日米同盟の双務化ってなに?
minさんからコメントを頂戴しています。このかたへのコメントというわけでもなく広く考えていくことにします。
まず我那覇氏グループと依田氏との争いについて責任をとれということですが、私のような部外者が彼らの抗争について「責任」をとりようがありませんから、無茶いいなさんなというところです。
山路さんも言っていますが、支持できる部分は支持しますが、支持できねば遠くからながめているしかない、ただそれだけのことです。
言論というものの性質上それは当たり前のことで、一回支持したら地獄の底まででは、言論という行為自体が成立しません。
どうやら言いたいことは、沖縄の自立と日米同盟の双務化ということのようです。
沖縄の自立とは日本の自立のことだと私は思っているので、分けて考えないことにします。
というのは、このかたも言うような米軍基地の管理権とか一次裁判権など、ことごとく一つの地域で議論していても始まらない、日本全体の問題だからです。
抽象的に話してもしかたがないので、具体的に進めます。
さて、つい最近ボルトンが暴露本を出しました。おおむね日本には好意的に記述されていますが、唯一あれあれという部分が話題になりましたね。
「ボルトン氏は昨年7月の訪日時、在日米軍駐留経費の日本側負担について、トランプ氏が年間80億ドル(約8500億円)を求めていると日本政府高官に伝えたと記している。帰国後、トランプ氏から、全ての米軍を撤退させると脅せば、『交渉上とても有利な立場になる』と迫られたことも明らかにした」(6月24日読売)
河野防衛相は即座に、「駐留経費の交渉はまだ始まってもいないし、日本政府として、アメリカからこの件について何か要求があったことはない」と否定したようですが、たぶん本当に言ったのでしょう。あの人ならいいそうです。
アジャパーという発言で、トランプさんがそこらの米国人と同じていどの安全保障知識しかないことがバレてしまいました。
彼は中国に対する姿勢などでは直感的に図抜けたものがありますが、周りの専門家が支えてやらないと基礎知識が欠落しているひとなのです。
米国にとって日本は唯一無二の最重要同盟国です。
こういうとびっくりする人もまだ多いのですが、それは日本列島の位置が中国の海洋進出に蓋する位置に存在していること、そして朝鮮半島の直近にあること、また日本の艦船修理能力が米国本土並かそれ以上の力を備えているからです。
とくに宮古海峡は中国海軍が太平洋に進出する時に必ず通らねばならない門に位置しています。
環日本海・東アジア諸国図(通称:「逆さ地図」)』 富山県
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1510/kj00000275.html
「米軍は日本を守ってやるために駐留している」なんて、安全保障の専門家でそんなことを信じていたらもぐりです。
結果として日本を守ることにもつながってはいますが、アジア全域と太平洋の半分、インド洋全域、そしてはるかアフリカ近海までの範囲を、日本の基地で支えてもらっているから駐留しているのです。
ウィキ
日本に依拠している米軍の能力は全体の実に80%に達しますから、日本なくして米が世界の覇権国(ヘゲモニックステート)であり続けるることはできません。
日本から「撤退」する時とは、米国が二度目のモンロー主義を取る時以外ありえませんから、その時は日本だけの問題ではなく世界秩序が根底から覆ることを意味します。
ですからメディアが言うように、たかだか前線基地にすぎない韓国には負担増を言ったゾ、日本も言われると騒ぐこと自体がナンセンスなのです。
本気で「負担額を4倍にしてければ撤退」などと口にしたとしたら、トランプはバカです。
そういうコストで換算仕切れないものを日本は提供していることを、このシロート大統領は忘れています。
ついでにそれをたしなめられなかったボルトンも愚かです。
