中国と台湾、いずれが国際的「国家」の条件を満たしているのか?
いきなり秋になりました。このところ季節のグラデーションに余裕がないようで、いきなり夏、いきなり秋という感じですので、次はいきなり冬になってしまうのかもしれません。う~ん、身体が追いつかん。
さて、今、9月15日からニューヨークで第75回国連総会が開幕しています。
台湾は出席すら拒まれています。
中国から強硬な抵抗にあっているからで、今回世界でもっとも最初に新型コロナに打ち勝ち、経済再生にもっとも成功している台湾からの報告を国際社会は聞くことが出来ないでいます。
世界で共有化されるべき成功事例は、中国ではなく台湾であるにもかかわらず、この不合理がまかり通っています。
中国は初発の発生国でありながら、いまだに国際調査団すら受け入れていませんから、武漢のどこでなにが起きたのか、中国政府の恣意的な大本営発表に頼るしかないわけです。
トランプの「チャイナウィルス」という表現が気に食わないなら、調査させるべきです。
今回の新型コロナ禍の下で開かれた国連総会は、台湾の招聘、中国へのクエスチョンタイムに当てるべきでした。
代わってトランプがガサツにワーワーとやってくれましたが、言っていることは、新型コロナのパンデミック化をめぐっての中国の責任追及です。
内容的には正しいのですから、もっと上品にやってくれんか。
中国に対する非難の高まりと比例するように台湾を国際社会に復帰させよ、という声が高まっています。
世界にもっとも迷惑をかかけた国が常任理事国の地位にあぐらをかき、もっとも成功した国が国扱いすらされていないという不条理に、やっと国際社会は気がつき始めたようです。
台湾もこの国際的地位の急上昇という機を逃さず外交攻勢にでています。
チェコの上院議長率いる大訪問団は、中国の激しい非難を押し切って訪台しました。
今まで中国の札束で頬を張られるようしてアジア・アフリカ、南太平洋諸国が台湾と団交してきましたが、台湾も負けじと南太平洋にはグアム、アフリカにはソマリランド、ヨーロッパにはフランス・プロバンスに新しい在外公館(台北経済文化弁事処)を開設しています。
また各国のメディアに、台湾要人の主張を送り、産経には呉釗燮外交部長、毎日には謝長廷・台北駐日経済文化代表処長(大使)が寄稿し、いずれも台湾の国連復帰の必要性を訴えました。
このような台湾の外交攻勢は、米国と歩調を合わせたせたものとなっています。
トランプ政権は台湾承認に向けて確実に歩みを進めています。
ケリー・クラフト国連大使は、9月16日、駐ニューヨークの台湾代表所長(台北経済文化弁事文化事処処分長)の李光章長と、食事を共にしました。
「クラフト米国連大使と駐ニューヨーク台北経済文化弁事処(領事館に相当)の李光章処長が、ニューヨーク市内のレストランで昼食を共にし、会談した。米国務省高官の台湾訪問に合わせて米台接近の姿勢を強調、中国をけん制するための行動とみられる。台湾は中国の国連加盟を受け1971年に国連を脱退している。
両氏は16日、ニューヨーク・マンハッタンのレストランで会談した。7月に着任した李氏の招待にクラフト氏が応じる形で実現した。米国内で活動する台湾在外代表部の関係者が米当局者と接触する際は、偶然の遭遇を装ったりゴルフ場など外部の目に触れない場で会談したりするのが通例だ。台湾外交部(外務省)は「両氏が、さまざまな懸案事項について意見交換する機会を持ったことを歓迎する」と表明した。
クラフト氏はAP通信に「国連のホスト国として李氏を歓迎した。台湾が国連により関与できる方策について協議した」と述べた。台湾との関係強化はトランプ政権の方針だと説明。「台湾が国連加盟できていないのは残念なこと。米国が中国に立ち向かわなければ、どの国ができるのか」とも語った」(毎日9月9日)
「台湾は国連に参加できるようになるべきであり(中国が加盟を阻止しているのは)恥だ」(AP)
形式はオフィシャルディナーではなくプライベートランチですから、米政府招待の公式行事ではなく米国高官が台湾外交官と昼飯をとったという体裁にしてあります。
しかし、いままで台湾代表と米国政府高官の会話は、ゴルフ場で「偶然に」で出会ったことに較べて、大きな進展です。
そしてその内容までがAPで報じられ、これは事実上の米政府による台湾の国連招致の意志だと受け取られています。
