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2020年8月

2020年8月31日 (月)

ポスト安倍の今後

      021

安倍首相の退陣の裏側が判ってきました

「首相は17日、24日と2度にわたり慶応大病院で治療を受け、治療は長期化することを告げられた。首相が通常は最高機密である自身の健康不安説が広まることを承知の上で、報道陣に分かるように病院に入ったのも「13年前の教訓からだ」(首相側近)という。
新薬の投与効果もあり、24日の治療後は体調は回復基調となった。だが、まさに連続在職日数単独1位となったその日、首相は辞任を決断した。8月下旬に入り、東京都の新規感染者数は小康状態が続いていた。新型コロナの新たな対策パッケージも、取りまとめの道筋がついていた。
ただ、次の首相の元で新たな内閣が発足し、政権運営が軌道に乗るまでには数週間はかかる。もとより、政治空白が生じることは避けなければならない。
「次の首相が決まるまで私は任期を全うする。新型コロナ対策を含め引き続き全力で取り組むのでよろしくお願いします」
首相はは28日午後、秘書官全員を集めて辞任の意向を伝え、頭を下げた。持病と戦いながら、第2次政権発足から7年8カ月の安定長期政権を築き上げた大宰相は、自らの引き際も1人で周到に準備して決断した」(産経8月29日)

さて安倍後任総裁の日程は、明日の総務会で決まるようですが、両院議員総会方式をとるようです。

「安倍総理大臣の後任を選ぶ自民党総裁選挙をめぐって、岸田政務調査会長や石破元幹事長らが立候補に意欲を示しているほか、党内では、菅官房長官の立候補に期待する声も広がりを見せています。一方、昨夜、二階幹事長と森山国会対策委員長は、来月13日から15日を軸に両院議員総会を開き、党員投票を省略して国会議員と各都道府県連の代表による投票で新しい総裁を選ぶ方向で調整を進めることで一致しました。
安倍総理大臣の後任を選ぶ自民党総裁選挙をめぐっては、これまでに岸田政務調査会長と石破元幹事長、それに野田聖子・元総務大臣が立候補に意欲を示しています」(NHK8月30日)

今回は総裁任期途中での退任となるので、首相不在期間を最短にするために簡易法といわれる両院議員総会で決定されます。
この流れは、安倍氏の辞任表明会見ですでに明らかになっていたことです。

「自民党は28日の臨時役員会で安倍首相(党総裁)の後継を選ぶ総裁選の方式や日程を二階俊博幹事長に一任すると確認した。9月1日の総務会で決める。
通常、総裁選は3年の任期満了にあわせて実施し、党員・党友による地方票と国会議員票の合計数で選ばれる。総裁が任期中に辞任するなど緊急時は公選規程の例外措置をとることができる。自民党則第2章6条は「両院議員総会で後任を選任できる」と記す。
二階氏は28日の記者会見で「時間に十分ゆとりがあれば当然、党員投票は考えるべきだが、そこに至るかどうか皆さんの意見を聞いて判断したい」と指摘し、党員投票の省略を示唆した」(日経8月28日)

想定される有力な日程はこのようなものです。

9月1日総務会
9月15日両院議員総会で新総裁決定
数日以内に組閣
下旬(25日頃)臨時国会・特別国会招集・首相就任

また一説によれば、後は新内閣成立の熱があるうちということで、早々と9月下旬から10月初めに解散し、下旬投開票という段取りとなると見られています。
常識的に見ても、たぶんこの1カ月間はメディアは自民党報道一色となるはずで、この熱い空気に乗らないほうはない、と自民党中枢が考えてもおかしくはありません。
自民党議員としてはかねがねこの秋解散を想定して、各候補がとうに走り出しており、遅すぎる決定だったほどだからです。
一方、野党もそれを察知しての「帰ってきた民主党」騒動でしたが、国民民主の玉木氏に事実上阻まれてしまったうえに、石垣のりこ議員が大炎上では、いかがなりますことやら。
野党がこのようなていたらくな時期は、一気に解散に持ち込んで新政権の基盤を固めようという判断がでても不思議ではありません。

野党は首相の退陣表明を受け、今秋の衆院解散・総選挙の可能性が高まったとみて態勢づくりを急ぐ。立憲民主党と国民民主党が9月16日にも発足させる合流新党が野党共闘の軸となる。ただ、国民の代表ら別の新党設立を目指す動きがあり、こうした勢力を含む他の野党との選挙協力が課題となる」(時事8月29日)

政策のすり合わせなく野合に走った立憲は窮地に陥ったと判断しているようです。
むしろ「安倍批判だけではダメだ」という意地を貫いた玉木代表の株は鰻登り気味で、コロナで名を馳せた維新となんらかの協力関係が成立すれば「新三極」となる可能性もないわけではありません。

いずれにしてもこの構図で総選挙をおこなった場合、自民が過半数割れを起こす可能性は低くなりました。
私の下馬評ではこんなかんじかな。ただし、私の希望的観測も含まれていますので、割り引いて下さい。

・自民・・・現状維持
・公明・・・現状維持か微減
・立憲・・・惨敗
・国民・・・躍進
・維新・・・躍進
・共産・・・惨敗
・社民・・・惨敗

枝野の「帰ってきた民主党」方針が裏目に出たのです。
野党を一枚にするという全野党共闘が、玉木によって阻まれた時点でその目論見が崩れたうえに、新内閣発足。
野党の唯一の武器である「アベがみんな悪いんだ。安倍を倒せばこの世は天国」というネガキャンをあらかじめ封じられてしまった以上、なにを対抗軸にするか見えないうちに決戦に持ち込まれてしまったというわけです。
いままでろくに政策の勉強もしないで、モリカケ、サクラでうつつを抜かしてきた祟りです。
安倍さん辞めたら、野党コケた、とは笑わせます。

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さて自民党に話を戻します。
自民党の主要派閥は、最大の細田派(清話会)、第2派閥の麻生派、第3派閥が竹下派です。
かつてのような「揃って箱弁当」というほどの結束力はありませんが、派閥は押し上げたい総理候補がいなければ持ちません。
細田派は安倍首相を輩出した後なので今回は見送るとして、第2派閥の麻生派にはもうひとりの太郎の河野がいます。
だい3派閥の竹下派には、茂木、加藤という有力候補がいますが、まだ首相となるには早いという声が他派閥から上がっているようですし、今回は両人とも見送るようです。

すると、消去法的に幹事長派閥の二階派の動向が決定的となります。
二階は菅を推すようです。掲げる旗印は安倍路線の継承です。
菅自身は無派閥ですが、なんといっても3000日近い超長期政権の「裏の総理」は彼でした。
これには安倍を出した細田派は反対するはずもなく、副総裁の麻生派も同調し、第3派閥の竹下派も乗りました。
これで総裁選は事実上終わったようなものです。

岸田は安倍の後継と見られていまおり、細田派と麻生派が菅に集約され、二階がそれに乗ったことで当選する可能性は消えました。
前回の総裁選も見送った岸田は出馬するでしょうが、それは今後の政治生命維持のためであって、勝機はありません。

菅が出馬すると決意した瞬間、一切が決定したのです。
大勢は決まったと見た二階は一気に両院議員総会で決着という方向にしたかったようですが、石破が「党員全員でていと民主的ではない」と反発をしたために、9月1日の総務会に持ち越すクッションを入れたようです。

今や出馬さえ危ぶまれる石破にできることは、唯一メディアを使って不平を垂れるだけですから、二階としてもいたしかたなかったのでしょう。
二階としては、なにがなんでもポスト安倍を間違わずに、勝ち馬に乗らねば失脚しますから、必死です。
幹事長だからカネも権力も集まるのであって、辞めればただのヒトです。
二階はほんとうは誰でもいいのでしょうが、ただし「あの男」を除いては、ですが。

もちろん「あの男」とは、自民なんぞにいるよりもリ立憲にいた方かお似合いの、石破茂のことです。
この男だけには権力を渡さないというのが、二階のせめてもの保守政治家のギリギリ最後の矜持なのか、ただのいつまでも幹事長でいたいという権力ボケなのかどうかわかりませんが、二階は早々と石破を見捨てて菅を推してしまいました。
二階が命綱だった石破はこれでジ・エンド。
出馬の最低推薦人さえ突破できないんじゃないでしょうか。

いずれにしてもあんな嫌われ者が総裁選に出ても、入れる奴はいねぇよ、というのが自民党国会議員の「総意」でしょうね。
それほど党内で嫌われているのが、ゲル氏です。
ですからメディアが「次の首相トップは石破」とタイコを叩けば叩くほど、党内は彼に対する嫌悪感の毒ガスで充満していきます。
だって、日本は議員内閣制ですから、多数党の代表から総理が選ばれるのは中学生でも知っていることです。
ですから、大統領公選制ではない以上、誰が世論で一位だろうが無関係なのは分かりきった話で、メディアとしては野党とまったく同じことを言い続けている可愛い石破に政権を渡したくて仕方がないようです。

なんせ輸出管理強化を政府がやっている時に、韓国が納得するまで謝罪しつづけろ、なんてトンデモを言っちゃった人だからね(笑)。
玄界灘の向こうの国は、彼が首相になったらまっ先に祝電くれるだろうな。
ただし残念ながら、こんなスカタン記事を読まされるたびに、自民党国会議員はゲル氏に冷やかになっていくことでしょうがね。

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産経

石破になったら、安倍首相の政策をみごとに180度転換してみせることでしょう。
この人物は大の緊縮財政派ですから、新型コロナ対策の財政主導をことごとく削り始めることでしょう。
その上に親韓派で、親中派ときているのですから、なんともかとも。第2「「河野(パパ)談話」くらいやりかねません。
徴用工訴訟が現金化がされても指を加えているだけで動かず、トランプとの相性最悪。
改憲は、2項削除が本筋だが、国民が納得しない以上進めない、なんていうでしょう。
これが自民の総裁候補だから困ります。
スッキリ立憲の代表にでもなってくれたほうがなんぼいいことか。
というわけで、この人物に政権を握らせるなんて話の外。論外です。

この人、もう自民党では総理のメがないんだからいっそ党をまた出て、元幹事長の肩書を精一杯利用して、「第2の小澤一郎」にでもなる道をえ選んだらいかがでしょうか。
小澤のほうも角栄つながりで可愛がってくれるかもしれないし、末路も似たようなもんかもね。

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自民 岸田政調会長 総裁選の立候補に意欲示す | 安倍首相 辞任へ | NHK ...

岸田の基本は劣化した安倍路線でしょうが、安倍がリフレ派の考え方を理解していたに対して、岸田は財政再建派です。
新型コロナの財政支援は早々と切り上げて、元の緊縮財政主義に回帰することでしょう。
こと次第では「コロナ復興税」などやりかねません。
外交路線は平時のリベラル路線。
人柄はいいのでしょうが、あまり推しの気分にはなれない人です。

というわけで、注目の河野ですが、先日来期待はしていますが、まだ政策の全貌が見えません。
かつては緊縮財政派でしたが、このところ宗旨変えしたとかいう話もあって、今はどうなのかわかりません。
脱原発議員連盟の中心的人物で、今も原発ゼロ路線だとするとちょっとおいおいですが、小泉親子ほど感覚的反対派ではないのて、現実的判断かできるのではないかと思っています。
女系天皇にしてもそうですが、持論のリベラル路線とどこで一線を画した統治意識を獲得できるか次第でしょう。

外交政策には期待できます。おそらく彼の最大の魅力はこのメリハリの効いたパンチ力でしょう。  
首相となって責任ある立場でどう振る舞えるか、楽しみでもある一方、かなり不安が残ります。
彼は自由な議論ができる体質の持ち主なようで、既にガチガチに出来上がったような他候補とは異なって、好感を持てます。

というわけで私は今の所、河野買いかな。
ただし、河野が出るかどうかは今の所未定で、菅さんに可愛がられているみたいですから、官房長官か外務大臣に再任されて、次を待てというのが、自民の大勢だと思いますし、不世出の官房長官だった菅の下で政権実務や官僚統制の技術を覚えて損はないはずです。
今出て仮になったとしても短命に終わってしまいます。

残るは最有力候補となった菅ですが、彼は安定感抜群です。
親中派だという指摘もあって私も迷いましたが、一気に親中派路線に切り換えるほど愚かではないはずです。
新型コロナ対策の財政支援は今後も力強く継続するでしょうし、規制緩和にも取り組むはずです。
彼になれば楽しみだ、という点は少ないですが、他の派閥からも人望があり、他の候補と違って叩き上げですからやはり迫力が違います。
危機管理に関しては、彼の右に出る人材は日本にいないはずですから、今の危機状況向きです。
ただ、彼が安倍のように率先して新しい展望を切り開くタイプかといえば、ナンバー2に徹していたためにわかりません。

あ、野田を忘れていましたが、ま、いいよね(笑)。

いずれにしても、今週の早い時期に次期首相は決まるはずです。

 

 

2020年8月30日 (日)

日曜写真館 晩夏

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天日に焦げて向日葵減びけり   渡邊牢晴

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向日葵は黙して已が分守り  久保田一豊

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向日葵やそこに水脈ある大地   河野志保

 

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ひまわりや暇なし金なし男なし  津田このみ

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2020年8月29日 (土)

安倍首相の遺産目録

026

     
安倍首相が辞任表明しました。
昨日の記者会見を伝える民放ニュースの脇に「政権投げ出しか」という文字が躍っていたのが笑えます。
歴代最長の政権がようやく終焉を迎えたのに「投げ出し」もないもんです。

しかし、こう書きたいメディアや野党の気持ちは、痛いほどわかります。
さて、明日からアベ叩き以外なにをしたらいいんだって、途方に暮れているのかもしれません。
東京新聞の記者なんか、最後の最後までモリカケって言ってましたもんね。引かれ者の小唄。

さぞかし今日の朝日・毎日・東京の紙面など見物だろうな、巨悪倒れるという提灯記事一色でしょうな。
今まで立憲は憲法審査会をネグる言い訳を「安倍が進める限り改憲ハンタイ」なんて言っていましたから、では新首相になったら国会審議に応じるんでしょうね。

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さてバカは放っておいて、安倍政権が残した遺産目録を眺めておきましょう。
安倍氏は外交戦略を我が物とできる希代の政治家でした。
安倍氏と何度か直接に話あった経験があるルトワックは、「彼は正式な戦略を学んでいないにもかかわらず、驚くほどよく国際戦略を理解している」という意味のことを述べていました。
彼が凡百の首相と決定的に異なる地平に立っていた理由は、この「大戦略」を安倍氏が深く理解していたことです。

安倍氏辞任の報を受けて、オーストラリア首相やかのメルケルまでもが惜しむ発言を寄せていますが、それはありきたりの外交辞令ではなく、今や安倍氏は国際政治を牽引する数少ない国際プレイヤーへと成長していたからです。
彼は自由主義陣営の中で、米国に唯一拮抗できるだけの力量を持った政治家でした。

ただの米国従属国家ではなく、自らの意志で太平洋・オセアニア・インド洋に及ぶ自由主義国家連合を作ったのは、彼です。
この試みは遠大なるが故に、国内ではほとんど理解されていませんでしたが、日本は米国と協調した太平洋・オセアニア・インド洋のリードオフマンの地位を築きあげようとしていたのです。
これからが彼が作った太平洋・オセアニア・インド洋自由主義国家連合の真価が試される時だっただけに、安倍氏の悔しさがわかります。

この国際政治との流れの中において、安倍氏がなし遂げた国内政治を見ねば彼の残した膨大な遺産目録は理解できません。
安倍氏が残した政治的遺産は多岐に渡ります。
代表的なものは、特定秘密保護法と集団安全保障の一部容認のための安保法制の整備でした。
これらの法整備はなんのためにされたのか、振り返っておきましょう。

当時は野党とメディアがなんと言っていたか、思い出しただけで失笑します。
いわく「治安維持法の再来」「居酒屋で政権批判をしたら逮捕」、文化人は「映画・演劇が禁止される」なんて愚にもつかないことを真顔で言い立て、そしてつけたネーミングが「戦争法案」ときたもんです。
このなかでアベヒトラーと叫ぶ者たちが大量に生まれ、メディアの煽動によって極悪人まがいの安倍像が作られました。

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これらの法整備がされた理由は、いまになるとはっきりその理由がわかります。
当時、世界は冷戦以後のイスラム過激派のテロリズムに揺れていました。タリバン、アルカーイダ、そして最凶のテロ集団ISは、その「領土」を急速に拡大し、ヨーロッパ各地で凄惨な無差別テロを引き起こしていました。

このような情勢を受けて、各国はテロ情報を緊密に共有化する必要に迫られました。
ところが当時の日本には、諸外国からもたらされる膨大なテロ関係情報を受信する受け皿がなかったのです。
なぜなら機密漏洩について、これを未然に抑止し、処罰する法体系が存在しなかったので、欧米諸国はこのような日本には、わずかの機密情報しか与えませんでした。

そのうえ日本にはこちらから提供すべき情報も、情報機関の欠落によってわずかしかなく、これでテロ情報の国際共有の環に加わることができるはずもありません。
この法整備の欠陥を埋めようとしたのが特定秘密保護法で、後に成立したテロ準備罪も同じ動機から発しています。

また、中国の世界支配を企む軍事膨張は誰の目にも明らかとなってきました。
これに対抗したのが、先に述べた太平洋・インド洋をつなぐ自由主義国家連合です。
安倍氏が独力で牽引したといってもいいTPPもまた、この国家連合の貿易ルールの整備でした。
TPP11がこれを仕上げなければ、今頃は中国がそれに代わって自らの得手勝手な貿易ルールを個別に押しつけてきたことでしょう。

集団的自衛権もこの流れで見れば、太平洋・オセアニア・インド洋の安定を軍事的に保証するために、米国と双務的な安保にせねばならなかったからだとわかります。
これを「米国に言われれば世界の果てまでついていく」といった古色蒼然たる「巻き込まれ論」でしか反対しかできないのが、日本のメディアと野党です。

このような安倍氏の国際的な流れとの関わりで出されたいくつもの法整備は、国内政局だけしか理解出来ない矮小な脳みそしか持たない左翼には理解を超絶していたようです。
無理解というより、次元が違う言語でしゃべられているという感覚かしらね。

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だから野党とメディアがしたのは、自分らの蠢く低次元の生存圏に安倍氏を引き下ろすことでした。
ひたすら叩くのはゴショプ、ゴショプ。忖度、忖度。
ただそれだけ。

なんと彼の在任期間の半分は、いまやその内幕がバレたモリカケ、桜一色だったのですから、心底げんなりします。
彼らは一切まともな証拠をだせないとなると、「無罪を証明してみろ」と迫り、どう答えようと「疑惑は深まった」と必ず喚くのですから、一種の儀式です。
安倍氏の持病を悪化させた心理的ストレスがいかに巨大だったか、このモリカケ・サクラ時代を振り返ればよくわかります。
こういうバカの攻勢のあいまに、よくもこれだけのことをなし遂げたものだと驚嘆します。

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しかも野党とメディアから独裁者呼ばわりされる安倍政権は、むしろ権力の行使に対して慎重で、彼の体質である他者の意見を聴くという性格どおり時間をかけた審議に応じました。
野党が金切声を上げて叫んでいた「強行採決」のペースは、かつての民主党政権の半分以下だといわれています。

経済は金融緩和と財政出動によって劇的に回復し、永きに渡ったデフレトンネルの出口に差しかかろうとしていました。
それは失業率の低下や有効求人倍率によってよくわかります。
二度目の消費増税は手痛い失敗ですが、それでもデフレからの脱却に道筋をつけたのは確かです。
この経済に強い安倍氏は、今回の新型コロナの中でも、中小企業への緊急助成などにいかされています。

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新型コロナは、世界最低水準の死亡率の低さをなし遂げたにかかわらず、その誇るべき成果は「PCR検査をしないから感染者が少なく見えるだけだ」などというメディアの煽動に打ち消されてしまいました。
そして安倍政権がなにをしても
「後手後手」、緊急事態宣言を早く出せといいながら、出せば出したで「不徹底」。
3密を訴えてステイホームの動画で自宅でくつろぐ様子をアップしようものなら、国民が辛酸をなめているにと160日間ぶっ通しで働き続けている首相を罵り。
マスクを配ったら配ったで、「アベが国民にしてくれたのは、たった2枚のアベノマスクだけ」と言い、経済再起動を目指す
GOTOキャンペーンをすればしたで、全国に感染を拡散するのかと泣き喚き。
それも毎日朝から晩までぶっ通しで半年以上ですから、ここまで性格が歪んでいると、もはやどーしようもありません。
そしてこのワイドショー政治に躍らされた情報弱者によって支持率は急落の一途を辿ってしまいました。

にもかかわらず、メディアと野党は最後まで自力であれほど憎んだ安倍氏を引きずり降ろせませんでした。
安倍氏は自らの判断で、適期と判断した今辞めたのです。

彼が会見で正直に言っていたように、やり残したことは多々あるでしょう。
拉致問題、北方領土、改憲。しかし、たったひとつの政権が成し遂げた遺産はあまりにも豊かで、多彩です。
おそらく並の政権ならば、このひとつでも通すのがやっとだったことでしょう。
それ故、敵からここまで憎まれ、ここまで足蹴にされたのです。

言い換えれば、それはあなたという首相の存在が、あまりに高くそびえ立っていたからです。
ご苦労様でした。あなたはあなたの祖父と並ぶ宰相と後世称されることでしょう。

 

2020年8月28日 (金)

今、次期首相を考えるときの軽重とは

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昨日のコメント欄を拝見していると、やっぱり女系天皇論オンリーになっちゃいましたね(笑)。
まぁ、今の時期それで持ちきりですからね。青山繁春さんなんかも議連で取り上げていたみたいですし。

ただ、今私が問いたいのは、河野太郎という政治家の政策各論ではないのです。
首相になると宣言した以上、各論は必要でしょうが、今もっとも重みがある問題がなんなのか、国民のほうから明確にしていかないとダメです。
各論から入ったら、野党が好きなあれもこれもの総花論に終わってしまって、今日本が置かれている状況に対する国家選択が曖昧になります。

今、次期首相が置かれている歴史的ボジションはなんなのでしょうか、天皇の後継問題ですか、それとも中国融和政策の転換ですか、いったいどちらが重要ですか、と私は問うています。
国家は「大戦略」を誤れば亡国に至ります。
戦前の日本の最大の失敗は、ミッドウェイ運命の5分ではなく、同盟相手にあろうことかナチスドイツを選択し、米国と敵対してしまったことです。
ここを誤れば、あとは「小戦略」(こういう表現はありませんが)が仮にうまくいっても、戦闘局面で勝利しようと、結局は敗北して国を滅ぼします。
ところが日本は、遥か彼方で同盟の実効性が薄いうえに、ドイツを選択することで世界を敵に回してしまいました。
戦略の間違いは、戦術ではリカバリーできないのです。

ただ今現在、突きつけられている日本の国家としての岐路は明らかです。
今までの日本の外交政策は、米国に軸足を置きつつ、中国ともよろしくやっていこう、という二股外交でした。
これは米国の中の、「中国が経済成長すれば民主国家となって国際社会の一員になるだろう」という民主党路線と平仄があっていました。
しかし、中国は民主国家になるどころか、世界支配という途方もない方向に舵を切ってしまいました。

そして米国もそのような中国と真っ正面から対抗する方向に突入しました。
米中激突時代の到来です。
それは冷戦から熱戦になる可能性すらある、その前夜です。
こうなってしまっては、今までの日本のように米中の間で旗幟をあいまいにすることを処世術としてきた外交方針はいっさい通用しなくなります。
あいまい路線は、米国からは同盟裏切りに写るでしょうし、中国からは米国に味方する敵性国家となります。
中間はありません。

私が、時期候補者立ちに問いたいのは、この曖昧な外交方針こそがもっとも危険だという時代認識を持つか否かです。
自民党の多数派はこういうでしょう。
いや、勿論同盟国は米国だが、日本経済は中国に依存しているんだし、波風立てないで穏やかに対応しつつ、なんとか騙し騙しやっていこうや。
トランプも習も立ててうまくやっていこうや。
大方こんなレベルが自民の最大公約数のはずで、岸田氏はおろか肝心の安倍氏もそう考えたふしがあります。
二階がどうのというより、安倍氏自身がその考えに引きずられていたのです。

ただし、彼は香港国安法を見て、大きく外交方針を転換しました。
元来、米国-豪州-日本を結ぶアジア太平洋ダイヤモンド安全保障構想は安倍氏が提案し、トランプに影響を与えたものです。
しかし日本は安倍氏の求心力の弱体化と共に、中国融和の方向になし崩しに傾斜しかけていました。
番頭の菅氏が二階と同盟関係になってしまったのが痛かった。
その象徴的結果が、習の国賓訪日の要請です。

その意味で、安倍氏はラッキーな男なのですよ。
今回も寸前で新型コロナの世界的爆発が起きて、修正をかける言い訳を与えてくれました。
もし4月に予定どおり呼んでいたら、今頃は米国との同盟関係にヒビが入り、同盟失格の烙印を押されかねないことでした。
このように考えてくると、次期首相に求められていることは自ずと鮮明になるはずです。

昨日書いたことは、自民党特有の派閥政治で次期首相を選ぶな、ということです。
そんな派閥政治で選べば、党内多数派清和会などは岸田氏を選ぶことなかれ主義に流れるでしょう。
こんな百年に一回あるかどうかという国家の行く末を決定せねばならない時期に、そんな派閥力学による合従連衡で指導者を決めていいのですか。

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この時期に必要な首相の資質は、オープンな議論ができる人であること。
そして影に回って味方陣営を背中から撃つことのない人物であることです。
まずは議論の場を、候補者と持てるかということが前提です。

岸田氏とそんな議論の場をもてるでしょうか。ましてゲルにおいておや。
今、国民との議論に真正面から対応しようとする、いい意味でのオッチョコチョイは河野氏だけなのです。

今の日本をめぐる国家選択は、自民内部だけで完結してはいけません。
かならず米国さんの顔を立てて、でも中国様とも波風たてちゃダメ、というエセリアリズムが登場するからです。
なんせ財界が先頭切って大の中国好きで、トヨタ、パナソニックと日本を支える大企業が率先して中国に入れあげているのですから処置なしです。
ですから、財界は最大の影響力を行使して、次期首相に中国融和派を据えたいと望んでいるです。
安倍氏も2期めの時に、中国に楯突いたら支持しないぞ、という踏み絵を踏まさそうになった、と青山氏がどこかで言っていましたね。

しかしそれは財界の話。国民の利益そのものではありません。
国家の重要選択を、一部の政界財界から一般国民も共に議論できる場に引き戻さねば、結局、岸田氏のような八方美人外交しかできない人がなることで決まりです。あの人は平時ならともかく、今はねぇ。
あるいは、角栄を師と仰ぐあの三白眼が勝利してしまうことでしょう。
彼は今回の習訪日についても「国として呼んだのだから訪日推進」ということを言っていました。
あの時、訪日を断行していれば、米国との同盟関係は決定的に崩壊し、その修復にどれだけの政治的対価を支払わねばならなかったことか。
判って言っているなら危険。分からないで言っているならただのバカ。

今、大事なことは、候補者の政策各論ではありません。
この国家選択を国民と共に議論できるタイプかどうか、ということです。
しょせんといってはナンですが、女系天皇問題は秋篠宮殿下と親王殿下がおられるのですから、今すぐに結論を決めてイエスノーを問う必要はありません。
河野氏が、この後継総理が取り沙汰されているこの時期に黙っていればいいものを、わざわざこのデリケートな問題をだした「蛮勇」を、私は好ましく思っています。
戦術的には味方にせねばならない保守層の反発を招いたのはだとしても、そのよう議論も恐れない人だと判ったのは収穫でした。 

石破氏はこんな得にもならないことにはぜったいに沈黙を通すはずです。
加計問題でも、獣医学部増設を困難にした石壊4条件を作ったのは彼であるにもかかわらず、一貫して沈黙し、メディア受けするアベ批判をくりかえしていましたっけね。
あるいは集団的自衛権の部分解除の時には、常日頃安保法制で自民一詳しいのはオレと吹聴していたにもかかわらず、防衛大臣就任を拒否し続けたくせに、影でメディア受けする「国民の理解が必要だ」みたいなアベ批判を漏らすという作法の悪さです。
しょせんコワイのは顔だけ。泥を被りたくない小心者なのです。
この人の批判はまとめてやります。こういう小出しにしていると、私のほうがイライラします(笑)。

政治的クローンを求めてはいけません。
なにからなにまで一緒の必要はないのです。
なにが今の政策選択の軽重なのかをしっかり押えた上で、そのことで支持できるかどうかを決めるべきなのです。
今、日本が突きつけられているのは、対中国問題ですか、それとも女系天皇問題ですか。
私は女系天皇論は、国柄の問題でそう簡単に結論を出すべきではないと考えています。
ゆっくり議論を深めて行けばいい。女系天皇肯定だと脊椎反射することはありません。
まだ時間的余裕があります。秋篠宮殿下とその親王殿下がおられるじゃないですか。

