米国の中国制裁は本気だ
米国が息もつかせず中国への制裁を連打していますので、時系列で整理しておきます。
2019年度米国防権限法(NDAA2019) 、 香港人権法以外すべて2020年です。
トランプ政権が渾身の力で中国と対峙しているのがわかります。
米国市場に依存していながら安価なファーウェイを使ってきた日本企業もこれで眼が醒めないと、中国と共に排除されることになります。
■2010年以前の米国の中国制裁
①2019年度米国防権限法(NDAA2019)
中国のIT高度化戦略の「中国製造2025」を潰す目的で作られ、20年8月13日から実施予定。
「2019年度米国防権限法(NDAA2019) ファーウェイi、ZTE等の米政府機関との取引からの排除
米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。
米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。
2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律 (National Defense Authorization Bill ) が成立した。
2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。
背景には、米国による「中国製造2025」潰しもある。(略)第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)
5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)
既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている機器の利用を一切やめ、その旨を米政府に報告・誓約しなければならなくなる。
中国国内に工場を持ち製品を作っている企業の多くは、中国製の通信機器を使わざるをえない状況にあるケースが多いという。これらの企業にとっては、「米政府と取引を続けるか、中国での生産活動を続けるか」という事実上の踏み絵を突き付けている。
日本でも多くの企業がHuaweiなどの製品を使っている」
(化学業界の話題2018年12月111日)
http://blog.knak.jp/2018/12/2019ndaa2019.html
②2019年11月27日
香港人権法
「トランプ米大統領は27日、香港での人権尊重や民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法」に署名し、同法は成立した。ホワイトハウスが発表した。香港に高度な自治を認める「一国二制度」が機能しているかどうか米政府に毎年の検証を義務付けるのが柱。成立を受け、中国政府は28日に発表した声明で「重大な内政干渉だ」と反発。報復措置を発動する考えを示した」(日経2019年11月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52701890Y9A121C1000000/
■2020年以降の中国制裁(関税引き上げをのぞく)
①7月1日
米国国務次官によるウイグル問題ビジネスレター
https://bit.ly/2VZmyow
「ポンペオ米国務長官は1日、中国政府による新疆ウイグル自治区の少数民族への弾圧問題で、各国の企業に対し、強制労働を利用した生産や製品に関与しないよう警告を発した。米政権は声明で、取引自体が「人権侵害に加担する行為」に当たると指摘し、世界的なサプライチェーン(部品供給網)の「脱中国」化を促した。
国務、財務、商務、国土安全保障の各省は共同声明を発表し、強制労働が確認された17の産業分野として農業、食品、電子部品、繊維、アパレルなどを挙げた。ポンペオ氏は会見で「企業の経営陣は風評被害、経済損失、法的リスクを認識すべきだ」と各国に注意喚起した」
(時事7月2日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020070200358&g=int
※ウィグルのエスニッククレンジングに加担している米国企業に対して国務省は「法的リスク」を示唆した。ウィグルの強制収容所で作られる農業、電子部品、繊維製品などを米国企業が扱うと、説明を求められ政府納入の停止などの制裁に合う可能性が出た。
②7月10日
中国5社からの米政府機関調達規制開始
「トランプ米政権は今週、米政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]など中国5社の製品を使った企業のモノやサービスを発注することを禁止する規制を完成させる予定だ。米当局者が明らかにした。
