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2020年11月26日 (木)

なにした来たのか、王毅外相

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24日から、中国の王毅(おう・き)外交部長(外相)が来日しています。何をしにこんな時期にきたのでしょうか。
とりあえず主目的は、日中の相互訪問を再開するということを詰めに来たということになっています。

外務省HPのプレスリリースです。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page6_000480.html

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    • 経済・実務協力
      (1)双方は、新型コロナに関し、自由・透明・迅速な形での情報・教訓・知見の共有をはじめ、両国が外交当局間を含む様々なルートで引き続き連携していくことを確認した。
    • (2)茂木大臣から、来年3月に東日本大震災から10年目の節目を迎えることも踏まえ、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃を改めて強く求めた。その上で、双方は、この解決に向けた協議を加速すべく、「日中農水産物貿易協力メカニズム」を立ち上げることで一致しました。また、日本産牛肉の輸出再開及び日本産精米の輸出拡大の早期実現を改めて要請しました。
    • (3)双方は、今般、外相会談で、日中間の人の往来の仕組み、ビジネス・トラック、また、レジデンス・トラックを11月中に開始することで合意に至ったことを歓迎した。この関連で、茂木大臣から、今回の合意が日中経済の再活性化に資するとともに、相互理解の促進にもつながることを期待する旨述べた。
    • (4)茂木大臣からは、日中経済の更なる発展のためには、真に公平、公正かつ安定的なビジネス環境の構築が不可欠である旨述べつつ、日本企業のビジネス活動を守り、また、公平な競争条件を確保することを改めて要請した。
    • (5)双方は、農産品貿易、人的往来・観光、環境・省エネ等、双方の関心や方向性が一致している分野において協力を更に進めていくことで一致した。また、気候変動問題に関し、日中間で話し合いの枠組み作りも含め、意思疎通を強化していくことで一致した。

上の写真は会談前のフォトセッションのもののようですが、なにか肘付き合わしてファイティングポーズをとっているみたい。
もちろん菅さんもオートラリア首相と似たポーズをしていますから違うんですが、そう勘繰りたくなる一枚に仕上がっていて笑えます。

この時期に王毅の訪日を受け入れたのは、財界が日中のビジネスマンの行き来の回復や、政府間の人的交流についてわいのわいのとうるさいからです。
財界としては、早く日中のビジネス往来を再開してもらわないことには、帰国したままの駐在員が職場に戻れんじゃないか、商売に穴があいたら国がメンドーみてくれんのか、ということのようです。
11月中をめどにといっていますから、第2波の真っ最中に再開させることになってしまいます。

「会談で合意した往来再開は短期出張者と長期の駐在員らが対象で、14日間待機の緩和などで両国経済の回復につなげる狙いがある。」(産経11月24日)

そもそもビジネス再開は、感染か終息しているというのが前提のはずですが、中国の発生者数は信じるに値しません。
日本と中国はその基礎となるべき陽性判定基準が違っています。
本来、この国際基準を作るべきWHOが中国に乗っ取られていますから、話になりません。
日本は世界でも最も厳しい数値をとっていますが、中国がどのような基準を使っているのかわからないうえに、3月のある時期かからパタっと感染者がゼロになるという奇々怪々な発生動向の推移をしています。

下は外務省の各国発生数動向グラフです。

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外務省 海外安全ホームページ|各国・地域における新型コロナウイルス ...