今、直ちに選択を求められているのは、国内問題ではなく、共産中国をめぐる国際戦略の変更です。
米国が主導する対中包囲網に参加するのか否か、角栄以降作られてきた中国宥和政策を根本的に修正できるかどうかです。

問題に軽重をつけましょう。
そしてオープンな議論の場に候補者を引っ張り込みましょう。

 

2020年8月27日 (木)

ごまめの歯ぎしり

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もう少しおとといからの流れでお話していきたいと思います。
といっても正直に言って、私は政局議論がそうとうに苦手です。
なんというのかなぁ、ドコ派の誰それが、誰とつるんで、対するナニ派の誰が誰を落とすためにどうのこうの・・・、アアうっとおしい。湿度が高い。
たまらん、勝手にやっていろというかんじです。

なんなのかね、と自分でも思うんですが、ひとつには私がムラ社会に入ってきたまれ人だったからかもしれません。
10年ほど前には、いわれのない立ち退き運動さえされたことがあって、その時は集落で署名運動までされました。
いくつかの地場産業を興して村に貢献しているというささやかな自負があっただけに、つらかったですね。
もうとうにそのしこりは氷解していますし、いまになって思えば私にも落ち度がありました。
しかし以来私は村と一線を画すようになったのは、確かかもしれません。寂しいことです。

日本社会はよくムラ社会だといわれるようですが、私は一面的にそうだとも思いませんが、こと政治となるとあいもかわらぬいわゆる「永田町の論理」という政治力学で動いているようで。
日本においては、その政治家の政治理念や、日本という国家がどのような国際情勢に直面しており、それとどう対峙していくのか、その能力があるのか、気概があるのか、、求められる資質はいったいなんなのか、というごく当たり前の論点で指導者が選ばれないというのが、政治の通の意見です。

さて先日、NHKの『渡辺恒雄 戦争と政治〜戦後日本の自画像〜』を観ていました。
この共産党東大細胞出身のブン屋と、中曽根というエリート臭紛々たる男との仲、さらには田中角栄とのいきさつを眺めていると、なんだかなという感じで尻がこそばゆくなっちゃいましたね。
だって要はすべてが人間関係で決定されてしまうのですよ。誰それは誰それと親しい、誰と酒を飲んだ、メシを食った、ゴルフをした、そんなパーソナルな人間関係の濃淡で一国の政治が決まっていくのですから辟易します。

このNHKの番組でも、中曽根と角栄氏が、互いにまったく異なった背景を持ち、方や東京帝国大学法学部卒内務省、戦時中は海軍主計士官というエリート街道ひた走り、方や生家は貧しく高等小学校卒で、土建屋をしながら富を蓄えといった、ご承知の今様太閤記の主人公。
どう見ても対極で、ソリが合うはずがありません。はっきり言って共に大嫌い。
しかしあることで中曽根が角栄の力が必要となり、中曽根は角栄の自宅で土下座してみせたのだそうです。
角栄は、自分のような小学校卒に帝大出身のエリートが手をついたことに感涙し、ひしっと抱きあって、以後盟友となりましたとさ。めでたし、めでたし。
ああ、いやだ。そんな話は秀吉だけにしておけと思います。

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こういう話をいかにも美談めいて語るNHKが好かん。
青いことを言うようですが、こんな個人的な人脈で一国の政治が動かされたら、国民はどこに顔をだ出したらいいんでしょうね。
手の届かぬ派閥の領袖たちが、感涙にむせんで抱き合うたびに日本の政治が動いてしまうように見えて、実際に国を動かしているのは選挙の審判を受けない学歴エリートの官僚たちがだとすれば、国民の意志などハナから要らないじゃありませんか。

もちろん私は人間関係なんか無視しろ、無機的にやれ、機械的にその主張だけで判断しろ、なんて中学生のようなことを言っているわけではありません。
その政治家の人となりや人脈はいうまでもなく重要ですが、それだけではないでしょう。
さきほどの角栄は、1972年に日中国交正常化を実現しました。
中国と旧田中派とのズブズブの癒着関係を作り、自民党を親中派一色で染め上げ、外務省のメーンストリームのチャイナスクールを作り、財界に大の親中派の面々を扶植したきっかけを作ったのが、この角栄御大です。

当時、この日中友好、いや日中癒着について、国民はなにか一言でも相談に預かりましたか。
事後ですらはっきりとした説明を受けていませんし、国民的な議論ひとつなく、この日中癒着の流れは作られたのです。

この時代はいわゆる「三角大福」という痛みかかった大福餅のような時代でした。
三木武夫、角栄、大平正芳、福田赳夫、そして中曽根らが、佐藤栄作の後釜争いを演じていた時期です。
この時代、国民はまったく蚊帳の外でした。
国民とは、ただの外野席の観客。「政治評論家」が伝えるゴシップ記事を面白おかしく聞くだけの無力な存在でした。
残念ですが、そんな派閥の合従連衡、抗争という悪しき自民党政治の風土の中で日中癒着が始まったのだ、ということを肝に命じておきましょう。

今、二度目の日中関係の大再編期です。
もう二度とそんな轍は踏まない。踏ませない。

今日の「ごまめの歯ぎしり」というタイトルは、河野太郎氏のブログ名から頂戴しました。
彼となら、普通の国のあり方、そして行方についても自由な議論ができそうな予感がします。
河野さん、あんたここはおかしいよ、これはいいから支持するよ、みたいな国民と同じ目線に立った議論が彼となら成立しそうです。
それだけでも、角栄を師匠と仰いで、二階に媚びを売るあの三白眼野郎とはえらい違いです。

次期の指導者は自分たちの政治的クローンである必要はありません。意見に違いがあるのは当然です。ただ、国の「大戦略」だけは間違わないで欲しい。そしてそれを自由に議論できるような開かれた体質の持ち主であってほしいもんです。

 

 

 

2020年8月26日 (水)

「次の首相」の条件とは

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安倍氏がかくも長期間首相に就いていた理由は、なにより彼が卓抜な国際感覚をもっていたこと、経済政策は腰折れ気味ですが基本的に間違っていなかったこと、安全保障政策において集団的自衛権や特定秘密法など、今、日本が生き残るために必須の法整備をしたことなどでした。
コロナ対策においても、言いたいことはいくつかありますが、おおむね各国首脳陣の中では及第点をあげるべきでしょう。

安倍氏の美質は、権力欲がないことです。
それが弱さとして出ると第1次政権の時のように政権投げ出しという危うさとして現れかねないし、その反対に首相を退いた後にキングメーカーとして隠然と政界に君臨する姿など想像しにくいことです。
角栄や野中、あるいは小澤などの、どこまでいっても権力への妄執から逃れられない世代には考えられなかった脂っけのなさです。

禍福はあざなえる縄のごとしとはよく言ったもんで、この時期、それが悪く出つつあります。
安倍氏は多くの懸案をひとりで処理しようとしすぎました。
先に述べた彼の功績は、ほんの一端にすぎませんが、たとえば集団的自衛権容認ひとつとっても、ひとつの政権が総辞職覚悟で通すのがやっとというものでした。それを彼はいくつ通したんでしょうか。
彼が左翼メディアと野党から憎悪を一身に集めて、ファシスト呼ばわりまでされたのは、向こう傷みたいなもんです。
この上に70年間の憲法改正まで手が届かなかったとしても、当然ではありませんか。

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内閣総理大臣・安倍晋三インタビュー「失敗が私を育てた」|文藝春秋 ...

安倍氏は9条2項という核心部分を最初に手をふれず、自衛隊を憲法に書き込むだけとしました。
これだけでも自衛隊は正規軍として位置づけられ、1項の平和条項と重ねて読めば、自衛権を自衛隊が行使することが憲法上可能なのです。
いままでは自衛隊は憲法には自衛隊の姿はなかったのですから、もの足りないとはいえ飛躍的進化にはちがいありません。
もちろん護憲政党である公明との関係に束縛されてこうなった側面もありますが、ここまで与党陣営内部をまとめきっただけでもよしとせねばなりません。

この時期最も悪いのは、9条2項を神棚に祭り上げてしまって、これを理由にしてなにもやらないことです。
2項改正にいきなり手をつければ、公明は頑として従わなかったでしょうし、世論もついて来なかったはずです。
一度改憲に失敗すれば、その次は半永久的にないのです。
ですから、ここで2項を楯にして自衛隊加憲案に反対するのはやるやる詐欺にすぎません。

さてこんなにも懸案を抱え込むことになった理由は、はっきりしています。
彼を継ぐ指導力とカリスマ性を合わせ持つ政治家が不在だったからです。
4選を拒否した以上、安倍氏は「次の首相」の姿をはっきりさせるべき時期です。
これこそが安倍氏の首相としての最後の仕事だからです。

「次の首相」の条件は、この時代の潮流を正確に読むことです。
今の国際状況は、ひとつの世紀に幾度もない大変動期にあたっています。
米中は、仮にトランプ再選されようとされまいと直接対決の時代に突入しました。
それも今やただの冷戦では済まず、熱戦に突入する可能性すらささやかれています。

この時期に大戦略を間違えると、かての日本のように亡国の運命を辿る事になります。

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上図はエドワード・ルトワックが想定する「戦略の階層」を表しています。
ルトワックは「大戦略」(グランドストラテジー)を最上位にしていますが、奥山真司氏は世界観を最上位に位置づけていますが、基本的に同じです。
彼は「大戦略」が決定的に重要で、その国の運命を決定づけるとまで言い切っています。その典型的な例が、大戦前のドイツと日本です。
ドイツは優秀な軍事指揮官と装備を持ち、多くの戦闘で勝利しましたが、紺本的な大戦略を誤ったために敗北に追い込まれました。
それは世界最強の米国とロシアを二正面で敵に回してしまったからです。
このように大戦略で誤ると、戦術的な勝利は無意味になってしまいます。
一方日本の場合、米国と敵対するドイツと同盟を結ぶという致命的な間違いを犯してしまったために、国を誤ったのです。
「大戦略」とは大きな意味での「外交」、あるいは安全保障を意味します。
ここでいったん間違った方向に国を導くと、とりかえしがつきません。
戦後、自民党がいかに腐敗した金権政党になろうと、なんとか日本の与党でいられたのは、この「大戦略」を誤たず米国を盟主とする自由主義陣営に与していたためです。
民主党政権は、中国と通貨と安全保障を共有する東アジア共同体を掲げて、この「大戦略」の根幹を揺るがしたために短命に終わりました。
現代もまた、「大戦略」の選択肢は狭く、自民党の伝統芸である八方美人外交はまったく通用しないばかりか、今や鈍感にそんなことをやっていれば自由主義陣営から排除されかねない時期に達しているという厳しい認識が必要です。
したがって、このことに関しては白黒の二択しか存在しません。
日本人好みの中庸はないのです。
いや、オレなら仲介できるなどというのは、ムン閣下くらいにして下さい。
韓国は習を国賓で招くそうですが、今、日本がそれをやれば韓国と一緒に中国陣営に蹴り出されるだけのことです。

この時期にいまだ中国に秋波を送っているような政治家を首相にしてしまえば、日本は中国に与したと国際社会から、なかんずく米国からそのように認識されます。
日米同盟は形骸化し、東シナ海はもはや自衛隊単独では支えきれずに遠からず「中国の海」となるはずです。

「次の首相」として最も必要な資質は、中国に媚びる伝統的な自民党の体質から自由であることです。
驚くべきことに、この時期に至っても、自民党内部はこの厳しい情勢に鈍感です。
自民党は、米国国務省が嘆くように親米派は少数派で、大多数は親中派です。
彼らは古くはODA利権から始まる中国との欲得がらみの関係の中でぬくぬくと生きてきました。

彼ら親中派の集大成が習近平の国賓訪日だったわけで、これを認めてしまった安倍氏は厳しく批判されるべきです。
しかしコロナ禍の中で、外交部会に突き上げさせる形をとって訪日を事実上取り止めさせたのは慶賀の至りです。
にもかかわらず、いまだ平然と訪日を主張し続けたような政治家は、もはやその時点で首相の資格を喪失した考えるべきです。

派閥の力学で決定されかねない総理総裁ポストを、世界情勢の中において発想できる日本の例外的な政治家が安倍氏です。
そのような中で、彼は安倍氏は何人かの候補者をふるいにかけている真っ最中だと見るべきでしょう。
候補者は絞られつつあります。

 

 

2020年8月25日 (火)

どうしてこうも政局化させたいんだろう

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メディアや野党は、首相が慶応病院に一日行ったからといって大騒ぎしています。
前回の検査の結果を聞きに行ったに決まっているじゃないですか。
だいたいうるさいよ、160日以上ぶっ通しで首相の激務やらせているんだから、少しは気をつかえよ、といいたくもなります。
人は鋼鉄でできているわけじゃありませんから。

「安倍総理大臣は24日、先週17日に検査を受けた都内の大学病院を再び訪れました。秘書官は「1週間後に来るように先週言われており、前回の続きだ」としています。
安倍総理大臣は、24日午前、先週17日に日帰りで検査を受けた東京 新宿区にある慶応大学病院に入りました。
秘書官は「先週の受診時に、医師から1週間後に再び来るよう言われており、きょうの受診は前回の続きだ」としています。
安倍総理大臣は、病院に3時間半余り滞在し、午後1時半すぎに出ました」(NHK8月24日)

首相が慶応大学病院に入院、さぁ政局だと色めきたったようですが、この噂の発信源は世論調査で首相候補の一位につけているのが自慢の某大物政治家秘書だという、これまた噂ですがね。
ま、自民党総裁は世論調査で決まるんじゃありませんけどね。

この人はこんなことを言っています。

「自民党の石破元幹事長は、記者団に対し、「総理大臣は私人ではなく、休むのも仕事のうちではないか。『自分は大丈夫』と思っていても、医者の言うことを聞くことが大事だ。激務であればあるほど、アドレナリンが出て、疲れを忘れることもあるが、だんだん体力を奪われていくのであれば、国家にとっての損失だ」と述べました」(NHK前掲)

ありゃ、名前判っちゃった。(笑)
だいたい足を引っ張ることしかやらないでおいて、猫なで声で「休むのも仕事のうち」だときたもんだ。よー言うわ。
肝心な続きがあるでしょう。「休んだらオレにやらせろ」って。スケベ根性丸出しです。
私、この人物が大嫌いなので、とっておきの写真を貼っておきます。※差し替えました。

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ああ、政局話をしていると、どんどん低次元になってきますが、たまにですから今日のところはご勘弁のほどを。
首相が潰瘍性大腸炎なのは有名な話で、今後一週間に1回ていどの定期メンテが必要なのです。
それは一定期間続くでしょうが、ゲルには気の毒ですが、「24日辞任」なんていう政局を揺るがすほどのものにはならないはずです。

安倍氏は、むしろこういった「ちっとヤバイかも」という隙を見せて、首相後継者たちの動向を静かに観察しているのかもしれませんね。
いつのまにか首相後継一位にいたはずの岸田氏はフェードし、 売り出し中の河野さんはやる気ムンムンを隠そうともしなくなりました。
ゲルときたら性格の悪さ丸出しで、陰険に野党とつるんで政局化を狙っています。
あの人、党内で極小派閥なもんで、自力ではどうにもならず、常に野党勢力やメディアとつるんで動き回るという行動パターンを身につけてしまいました。
いまやかぎりなく党内野党。

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しかしメディアの期待も虚しく、安倍氏は第1次安倍政権の二の舞をする気はありません。
かつてそれを死ぬほど後悔して雌伏していた彼が、ここで体調を理由に政権を投げだす道理がないじゃないですか。
したがって、退陣はありません。
仮に一定期間入院の必要があったとしても、盟友の麻生副総理に代行をしてもらって、首相の座は譲らないでしょう。
政治評論家の有馬晴海氏はこんなことを言っています。

「安倍さんは、いつも苦言を呈している元幹事長の石破茂さんにはやらせたくないはずで、自分が元気なら、政調会長の岸田文雄さんにと思うでしょう。しかし、総選挙の顔として考えると、党内では、石破さんがいいという流れになるかもしれません。いずれにせよ、コロナの対応を次期首相にまかせて、1年以内に総選挙をやる可能性はあると思います」(JCASTニュース8月17日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/727972b714586bdd097b89fbcad735b57b0cf91a

私はこの政治評論家という職業は一種の「賤業」だと常日頃思っているのですが、ひどいね。
この人が流しているのは「政治評論」なんてもんじゃなくて、ただの永田町の評判を拡散しているだけです。
この連中は永田町の寄生虫なのです。
どこかで宮崎哲也氏が言っていましたが、経済評論には一定の理論に基づいた視座が必要ですが、政治評論家には理念も理論もなくてよいのです。
必要なのは、政治家とその秘書に食いこむ厚かましさだけ。
取材と称して議員会館をふらつき、議員秘書からカネになりそうな噂を聞きつけて、別の議員に取り入り、できたらメディアに乗っけてもらってゼニになれば万々歳。
こんな噂拡散業が「職業としての政治評論家」です。

それにしても、「選挙の顔」がゲルですって!(爆笑)
あの陰気臭い三白眼がですか。いいですよ、やってごらんなさい、青年層を中心とする保守支持層が自民を見捨ててごっそり脱落し、無党派層になりますから。
結果、「石破政権」は最初の試練である総選挙で過半数を割り込み、あえなく短命政権の道を辿ることでしょう。
このような人物をハーメルンの笛吹男にしたいなら、自民もしょせんその程度の党だったということです。
今はコロナ禍の真っ最中であり、米中戦争前夜であり、かつ米国大統領選で世界の流れが変わるかもしれない時です。
そんな危うい時期に、日本の政治を流動化させたいのなら、どうぞついていくがいい。

 

 

2020年8月24日 (月)

中国の「国境」発想

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中国という国には、実は近代的「国境」という概念自体が存在しないことは何回か書いてきたと思います。
ロシアも似たような性格を持った国で、モスクワ公国が戦争をしながら膨張していく過程が「国境」ですから、その時代によって国境は違っています。

ばかばかしいくらいロシアが膨張し続けたことがわかるでしょう。そのうえ冷戦終了まではこれに旧東欧圏がついていたのですから、呆れたもんです。

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ロシア帝国の拡大の歴史 : 多言語翻訳 Samurai Global ~多言語のススメ

一方中国はロシアと違って、過去の中華帝国の通商関係を「領土」と考えています。
たとえば、中国の尖閣領有権主張の根拠は、琉球王国への渡航の途中に航海者が「見た」ということにすぎません。
石井望(長崎純心大学准教授)は、尖閣諸島のひとつ大正島について、中国・明から1561年に琉球王朝へ渡航した使節である郭汝霖(かくじょりん)が、明国皇帝に提出した上奏文にこうあることを発見しています。

「渉 琉球境 界地名赤嶼」
(琉球の領域に入った。分界地は赤嶼(せきしょう・大正島)と呼ばれる」

これは福州から那覇への航路上に「赤嶼」という島があって、ここから先は琉球王国の領海となるという意味で石井はこれで中国側の根拠が崩れたとしています。

「石井准教授によると「渉る」は入る、「界地」は境界の意味で、「分析すると、赤嶼そのものが琉球人の命名した境界で、明の皇帝の使節団がそれを正式に認めていたことになる」と指摘している」(産経2012年7月17日)

ところがこの石井の論説に対しての中国側の反論がなかなか傑作です。

「航路において復権側の東限に言及しないので、福建から赤嶼まではすべて中国領だ」(高洪 中国社会科学院日本研究所2012年9月)

なぁーに言ってんだか。そもそも国際法などのない前近代のことのうえに、それも使節が大正島を琉球王国の人間に教えられて「見た」だけの話です。
それを大正島から福建まで全部中華帝国の領海だとはよく言ったもんです。この欲ボケめ。

使節が乗って来たのは琉球王国の船で、当然水先案内人は琉球王国の人間が努めています。
そしてたぶん大正島を指して、「ここからが琉球だ」とでも教えたのでしょうね。
つまり、明国使節は尖閣諸島の一部を「見た」にすぎません。

尖閣が琉球王国のものだと、明国使節に教えたことになります。
当時から尖閣は近代国際法の無主先占有ではなく、琉球王国の西限の島であるという認識が当時から存在していて、明の使節も「ああ、そうですか」としか思わなかったのです。
つまり尖閣は無主地先占有ではないということです。
これはどの国にも属していない、無主の土地を自国領に編入する場合に使う国際法上の概念ですが、これには相当しないのです。

にもかかわらず、中国は明国使節が通商上通過した島を「見た」というだけで、自国に領有権があるとしているんですから、たまったもんじゃありません。
実際に、当時の明国が尖閣を領土として認識していたわけではなく、明王朝の公式日誌『皇明実録』において、明の地方長官が日本の使者に対して、「明の支配する海域が尖閣諸島より中国側にある台湾の馬祖列島までだ」とし、「その外側の海は自由に航行できる」と明言した記録も残されています。

さて、中国の領土意識の一端がお判りになってきたでしょうか。
彼らには近代的な国際法が考える「国境」もなければ「領土」もありません。
清朝最盛期の朝貢国までが、中国が考える「領土」です。

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清朝支配の拡大 | 世界の歴史まっぷ

上図の黄色部分が直轄領、ピンクが藩部、そして緑色が朝貢国です。
共産中国は、すでに黄色部分の直轄領は言うに及ばず、ピンクの藩部まで領土化し、今やその先の朝貢国部分へと爪を伸ばしているのがわかります。

先ほどの琉球への使節が尖閣の一部を「見た」から領土だという意識の下には、あからさまに琉球王国は朝貢国家なんだから、とうぜんのこととして中華帝国の一部なのだ、という支配意識が眠っているのです。

すると支配意識の裏返しで、琉球側にも隷従意識が生まれました。日本が統治下に置こうとすると、清の黄龍旗船の救援を熱望したり、琉球独立学会とやらも北京で集会をするという、身も蓋ない従属意識があったわけてす。

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清の黄龍旗

沖縄タイムスは、コラム「大弦小弦」(2005年5月16日)でこんなことを恥ずかしげもなく書いています。 

「黄色軍艦がやってくる…。船体に黄色の龍の文様を描き、黄龍旗を掲げる清国の南洋艦隊は黄色軍艦と呼ばれたという。知人とこの話をしていたら、黄色軍艦が沖縄を侵略すると、勘違いして話がややこしくなった。
実際は逆で、明治の琉球人にとって清国軍艦は援軍だった。武力で琉球国を併合した明治政府に対し、琉球の首脳らは清へ使者を送って救援を求めている。そして、沖縄側はその黄色軍艦を待ちわびたのだった」
 

思わずなんのための「援軍」、あなたは誰、と問いたくなるような、中国への崇拝意識と裏返しの隷属意識そのまんまです。
※関連記事『日本の国境線画定と琉球王国』http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-a69e.html

では、海洋について中国はどう考えてきたかといえば、中国の歴代王朝が交易していた航路が、すなわち「領海」であり、そのなかの島々は「領土」なのです。
あくまでもここで中国が言っているのは中華帝国の交易ルートでしかなく、そこを漁業などで実効支配していたかとなると違っていました。
海禁政策もあって、中国の近海用ジャンク船では沿海漁業に出るのが精一杯で、とてもじゃないが尖閣や南シナ海には出漁できなかったからです。

しかし、中華帝国は自らの威信にかけて、東シナ海や東南アジア方面、さらにはインド洋にまで交易ネットワークを拡げ、鄭和の遠征においてはアフリカ大陸にまでそれを広げようとしました。
そして交易ネットを持った国に対しては朝貢関係を結んで、今流にいえば一種の安全保障条約を結んだと考えられています。
これは共産中国のように政治と経済を一体のものとして捉える国にとっては、大変に便利な枠組みでした。

世界でもっともグローバリズムの恩恵を受けたのは中国ですが、この原型は既に明・清王朝時代からあったのです。
驚いたことには、彼らは明・清王朝時代から少しも進歩していないのです。
彼らは本来は経済的交易ネットでしかないものを、政治的従属関係に置き換えてしまいます。
中国には、自由主義社会の人間が考える平等で開かれた交易関係はなく、あるのは自分の国の規格に従うのか、従わないのか、です。
一帯一路はただの交易ネットではなく、蘇った中華帝国の世界帝国の版図なのです。

それが中華帝国の領土・領海意識だということを忘れないようにしましょう。

 

 

2020年8月23日 (日)

日曜写真館 どこか遠くに

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コロナで行けないとなると、猛然と旅をしたくなります。

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昼下がりは、メコン河の渡し場でボーっと茶色の川面を見ていたい。

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実によく働くサイゴンの女性。

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庶民のつましい夢。

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から揚げ買って、どこかの木陰でビールでも飲もう。

2020年8月22日 (土)

またまた韓国がGSOMIA廃棄だって

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私は韓国をテーマにするのがそうとうに嫌いです。やる場合も、しゃーないという気分で渋々書いているのがありありです。
あんな支離滅裂なクラゲのような国を相手に、口角泡を飛ばしてもしかたがありません。
中国のような憎体の顔した異形の国のほうがよほど気が楽というものです。
馬鹿は伝染するから、触らない、これが私の信条です。

さて今回もまたまたお題はGSOMIAだそうで、いったい何度こんな戦略的痴呆症みたいなことを持ち出すのでしょうか。
同時期にわが国のEEZで、向こうの海洋警察が海保に警告したようですが、なにトチ狂っているのか。
竹島水域ならまだしも、あさっての海域で何寝言言っているのか、ホント理解を超越する国です。

GSOMIAはいつでも終わらせることができる、なんて台詞を言っているようですが、こんな件は去年終わっているし、そもそも輸出管理問題とGSOMIAはまったく次元の違う話で、貿易問題に安全保障問題のカードに切ったこと自体がおかしかったのです(ああ、言うだけ野暮か)。

韓国はこんなことをのたまうておられるようです。

「政府が強制徴用問題を解決するために、「日本政府も積極的で誠意ある態度を見せなければならない」と促した。
イ・ジェウン外交部副報道官は20日の定例ブリーフィングで、「強制徴用問題と関連し、私たちは、今のように、外交チャンネルを通じた解決の努力を続けていくだろう」と、このように述べた。
この副報道官は、日韓の軍事情報保護協定延長期限満了を控え、政府側の対応があるかという質問に、「私たちの政府は、いつでもGSOMIAを終了する権利を持っている」と強調した。
続いて「日本側が輸出規制の理由で提示した条件を私達がすべて満たさしたにもかかわらず、日本側はいまだに我々への輸出規制措置を維持し、非協力的な態度を固守している」とし「輸出規制の問題が解決されないのは、事実上、日本政府輸出規制の強制徴用問題を連携しているからだが、別個に扱われるべきだ」と指摘した。
イ副報道官は「韓国政府は輸出当局者間の協議再開を介して日本側が一日も早く、輸出規制措置を原状復帰させることを続けて促しながら、GSOMIA終了通知の効力停止状態を忍耐を持って維持中」と付け加えた」(楽韓様訳 外交部「日、強制徴用問題の解決に誠意ある態度示さなければ」(ニュース1・朝鮮語) )

韓国が内部分裂しかかっているのは、この外交部のこの「いつでもGSOMIAを終了する権利を持っている」という言葉からもわかります。
おいおい、外交部は自分の国の通商部局がやっていることをチャブ台返ししたいようです。
いいですか、韓国の通商部局はそれなりに日本が出した輸出管理許可に対して、テクノクラートらしくそれなりの努力を積んできているのです。
日本が言っているのは大変に常識的な貿易ルールの遵守にすぎません。
特に韓国いじめで言っているわけではないのは、日本政府が世界どこの国にも同じことを要請しているのでわかりそうなものです。
フッ化水素などを禁輸するなんて一言も言っていません。ただ大量破壊兵器に転用するような国に転売するなよ、それができないように法的な整備をして、監視体制強化のために人員を増やながら関係部局間でしっかりと対話を継続していこうね、というていどのことで、あまりに常識的なんで拍子抜けするくらいです。

それをあろうことか、日米韓三カ国の安全保障体制の根幹にあるGSOMIAまで廃棄するといいだしたから、おかしくなったんです。
いちばん怒ったのは、この間この三カ国の枠組みをつくることに努力してきた米国でした。
米国の怒り方はハンパでなく、外交的に「失望」という言葉を連発したほどです。
このへんで米国は、いつ韓国が米韓同盟を廃棄して北と統合に走ってもおかしくはない、ならばいかにしてデカップリング(分離)していくのか、と考えたはずです。

ではこのGSOMIA (ジーソミアGeneral Security of Military Information Agreement」)とはなんでしょうかそこから押えておきます。
これは和名を「日韓軍事情報包括保護協定」という名のとおり、韓国と日本が結んでいる秘密情報をやりとりする場合のルールブックのことです。
ここには許可なく第三国に教えないこと、情報の保管方法、アクセス権限者などが明記されています。

