しています。
民主主義とは、うんざりするほどの手間暇をかけて他人と意見をすり合わせるプロセスのことです。
それがいかに不毛に見えようと、このプロセスが欠落した民主主義はありえません。
自分好みの「自治区」を都市の一角に勝手に非合法手段で作って警察と行政といった公権力を追い出す、そのような彼らの方法自体が民主主義とは根本的に相いれません。
つまり彼らが今していることは民主主義とは無関係な「革命」なのです。
ところで、ふたつめの復活の条件が戦争ですが、かつてのパリコミューンも、プロシアがパリ城外に攻めてきているという事態を背景にしていました。
また、かつて70年代のヒッピー文化全盛期のコミューン思想もベトナム戦争という背景がわからないと理解できません。
しかも当時は徴兵制であって、若者がその腐敗しきった戦争にいつ駆り出されるかわからない恐怖が支配していました。
仮に今「戦争」があるとしたら、コロナとの戦争ですが、トランプが引き起こしたわけではありません。
むしろ中国がその原因を作り、世界に拡散 させました。
その中国は、ウィグルや香港で暴虐の限りを尽くし、国境の南北両端で、他国の領土を侵略しています。
もし「戦争」と戦いたいならば、どうぞ中国という全体主義国家と思う存分戦って下さい。
コロナとの「戦争」ならば、いっそうの国民の団結が必要なはずで、それを阻害する「自治区」など論外なはずです。
にもかかわらず、このようなことが頻繁に起きるのは、市長が暴動や「独立」騒ぎに行政官として的確に対応できないばかりか、むしろこれを政治的に助長しているからです。
その意味で今回のコロナ禍は、気がつけば米国リベラルの病巣も同時に暴いてしまったようです。
ブラックマター通と改名したワシントンDC市長、州兵投入を拒否したニューヨーク州知事、警察解体を主張しているミネアポリス市長、そしてこのシアトル市長は黒人女性警察所長の反対をおしきって警察署をこの「自治区」から撤収させてしまいました。
まさに彼らが言うように「ノーコップ」、無法地帯です。
黒人差別の解決が無警察・無行政ですって。黒人差別とはまったく無関係です。
罪が重いのは、それをやった者らより、それを肯定した首長に、です。
彼らは市民の安全を守るという職務を放擲したばかりか、暴徒を助けてさえています。
これらの首長は全員民主党系です。
なんのことはない、彼らは自分たちが「自治区」と地下茎でつながっていますと白状したようなものです。
まぁ考えてみれば、彼らアメリカのリベラルが黒人差別をなくすと言ってとってきたポリティカルコレクトやアファーマティブ・アクションが生み出した鬼っ子が、今のアンティファや「自治区」ですから、当然といえば当然かもしれません。
トランプはこの「自治区」がミニ「革命」である以上、断固とした態度で対応することでしょう。
民主党系の州知事・市長の頭越しに反乱法を適用し、州兵と連邦軍を投入すると思われます。
それも長引けば長引くほどやっかいになりますから、そう遠くない時期に決断するはずです。
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コメント
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アメリカの黒人差別の問題は、歴史的経緯含め複雑な背景があるでしょうが、あくまで西欧文明圏内部の問題です。アメリカには黒人だけでなく、有色人種全般への差別があります。下名も46年前の滞米時に差別的な振る舞いを受けており実感しております。それに比して、中共がチベット・ウイグルで行い、そして今後香港で行わんとしていることは、文明社会の原則そのものを破壊するものです。我々文明人にとって、どちらが深刻か、少し冷静になれば判るはずです。そして、アメリカの暴動化を裏で誰が焚きつけているかも。
日本はWW1終息後の国際会議で、史上初めて人種差別撤廃の国際規則・条項を示すべきとの提案を行いました。そして、近代で最大の「革命」は、日本が西欧型近代化を成し遂げて帝国主義化し、その争いの中で敗れはしたものの、結果として白人諸国の植民地支配を打破し、有色人種の独立の遠因を作ったことです。そのことをしっかりと認識すべきです。
投稿: ぼびー | 2020年6月20日 (土) 07時42分
シアトルで起こっている事態は一部の急進的な民主党支持者を除けば、普通の米国民に嫌悪感を抱かせる結果になるしかありません。
思想的な共感を得られるわけでもなく、次第に自治区内部で行われている「略奪・強姦・窃盗・さまざまな暴力行為」(シアトル市警)が明るみに出る事になるんじゃないでしょうか。
アンティファと共闘するBLMも「人種間平等」を目指しているのではなく、「白人に対する優越主義」がその本質であるのが明らかです。
ゆえに人種対立を激化させる方向に運動の舵を切っている。
トランプは大勝した二期目のニクソンのように「法と秩序」を訴える事になり、それは大多数の支持を受ける事になるでしょう。
すでにライトハイザーにより全面否定されているボルトン本によるショックもなく、心配はむしろコロナ禍がなかなか終息しない点だろうと思います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年6月20日 (土) 08時13分
テキサスは今後の米国の発展の鍵を握る州です。ここのダメージを感染治安併せてどこまで止められるか。期待しつつ見守っています。
黒人至上主義自治区については、土を掘り返して市民農園を楽しんだりもしているようですね。散々農薬を撒いていた芝生を剥がしてバジルのポッド植えてましたが、育つ頃には鎮圧されているでしょうか。
投稿: ふゆみ | 2020年6月20日 (土) 16時47分
イエール大学は改名しないの?