マティスならこんなことを言おうもんなら、素人は黙っていて下さい、とたしなめたことでしょう。
では本気で米国が日本から「撤退」した場合、これは自動的に日米同盟の解消ということになりますが、日本はどうしたらよいでしょうか。
選択肢はふたつしかありません。
一つは、中国と安保条約を結ぶこと。
ふたつめは、日本が安全保障で自立すること。
ひとつめの中国との同盟が論外なのは、特に説明する必要はありませんね。日本では二階とハトさん以外やりたい人はいないでしょう。
中国と紛争にならないていどに浅く友好を維持するのは大事ですが、間違っても軍事同盟など結べばどうなるかは考えないでもわかります。
問題は、ふたつめの日本が安全保障で自立ができるか否かです。
結論からいえばまったく不可能です。
米軍なき防衛力整備のためには、ある試算で20兆円以上かけて20年近い期間をそれにあてねばならないはずです。
それを見越して日本を脅してみろと言ったならば、いいでしょう、その代わり米国は太平洋の反対側に軍事強国を持つことになりますが、かまわないのでしょうか、と答えてやるべきです。
いや、かつてのドイツの首相のように、「もう一回強い日本兵をみたいのか」とタンカの一つでも切ってみたらどうですか。
では、日本は自前で自立した防衛力を構築できるのでしょうか。
「自立した国防力」には空母打撃群、核兵器、MDが必須です。
日本が独力でこれらを調達することは不可能です。
核兵器とMDまで論じると長くなるので、空母打撃群だけに絞って考えましょう。
クイーン・エリザベス級空母
https://grandfleet.info/military-trivia/lease-queen-elizabeth-class-aircraft-carrier-to-the-british-and-us-navy/
米国以外の空母打撃群としては英国海軍が2017年に就役させたクイーン・エリザベス級空母2隻がありますので参考にみてみます。
英会計検査院は、今年6月26日に空母打撃群に必要な艦載機、護衛艦、補給艦の不足や、早期警戒ヘリコプターの開発の遅れを警告する報告書(『空母打撃――展開の準備』)を公表しています。
「英海軍は、今年12月に空母打撃の初期作戦能力(IOC=任務を遂行できる最小限の能力)、2023年12月に空母打撃の完全作戦能力(FOC=調達の目的の能力)であるF-35B 2個飛行隊(24機)の運用、26年3月に空母による戦力投射の完全作戦能力を達成することを目標としている。
しかし、英政府は空母2隻の建造に64億ポンド(9000億円)を費やした後、空母打撃群に必要な艦載機、護衛艦、補給艦の調達費が不足している」
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
空母打撃群は空母だけではなく多くの支援艦艇が不随します。それを構築する力が英国海軍にはないのです。
「空母を潜水艦から守るフリゲートは、23型(13隻)の退役が2023年に始まる。後継艦には26型と31型があり、対潜水艦戦(ASW)能力の高い26型は、2027年以後8隻しか就役しない。
戦闘艦に弾薬、部品、食料などを補給する貨物弾薬補給艦は、英海軍(補助艦隊)には1隻しか残っておらず、その「フォート・ビクトリア」も2028年に退役が予定されている。会計検査院によると、後継艦の調達が遅れており、「フォート・ビクトリア」の退役に間に合わないおそれがある。
さらに、空母による戦力投射のためには、空軍のチヌーク輸送ヘリや陸軍のアパッチ戦闘ヘリの運用能力を強化する改修が必要だが、その予算も計画されていない。英国はクイーン・エリザベス級空母のヘリ運用能力を当てにして、揚陸艦「オーシャン」をブラジル海軍に売却したので、当面、ヘリを搭載運用する揚陸艦を保有しないことになる」(西前掲)