・受領国は提供国の承認なしに、提供される秘密軍事情報を第三国に提供しない。
・受領国は提供された情報に対して、提供国と同等の保護措置をとる。
・受領国は提供国の承認なしに、提供された情報を本来の目的以外に使用しない。
・受領国は提供された情報に含まれる特許権、著作権、企業秘密等の私権を尊重する。
・提供される情報には、文書、口頭で伝達される情報、映像等あらゆるものが含まれる。
・秘密情報の伝達は政府間のチャンネルで行う。
・契約企業とその施設も、秘密軍事情報取扱資格(セキュリティクリアランス)を取得しなければならない。
・提供国は受領国の秘密保護措置を査察するため、受領国の施設を定期的に訪問できる。
(福好昌治 『軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の比較分析』)
https://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200711_682/068207.pdf

ちなみち、左翼の皆さんが「芝居もできなくなる。軍靴の音が聞える。徴兵制がやってくる」と大騒ぎした特定秘密法は、このGSOMIAに対応した日本の法整備です。
GSOMIAの正式名称に日韓が被っていないのでわかるように、特に日韓だけで締結したのではなく、同様のものを日本は米英仏やNATOと結んでいます。
これにより、日本は外国からの大量破壊兵器情報やテロ情報を得ることが可能になりました。
特定秘密法以前には、外国は情報漏れを起こす心配のあった日本とGSOMIAを結びませんでした。

そりゃそうでしょう。軍事機密に対して守秘義務法がないような国に対して誰が秘密情報を渡しますか。
ですから 唯一の情報ルートは米国に限られていましたが、それすら米国もこのGSOMIAに制限されて、ごく一部しか分け与えてもらえませんでした。
わが国は世界有数の情報過疎地に追いやられていたわけで、大量破壊兵器やテロリスト情報のごく一部しか知らされてこなかったわけです。

脱線しますが、今、ファイブアイズに入るの入らないのという議論がありますが、入るためのふたつの条件は、特定秘密法とスパイ防止法です。
前者はやっとクリアしたものの、後者はまだですから、現況で日本がファイブアイズに加入できるとは思えません。

それはさておき、防衛関係者は特定秘密法ができて情報が今まで喉から手がでるほど欲しかった情報が雪崩のようにドっと入ってきた、と述懐していますが、それは米国やNATO、オージー・NZといった国々とGSOMIAを結べるようになったからだったのです。

ここでよく誤解となっているのはGSOMIAが「日韓軍事情報」と名乗っているために、日本が韓国に対してなんでもかんでも秘密防衛情報を教えてしまうと勘違いされますが、そういうわけではありません。
そんなアブナイものを、常に北への情報漏洩疑惑がつきまとっている韓国に教えるわけはありません。
教えていいこと悪いことは提供国が選択できますし、装備内容や部隊編成などの情報は教えるわけはありませんからご安心を。

あくまでも日米韓の間で共有化すべき情報、たとえば共通の敵である(だよな、だったよな)北の弾道ミサイル情報や、軍隊の動きなどに限られます。
そして共有化する以上、そのセキュリティをしっかりしなさいね、というためにできたのが日韓GSOMIAです。

さてその日韓GSOMIAを廃棄するというんですから、米国もさすがにブチキレました。
おい韓国、お前どっちを向いて守っているんだ、お前の国の脅威は北の弾道ミサイルじゃなかったのかと叫びたかったでしょうね。
北の核武装に備えるためには、米韓日の三カ国で円滑に脅威に対応するためには情報インフラが必要だから、米国は日本に対してならぬ堪忍で慰安婦問題で頭を無理筋に下げさせて日韓合意にこぎつけたのです。
それをムンは一瞬で破壊してして、慰安婦合意は廃棄するし、徴用工訴訟で日韓請求権協定は紙くずにしようと企むし、さらには米韓同盟も廃棄し、北と熱烈な抱擁をしたいんだ、と仰せです。

Cccp190826201909

ムンさん、一回精神カウンセラーにでもみてもらったほうがいいですよ。
このところ元々おかしかったあなたは、今や一枚突き抜けて宇宙人化しかけています。
もはや言動が人間界のものとは思えません。あなたに匹敵するのは、うちの国の宇宙鳩くらいなものです。
一日も早く、金剛山にでも転地療養されたほうがいい。
そして北にでも中国にでも吸い取られちゃいなさい。そのほう心の平和が得られるんでしょうからね。

そういえば、去年こんなことを大統領府は言っていました。

「GSOMIA終了は国益に沿った決定 米との同盟より優先=韓国大統領府
【ソウル聯合ニュース】韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了を決定したことに対し、米高官らが相次いで懸念を表明するなど、韓米同盟への影響を危惧する声が上がっていることについて、青瓦台(大統領府)の関係者は29日、米国は米国の立場と見方により事案をみているが、韓国も同様であり、各国は自国の利益のために最善を尽くす」とし、「(重要な)同盟関係であっても、韓国の国益のためには、何も優先することはできない」との見解を示した」(聯合2019年8月29日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190829004000882

「大統領府の関係者」というくらいですから、政権中枢でしょうが、大丈夫ですか、意味分かってしゃべっていますか、熱ないですか。
これを直訳すると米韓同盟なんか廃棄してもかまわないという意味です。
だって韓国はGSOMIAを既に「国益に沿って」廃棄してしまいましたが、そっちのほうが米韓同盟より重いっていうんですから、米韓安保なんかもっと気楽に廃棄してしまえ、ってなもんです。

つまりは近々に米韓同盟もGSOMIAと同じ運命を辿りますぜ、ということを青瓦台が言ったとして解釈されるでしょう。
誰に?
もちろん米国に、です。

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そもそも論でいえば、韓国の今の立ち位置に無理があるのです。
心はとっくに北の楽園とひとつになっていますからどんなに罵倒され、コケにされ、共同事務所をチュドーンと爆破されても、永田町風にいえば「踏まれてもついていきます、下駄の雪」状態です。
いや、本来なら北共々、宗主国の中国様の属国になるのもまんざらじゃないなと思っているんでしょうから、米韓同盟なんぞの中で縛られること自体がストレスなのです。
さぁ、米韓同盟廃棄して、思う存分北の同胞とハニーライフを楽しもうではありませんか。
北の核に韓国の戦略原潜をドッキングして核大国になろうではありませんか。
それがダメなら、中国の核の傘に入ればいいだけのこと。

こちらにとっても、ルトワックがアジアでフィリピンと韓国は信じないほうがいいぞ、みたいなことをどこかで言っていましたが、なにかすぐに仮想敵国扱いしろというわけじゃなく、むしろなにもしないことに徹することです。
遅かれ早かれ、38度線は玄界灘・対馬まで降りてくる「だけ」のことですから。
その時期に違いがでるだけのことで、韓国は「元の鞘」に収まりつつあります。

そのほうがよほどこちらにとってもスッキリするってもんです、お互いに。
バイバイ、韓国。

 

2020年8月21日 (金)

東シナ海で日米が演習

      008_2

日米同盟が東シナ海有事に備えて正常に機能しています。
海自は、在日米海軍の空母ロナルドレーガンと東シナ海で海上訓練をおこないました。
私はかねがね、この尖閣海域周辺での日米共同訓練を望んでいましたが、思いの外早く実現したようで、慶祝の至りです。
防衛省は「特定の地にを対象にしたものではない」なんて空とぼけていますが、いうまでもありませんが、これは16日からの中国の解禁に合わせて公船や場合によっては中国海軍が侵入することに対して釘を刺したのです。

「自衛隊と米軍は15~18日にかけて、東シナ海などで共同訓練を相次いで実施した。沖縄県の尖閣諸島周辺で中国政府が設定した禁漁期が16日に明けたのに合わせ、挑発行為を行わないよう中国をけん制する狙いがあるとの見方が出ている。
航空自衛隊は18日、米空軍、海軍、海兵隊と大規模な共同訓練を行った。空自からはF15戦闘機など20機、米側からはB1戦略爆撃機、最新鋭ステルス戦闘機「F35B」や空中警戒管制機(AWACS)など19機が参加。東シナ海上空では、防空戦闘訓練を実施した。
 海上自衛隊も15~17日、護衛艦「すずつき」が東シナ海で、米海軍のミサイル駆逐艦「マスティン」と戦術訓練を実施した。15~18日には沖縄県南方海域で、護衛艦「いかづち」が空母「ロナルド・レーガン」など米海軍の艦艇と洋上補給などの訓練を行った。
 防衛省・自衛隊は、いずれの訓練も「特定の国を対象としたものではない」と説明しているが、日米両政府は、中国が今年に入り、尖閣諸島の日本領海への侵入を繰り返すなど、現状変更の試みを一層強化していることに懸念を強めている。
 ケビン・シュナイダー在日米軍司令官は7月29日の記者会見で、中国が禁漁明けに合わせて大量の漁船を尖閣周辺に派遣し、同時に中国海軍も展開させる可能性に言及し、警戒を強める方針を示していた」
(2020年8月19日 読売)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200819-OYT1T50272/

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防衛省 海上自衛隊 on Twitter: "8月15日〜17日の間、護衛艦「すずつき ...

ご丁寧にも、まったく同時期に空でも日米が共同訓練をしています。

「空自は18日、日本海や東シナ海、沖縄周辺空域で同日、米軍との共同訓練を実施したと発表した。空自のF15戦闘機16機とF2戦闘機4機、米空軍のB1B爆撃機3機やF15戦闘機10機、米海兵隊のF35戦闘機3機などが参加した。
さらに、海上自衛隊も19日、15~18日に沖縄南方海空域で、米軍との共同訓練を実施したと発表した。海自からは護衛艦「いかづち」、米海軍からは原子力空母「ロナルド・レーガン」ら艦艇数隻が参加したという。 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起こしながら、中国は東・南シナ海での軍事的覇権拡大を強めている」
(ZAKZAK 8月20)

空自だけで20機、ほとんど一個飛行隊のボリュームで、しかも対艦攻撃能力を持つF2まで参加させていますから、どのような想定をしていたのかわかってきますね。
米空軍の戦略爆撃機のB1Bは核兵器搭載能力こそはずしてありますが、レーダー発見能力が極めて難しく、そして超音速により低空飛行で沿岸部はもちろん中国奥地まで一気に飛行することが可能です。
これが東シナ海に登場するということは、沿岸部に海軍の根拠地を持つ中国海軍にとって悪夢のはずです。

また、台湾海峡を米海軍イージス艦マスティンが中間線より中国側を堂々と航行しました。

「米軍艦艇が台湾海峡を通過…中間線より中国側航行か、中国海軍が追尾
【台北=杉山祐之】台湾の国防部(国防省)は19日、米軍艦艇が台湾海峡を北から南に通過したと発表した。米太平洋艦隊のフェイスブックは、ミサイル駆逐艦マスティンが18日に台湾海峡を航行したとしている。台湾紙・中国時報などによると、マスティンは海峡の中間線より中国側を航行し、中国海軍の駆逐艦が追尾した。台湾軍艦艇も状況を監視した。国防部が発表した米艦の海峡通過は6月以来で、今年8回目となる。
(8月19日 読売)
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3a37b3576eb79817b87f0c27e3fc5fcd84cd53d

これは中国海軍の根本戦略であるA2/AD(接近阻止・領域拒否に対して、そのようなものは認めない、日常的に無効化させていく、とする米国の答えです。

接近阻止は沖縄の嘉手納基地に配備された米空軍の戦闘機が台湾有事に出動することを防止することを念頭に置いたものなのですが、領域拒否はより遠方から接近する空母機動群(1隻以上の空母を中心とした戦闘部隊)が進出することを拒否するためのものといえます。

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上図は中国の接近阻止/領域拒否で影響を受ける地域を図上で示したものですが、中国自身が作ったものです
これによれば、 第一列島線(内側の線)は九州南端から南西諸島、台湾、フィリピンに沿って展開されており、東シナ海、南シナ海を中国の防衛圏としています。ここがいわば中国にとって内堀に当たります。
一方、第二列島線(外側の線)は東京湾を起点にマリアナ諸島、グアム、ミクロネシア、パラオに沿って展開されており、フィリピン海を中国の防衛圏として組み入れる構想であることが分かります。

中国にとって見れば、この内堀から内側の海域はすべて中国が完全に覇権を確立したいと考えています。
怖がるのは勝手ですが、第2列島線の発起点はなんと東京湾で、伊豆七島沿いに延びています(苦笑)。
他国の首都の湾を自分の外堀の始まりにする非常識さが、いかにもこの国です。

ですから内堀、つまり第1列島線に至っては、これまた鹿児島沖が発起点で、南西諸島沿いから東シナ海へとつながり台湾へと至っています。
この水域を「中国の内海」にするのが、かの国の目標のようです。
しかも中国は大陸国家らしく、地面を支配しないと落ち着かないという精神的バイアスがあります。
領土化するか属国化するまで、安心できないようですから困るのです。

たとえば南シナ海に人工島を作るなんて、いかにも大陸の中だけで生きてきた民族らしい発想です。
そんなものは、国際海洋法違反に決まっていますから、国際社会から批判されて孤立するだけのことです。
海洋国家ならもっとスマートに国際秩序を守り、互いに自由に行き来できる海として互いに尊重すればいいだけのことです。
それを岩礁の上に島作っちゃうなんて、ヤボ丸出し。

私たちは公海としてすべての国は自由に航行が可能で、仮に領海であっても無害通航権をもっていると考えています。
ですから、今この航行の自由をまもり、開かれた太平洋を守ろうとする自由主義陣営と、覇権を確立したい中国でこの海域でつばぜり合いをしているわけです。

日本はいち早くこの海域に対艦ミサイル部隊を展開する計画をたて、それに米軍も同様の計画を立てています。
いわば自由主義版のA2/ADです。

Japanselfdefenceforce

「これまで沖縄本島以南には、宮古島と久米島に航空自衛隊のレーダー基地がある程度だった。防衛省は、この空白地帯に警備部隊や監視部隊を編成することで、離島に侵攻された場合の初動態勢を整えると説明している。
 しかし、配備するのは警備や監視部隊だけではない。奄美大島、宮古島、石垣島には対空・対艦ミサイル部隊も展開する。日本の防衛政策を南方重視に変えた民主党政権で、党の安全保障調査会事務局長として防衛大綱策定に関わった長島昭久衆院議員は「A2ADというきっちりとした考え方ではなかったが、南西方面に拠点を造り、ミサイルを展開して(相手が接近できないようにする)拒否力をつけようとした」と振り返る」(ロイター2015年12月16日)

ちなみに今回台湾海峡を通過した米海軍DDG89マスティンは横須賀を母港とするイージス艦で、横須賀のオープンベースの時に内部公開されたこともあります。

私も見ました。かなりよれていましたが、実際に乗ると大きい。Dsc00803

 

  横須賀軍港のマスティン

この間、米海軍は日常行動のようにしてわざわざ台湾海峡ルートを通過して、中国海軍の鼻先を通過して行き来しています。

「米海軍の駆逐艦は先月も2回にわたり台湾海峡を通過している。異例の頻度での海峡通過は、中国の海軍や空軍が今年に入って台湾周辺で軍事演習や示威行為を繰り返し、台湾に圧力をかけているのに対抗する狙いがある。
(2020年5月14日 産経ビズ )

彼らが勝手に「中国の海」だと考えている台湾海峡を米海軍に堂々と通過されて、メンツ丸潰れになった中国海軍はよせばいいのにこれを追尾したようです。
こんなことをすると偶発的戦闘に発展する可能性があるので、お止めなさいと忠告しておきます。

「米軍艦艇が台湾海峡を通過…中間線より中国側航行か、中国海軍が追尾
【台北=杉山祐之】台湾の国防部(国防省)は19日、米軍艦艇が台湾海峡を北から南に通過したと発表した。米太平洋艦隊のフェイスブックは、ミサイル駆逐艦マスティンが18日に台湾海峡を航行したとしている。台湾紙・中国時報などによると、マスティンは海峡の中間線より中国側を航行し、中国海軍の駆逐艦が追尾した。台湾軍艦艇も状況を監視した。国防部が発表した米艦の海峡通過は6月以来で、今年8回目となる」
(8月19日読売)
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3a37b3576eb79817b87f0c27e3fc5fcd84cd53d

そして東シナ海とつながっている南シナ海では、日米に豪を加えた三カ国共同訓練が実施されました。

「山村浩海上幕僚長は21日の定例記者会見で、海上自衛隊が19日から南シナ海などで米国、オーストラリア両海軍と共同訓練を実施していると発表した。新型コロナウイルス感染が拡大した後、3カ国による訓練は初めて。南シナ海での領有権を主張する中国をけん制する狙いがあるとみられる。
 海自によると、訓練は南シナ海、フィリピン東方沖からグアム周辺に至る海空域で23日まで実施。海自護衛艦「てるづき」のほか、米海軍の空母「ロナルド・レーガン」、豪海軍の強襲揚陸艦「キャンベラ」など計9隻と航空機が参加している。対潜水艦、対航空機訓練などをしながら航行中だという。
山村海幕長は「日米豪の緊密な関係をアピールできる。『自由で開かれたインド太平洋』というビジョンを踏まえ、米海軍をはじめ各国との共同訓練を追求したい」と述べた」(ZAKZAK前掲)

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海上自衛隊護衛艦てるづき 空母ロナルド・レーガンらと日米豪3か国共同

世界的にみれば、現在、東シナ海の日米共同訓練だけでなく、米海軍主催の世界最大の海軍共同訓練である環太平洋合同演習(リムパック)が、17~31日までの日程で、米ハワイで10カ国が参加して行われているまっ最中です。

参考までに、今年に入ってからの南シナ海における中国との動向を時系列で見ます。
(『NEWSを疑え!』第887号(2020年8月20日号)

2020年2月17日 中国海軍の艦艇がフィリピン海軍艦艇にレーダー照射。

4月2日 中国海警局の船が、西沙諸島付近で操業中のベトナム漁船に体当たりして沈没させた。漁船の乗組員8人は無事。ベトナムに続きフィリピンやアメリカも中国を非難。

4月18日 中国が、2012年7月に成立していた海南省三沙市の下に、新たな行政区として「西沙区」と「南沙区」を設置。なお、三沙市は、中国メディアによれば12年当時の人口約1000人だったが、それを都市部の非農業人口25万人以上の「地級市」と同格に位置づけた。

6月12日 自国EEZ内のナトゥナ諸島周辺海域で、中国漁船多数が海警船をともなって操業していることに手を焼くインドネシア政府が、5月26日に続けて再度、国連に文書を提出。「九段線の主張は国際法の根拠を明らかに欠く」「中国と交渉する理由はない」と主張。

6月26日 第36回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議がテレビ会議形式で開催。議長声明で、最近の出来事に懸念を表明。各国は南シナ海における平和と安全保障、航行の自由、上空飛行の自由の確保に関するASEANの基本スタンス支持を確認。新型コロナで中断している南シナ海の紛争回避を図る行動規範(COC)交渉の早期再開が必要とした。

7月2日 米国防総省が、南シナ海の西沙諸島周辺海域で中国が1日から軍事演習を実施(予定では5日まで)していることに懸念を表明。

7月4日 空母ロナルド・レーガン(母港は横須賀基地)とニミッツ(母港はワシントン州キトサップ基地)が南シナ海で軍事演習をおこない中国を牽制。

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空母ロナルド・レーガン(手前)とニミッツ (7月6日、南シナ海、米海軍撮影)

7月6日 中国が、黄海・東シナ海・南シナ海で異例の同時軍事演習。米空母の南シナ海演習に対抗と見られる。

7月8日 ポンペオ米国務長官が記者会見で、中国の尖閣諸島周辺海域への領海侵入や南シナ海への進出に触れ「領土紛争をあおっている。世界はこのいじめを許すべきではない」と発言。

7月9日 安倍晋三首相とオーストラリアのモリソン首相がテレビ会議形式で会談。特定の国の名指しは避けたものの、東・南シナ海でのさまざまな動きに重大な懸念があるとの見方で一致。豪政府は声明で「岩礁での継続的な軍事化、沿岸巡視船や『海上民兵』の危険かつ強圧的な運用を含め、南シナ海における最近の否定的な動きに対し、両首脳は重大な懸念を表明した」とした。

7月13日 ポンペオ米国務長官が声明を発表。

7月14日 フィリピンのロレンザーナ国防相が「南シナ海にはルールに基づいた秩序があるべきという国際社会の認識に強く同意。中国が国際法を遵守し、既存の国際協定を尊重することは、地域の安定にとって最善の利益」との声明を発表。台湾外交部(外務省)の報道官も「脅迫や武力によって南シナ海を巡る争いを解決させようとするたくらみに反対」と発言。いずれもポンペオ声明を受けたもの。

7月14日 スティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が米戦略国際問題研究所(CSIS)のオンライン会合で講演。南シナ海への進出を強める中国に制裁を科すことも排除しない、と発言。

7月15日 米第7艦隊のミサイル駆逐艦ラルフ・ジョンソンが、南沙諸島周辺海域で「航行の自由」作戦を実施と公表。米外交誌ディプロマット(電子版)によれば、同艦はクアテロン(華陽)礁とファイアリー・クロス(永暑)礁の12カイリ(約22キロ)内を航行。米メディアによれば、作戦実施は5月28日以来。

7月17日 米空母2隻が7月上旬に続き南シナ海で演習したと発表。ニミッツ空母打撃群のカーク司令官は「自由で開かれたインド太平洋への取り組みを強化するため、国際法が許す限り南シナ海で活動」と強調。

7月21日 訪英中のポンペオ米国務長官が、英国のファーウェイ(華為技術)排除を称賛。香港の統制強化や南シナ海の覇権主義的行動を批判し、中国が新型コロナ危機を自国の利益のために利用することは「受け入れられない」と発言。イギリス以外の欧州各国に華為製品の排除への期待を表明。

7月21日 エスパー米国防長官が英「国際戦略研究所」(IISS)で講演。トランプ政権は2019年、南シナ海に艦船を派遣する「航行の自由」作戦を過去40年間でもっとも頻繁に実施。今年も同様の頻度で実施する、と表明。

7月23日 ポンペオ国務長官が、72年に電撃訪中したニクソン元大統領ゆかりの図書館で「自由世界が共産主義体制の中国を変えなければ、共産中国が私たちを変えてしまう」と演説。
歴代米政権の対中政策を「中国に盲目的に関与していくという古い枠組みは失敗した」と切り捨て、「現中国は、国内で一層権威主義化し、国外で自由を攻撃し敵視している」「米経済と米国的な生活様式を守る戦略が必要だ。自由世界は新たな専制国家に打ち勝たなくてはならない」と主張。
習近平国家主席を「破綻した全体主義思想を心から信じており、中国的共産主義に基づく世界的覇権を何十年間も切望してきた」と名指しで批判し、レーガン元大統領が旧ソ連を「信頼しつつ検証せよ」といったことを念頭に「中国共産党を信頼せず、検証が必要」と述べた。22日に閉鎖を求めたヒューストンの中国総領事館は「スパイ行為と知的財産窃取の拠点になっていた」と説明。

7月27~28日 アメリカとオーストラリアがワシントンで外務・国防閣僚の2プラス2協議。米側はポンペオ国務長官とエスパー国防長官、豪側はペイン外相とレイノルズ国防相。共同声明は、南シナ海の中国による領有権主張は「国際法に照らし無効」とし、今年4月の米強襲揚陸艦と豪海軍のフリゲート艦による南シナ海での共同作戦に続き、南シナ海やインド洋での共同作戦を継続的・頻繁に実施すると確認。



2020年8月20日 (木)

ワクチン狂想曲

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まぁ、誰でもそう思うでしょうが、ワクチンは次の時代の主導権を握る戦略物資です。
ワクチンと特効薬さえ掌中にしてしまえば、わが国にワクチンを乞うヤカバラで門前市をなすであろう、と考える国はザラにあります。
なんてったってワクチンをダシにすりゃ、ポストコロナ時代の覇権国となれるかもしれませんしね。
ワクチンを征する者は、覇権国とならん、というわけです。
だから各国必死の狂騒、いや競争を繰り広げています。

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産経

日本も独自開発を急いでいますが、日本は治験を丁寧にするためにまだ時間はかかるでしょう。
現時点では、英国アストラゼネカと米国ファイザーのワクチンをもらう契約を結んだようです。
ただし、米国は当然ながら世界一の感染国として自国を優先しますから、スムーズにファイザーが出すかどうかはわかりません。

「完成直後には不足が予想されるワクチンの確保などのため、トランプ米大統領が立ち上げた「ープスピード作戦」の一環。トランプ政権は約100億ドル(約1兆670億円)を投じて、自国、他国を問わず開発企業を支援し、優先的に供給を受ける契約の締結に奔走している。
「米国民(のワクチン接種)が最優先だ」。米政府高官はこう語り、トランプ政権下で目立つ「自国主義」をここでもあからさまにしている。」(産経8月12日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/8f174e4bea86a688a68faa7411e0e1a6230583fc

一方世界の覇権国になりたい一心の国は、通常のワクチン製造規定にある治験行程をすっとばして、オレも出来たァっと宣言しています。
こちらもいかにもいかにもの国の揃い踏みで、まずはプーチンのお国。治験の数段階をぶっ飛ばして完成宣言を発しましたが、あーたロシア製ワクチンなんて使います?あたしゃ、絶対にいやだ。
それでもブラジルやインドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)など20カ国から供給要請がきていると言っています。知りませんよ、あんなバッチモン使うと。

そしてやっぱり中国、何ってたって中国。
なんともうパキスタン、フィリピンに供与するそうです。
中国が今焦っているのは新型コロナでの拡大で、従来の一帯一路こと大中華共栄圏がガタガタになってしまったことです。
そこでアジアの舎弟たちの国にまずは中華親分から餅代代わりにワクチンをくれてやるから裏切るんじゃねぇぞ、言うこと聞けよ、ということのようです

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中国外務省はフィリピンに対し、中国製ワクチンの優先的な供給を約束し、北京科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)は、ブラジルおよびインドネシアと、何億回分もの自社ワクチンの国内向け生産で協力することで合意しました。

しかし内実はこのようなもののようです。

「中国はワクチン産業で世界から後れをとっている。しかし、新型コロナウイルスの発生源と考えられるこの国では、全世界で50万人以上を死に至らしめたCOVID-19と闘うため、国と軍、民間が一丸となってワクチン開発に取り組んでいる。
米国を含む多くの国が、民間と緊密に連携してワクチン開発競争に勝利しようとしているが、中国は多くの課題に直面している。
COVID-19の感染拡大を抑制することに成功した中国では、大規模なワクチンの臨床試験を行うのが難しくなっている上、中国の臨床試験に協力することに同意した国は今のところ数カ国にとどまっている。北京はまた、過去のワクチンスキャンダルを踏まえ、安全性と品質に関するすべての要件を満たしていることを世界に示し、納得させなければならない(アンサーズニュース7月9日)
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/18748/


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新型コロナウイルスワクチンを開発している中国企業の一つ、カンシノ・バイオロジクス(ロイター)

そして中国政府はワクチンの「戦時下製造」を命じました。それに軍が全面的関与をしています。
というかそもそも元々中国のウィルス関係の会社は国有企業が多く、それも人民解放軍系統が多くを占めていました。

「カンシノの実験用ワクチンには人民解放軍の研究所が重要な役割を果たしており、アデノウイルスを用いた方法を開発している。軍は独自の「軍事上、特に必要とされる医薬品」の承認プロセスを持っており、先月、軍の研究部門とカンシノが開発したワクチン候補の軍事使用を承認した」(アサンサーズニュース前掲)

このように中国のワクチンは、生物兵器を作っているとされる人民解放軍研究所がノウハウを握っています。
今回の新型コロナの流出元という疑惑がある武漢P4ラボは自民解放軍系のウィルス研究所で、その元凶と見なされている同一系統がワクチンを作るのですから、右手が作って左手でワクチンを作ってみせるというわけですから、なにか悪い冗談を聞いたような気分です。

そしてこれを中国は戦略物資と位置づけています。
中国のやり口はえげつないばかりで、フィリピンはワクチン供給の約束と引き換えに南シナ海問題について大幅に譲歩する姿勢を見せ始めました。
それにしてもフィリピンは何回中国にダマされたら気が済むんでしょうか。
前にも中国から貰った経済援助契約は空手形、代わりに自国領から見えるところまで人工島を作られてしまってもう属国扱いです。
今回だってどうなるかわかりませんよ。だって、この中国製ワクチンはロシア製と一緒で
、規定にある最終治験を飛ばしているのですから。

