結局、日本の旗幟は選挙で決着するしかないのか
7月13日のマイク・ポンペオ国務長官の演説を機に、米中は新たな対立のステージに突入しました。
昨日の記事でもかきましたが、米国は同盟国に対して旗幟を鮮明にするように要請しています。
既に米国は英国を力でねじ伏せるようにして、既決事項であった5Gのファーウェイ導入を止めさせました。
「この5G技術でファーウェイは世界をリードしており、この規格に従う携帯基地局など通信機器のコスト・パフォーマンスも良いことから、英国をはじめ欧州諸国はすでに自国で構築中の5Gネットワークに同社製の通信機材を採用している。
これに対し米国政府は「ファーウェイの通信機器にはバックドア(裏口)と喩えられるセキュリティ・ホールが仕掛けられており、これを介して西側同盟諸国の機密情報が中国政府に筒抜けになる」などとして、ファーウェイ製品の排除を同盟諸国に求めてきた」
(小林雅一『英国が5Gで「ファーウェイ排除」に180度方向転換した理由』7月16日)
ヨーロッパ諸国が中国との関係が深いのはよく知られていますが、この英国もごたぶんに漏れず大変に深い関係をもっていました。
今の英国は製造業は衰退し、シティの金融業で食っている国となっていますが、この通信分野においてもファーウェイとの関係は抜き差しならないまで深いものでした。
ファーウェイがヨーロッパで最初の拠点を置いたのは、2005年の英国が初めてでした。
以後英国はファーウェイの海外最大の市場に成長し、今や研究機関を1300億円もの巨額を投じて建設しています。
また、社会的にも各種の研究資金を研究所や大学に提供するなど、彼らなりに精一杯西欧化する努力は払ったようです。
朝日
一方、英国にとってもシティを通じてチャイナマネーを仕切るうまみがあり、宝飾品、ウィスキー、あるいは医療機器、発電設備などの工業製品も気前翌買ってくれるのが、この中国でした。
ここだけ見るなら、中英関係はウィン-ウィンだったわけです。
米国は「バックドア」がついていて中国政府に情報がダタ漏れとなりますよ、と言う理由で各国にファーウェイ排除を呼びかけましたが゛、言葉だけではなく制裁を化すことで、事実上ファーウェイを使えなくする措置もとっていました。
それが今年5月の米国によるファーウェイ制裁措置(発動されるのはは9月)ですが、その内容はファーウェイへの核心技術移転阻止でした。
ロイター
「この制裁では、ファーウェイから受託生産をしている台湾のTSMC社などメーカーに対し、米国発祥の技術で製造した半導体部品などをファーウェイに販売することを事実上禁止している。
特に半導体の設計技術は米国が中枢特許を所有しているため、この制裁措置が発動された暁には、ファーウェイは5Gに関する中核部品の供給を受けられないなど致命的な打撃を被ると見られている」(小林前掲)
米国が中枢特許を握っている半導体技術をファーウェイに提供させないことで、生産技術の背骨をへし折ってしまうというやり方です。
するとどうなるのかといえば、ファーウェイはいくらヨーロッパ各国から御用達があっても、5Gネットワークに重大な欠陥ができてしまうことになります。
これで英国がグラついたところに、習近平は自分で墓穴を掘ってしまいました。
それが香港国安法の押しつけです。
このことはいやがおうでも、同時進行していた中国の新型コロナ対策の異様な全体主義的手法の数々、失態を事前で糊塗するかのようなマスク外交(しかも粗悪品で返品)が重なってきます。
香港国安法は、新型コロナ以前から、「欧米の議会関係者らは所詮、価値観の違う陣営(中国)につくことはできない、と述べていた」(小林前掲)という元々のベースのうえに、改めて民主主義の理念問題を喚起させてしまったわけです。
完全な習の状況の読み間違えです。
つまり英国は中国市場からの報復というリスクを承知でファーウェイ排除・中国包囲網に参加を決意したのです。
では翻ってわが国の状況はどうでしょうか。
本来、この「日本は米中どちらにくつくのか」という設問自体がナンセンスなはずです。
理由はいうまでもありませんが、選ぶも選ばないも日本は日米同盟という軍事同盟を結んでいて、それを外交政策の機軸に置いているからです。
尖閣諸島に対して中国は100回を超えて侵入を継続しており、ここで彼らがしていることはまぎれもなく実効支配行為です。
べつの言い方をすれば、彼らは既に尖閣諸島海域を押えており、残るは尖閣諸島の島だけだと考えているのです。
それに対して遺憾としか言えない、尖閣諸島に船溜まりひとつ作れない、灯台ひとつ建てられない。
こんなていたらくでは、仮に沖縄に米軍というプレゼンスがなければ、中国は今頃尖閣はおろか八重山・宮古の線まで侵し、日本は沖縄本島防衛を真剣に構築していなければならなかったことでしょう。
ニューズウィーク
こんな時期にどちらを選ぶもクソもないわけで、それをあえて問わねばならない情けない空気が現政権には漂っています。
極め付きは習の国賓訪日でした。
私は安倍氏の対韓国方針を支持しましたが、それは国益の原則を誤っていなかったからです。