そして英国会計検査院の結論はこうです。
「国防省は、空母打撃の将来の運用維持費について十分な理解を得つつある」という会計検査院報告書の表現は、国防省と歴代政権がそれを理解しないまま空母2隻を建造したことへの憤慨を、英国流に控えめに表現したともとれ、空母を建造中の各国への警告にもなっている」(西前掲)
日本はヘリ空母の改修で手一杯です。
6万トン規模の通常型空母を建造することは技術的には可能であっても、それを3セット(打撃群は常に3隻でローテーション配備されていますので)保有することは夢想にすぎません。すべての防衛予算を注ぎこんでもパンクします。
まして核兵器など保有しようとすれば、世界を敵に回すことになります。これについてはさんざん論じましたからもういいですね。
関連記事『独自核武装はやってやれなくはないが、そう簡単なことではない』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-b0b9.html
結論をいえば 、日本が軍事的に自立しようとするのは、戦前の日米、あるいは日中全面衝突コースを想定してやることです。
それは地獄の路です。絶対に避けねばなりません。
嘉手納基地
ここまでを頭に入れたところで、基地管理権を考えてみます。
これについては沖縄県が『他国地位協定調査について - 沖縄県』(Adobe PDF) をだしています。
日米地位協定3条による空域管理権、施設管理権などが与えられていますが、検索してもこのテーマで出てくるのはすべてがヒダリ方向のものばかりです。
min氏も「日米安保の双務化」というわりにはこのトーンですので、私は違った角度から考えてみましょう。
米軍が死活的に重要だと考えている在日米軍基地は横須賀を筆頭にして、横田、嘉手納などです。
普天間やシュワブは前方展開基地ですから、撤収も情勢次第ですが、この三つは仮に「撤退」しても基地機能は保全したままで、有事対応のための弾薬・燃料・資材・保守要員は残していくでしょう。
それはまた政策が変更された場合に、すぐに使えるようにするためです。
嘉手納の基地管理権を日本が一元的に握るというのは、このような「撤退」、ないしは「撤退可能な状況」に陥った時のことです。
米軍は自衛隊と基地管理の共同化を進めてきました。その意味では双務化は国民が思う以上に進んでいます。
たとえば海自は米海軍と一体化しているといっても言い過ぎではありませんし、陸自の水陸機動団は海兵隊に訓練を受けて育てられています。
好むと好まざるとにかかわらず、自衛隊と米軍との関係は今までになく有機的に統合されているのです。
しかし沖縄だけは、米軍が単独で統制しているという印象があるのは確かです。
なぜでしょうか。それは左翼が言うように沖縄を差別しているからでもなく、先ほど述べたように米軍の世界規模の戦略の重要拠点だからです。
沖縄における最大の基地である嘉手納は有事には3倍近くの米本土からの支援機を入れて、巨大な策源地となります。
有事には、海兵隊だけで航空機300機、数万人規模の地上部隊を受け入れねばなりませが、これは普天間の43%のキャパしかない辺野古には収容しきれずに、嘉手納にご厄介になるしかありません。
こんなハンチクなものを巨費と長期間の工事をして作るのは愚劣ですので、政治的ないきさつがなければここまでこじれる前に白紙化してしまうべきでした。
といってもここまで政治案件になると、もう双方とも引っ込みがつかないでしょうがね(ため息)。、
それはさておき、この嘉手納にも同程度の空軍機が来援するので、たぶん収容しきれなくなるかもしれません。
だから、嘉手納は一見広々としているように見えても、空自との共同使用は拒否されているのです。
なんせ移転先に統合案が浮上したとき、空軍はマリーンとの共同使用もイヤがったんですからね。
こういうことまで考えて「相互防衛条約化」をいうなら、有事において問答無用で自衛隊もその一部として機能することが大前提です。