また南アジアで、インドと敵対してくれている準同盟国パキスタンは、国内で中国医薬集団(シノファーム)によるワクチン臨床試験を認める契約を結んでおり、その一環として全国民22000万人の約2割がワクチン接種を受けられることになるそうです。
ロシアとも、露保健省が承認した場合には、中国の軍研究機関と康希諾生物股分公司(カンシノ・バイオロジクス)が開発中のワクチンを供給する可能性があると報じられています。

アフリカ諸国にも舎弟は大勢いますから、順次配ることでしょう。
いや配る前に、舎弟の杯をかため直します。
借金は耳揃えて返します、国連で票入れます、台湾追放しますとか、杯もらうとお返しが大変なんですよ。

一方WHOのテドロスは、ワクチンを世界で共有化する枠組みを作ろうと提唱しています。

「世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は18日、新型コロナウイルスワクチンを平等に分配するための枠組み「COVAXファシリティー」への参加期限を今月末に控え、一部の国だけがワクチンを買いあさり、他の国にワクチンが行き届かなければ、新型コロナの世界的大流行(パンデミック)は拡大する一方だとして、各国に枠組みへの参加を呼び掛けた。
テドロス氏はオンライン会見で「ワクチン国家主義を防ぐ必要がある。限りある供給を戦略的に、世界的に共有することこそ、各国の国益につながる」と強調した」(ニューズウィーク8月19日)

テドロスがいう「ワクチン国家主義」とは欧米諸国が自分の国で作ったワクチンを、自国ファーストしてしまうことに対して反対したものだと受け取られています。
しかしテドロスさん、あんたのスポンサーがいちばんその「ワクチン国家主義」そのものじゃないですかね。
それがわかって いる「欧州委員会は欧州連合(EU)加盟国に対し、コストやスピードの面で問題があるため、枠組みへの参加を見送るよう求めている」(NW前掲)ようですし、米国はそもそもWHOを脱退してしまっていますから埒外です。

WHOなんかが世界のワクチンを仕切るようになったら、ゾゾっです。
彼らが作る「ワクチンファシミリティ」なんぞ、どこの国が仕切るのかあらかじめ見えすぎてうんざりするからです。
おそらく今のWHOを牛耳る中国とアフリカ諸国が優位を占めるでしょうから、欧米にそのワクチン製造に見合った割り当てが来るか怪しいものだからです。

そのうえに中国やロシア製ワクチンは粗悪だとされています。そもそも治験が怪しいうえに、「戦時製造」ですから品質に大きなバラつきがあります
「世界に共有」されてガラガラポンされた中には粗悪な中国ワクチンが大きな顔をするでしょう。

「加えて、(中国ワクチンの)品質への懸念も払拭しなければならない。中国では近年、品質と安全性の基準を下回るワクチンが出荷され、問題となった。国連開発計画のイニシアチブとして設立された非営利機関「国際ワクチン研究所」のジェローム・キム所長は「中国の規制当局はワクチン製造への監督を改善している」と話す」(アンサーズニュース前掲)

中国ワクチンは偽物と劣化商品の宝庫。こんなものを欧米製ワクチンや、やがて加わるであろう日本製ワクチンと混ぜられてつかまされたら目もあてられません。

いやはやこのようにワクチンは、人類を救う福音ではなく、えげつないばかりに自国の世界戦略を追及する駒となってしまいました。

 

 

 

2020年8月19日 (水)

今度は本土政府に看護師を頼ってしまったデニー知事

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お見舞いありがとうございました。おかけ様で復調しつつあります。ただ食欲のほうはさっぱりです。
果物しか喉を通らないというかんじですが、そういえば先日宮古島のマンゴーという世にも美味なものを食する機会がありました。
絶品、絶佳のひとこと。よく巷で出回っているのがマンゴーなら、この宮古のマンゴーはそれとは次元の違う、世にも妙なる天上の果物でしょう。

さて、こんなに素晴らしい農産物を出しているはずの沖縄県のデニー知事のほうはあいかわらずアップアップのご様子で、看護師が足りないと本土政府に泣きついて、支援を受ける約束をとりつけたようです。

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「新型コロナウイルスの感染拡大で、沖縄県で看護師や保健師が不足している問題をめぐり、橋本厚生労働副大臣が16日、沖縄県庁を訪れて玉城知事と会談し、国として早急に派遣できるよう取り組む考えを示しました。
会談で玉城知事は「人口10万人当たりの新規陽性者数が全国最多の状況が続いている。医療機関でもクラスターが発生し、スタッフの隔離措置などで医療提供体制がひっ迫している」と述べ、県内では看護師が50人規模で不足しているとして、派遣が必要だという認識を示しました。
これに対して、橋本厚生労働副大臣は「全国知事会とも協力しながら、全力で沖縄県を支えていく」と述べ、国として早急に看護師や保健師が派遣できるよう取り組む考えを示しました」(NHK8月17日 写真も同じ)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200817/k10012570101000.html

普通ならこんな時期には言わないようにしているいるのですが、あえて言います、ああみっともない。
そもそもなんで看護師や保険師が不足したのかといえば、指定伝染病である新型コロナの無症状者・軽症者用ホテルを確保するのを忘れていたからです。
カネがなかったからじゃありません。財政は国が負担すると菅さんが言っているのですから。
要するにボケていて、隔離用ホテルの重要性を判った者が県庁にいなかったために忘れていたのです。

その一方で、ポピュリストのデニー知事は県民のもっと検査をという声に迎合して無計画にPCR検査を増やしていきましたから、その結果どうなったでしょうか。
検査数に比例して陽性者も激増しました。
そしてPCR検査で陽性判定が出た人はぜんぶ法律で隔離せねばなりませんから、ただでさえ不足していた病院の隔離病棟に入院させることになってしまいました。

そして隔離病床が130%で患者が溢れだし、沖縄県は医療崩壊の淵まで来ていました。
困ったデニーさんは県民に感染者でも無症状・軽症なら自宅療養してほしい、なんてオッソロシイことを頼んでいましたっけね。
あのね、家庭内感染って一番危ないのです。
自宅隔離の時期は後述しますが「確認中」という時期に当たります。
この時期にすべきは冷静な経過観察です。これを素人にさせようというのですから、そもそも無理があります。
肉親だから突き放した観察が出来ない上に、家庭内はコンタミ(汚染)が頻繁に起きやすい場所ですかから、危険な年齢層のおじぃちゃん、おばぁちゃんが常に危険にさらされる可能性があるのです。

こんなことを県民に頼まないために、事前の隔離ホテルの充分な確保が必要で、そのケアに当たる看護師もしっかり手当てしておかねばならなかったのです。
それをしないから感染拡大期には宝石のように大事な隔離病床が不足し、更に進行すれば隔離病床から溢れだした患者はICU(集中治療室)などに寝かせねばならないところ一歩手前だったのです。
最悪、もうこうなったら本当に人工呼吸器などの治療が必要な重症患者は適切な医療を受けられなくなったかもしれません。

さてこの間の患者数は、沖縄県が群を抜いて全国一でした。

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コロナ 10万人当たりの感染者数 沖縄がトップ 次いで東京 福岡 | 新型 ...

そして本島の都市部に圧倒的に感染が集中しているのがわかります。
これは本島の人口の大部分が那覇周辺の地域に集中しているためで、本島北部、八重山・宮古などで感染がほとんどないのと対照的です。

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沖縄のこの感染状況の原因を、GOTOキャンペーンがいけないんだ、政府が悪い、という声が県内にはあるようですが責任転化です。
誰が観光の再開を望んだのでしょうか。沖縄県自身ではなかったのですか。
これ以上県の主力産業の観光業の仮死状態が続けば、沖縄県が受ける経済的打撃ははかりしれなかったからです。

ならば、県がすべきはその経済の再開に向けての体制整備でした。
観光客が来れば必然的に増えざるを得ない感染者増加に対応して、無症状・軽症者用施設を充分に準備し、そのケアをする看護師の増強を図って当然なのです。

しかも「感染者」は必ずしも「患者」ではない可能性があります。
今回の新型コロナにおいてメディアが犯した最大の罪は、PCR検査を煽ったことと、一様に「感染者」と報じてしまったことです。
ほんとうは正確に区別されねばなりません。

・曝露・体内の細胞がウィルスに曝されること。
・感染・体内の細胞にウィルスが侵入すること。
・発現・発症すること。

そしてさらに発症した者も、累計数で出せば既に退院した者も含んでしまうから徒に数字が積み上がってメディア好みの派手に見えるだけです。
記録するなら、河野太郎大臣のように正確に区分すべきです。

  国内感染者
 退院
 入院治療を要する者
 重症者
 死亡
 確認中

感染者から「退院した者」を差し引き、さらに「入院加療を要する者」、つまり隔離病床で治療している者と集中治療室に入れねばならない「重症者」がほんとうの感染状況の真水なのです。
さらにその数を10万人あたりで砕いて比較せねばなりません。東京の100人と島根の100人は意味が違うからです。
それをメディアのようにただ「感染が出た」などと報じてもまったく無意味です。

沖縄県が「感染者」として扱っている者にはおそらく550人前後の偽陽性が含まれていたはずです。
その偽陽性は「確認中」として、本来は県が用意した隔離観察施設にいれねばならなかったのです。
それを手当てしなかったために、彼らは一般的に「感染者」として扱われて、希少な隔離病棟が占有されてしまったというわけです。

今頃になって、環症状者・軽症者用ホテルが足りない、看護師が足りない、本土政府助けてくれ~、とはあまりに見苦しい。
本土政府はとうぜん「全力で支えます」と言うでしょうが、それは沖縄県が本土政府に借りを作ったということですからお忘れなく。
首里城が燃えたから助けてくれ、看護師が足りなくなったから助けてくれ、でも国が進める移設には一切協力しませんで通ると思っているんですかね、この人。

なにもない平穏無事な時ならこんな人でも務まったのでしょうが、県の海である尖閣では中国漁船の大群が押し寄せるかもしれず、公船は自国領だと主張し、沖縄漁民を駆逐してまわり、そして気がつけば新型コロナは全国一の感染者数です。
すべてに対して無為無策。徒手空拳。
やることといえば、ひたすら本土政府にすがることだけ。
自民党系知事でもここまで見苦しい本土依存型知事はいませんでした。

無能は罪です。

 

 

2020年8月18日 (火)

熱中症になりかけました

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いやー、昨日もこちらは35度を超える猛暑日で、外仕事をしていたらちょっとおかしくなっちゃいました。
全身の筋肉がひきつったみたいになって苦しいんですから、たまらん。脳みそは干上がったカッパよろしく朦朧。
熱中症め、来やがったな、と思いましたね。私、何回かこの時期に経験しているんです。

最初の体験は沖縄時代でしたが、ガタブル。震えがきました。真夏の盛りにですぜ。
その時は渓流から引いている冷たい水をともかく被って全身冷却に励んでなんとか切り抜けましたが、名護の病院まで1時間ですからね、行って帰って2時間。
救急車がなんか来る頃には意識不明、病院に着く頃にはナンマンダブだったかもしれません。
これがヤンバルの山の中のリアリズムです。

さて、昨日首相が慶応病院へ行ったために、メディアは涙を流さんばかりに喜んでいました。
やれやれ、慶応病院に8月の初め頃に検診で行くなんて、この私ですら数カ月前から知っていたことです。
篠原常一郎さんが数カ月前からうるさかったからね。あの人、ああいう軽躁がなけりゃもっと信じるんだけど。

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日経

とまれ実際は蓋を開けたら日帰りで、入院ですらありませんでした。残念、メディアのハゲタカの皆さん。

「安倍晋三首相は17日、都内の慶応義塾大学病院を訪れた。首相周辺は「夏季休暇の機会を利用して、休み明けの体調管理に万全を期すため、日帰り検診を受けた」と説明した。首相は同病院で半年に1回程度、人間ドックを受けており直近では6月13日に検査した。
首相は8月17日、公務をいれず夏季休暇をとった。東京・富ケ谷の私邸を出発して午前10時半ごろに直接、病院に入った。午後6時ごろに病院を出て、私邸に帰った」(日経8月17日)

仮に首相が倒れたとしても、その場合の暫定首相は副総理の太郎ちゃんがするなんて、あたりまえすぎでしょう。
それを甘利さんが「首相ももっと休まねば」という声とダブらせて、すわっ「安倍倒れる、政局流動化始まる!」なんて予定稿のひとつも書いていたんでしょうね。
後釜がどうかなんて、今のコロナ禍、米中戦争前夜という国際状況をどのように捉えて、どう対処しているのかで、自ずと決まることです。
習近平と岸田氏がまともに渡り合えるか、石破氏が中国にもの申せるか、米国に対して旗幟を鮮明にできるか、ちょっと考えればわかりそうなもんじゃありませんか。
トランプが再選されたらと想定して、このふたりと並べてみたらどうでしょう。
サマになりますかね。
今、サマになりそうなのは、若い方の太郎ちゃんか、茂木さんくらいしかいないんじゃありませんか。

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https://biboroku.net/abe_shinzo-us-1806/

それも今ではありません。
仮に首相がなんらかの理由で退いても、麻生氏が暫定首相をすることは、今の政権が安倍-麻生連立な以上当然のことで既定事実とすらいってもいいほどでしょう。
麻生氏はこのまま現政権の路線を踏襲します。これも既定事実です。
その上で、オリンピック前後に総裁選になるかもしれませんね。
くどいですが、これもとっくに決まっていることなんです。
首相は二階に乗せられて四選なんかするつもりはない以上、来年には新しい政権が発足するのは当然です。

首相は適任の後釜がいなかったから、やめ時をなくしてズルズルとひっかぶってきただけ。
あの人には、習みたいに永世首相なんて野望はありません。私欲がないのがあの人の美点です。
首相は今年まともに休日をとらず持病を抱えての超人的な奮闘ぶりでしたが、今は「後継者」として噂された岸田氏以外にも育ってきているのですから、任せたらいいのです。

ところで、GDP速報値が出ました。予想どおり、というか予想を遥かに下回っていい数字です。

「内閣府が17日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比7.8%減、年率換算では27.8%減だった。マイナス成長は3四半期連続で、減少率は比較可能な1980年以降でこれまで最大だった2009年1~3月期(前期比年率17.8%減)を超えた。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、経済活動が停滞したことが影響した。1~3月期は年率換算で2.5%減だった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比7.6%減で、年率では27.1%減だった」(日経8月17日)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HSS_X10C20A8000000/

メディアは得意の日本が潰れるキャンペーンをしていますが、この速報値って4、5月の数字ですから、緊急事態宣言真っ只中の数字です。
つまり経済がホトンド止まって仮死状態の時のもの。これがズっと続いたら年率27.8%になるっていうバーチャルな数字です。
わきゃないでしょう。この速報値をとった翌月の6月にはもう経済は再開していて、落ち込んだ個人消費も回復しています。
たぶん次の四半期にはプラスに転じるはずです。

「一方、政府は景気が4~6月期に底を打ったとみており、今後は経済対策の効果が下支えして「緩やかな持ち直しが続く」(経済官庁幹部)と期待する。民間エコノミストは7~9月期には10%超のプラス成長を見込む」(産経8月17日)

またその落ち込みのサイズ感覚を計るためには、日本だけ見ていてもわかりませんから、国際比較する必要があります。
各国が軒並みヨーロッパマイナス40%、米国マイナス30%ですから、うちの国のマイナス20%なんて世界的には軽症の部類です。
これはコロナの死亡率と一緒で、健闘していると評するべきことです。

現に、こんなていどの落ち込みがあるのは株式市場はとっくに折り込み済みで、むしろもっと悪い数字がでるとさえ考えていましたから、値上がりを続けてコロナ禍前の水準に戻してしまいました。
だからメディアが「戦後最大の落ち込みがきたぁ、日本壊滅!」、ついでに「安倍倒れる!政局一挙に流動化!」なんて煽っていても、悲観しないで下さい。

マイナス60%を記録した英国のBBCはこんなことを書いています。

「記録的な景気後退の後、日本の経済成長は今後数カ月で回復すると、ほとんどのアナリストが予想している。
安倍晋三首相は、パンデミックの打撃を和らげることを目的とした大規模な景気刺激策を導入している」(BBC8月17日)

一喜一憂するのはやめましょうよ。暑いのに疲れます。

 

 

 

2020年8月17日 (月)

8月16日は中国の解禁日でした

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メディアはほとんどスルーしていましたが、昨日16日は中国が漁業解禁日にあたります。
大規模な漁船団が福建省から出たという情報も伝わってきています。

「中国福建省石獅(せきし)=西見由章】中国政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の東シナ海に設定していた休漁期間が日本時間16日午後1時に明けた。
中国福建省最大の漁港、祥芝(しょうし)港では同日朝、停泊していた漁船約550隻が出漁を祝う爆竹を鳴らしながら一斉に港を出た。
漁船の多くは台湾海峡付近で操業する見通しだが、一部は尖閣沖に向かうとの証言もある。
地元の漁業関係者らによると、当局は「敏感な海域」として台湾近海や尖閣沖での操業を規制し、尖閣への接近を禁止する規制線も設定している。
 漁船員の男性は15日、「まず台湾海峡で漁をする。釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)へ向かうかどうかは魚の状況による」と話した。  尖閣周辺では5月、日本領海に侵入した中国海警局の船が日本漁船を追尾するなど中国側が活動を活発化させ、不当な領有権主張を強めている。2016年8月には中国漁船約300隻と公船10隻以上が尖閣周辺に押し寄せた」(産経8月16日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/7791c4b8865791f87d7a0644077b186eb56e62e8

現時点ではまだ大規模な尖閣への侵入はないようですが、この産経記事が伝えるように漁船員が「台湾海峡で漁をした後に、尖閣に向かうかどうかは漁獲しだいだ」と言っているところから、これからいつどのような形で始まるのか予断を許しません。

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産経 中国国旗を掲げ、出港を待つ漁船=15日、中国福建省石獅市(共同)

一方福建省当局は、「敏感な海域での操業は控えるように」という通達を出したとも伝えられています。

【石獅(中国福建省)=南部さやか】沖縄県・尖閣諸島周辺に中国政府が設定した禁漁期が16日に明けるのを前に、福建省の地方政府が周辺海域での操業を控えるよう漁師らに指示していることがわかった。  尖閣諸島沖の接続水域内では4月から8月初旬にかけて、中国公船が111日連続で航行するなど緊張が続いている。
今回の指示は、大量の中国漁船が領海に侵入すれば、日中関係の悪化が避けられないことを考慮した措置とみられる。  福建省石獅市の漁師によると、地元政府が8月初旬、漁師らを一堂に集め、尖閣周辺を念頭に「敏感な海域」での漁を控えるよう求めた。
漁港には「敏感な海域に漁に行くことは厳禁」との横断幕が掲げられている。ただ、「地元政府からは連絡は受けていない。今年も状況次第で漁に行く」と証言する漁師(58)もおり、指示が徹底されるかどうかは不透明だ。
地元当局はここ数年は、尖閣周辺での操業を控えるよう指示を出している。海上保安庁の資料によると、2016年8月には200~300隻が周辺海域に押し寄せ、領海侵入や接続水域での操業も確認された」(読売8月16日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5f72471c8140a14fc4f98041dfd0f48578aa55c

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読売 福建省の漁港に掲げられた横断幕には 「敏感な海域での漁は厳禁」とある。

「漁船が多い福建省石獅市の船長(52)によると、地元当局は最近、漁民を集めた会議で「釣魚島周辺の30カイリ内に入ることは許さない」と強調した。船長は1~4月に尖閣周辺で操業したが「政治問題は分からない。当局には従う」と話した。(産経前掲)

この福建省当局がいう「敏感な海域」というのがどこを指すのかはわかりませんが、台湾や尖閣水域を指すとかんがえるのが妥当でしょう。
これが事実だとすると、中国は矛盾した行動をとっていることになります。

というのは、16日以降、2016年以来2回目となる大規模侵犯をやるぞ、やるぞと中央政府が公言していたのですから、これを地方政府の福建省が止めたというのは腑に落ちません。
このようなことが今の極端な中央集権化を進める習体制下で可能とはおもえないからです。
ならば中央政府の意図はなんでしょうか?

ひとつかんがえられるのは、中国は米国と摩擦を起こしている時には、よく日本に融和的な手を差し伸べることがあります。
これは日本と米国をひとまとめにして敵対関係を作ると、軍事的・政治的バランスが日米に傾きすぎてしまうからで、もちろん日米分断の意図があるのはいうまでもありません。
そのためにたらし込みやすい親中派議員が山ほどいる日本の与党に働きかけて、対決を回避しようとします。
今回も、香港国安法で親中派も批判せざるをえない状況で、尖閣において大規模挑発をすれば、一気に日本の世論がどのように動くのか、さすがの習も判ってはいるでしょう。
習は典型的な井の中の蛙ですから、気にしない可能性もありますが。

おそらく自民内の親中派や公明党は孤立し、それに配慮していた安倍氏も調整機能を果たすことは不可能になります。
与党内部の二階などや公明を温存するためには、今ここで緊張を一方的に高めては、修復が不可能になってしまいます。
そして温存した親中派を使って、米国が作ろうとしている対中包囲網に綻びを作るつもりかもしれません。
ただし、まだ状況は始まったばかりですから、結論めいたことは言えませんが。

さて、いい機会ですから、中国がいかに領海侵犯を組織的にやっているのかみておきましょう。
下のグラフは海保HPの冒頭にアップしているものですが、赤い棒が中国公船が尖閣の日本の領海に侵入した月別の隻数、青い折れ線グラフがその外側の接続水域に入った隻数を示しています。とりあえず赤い棒だけみておきましょう。

図左3分の1あたりの2012年9月から赤棒が一気に激増していますが、これは民主党政権が石原都知事の都有地化の動きに驚いて、尖閣の国有化を図った年が2012年9月です。

野田政権が国有化したのは、都有地にされるのを避けたかっただけだったために、国有化してなにをするという戦略が欠落していました。
民主党政権に米中まで含んだ国際的な根回しなど望むべくもありませんが、すくなくとも国有化した以上、実効支配の証明を国際社会にアピールすべきでした。

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最低でも石原知事が望んでいた、尖閣の灯台や船溜まり建設や公務員常駐でしたが、もちろん民主党政権は指一本動かしてはいませんでした。
国有化という思い切ったことをするなら、ワンセットでそこまでやらないと実効支配にもなんにもなりません。
あの時が実効支配の絶好の機会だったのです。

いくら当時の藤村長官が、「尖閣諸島をめぐる事態が日中関係の大局に影響を及ぼすことはまったく望んでいない。誤解や不測の事態を回避することが重要」なんて寝ぼけたことをいっても、尖閣を棚上げにしようと、という日中合意を破ったのが日本側という体裁を作ってしまいました。バカですか。
結局、官製の反日暴動を中国各地で起こされて、日本はいらない妥協を強いられることになります。

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asahi.com(朝日新聞社):中国反日デモ、一部が暴徒化 尖閣問題に抗議

そして丸1年が過ぎた13年10月からはかなり鎮まって、月に10隻前後で今日至るまでほぼ横ばいが続いていて、この2019年1月から猛然と増え始めています。
このように、中国が公船や漁船を侵犯させる時は、必ずその裏に政治的な意図があるのです。
小原凡児氏は、このように2016年当時の大規模漁船団と公船の侵入を見ています。

「今回(※2016年当時)の漁船の行動及び公船の随伴は、中国の尖閣諸島奪取の戦略に沿ったものだ。中国の戦略とは、軍事力ではなく、海警等の法執行機関を用いて、日本の実効支配を崩すというものである。
日本が軍事力を行使しない範囲で、日本の海上保安庁の巡視船よりも多くの中国海警局の巡視船が、より長い時間、尖閣諸島周辺海域に滞在することによって、実質的に中国が尖閣諸島及び周辺海域をコントロールしているかのような状況を作り出すのだ。平時における優勢を、段階的に引き上げていくということでもある。最終的には、中国海警局の巡視船が体当たり等によって、海上保安庁の巡視船を同海域から排除することも考えている。
中国が、法執行機関である海警局を用いるのは、軍事力を用いれば、日本がこれに対して自衛権を行使し、軍事衝突を起こしてしまうからだ」
NewsWeekJapan 中国戦略の裏を読む 小原凡司)
http://www.newsweekjapan.jp/ohara/2016/08/post-4.php

小原氏が4年前に予想したとおり、以後中国は恒常的に公船を接続水域・領海に侵犯させ続けることで、寸止めながらも実効支配を着々と誇示してきました。
そして100日を連続侵犯しつづけたあげく、この8月16日には中国・福建省の禁漁が解禁されると同時に、尖閣諸島へ大漁船団を送り込むと日本政府に予告しました。
ふー、予告付侵犯ですから、政治的もナニもあったもんじゃありません。
漁船団を政治的武器に使うゾという意味以外にとりようがありません。
日本側がそれに抗議すると、「その資格なし」と言われてしまいましたっけね(苦笑)。

これは実はすでに一回やったことがあります。前述した国有化時の2016年8月に、中国は漁船団300隻を連れた海警船団が7隻も船隊を組んで大規模な侵犯を行っています。

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上の海保グラフの中央からやや右のあたりで飛び抜けた赤い棒がそれです。

どうやら前回の2016年当時、中国は尖閣水域で仮に日本側と戦闘が発生した場合、勝算が薄いと判断していました。

「2015年10月8日に、中国国防大学政治委員の劉亜州上将が新聞上で発表した「釣魚島(尖閣諸島)問題から見る日中関係」という論文は、「日中軍事衝突で中国が負ければ、国際問題が国内問題になる(共産党統治が危機に陥る)。だから、負ける可能性のある日本との軍事衝突は起こしてはならない」と述べている」(小原前掲)

つまり4年前には、中国は尖閣水域での日本側との軍事衝突に対して自信がなかったともいえます。

しかし、4年前と比較しても中国の海軍増強ぶりは目ざましく、今や隻数では海自はもちろんのこと、米国第7艦隊を追い抜いています。

まぁ実力のほどはわからないのでなんともいえませんが、彼らは南シナ海の人工島の完成と「遼寧」2番艦「山東」の就航をもって均衡し始めたと見始めたようです。

 

2020年8月16日 (日)

日曜写真館 今年はないが夏祭

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獅子舞の大きく震い地に伏せり  中村和弘

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雨をよぶ 山車を出しけり 夏祭  長谷川かな女

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梯子宙にとどまる祭かな 小倉行子

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原色の 土産物屋の 夏祭  桂信子

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こども神輿とほる生垣あをあをと  山口青邨

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2020年8月15日 (土)

穢れ信仰となってしまったPCRパニック

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デニー知事が沖縄県の緊急事態宣言を2週間ほど伸ばすそうです。

「県は13日の対策本部会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、警戒レベルを最高の4(感染まん延期)に引き上げた。独自の緊急事態宣言は2週間延長し、29日までとした。観光客などの来県自粛には踏み込まず「慎重な判断」を求めるにとどめた。玉城デニー知事は県庁で記者会見し「県民の具体的な行動がなければ、封じ込めることは不可能な段階まで来ている」と危機感を表明した。 県の指標七つのうち、五つが第4段階に達しているため引き上げを判断した。
県民に求める行動として、県全域で実施している不要不急の外出自粛の徹底に加え、買い物に出掛ける際は原則1人とし、会食・会合や午後10時以降の外出を控えるよう要望。特に繁華街への外出は厳に自粛するよう呼び掛けた。
集団感染が発生した場合は地域と業種を特定し、休業や時短営業を要請するとした」(沖縄タイムス8月14日)

デニーさん、これは特にあなただけではなく県知事会のお歴々のほとんどすべてがそうですが、ポイントがズレています。
このような経済を再稼働させている時期において、緊急事態宣言をすること自体が無意味です。
そりゃそうでしょう。かならずこういう声が県民から上がるのは目に見えているからです。
こんなコメントを見ました。

「緊急事態宣言延長になるのはわかります。しかたないです。自粛してます。なんですが、、、学校も休みなのに、観光客はなんで来ていいんですか?来てもらわないと困るのもわかるんですけど。生活圏内にも容赦なく観光客いるんですが、県民だけの自粛で意味あるんですか?
行動履歴等、来沖する方には義務付けしてください。県民自粛して、コロナかかったとこに、観光客でベッドいっぱいで入院できないとか意味不明すぎます。私も持病もちだし、子供も持病もってて不安な毎日です」

わからないではないのです。今のように、観光客の受け入れを制限せずに、規制を再強化すれば、こんなに県民が我慢しているのに、どうして県外者がわらわらと来るのだ、病院は県外者で一杯だぞ、という声が高くなって当然なのです。
そしてこういう怨嗟の声は、もう一歩進むと、県外者=ウィルスを持ち込む者となり、排斥の対象となりかねません。
すでに全国でお盆で帰省した人に対しての陰湿な「差別」事件がいくつも発生してます。

