トランプ陽性判定とシアトル自治区の「愛の夏」の結末
トランプがこともあろうに陽性判定されてしまいました。たまげました。
バイデン贔屓の日米メディアがなぜかウキウキしたような夕方のニュースでした。
昨日から引用しているブルームバークです。
「米選挙戦最後の1カ月、トランプ氏の新型コロナ陽性で激変の様相
ホワイトハウスはフロリダ州での集会など大統領が2日計画していた政治イベントをキャンセルした。トランプ氏の隔離が続くことから、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ネバダなど重要州への訪問を含む今後数日の予定も中止されるだろう。
集会に姿を見せ有権者と触れ合うことで、資金を集めるとともに支持者の熱狂をあおるのがトランプ氏のスタイルだ。また、選挙戦の最終盤で焦点を新型コロナから移し、最高裁判事指名や景気回復、暴動などに向けたい考えだった。しかし今や、今後数週間の話題はトランプ氏の健康状態に集中するだろう。
得意の政治集会や、選挙の焦点をずらす作戦が不可能ならば、民主党候補バイデン氏の世論調査でのリードを覆すのは難しくなる公算が大きい」(ブルームバーク10月2日)
ただ、皮肉なことにバイデンもトランプと接触したために余波を被っています。
バイデンも2週間隔離に入るかもしれません。
「ただ、トランプ氏の陽性判定のわずか72時間程度前に討論を行っているバイデン氏も、自主隔離に入るかどうかを決めなければならないだろう。バイデン氏陣営は今のところトランプ氏の感染についてコメントしていないが、対立候補の病気を喜んでいるような様子は決して見せずにトランプ氏の新型コロナ対応への批判を続けるという適度な姿勢を保つことが必要になる」(ブルームバーク前掲)
BBC
さて、これで混沌としてきたのだけは確かで、表面的にはバイデンが首ひとつの差を拡げられそうだというのが、大方の予測です。
第2回討論会はタウンミーティング形式だという噂もあったのですが、これで中止確定となりました。
トランプが考えていた大型党員集会はできません。
トランプが感染対策を怠っていたことはたしかで、ヒックスひとりで米国中枢が軒並みダウンしたかもしれません。
新型コロナで空母が一隻使えなくなったり、政府中枢が危機に曝されたり、すさまじい破壊力です。
これでトランプの中国への怒りは沸騰点に達していて、更にパワーアップすることでしょう。
それにしても米政府の感染対策は甘い。まぁペンス、ポンペオが無事でよかった。
我々日本人が信じられないくらい米国人の3密防止策はいいかげんで、トランプはマスクを長いこと拒否してきたし、共和党系集会はノーマスク・密集。
民主党系デモなど芋の子洗い。そもそもこんな時期にデモなんかすんなよ、と思いますが。
これで第2波が来なかったら、かえって不思議なくらいです。
トランプはいちおう無症状で「オレは元気だ」とツイートしています。今後も前にも増してツイートしまくってガンバルでしょうね。
お歳がお歳ですから、死亡率は5%くらいです。
悪化する可能性もありますのでなんとも言えませんが、出てくるのは単純計算で2週間後の10月16日前後となります。
それまでトランプとしては、ボリス・ジョンソンのように集中治療室に入ることだけは避けて、むしろこれを奇貨とする戦術を練るはずです。
トランプはこれでへこむような男ではありません。彼は倒産王でもあるのです。
むしろこのアクシデントをどう勝利のきっかけにしようか、と考えるようなタイプです。
絶対にそう考えそうなトランプが、先行成功事例としそうなのは、ブラジルのボルソナロ大統領です。
日経
ボルソナロは「オレは陽性だったが、こんなもんただの風邪だ」と復活し、むしろ「一回罹ったので抗体持っているぞ、なんて強いオレ様」、とマッチョしました。
そしてその結果、奇跡の支持率急上昇。
トランプも似たような男ですので、この方針を踏襲するのはほぼ間違いないところです。
今はアイシャルリターンっで、大復活してみせてアイケイムバック、というわけです。
オレはフェークニュースとチャイナウィルスにも勝ったぜぇ、というわけです。
このようにトランプがこの2週間、症状が悪化せずに元気だったのなら、かえって、オレの言ったとおりだったろうが、見よ、この大復活劇、と大々的にやって、それで支持層はヤンヤの喝采となりそうな気配もあります。
まぁ公平に見ても、これでこの2週間は全米報道がトランプの一挙手一投足に集中するので、ロボット・バイデンはいっそうかすむ、これだけは確かでしょう。