もっと具体的にいえば、米中が全面戦争に突入した場合(その可能性はありますが)、自衛隊は丸ごと米軍と歩調を合わせて共同作戦に入らねば「双務化」は不可能です。
というわけで現況では不可能です。理由はいいですよね。憲法をどうにかしないかぎり出来っこありません。
尖閣防衛だけなら集団的自衛権でどうにかなりますが、それ以上のことは不可能ですし、現況ではやるべきではありません。
これが米国が全面的に日本に管理権を譲らないほんとうの理由です。
むこうにはメリットがないからです。
日米地位協定については、もちろん一次裁判権は必要ですし、持つべきです。
では逆になぜ米国は渡さないのでしょうか。
それは米国は取り調べの可視化を望み、拘留期間の長期化を嫌っているからです。
ゴーン事件の時にも出ましたが、日本の司法はそのように国際的に見られていて米国もそう見ています。
ここを変えるとなると検察・警察を相手に大変な国内的なテーマとなります。たかだか検事の定年くらいであの騒ぎですからね。
長々と書いてしまいましたが、「日米同盟の双務化」とは、沖縄だけの問題ではなく日本全体のことで、日本は派手さはありませんが、集団的自衛権の容認や専守防衛の見直し、南シナ海のパトロール、中東の海賊対処などでゆっくりと歩を進めているのです。
私からみれば、日米同盟はよくぞここまで双務化が進んだもんだと思えるくらいまで進行しており、たぶん憲法が作った戦後的枠組みの極限にまで達しています。安倍さんが改憲をいうと、すぐに政治的レガシーにしたいからだというようなことを言う手合いがいますが、集団的自衛権や特定非密法などを積み上げてきた彼からすれば、憲法解釈でやることはもう無理だと考えているからです。
トランプが言っているのは好意的に解釈すれば、世界の安全保障について応分の負担をしていないという不満でしょうが、これ以上の「双務化」を望まれても憲法変えないかぎりむりなのです。
実は沖縄の自立は日本の自立と同義語だということに気がつかないことには仕方がありません。
min氏は「日米安保を変えて」と簡単に書いていますが、どこをどう変えるのでしょうか。
具体的にひとつひとつ詰めていかないと議論にはなりませんよ。なぜなら安全保障論とは具体論の塊だからです。
« 日曜写真館 昭和行きのバス | トップページ | 飽きずに繰り返されるオスプレイデマ »
管理人さんに返信して頂いて大変光栄に思っています。管理人さんがおっしゃるとおり沖縄の自立=日本の自立であることは間違いないと思います。もちろん現時点で日本が自立するのは無理です。それは管理人さんが言うとおり空母打撃群一つとっても戦力投射できない現状においては間違いないでしょう。ですが安保を変えることは不可能なことではないと思います。例えば集団的自衛権が今限定容認という形になっていますがそれをフルスペックに近い形で容認し米軍と共同作戦を行う代わりに嘉手納の管理権を日本に譲れということは出来ると思います。もちろんその前提は専守防衛を止め、日本も共に戦い前衛で血を流すということです。さらに日本が海兵隊を持つことで今まで米軍が担ってきた島嶼防衛などの機能を一部自衛隊に代替することは長期的なスパンで考えれば可能だと思います。
確かに米軍が日本に展開しているのは日本を守るためだけではなく米軍の世界戦略を維持するためです。しかしこれから先10年20年経った時に本当に米軍が東アジアや西太平洋地域でプレゼンスを保つことが出来るのでしょうか。すでに西太平洋地域では米軍は中国に対して軍事的な優位性を喪失しかけています。その上で第7艦隊の機能を日本も持つのかということも含めて日本の安全保障をあり方を長期的に考えて変えない限り日本が生き残っていくのは不可能でしょう。