ところが、こと中国となると、自民党はまるで親中派の巣窟と化したかのような空気が漂っています。
あえて名指ししますが、親中派の震源は、菅・二階・今井・公明ラインにあります。
このような官房長官-幹事長-首相補佐官、公明という包囲網を敷かれてしまっては、首相の力などたかがしれています。
しかも4期めはないと自ら明言してしまった以上、与党内部ではその次だけが関心事なのです。
対中政策にかぎらず、この間の首相の指導力の衰退の大きな原因は、このような者たちに政権を仕切られてしまったからです。
産経
安倍氏が個人としていかなる中国に対する思惑があるのかは、今、問いません。
たぶん言葉にすれば親中派のお歴々とはそうとうに違った塩辛いものだと推察しますが、しかし政権中枢にここまで多くの親中派を抱えこむ陣容を作った時点で安倍氏は敗北していました。
このまま日本政府が韓国じゃあるまいに「戦略的あいまい路線」を続けるならば、かならず米国は英国に対して使った手段を行使するでしょう。
たとえば日本企業が中国企業に高度技術製品を販売したことをもって、米国市場へのアクセスを禁止するセカンダリーボイコットなどです。
私たち国民にできることは限られています。選挙で親中派を落とし、二階の顔を青ざめさせることです。
総選挙があるやに聞いていますが、その政策の争点の一番目に「米中いずれかを選ぶのか」を置くことです。
そのことによって自民党親中派や公明党候補が多数落選して過半数割れを引き起こしたとしても、親中派議員には退場願いましょう。
あるいは、安倍氏と麻生氏がまともな対中意識をおもいだすか、いずれかです。
さもないと日本は米国から英国のように締め上げられることになりますよ。
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・「媚中派」は何故、あれだけ人権を踏みにじる中国に必死で尻尾を振りたがるのだろうか。
金をもらっている?女をあてがわれている?引退後の中国での何かしらの権力を保証されている?…そんなもので、あの蛮行に目をつぶれる?分からない。
・あの「素人目にも明らかに首相の邪魔ばかりしている、旧態依然の爺さん」が、なぜこれだけ選挙で当選できる?
正直言って、二階にクリーンなイメージは無いでしょう。テレビニュースでも、中国中国としか言ってない。それなのに、何故毎回当選するのか。頭パーの小泉進次郎が当選するのは分かる。顔が良くて、声も良いから。でもあの醜い爺さんは、一体誰が票を入れているのか…
投稿: ポポス | 2020年7月29日 (水) 08時35分
ポポス様
和歌山県第3区の候補者を見ていると、二階氏が当選するのも仕方がないかな、という感じです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E6%AD%8C%E5%B1%B1%E7%9C%8C%E7%AC%AC3%E5%8C%BA
もう棄権しか選択肢がないです。しっかりした保守系野党が望まれます。
投稿: TK | 2020年7月29日 (水) 09時38分
全くポポス様と同様に思います。
ロッキード事件のようにアメリカ側がまた二階氏や公明党にかかわる致命的政治スキャンダルを出してこないかしらん。
この国は外圧があってやっと重い腰を上げる国なのです。和歌山選挙区は、二階氏と公明党しか当選できないように仕組まれているのです。
70年代に、なぜ新潟県民は田中角栄氏に延々と投票を続けているのかと、若かった私は単純な疑問を持っただけで時代を通過してしまいました。
しかし今は違います。
真実は公的な組織からは出てきません。出所がどこであれ一人一人が事実が事実かどうか見極めて行きましょう。
いつもブログ主様の丁寧なご説明と分析に感謝しております。
投稿: 我慢しない日本国民 | 2020年7月29日 (水) 10時45分
和歌山第3区は東京12区みたいに選びようが無い選挙区ってやつで
こういう選挙する意味を消失した所ってどれだけあるんでしょうか
それでももし自分が和歌山3区に居たら、先日のコメントのように2択のままなら共産党候補に入れ…、いや住民票を移すかも
総裁選はまだ先なんで安倍氏にはきちっと演説のひとつでもブチ上げてほしいものです
というか報道静かすぎません?米中関係相当動いてるはずなんですが
PCR陽性者の数だけ報告するスピーカーを買った覚えは無いんだけど
投稿: しゃちく | 2020年7月29日 (水) 12時01分
東京新聞27日社説。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/45056
>中国は、尖閣に対して少しづつ圧力を強めて日本の支配を崩す「サラミスライス戦術」を実行しているともされる
ほらね、よーくわかっていらっしゃる。
だがこの社説が示す結論は、
「尖閣に日本の行政官や民間人が上陸して均衡を崩すのは早計過ぎる」
「石垣市の字名に尖閣を加える決定にも中国は反発、慎重を期すべきだった」