さて、わが中国の怒るまいことか。
「クラフト大使と李光章処長のプライベートランチについて米国メディアが報じた裏側では、中国の駐国連副代表の耿爽随が米国の駐国連代表団に厳正なる抗議を申し入れていた。
耿爽副代表は「この午餐会は“一中原則”に違反しているし、中米間の三つの共同コミュニケの規定および国連大会第2758号決議に違反する」として、中国側は「強烈な不満」と「断固とした反対」を表明した」(福島香織の中国趣聞 NO.170)
まさにキャンキャン遠吠えするといった風情ですが、ここで中国がいう「一中原則」なるものを米国が認めているかといえば、微妙です。
あくまでも、米中国交回復時の取り決めは、米国は中国がひとつであるという中国側言い分を「聞き置いた」(テイクノート)したとだけあります。
つまり、中国さんがそういってるのは聞いたというニュアンスで、米国は台湾との関係まで立ち切ったわけではありません。
台湾関係法がその担保です。
これは中国との国交はするが、台湾とも切れたわけではない、いつでも元の状況に戻れるのだ、いざという時には台湾を軍事的にも守るという米国の意志です。
ただし、歴代の米大統領が腰が引けていたのは、このガラス細工のような台湾の地位が、無茶をすると一気に崩れかねないと危惧したからです。
だからあえて微妙にしてあることを、中国がキャンキャンうるさくいえばいうほど、米国の台湾国際社会復帰への意志を強める結果となっていきます。
中国をめぐる国際状況はこの間大きく変化しました。
習の「戦狼」路線は、周辺国すべてと軍事的摩擦を引き起し、インド・太平洋を不安定にさせる元凶都なっています。
国際社会がどこかでこの「戦狼」路線を止めねば、世界大戦の可能性すら出てきました。
この危機感から米国は台湾の国際的地位見直しを進めようとしています。
「米国務省は17~19日の日程で、李登輝元総統の告別式参列のためクラック次官を派遣している。中国軍が18日から台湾海峡付近で演習を開始したことについて、ポンペオ米国務長官は同日、訪問先のガイアナで「我々が葬儀に代表団を送ったら、中国は怒りの軍事行動で対抗してきた」と批判した。
一方、米下院のティファニー議員(共和党)は16日、台湾を中国の一部とする中国側の原則を米政府として尊重する「一つの中国政策」を撤廃し台湾との外交関係回復を促す決議案を提出した。台湾の国際機関参加の支持や自由貿易協定締結も政府に求めている」(毎日前掲)
さて、現状を客観的に見れば、国連復帰は厳しいのが実情です。
微妙な国際的地位の国が国連に加盟する場合の前例に、パレスチナがあります。
2011年にパレスチナは国連加盟申請をしましたが、イスラエルと米国の反対で拒否されましたが、翌年には「非加盟オブザーバー国家会員」という正式な加盟資格を与えて今にいたっています。
この方法が使えるかといえば、残念ながら難しいだろうというのが、台湾の識者の声です。
「台湾政治大学の鄭樹范名誉教授はラジオフリーアジアに対して、「中華人民共和国が存在する限り、台湾はいかなる方式であっても国連に加盟することは無理であり、いかなる幻想も抱けない」、という。
「我々はパレスチナモデルでも、不可能であると思う。中国が崩壊しない限り。台湾が多くの同情を得ているのは間違いないが、はっきり言って、今の習近平はそういうことに耳を貸さない。今の台湾を相手にしていないのだ。馬英九は現在、総統に返り咲きたいようだが、それも習近平も相手にしていない。」
国際法の専門家の古挙倫・ホフストラ大学教授は「台湾とパレスチナは全く比較できない。重要なのは中国の台湾の国連参与に対する態度で、米国が国連にパレスチナ問題の処理をあっせんしたときと比べると、抵抗は圧倒的に強い」という」(福島前掲)
ただし、望みはあります。
「国連憲章の第二章の第四条規定では、平和を愛する国家は「国連憲章」に記載されている義務を受け入れ、国連がその義務を履行できる能力や意思があると認めた場合、国連の会員国となりうる、総会を経て安全理事会の推薦をもってその決議を行う、という」(福島前掲)
では、この国連憲章第2章4条の「平和を愛する国家」という定義に、中国と台湾のいずれが合致しているか、考えてみるまでもないことです。