そして日本の自立を考える際に一番ネックとなるのが防衛予算の問題です。管理人さんが言う通りアメリカに依存しない防衛を考えた場合人員や兵器を補うためには20兆円近くの予算がかかるから自主防衛は無理だと言うことですがここには戦後日本が抱えた一つの呪縛があります。そもそも防衛予算の相場を決めるのは基本的に財務省なのですが財務省は一つの兵器を買うと他の経費を削減してくれといういわゆる均衡財政または緊縮財政路線を取ろうとしています。なぜでしょう日本の安全保障環境を考えれば防衛費5兆円はあまりにも少なすぎます。ではなぜずっと5兆円で推移してきたかというとこれは財務省が財政法4条という法律の趣旨を守ろうとしているからです。財政法4条を見ると政府の支出は一部建設国債や出資金、貸付金などの例外がありますが基本的にプライマリーバランスを均衡する方向に持っていかなければならずそれを悪化させるような国債発行は原則としてやってはいけないというようなことが書いてあります。ですがこんな法律を守っていれば政府は防衛費を増やすことも出来ずましてや積極財政をしてデフレから脱却することもできません。では何故このような法律ができたのでしょう。
財政法4条は昭和22年の占領期に出来た法律です。この法律を作ったのは当時の大蔵省主計局法規課長の平井平治という人です。平井さんは財政法逐条解説という本の中で財政法4条の趣旨について次のように語っています。
「戦争と公債が如何に密接不可分の関係にあるかは各国の歴史を紐解くまでもなく我が国の歴史をみても公債なくして戦争を計画遂行することは不可能である。したがって財政法4条は憲法の戦争放棄の規定を裏書き保障するものである。」と言っています。
つまり我が国が何故自主防衛をするため人員を集めたり武器を開発したりすることができないかというとそれは一方的な戦時国債の発行が禁じられたからです。戦争はただ軍事力があれば出来るものではありません。それをバックアップする財政力がなければいけないのです。それが憲法9条の平和主義の趣旨に沿って作られた財政法4条によって封じられた。実際我が国の歴史をみても日露戦争や日中戦争では戦時国債を発行し外債を借りてでも戦争をしたのです。私としては財政法4条を変えて積極財政を行いデフレ脱却し経済成長をしながら20年、30年かけて少しずつ防衛費を上げていくのが望ましいと思っています。予算の問題を聞かれたので是非管理人さんにこのような歴史があったことを知って頂きたくて投稿しました。
投稿: min | 2020年7月13日 (月) 07時40分
英国海軍はQE2に続く二番艦のPOWが就役したら、即座に航空隊はじめ人員を移動させてQE2はモスボールに入ることが決定しています。
全く過去の栄光の影すら無くなった貧乏海軍で、実質実働空母は1隻のみ。
フランスやイタリアと変わりません。
一方で中国はワリヤーグコピーの自作空母が実戦状態にあり(システムや艦載機がダメダメですが)、これから量産されます。
また空母補給艦も最近就役しました。艦名不明なのですが、弾薬や燃料の補給と客船のような乗員の休息室が付属している大型艦です。
日本もバブル崩壊後の30年のデフレと経済停滞が無くてドイツやアメリカ並みにGDPや株価が伸びていれば・・・今頃は軽く防衛費20兆円くらいにはなっていたでしょうけど。。
ラーメンやホカ弁が2000円以上にインフレしてたでしょうね。
で、EUで1人勝ちしてたドイツはメルケル長期政権でプライマリーバランスは正常化達成したけど、軍事はもうボロボロです。
動く戦闘機や戦車の数なんて、数字見て泣きたくなる程になっちゃいました。
投稿: 山形 | 2020年7月13日 (月) 07時51分
minさん。
ブログ主さんは、そんなこととっくに知ってますって。。
国債云々言うなら、「赤字国債」の発行を禁止していたのをオイルショックで解禁してからずっと雪だるま式になってることに触れないのはおかしいでしょ。
戦時国債ですか。
誰が返すんですか?
