菅首相と沖縄
民主党のエネルギー政策について書かねばならぬと思いつつ、あまりにダメなので、書く気を失ってしまいました。
なにが「自然エネルギー立国」ですか。
結論はとうに出ているし、今、かつての民主党時代の遺物である全原発停止とFIT(全量固定価格買い上げ制度)なんてイカレポンチのもんに苦吟しているじゃないですか。
民主党の最悪なのは、我が身を振り返らないということです。ずっと野党だったのならまだ許せます。
うちはいい政策プランあんだけど、実現するチャンスなかったしなと愚痴を言う権利はありますし、それを国民に訴えて最後のチャンスを我が党に、なんていうこともできるでしょう。
ただオンリー民主党だけは違う。ただの野党でございます、なんて顔はさせません。
理由はいいですよね、この立憲民主は、かつての民主党残党が看板をスゲ替えたものにすぎないからです。
再結集するならするで、今まで唱えてきた政策をひとつひとつ検証してくれればまだ納得がつきますが、しない。
もう当人たちもかつてなんという政党を作ったのかも忘れるほどローリングストーンしながら、その理由をころりと都合よく忘れている。
だから、いつあるかわかりませんが総選挙で負けりゃ、また元のバラバラになるのは目に見えています。
看板を書き換えれば、民主政権の夢をこんどは立憲でかなえてくださいね、と国民が眼を輝かせてくれるなんて思っていたら、そりゃバカだよ(苦笑)。
民主党だけは3年半者の間、思う存分政策を実現できました。おかげさんで、国民は言葉も通じない異星人支配に苦しみました。
その後障害にいまでも苦しんでいます。
それはかつての「自然エネルギー立国」の失敗による負担だけにとどまらず、安全保障ではハト首相が「国外・最低でも県外」なんてやったために、日米同盟が根底から揺らぎました。
なぜって、普天間移設問題とはただ基地をアッチからコッチに移すってことではなく、今、中国に対峙している米国の前線基地の機能をそのまま、より安全な場所に移設しようというたぶん世界唯一の試みだったからです。
橋龍の親切心というか、ラムズフェルドにも「世界で一番危険な基地」(言っていないという話ですが)と言われたり、沖大にヘリが墜落したりで、軽く考えて移設を約束してしまったことに端を発します。
今になるとよけいなことをと思います。やるならなるで、公約する前に下調べの小委員会でも作ってからやればよいものを、いきなりぶちあげればこうなります。
しょせんポマードの思いつきですが、その後30年以上にわたって日本政府と沖縄県の頭痛の種になります。
移設候補の選定は難航に難航を重ね、そのために実に17年に渡ってあーでもない、こーでもないというやりとりが米国との間であった結果、現行案に落ち着きました。
日米両政府-地元沖縄県-地元自治体の4者が合意しなければならないという、まるで惑星直列のような離れ業をせねばならなかったわけです。
そしてこともあろうに、関係者が泣きながら積み木をひとつひとつ積み重ねて築いた奇跡の惑星直列は、民主党政権が誕生すると同時に砕け散りました。
交渉経過をなにも知らないハトが宇宙から飛んできて、一瞬でチャブ台返しすりゃ、それは米国は冗談もほどほどにしろと思ってあたりまえです。
これは日米両政府合意からの一方的離脱だからです。
同盟関係でしてはならないことは、合意の不履行ですからとうぜんですな。
簡単に言ったことを反故にする奴に、自分の背中を預けられますか。同盟とはそれほどまでにシビアなもんなのです。
しかもハト首相はノーテンキにもこの後の日米会議で得意な英語を使って「トラストミー」とやっちゃいました。
オバマも戸惑いながら、「じゃあ信じるよ」と返したようですが、ハト氏は意味が判って使っていません。
この時ハト氏が使った"Trust Me"は一般的に、「「自分は約束を守る人間だから、日米合意を遵守する」という風に解釈されます。
欧米の契約遵守思考からすれば、とうぜんそう受け取ります。オバマもそう受け取って「オーケー」と言ったわけですが、これが違うんだな、ハト氏の言った意味とは。
ハト氏は実に日本的にも、「ボクにみんな任せてよ」と言って理解を得られたと勘違いしました。