と言う意見には思わず苦笑しました。
投稿: 素人 | 2020年6月20日 (土) 21時50分
そういう話には全く門外漢ですが、浅間山荘事件みたいなのでしょうか。
そうであれば、彼らを包囲し、(二重)スパイで疑心暗鬼にさせ、内紛が起きてその正体がバレたところで制圧。
コロナがNYから流れてくるのはある程度仕方ないとして、時間をかけて対処するのが良いと思います。
投稿: プー | 2020年6月20日 (土) 21時56分
行動の型があるんですかねぇ?
八百万の神々や天照大御神の御子孫からアマビエまで日本は
多々・・神教の国なので、疫病についても疫病神が起こし素戔
嗚尊など疫病退散の神々がそれを退治するという、退治の物語
がアレヤコレヤと生まれました。そんな国では多方面において、
色々な新コロナウイルスの対処法が取られて当然ですし、日本
国民もそれが当然だと意に介しませんわ(ホント贅沢です)。
米国をはじめ欧米の国を見てると、日本の感覚ではついていけ
ませんわ。一神教の国では全知全能の唯一の創造主が世界を
治めているので、新コロナウイルスでさえ神の意志と捉えてしま
うのか?「それが神の御意志とあらば、新コロナの死にも何か
意味があるのだ、死んでしまうような者には神の御加護が無か
ったのだ」「生き残りし者よ、産めよ増やせよ地に満ちよの教え
のとおり、さあ、生きるのだ、経済をまわせ!」という思考の回路
が出来ているのかしらん?米国の12万の死者なんて、日本じゃ、
アベ政権など100個も飛んでしまいますぜ。スウェーデンなんて
そもそも、早く抗体を作るんだからうつしちゃえー、だし。
儒教国は、まあいつものアレで恰好ばっかつけて、本質的には
一般人民のことなどドーでもよくて、ピラミッド型体制の維持だけ
に御熱心なのは想定の範囲内だし。
米国のというより、およそリベラルという人達は、原始時代宗教
の祈禱師どものような感じですわ。なんやら耳あたり良く、甘く、
正しいような、スグにでも実現するような、夢のある、そんな呪文
を唱え続けるんだけど、最後に何も改善せずウソがバレてしまっ
て、責任のなすりつけ合いをして殴り合うという。
投稿: アホンダラ1号 | 2020年6月20日 (土) 23時45分
今回の自治区宣言もそうですが、暴動、略奪も、アメリカ社会が何十年もかけてやってきた、黒人と白人の融和を一気にリセットしました。
それにオール民主党が加担している。
逆に言うと、暴動や略奪行為をトランプのせいにしないと選挙には勝てない。そんなところですかね。不満や矛盾があろうと、犯罪行為を政治家が支持していいはずがありません。
なんだかんだ言ってもアメリカの人口の7割は白人です。白人からすれば、所詮黒人とはその程度の人間だと思うでしょう。
差別解消が、差別拡大を生んだのは間違いありません。
映画「いちご白書」で大学に抗議する学生に、学長が君たちの主張はイチゴが好きか嫌いかぐらいの意味しかないと言います。
その通りだと思います。
投稿: karakuchi | 2020年6月21日 (日) 09時50分
米西部ワシントン州シアトル(Seattle)で20日、男性1人が射殺され、別の1人が重傷を負った。現場はデモ隊によって設置され、警察が立ち入れない「自治区」内にあり、警官らは被害者らの元へ駆けつけることを妨げられたという。当局が明らかにした。
この際、徹底的に殺し合いをやればいい。警察も介入できない。オール民主党も容認。コロナも蔓延。
壮大な社会実験だ。
投稿: karakuchi | 2020年6月21日 (日) 18時41分