ちなみに日本国は2度の大戦を挟みながらも、真面目に日露戦争の100年債を償還し終えたのが15年前です。
投稿: 山形 | 2020年7月13日 (月) 08時01分
追加で申し訳ありません。私が言った責任というのは管理人さんや山路さんのことを指して言っているのではありません。彼女を持ち上げた依田氏やチャンネル桜の出演者達のことを指して彼女を持ち上げた責任を感じないのかという意味です。
投稿: min | 2020年7月13日 (月) 08時06分
確かに我が国では毎年特例法を通していますが赤字国債の発行が恒常化したのはあくまでも既存の社会保障や税収の不足を補うためのものであり、それは新たな設備投資したりするといったような経済成長に資するものではありません。つまり国を豊かにするような国債発行はしてはいけませんというのが財政法4条の趣旨です。それに国の借金は家計の借金とは違い中央銀行に借り換えができます。なのでそもそも返すという性質のものではありません。
投稿: min | 2020年7月13日 (月) 08時44分
日米同盟に関する管理人さんの深い論考とそれに対するminさんの戦争と財政に関する興味深い認識に関心しました。実際私も日米同盟と戦後日本の社会や経済との関係について興味を持っています。不思議なのはminさんがおっしゃるような軍事主権も財政主権もないような我が国が何故ここまでの国になれたかということです。軍事に関しては米軍基地があったから良かったという話ですが財政主権がない国が戦争という焼け野原からいきなり高度経済成長なんて普通に考えて出来るわけがありません。つまり経済に関してもアメリカの支援があったという風にしか考えられないと思うのです。調べて見ると日本は世界銀行やアメリカから大量の借金をしています。その借金を使って東海道新幹線や東名高速道路を作っています。つまり日本はアメリカの支援を受けて高度経済成長したのです。アメリカとしては反共の砦として日本を扱うことが国益だったのでしょう。しかし本来であれば自国通貨建ての債務でこれらのインフラは作られるべきです。それが何故わざわざ外国通過建ての借金をしてまでこれらのインフラを作ったのでしょう。日露戦争の時の対外債務も外国通貨建てですがこれらの債務は絶対に返済しなければならないものです。なぜなら自国通貨建ての債務であれば中央銀行による借り換えができますが外国通貨ではそれが出来ません。実際問題ギリシャはユーロで破綻したのですから。つまり戦後日本というのは平和主義によって豊かになったのではなく日米同盟とドル建ての借金をしたことによって偶然豊かになっただけだと思うのです。
投稿: kim | 2020年7月13日 (月) 12時20分
管理人さんは安保を変えるには憲法を変えるしかないとおっしゃいますが私はそうは思いません。集団的自衛権をフルで認めるかどうかは政策の問題であり、憲法の問題であるとはあまり思っていません。集団的自衛権が違憲だと言っている野党が問題だと言うのであればそれを認めない限り地位協定を変えてアメリカ側が基地の管理権を日本に渡すことは考えられないと堂々と反論するべきです。実際彼らの違憲論なんてものすごく表面的な平和主義と反米論に裏付けされているものに過ぎないのですから。
投稿: kon | 2020年7月13日 (月) 14時57分
双務化ってなに?
本当に、私もそう思っています。
特定の論者や論調がと言うよりも、どの立場であれ、この話でも、言葉の音だけがふわふわと飛んでいるようで困惑するのです。
参考までに、日米同盟をめぐる「相互性」「双務性」「対称性」「対等性」とそれらの「実効性」をキーワードに、旧安保条約から今日までとこれからを考える千々和泰明氏の6月16日の論考では、
・非対称的な双務性が悪いわけではない
・同盟間でまったく同じものを交換するよりもそれぞれが必要とする別のものを交換することの方が双方にとって効用が高い場合もあるはず
・相互性や双務性は、時代とともに変わりゆく概念でもある
・相互性の対象や双務性の内容について手直しが重ねられてきたわけであり、そうした作業はこれからも必要になっていくであろう
・日米間の対等性を確保すること自体は安保条約の目的ではない
・日米安保条約の目的は、日本と極東の平和と安全を守ることであり、その目的に対し日米同盟の在り方がどれだけ実効的かという「実効性」が問われなければならない