「国家」を定義する場合、よく引き合いに出されるのが1933年のモンテビデオ条約(国家の権利及び義務に関する条約)です。
ここには有名な国家である4要件が記されています。
①持続的に住民が存在すること。
②一定の領土を持つこと。
③実効統治している政府があること。
④他国との関係を取り結ぶ能力。
この国家たりえる4要件のすべてを台湾は持っています。
さらに新しい国家要件として、1991年12月にソ連圏が崩壊したことにともなって多数の国家群が生まれたことに対応して、EUが定めた「東欧及びソ連邦における新国家の承認の指針に関する宣言」があります。
この「EU宣言」は更に踏み込んで現代的な判断を下しています。
①法の支配、民主主義、人権に関して国連憲章及びヘルシンキ最終議定書等を尊重すること。
②人種的民族的グループ及び少数民族の権利を保障すること。
③既存の国境の不可侵を尊重すること。
④関連軍備規制約束を受け入れること。
⑤国家承認及び地域的紛争に関する全ての問題を合意によって解決すること。
つまり、人権、少数民族の権利の尊重、国境の不可侵、軍備縮小、紛争の平和的解決を、EUは新しい国家要件として定めたことになります。
笑えることには、中国は①から⑤まで全部ダメです。
人権などないに等しく、普通選挙すらただの一回も開かれたことがない国であり、少数民族はホロコーストまがいの強制収容所に送られ、南シナ海のような武装侵略行為を公然となし、軍縮はおろか世界最大の軍拡国であり、国際司法裁判所の裁定ですら「紙くず」と言って憚らない国が中国です。
いったいどちらが「国家」たる要件を満たしているのか、国際社会はよくかんがかるべきでしょう。
※タイトルを変更しました。いつもすいません。
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中共は自閉症的で他国の感覚がわからない、(騙される方が悪いという)詭道を始めとする孫子の考え方が自民族以外にも適用できるとする考えの誤謬に気付けない、それ故に、突き進むほど自身に敵対的なパワーを喚起してしまう、とかつてルトワックが書いた通りになっていると、あらためて思います。
2018年に中共全人代は、国家主席の任期制限を撤廃するとの憲法改正を承認(投票総数2,964 うち反対2 棄権3 英BBCによる)しましたから、キンペたんの終身国家主席は可能であり、このまま「兵は詭道なり」を続けていくのでしょう。
そこにあるのはやはりルトワックがいうところの「自滅的プロセス」でしょうか。
中国という国は儲けさせ豊かにさせてあげれば必ず民主的な国になる、と言われて信じ、中共共産党のいう通りに従ってきている日本や世界のみなさん、台湾や香港の人々が最もよく理解している通り、肩入れする相手からは「騙される方が悪い」と思われているのですよー。
投稿: 宜野湾より | 2020年9月25日 (金) 13時05分
中共の言う「一つの中国原則」と、米国の「一つの中国政策」は別のものです。朝日や共同はこれらを混同して、「トランプは「一つの中国原則」に合意した」などというデマを言うから我々もややこしくなります。
米国は「聞き置く」で、日本は「中国の立場を尊重」。いずれも「承認」まではしていません。
米国は「台湾関連法」にくわえ、レーガン時代には「(台湾に対する)六つの保証」、そしてトランプになってから「台湾外交支援法」(署名済み)や未署名のものも含めれば二十数本の法案が提出されています。
だだ、多くの国々が中共の「一つの中国原則」を承認しているので、国連加盟までは時間がかかるでしょう。
しかしながら、流れは台湾の方にかなり傾きつつあると見ていいと思います。
来年が任期のメルケルの後継者と言われる議員は、はっきり「中国との距離を保つ」としています。そうでないと国民の対中不満を抑えきれないからですね。
EUのオンデアライエン委員長は9/16、マグニツキー法の制定と、「(中国問題で)米国と力を合わせるべき」と演説しました。
NZやイギリスだけでなく、香港や中国と犯罪人引き渡し条約を停止する国が増えています。
二階は「誰が考えても春」とか、世間や国際社会と真逆の事をいってますが、世論をかんがみるだけでも菅さんは国賓来日などやらないでしょう。