※バイデンは陰性でした。トランプは高熱がでたそうで、入院しました。2週間復活はむずかしそうです。
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昨日からの続きです。
このシアトル「自治区」をケーススタディしてみましょう。
「スターバックス発祥の地としても知られるワシントン州シアトルのキャピトルヒルは、カフェやギャラリーが集まるアート&カルチャーの人気スポットです。6月に入るとこのお洒落な街でデモ隊と警察が衝突を繰り返すようになり、6月8日、警察署長は不測の事態を避けるために警察署を封鎖して地域から退去することを決断します。
こうして、21世紀に突如として“コミューン(自治区)”が誕生しました。 トランプ大統領はこの「異常事態」をはげしく非難しましたが、1958年生まれで10代で西海岸のヒッピームーブメントを体験したシアトルの女性市長は、この状況がいつまで続くのかテレビレポーターに訊かれ、「わからない。もしかしたらわたしたちは“愛の夏”を過ごせるかも」と答えています」(橘玲の日々刻々 8月31日)
「自治区」は「独立宣言」を出し、警察の解体を含む30カ条の要求をつきつけました。
それはこのようなものです。
・シアトル警察と裁判所の廃止。退役警察官に払われる年金の停止を含む。
・青年刑務所の廃止。
・警察が抗議者に対して行った行為の謝罪と賠償
・マリファナ関連の犯罪で服役している囚人の釈放
・囚人に投票権
・シアトルの病院では黒人医師と看護師を採用する
・黒人とネイティブアメリカンの歴史の教育カリキュラムで大きく扱う。
わ、はは。分かりやすい「要求」ですね。
警察解体と警官憎悪、裁判所廃止、麻薬解禁ですか。どんな連中の「自治区」かそれだけでもわかります。
警官が退去して廃墟同然の警察の入り口には、「シアトル人民の所有」と書き直され、シアトル警察署西管区の掲示板は「シアトル人民署西管区」と汚い字で上書きされていました。
上の写真は「シアトル独立国」との「国境」ですが、"COP-FREE""You are now leaving the US.CapitolHill Autonomous Zone"
(ここからアメリカから分離したキャピトル・ヒル。お巡り無人地帯)とあります。
そして自治区警備隊までもが銃を持ってバトロールしていました。
「国境」を超えると、突如、革命国家でも誕生したかのようなシュールな眺めです。
さらに驚くべきことに、この「独立」騒ぎに対して、この民主党系女性市長のジェニー・ダーカンは、解決に乗り出すどころか甘い「愛の夏」を見続けます。
「[シアトル 11日 ロイター] - 米ワシントン州シアトルのジェニー・ダーカン市長(民主党)は11日の会見で、同市内の抗議デモ排除に向けてトランプ大統領が軍を派遣することは、違憲かつ違法だとの見方を示した。
米ミネソタ州で5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官による暴行で死亡した事件を契機に人種差別に抗議するデモが広がりを見せ、シアトル市内では約500人のデモ隊が議会周辺にバリケードを築き「自治区」を設置したと主張している。
トランプ大統領はFOXニュースで「大都市の主要部が占拠されるような事態を許してはならない」と述べ、必要があれば介入するとの強硬姿勢を示した。また、州知事に対し州兵の動員も考慮するよう示唆した。
これに対し、ダーカン市長は「シアトルが占拠されるという差し迫った脅威はない」とし、「シアトルに軍を差し向けることは違憲かつ違法だ」と反対した」(ロイター6月12日)
ダーカン市長は、同性愛者であることを名乗り、若いころはヒッピームーブメントにも加わっていたことがあると言います。
どこぞの国の首相や東京都の区長にも似たような人らがいましたね。
彼らはみてくれは歳を重ねていても、中身はフォエバーヤング(褒めて言っているんじゃありませんよ)なんですから、まったくもう。
米国ではこういう手合いは民主党に行き、我が国では旧民主党に吸いよせられました。
このような秩序の崩壊に対して、トランプは一貫して各州に州兵の主導を要請し続け、暴動を放置するなら連邦軍を投入することも厭わないぞ、と圧力をかけました。
「トランプ大統領はTwitterで、「極左州知事のジェイ・インスリーとシアトル市長は、私たちの偉大な国がこれまでに見たことのないレベルで挑発され、おちょくられている。今すぐ自分たちの街を取り戻せ。君たちがそれをしなければ、私はする。これはゲームではない。これらの醜いアナーキストは止められねばならない。今すぐ行動だ!」