と述べられています。
http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary123.pdf
かつては私にも、共に血を流す約束がなくて大丈夫なのかと思った時期がありましたが、時代も状況も変わり、私自身も変わりました。
今の私には、千々和氏の「それぞれが必要とする別のものを交換」、これを通して実効性を確保していくのが現実的に思えるのです。
別のものとは金や場の提供だけとも限らない。
例えば日本海自のASW(Anti-submarine Warfare対潜戦)能力はクレイジーなまでに高められていて、アメリカ軍にも頼りにされていると聞きます。
共に流す血など日本にもアメリカにも望まないけれど、敢えて情緒的な言い方をさせて頂くならば、共に流す汗は必ずあるはず、共に汗を流す方法はあるはず、と申し上げておきます。
投稿: 宜野湾より | 2020年7月13日 (月) 22時56分
kon さん
フルスペックの集団的自衛権を認めるには、憲法改正が必要な事はブログ主様の言うように憲法改正が必要です。
この事はすでに政策や法の建て付け、集団的自衛権の自然法的生来性の問題ではなく、事実として(フルスペックの集団的自衛権を認めるには)憲法改正が必要だと言う事になっていると言う事です。
たとえば安倍総理は国会で、「第9条2項を変えることになれば、書き込み方でフルスペック(全面的)の集団的自衛権が可能になる」と答弁しています。
この答弁はエセ二項削除論者である石破茂氏の「第9条2項を削除しても、全面的な集団的自衛権の行使容認につながらない」とする見解にクギを差したものでしたが、同時に「「交戦権の放棄規定」がある以上、憲法改正がなければフルスペックの集団的自衛権の実現は出来ない」とする政府見解を示したものと言えます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年7月14日 (火) 01時42分
minさん
≫ 「国の借金は家計の借金とは違い中央銀行に借り換えができます。なのでそもそも返すという性質のものではありません。」
だからと言って、防衛費のような必要不可欠な支出であれ、青天井で国債発行出来るものではありません。
だったら、なぜメルケルは財政均衡に腐心したのか?まで考えてもらいたいものです。
なまなかの知識で「返すという性質ではない」とまでおっしゃる姿勢には共感出来ません。
プライマリーバランス改善への要請は通貨発行権に関する国内問題ではなく、国際間均衡や協調の問題です。
今回のコロナのような事態なのであれば、各国もしているように金融緩和も国債発行も当然の事です。
しかし、防衛費となると日本が高福祉国家である事などもあり、難しい問題もあります。
日本にとっては防衛でも、他国にとって侵略ととられかねない要素もあり、アメリカさんからの強要という何時ものパターンが必須になるだろう悲しさもあります。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年7月14日 (火) 02時28分
交戦権の放棄=集団的自衛権の制限になっているとは私は全く考えていません。そもそも交戦権の放棄とは1928年のパリ不戦条約と1945年の国連憲章の国際法規を踏襲したものに過ぎません。ですから日本だけが一方的に何か特別な制約をかけて交戦権を放棄したのではなくパリ不戦条約や国連憲章で定められている他国に対する侵略行為が禁止されただけだと考えるべきです。そこではフルスペックの集団的自衛権が禁止されているとは考えられません。もしそれが戦後一貫して禁止されていたのであれば朝鮮戦争時に自国が武力攻撃を受けていないにも関わらず米軍のために朝鮮半島で機雷の掃海をしたことの説明がつきません。しかもそれは今のような限定容認というレベルではなくフルスペックに近い集団的自衛権の行使というふうに考えるべきです。集団的自衛権が禁止されたのはベトナム戦争以降の反米感情に考慮した政策的な選択であって、憲法解釈に何か一貫性があったのではありません。なので安倍総理の中途半端な答弁には違和感があります。
投稿: kon | 2020年7月14日 (火) 02時30分
いつも楽しみに拝読しております。随分時間が経ってからの今更のコメントですみません。