これから「時間」は徐々に習近平に不利に働く事になると思います。
じっくりと判断する、とか言って引き延ばすつもりなんじゃないでしょうか。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年9月25日 (金) 17時15分
メディアの情報選別と温厚な社会性・事なかれ主義もあって、今おそらく先進国で最も中国に優しいのは日本政府と日本人です。
それでも随分マシになってきています。
朝日新聞もウイグル&香港問題を扱うようになりました。とはいえ台湾関係は見事にスルーし続けています。ここだけは踏んだら駄目な地雷なんでしょうね。
だからこそ、台湾がナイスボールを投げ続けてくれている今、しっかりと受けボールを回し、各国と連携して台湾の国家承認を広げる道を日本がつける事を願っています。
とくに向こう一年は政府だけでなく議員団やシンクタンクなどからボトムアップでグイグイいくタイミングだと思っています。
投稿: ふゆみ | 2020年9月25日 (金) 21時58分
以前こちらのブログにもあったとおり、中国の正統は蒋介石の方の
台湾であり、どこの馬の骨とも知れぬサイコな人物が旧大日本帝国
と中国国民党との戦争を利用して漁夫の利を得たのが中国共産党
ですわ。毛沢東さんは、「日本軍が戦ってくれたおかげで国民党が
疲弊して蒋介石を台湾へ追っ払うことが出来たわ、日本、ありがとう
さん!」と言ったという記録も残っているそうです。
そして、国連の場でアフリカなどの諸国に手を回して多数派工作を
して、正統な中国は台湾の中華民国でなく中共の中華人民共和国
の方だと、まんまと乗っ取りに成功します。本来、第二次世界大戦
の戦勝国は旧大日本帝国と戦った主力の蒋介石国民党の中国で
あり、戦いを避けて戦うフリをしていただけの中共は連合国でさえ
ありません。世界大戦後のドサクサにまみれて内戦に持ち込んだ
だけですわ。まあ、ズルイというかコスイというか・・ もちろん、旧
ソ連も後押ししてる。
という訳で、国連で台湾中華民国を正式に認めるというのは、道理
から言えばそんなにハードルが高い事とは思えません。日本とも
官民あげて友好国だし、日本の国益にとって利益しかありませんわ。
やがて中共が自滅した時、中共残党どもが内戦のドロ沼に落ちた
時にも頼りになります。国民党の方が中共より正統な中国国家だ
というのは自明なので、里帰りというか、マッカーサー閣下がフィリ
ピンに再上陸するようなもんですわ。
正統性のない中国共産党は、正統性のある台湾国民党に対して
恐怖があると思います。儒教的、とくに朱子学的に言えば、身の毛
もよだつ程で、それでいつも台湾に対して、イキリ狼になってしまう
んですわ。
投稿: アホンダラ1号 | 2020年9月26日 (土) 00時13分
今回も、記事の内容と関係なくて、申し訳ありません。
知らずに年をかさねて70を過ぎたあたりからですけど、
咲き終わった、写真のひまわりのような最盛りの
強美の奉仕のあと姿。うなだれて何とも言えない風情や、
蓮花の咲き終わりの芯種の姿など、味わい深い感動で、
目や心が、魅かれるようになりました。
近くの公園の草花に散水(交代で)する時がありますが、
じっくりかけると半日ぐらいは時間が過ぎてしまいます。
沖縄は陽ざしが強いので晴れ日が続くと土が乾きます。
散水していると、その周りの草花から、こっちにも頂戴!
こっちにも頂戴!と、催促の声がかかってくるような、
不思議な声なき声に包まれての、水かけの時間です。
写真のひまわりは、(日本を取り戻す)ためにこれまで、
全力で、突っ走ってこられた、安倍前総理のお姿を、
拝見しているかのようで、何とも言えず感慨深いです。
ひまわりさん、夏のあいだ、本当にお疲れ様でした。
力強いエネルギーで、みんなの眼と心を、楽しませて、
元気づけて、咲き続けてくれた事に感謝、ありがとう・・。
投稿: らくがきモモ・(らくがき桃太郎) | 2020年9月26日 (土) 06時44分
以前はションボリしてスタジアムから帰るサポーターのようでしたが・・・
最近6試合でスタッツでは圧倒して80本以上のシュートを放ってるのにわずか得点2で勝ち点も2だけでorzの顔文字かと。。
投稿: 山形 | 2020年9月26日 (土) 07時24分