緊急事態宣言を解除しても、またぶり返す兆候が現れれば締めます。
その繰り返しのことを、ハンマー&ダンスと呼びます。
なにを言っているのかわかりにくいかもしれませんが、要はガツンと規制をかける時期と、ダンス、つまり持続的に一緒に踊る(介入する)ことを繰り返していきながら終息に向かうのが感染症対策なのです。

「非常事態宣言の狙いは流行のピークを抑えることです。
これまでに学校の休校、三密を避けるなどの対策が行われてきましたが、今回さらに人と人との接触の機会を減らすためにより積極的な介入が行われたという訳です。
Thomas氏はこのような積極的介入によって流行曲線の頭を積極的介入(ハンマー)で叩き新規患者数を抑え込み、持続的介入(ダンス)によって流行を防ぐという考えを提唱しています(Hammer and Dance)」(忽那前掲下図も同じ)

武漢でも中国は似たようなことをやっています。
中国は出す数字自体が政治プロパガンダのために信用できませんが、いったんは終息したのち、また第2波をかぶっているようです。

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日本政府も同様で、お国柄で緊急事態宣言という名で「自粛のお願い」がとられましたが、意図は一緒です。
緊急事態宣言というハンマーで叩き、今は状況とダンス(持続的嵌入)しているところなのです。

日本は今回の緊急事態宣言の主体を地方自治体としてしまったために、それぞれの自治体判断で独自の判断基準をつくったり、それにもとづいて沖縄のように緊急事態宣言まて出す自治体が現れしまいました。

これは国の緊急事態宣言の作り方の失敗です。
国はサッキュウウ成立を計るため、憲法の緊急事態条項に結びつけている野党との対決を回避しようとしました。
その結果、執行者の主語を自治体首兆とするという根本的ミスをおかしました。
その結果が、あの「お願いロックダウン」であり、自治体ごとに別々の指標です。

それはさておき、ハンマー&ダンスは、段階を踏んで進んでいることに注意してください。
最初の感染拡大期には問答無用でハンマー(積極的介入期)を振り上げて規制をかけます。
国の4月からの緊急事態宣言がそうです。
この時重要なのは、サーベイランスで感染者を見つけ出すことではありません。
そんなことは落ち着いた後からでもできますから、真っ先にすべきは死亡者を増やさないために医療機関を守ることなのです。
日本政府がしたのはまさにこれで、岡田晴恵という悪質なデマッターにどんなに煽られようと、メディアに総バッシングされようとも、政府は頑としてPCR検査をあえて遅らせ続けました。

そして今の時期はダンス期(持続的介入期)にあたっています。
政府は大きな感染拡大の嵐は基本的には去ったと判断しているのです。
え、でもいまでも増えているのはなぜだ、というのが、ワイドショーしか見ない情弱の人の気分でしょうが、今増えているのは再度感染が拡大を見せているからではありません。
増えて見える理由は三つです。何回か書いてきていますが、おさらいします。

ひとつは、PCR検査体制が整備されたために検査数が春の3倍4倍になっていることです。
検査数が増えれば陽性の者も増えるのが道理じゃありませんか。

ふたつめは、PCR検査自体の精度が飛躍的に上がったために、破壊されたウイルスの残骸ですらカウント出来るようになったことです。
そのために春なら陰性判定されたものが、今は陽性判定されてしまいます。

みっつめは、PCR検査で3割が偽陽性なのです。
大衆迎合的な首長の場合、県民の不安に過剰に反応してジャンジャンPCRをするために必然的に陽性者も増えていきますが、その3割は実はニセモノなのです。(脱力)

するとメディアは陽性判定者をガサツにも一括し「感染者」と報じてしまいます。
ほんらいなら、ただの陽性判定者にすぎず、状況に応じて曝露・感染者・重症者と区別して報じるべきです。
煽れば煽るほど視聴率がとれるのかもしれませんが、彼らの煽りが自治体の判断を歪めてしまっています。
関連記事『PCR検査万能主義を捨てろ』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-669ebc.html

このことが問題なのは、偽陽性者によって隔離ベッドが塞がって、ほんとうにケアせねばならない重症者の手当てが遅れてしまうことです。
新型コロナの日本における特徴は、死亡率が世界各国とくらべて極端に低いことです。

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産経

「新型コロナウイルスに感染した国内の入院患者の死亡率は7・5%で、20%台の欧米などと比べ非常に低いことが国立国際医療研究センターの大規模調査で6日、分かった。原因は不明だが、欧米と比べ糖尿病や肥満の割合が少ないことが影響している可能性があるといい、今後詳しく解析して重症化の予防などに役立てる」(産経8月6日)

そして重症者は80台から90台からの高齢者がほぼすべてを占めることです。

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新型コロナ、年齢上がるほど高リスク 死亡者は70代から急増 | 医療 ...  

死亡率が日本は群を抜いて低く、それも高齢者によって占められているなら、若者と老人を同一のハンマー(強い規制)にかける必要はないともいえます。
老人が多い施設や家庭に対しては充分な配慮が必要ですが、若年層に対しても冒頭のコメントにあったような公園に行くな、繁華街に行くなというのは行き過ぎです。
年齢層によってハンマー&ダンスは使い分ける必要があるのです。

しかしいったん陽性判定されると新型コロナは厚労省によって2類感染症に分類されています。
いったん2類感染症に区分されると、診断した病院は患者を届け出たうえに、隔離せねばなりません。

 

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新型コロナウイルス】「指定感染症」で医療の体制は?ポイントまとめ

この新型コロナが2類の指定感染症だというのが困ったところで、なんでこんな厳しい扱いにしてしまったのか悔やまれるところで(そろそろ見直したらどうかとも思いますが)、このため検査段階から徹底した隔離措置がとられます。
いったん陽性判定されたら隔離ですから、オレは無症状だ鼻水もでてねぇぞ、熱も出ていないのに、なんて言ってもダメで、即隔離施設に入れられてしまいます。
そのうえ最近のメディアはまるで陽性者を犯罪者よろしく、テレビで「〇〇で感染者発生!」なんて速報しますから、身の置き所もありませんよね。

ここで無症状・軽症者用の一時滞在型隔離施設を行政が準備していれば問題ないのですが、大衆迎合型首長の県に限って借りるのを忘れていることが多いから困ります。
たとえば、小池「女帝」の東京都、デニー知事の沖縄県。共に政府のカネまで面倒みるという至れり尽くせりの支援にもかかわらず、無症状・軽症者用ホテルを借りあげるのを忘れていました。
沖縄県など軽症用隔離施設が130%と満杯なために、自宅療養(あぶないこと頼むよ)を言い出す始末で、押し出された陽性判定者が限られた隔離病棟を持つ病院を埋めていってしまいました。
もっとも避けねばならない医療崩壊の兆しです
ですから菅さんが珍しくムッとした調子で、この両自治体を叱っていましたね。

これが県民のコメントにもあった、「観光客で病院が満杯」の原因です。
そして私が恐れるのは、これが感染拡大地域=「穢れ」で満ちた地域という空気が支配しつつあることです。

ところで、このような感染を穢れと受け取り、差別する行為は、3.11の福島事故以降はびこりました。
少しでも「放射能」が残っている限りダメ、1ベクレルでもダメ、だって子供が大変なことになっちゃうから全員避難しろ、そう反原発派の人たちは叫んだわけです。 

福島や茨城の野菜や米を食べるなと呼びかけることは、風評被害の拡散ではなく、実害の阻止だと主張したのです。
今回の新型コロナでもPCR原理教の熱心な信徒だった
室井佑月さんは、福島事故時には福島県の食材を給食に出すな、子供を行かせるなともろに福島差別を煽動して物議を醸しました。

差別という感情の根源は、自分が住む澄んだ水が汚されたと感じる時に起きる反作用の感情にあります。 
民族学者の石川 公彌子氏は「穢れ」をこう説明しています。


「穢れ」とは神道や仏教における観念であり、清浄ではなく汚れて悪しき状態を指す。とくに死、疫病、出産、月経や犯罪によって身体に付着するものであり、個人のみならず共同体の秩序を乱し災いをもたらすと考えられたため、穢れた状態の人は祭事などに関われずに共同体から除外された」

これを当時の3.11以降の状況に置き換えれば、「放射能」が清浄ではなく汚れて悪しき状態にまつわるので「穢れ」なのです。
農産物も、車も、雪も、瓦礫も、そして人すらも、です。 
放射能とは疫病や死のシンボルであり、それを持ち込もうとする者は、清浄な共同体の秩序を保つために排除されたのです。 
しかし、前近代的な「穢れ」に対する恐怖であるが故に、いくら福島県が「放射能や健康被害はまったく出ていない」と言おうが言うまいが、一切耳を貸さない根深く理屈抜きな部分からの恐怖なのでしょう。 

このようなある意味、前近代的な「闇」の心理を引きずっているためにいつまでたっても「穢れ」を排除し、差別する事件が後を断たないのです。 
一見、科学によって装われていますが当時の反原発原理教徒たちがかき立てたのは、穢れを嫌う村八部という恐ろしく古い日本人の暗部です。 

このような人たちの多くは鼻持ちならない正義派の仮面をかぶったエリート意識の塊ですが、彼らがメディアを独占しています。
そしてワイドショーは朝から晩までコロナでベタ一色、ニュースコーナーの片隅には、「本日の感染者数」が常に表示されているんですから、まったくやりきれません。

恐ろしいのは国民が分断されること、感染「穢れ」差別がはびこることです。

 

 

2020年8月14日 (金)

都合のいい副大統領候補者カマラ・ハリス

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ジョー・バイデンがカマラ・ハリスを副大統領候補に指名しました。
まずはバイデンのツイッターから。

@JoeBiden
 · 8月12日
.@KamalaHarris is the daughter of proud immigrants—a mother from India and a father from Jamaica—who raised her to take action.
That’s exactly what this moment calls for: action. And we hope you’ll take action with us:
  ・8月12日
カマラ・ハリスは、インドからの母親とジャマイカからの父親である自慢の移民の娘で、行動を起こすために彼女を育てました。
それがまさにこの瞬間に求められていることです:行動。 そして、私たちと一緒に行動してください。

まぁ、一時噂の高かった性格の悪い方のライスよりもましではあります。
「黒人女性」というあたり、何を狙った候補者選びなのか分かりやすい人選です。
ただし、ハリスはアフリカ系ではなく、インド人の母親(医師)とジャマイカ系の父親(スタンフォード大学教授)との間にできた「自慢の娘」だそうですから、いわゆる「広義の黒人」ですがね。
移民の子といっても毛並みのいいエリート育ちで、トランプのほうがよほどガラガラした庶民派ですが。
それにしても彼女は民主党の大統領候補を争った人物で、予備選ではバイデンを散々くさしていたひとなので、おいおいではあります。

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カマラハリスとバイデン

なぜハリスを選んだのか、考えてみます。
もっと左派の政治家なら民主党内には掃いて捨てるほどいたはずで、たとえばバーニー・サンダースが推すエリザベス・ウォーレンのようなバリバリの社会主義者もどきを当てたほうが、トランプに対してハクがつくような気もしますが、よけいなお世話か。

副大統領職は長年の間、やることのないお飾りと言われてきましたが、このところのペンスなどを見るとミスが多いトランプの代わりに見事に実務を切り盛りしてフォローしているので、やはり重要な職務のようです。
ちなみに、ああ、あたしゃペンスになって欲しかった。

バイデンの場合、とっくに旬は終わっている出涸らし政治家で、他の候補が偏り過ぎていて自滅したので残ったにすぎません。
そのうえ若けりゃなんとかなるのに、大統領就任時にはなんと78歳。就任中に80を超えるってんですからハンパない。
もちろん米国政治史上最高齢で、物忘れいい間違いは年中のようで、トランプからドンキー呼ばわりされて いる始末です。
となるとトランプでさえそうとうなもんなのに、バイデンで大統領の激務に耐えられるか、という心配は民主党内ですら現実問題として浮上したことでしょう。

ウォルーストリートジャーナルは、そのへんをズバリと指摘しています。

「バイデン氏が当選した場合、大統領就任時の年齢が78歳と史上最高齢になることを考えると、今回の彼の選択は特に重要だ。生命保険料算定の理論や、彼の頭脳の明晰さの衰えから判断して、バイデン氏が任期をフルに務められた場合でも再選に臨むことはないように思える。バイデン氏への票は、次の大統領になる可能性が高い副大統領候補への票でもある。バイデン氏の選挙キャンペーンの様子や、彼のアドバイザーたちがメディアの質問から彼を守る様子を目にしてきた米国民は、そのことを十分理解しているはずだ」(WSJ 8月12日)
https://jp.wsj.com/articles/SB10248870856734043321204586563972344659058

WSJは「頭脳の明晰さの衰え」なんて気を使った表現をしていますが、ようするにボケがひどいので介護役がいるということです。
民主党執行部はいくつかの条件をつけたようです。

「米大統領選で民主党候補に内定しているジョー・バイデン氏は副大統領候補にカマラ・ハリス氏を選ぶことで、党から突き付けられていたチェック表の各重要項目について、賛同の意を示した。その項目は、女性・マイノリティー(社会的少数派)・進歩派(党の左傾化に歩調を合わせる)といったものだ。バイデン氏は接戦州の郊外地域でドナルド・トランプ米大統領を打ち負かす必要があるが、そこでカリフォルニア州選出の上院議員であるハリス氏がどのような役割を果たすのかが、今後の注目点になる」(WSJ前掲)

党から突きつけられた副大統領のチェック項目は、左派に配慮して女性・マイノリティであること、党の急進化に歩調を合わせられるリベラル志向の持ち主、でも保守層もなっとくという穏健派、だったようです。
ハリスはみごとにこのポイントを押えています。

「現在よりも米国の人種面の寛容性が低かった時代だったにもかかわらず、彼女の両親はキャリア面での成功を収め、離婚しながらも娘に成功の機会を提供することができた。ハリス氏はそれをフルに活用した。バラク・オバマ前大統領の場合と同様に、ハリス氏の成功は、米国が抑圧的な人種差別の国だという左派の主張への生きた反論証拠となった」
「その一方で、彼女の政治面の経歴は民主党にとって、独立系の人物や穏健派の共和党員よりは安心感をもたらすだろう」
(WSJ前掲)

アンティファのようなコミュニストではなく、マイノリティでしかも女性、けれどもエスタブリッシュメントのハリスはぴたりとこの基準に合致したのです。
ハリスは、上院議員になる前は検事出身のカリフォルニア州司法長官で、自らを「トップ警官」と称したこともある人物で、そういやー迫力ある顔してるわ。

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「この人選について、民主党支持者の多くが歓迎の意を示した一方で、左寄りの支持者の多くの反応は冷やかだった。米国では現在、不公平な刑事司法制度に対する問題意識が高まっており、一部の人々はそうした中で検事出身のハリス議員が起用されたことを批判している。
ソーシャルメディア上では、2011~17年にカリフォルニア州司法長官を務め、同州の「トップ警官」を自称していたハリス議員の経歴に対する批判が投稿された。
左派政治団体グラベル・インスティテュートは「ジョー・バイデンは警官を選んだ」と指摘。政治団体「アメリカ民主社会主義者(DSA)」のロサンゼルス支部もハリス議員を「警官」と呼び、「われわれの立場は常に『警察を解体せよ』というものだ」と表明した。
民主党予備選で急進左派バーニー・サンダース上院議員の広報を担当したブリアナ・ジョイ・グレイは、ハリス議員の起用は「支持層に対する侮辱」だと主張した」(フォーブス 8月12日)
https://forbesjapan.com/articles/detail/36392

党の突きつけたポイントはクリアしたものの、ハリスは肝心な政治主張が明確ではありませんでした。
ですから、トランプ批判だけはバイデンと歩調があっているのですが、ほかは何を言っているのかよくわからりません。
逆にいえば、だから党の言うとおりに動いてくれる、バイデンのフォローも任せられそう、いざとなったら米国史上最初の女性黒人大統領となるという福袋つき、とまぁその辺かもしれませんね。

「ハリスは民主党予備選で、特色ある選挙メッセージを打ち出すのに苦しんだ。初めはドナルド・トランプ大統領を攻撃することに集中し、バイデン氏のことも攻撃したが、その後は「キッチンテーブル問題」と呼ぶ課題を主軸に置いた。つまり、教員の給与引き上げや、男女の賃金平等といった問題だ。当初は他の候補者と同様に国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」を支持したものの、やがて距離を置くようになった」(WSJ前掲)

結局、予備選敗退の原因はこのハリスの腰の定まらなさにあったようで、バイデンとの予備選の討論でも人種差別カードとして取り出した1970年代のバス通学の歴史を曲解したとジャーナリズムに判定され、以後腰くだけになってしまいました。
ふらつきもみられるようで、

「彼女は大統領候補として「メディケア・フォー・オール(国民皆保険)」、「グリーン・ニューディール」を支持するのは早かったが、それらがあまりにも過激になり始めるとこれらの構想を撤回した」(WSJ前掲)

結局はなんとなく穏健で、大の民主党の信奉者、カリフォルニア司法長官時代は民主党系労組の主張をそのまま口写しにして法案を廃案にしたこともあったようです。
このように、党やその支持団体の労組の言うことをハイハイとなんでも聞き、「ブラックライブマター」を掲げる連中には黒人女性として防波堤を持ち、かつ検事だったのでなんとなく保守層に受けがよさそう、という都合のいい政治家を探したらハリスしかいなかったということです。
ここでも民主党はバイデンの時と一緒で、「安全な選択肢」、つまりは消極的選択をとらざるを得なかったようです。
どうやら米国民主党も、日本の野党と一緒で人材が偏っているか、もしくは払底しているようです。

 

 

 

2020年8月13日 (木)

今年の北戴河会議、長老から匙を投げられた習

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そういえば中国共産党が年に一回、党長老と現役執行部を集めて開いてきた北戴河(ほくたいが)会議が、いつのまにか始まっていて、終わっていました。
まぁ、やったこと自体を多くの中国国民も知らないうちに、始まって終わってしまっていたようなので、このような北戴河会議は初めてです。
香港で国安法の初めての執行、それも民主活動家の強権逮捕をしながらの時期ですから、なにか関係があるのかと思ってしまいますが、どうなんでしょうか。

北戴河は海岸の避暑地で共産党のエライさんたちの別荘も多くあるようで、日本流にいえばスイカとウチワ片手に血みどろの権力闘争をするという、いかにも中国の宮廷政治らしい催しでした。

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産経 北戴河

去年はまだ朱鎔基ら長老組が習にこぞって「10の質問書」をつきつけました。いまになって見るとなかなか渋いものではあります。

●2019年の北戴河会議における長老組の「10の質問」
① 香港問題は最終的にどういう決着をつけるのか?
② 中国経済はこのまま下降していくのか。中国共産党は来年もあるのか?
③ 高圧的な統治のやり方で、中国社会を、中国共産党は来年も支えることができるのか?
④ 米中関係がこのままで、中国共産党は来年まで乗り切れるのか?
⑤ もし、新疆やチベットの少数民族の人民が、突然全員でデモを起こしたら、中共は再度、鎮圧できるのか?どのように解決するつもりか?全員捕まえるつもりか?
⑥ 中国共産党内部の人々は誰もが自分の身の危険を感じている。党内でネガティブな意見を引き起こし、海外勢力の影響もうけたとき、中国でもし、内部性の動乱や暴乱が起きたらどのように解決するのか?
⑦ 中国共産党はこのままインターネットやソーシャルメディアをコントロールできるのか?
⑧ 中国の財政赤字と外債が、もしダブルではじけたら、どういう結果になるのか?
⑨ 米国をリーダーとした西側社会が、もし中国に対して海外に所有する国家資産を違法資産と見なして、封鎖したら、どう対応すべきなのか?
⑩ 中国共産党の現在の国家安全委員会制度が、実質、政治局や政治局常務委員を排除するものだとしたら、このモデル(集団指導体制)は継続していくのか?

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日経ビジネス 習近平・国家主席(左)と、江沢民・元国家主席(中央)、胡錦濤・元国家主席

この「10の質問」は、長老たちが「来年はまだ共産党体制は続いているのか?来年、北戴河会議でまた我々は会えるのか?」と習近平に詰め寄ったものでした。
もうすでに答えが出ていますね。対応して見ていきます。

①香港問題対応は強権的に国安法を強硬成立させて、早速民主活動家の根こそぎ逮捕を開始しています。まさに強権支配。
②政治的孤立をする中国にとって唯一の頼みは経済のはずですが、これも失速は明らかです。米国の制裁と新型コロナが相乗して、おそらく大幅なマイナス成長に陥るはずです。
③国際社会の声に一切耳を貸さず、香港市民の自由を強奪したツケは大きいはずです。
④米中関係は戦争前夜です。米国は中国を敵国指定しました。いつ何どき戦端が開かれてもおかしくはありません。
⑤ウィグルの強制収容所が西側に暴露されて、国際社会は香港と一体のものとして認識し始めました。
⑥新型コロナにおいて、中国各地に暴動が発生しました。これで景気が悪化すれば民衆暴動はいっそう再燃することでしょう。
⑦中国が狙ったファーウェイによる世界のネット支配が裏目に出て、中国流ネット管理が不可能になりました。
⑧一帯一路でカードローンよろしく借りさせたアフリカ諸国への負債が、一斉に新型コロナで焼けつき巨額の不良債権化しています。
⑨米国による海外試算凍結は、すでに一部米国で実施されており、今後全面的な資産凍結に進むと思われます。
⑩すでに集団指導体制という建前を習は放棄しており、永世国家主席となるつもりです。

このように習近平のITと一帯一路戦略、そして海洋大国をめざした南シナ支配は、ことごとく壁にぶつかり、ガラガラと音をたてて崩壊しようとしています。
そして新型コロナの隠蔽も世界に知れ渡ってしまい、いまや世界一の嫌われ者、いや自由主義世界共通の敵とみなされるまでになってしまいました
これは胡錦濤や朱鎔基ら旧執行部がとった米国との平和共存路線とは根本的にあいいれないもので、それ故彼ら長老たちは去年の北戴河会議で必死に諫めたのですが、習は聞く耳をもちませんでした。

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産経

というわけで、集団指導体制の名残のような北戴河会議なんぞ、主催者である習も形骸化したとみており、長老組もまたばかばかしくってやってられんわ、勝手に潰れさらせ、と考え始めたようです。
一方現役執行部のほうもしらけきっていて、政治局常務委員7人全員が揃ったのは8日のたった一日だけだっのようですから、長老・現役双方共もう意見のすり合わせには関心がなくなってしまったようです。

「中国共産の指導部や長老らが中国河北省の避暑地に集まり、重要事項を協議する非公式会議「北戴河会議」が5日までに始まったもようだ。米国との対立激化や新コロナウイルスによる経済的打撃といった内憂外患への対応を協議する見通し。
習近平国家主席は新型コロナの影響を名目に会議を中止し、習氏に不満を持つ長老らから政権運営への批判を受けるのを回避することもできた。あえて開催に踏み切ったのは、党をまとめる自らの権力基盤は揺るがないとの自信の表れといえそうだ」(産経8月5日)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a8235eadfecf41c3ec757ea7e2c1980b4a1defc5

習からすればうるさい長老どもが来なくてセーセーした、いちおうやったことだけにして秋の党中央委員会爽快を乗りきるぞ、というところでしょう。
ですから、産経記事のように習から見れば、「権力基盤は揺るがない」ともいえるわけです。
江沢民派にしろ共青団派にしろもはや既に壊滅状態で、党内パワーバランスはすでに崩れており、習一強体制が完成したから、もう誰もなんとも言わないという見方です。

その見方にも一理ありますが、長老組は、誰が考えても米国と正面衝突するに決まっている香港国安法の強行採決などはしてほしくはなかったことでしょう。
しかしそれを言い出す元気もなく、そもそも習と話し合ったところで言うことをハイそうですか、と聞くタマじゃないことはとことんわかってきています。
ならば、あえて渦中の栗を拾うようなまねはせずに、共産党支配全体が危なくなってトバッチリを食うようなら顔を出そうか、といったところが真相じゃないでしょうか。

米政府系ラジオRFA( ラジオ・フリー・アジア)はこう伝えたそうです。

「RFAの取材によると、中国の体制内知識人の中には、こんな見方もある。
過去一年、思いもやらない事件が相次ぎ発生した。数か月前は、米中貿易交渉がまだ存在していた。突然ポンペオが盟友とともに民主固化連盟を結成して共同で中国に対抗すると言い出した。みんな北戴河会議で、中共の権力に改変が起きることを期待してた。
北戴河会議で、党内各派閥は、工場の倒産や失業問題、経済衰退などの責任をとうて、最高指導部の人事入れ変えを求めていた。
北戴河会議の進行は非常に厳格化に管理されるようになり、参加者は非常に慎重になり、発言を自主規制するようになっている。ほとんどだれも発言しなくなり、盛り上がりに欠ける会議になった。もちろん、内心に思うところは多々あるが、もはや北戴河会議に(人事や体制改変などを起こす)パワーはなく、そういった可能性は低い」
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)No.138 2020年8月11日

通常はこの北戴河会議で、党中央委員会総会をにらんで次の執行部人事を決めねばならないのですが、党内は無風。
米中戦争すら予想される状況で、好んでチャイナ7なんぞになって泥を被りたくはない、というところではないでしょうか。
いずれにしても、習は急速に「裸の王様」化しているようです。

 

扉写真 バナナです。ちょっとわかんないでしょう。

 

2020年8月12日 (水)

周庭とジミーライ、国安法で逮捕される

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周庭(アグネスチョウ)と蘋果(ひんか・りんご)日報オーナーの黎智英(れい ちえい・ ジミーライ)が逮捕されました。国安法違反の容疑です。
ふたりとも翌日に保釈されました。
彼女の保釈金は、20万香港ドル(270万円)で、パスポートは押収されたそうです。

「香港共同】香港メディアによると、香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で10日に逮捕された香港の民主活動家、周庭氏が11日夜、保釈された。周氏は保釈された警察署の外で記者団の取材に応じ「これまで香港の社会運動に参加してきて4回逮捕されたが、最も怖かった。起訴されるのかどうか分からないが、パスポート(旅券)も没収された」などと語った。  香港紙、蘋果日報のグループ創始者で民主派の黎智英氏も保釈された。  周氏は、外国政府に香港への制裁を訴えていたとして、外国勢力との結託により国家の安全に危害を加えた罪を犯した疑いがかけられたという」(共同8月12日)

周の容疑は国安法の「分離主義煽動」だそうです。

「周氏の公式フェイスブック(Facebook)アカウントは「アグネス・チョウが国安法により、『分離主義を扇動』したとして逮捕されたことが今確認された」と発表。警察筋はAFPに対し、国家の安全をめぐる捜査で10日に逮捕された10人のうちの一人が周氏だったことを認めた」(AFP8月10日)

このアグネスとジミーライの逮捕時に民主活動家10名も同時に逮捕されており、彼らはいまだ保釈されていないようです。
現代の国家において、集会参加を呼びかけただけで治安法で逮捕されるということ自体が、極めて異常、いや世界においては法治が崩壊した国家でなければありえないような所業です。
世界はこれを許してはなりません。

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周庭(アグネスチョウ) AFP

アグネスの容疑事実は公開されていませんが、なにが国安法に抵触したのかさえわかりません。
なぜならばアグネスは、8月5日の集会煽動罪に問われた公判以降ほとんど公的発言はしておらず、わずかの発言も極めて慎重におこなっていたからです。

彼女はデモシストも離脱し、公判では起訴事実を認め、その後の発言もこのような抑制が効いたものでした。

「香港の民主化を求めることは難しいと思うが、信念をもって戦っていきたい」

この発言が「外国勢力との結託」を意味し、「犯罪」を形成するなら、世界に無実の人間などいなくなります。
また、彼女は「外国勢力との結託」に問われることを恐れて、路上での短いコメント以外、彼女は海外メディアとの接触すら絶っていました。
すべて国安法容疑による逮捕を回避するためです。
彼女は保釈後「こんなに恐怖に感じたことはない」と述べていたように、恐ろしいまでの恐怖を感じていたはずです。

というのは、今までの逮捕は香港行政庁の主権の範囲内でしたが、今回は中国そのものが主体だからです。
この香港警察さえ、逮捕した女性デモ参加者に対してのレイプ・妊娠事件が発生するなど、陰惨な収容体制が問題となっており、今回は中国本土への移送という最悪の事態も予想されていたからです。
いったん大陸に移送されれば、人権はおろか、いつ密かに消されても誰にもわからなくなります。

中国が国安法で適用を意図するのは第20条です。

●国安法第20条
国家分裂、国家統一破壊の組織、計画、実施に参与したいかなる者も、武力を使用、あるいは武力を使用すると脅したか否かにかかわらず、すなわち犯罪である。
一) 香港または中華人民共和国のその他の部分を中国人民共和国から分離させようとすること。
二) 香港または中華人民共和国のその他の部分の法的地位を不当に変更すること。
三)  香港または中華人民共和国の一部を外国統治下に移すこと。
 前項の罪を犯した者は、その主犯、あるいは重大な罪の場合、無期懲役又は十年以上の懲役、積極的に参与した者は三年以上十年以下の懲役に、それ以外は三年以下の懲役、拘留又は行動制限におかれる。