ブログ主様のおっしゃるように軍事的・政治的に「米国にとって日本は唯一無二の最重要同盟国」ですが、経済的にもそうなっていることについて少々補足させてください。
日本が保有する米国債は1兆ドルを超えており、中国も同じくらい米国債を持っています。日本は同時に世界一の対外純資産の保有国です。FRBが日銀やECB、BOEなどと結んでいる限度無制限のドル通貨スワップは、残高の半分以上を日銀が借りています。勿論日本も金利や為替ヘッジで相応な利得を得ていますが、ドルの流動性を担保して基軸通貨足らしめているのは日本のお金によるところが大きいのです。
香港のことで米国の経済制裁の歯切れが悪いのは、中国が大口の米国債保有者で実際に米国債を売り始めており、米国も相当な返り血を浴びる可能性があるためです。なので、トランプ大統領が国を守ってやっているからもっと金を出せと言ってきたら、安倍首相は「じゃ米国債を売って支払うよ。」と返せばそれ以上言えなくなるのではないかと思っています。こうした経済面まで考えると、日米同盟は必ずしも片務的と言えないように思います。
なお、最新の日銀が四半期毎に公開している資金循環表によると、国の債務は1,000兆円ありますが国民の金融資産は1,500兆円もあります。日本が持っている米国債は日本が海外から借りた戦時国債と同じで、米国は何年かかっても返済が必要です。一方、日本政府が国内で調達する国債は国民の金融資産の範囲なら換え続けることが可能です。外国からお金を借りていないので、日本国内で少なくともあと数百兆円の財政出動余地はあるものと思います。財務省には中国の売ってくる米国債を買わされず、自然災害で国民が犠牲になっている状況をなんとかする公共投資を、きちんと費用体効果を考えて実施して欲しいと思っています。
投稿: 都市和尚 | 2020年7月15日 (水) 00時07分
嘉手納の問題については空軍の戦闘機でマンパワーになってしまうから海兵隊や空自が入って来ることは不可能で有ることは良く分かったのですが横田や横須賀の場合はどうなのでしょう。横田空域と言って東京の空はアメリカに占拠されていると言われていますよね。それも基本的には嘉手納と同じ構造なのでしょうか?横田の近くに住んでいるので非常に気になります。横田空域を日本に返還する際にも憲法や米軍との一体化の問題が関わってくるのでしょうか?非常に精緻な解説だったので返答して頂ければ幸いです。
投稿: nyu | 2020年7月16日 (木) 09時23分
私も管理人さんが横田空域の問題についてどのように考えているのか気になります。管理人さんはかつて自分が厚木基地の近くに住んでいて住宅街に戦闘機が落ちてきたり、爆音がしたりと大変な思いをしたと聞いています。都市の空の安全は日米安保の問題にどれだけ深く関わっているのでしょうか?
投稿: hou | 2020年7月17日 (金) 05時40分
hou さん。横田空域ですが、ここも嘉手納と同じ構造です。
石原前知事が年来、空域と基地の返還交渉をしてきました。
石原氏は1999年に都知事選に立候補した際、横田基地の「管制空域返還」と「軍民共用化」を唱えました。
まことに正当な要求だと思いますが、空自の司令部が移転するなど「軍軍共用化」は進んだものの、ほかは拒否されたままになって頓挫しています。
首都の空港が羽田空港から飛び立って北に向かうロシア経由、欧州経由の旅客機、あるいはロシアのほうから戻ってくる旅客機にとって、まさに高い壁になっています。
また、羽田や成田空港から西日本に向かう発着便も、1回太平洋上まで出てから大きく急旋回しなければなりません。
横田空域に入らないためです。
日本の空の管制権を敗戦で連合軍に掌握されたまま、日米地位協定に基づき、米軍の管理下に置かれている状況は異常です。
これも横田は世界戦略上極めて重要な拠点だと米国が認識しているために排他的管制権を握って放さないのです。
基地についてはひとまず置くとして、空域の管制権だけでも取り返さねばなりません。
小池知事は無関心なようですが、首長だけではなく国のテーマとして交渉をするべきです。
投稿: 管理人 | 2020年7月17日 (金) 06時21分
横田の空域管制権も取り戻すにはやはり専守防衛の撤回や集団的自衛権のフルスペック容認が必要なのでしょうか?それとも別の方法があるのでしょうか?
投稿: hou | 2020年7月17日 (金) 16時01分