これに対してダーカン市長は、こうツイートしています。
「私達を平和にさせて。あなたは地下壕にもどりなさい」
おまけに州知事までもがこの調子です。
「完全に統治することができない男は、ワシントン州のビジネスから離れるべきだ。ツイートをやめてな」
ダーカンが言う地下壕とは、ホワイトハウスにアンティファデモが近づいた際に、トランプがホワイトハウスの地下壕に一時退避したことを揶揄しています。
トランプに対する反感ばかりが先に立って、統治者としての自覚のかけらも見えません。
このように州知事(これも民主党)までもがシアトル市長に同意してしまったために、「独立」騒ぎは、連邦vs州・市となる様相もみえました。
最悪のケースとしては、連邦軍が「独立国」を排除するために投入され、これに対してワシントン州兵と独立国自警団が戦闘を交えることも、ないとはいえない状況となっていました。
しかしこのコンミューンはわずか一カ月で内部崩壊を起こします。
お定まりの略奪・暴行、そして黒人少年が殺害される事件まで起きたからです。
「ところがこの祝祭的な高揚感の裏で、地域に不穏な空気が漂ってきます。自動車販売店に押し込み強盗が入り、カッターで襲い掛かる犯人をなんとか取り押さえたものの、なんど警察に電話しても誰も来なかったと報じられると、高級住宅街の住民のあいだに不安が広がります。 決定的なのは、その後、あいついで殺人事件が起きたことです。
6月20日に発砲事件が発生したときは、駆けつけた警官が群衆によって阻まれ、高校を卒業したばかりの19歳の男性が死亡しました。翌21日には17歳の男性が銃撃され、22日には「解放区内でレイプが起きた」と警察が発表し、23日は30代の男性が銃撃によって負傷します。29日は4件の銃撃事件が起き、16歳の男性が死亡し、14歳が重体となりました。
“愛の夏”がたちまち暴力の連鎖に変わったことに驚愕した市長は占拠の即時終了を通告し、活動家のリーダーも自らに責任が及ぶのを恐れて撤退に同意します。「解放」が終わったキャピトルヒルを訪れた市長は、「ひとびとが家やアパートから出てきて、戻ってきた警察官に次々と感謝の言葉を述べた」と語りました。
このようにして、「現代の寓話」はわずか1カ月で終わりを告げたのです」(橘前掲)
この時のトランプの発言が歪曲されて、まるでトランプが平穏なBLMのデモまで軍隊で押し潰そうとしているかのように、メディアで報じられてしまいました。
このようなフェークニュースの流れの中で、今回の「スタンバック・スタンバイ発言」報道があるのです。
確かに黒人を虐待する警官もいるでしょう。しかしそれは必ずしも白人とは限りません。
あたりまえですが、白人にも黒人にもヒスパニックにも、そのような暴力を崇拝する人物はいるのです。
そして、それぞれの人種の中にも人種差別主義者はいます。
黒人差別が骨がらみになったような白人もいるでしょうし、逆に黒人差別と戦うのではなく、黒人至上主義になってしまったような者も沢山います。
問題は、双方が社会の基盤である法秩序を無視し始めたことです。
アンティファは「警官をやっている黒人はもう黒人ではない」と公然と言い始め、プラウドボーイズのような連中は「自分の家族を暴動から守るには銃しかない」と主張します。
このような傾向は元々あったし、それは米国の宿痾であって、かんたんには解決ができません。
私は問題の本質的解決は無理だと考えてしまっているほどです。
しかし、これ以上の紛争化を避けることは可能です。
黒人至上主義も白人至上主義も、米国民の大多数ではないからです。
しかしジョージ・フロイド事件がその背景まで含めて報じられないために解決をかえって難しくしています。
たとえば、毎年、黒人の2倍の人数の白人が警官に殺されていることが報じられているでしょうか。
その中には退職間際の老警官もいたり、勤務して1カ月に満たない女性警官も含まれています。
また勤務中に殺害された警官の4割に黒人が関わっているといわれています。
このようなことが背景にあってフロイド事件が起きたのであって、嗜虐的な白人レイシストだから事件が起きたわけではありません。
しかしこれらの事実を伏せて報じるなら、ひたすら白人のみが虐殺者であって、警官など削減してしまえばいいという安直な考えが拡がります。
実際に、フロイド事件が起きた民主党系ミネアポリス市は、警官の削減を決定しました。
