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2020年10月17日 (土)

北朝鮮の特大ICBMは使えるか?

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北朝鮮や韓国のゼスチャーを見る時に、私たち日本人が心せねばばならないのは、あれは大部分が「国内向けのショー」みたいなものです。
たとえば今回10月10日早朝の軍事パレードに登場した超特大ICBMなどその典型です。

見た目はすごいですね。
いままで最大だった火星15を更に上回り、しかも手のこんだことには移動式車載でしずしずと登場しました。
これが正恩が2019年末の党中央委員会で宣言した、核・長距離ミサイル実験の一時停止の解除と、「新しい戦略兵器を登場させる」ということの中身です。
まだ核・長距離ミサイル実験は再開していませんが、これは最後のカードにするつもりなのか、先にこのモンスター移動式ICBMを見せたということになります。

正恩はパレードの前の演説で、こう自画自賛しています。

「まさにこの場で行われた党創立70周年慶祝閲兵式と比べてみると、誰もがよく分かるでしょうが、われわれの軍事力の近代性は大きく変わり、その発展速度は誰もが容易に推しはかることができるだろう」

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張り切りましたね。なんと11軸22輪の発射車両ですから、前回実験した火星15号の9軸18輪を上回る巨大さです。
この15号も車載移動式ICBMとしてはギネス認定ものでしたが、自己記録を更新して文句なく世界一です。

一部の専門家は、このモンスターICBMは 、弾頭に複数の核弾頭を詰め込む多弾頭(MIRV)で、米国の本土ミサイル防衛能力を上回る飽和攻撃を可能にするだろう、と言っています。
また、移動式であるために固定サイトからの発射方式と違って、どこからでも発射できるから発射前に破壊するのは困難なので、より実用化に近づいたという意見もあるようです。

というのは、かつての銀河ロケットなどは長時間かけてとろとろと液体燃料の注入をせねばならず、これではすぐに上空から丸見えで破壊されてしまいますそれに対して移動式ならば、国内のどこからでも事前に分散させておけばいいわけで、仮に米軍が北朝鮮のICBMを全部確実に発見して破壊できなければ、残ったICBMが発射されてしまうことになります。
するとたぶん本当に多弾頭式なら3発の核弾頭を持っていますから、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるで、数発これを打たれるとその一部は米本土ミサイル防衛網を突破し、米本土を直撃するリスクが残ります。

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多弾頭ミサイルの概念 ウィキ

これは建前としては、米国向けのファイティングポーズです。
今年の元旦の辞で、正恩は直接演説せずに編集した録画で(ここからしてオカシイですけど)、朝鮮中央通信を通じてこんなことを述べていました。

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BBC

「朝鮮中央通信によると、金委員長は党中央委員会総会で、米韓合同軍事演習や制裁を続けるアメリカについて、「対話を唱えながらも、朝鮮を完全に窒息させ圧殺しようと二面的な態度を取っている」と批判。アメリカが対北朝鮮敵視政策を続けるならば、「朝鮮半島の非核化は永遠にない。我々が約束に一方的に縛られる根拠はなくなった。約束に相手はなく、そのせいで我々の世界的な非核化と不拡散の取り組みが冷え込んでいる」と主張した。
報道によると、金委員長はさらに、「世界は遠からず、朝鮮が保有する新たな戦略兵器を目撃することになる」と主張したという」
(BBC2020年 1月1日)

北朝鮮にはすでに発射実験を終えたICBMが2種類存在します。

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北朝鮮「火星15」ミサイルの映像・写真から分かること - BBCニュース

1つめは2017年に2度の発射実験を行った、単一核弾頭型火星14号で、射程は北米大陸と西ヨーロッパのほぼ全域を収める約1万キロです。
そしてふたつめが、同じく2017年に実験を行った火星15号で、射程は約1万3000キロで、同じく欧州全域と北米大陸全域に到達できます。
そしてそれに追加して、今回満を持して登場させた火星16号(仮称)です。

射程は充分に火星14、15で獲得していますから、後残るのは、再突入が完全に行われるかどうか、そして多弾頭化と水中発射です。
今回はこのうちの多弾頭化へのチャレンジですが、ただひとつ重大な欠陥があります。
これは移動式弾道ミサイルで使うとなると、使い物にならないのです(残念)。
それはなぜ中露が車載式移動ICBMを8軸16輪で止めているのか、考えてみればわかります。
北朝鮮が技術供与をパクった中露がしないにはわけがあるのです。

まず、この火星16号(仮称)は、この大きさからみれば液体燃料式ロケットエンジンを持ち、主推進部分は二段式です。
積んでいるのは、昨年12月に東倉里の西海衛星発射場で実施したロケットエンジン燃焼試験で実験したものだと推測できます。