対象企業はファーウェイのほか、同業の中興通訊(ZTE)<000063.SZ>、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>、同業の浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)<002236.SZ>、無線通信機器の海能達通信(ハイテラ)<002583.SZ>の5社。日々の業務で5社の機器やサービスを使っている企業は、免除を認められない限り政府と取り引きすることができなくなる」(ロイター7月10日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/474be559f02474d569cd215942eb7b196b643bfd
※ファーウェイなどの中国IT企業はすべて米政府調達から排除される。米政府に納入している民間企業も追随を迫られる。なお英国はすでに決まっていた5Gからファーウェイを排除することに決めた。
③7月14日
米国公開会計監督委員会は中国企業の会計の不透明性を指摘し、上場廃止の可能性示唆
15日、中国との会計に関する覚書破棄を決定
「中国企業の会計監査状況、今後も把握は困難=米当局
「米証券取引委員会(SEC)傘下で監査法人の監督を担う米公開会社会計監督委員会(PCAOB)は9日、中国企業の会計監査が適切に行われているかを把握することは今後も難しいとの見方を示した。米政権や議会からは、米国の投資家が中国企業に投資する際のリスクを抑えるための対策を講じるべきだとの声が強まっている。
PCAOBのウィリアム・ドゥンケ会長は、他の米規制当局者とのオンライン会議で、米国に上場する中国企業の監査の質を確保するため、アクセスが限られる中でこれまで4大会計事務所と取り組んできたと説明。「我々は信頼し、そして検証する必要があるが、中国では検証することが不可能で、今後もそれが変わる可能性は低い」と述べた。」(ロイター7月10日)
https://jp.reuters.com/article/usa-sec-china-idJPKBN24B0AR?il=0「クドロー氏、中国投資「賢明ではない」と米投資家に忠告 米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は、中国への投資は「賢明ではない」と米投資家に忠告した。
クドロー氏は10日にFOXビジネス・ネットワークのインタビューで、「こうした中国企業には現在、あまりにも多くの経済的リスクがみられる。さらにその多くは国家安全保障を脅かしている」と発言。投資家は可視性を確保し、不正の可能性から保護されなくてはならないと続けた」(ブルームバーク7月13日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-12/QDCZW2T1UM0W01?srnd=cojp-v2
※米政府の公開監査機関は米民間企業に、中国企業の会計監査が不透明で恣意的だとして中国への投資を不適当とした。
④7月15日
米政権、中国の南シナ海をめぐる主張は不法
「米政権、中国の南シナ海巡る権利主張は「不法」と公式に非難
米国は問題の海域で「航行の自由」の保護を呼び掛けながらも、個別の領海争いについては立場を取ってこなかった。 海洋覇権の争いの激化は、貿易や技術、サイバーセキュリティーなどの問題や、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となった責任は中国にあるとトランプ大統領が主張していることを巡る米中対立をさらに悪化させる可能性がある」(ブルームバーク7月10日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-13/QDF7MRT0G1L801
⑤7月16日
すべての共産党員の入国拒否を示唆
「トランプ政権、全ての中国共産党員の米渡航禁止を検討=関係筋
トランプ米政権が全ての中国共産党員とその家族による米国への渡航禁止を検討していることが16日、関係筋の話で分かった。米中間の緊張が一段と高まる恐れがある。関係筋によると、この問題を検討している政府高官は大統領令の草案を準備し始めた。ただ、検討はまだ初期の段階にあり、トランプ大統領にはまだ諮られていないとしている。
検討には複数の連邦機関が関与。中国共産党員の子どもが米国の大学などに在籍することを拒否するかどうかも検討されている」(ロイター7月17日)
https://jp.reuters.com/article/usa-china-travel-idJPKCN24H2TI
※これを米政府が実施すれば、米国内の主要な中国企業、政府関係者、研究者、技術者、学生などはことごとく共産党員であるために国外追放処分に等しい扱いを受けるか、一回出国すると再入国ができなくなる。
⑥7月14日
香港への優遇撤廃の大統領令と香港自治法成立
香港の特別な地位はく奪開始と香港の自治を阻害したものに対して、米国制裁を決定、銀行も制裁対象に
「トランプ大統領が香港の優遇措置撤廃、対中制裁法署名-中国反発