この第20条は恐ろしく恣意的な法律で、「武力を使用、あるいは武力を使用すると脅したか否かにかかわらず、すなわち犯罪である」とある以上、実力行動をとるかとらないかにかかわらず、当局が「参与した」と認定すればすべて「犯罪」とみなされます。
どう「参与」を認定するかは当局のサジ加減ひとつ。コイツを潰したいと思えばいかなる言動でも、いや言動すらなくても逮捕監禁が可能という恐るべき「法律」なのです。

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ジョシュア・ウォン(黄之鋒)ウィキ

一方、アグネスと同じ容疑で公判にかけられていたジョシュア・ウォン(黄之鋒・こうしほう)と林朗彦は、起訴事実を認めず徹底抗戦の構えをみせていました。
彼らは非妥協で戦う意志を示しており、発言もまた今までどおりの戦闘的なそれを貫いています。
しかし、黄之鋒は逮捕されていません。

民主化運動内部は定まった役職はあえて設けていませんでしたが、ジョシュアが事実上のリーダー格だとみられており、アグネスはいわばスポークスパーソン役でした。
そして、彼らを支えて反骨の中国批判を展開していたのが、蘋果日報オーナーのジミーライ(黎智英)です。
今回ジミーライは逮捕されており、保釈はされていないようです。

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蘋果日報のジミーライ(黎智英)は反骨精神の塊のような男で、中国に手なずけられた香港言論界で歯に衣を着せぬ直言をしていたことで知られています。
今回、彼のネクストメディアまでが家宅捜索の対象となっていることは、今後の香港を見る上で極めて危険な兆しです。

「今年71歳のジミー・ライは長らく北京から目の敵にされてきたメディア人。香港の民主派政党や雨傘運動、時代革命運動の資金面も支援していた、と言われている。2014年の雨傘運動のときは、ジミー・ライは民主派各団体に4000万香港ドルを寄付したりしていた。
米国の政界とコネクションが太く、2019年7月にはペンス副大統領、ポンペオ国務長官と直接面会し、香港の状況を訴えていた。(略)
ジミー・ライは昨年、中央政法委員会から「禍港四人組」(香港に禍をもたらす4人、ジミー・ライ、李柱銘、陳方安生、何俊仁)と批判された筆頭であった」
(福島香織福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.137 2020年8月10日)

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東京

珍しく中国びいきの東京新聞ですらこの家宅捜索を報じています。

「同日午前10時ごろ、本社の家宅捜索に訪れた警察官は200人。編集局のフロアをテープで封鎖し、逮捕した黎氏を同行して捜査した。蘋果日報は緊張感が漂う捜査の様子をネットを通じて生中継。「新聞社に将来があるかどうか、今は分からない」。黎氏は中継するカメラに向かって報道の自由に対する懸念を吐露した。
香港メディアによると、警察の捜査令状では報道関連の資料までは捜査対象に含まれていなかった。ただ蘋果日報の労働組合は、多くの警察官が記者の資料を閲覧したと指摘し、「明らかに報道機関の権益を侵犯している」と批判した。香港記者協会も記者個人の物品や取材資料にまで捜査が及んだことを問題視。「情報源が守れず、メディアの権力監視の機能をそぎ落とすものだ」と、捜査の法的根拠を示すよう求めた」(東京8月11日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/48207

日本のメディアの諸氏よ、これが正真正銘の言論弾圧です。
官房長官会見で発言を独占しようとして制止されたくらいで「言論弾圧だ」なんてギャーギャーいいなさんな。
オーナーが何をしていようと、その報道機関までもが家宅捜索をされることなど自由主義社会では絶対にありえないことです。
もちろん香港ですら、このようなことはいままでなされたことはなかったし、いかに中国流儀が今や香港を濃厚に覆い尽くそうとしていることがわかります。
その意味で、ジミーライの逮捕は、香港の中国化の分水嶺となるはずです。

ではなぜ、同じ民主運動家のアグネスチョオ、ジュシュア・ウォン、ジミーライの3人に対して、中国当局の対応が微妙に別れたのでしょうか。
これは中国が民衆弾圧をする場合によくやる手口をそのまま踏襲しただけです。

まず、ジョシュア・ウォンを最初に逮捕しなかったのは、彼のようなリーダーを最初に逮捕してしまうと、国際社会が中国制裁で完全に一致してしまうからです。
米国は香港人権法についで更に協力な制裁を化すことに、共和・民主の差はないと言われています。
バイデンですら、トランプ陣営からパンダハガーといわれないために厳しい制裁案を公表しているように、今回ジョシュアが逮捕されれば、米国は徹底的に中国・香港制裁に踏み切ることでしょう。

腰が引けていた欧州各国も沈黙していることが難しくなるはずで、ジョシュアウォンをノーベル平和賞候補にという声があがってもいささかもおかしくはありません。
その場合、ノーベル平和賞受賞者である劉暁波(りゅうぎょうは)を継ぐ人物の新たな誕生になりかねません。

またジョシュア・ウォンは、国案法で逮捕されれば、彼の最大の武器である言論で、ありとあらゆる機会をとらえて中国・香港政府を批判し尽くすことでしょう。
その場合、公判は彼の中国批判の演説会となります。
このような危険性があるショシュアウォンの逮捕は手控えたということです。

そしてアグネスチョウを最初に逮捕したのは、彼女が疲れていたからです。
アグネスはごく普通のまっとうな正義感を持った女の子です。
日本のアイドルやアニメが好きなただの愛くるしい女の子、ユーチューブで「おかえりなさいませ」とはしゃいでみせる、それが彼女の素顔なのです。

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「周庭は自分が「女神」と呼ばれることを好きじゃない、と話していた。それでも、外国メディアに露出して、主張を訴えることが香港のためになるならば、と甘んじて「女神」というシンボル的役割を引き受けてきたのだ。」(福島前掲)

あなたがもしアグネスのような20そこそこの若者で、中国国家が全体重を乗せて弾圧しようとしてきた状況で、正気でいられるでしょうか。
彼女の家族も危ないことは早く止めるようにと説得を続けてきたようです。
アグネスは「民主化の女神」ともてはやされるのも迷惑だったでしょうし、まるで国事犯のような扱いを当局から受けることもたまらない苦痛だったことでしょう。

そんな彼女を最初に逮捕し、メディアのフラッシュの砲列の下を後ろ手に縛って車に乗せるという無惨なことをしてみせ、翌日に保釈してみせる。
それはまさに威嚇であり、当局の温情がいかに深いのかと懐を誇示してみせたのです。
多くの彼女と同年代の香港の若者たちに、お前らが調子づくとこのの女神様と同じめにあうぞ、お前らが彼女をこうさせたんだ、という恫喝しつつ、言うことさえ聞けば温情のひとつももあるのだという融和です。
一日で保釈させたのは、立件できるような容疑など初めからなかったということであり、アグネスが取り調べで全面自供したのかもしれないという不信感を運動内部にバラ撒いて分断することだったと思われます。
反吐がでるほど汚らしい全体主義者だけがとりうる手口です。

三人目のジミーライについては説明する必要はないでしょう。
彼のもっていた言論の力を削ぎ、香港言論界を中国共産党賛美一色の世界にするために、ジミーライの存在は目の上のたんこぶだったのです。
また彼の米国政界コネクションも目障りだったはずです。
このまま彼を放置しておけば、米国に香港内部の情報がだだ漏れとなる、そう中国当局は思ったことでしょう。

この3氏の今後ですが、あくまでも保釈であって、いつ何時気が変わって再逮捕に踏み切るかもしれません
いわば執行猶予のようなもので、この間彼らの動きは制限されます。
またパスポートをとりあげられているために、英国や米国に亡命することもできません。
中国相手にそもそも論を言うことが虚しいのですが、パスポートをとりあげるというのはゴーンのような裁判中の逃亡を防ぐためであって、一回の逮捕くらいで取り上げるということはありえません。

かりに彼らが米英に亡命をするとなると、大使館(領事館)あるいは情報機関が指定するセーフハウスにに逃げ込んで保護を求めるという方法があります。
ジミーライは米国のインテリジェンス機関とも付き合いがあるようですから、その気になればできない相談ではありません。
ただこの方法を選ぶとなると、いまだ抵抗運動が続いている香港民主化運動はリーダー、アイコン、スポンサーの三つを同時に失う事になってしまうことになります。
これが痛手であることは間違いないことです。
海外からの呼びかけも意味があることですが、現地で戦うことととは重みが違って来るのは避けられないことだからです。
一方受け入れる英国もそこまで彼らを守り通していけるか、米国はともかく英国の決意が問われてています。

いずれにしてもアグネスは既に有罪判決を受けており、12月に量刑が定まりますから、即時執行の場合、年末で彼女は収監される可能性が高いのです。
彼女には残された時間はわずかしかありません。
このように国際社会が有効な救援の手を差し伸べないかぎり、彼らの未来は定まっているのです。

ところでこんな中国共産党の唾棄すべき思惑に対して、当の香港市民はどのように受けとめたでしょうか。

「香港市民が、蘋果日報やジミー・ライの逮捕にどのような感情をもっているかは、その日のネクストメディアの株価にも表れているのではないか。確かにネクストメディア株は午前中一時期16%も暴落した、午後には大量に資金が入り、一度は市場開始時の3倍に跳ね上がり、終値は2倍だった」(福島前掲)

ちなみに中国はこんなことを言っています

中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は11日の記者会見で、香港の民主活動家、周庭アグネス・チョウ)氏らの逮捕に日本の菅義偉(すが・よしひで)官房長官が懸念を示したことについて「香港については中国の内政であり、いかなる外部勢力の干渉も許さない」と反発した。その上で「現実をしっかりと認識し、干渉をやめるよう強く促す」と述べ、日本を牽制した。
香港国家安全維持法(国安法)施行で報道の自由が抑圧されているという懸念に対しては、「香港は法治社会であり、いかなる人間も特権はない。法を犯しさえしなければ何の心配もない」と正当化した」(産経8月11日)

 わ、はは、論評の値打ちもない。
逮捕に際してその罪状も示さず、そもそも国安法自体が国外における反中発言についても取り締まり対象だと言っているではありませんか。
いかなる国内法も属地主義が大前提で、他国主権を冒すことができない、これが近代刑法のイロハのイです。
それを世界まで処罰対象を拡げておいて、なにが法治、なにが内政干渉だつうの。豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ。

最後にわが日本ですが、情けないくらい無力です。
自民党の古株に蔓延する恐中病は、今回の習訪日の失敗で、深まりこそすれ薄まったようには見えません。
安倍氏もかつての鋭気を失い、彼らに迎合しているかにみえる中で、習訪日に反対した若手の議員の皆さん、ぜひまた立ち上がっていただきたいものです。

そして、ジョシュア・ウォンとアグネス・チャウ、そしてジミー・ライの3人をノーベル平和賞候補に!
香港を救え!

 

 

2020年8月11日 (火)

小泉ジュニア、低炭素火力の輸出を規制

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小泉ジュニアがまたまた素っ頓狂なことを言い出しました。
就任以来ろくなことはしていませんが、あのセクシー発言やレジ袋廃止などをみていると、このひとはただの大向こう狙いのポピュリストにしか見えません。
パパ譲りの勝負勘でもあれば政治家としては救われるんですが、菅さん経由で二階なんかに接近していたら先が見えていますよ。ま、どうでもいいか。

今回は低炭素石炭火力輸出に制限をかけるとのことです。

「小泉進次郎環境相は26日の閣議後記者会見で、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電所の輸出支援政策見直しについて触れ、相手国で脱炭素への移行が促進されることを輸出要件に含めるべきだとの考えを表明した。政府が6月にも策定する「インフラシステム輸出戦略」の基本方針に盛り込むことを目指す。
この日環境省の有識者検討会が、脱炭素化に政策転換するよう輸出相手国を支援する重要性などを指摘した報告書を取りまとめたのを踏まえ、環境省として新たな方針を示した。小泉氏は、石炭火力は新設後約50年稼働するため相手国のCO2排出量を固定化するほか、投資に見合った資金の回収ができなくなるリスクがあると指摘。「長期的なリスク評価が必要だ。ビジネス最優先で、売れるから売るというだけではだめだ」と述べた」(毎日5月26日)

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愚かな発言です。どうして最も実効性のある低炭素排出火力の世界への普及を止めてしまうのでしょうか。
日本の石炭火力は、環境団体にワーワーいわれるまでもなくその発電の大部分を支えています。
なぜって?そりゃ原子力止めりゃあ、そうなりますよ。
思いつきで全原発を止めてしまったカンって変人奇人狂人のせいですが、それは置くとして、国のエネルギー基幹を担う電力会社は3.11以降石炭火力を中心にせざるをえませんでした。

当初は運用を休止していたポンコツ火力を泣く泣く動かしていたのですが、今や火力の多くは新型の低炭素排出火力に置き換わりつつあります。
このことで日本は、火力=炭酸ガス排出の元凶という批判を回避し、かつ、飛躍的に発電効率を高めることに成功したのです。

こういういいことはどんどん世界に宣伝すべきなのに、ジュニア大臣ときたら欧米の環境NGOがかっこいいと思っているらしくハナからやる気なしです。
そのために、いまでも世界一の炭素排出国であるかのようないわれのないバッシングを受けています。

「火力発電は、燃料を燃やしてつくった水蒸気で蒸気タービンを回し電気をつくるしくみですが、もし効率をアップできれば、燃料使用量の削減、ひいてはCO2排出量の削減につながります。そこで、高効率化に向けたさまざまな技術開発が行われています。下記は、すでに各発電所で導入されている最新鋭の方式です」(資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/co2sakugen.html#topic02

こうして3.11以降日本は火力を低炭素化・効率化に必死に取り組んでいったのですが、その新技術はこのようなものでした。

●超々臨界圧発電方式(USC)
燃料を燃やして蒸気をつくる際に、極限まで高温、高圧にして蒸気タービンを回すシステム
●コンバインド・サイクル発電
高温のガスを燃やしてまずガスタービンを回し、その排ガスの熱を再利用して蒸気をつくることで蒸気タービンも回すシステム
●石炭ガス化複合発電(IGCC)
コンバインド・サイクル発電でガスタービンを回すのに使われる「高温ガス」を、石炭をガス化して作るシステム

そして、気がつけばこの低炭素化・効率化の新技術は飛び抜けて世界最高水準になっていました。

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資源エネルギー庁

たとえば、上図をみていただければ、同じ石炭火力発電といってもインドや米中のそれと比較すると4割以下の炭素排出量となっているのがわかります。
日本はひとことで化石依存と言いながらも、炭素排出の少ないLNG火力(グラフ右端)の比重を高め、新型の低炭素型に置き換えながら、従来型の旧式石炭火力を削減し続けています。

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資源エネルギー庁

そこで問題となるのは火力発電プラントの建設コストですが、これはマスで作ることによってコストを押えていくしかありません。
しかし、国内の電力会社は3.11以降原発が止まったために厳しい経営状況で、海外に活路を見いだすのはしごく当然のことでした。
一方この優れた低炭素火力の輸出は、世界の炭素排出大国であるインドや中国にとっても福音となると見込まれていました。

だって下図のように、世界の約3割の炭酸ガスは中国がボンボン出しているんですからね。
中国では、新型コロナで生産が止まった時、いきなり炭素量が減って、空がきれいになったってくらいなもんです。
日本なんぞ炭素排出量の世界に占める割合は3.6%にすぎません。
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国際エネルギー機関(IEA)の調べによれば、火力発電は新興国を中心にして、今後も重要な発電方法のひとつであり続けることが見込まれています。
石炭火力発電については、欧米では今後減っていくとされていますが、ドイツなどでは有力な炭鉱を抱えていて完全には削減しきれないようです。
またインドや中国、東南アジア諸国はモーレツな経済発展を続けている真っ最中ですから、石炭火力を止めてしまうことは不可能です。
ですから、LNGや石炭火力発電は、今後とも増えこそすれ減ることは考えにくいのです。

中国はいかにも中国らしく一気に原発を増設しようとしていますが、お願い止めて、メイドインチャイナの原発なんか日本の近くに建てるの。
というわけで、今後数十年のスパンでは、世界の化石燃料依存は変化しようがないし、ならばその低炭素化を進めるしか方法はないのはわかりきった話です。

ながながと説明してしまいましたが、こんな常識的なことが判っていないのが小泉ジュニアです。
このひとはたしかパパゆずりで反原発がお好きなようですから、原発を完全停止したまま火力発電を削減したら、日本のエネルギーがどのようになるのかちっとは考えてからにしていただきたいものです。
特に世界の石炭火力を4割も削減できる日本の高度技術はジャンジャンと海外輸出すべきなのです。

それをジュニアときたら、カッコつけてから「ビジネス最優先で、売れるから売るというだけではだめだ」(毎日前掲)なんて言っているんですから、脳みそが足りない。
日本の高度火力発電技術を海外輸出するのは、たんにビジネスではなく(もちろんビジネスとして成立しなければ話になりませんが)、世界の炭酸ガス排出量をおそらく小規模国家の一国分ていど削減することが可能なのです。
そしてそれは単に環境的な影響だけではなく、経済にどのような影響を与えるのかというバランスも必要でしょう。

ところがジュニアときたら、こういう巨視的な目で見れないのです。
今まで大向こう狙いのパーフォーマンスだけで生きてきた政治家のつらさで、世界の環境NGOが海洋プラスチックと言えば、国内事情もろくスッポ考えもしないですぐに従ってしまうし、石炭火力が日本は多いとコップで叱られれば、すぐに屁垂れて石炭火力なんか止めちまえと言いかねないご仁です。
さすがそこまてはできないので(やったら経産省がただおきませんから)、せめて海外環境NGOに怒られないように輸出は止めた、それは化石燃料発電の固定化に繋がるからだぁ、と大見得をきったというわけです。

あのね、ジュニア。あなたがコップの時に横にいた女性が誰だか知っています?
クリスティーナ・フィグレスという環境運動家です。

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クリスティーナ フィグレスと小泉ジュニア。「ボク、セクシー?」なんて言って いるんだろうか。

このフィグレスは有名な環境運動家です。別名環境マフィア。
たとえば環境ビジネスのこんな記事に登場します。

「パリ協定をまとめた国連気候変動枠条約(UNFCCC)前事務局長のクリスティーナ・フィゲレス氏は、国連支援の責任投資原則(PRI)の署名機関に対して、保有資産の1%を2020年までに再生可能エネルギーやクリーンエネルギー投資に振り向けることを公約するよう要請した。現在のPRI署名機関の総資産額は70兆㌦なので、要請額は7000億㌦(約79兆円)になる。署名機関が署名に見合う行動をとれるかどうか。
 フィゲレス氏は、昨年7月にUNFCCCを退任後、パリ協定の達成を推進するための非営利団体、Mission 2020 initiativeの議長を務めている。このほどPRIがベルリンで開いた年次総会で演説、PRIの署名機関に呼び掛けた」(2017年9月28日 環境金融研究機構)
http://rief-jp.org/ct6/73122

このようにフィゲレスは、国連気候変動枠組み条約前事務局長という立場で、国連支援ビジネスに対して1%を再エネやグリーン投資に回すように勧告しています。
この金額だけで実に79兆円。いかにおいしいビジネスかわかるでしょう。

しかもフィゲレスは、自分自身「ミッション2020イニシャチブ」という民間団体もやっていて、その排出権ビジネスにも関わっています。
実はその団体がやっていることのひとつは炭素排出権売買です。

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排出量取引制度(キャップ&トレード)とは? – NPO法人 国際環境経済 ...

「炭素の排出量に価格付けを行う「カーボンプライシング(Carbon Pricing)」の施策には、「排出量取引」と「炭素税」があります。「排出量取引」とは、個々の企業に排出枠(温室効果ガス排出量の限度:キャップ)が設定され、事業者は自らの排出量相当の排出枠を調達する義務を負います。
キャップが未達の場合は罰則があるのが一般的です。事業者が排出枠を調達する方法としては、①オークションによる政府からの購入、②政府からの無償割り当て、③他の事業者からの購入などがあります。事業者は、排出枠の売り買い(トレード)を行うことが可能で、需要と供給により、温室効果ガス(GHG)の価格が形成されます」(国際環境経済研究所)
http://ieei.or.jp/2016/09/special201608008/

簡単にいえば、排出権ビジネスとは、炭素の排出が少ない企業が、多く排出している企業に余った排出権枠を売り、その仲介コミッションを取る商売のことです。
低炭素化運動はこういう排出権ビジネスが絡んだ時に、純粋な環境運動家の手を離れて、腐臭を放ち始めたのです。

ですから、フィグレスにとっては、ジャンジャン炭素を出して貰わねば商売あがったりとなります。
炭素排出国ほどご贔屓筋ですからね。
それをニッポンが低炭素の火力発電を世界に輸出するですって、何言ってるの、営業妨害じゃなんいの、というのがフィデレスの本音です。

ジュニアのトリチウム水を出させないという発言の時にもそう思いましたが、脳味噌が軽いというか、アッチコッチからみられないのです。
関連記事『トリチウム水が「汚染水」だって?』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-229865.html

トリチウム水放出問題ならば、原発=放射能=悪みたいな簡単な公式が一回脳内で成立してしまうと、全部コレなんです。
いくら施設の貯水タンクが満杯だろうと、トリチウム水の海洋放出は条約で認められていようと、微量のトリチウムは危険だぁ、となってしまうようです。
一般ピープルなら反原発オバさんになるくらいで済みますが、あんた、政治家ですぜ。

この低炭素火力発電ならば、推進は固定化につながるなんてバカ言っていないで、さらに推進して高度化を計っていくしかないのです。
それも炭酸ガス問題は世界規模のことですから、輸出することで地球環境をよくしていくはずです。
それを環境NGOなんかの言いぶんをそのまま口移しで言って、悦にいっているんだから、まったくもう。
こんな近視眼ぶりでは、将来首相になるなんて夢のまた夢ですな。

長くなるので次回に続けますが、このグリーン産業こそバイデン陣営が夢中になっているものなのです。
それについては次回に。

 

 

 

2020年8月10日 (月)

なぜ核兵器禁止条約はうさん臭さいんだろうか?

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8月6日と9日は、日本人にとって特別な日です。
それは75年前のこの日、人類史上初めて広島と長崎が核攻撃を受けたことです。
※関連記事『1945年8月6日午前8時15分 広島市島病院上空』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-2d7d.html

上空580メートルで炸裂した原爆から照射されたガンマ線、中性子線を中心とする高エネルギーの放射線は、直下の人々の頭上に降り注ぎました。TNT換算で15キロトンでした。
その結果、当時の広島市の人口35万人(推定)のうち約半数に当たる9万から16万6千人が被爆後2カ月から4カ月以内に死亡したとされています。

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広島原爆資料館

米国は、大戦の後にくるであろう対ソ戦に備えて核兵器の実戦データを欲していました。
砂漠などの実験では原爆の威力が読みきれなかったからです。
ぜひ実際に市民が住む都市に落として、その威力を確認する必要がありました。
ただの政治的警告ならば、無人島でもよかったし、退避勧告をすればよかったのです。

投下された地点が広島・長崎だったのは、一方が海に向かって開かれており、三方が山でとざされている地形が、原爆の威力を高めることを知っていたからです。Photo
一切の事前通告なしに、その威力が実験でしか確かめられていない核兵器を使用する、まさに悪魔の所業です。

8月6日の当日、小倉は近隣の八幡製鉄への空襲の煙て視界が閉ざされており、広島は晴天でした。この瞬間、広島の運命は決まりました。
照準点は市内中心部にあるT字型の相生橋。午前8時15分に投下された原爆は、相生橋の南東約300メートルにある島病院の上空約600メートルでさく裂しました。
それは人々が、夏の暑い日差しの中で一日の平和を祈りながら職場や学校へ急いでいる時間でした。

オバマが広島演説で述べたように、母親は乏しい食料から精一杯の弁当を作り、14歳の少年を送り出しました。
そしてその少年は、学校への途上、数万度の高熱により炭化した柱に変わっていたのでした。

このように広島・長崎合わせて約21万人の犠牲者は、生きながらにして人体実験に供せられたのです。
これは非戦闘員の大量殺戮だけを目的とした明白な国際法違反、すなわち戦争犯罪です。
これを戦争犯罪と呼ばなければ、いったいなにを戦争犯罪と呼ぶのですか。

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毎日

さてこの日、広島・長崎ではあいも変わらない催しが行われました。

「米軍が長崎に原爆を投下してから75年となる9日、原水爆禁止長崎県民会議は長崎市の爆心地公園で核兵器廃絶を訴えて座り込みをし、約150人が参加した。被爆者たちは、日本政府が核兵器禁止条約に賛同せず、長崎を訪問した安倍晋三首相が長崎原爆資料館を今年も訪問しなかったことに怒りの声を上げた。
長崎の被爆者団体は、日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准するよう繰り返し求めているが、政府は米国の核の傘に依存していることを理由に賛同していない。安倍首相はこの日の平和祈念式典でのあいさつでも核兵器禁止条約については触れず、「(核兵器の保有の有無などで)立場の異なる国々の橋渡しに努める」との従来の考えを述べただけだった。
 長崎で被爆した原水爆禁止日本国民会議の川野浩一議長(80)は「75年、核廃絶はなんでできないのか。首相は『橋渡しをする』と言うが何もしない。『米国の核の傘の下でぬくぬくと住んでいけばいい』という考えだ」と批判。参加者は原爆投下時刻の午前11時2分に合わせて黙とうした」(毎日8月9日)

いまさらのように被爆者たちが叫ぶのは、「核廃絶の願い」ですが、そのようなことは日本政府は戦後75年一貫して主張していることにすぎません。
その流れから1976年には核兵器不拡散条約(NPT)に加盟したはずです。

これ以上、今の日本国政府になにを求めようというのでしょうか。
どうやら長崎市長も口にしたように、核兵器禁止条約に加盟しないことをもって非核化に背を向けている日本、と言いたいようです。
それを毎日の記事のように、「米国の核の傘」に入っているから親分を批判できないという印象で批判しています。

半分は正しく、半分は正確ではありません。
日本が安全保障で米国の核の傘に入っているのは自明なことで、ならば中国の核の傘にでも入りますか、という択一問題なのです。
核を抑止するのは核しかありません。
核兵器を使う意志をためらわせるのは、人間の善意でもなければ、反核の理想でもなく、先制使用すれば自らも報復核攻撃を受けてしまう冷厳な事実からにすぎません。

たとえばあの韓国ですら、米韓同盟を廃棄すると自動的にその次の選択肢としてどこの核の傘にはいるのかが迫られることになります。
選択肢は二つ、北の核か、中国の核か、いずれかひとつです。
このように核の傘からの離脱という政治選択は、現今の国際政治体制の下では、別の国の提供する核の傘に入るか、自ら独自核武装するのか、ふたつにひとつしかないのです。

ですから仮に日本が核兵器禁止条約に加盟するとすれば、それは米国の核の傘から離脱し、中国の核の傘に入れてもらうか、独自核武装をするしか方法がありません。
前者は中国と軍事同盟を結ぶという意味ですから考慮にも値しませんが、後者については技術的にほぼ可能なこともあって常にそう主張する人たちもいますが、技術的にできてもそれをしたことによる政治的損失ははかり知れません。
米国と再び戦争をしたい人はどうぞ勝手に、ひとりでおやり下さい。まきこまれるのは御免です。
※関連記事『独自核武装はやってやれなくはないが、そう簡単なことではない』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-b0b9.html

ではなぜ日本はNPTを批准して、核兵器禁止条約を拒否しているのでしょうか。
理由は簡単です。
NPTだけが、現在の国際秩序の下で唯一有効な包括的国際法の要件を備えているからです。
それはNPTの紆余曲折を見れば理解できます。
NPTができたのはあんがい古く1969年7月1日のことです。
しかし採択こそなされましたが実効性はありませんでした。
なぜなら、安保理常任理事国(P5)のうち中仏が批准しておらず、彼らが加わるのはなんとそれから実に24年たった1992年のことだったからです。

ここまで遅れた理由は、採択当時中仏が充分な核兵器を揃えられておらず、その途上でNPTを批准すると核武装にブレーキがかかってしまうからでした。
悪い冗談のようですが、P5すべての国の核武装が完成して初めてNPTは実効性がある国際法となったのです。
これによりP5、別名「核倶楽部」は、核保有の特権の代わりにこれ以上の核拡散と核軍縮を条約上の義務とすることになったわけです。