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聯合

これが完成したという北朝鮮の発表を鵜呑みにした上で、これが使えるかどうか考えてみます。
移動車載式とは、この新型ICBM全長約25.5メートル、直径約2.7メートルを載せて移動して、降ろして液体燃料を注入してからおもむろに発射するという手順を踏みます。

ここで問題が二つ発生します。
ひとつは30メートルを超えるような長大かつ超重量なトレーラーは実用的ではないことです。
だいたいそんなモンスター・トレーラーは北朝鮮内にはわずかしかありません。
火星14号は、中国・武漢の万山特種車輌の8軸16輪トラックWS51200でしたが、これは6台しか北朝鮮への輸入が確認されていません。
火星15号は、北朝鮮製と自称する9軸18輪でしたが、更に少ない数台しか保有していないでしょう。
まして火星16号(仮称)は11軸22輪ですから、このパレードに登場したのが在庫全部であってもおかしくはありません。

この超貴重品のモンスタートレーラーが、北朝鮮の貧弱な交通インフラの上を移動できるかどうか、はなはだ疑問です。
たぶん無理でしょうね。ギャップを踏んで車体が傾いただけで車軸が歪んで故障しますし、エンコしようものなら救出不可能です。
だいたい曲がり角など何回切り返せばいいことやら。
おまけにこれは実用的な固体燃料式ではないため、危険な液体燃料タンクローリーを随伴させねばなりません。
危険物の大名行列です。おお、こわ。
こんなものを運転する兵隊さんは決死隊か、懲罰隊でしょうか。

こんなモンスタートレーラーとバカでかい燃料タンクローリーが走れる大きな道路は限られていますから、米国からすれば上空から丸見えです。
もし仮に、北朝鮮と政治的に緊張した状況で、火星シリーズを複数移動させたならば、米国はこれを発射の意図ありと判断し、予防的空爆をかけることをためらわないでしょう。
というわけで、移動式といっても展開出来る場所はいたって限られていますから、米国からすれば山岳地帯に潜む中距離弾道ミサイル群よりはるかに対処しやすいものなのです。

この火星16号(仮称)は、多弾頭にしたい、移動式にしたいと欲張ったあまり実用性がないものに仕上がってしまったわけで、米国軍事筋はこれを冷徹に眺めています。
彼らが火星15号実験時に政治的には極めて危険だがまだ実用化には至っていない、と判断したとおなじように、これも到底本物ではないという判断を下したはずです。

つまり、これは国内向けのショーにすぎないでのです。

 

 

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コメント

火星15が登場した時に、あのトレーラーは中国から輸入した8軸のをたぶん無理矢理フレーム溶接するなりして1軸増やしただけだと申し上げましたが···
今回の11軸という壮大さは、なんかもう笑っちゃいました。異例の夜中の軍事パレードにしたのも、いろんなアラが目立たないようにするためだったのではないかと考えております。ミサイルすらハリボテの可能性も。
種車が6両しかないのを(まさかフルコピーしたとも思えないし)魔改造して今は何両あるのやら。
あんなトレーラーはそれこそ隠れたい山間部になんか入れませんって。機動力は極めて低いものであることは断言できます。
MIRVについてはなんとも言えませんが、北に作れるものなのか甚だ疑問ですね。

もう20年以上もまえに、北朝鮮のツアー旅行に行ったことがありますが、平壌から金剛山までの道路がすごかった。

2,3時間の道程で対向車に数台しか出会わないのにもびっくり、でしたが、とにかく舗装状態が悪く、最後の部分は穴ぼこを避けながら、時速は多分10キロ以下。

ツアコン兼の通訳が、ここは、軍隊が突貫工事で作った部分なので、と言い訳していましたが。

えらい昔のはなしではありますが、今もそんなには状況はかわっていないのでは、と思います。

 昨日の自民党の国防部会は、この件でかなり白熱したようです。
総じて、「全部がフェイクではないのではないか」というのが防衛省側の見解で、小野寺五典さんは「北朝鮮の核開発は確実に進歩していて、(トランプやポンぺオさんが言うように)発射しなくなったからと言って、安心して言いワケではない」と言っています。

 私はむしろ、日米が北朝鮮の核を過大評価するあまり、そこから政治的な妥協を引き出す事が北朝鮮のねらいであると考えてます。
いづれ完全防備は不可能なのですから、敵基地だけでなく一般的な攻撃能力を構築していく事と、日米関係をさらに深化させていく事が引き続き政治の重要な課題となるのでしょう。

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