彼がもう少しまともな脳みそを持っていれば、日米合意を守るか守らないかという筋道の議論の中で、「自分に任せろ」と言われれば混乱を収拾して元の軌道に乗せると言ったと気がつくでしょう。
オバマにしてみれば、相手国首相は選挙用の国内向け発言でああ言ったが、最終的には日米合意を守ってくれると「トラスト」しちゃったのです。
選挙の時にはできもしないことを言うのは東西同じですから。
しかし、違いました。軌道修正どころか、ハト氏は勘違いしたまま勘違いの方角に向けて全力疾走してしまったのです
口蹄疫で宮崎件畜産が壊滅しようと無関係、他の懸案をぜんぶ放り捨てて、東奔西走。
そして徳之島にまで行った挙げ句は全島反対に合って袋小路へ。
そりゃそうです。伊達や酔狂で17年間やって北分けてはありませから、安全保障の素人に代替がたった1年で見つかる道理がありませんもんね。
そしてもうどこにも行きようがない袋小路に自分で自分を追い込んで、初めてハト氏は仲井真氏に頭を下げたのですが、その時言った言葉が奮っています。
宮古毎日
「鳩山首相は「すべてを県外にというのは現実問題として難しい」と普天間の全面的な県外移設を断念することを伝え、県内移設への理解を求めた。また国外移設については「日米の同盟関係、近隣諸国との関係を考えた時、抑止力という観点から難しく、現実には不可能だ」と明言した上で「沖縄の皆さま方にも、またご負担をお願いしなければならない」と述べ陳謝した」(宮古毎日2010年5月10日)
http://www.miyakomainichi.com/2010/05/245/
おいおい、ハト氏は仲井真氏の前で「抑止力を学んだ」と言ったんですって。
あんた、そんなイロハのイも知らないで移設問題をこじらせたのか(絶句)。
いやしくも一国の首相が地方自治体知事に「ボク、ヨクシリョクってなんにも知らなかったから国外、少なくとも県外なんて言っちゃったんですけど、わかったんでヘノコに戻りますから」なんて言うか、フツー(力なく笑う)。
電車の運転を知らない坊やが、運転席に乗り込み、断線転覆させたあげく言った台詞が、「ボク運転知らなかったんだもん」ですから。
仲井真知事と自民県連は、このウスラのために巻き起こされた県民の「国外・県外」の期待によって、持説だった辺野古容認論を撤回せざるをえなくなっていたのです。
それをこのウスラが撤回したからといって簡単に元に戻るわけにもいかず、後に元の容認論に戻したときにはそのために政治生命を断たれかけたのですから、罪が深い。
日米同盟はボロボロ。沖縄県の政治は大混乱。
この日米同盟の亀裂によって、民主党が政権にいる間、米国は一切の重要な情報を日本に手渡さなくなったと言われています。
まぁハト氏はそんなこと知ったこっちゃないでしょうが、いかに当人に認知能力が欠落していたとしても、立憲にはかつての政権党の後継としてしっかりと思い出していただかねばなりません。
日経
さて菅首相は、安倍政権が政権奪還した直後の最初の日米会談を見ています。その時の情景が残っています。
「首相が沖縄の基地負担軽減にのめり込んだきっかけは、第2次安倍晋三政権発足直後の平成25年2月に行われた初の日米首脳会談だった。米側はこの場で3つの要求を行ったが、そのうちの1つが米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に向けた日本政府による県に対しての埋め立て申請書提出だった。
米政府は申請書の提出をわざわざ重要課題に位置付けた。首相は報告を聞き、日米関係が民主党政権時代にいかに傷ついたかを痛感。以降、辺野古移設実現に邁進(まいしん)し、25年12月には埋め立て承認を取り付けた」(産経9月23日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/65fb3b53c05916315774cf8af69d578aed881589
このように米国は安倍氏が登場するとまっ先に日本に要求したことは、この普天間移設に関する県への埋立申請書提出でした。
米政府は、安倍政権が口約束ではなく本気で移設に取り組むのか、文書で見せろ、と言っているわけです。
逆にいえば、いかにそれまでの3年半の間、米国が日本を信じていなかったのかがわかります。