ただし、だからといってNPTは無意味だということではなく、これをもって核管理の上の国際的枠組みが完成したことは確かです。
もしNPTがなければ、おそらく一国が核武装すればその隣国が対抗上核武装に走り、そのまた隣も核武装するという、いわゆる核の連鎖が世界各地で起きたことは疑い得ません。
たとえばイランとサウジ、アルゼンチンとブラジル、南アフリカ、リビア、そして核保有しているとみられるイスラエルなどはまちがいなく核武装を完了させたはずです。

現実にNPTがあっても、中国の政治的圧力に核が加わったことに恐怖したインドは核武装に走り、その敵対関係にある隣国パキスタンもまた核武装しました。
これらはNPT条約違反として厳しく制裁されましたが、いったん握った核というスーパーパワーを手放すことはありませんでした。
これは、NPTを脱退して核武装に邁進する北朝鮮をみればわかるでしょう。

いったん握った核は二度と手放さない、非核化の特効薬はないのです。
だから迂遠に見えても、今あるNPTの枠組みを弱めることなく、段階的な核軍縮の道を一歩一歩進むしか方法はありません。

ところが、この核兵器禁止条約は、この1992年にできたNPTの枠組みの外にもうひとつ別の枠組みを作ろうというものです。
これは日本のような非核国家を核の傘から引き剥がして分断させる役割をもたらします。
先ほど述べたように、日本が米国の核の傘から離脱して核兵器禁止条約に加入するとなれば、日米同盟はその根幹を揺るがされることになります。

現実に世界のさまざまな国に核の傘を提供しているのは米国であって、中国ではありません。
したがってこの核兵器禁止条約は、とりもなおさず米国の同盟諸国を分断、孤立させる効果をもたらします。
これが、今の米国と中国の対立局面においていかなる働きをするのか、かんがえないでも判ろうというものです。

たしかにNPTは矛盾多き存在です。
たとえば、先述したインド・パキスタンの核容認、そしてなにより北の核武装化、中国の核軍縮不参加などの問題をひとつひとつ具体的に批判し、改革していくべきです。
そのためにNPT条約に問題があるとすれば、第8条の改正手続きで漸進的改革をするべきではありませんか。
それをせずに、いきなりNPTを全否定するかのような新条約を対置すること自体に、なんらかの政治的意図があるように感じられてなりません。

そういえば、こぞって核兵器禁止条約を批准したアフリカ諸国は、中国の札束に頬を張られたような一帯一路の国々でしたし、日本で推進するのも共産党系か旧社会党系なのも偶然ではなさそうです。

 

 

 

2020年8月 9日 (日)

日曜写真館 二千年の風が解きたる蓮の花

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蓮の花天を指したる羅針盤  北大路南天

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二千年の風が解きたる蓮の花   神蔵器

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ひらかむと汀(みぎわ)へ傾ぐ紅蓮 大和田鏡子

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蓮の花無冠で生きるそれもよし 保坂加津夫


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白々と夜明けを待ちて匂ふ蓮  たんと




2020年8月 8日 (土)

今や米国にとっての「硫黄島」となった尖閣

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日本人が第2波が来た、とひとりで騒いでいる最中でも、世界は止まっているわけではありません。
有力政府系シンクタンクが、元第7艦隊司令官を交えた報告書で、 尖閣に日米統合機動展開部隊の設立を提言しました。
(高濱賛『米国、ついに尖閣防衛に積極関与へ』)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61561

ただし、あらかじめお断りしておきますが、ネットではこれを米政府の決定のようなニュアンスで報じていますが、早トチリです。
あくまでこれは米国政府系シンクタンクの報告書であって、米政府の決定そのものではありません。
米政府が政策決定プロセスに民間シンクタンクを用いるケースが多いのは確かですが、民間に一歩先んじた提言をさせてその反応を観察するアドバルーンとしてもよく使われますから、すわっ日米尖閣防衛常備部隊ができるんだと短絡しないで下さい。

米国は日本がこのレポートを読んで、どこまで真剣に独力で尖閣を防衛しようとしているのか、そしてなにを米国に求めて来るのか、ただの有事支援なのか、それとも大きな米中の戦略チェスボードの上で、米国と共にプレイヤーのひとりとして加わるきがあるのか、慎重に見極めようとしています。
このようなやり方をオープンソース手法といって、昨今ではCSIS(国際戦略研究所)の二階幹事長と補佐官を親中派として名指しにしたレポートが衝撃をあたえましたが、あれも同じで政府が公式に口にしにくいことをシンクタンクに言わして、日本政府の反応をみようとしたのです。

さてこの報告書を出したのは、米有力シンクタンク「ナショナル・ビュロー・オブ・アジアン・リサーチ」(NBR・全米アジア研究所)です。
このNBRと業務提携関係にあるのが日本の電通ですが、こう説明しています。

「米国の政策決定過程においてシンクタンクの役割は重要であり、公共政策の立案および社会課題の解決に向けた研究・提言をしているため、立法、行政、司法、メディアに続く“第5の権力”と呼ばれることもあります。日本のシンクタンクとの大きな違いは、非営利、独立系が多いということや、元閣僚・元政府高官の参画が非常に多いことなどが挙げられます」(電通『米国の対日政策に影響を与えるシンクタンク』)
https://dentsu-ho.com/articles/6713

そしてこのNBRは1000もある米国のシンクタンクの中でも、特に米国の対日経済政策について分析と提言をおこなっています。
NBRは今の政権には強い影響力をもっているるものの、それは裏返せば政権が替わると一緒に掃き溜めに捨てられる可能性もあるということになります。
この間、海兵隊の大改革である「戦力2030」などが相次いで出てくるのは、裏返せば来年1月にバイデンになった場合にでも、それまでに一定の既成事実をつくりたいのかもしれません。
バイデンになったら、今度はいきなり中国軍と米中機動展開軍だ、なんてなったら(いくらなんでもないでしょうが)シャレになりませんから。

それはさておき、このようなことを頭に置いた上で高濱氏が紹介したNBRの報告書"Navigating Contested Waters: U.S.-Japan Alliance Coordination in the East China Sea"(「紛争水域航行・東シナ海における日米同盟共同活動」)で提案されている内容をみていきます。
まずこの報告書には、複数の日米軍事専門家が加わっています。
座長としてはジョナソン・グリーナート退役海軍大将(元米第7艦隊司令官・米海軍作戦部長)という、米海軍軍重鎮を据えています。
彼が現場にいたときは横須賀にいたはずですから、海自との連携について最も熟知する立場にあり、更にワシントンに行ってからは作戦部長という要職に着いています。

興味深いのは、グリナートが現場にいた時がもっとも中国海軍と友好関係にあった時代で、当時米国は中国から共同訓練をしないかと持ちかけられています。

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http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2012-12/07/content_27345989_2.htm

上の写真は2012年7月6日、中国人民解放軍海軍の張永義副司令官が、当時米海軍作戦部長のジョナサン・グリナート大将と面談したときのもので、リムパック参加を相談したようです。
この時代、中国が経済発展すれば自動的に中間層が生まれて、その結果民主化が進んで国際社会になじんでいくだろうと米国は楽観していました。
このお気楽な楽観は当時のオバマ政権全体を覆うもので、安全保障補佐官のスーザンライスなどは「米中共同の世界秩序管理」を口にしていたほどです。
もちろんこんな甘い夢想は粉々に砕け散ったのですが、当時米国はこう言っていました。覚えていますか~、米国さん。

クリントンの駐日大使だったウォルター・モンデールとジャパンハンドラーのマイケルグリーンの尖閣についての発言。

「尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」
「同盟国間であっても領土紛争には不介入・中立の立場をとる」

このような中国との蜜月時代を現場で体験したグリナートが、それから8年たって中国に対応する日米常設緊急展開部隊を作る提言をするとは。
いかにこの数年で中国が極端な軍拡に走って国際関係を緊張に陥れたのかわかって、感慨を覚えます。

このグリナートを座長にして、日米軍事専門家5人が行った円卓形式での議論をおこなっています。
日本側からも2名出席しており、武居智久(元海上幕僚長・退官後米海軍大学教授)と小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員)です。

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武居智久元海上幕僚長とNATO海軍司令官

おそらく武居氏は日本の立場を代弁するだけではなく、海軍大学教授という経歴からも日本人の中で最も米海軍を知悉する人物であることはまちがいありません。
グリナート元第7艦隊司令官が座長をする場に元海上幕僚長の彼が招かれたこと自体で、この報告書の立ち位置がわかるでしょう。

高濱氏の記事を要約します。
原文 "US-Japan Alliance Coordination and the East China Sea"
https://www.nbr.org/wp-content/uploads/pdfs/publications/ap15-3_eastchinasea_rt_july2020.pdf#search=%27Navigating+Contested+Waters%3A+U.S.Japan+Alliance+Coordination+in+the+East+China+Sea%27

「中国は、尖閣諸島周辺で連日のように準軍事活動を続けることでこの紛争水域が自国の領海だとの主張をデモンストレーションしている。
また中国人民解放軍は、東シナ海およびその延長水域で『接近阻止・領域拒否』(A2/AD)能力強化を図っている。
なぜならば中国は2035年までには軍事力の近代化を達成し、21世紀中葉には世界最大級の軍事大国になることを目指しているからだ。
日本の海上保安庁は、尖閣諸島が日本の施政下にあることを今後も引き続き主張し、中国がこれに反発すれば当然武力衝突となり、中国海軍の出動といった事態を招くだろう。
その結果、尖閣諸島周辺をめぐる軍事衝突となる可能性は十分あり得る。
準軍事活動から軍事活動にエスカレートさせないためにも軍事バランスと抑止力は不可欠になってくる」(高濱前掲)

ポイントを私なりに整理します。

①尖閣水域で中国は準軍事活動を続けていて領土化を企んでいる。
②中国は東シナ海にA2/AD(接近阻・領域拒否)の軍事的バリケードを作ろうとしている。
③中国の最終目的は、巨大海軍国建設による世界の支配である。
④このまま状況が推移すれば軍事バランスが崩れて、日中は尖閣で軍事衝突に至るだろう。
⑤その場合、日本の勝機は先になればなるほど薄い。
⑥崩れかかっている尖閣諸島水域の軍事バランスを早急に正常に戻さねばならない。

そしてここで出てくるのが、「日米統合機動展開部隊」常設構想です。
既に自衛隊は、尖閣諸島防衛のための陸海空3自衛隊を統合した常設の機動展開部隊を創設し、さらにはこの部隊と在沖海兵隊との連携強化する構想がありますが、米側はその一歩先の「日米統合機動展開部隊」常設構想を出したということになります。

今や、尖閣での日中軍事バランスは大きく傾こうとしています。
もはや海保では対応しきれない状況が生まれつつあります。
そして時を同じくして、米国は尖閣水域が実は米国世界戦略の要衝であると気がついたようです。
それは米海兵隊の大規模な再編「戦力2030」にあらわされています。

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関連記事 『海兵隊の新方針 沖縄に対艦ミサイル部隊を展開させる』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-1a5e66.html

要約すると

①戦車部隊の全廃・砲兵部隊・オスプレイ・水陸両用車両・F35Bの削減
②1万2000人削減
③ロケット部隊(HIMARS) を7隊から21隊に増強し、「海兵沿岸連隊」(MLR)を沖縄島しょう部に配備

このような海兵隊の今までの戦略・戦術の根本的見直しと並行して、海軍においても日米統合展開部隊が誕生する可能性が生まれてきました。
あるシンクタンクの識者は尖閣についてこのようなことを述べたそうです。

「米国が推進している『インド洋太平洋地域戦略』にとって尖閣諸島は太平洋戦争当時の硫黄島と同じだ」
(高濱賛前掲)

今や米国にとって尖閣は「硫黄島」だそうです。
硫黄島は大戦当時、首都爆撃で大手をかけたい米国にとって絶対にとらねばならない島でした。
戦史に刻まれる激戦が繰り広げられ、日本軍は守備兵力およそ2万人のうちの96%が戦死、もしくは行方不明となっています。
いまでも大部分の遺骨は遺族のもとに帰っていません。
一方で米軍も、死傷者数で日本軍を上回る損害を出しています。

このように米国が「硫黄島」と言う場合、いかなる損害を被っても絶対に押えねばならない軍事的要衝のシンボルの意味として使います。
そして今現代の米国にとっての「硫黄島」とは、他ならぬ尖閣なのです。
それは中国にとっても同じことです。



※関連記事『なぜ、中国は尖閣諸島を狙うのか』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-16d947.html


 

2020年8月 7日 (金)

PCR検査万能主義を捨てろ

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昨日もまた、どこそこで「感染者」が出たとメディア大本営は血相を変えて叫んでいます。
まるで魔女狩りです。
あのね、PCR検査で出たといっても、昨日も書いたとおり、「曝露」なのか「感染」なのか、はたまた「発現」なのか明確に報道しなさいよ。
今日は「患者」と表記しましたが「発現」のほうが的確だと考えて修正しました。

昨日のおさらいですが、この三つの概念は区別されています。

・曝露・体内の細胞がウィルスに曝されること。
・感染・体内の細胞にウィルスが侵入すること。
・発現・発症すること。

ね、まったく違うでしょう。ヒトはウィルスに曝されても、皆んなが皆んな発症するわけではありません。
そりゃそうです。もしそうだったら、病原菌がどれだけ浮遊しているかわからない病院なんぞにいっただけで、即病気です。
ところがどっこい、ヒトはよくできているもんで簡単には病気になりません。
それは、体内にキラーT細胞という防御システムを持っているからで、この優れモノはウィルスが侵入してしまった細胞ごと破壊してしまいます。
ですから、かりに曝露から感染に至っても、それで発症、つまり患者になるわけじゃないのです。
これが新型コロナで無症状が極端に多い最大の理由です。

しかし、PCR検査はこのキラーT細胞が破壊したウィルスの残骸までも増幅して感知してしまいます。
また、日本疫学会も認めているように、採取する部位、発症からの時間などで変化します。

スゴイといえばスゴイし、そこまで頼んでいないよとも思いますが、すると判定は「陽性」です。
逆に、ウィルス採取する鼻や喉の粘膜にいない場合は陰性判定となります。
しかしこれはハズレだとわかりますね。

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まぁ、PCR検査の正確さというのはしょせんこの程度なのです。
PCR検査の診断特性は感度70%と考えられています。

「感度とは、今回の新型コロナウイルス感染の場合、本当に感染している人の中で、どのくらいの割合を診断できるか(感染の把握ができるか)?ということです。100人の真の感染者がいる場合、100人すべてを把握できれば、感度は、100%です」(日本疫学会)
https://jeaweb.jp/covid/qa/index.html#q1-1-1

「感度」なんていう言い方をするからわかりにくくなりますが、要するに「正確度」のことです。
正確度(感度)70%ということは、逆に偽陰性判定もあるわけです。

「感染から8日目(症状発現の3日後)に偽陰性割合が最も低くなり、その値が、20% (95%信頼区間:12% ― 30%)となることから、感度として一番よい値になるのが、感染から8日目(症状発現の3日後)の80%(95%信頼区間:70%-88%)となります」(日本疫学会前掲)

職場によって陰性証明を持ってこい、来なければオフィースにいれないぞ、なんて企業があるようですが、陰性判定されてホっとしても実は陽性だという可能性もあります。
陰性証明書を会社に出したら、数日置いた別な検査で実は陽性なんてこともありえるわけです。
採取する適期があって、ゴホゴホと咳き込み37.5度の熱が出てから3日以内だと陰性と判定される確率が高いからです。
偽陰性はある意味で偽陽性より罪作りですね
ほんとうは陽性ですからウィルスを周囲に放出し続けているんですが、当人も企業もかんせんしてない、陰性証明を持っているからで安心しちゃうんですよ。

これについて感染症医の西村秀一氏はこう言っています。

「検体採取の仕方がまずいと「ある」ものも「ない」ということになる。だからPCR検査をやって陰性だから安心だということにはならない。職場から「陰性の証明を持ってこいといわれた」という話があるが、そのときに陰性でも翌日に陽性になることもある。つまり、検査を受けた人にとって「陰性」という結果の使いみちはないんです。
ウイルスの死骸にたまたま触れて鼻をさわったというようなときも陽性になりうる。本当に陽性であっても、生きているウイルスではなく人に感染させない不活性ウイルスかもしれない」(西村秀一)『「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題』)
https://toyokeizai.net/articles/-/349635

と言う具合に、陰性判定の翌日に陽性と逆転する場合もあって、いわば当たるも八卦、当たらぬも八卦、といっちゃ失礼ですが、そのていどのものなのです。

またPCR検査は誰でもできるわけではありません。
今検査ができる技師を2万人体制にするなんて目標を掲げていますが、少なくとも新型コロナが流行っている間は無理です。

その理由は、PCR検査できる機械が足りないことです。
そもそもPCR検査は、遺伝子検査を行っている病院にしか検査機械がありません。
よく中国が簡易検査キットを量産してジャンジャン配布しているが、ということを言う人がいますが、検査の精度はほとんどコックリさん並のレベルで気休めにもなりません。
いやむしろそんな簡易キットで陽性判定を受けて、病院に駆け込まれるほうが混乱の原因になります。

また、PCR検査ができる専門技師が少数です。
これも理由は機械の少なさと一緒で、遺伝子検査という特殊な分野だからです。
いちおう遺伝子検査も臨床検査技師の領域ではあるのですが、病院によって遺伝子検査を取り扱っている病院もあればしていない病院もあり、臨床検査技師の資格があれば誰でもできるわけではありません。

というわけで、PCR検査は素人の想像以上に正確度が低く、かつできる検査技師も限られているのです。
これを知ってか知らずか、「PCRを国民全員にしろ。しないのは、アベの感染隠しだぁ。実はもう感染は蔓延しているんだぁぁぁ(エコーかけてね)」なんて喚いている人たちがいますが、迷惑な話です。

現実にメディアが言うように、国民皆PCRなんてことをやったら、3割の偽陽性と偽陰性がでてしまいますから、このようなことになります。
医師の南郷栄秀はこう試算しています。

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http://spell.umin.jp/thespellblog/?p=336

なんと偽陰性が8万4千700人、偽陽性が1万3千671人でてしまいます。
偽陽性の人たちは、容赦なく隔離施設行きですからたちまち刈り上げたホテルが満杯となります。

このようなことを知ってか知らずか、メディアは今日もまた「感染者急増。どこそこで1名。クラスター発生か!」なんて叫んでいるわけです。
まことに無知蒙昧。粗暴野卑。

 

2020年8月 6日 (木)

いつまでやっているんだ「第2波まつり」

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毎日メディアはなにをしているのかと思います。いえなに、あの「第2波祭り」のことです。
連日、テレビは朝から晩までこれだけ、おいおい少しは別なことをやってみたらどうよ、と言いたくもなりますが、ホント飽きないね、あの人ら。

山中伸弥教授まで引っぱり出して「厳重注意だから、元の生活には戻れない」って、山中さんは感染症については専門外ですから、そうとうに出すぎ、言い過ぎ。
小池「女帝」や西村担当相まで、お盆に帰るなとのたまうくらいですから、デニー知事なんぞ「沖縄を助けて下さい」なんて悲痛な声で訴える始末です。
※西川と打っていました。もちろん西村です。ご指摘ありがとうございます。
やるべき軽症者用ホテルの確保も怠って、いざとなると他人の善意にすがるんだから、まったくもう。
首里城の防火対策を杜撰にしておきながら、全焼すると真っ先に政府に泣きついたのといっしょです。

落ち着きなさい。これが第2波ならもうとっくに来ています。
しかもどうやらこの波はかつての3月頃にヨーロッパを襲ったものから弱毒化している気配さえあります。
この弱毒化については別稿に譲りますが、そうとでも考えないとこの重症患者の少なさが説明できなくなります。
感染拡大だ、何百人一日で出た、と報じられる場合、メディアが密かに隠している数字があります。

それが重症者数です。
毎日必要な情報を提供し続けている河野太郎防衛相のツイッターから引用します。
河野さんっていいね、歯切れよくて、頭脳明晰で、私ファンになりそう。
直近の8月4日と5日の感染拡大状況です。

8月4日
国内感染者39858
 退院27197
 入院治療を要する者11347
  重症者88
 死亡1016
 確認中330

8月5日
国内感染者41129
 退院28028
 入院治療を要する者12055
 重症者104
 死亡1022
 確認中64

   感染者増加分・・・1271人
  入院を要する者増加分・・・708人
   重症者増加分・・・16人
    死亡増加分・・・・・6人
    退院増加分・・・831人

つまり確かに感染者数は一日で千人超えをして増えているように見えますが、重症者・死亡者はケタが違います。
重症者は16人増えたに過ぎず、死亡者に至ってはわずか6人だけしか増加していないということです。
しかも重症化するのは圧倒的に70歳台から80歳台で、この年齢層での死亡はこんなことがなければ寿命に紛れ込んでしまうていどの数字です。

同じコロナウィルス一家の季節性インフルエンザの関連死は新型コロナの10倍に達し、その症状も遥かに劇症だと言われています。
新型コロナより季節性インフルのほうがコワイというのも事実なのです。

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「感染者」が増えた理由ははっきりしています。
PCR検査数を増やしたからです。
よく厚労大臣や西村さんが言っているでしょう。あの人らがいうと言い訳がましく聞えるかもしれませんが、事実なんだから仕方がない。
そりゃ3倍4倍と検査を増やしたら、陽性も比例して増えますよ、ただそれだけのことです。
そしてここが肝心なことですが、今メディアが「感染者」と称しているのはただのPCR検査で陽性判定された者にすぎません。

重症者数は感染数の増加から遅れて来るという専門家がいますし、曝露と感染の違いを考慮すればそれはほんとうなのですが、では2週間ていどの経過観察の期間を置いて重症者が急増したかといえば、していないではありませんか。
たぶん考えられる理由は三つです。

①PCR検査を急激に増やしたから。
②ウィルスが高温に弱く、夏となって温度が急上昇したため。
③新型コロナが弱毒化したため。

②は秋になって感染が再爆発したらそうだとわかるでしょう。それまで待つしかありません。
③についてはさまざまな専門家が口にしていますが、まだ証拠が不十分です。そのうちこれについては書きます。

さて①のPCR検査数が増えたということですが、それにはこのPCR検査がなにをしているのか、知っておかねばなりません。
PCR検査は、要はウィルスの数を数えているのです。ちょうど放射能測定で測定器が放射性物質の数をカウントしていたのと一緒です。
そしてウィルスが少しでもあれば陽性判定を出します。
かなりの時間がかかって、検査の処理数にも限界があります。

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ここからが問題なのですが、ウィルスの数だけでは正確に状況を掴むことができません。
だってレベルがいくつかあるんですから。
ただウィルスが体内に侵入しただけの状況を「曝露」(ばくろ)と呼びます。
この意味は単に「ウィルスにさらされること」(大辞林)であって感染そのものではありません。
感染とは、「病原体が体内に侵入すること。特に、そのために種々の病態が起こること」(国語辞書)のことで、細胞内にウィルスが入ることです。

いいですか、この違い。
体内の細胞にウィルスが曝されることが「曝露」で、ウィルスが細胞内に侵入すれば「感染」です。
更に発症すれば「患者」です。
この違いを国やメディアが説明しないからおかしくなるのです。
政権を叩くことだけが仕事だと思ってるメディアはしかたないとして、どうして国が説明しないのかわかりません。

PCR検査は陰か陽の二分法で表示してしまいますから、曝露であろうと感染であろうと、あるいは患者だろうと、一括して「陽性」と判定してしまいます。
いわば利口なバカなのです。
ところが、現実には細胞内にウィルスが侵入してもそのまま発症に至るとは限りません。
というのは人体にはキラーT細胞という防御兵器があって、感染した細胞を丸ごと破壊できてしまいます。
このようにウィルスの増殖が阻止されることを「自然免疫」、あるいは自然治癒力と呼びます。
健康に気をつけてスポーツをしたり有害なものを控える、テレビを消して朝日は読まない、こんなストレスにならないような暮らしをしていれば免疫力が上がって、仮に曝露されても感染には至りません。
ですから、いくらウィルスに曝露されても、必ずしも「感染者」となるということはなく、その98%が自然治癒してしまいます。
これが新型コロナで無症状者・軽症者が9割以上を占める理由です。
しかしPCR検査の感度は日進月歩で上昇していて、感染拡大初期の春の頃とは格段に性能が向上しています。
性能が向上するのはけっこうですが、するとPCRは既にキラーT細胞が破壊したウィルスの残骸まで感知してしまうようになりました。
なんせ一個、2個のウィルスに曝露されでも、「はい、あなたは陽性者」と判定してしまうようになったんですから、いいのか悪いのか。
もちろんこんなていどの数では、細胞は「感染」しても自然免疫で破壊されてしまいます。
これをメディアはバカだから騒ぐのはわかりますが、行政や病院・保健所までただの「陽性者」を「感染者」だと言ってしまうから混乱が起きるのです。
こんな不毛なゼロリスク論はもうやめませんか。

 

 

2020年8月 5日 (水)

海保にできること、海自にできること

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昨日の記事の後半に、「中国はもっけの幸いと国際世論にうったえるでしょう」とバカデカイ文字で打ってありますが、ただの凡ミスです。
特にあのフレーズを強調したかったわけではありませんので元の大きさに戻しておきました(汗)。

finさんからのコメントですが、山路さんにお願いしてしまいましたが、コメントだけにとらわれず私からも。

「海保だけで対応できるとはとても思いません。物理的に向こうの方が圧倒的に上でしょう。だから日米共同訓練をやれと言う話ですが自衛隊も出せないのであれば米軍も出てくることだって容易にはできないのではないのですか?」

まず頭を整理してください。いくつかのことが日本のネット界ではゴッチャに議論する傾向があります。切り分けてみます。

①現時点における中国民間漁船が大挙襲来した場合の対処。
②同じく民間漁船が接続水域・領海に侵入した場合。
③中国公船・軍艦が接続水域・領海に侵入した場合。

①は日本の排他的経済水域(EEZ)に侵入した場合は排除しますが、北緯27度線以南の海域、つまり尖閣諸島周辺海域も含む海域は日中で棚上げにしてしまったために、まことに腹が立ちますが、中国漁船の活動を取り締まれません。
領海でありながら、他国の漁船に操業を許している今の日中漁業協定を改訂する必要があります。

次に②ですが、同じく日中漁業協定では、尖閣諸島周辺海域は「法令適用除外水域」に属しますから中国公船の取り締まり権限を否定していません。
したがって、領海であるにもかかわらず中国公船はが国の民間船にのみ警備活動をすることが可能です。
ただし、日本漁船に対してはそのような権限を中国に認めていないので、日本漁船に対する追い回しはあきらかな協定違反行為です。

③中国公船が接続水域・領海に入ろうと、それ自体は無害通航権によって保護されています。
しかしあくまでも「無害」の範疇であって、軍事的威嚇(艦載砲の旋回・艦載航空機の離発着・潜水艦の潜行したままの通過など)という「有害」行為は当該国への敵対行動として受け取られます。

このように日本が領海においても民間漁船の操業を容認し、公船の活動も許してしまうようなシロモノが日中漁業協定です。
まずこれの改訂交渉を本格化するべきですが、おそらく今の戦狼路線に邁進する中国は聞く耳を持たないはずです。
ですから日本が国内法でできる領海法を早急に作って、取り締まれる国内法整備をせねばならないのです。
国内法を作る場合、外交比例の原則に則って中国・台湾の領海法と同等のものを目指すべきです。

しかしいくら棚上げ水域だからと言って好き放題に接続水域や領海でのさばらせておくわけにはいかないので、海保がそのつど随伴して「ここは日本領海だ。判っているのか、バーロー」(こんな言葉使いはするわきゃありませんが)と警告して、出て行くまでピッタリと食いつきます。

中国は海警を人民解放軍の指揮下に置き、更に海軍のフリゲート艦まで白く塗って投入しています。
だから中国の海警なんて海軍と一緒だという人もいますが、半分は正しいのですが、半分は大げさです。
相手が船を白い沿岸警備隊の標準色に塗り、船腹にデカデカとチャイナコーストガードと書いてある以上、海保と同等のものとして対応せねばなりません。
実は
あれは海軍だぞ、海自を出せってふうにはいかないのです。

なおネットで「機関銃を中国海警は積んでいるぞ」なんて言っている人がいましたが、そんなもんなら日本も積んでいるって(笑)。
ただ海警艦艇の大きさが今や自衛艦クラスがザラとなって、小型の海保艦艇が手こずっているのは確かですが。

finさんが言うように「物理的には圧倒的に向こうが上」なのは事実ですが、だからと言ってこちらが自衛隊を出せば向こうも海軍を出してくるに決まっていますから、いたずらなエスカレーションを回避するために第11管区は死に物狂いで対応しているのです。
くりかえしますが、相手が海警なら海保対応を貫くしかないのです。

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手前が中国海警。接近寸前で警戒に当たっているのが日本の海保。このカラーリングはコーストガードの世界基準。