「米中西部ミネソタ州ミネアポリス市での白人警官による黒人男性暴行死事件を受けて全米に抗議デモと暴動が広がった問題で、同市議会(定数13)の議員9人が8日までにミネアポリス市警を解散させると表明した。今回のデモを受けて警察予算の打ち切りまたは大幅削減を進める動きは全米の大都市に広がっており、法執行能力の低下により治安が急速に悪化するとの懸念が強まっている」(SANKEIBIZ 6月9日)
トランプがもの申しているのはこういう社会秩序の自壊傾向に対してであって、白人至上主義者を焚きつけいるわけではまったくない、どうしてこんな分かりやすいことが米国メディアにはわからないのでしょうか。
先日のコメントにも少し書きましたが、トランプは米国が一体性を失いかかった分裂期の統治者です。
その原因は複雑であって、外国人には理解することはできません。それくらい特殊な米国固有の問題なのです。
問題は、これを秩序の再建に置くのか、いっそうの人種間対立を助長する方向に舵を切るのか、です。
私はトランプが前者であることを望みますし、そのかぎりで彼を支持します。
バイデンはまちがいなく後者ですから。
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米国はメディア自身が深刻な分断を望んでいるからこそ、社会秩序の自壊を憂う声を大声でかき消し、言いがかりで正論を失言に上書きするのだと思って諸々を読んでいます。
このような糾弾プロパガンダの本家は中露などの共産圏である事は、こちらの多くの方々がコメント欄でも書かれていらっしゃいます。
翻って日本のメディアは、おそらく米国ほどの正義感ではなく、中露ほどの戦略性もなく、自国の分断について楽観的だからこそ無責任に真似っこできているのではと想像します。本当に分断した事がない国の幸せを、左右共に謳歌しているのは皮肉ですね。
トランプ大統領へ菅首相からTwitterでお見舞い発信がありました。コメント欄に日本語で「仮病に決まってる」などとも書かれていで情けない。中国では感染祝いの垂れ幕を持つ人の画像も。
他人の病気や不幸を嘲笑うバチあたりはお天道様が見てますよ、とだけ言いたいです。
投稿: ふゆみ | 2020年10月 3日 (土) 11時39分
トランプが白人至上主義者だというのは悪質なデマであって、実績として黒人の就業率を上げただけでなく、アファーマティブアクション等を通じて黒人を貧困者定位置に置き続ける事を企図するバカな左派リベラルとは一線を画しています。
それは黒人貧困層に向けて必要なスキルを持たせるためにする職業学校の創設や、その無料開放などの政策にも現れています。
バイデンはじめ民主党系、あるいは英国以外の欧州の米国への見方は「沈みゆく大国、アメリカ」です。
欧州(特にドイツ)はそれを望んでいるようにみえ、しかし、アメリカに取って代わって覇権国になれるワケではありません。
そうなれば、誰が「漁夫の利」を得るか明らかでしょう。
バイデンは「大統領就任と同時に中国向け高関税を撤廃する」と言っています。民主党的な、「人権」や「普遍的価値観」だけを唱える中国政策に勝ち目はありません。戦争を望まないのであれば、経済制裁や技術盗用の徹底的排除のための共和党的なあらゆる政策が必要です。
トランプ大統領の再選こそが日本の国益にかなうのであり、バイデン大統領になれば、中共の対日政策は厳しいものになる事が容易に想像がつきます。台湾への軍事進攻があるとすれば、バイデン当選の瞬間から時を置く事はないでしょう。
トランプの中共ウイルス感染が共和党の団結をうながし、選挙戦最終盤において、トランプの「強いアメリカ」的な力強い復活劇を米国民に印象づけられるようになる事を強く望みます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年10月 3日 (土) 17時35分
Twitter トランプ大統領の新型コロナ陽性で大量発生「死ねばいいのに」ツイートは削除すると警告
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0b9ed96700264b167f57d04c641fce9f2fe8276
ヒラリー・クリントンのスポークス・ウーマンでオバマ政権のスタッフでもあったザラ・ラヒム氏も「死ねばいいのに」を投稿した上でTwitterを非公開に。でも魚拓は取られている。
抑制的に言って、屑。
投稿: 宜野湾より | 2020年10月 3日 (土) 19時07分