産経
普天間移設問題はただの国内問題ではなく国際問題だということを自覚した安倍氏は、政権ナンバー2の菅官房長官を張りつきの特使として翁長氏に派遣します。
その時の菅氏のエピソードが伝わっています。
菅氏は酒は飲めず、カラオケも苦手という政治家らしからぬ人柄でしたが、いまにいたるもただ一回カラオケマイクを握ったのが、翁長氏との一回こっきりだったようです。
「26年11月の知事選で辺野古移設反対を掲げた翁長雄志(おなが・たけし)前知事が当選しても首相は執念を見せた。28年10月に米軍北部訓練場(同県東村など)約4千ヘクタールの返還にめどが立ったと伝え、この時は翁長氏も「歓迎する」と評価した。翁長氏にカラオケに誘われると、苦手なマイクを握り「さざんかの宿」を歌った。官房長官時代にカラオケを歌ったのはこの時だけだったと首相は周囲に明かしている」(産経前掲)
菅氏は必ず沖縄と大事な折衝をするときにはお土産を持っていきますが、翁長知事誕生の時の顔合わせで持っていった時の「お土産」は北部訓練場の広大な米軍用地の返還のめどがついたということでした。
リンク論、当たり前です、そんなこと。
そして翁長氏からカラオケに誘われると、生まれて始めて「さざんかの宿」を歌ったそうです。
このふたりは法政出身で同時期にキャンパスにいたはずですが、たぶん気が合ったのではないでしょうか。
そしてそれ以後も、菅氏は沖縄県の基地負担軽減を地道にこつこつとやり続けます。
全基地撤去なんて大言壮語は簡単ですが、ひとつひとつ細かい事務を詰めていき日米交渉の指揮を取ったのがこの人物でした。
従来から沖縄利権を握っていた旧竹下派は、普天間移設問題でもっいとも深入りした派閥でしたが、見返りに沖縄利権を漁ったと言われています。
旧竹下派の小澤氏など、宜野座に豪華な別荘を構えています。
菅氏はといえば、沖縄現地からいぶかしがられるほど潔癖にそれを拒否します。
「辺野古移設の陣頭指揮を執った首相は、移設反対派から敵視される一方、辺野古移設を容認する政財界関係者からも「菅さんは不思議な人だ」と評される。 沖縄財界関係者は「沖縄問題に取り組む政治家は利権や政治資金で見返りを求める人がほとんどだが、菅さんにはそれがない」と漏らす。首相をよく知る人物によると、沖縄県内の関係者から後援会設立を持ちかけられたことが過去10回ほどあったが、首相は断り続けたという。」(産経前掲)
こういう利権に転ばない人が沖縄が、新たに自分の後継の沖縄担当で選んだのが、河野太郎氏でした。
楽しみな人事です。
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コメント
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FITだけは、ソーシャルレンディング(太陽光発電投資)でお世話になっています。
…結局、投資家達のオモチャになっただけでしたね。
投稿: リム | 2020年9月24日 (木) 08時25分
ガースー菅首相が「地元市長、県知事とも合意した中で辺野古移設は決まった」と述べた時、沖縄タイムスと琉球新報は地元の合意は得ていないとして、菅首相を不誠実であるかのように報じて批判しました。
両紙は稲嶺知事(当時)と岸本名護市長(当時)の同意を得なかったことを指して、菅首相の言葉は正確でないといっています。
稲嶺・岸本時代の後、移設案は沖合から沿岸並びにV字滑走路に変更されて、島袋名護市長(当時)と仲井眞知事(当時)の合意を得たことは、まるっとすっ飛ばす両紙です。
3歩で忘れる鶏頭か深刻な脳の不具合でない限り、読者はどうせ知識もないし調べたりもしない、読者でなくても見出しを目にしただけで信じてくれる莫迦だらけだから、都合に合わせて騙すのは簡単だ、そんな風にいつも考えているからこそ、両紙はこういうズルができるのでしょう。
折しも沖縄タイムス社員の持続化給付金不正受給と勧誘が明らかになり全国報道不可避の中、これまで「米軍や自衛隊は危険な犯罪者」と空に向かって吐いた唾が自分の顔に落ちました。