トランプ米大統領は14日、香港への優遇措置を撤廃する大統領令に署名したと発表した。また、香港民主派弾圧の責任を負う中国当局者に制裁を科す法律に署名したことも明らかにした。中国はこれに反発し、強力な対抗措置を講じるとともに米当局者らに制裁を科す方針を表明した。(略)
大統領の署名で成立した法律は香港国家安全維持法(国安法)制定に関与した中国当局者と取引を行う銀行に制裁を科すほか、国務省に香港の「一国二制度」を形骸化しようとする当局者に関する報告を毎年行うよう義務付ける内容。さらに、こうした当局者の米国への入国阻止や、資産を接収する権限を大統領に付与する」(ブルームバーク7月15日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-14/QDH4ZJT0G1LF01?srnd=cojp-v2
※香港の特別な地位の剥奪と、国安法に関わった中国当局の取引がある中国銀行に制裁を課す。
一年ごとに一国二制度の報告を国務省が行い、さらなる制裁を準備する。
米国の銀行は1年猶予つきで、香港の自治侵害の「主違反者」と認定する組織や個人と取引を打ち切るよう求められ、違反すれば制裁対象となる。
⑦7月15日
米政府、中国IT企業にビザ発給制限
「米、ファーウェイ含む中国IT企業にビザ発給制限の公算=国務長官
ポンペオ米国務長官は15日、米政府は華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]などの中国企業に対するビザ発給を制限する可能性があると述べた。ポンペオ長官は記者会見で、米国務省は「人権侵害に関与している政府に物質的な支援を提供しているファーウェイなどの中国IT企業について、特定の従業員に対するビザ発給を制限する可能性がある」と表明。世界中の通信機器メーカーは、ファーウェイとの取引は「人権侵害を行っている企業との取引」になるため「警告を受けたと認識する必要がある」と述べた」(ロイター7月16日)
https://jp.reuters.com/article/usa-china-huawei-idJPKCN24G2MC?il=0
※NDAA2019で指定された企業の従業員に対してもビザ制限の可能性を示唆した。
※国防権限法は来月2020年8月13日以降実施されます。
それとこの間の各種制裁が重なると、これらすべてが発動されると米国市場の中国系企業、それと金融取引をしている銀行、部品の納入企業、そして中国系企業の社員、研究者、米大学にいる中国人研究者は国外退去となる可能性があります。
いかに中国がトランプ政権に恐怖しているかわかるでしょう。
中国としては、パンダハガーだったオバマの副大統領バイデンになってもらうしか逃げる道はありませんね。
※改題しました。すいません。
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日本企業への影響も大きいようですね。
中国製部品を使って安く仕上げた電気製品やら商社やら・・・まだ不確かな情報ですけど、米国の制裁対象になる日本の会社は800社にも及ぶとか。。正に「踏み絵」ですね!
まあそういう私も数年前にただ「安かったから」で寝室に置いてる小型テレビなんかそれこそ安いコンポーネントをただ組んだだけのを店頭で見て買ったドウシシャのだったりしますど・・・。
別に不具合も無く毎日点けっぱなしにしてますけどね。
以前はバブル期に開発されてモデルそのままだったアナログのSONYブラックトリニトロン10インチに2011年からそれこそ安物の地デジコンバーター付けてました。
投稿: 山形 | 2020年7月20日 (月) 09時03分
さらに香港に対する追加措置として、ドルペッグ制が不可能になるように香港ドル=米ドルの自由兌換禁止にする検討もされているようです。
国案法施行後なので大っぴらに言えないようですが、香港民主派はこれらの米国の措置を大歓迎しているようです。この事はもの凄いことです。
香港民主派の抵抗はサイレントにこそなりますが、天安門が大学生の就職難という経済的理由から端を発した点で、天安門事件以上に真の民主主義の闘いになるでしょう。
しかし、こうなるとアメリカは止まりません。
習近平は落としどころをさぐるために楊潔チ政治局委員を派遣しましたが、事実上の無条件降伏以外に受け付けないでしょう。
最後の望みはバイデンですが、アメリカ人がバイデンを大統領にするような愚昧な選択をするとはどうしても思えません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年7月20日 (月) 10時02分
アメリカに派遣するなら李克強。
彼に対してならアメリカも手土産を持たせる。
世界中が彼を賞讚。
習近平はどうする?
どう転んでもメシウマ。
やっぱそれはないか・・・
投稿: プー | 2020年7月21日 (火) 00時01分
アメリカに派遣するなら李克強。
彼に対してならアメリカも手土産を持たせる。
世界中が彼を賞讚。
習近平はどうする?
どう転んでもメシウマ。
やっぱそれはないか・・・
投稿: プー | 2020年7月21日 (火) 00時01分