「今こそ対話を重ね」、だとさ、今日この状況で。
コレ、何周遅れても自分の尻が焦げるまでは気付かないドリーマー集団、頭蓋骨の内側にある器官を全く使えていない集団、中共の代理人集団、そのひとつ乃至全部で、どれであっても致命的です。
オールドメディアなら今やどうでもいいけれど、それら致命的なプロパティを持つ政治家・政権の集団では笑うに笑えないです。
いろんな考えの人が平素いる方が良いのは間違いないことで、例えば石破さんの言う事を真面目に聞く人はいないように、足を引っ張る面が多々ある人には力を与え過ぎなければいいわけですが、環境・状況において我々社会に及ぶ致命性の濃度を自分で嗅ぎ分けながら、濃い人は削っておくこともやると、我々のリスク減らしになりますね。
(議員を含んで)公務員は極力減らして税金の無駄遣いを無くせ、という人やメディアも多くて、無能に払う税金なら惜しいのはもっともですが、人数を減らすと1人あたりの権限が増えて、買収された時、トラップに引っ掛かった時のリスクも増える面はあります。
一方、徹頭徹尾の滅私奉公とクリーンさだけを我々が求め過ぎて、ちょっとした事柄で扇動されていちいち叩くばかりだと、難しい仕事を引き受けたいと思う人は減ってしまう。
質や筋によるがインセンティヴはあってもいい、皆無では引き合わない仕事内容もあるでしょう。
「清」の代償の「濁」はどんなものか、政治や公務をやる人々も我々の側も、日々勉強で考えながら頭を更新していく方が、しないよりはやっぱりリスク減らしになりますね。
絶対で無限の安心なんて無いですからねぇ。
投稿: 宜野湾より | 2020年7月29日 (水) 13時01分
残念な話なのですが、身内(子)の仲の良い友人が濃厚接触者となり、その濃厚接触者は味覚障害などの自覚症状があったけど、まさかコロナではないだろうと、今週の日曜日にうちの子含めて3人で長距離ドライブに行ってるのです。
明日、その濃厚接触者は検査なのですが、我々はその濃厚接触者が陽性にならないと検査が出来ないということです。
まったく困ったことになりました。
コロナ感染は何だか遠くの話だと思っていましたが、思い切り近くまで来ていました。
仕事柄、あまり人に会うことはないし、外食もしないし、人混みに行くこともないのですが、しばらくは更に気をつけて生活をいたします。
投稿: TK | 2020年7月29日 (水) 13時50分
いよいよアメリカ様の圧力来ましたかね。二階氏が田中角栄氏みたいになったりして。自分から地階に下りた方がいいんじゃ。
「米有力研究所が安倍首相側近を「対中融和派」と名指し 古森義久」
https://www.sankei.com/world/news/200727/wor2007270014-n1.html
投稿: クラッシャー | 2020年7月29日 (水) 14時25分
自民復帰後は後ろから味方を銃撃するという独自路線でマスコミに大人気の石破氏ですが、満を持して二階氏にすり寄り総裁選に備えたらその直後にその後ろ盾からボヤが発生するという貧乏神を思わせる見事な立ち回りですね。
習氏の国賓来日容認に関しての後戻りができないコメントをした上で今の状況をどう分析しているのか本音のお話を聞いてみたいところですが
きっと「重要な案件ですのでじっくり話し合いましょう」
(いつもこの話し合いの中に自分を含めていない所がポイント)
とはぐらかすだけでしょうね。
投稿: しゅりんちゅ | 2020年7月29日 (水) 16時52分
いつも楽しみに拝読しております。
総理秘書官の今井尚哉さんと言えば、元通産官僚で最近の韓国への対応をアドバイスしていた方ではなかったでしょうか。こんな方までがブログ主様に加えCSISまで名指しする親中派だったとは、中国のサブリミナルな浸透力は恐ろしいものがありますね。
デイリー新潮の連載で、鈴置高史さんが現在の韓国のことを紀元前4世紀にあった都市国家ミロスに例えていました。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/07281515/?all=1
ミロスは、アテネとカルタゴという地中海を挟んだ強力な軍事力を持つ都市国家の対立の中で、戦力がないのに中立を保とうとして滅亡しました。このまま米中対立の中で旗幟を鮮明にしないと、韓国ではなく日本も同じ運命になってしまうと思います。今の事態というのは、勝ち馬に乗るとか戦後処理でうまく立ち回ろうとかいったレベルの話ではなく、日本がこのままでいられるか、中国の内モンゴルや新疆ウイグルのような自治区になるかの選択だと思いますので、結論は考える余地がないように思います。
今井さんは選挙で選ばれた人ではありませんので、安倍首相が自ら切れなければブログ主様がおっしゃるように選挙するしかないのでしょう。その結果なぜか安倍首相4選となってしまい、今井さんがボルトンさんみたいな本を出版したら多分購入します。
投稿: 都市和尚 | 2020年7月29日 (水) 23時23分