違法行為を実行する者がいる組織だもの、嘘や勝手な修正だって平気なんでしょう?と言われても返す言葉は本来無く、違うなら行動で証明していくしかないのですが、両紙のツラの皮の厚みが目立っていくばかりなんでしょうね、これからも。
「利権」、試しに日本語Wikipediaを見てみると、「様々な利権」項目で利権の種類がとりあえず30ほど。
あら「沖縄利権」が無い笑。
「利権」には悪いことしかないように思い思わされる日常で、確かに多くのためより私利に傾いたものが多いのでしょうけれど。
百年兵を養うは一日の用にあてるため、はご存知山本五十六の言葉ですが、例えば、必要な時に必要なことができる人員の確保と技術の継承や新規開発・習得・蓄積をしながら組織を存続させていくためには金も見返りも必要なので、利権を全否定して一切無くすとなると、それは理想的だけれど、何かしらの旨みが無いと誰も手を挙げないきつい仕事だがそれが必要な時、思わぬ現実に立ち向かうべき時に不自由となる側面もあるわけですね。
善人であれ悪人であれ多くの人や組織にとって、其処で何かを成し遂げたいならば、何としても生き残らねばなりませんから、利権というものと無縁でいることは難しく、その目的、中身や程度、正負や功罪両面、不要に肥大化していないかなどを見るべきでしょうが、なにせなかなか表に出ないし、報道されることが正確とは全く限らないし、無いことの証明はほぼ不可能だし、鳩のように、金を唸るほど持つので端金より名誉や称賛で動く人物もあり。
故に「政治は結果」でもあるわけで、「全て」を知ることはできない、知る必要のない場合もある中で、我々は日々観察していくのみ。
しかしながら、沖縄については仰る通り、楽しみがありますね。
投稿: 宜野湾より | 2020年9月24日 (木) 14時25分
沖縄県からすれば、「沖縄の御用聞き」であるはずの担当大臣がよりにもよって河野太郎とは、さぞ頭が痛いことでしょう。
二階派の鶴保庸介らのように地元後援会設立などで誘惑しても無駄。
河野にとっては「あがりポスト」じゃないので、尾身幸次みたく名誉職には目もくれません。「変人」ですから、予測不可能です。
来年は沖縄振興計画の年なので、県庁は対応に右往左往しているところでしょう。もともと今の県庁では、仲井眞時代のような説得力のあるビジョンを作る能力を欠いていて主導権を取れそうもありません。
そのうえ、辺野古問題なんぞ今の県民は口の端にものせません。
これまで何もしない事が高評価だったデニーさんも、全国キャラバンじゃ県経済を廻す事は不可能です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年9月24日 (木) 22時34分
後援会を固辞したり一度だけのカラオケなど、菅氏らしいエピソードですね。
カラオケつながりで余談ですが、河野太郎新担当大臣の歌は音程を超越した破壊力があるそうです。玉城デニー知事の前で是非マイクを握って欲しいものです(^^)
投稿: ふゆみ | 2020年9月25日 (金) 00時04分
辺野古反対だけのワンフレーズで、今の沖縄県は知事にも国会議員にもなれる。これって翁長元知事が巧妙に作り上げた世論なんでしょう。
翁長元知事は、反対しながら辺野古を進めるとも発言しています。
実は、これって仲井真元知事の路線の継続ですよね。仲井真元知事は混乱した辺野古問題を、最良の方法で決着させたと思います。
翁長元知事も、辺野古問題を2021年まで長期化させ次期沖縄振興計画を有利に進めたいとの思惑があったと思います。最大の誤算は共産党中心のオール沖縄の票で当選したことです。自己主張の塊の共産党が腹八分で満足するはずもなく、死の直前までこき使われてしまいました。
ただ、菅総理から2021年以降も引き続き沖縄振興に取り組むとの原質を取ったのは一つの成果です。
山路さんの仰るように、玉城知事が菅総理と対等に話ができるとも思えません。菅総理も沖縄には特別の思いを持っています。
今後の沖縄は、保守系首長のチーム沖縄がキーになると思うのです。
大田元知事がぶち壊した国との信頼関係を仲井真知事が修正し、オール沖縄がまたぶち壊した。次期知事にはその混乱を修正できる方になって欲しいですね。
投稿: karakuchi | 2020年9月25日 (金) 02時39分