と、ここまでは昨日のおさらいですが、なぜ海保に領海警備をやってもらっているかということですが、これは戦後に戦争の反省から生まれた「知恵」なのです。
海保は海の警察ですから、法執行が任務です。
日本の法律に則って、自国民を守り、自国領土を防衛するのが仕事です。
なりゆきで外国ともやり合うこともないとはいえませんが、あくまでも国内の法の番人であってそれが主任務ではありません。
ですから海保にとって、領海警備は難しいぎりぎりのゾーンなのです。

一方自衛隊の主任務は、外国の軍事行動を抑止し、侵略を阻止することにあります。
ですからまずは海保が出て、相手側の海保の動きに対応します。
するとこちらの公船と相手国の公船とのつばぜり合いになりますから、公船は互いに緩衝帯となっているわけです。

原則として、海自が直接に他国の艦艇に対応することはありえません。
それは
いきなり海軍と海軍が領海警備をやるとなると戦闘に発展する場合があるからです。
他国公船との対応は一義的には海保が対応し、海自はそのバックアップに徹します。

しかし、いきなり相手が軍艦を出してきたらどうでしょうか。
ここで冒頭のfinさんの質問になるわけですが、下の図は2016年6月の中国とロシア海軍の共同訓練の航跡図ですが、この時は日本の海自が追尾し続けています。
なぜかといえば、中国が海軍を接続水域・領海に侵犯させてきたからです。
おそらく接続水域に侵入する前から国際波長で警告し続けていたはずです。

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最近でも、奄美水域で中国海軍の原潜が潜行したまま接続水域を通航しようとしました。

「防衛省は20日、奄美大島鹿児島県)沖の日本の接続水域を他国の潜水艦が潜航したと発表した。国籍は公表していないが、政府関係者によると中国海軍のものとみられる。18日午後に接続水域に入り、20日午前には接続水域の外に出たことを確認したという。
接続水域は領海の外側12カイリ(約22キロ)の海域」(朝日6月21日)

「河野太郎防衛相は23日の記者会見で、18日に鹿児島・奄美大島沖の接続水域内を潜ったまま西進した外国潜水艦について、「中国のものだと推定している」と述べた。潜水艦の国籍や種類の情報は自衛隊の把握能力に関わるため、公表は異例だ。
河野氏は「尖閣諸島をはじめ、さまざまな情勢に鑑みて、潜水艦の国籍を公表すべきと判断した」と強調。接続水域の潜航自体に問題はないとの認識を示すとともに、「外務省から中国に対して『関心表明』は行っている。中国の意図を明確に推し量っていく必要がある」と指摘した。
潜水艦は横当島(同県)の西の接続水域外を西に進んだことが確認されている。河野氏によると、その後、中国方向に航行したという」
(アラブニュース6月23日)

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朝日

この時、海自はヘリ空母「かが」まで投入し、空と海上から徹底的に追尾し続けたようです。
この中国潜水艦は6月18日、太平洋から西に進んで、奄美大島の北東の接続水域に入り、領海と領海に挟まれた狭い接続水域を縫うように西に進み、20日午前に接続水域の外に出て、横当島(鹿児島県)西をさらに西に向かったと発表されています。

接続水域は潜水したままの通航が認められていますから、ギリギリを縫って航行したということになりますが、なめたまねをしてくれます。
たぶん海自のP3Cからはなんどとなくアクティブソナー(ピン)を打たれてていたはずで、生きた心地がしなかったことでしょう。
「かが」の対潜ヘリだけで片手の数は頭上にいたはずですから、まるで大名行列のようににぎやかな中国潜水艦の奄美の道行でした(笑)。
日本の潜水艦探知能力を調べに来たと言われていますが、世界一なのは海軍業界では有名な話で、いいかげんにしてほしいものです。

このように、侵入した水域が接続水域で、侵入したのが海軍艦艇の場合、海自がお相手します。
警察で手に余る場合は軍隊がというふうに、相手が海警なら海保、中国海軍なら海自という棲み分けです。

最後に、finさんもふれていた尖閣水域の日米共同訓練ですが、「日本が出てこれないようでは米軍もでてこれない」ということはありません。
私が書いたのは、あくまでも日常的警備の局面のことを言っているのであって、訓練は別です。
海自は尖閣水域で訓練やパトロールを続けていますが、あくまでも対応する主体が海保だというだけのことで、近隣の海域には必ずバックアップの海自艦艇が遊弋しているはずです。
ただこれを公表しないことで相手国に無駄な情報を与えず、しかも凄み(抑止)を効かせている、ということにすぎません。

訓練は独自にやっているはずで、在日米軍司令官が尖閣支援を明言した以上、謹んで日米共同訓練にまで格上げしてもなんの差し障りもないはずです。
後は政治的判断を待つだけのことで、遠からずやると思われます。
実施するなら、レーガン空母打撃群と自衛艦のコラボという壮観な眺めになるはずです。


 

2020年8月 4日 (火)

領海法がなくて、どうやって戦えというんだろう

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長すぎた梅雨が終りましたので、衣替えをいたしました。朝から何回か変えてすいません。涼しげなのがやっぱりいいか。

さて、中国が記録更新が止まったようですがこれはただの台風避難のようで、状況にはいささかの変化もありません。
その状況とは、中国が尖閣の島そのものをいったん置いて、先に尖閣水域を領海として既成事実化する意図です。

この8月16日には、中国が勝手に設けた禁漁期間開けということで、尖閣諸島周辺の漁を解禁しますが、中国当局は漁師らに尖閣諸島に近付かないよう指示したことが分かりました。 
2年前には中国の漁船300隻ほどが尖閣諸島周辺に押し寄せ、大変な事態となったことを受けて、菅官房長官の弁です。

「沖縄県の尖閣諸島周辺海域で、中国側の活動が活発化していることに関連し、菅官房長官は、過去に中国が設けている禁漁期間のあと、中国海警局の船が漁船とともに、日本の領海に侵入したことを踏まえ、ことしも動向を注視し対応に万全を期す考えを示しました。
沖縄県の尖閣諸島周辺海域では、日本と中国の漁業協定に基づき、中国の漁船は日本の領海の外で操業することは認められていますが、4年前の平成28年8月に、中国政府が独自に設けている禁漁期間が終わったあと、中国海警局の船が多くの漁船とともに日本の領海に侵入し、緊張が高まりました(NHK8月3日)

中国は日本政府の抗議に対して、「日本にはその資格がない」と一蹴しました。
まぁこのていどは言うでしょうな、彼らにすれば尖閣水域は既に「中国領海」だからで、日本の漁船が違法操業しているという認識だからです。
だから、日本漁船を取り締まるべく執拗に追尾し、やがて機関銃を発砲することでしょう。

こう言うとき沖縄県になにかを求めても無駄です。
デニー氏は日本漁民を叱りつけたことはあっても、中国海警察に抗議したことは一回もないという実にとほほな人物なのです。

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尖閣諸島に出漁した仲間均市議の漁船を追尾する中国公船「海警1501」=5月24日午前(仲間市議提供)

「尖閣諸島で領海侵入を繰り返す中国公船に関し、玉城デニー知事が「中国公船がパトロールしているので、故意に刺激するようなことは控えなければならない」と述べたことに、1日、八重山の漁業者らから「領海内で漁をすることの何が悪いのか」と反発の声が上がった。尖閣問題だけでなく、台湾との「日台漁業協定(取り決め)」などで、離島の漁業者が被害を受けているとの指摘もあった。」(八重山日報2019年6月2日)
http://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/7292

おそらくこの16日には、中国福建省の漁港からは600隻ともいわれる大漁船団が尖閣に登場することでしょう。

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中国漁船団を甘く見てはいけません。中国はこのような漁船団を準軍事的集団として考えています。
かならず司令船が随伴して指揮をとり、海上民兵という兵隊も多く乗っているはずです。
銃火器は持っていないと考えるほうがのどかでしょう。

では、日本側に何ができるでしょうか。
たしかに尖閣諸島周辺海域は、日本の領海であることは間違いありません。
領海に他国の船舶が侵入した場合、直ちに「領海侵犯」事案として実力で排除できるのかといえば、できません。
実は実力で排除できるのは、海警のような公船か中国海軍の軍艦だけなのです。

領海侵犯が成立するためには、以下の条件が成立せねばなりません。

①侵入した船舶が、政府公船・軍艦であること。
民間船の侵入は、単なる不法入国の範疇だから扱いが別枠。
②侵入した外国公船が国際海洋法の無害通航権を犯した場合。
無害通航に当たらないと領海国が判断した場合のみ、初めて排除宣言が可能。

 

民間船が日本の漁場を犯した場合、指をくわえてみていろということなのかといえば違います。

ただし、それは日本のEEZ(排他的経済水域)で違法操業した場合に限ります。
日本と中国は日中漁業協定を結んでいます。実に細かく水域がゾーニングされているのでご注意ください。
日中漁業協定 - Wikipedia

 

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宮古毎日

1997年の日中漁業協定によって、他国のEEZ内で操業する場合には、相手国の許可が必要です。
中国漁船が日本のEEZで操業するなら、日本の許可が必要です。
ややっこしいのは、日中漁業協定で棚上げとなっている
北緯27度線以南の海域です。
この27度以南の水域は日中漁業協定第6条(b)によってどちらの権益に属するのか決まっていないのです。
この領有権が明確にされていない水域に尖閣が入っているのです。ああ、ややっこしい。

つまり、日中漁業協定はこの尖閣を暫定水域としてしまうことで、事実上中国の操業を認めてしまっているのです。
領海において外国漁船に操業を許容するという主権放棄がいまになって響いています。

「現行の日中漁業協定は、北緯27度以南の東シナ海の日本EEZについて棚上げしており、この海域で中国が自国漁船を取り締まる権利を否定していない。中国の漁業監視船は、これを根拠に行動することができる。
日本政府はこの海域を「EZ漁業法特例対象海域」に指定し、中国漁船に対して漁業関係法令を適用していない。中国漁船もまた、これを根拠として操業している。
日本国民として非常に残念なことだが、中国政府には「自国の漁業監視船の活動を日本が容認している」と主張するだけの根拠がある、と考えるのが国際法的にも自然なのである」(静岡県立大学助教・西恭之)

中国はこのような日本の弱腰をあらかじめ計算していますから、2016年のように北緯27度以南の尖閣水域にまで大挙して漁船を入れてきて、協定の棚上げを一方的に破っています。

要するに、尖閣諸島の領有問題を臭いものに蓋をしたかった日本政府が、この海域を「法令適用除外水域」とするという愚挙をしたために、自分で自分の首を締めてしまったということです。

実は憂鬱になるのですが、日本の対応はむしろ後退しています。
たとえば政府の白書類にしても、その間、以下のように中途半端な記述を続けています。
静岡県立大学助教・西恭之氏によれば

「水産庁はと言えば、日中漁業協定発効(2000年6月)後の水産白書は、北緯27度以南の海域の棚上げに触れていない。
水産庁は「日中漁業協定の概要」(2010年11月)に「北緯27度以南の東海の協定水域及び東海より南の東経125度30分以西の協定水域(南海の中国の排他的経済水域を除く)においては、既存の漁業秩序を維持する」と記しているものの、「既存の漁業秩序」とは、旧漁業協定時代と同様に旗国が漁船を取り締まる(中国漁船なら中国側が、日本漁船なら日本側が取り締まる)意味であることを明記していない。
(略)
国会の議論は、さらに低調かつ関心の希薄さをさらけ出している。国会では、棚上げされた二つの水域のうち、北緯30度40分以北、九州沖「中間水域」の東限線に関心が集中した。ここは豊かな漁場で、日中韓三国の漁船が同じ海域で操業していることが理由である。尖閣・先島諸島領海の周りの27度以南水域については2003年4-5月、社民党の東門美津子衆議院議員(現沖縄市長)が質問し、政府側が日中漁業協定改定の意思はないと答弁したほかは、議論されていない。
以上が日本の領海や排他的経済水域をめぐる対応の現状である。国民が知らされていないだけでなく、国会議員や関係省庁の官僚の認識も怪しい状態で事件が発生したりすれば、昨年9月の尖閣沖での中国漁船の衝突事案で明らかだったように、迅速な対応など望むべくもない」
(西前掲)

このような政治の臭いものに蓋的な政府の対応が破られたのは、いうまでもなくこの間の中国の傍若無人な活動だったわけですが、ではなにができるのかといえばはなはだ現況は無力です。

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よく右方向の人たちは景気よく海自を出せといいいますが、不可能です。

なぜなら中国はそれを狙っているからです。
中国はもっけの幸いとばかりに国際世論に訴えることでしょう。※このフレーズが大きな活字になっていましたが、間違いです。意味はありません。

ネットでは中国ミサイル艇が控えているという産経の記事に煽られて大騒ぎしていますが、中国海軍は絶対にあちらから手を出しません。
だって、中国から仕掛けたら負けだと狡猾な中国は判っています。

中国が望む状況は、日本側(できるなら海自)に先に手をださせて、「ニッポンはこんな国際法違反をしていますよ」と国際世論に訴えることです。
そして日本のメディアに「海自過剰警備。中国側怒り」みたいな太鼓持ちの記事を流させることです。
世界の大部分の国は、尖閣諸島が日本を領有だなどということを知りません。
日本人が中印国境紛争の理由をよく知らないのと一緒です。
国際社会の無関心のベースの上に、それでなくても中国は尖閣周辺をしっかり「警備」していることを国際世論にアピールし続けていますから、こちらから手を出せばどのようなリアクションが返ってくるかやる前から判りきっています。

感情論を抑えて国際法の建て付けをみます。

「1)国連海洋法条約は、「各国政府が非商業的目的のために運航する船舶」に軍艦なみの治外法権を与えている。この種の船舶が、領海内の無害通航に関する規則に違反しても、沿岸国は退去を要求し、損害賠償を所属国に求めることしかできない。中国の漁業監視船や調査船のケースはこれに該当する。
2)「領海等における外国船舶の航行に関する法律」も国連海洋法条約に準拠し、「軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるもの」を適用から除外している」(西前掲)

中国公船・軍艦は国際海洋法により無害通航権を有していますから、現在の領海侵犯行為に対してもそれが適用されます。
日本側はそれに対して領海であることを強く警告できますが、砲を旋回させたり、艦載機をとばしたり、調査行為などをしないかぎり合法です。

まったくなにもできないかといえば違います。
唯一残された道は、中国や台湾なみに法整備をすることです。
中国や台湾は「領海法」を持っていますから、これに習ったものを日本も法整備しなくてはなりません。
国際法の盲点をすり抜けても、当該国の法律によって対処可能なような領海警備に関する法律を早急につくるべきです。
そして日中漁業協定も、よい機会ですから改訂交渉をして、あいまいな尖閣周辺の「法令適用除外水域」を廃止せねばなりません。

実はこの話は、中国漁船衝突事件の時に一回与党内で持ち上がったのですが、そのまま立ち消えていますから、当時の議員に再度動いてもらって法整備をしましょう。
こういう政治のバックアップがなく、すべてのしわ寄せを海保に丸投げしている日本政府のあり方が問題なのです。
海自を出せとか、ミサイルを配備しろというのもけっこうですし、おそらく国際状況はそのような方向に行くのかもしれません。
しかしそれは今ではありません。
今できるのは、中国公船の横暴に対処する国内法の整備をすることが先決です。

 

 

2020年8月 3日 (月)

沖縄県で隔離ベッドが不足

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ワクチンや特効薬が出来るまで現況でしなければならない新型コロナ対策は、感染者を出さないということではありません。
感染者は出ます。そしてとうぜんのこととして、感染は拡大します。
いくら三密を規制しようと、経済を動かし始めた以上、感染は薄く広く拡大していきます。

問題は重症者をださないこと、死亡者を極力出さないことです。
そのために陽性判定者をトリアージをする必要があります。
トリアージとは、患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うことです。

軽症者・無症状は指定されたホテルなどの隔離施設に、発症した者は専用隔離病床に、そして重症者はICUがある病院にという振り分けを徹底することです。
これがきちんと機能していれば、毎日メディアが今日またまた最大の感染数!と絶叫しようとさほど気にすることはありません。

ところが隔離ベッドが満杯になってしまった県がでました。沖縄県です。
 おまけに緊急事態宣言まで県独自に出したそうで。
ほんとうに無能は暴力だと思いました。
沖縄で感染拡大自体はどこでも似たりよったりのようなもんですからいいとして、なんですか病床数が足りないというのは。

「沖縄、10万人あたり新規感染が全国最多 ベッド満床に
(略)独自の緊急事態宣言を出した沖縄県では64人が確認された。4日連続の50人以上で、最多を記録した7月31日の65人に次ぐ規模だった。県の集計では、1日までの人口10万人あたりの1週間の新規感染者数は18・33人で全国最多という。  県によると、10歳未満の男女2人や、豊見城市議の40代男性が感染。離島の宮古島市と石垣市でも新たに計5人の感染が判明している」(朝日 8月2日)

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NHK

デニー氏は早くもお手上げの様子でこんなことを言っています。

「沖縄県の玉城デニー知事は2日午後、県庁で記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大で、医療体制が逼迫する中、軽症者や無症状者に自宅療養を新たな選択肢として促す考えを示した。県の対策本部会議で方針を決定した。  知事は「療養施設を増やすためには現場でスタッフが必要だが、現状は足りていない。重症者をしっかりと医療機関が受け入れるためには、自宅で療養できる方は協力をお願いしたい」と述べた」(沖タイ8月2日)

「県によると、感染者の急増でコロナ用の病床利用率が130%となり、約140人が入院待ちとなっているという。玉城デニー知事は2日の記者会見で「医療提供体制を守らなければならない」と述べ、無症状者や軽症者を対象に自宅療養を求めると発表。人手不足も深刻化し、看護師や保健師の経験者に現場復帰を要請した」(朝日前掲)

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玉城デニー知事 マスクの柄にばかりこだわっていないで仕事しなさい。  朝日

おいおいなんですか、こりゃ。「コロナ用の病床利用率が130%となり、約140人が入院待ち」とは、つまり今後PCRして陽性判定された場合、自宅にいろという意味ですね。アギジャビヨー(テルリン節で)。
どうして隔離ベッドが130%なんかになるんです。ちょっとまえまで4割程度だったじゃないですか。

そう言うと、沖縄に解禁したら旅行者がワラワラ来てとか、米軍がぁなんていいだすかもしれませんが、要は検査数を増やしたからでしょう。
検査数を増やすというのは、ニューヨーク市のクオモ以来、ポピュリスト政治家のトレンドですが、増やせばそりゃ陽性者が増えてあたり前です。
だから陽性者が増えた場合に備えてあらかじめ軽症者用隔離施設としてホテルを多めに確保しておかねばならなかったのです。

それを甘くみるからこうなったのです。
だから今になって緊急事態宣言を県で出すやら、自宅療養をお願いします、なんて行政の無能を自分で暴露するようなはめになってしまいます。
ホテルなんぞ沖縄には腐るほどあるし、コロナ禍で経営不振な宿なんて掃いて捨てるほどありそうなもんですが。

にもかかわらず、恥ずかしげもなく「自宅療養」してくれとデニーさんは言いますが、それは家庭がクラスターになるリスクを飛躍的に増加させるということなのですよ、デニーさんご存じなかった。
そりゃそうでしょう。家庭は病院や指定隔離施設と違って、狭いところで共同生活をするのがファミリーですから、飯くらいは自室で食わせるとしても、トイレも共用、風呂も共用です。陽性判定者だけオマル持たせて、風呂にも入れず、座敷牢に2週間閉じ込めておけとでも。

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対応する他の家族が雨合羽着て、フェースシールドにマスク姿でガンバレって。
無理ですって、そんなこと続けるの。必ず破綻します。
破綻して、家族の誰かに感染をうつします。それが実態です。

 「自宅隔離」が無理だから、行政がホテルをまるごと借り切って軽症者・無症状者用の臨時隔離施設として、一定期間経過観察をして、症状が出たならばしかるべき施設がある病院に入院させているのです。
これをしないと軽症者・無症状者までを隔離ベッドがある医療施設に収容しなければならないために、貴重な隔離ベッドが不足します。
ですから、沖縄県が「コロナ用病床数が130%」で、しかも「自宅隔離を求める」というのですから、軽症者用ホテルが足りないということになります。

国もこの「自宅隔離」のリスクはよくわかっていて、県の軽症者用ホテルの借り上げについては国が国庫負担しているはずです
しかし、たまに契約期間切れになったのに継続契約を結ばない、というボケ自治体がでました。
ご承知のように東京都です。
なんでも国のせいにする小池女帝にムッとした菅官房長官がそのことを指摘したことがあって発覚しましたっけね。

そもそも今感染数が急激に増えて見えるのは、語弊を恐れずにいえば、一種の「錯覚」です。
というのは、もっとも増加した東京都でもPCR検査数が7月下旬と5月末との比較で2倍に増えてます。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

東京都の場合、それまで1000件程度だったのが、6月末にはいきなりその倍の2000件超えをしています。
そしてPCRが春の頃とは違って、非常に精度がよくなりました。
PCR検査は増幅してウィルスを判定するのですが、今はウィルスの残骸や2つ3つの数でもしっかりと検知して陽性判定にしてしまいます。
しかも3割ていどの偽陽性が出るのが前提です。

その結果、それまでの検査機器で陰性判定を受けていても、今最検査すると陽性判定を受けてしまうことになりました。
そのうえに検査数が2倍になれば、そりゃ増えて当たり前でしょうが。
状況は非常事態宣言終了時からさほど変わっていないのです。
その証拠に大幅に検査数をふやしても陽性率は4%ていどです。

傾向としてはおおむね以下です。
①子供(20歳以下)が増加。宣言期間は休校でしたからね。
②若者(20代・30代)が増加しています。 ほぼ無症状・軽症です。
③大人(40代~60代)は変わらず。
④高齢者(70代以上)は減少。
⑤死亡者の中央値は80歳台前半。

まるで問題なしです。非常事態宣言なんて出す必要はまったくありません。
要は陽性者のトリアージをしっかりとして、軽症・無症状者には指定ホテルで観察していただく、そこで発症したら隔離病棟に肺ってもらう、重症者のためにICUは常に余裕をもっておく、このような流れをきちんと作れば、他県の人がこようと、少しも気にする必要はないのです。

この流れが滞った原因はわかりませんが、デニーさんしっかりしてくれなきゃ困ります。

 

2020年8月 2日 (日)

日曜写真館 アジアンビューティー

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絵葉書売りのカンボジア少女。

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これがクメールの微笑です。

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一家でふッ飛んでいます。兄貴りりしいぞ、妹たちもまっすぐ前を見ています。

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サイゴンの学校帰りです。

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蜂蜜を売っていたメコンのしっかり者。ベトナムはかかぁ天下だそうです。

よくアジアンビューティというと中国系のシュっとしたキツネ型美人が登場しますが、私はこういう働き者の女性のほうが美しく感じます。 

2020年8月 1日 (土)

なぜ、中国は尖閣諸島を狙うのか

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尖閣諸島の戦略的価値に米国のほうが先に気がついてしまって、「戦力2030」なんていう海兵隊の世界的大再編の目玉になりそうな雰囲気だということは昨日書きました。
これは世界的な海兵隊の大改造ですから、ただの「トカラ山羊だけの島」どころか戦略的にぜひ押えねばならないポイントと米国が認識し始めたということです。

逆に日本も領土主権論にとらわれすぎて(それ自体はまちがっていませんが)、全体図の中で見ようとしません。
ですからあえて言いますが、日本からばかり見ないで、中国から見てください。
すると、中国は口では「神聖な領土」なんて言っていますが、無視して結構です。
また天然ガスがどーたらというエネルギー論もありましたが、まったくないとは言えませんがそれがメーンではありません。
今尖閣が枢要の地になっているのは、もっと別次元のことのためです。

ところで中国にとって日本列島というのは、なんとも憎たらしいことには太平洋の「瓶の蓋」を役割をしています。(ロシアにとってもです)
昨日もアップした中国から見た逆さ地図をもう一回見てみましょう。

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産経

中国の悲願は太平洋の広く深い海に進出することです。
なぜって、話せば長くなりますが、一言で言えば大陸国家から海洋国家に飛躍して世界の覇権国になりたいからです。
パクスアメリカーナからパクスシノワパクス・シニカにしてやる、これがグレート中国の野心です。
そのために中国は世界有数の大艦隊を揃えてきたのですが、その太平洋を狙う役割を与えられたのが北海艦隊で、その母港は青島にあります。
あのチンタオビールで有名なところですね。ビールだけ飲んでいただければ平和なんですが、中国はここから太平洋に何度となく艦隊を「出撃」させています。

太平洋に出ねば、中国海軍はいくら頭数が多くても大陸周辺でブイブイ言わせているだけの口だけ番長みたいなもので、世界の覇権とは無関係です。
やはり覇権国である海洋国家となるには、世界一の海の太平洋に出ないことにはしまりません。
ですから太平洋を二分して米国と分け合おうぜ、という提案を習近平はマジにオバマ時代にしてしまったことがあって、当然一蹴されました(笑)。

では太平洋に出るにはどの海上ルートを取ればいいかですが、基本的に艦隊が出られる大きなルートは三つしかありません。

①尖閣→宮古海峡ルート
②台湾西ルート
③南シナ海ルート

忌ま忌ましいことには、この三つとも中国を警戒する勢力が押えています。
①の宮古海峡ルートについては後述しますが、②の台湾西ルートも台湾が押えていて下手に手を出すと米国が出てきますし、③の南シナ海は弱小国家ばかりなので、ここぞと太平洋に抜けるルートをただ今構築中というわけです。
そこで南シナ海に驚くべき短期間で人工島を作り、ミサイルを並べ、長距離爆撃機が離発着できる滑走路も作り、軍港までできたあたりで、国際司法裁判所が違法裁定。
カーン、これが終了のゴングで、以後世界を敵に回すことになってしまいました。

そこで改めてその重要性が再認識されたのが、①の尖閣諸島から宮古海峡に抜けるルートだったというわけです。
下の写真は2019年6月10日に、遼寧がロシア艦隊と合同訓練をしたときのものです。(なんでロシアが出てくるんだ、バーローと思いますが)

「これらの艦艇が沖縄本島と宮古島の間の海域を南下し、太平洋へ向けて航行したことを確認した」(令和元年6月11日統合幕僚監部)

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海自が撮影した宮古海峡を通過する空母遼寧

尖閣諸島から宮古島は南東に180㎞の距離にあり、尖閣諸島が東シナ海の入り口の扉だとすれば、宮古島は太平洋の出口に相当します。 

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これに水深図を重ねてみます。

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海底地図 海上保安庁海洋情報部提供。海底地形名称・海上保安庁発行海図「南西諸島(No.6315)」に基づく笹川平和財団https://www.spf.org/islandstudies/jp/info_library/senkaku-islands/03-ocean/03_ocean001.html   

なぜ水深図が重要かというと、先日中国の調査船が沖ノ鳥島に近づいてなにやら勝手に調査していったようですが、あれはおそらく潜水艦の航行のための海路図を作っていたのだと思われます。
潜水艦にとって海底地形図と水深図は必須のものですからね。

で、この宮古海峡を抜けるとその向こうはいきなり沖縄トラフ(海溝)です。
画面左下から画面右・北東にかけて斜めに濃い青色で伸びているのが、沖縄トラフです。 
沖縄トラフは深さが2200mもあって、大陸周辺の浅瀬だけしか知らない中国海軍にとって涎ダダ漏れのポイントです。

中国大陸周辺はまた上の水深図を見ていただきたいのですが、白っぽく表示されているので判るとおもいますが、100メートル以内の浅い海です。
これは中国の大きなウィークポインで、戦略原潜は深く潜れないためにすぐに見つかり、その上有事には米海軍は大陸沿岸に沿って機雷を大量に敷設するでしょうから、あっというまに海上交易路が封鎖されてしまいます。
かつての大戦で日本が食らった機雷封鎖と同じめに中国は合うわけで、世界のエネルギーと食料を爆喰いしている中国はたちたまちエライことになります。
ですから、中国は私たち深い海にグルリを囲まれている日本人にはわからない「深い海への憧れ」のようなものが存在するのです。
ちなみに、海
上交易路が塞がれた場合に備えての陸上交易路が、ウィグルを通過する一帯一路のシルクロード経済ルートです。

それはさておき、この沖縄トラフに潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)をたらふく積んだ戦略原潜を潜ませ、さらにはその先に拡がる約束の海に大艦隊を乗り出したい、これが「中華の夢」(by習近平)なのです。

そしてそうはせさせない、東シナ海にズラリと対艦ミサイルを並べて海兵隊がお迎えいたします、というのが米国の考えです。

 

※関連記事『世界有数の軍事的緊張ポイント宮古海峡とは』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/eez-31bc.html



 

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