中国は最も下のオレンジ色の線ですが、各国が第2波を受け始めた夏の終りにもまったく増加していません。
これを見る限り、中国だけ世界で唯一もっとも早い春の時点で感染を完全に封じ込めたうえに、世界でただ一国第2波とも無縁だったということになります。
重症者は無視して、死亡者、それも隠しきれなかった病院での死亡者だけをカウントしたという情報もあります。
おそらく真の死亡者数は三桁、4桁多いはずですが、あの国は政府がいう数字だけが「真実」なのです。
そのような国とビジネス往来の再開をして大丈夫なのでしょうか。
キチンとした基礎データーがわからない国に対しては安易に規制を緩めるべきではありません。
正確な数字を出させるのが、往来緩和の大前提のはずです。

ところでこの日中外相会談は中国側から求めて来たといわれていますが、それは中国は日本が米国と共同してサプライチェーンからの中国デカップリング(分離)に加わることを恐れているからです。
安倍前首相が、1次補正に中国から日本国内へのサプライチェーン回帰を予算化したことは、国内よりも国際社会に大きな反響を呼びました。
チャイナ・デップリングの勧進元であった米国のほうが、「日本はそれを予算化したのか、スゲェ」という感嘆の声すら上がったそうです。

「日本企業は出ていくのか?」 危機感強める中国当局
本当に日系企業は中国から出ていくのか?」 上海の日系企業関係者は今春以降、こうした質問を地元当局者から何度も受けた。
きっかけは、4月に日本政府が成立させた令和2年度第1次補正予算に、サプライチェーン(供給網)の国内回帰や多元化を促進する支援制度が盛り込まれたことだ。
中国では人件費高騰などの影響で海外への生産移管の動きが出ていたが、コロナ後にこれが加速することを懸念する。トランプ政権は、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など中国企業の排除を推進。サプライチェーンでも脱中国化を狙っているからだ。
 ただ、中国は巨大な国内市場を盾に外資系企業の引き留めを図る構えだ。鍾山(しょうさん)商務相は5月に「中国には14億人の市場がある。賢い企業家は巨大な中国市場を捨てることはないだろう」と牽制した」(産経8月2日)

ここで中国商務相が豪語するように、中国の最大の武器は人民解放軍ではなく、この4億とも言われる中間層が作る消費市場の存在です。
この貪欲な消費欲は世界経済を吸引し続けています。
トヨタでもわかるように、消費地の国で生産するのがもっとも効率的だというのが巨大企業の考え方です。
仮にサプライチェーンから足抜きしても、ヨーロッパ全域を上回る巨大市場にはよだれが止まりません。
だから片方の生産部面だけの足抜きは難しい、これが財界の考え方でしょう。

王毅はその日本財界の足元を見ています。
ここで日本にチャイナ・デカップリングに走らないためにも、ビジネス往来を呼び水にしたいということです。

そしてもうひとつの王毅が来た理由は、米国が大統領選でドタバタを繰り返している間に日本を取り込み、日米同盟を分断してしまうことです。

  • 海洋・安全保障
    (1)茂木大臣からは、尖閣諸島周辺海域等の東シナ海における最近の情勢を踏まえ、個別の事象にも言及しつつ、我が国の懸念を伝達し、海洋・安全保障分野について、中国側の前向きな行動を強く求めた。また、大和堆周辺水域における中国漁船の違法操業について、再発防止や漁業者への指導の徹底を改めて強く要請した。
    (2)双方は、これまでハイレベルにおいて確認してきた、東シナ海を「平和・協力・友好の海」とするとの方向性を改めて確認し、海洋・安全保障分野での取組を推進していくことで一致した。日中防衛当局間の海空連絡メカニズムに基づくホットラインについて、開設に向けた調整が進展していることを歓迎した。

この外務省プレスリリースでは触れていませんが、会談ではこのようなやりとりがあったようです。

「一方、王氏は記者発表で尖閣諸島について「われわれは自国の主権を守っていく」と述べ、中国の領有権を改めて主張した。同時に、偶発的な衝突を回避する「海空連絡メカニズム」をめぐり、緊急時のホットラインを年内に開設する方向で合意したとも述べた。
 会談では、茂木氏が香港情勢に懸念を表明。東京電力福島第1原発事故後に中国が導入した日本産食品の輸入規制を話し合う協議体の設置などで合意した」(産経前掲)

残念ですが、成功したのはビジネス往来だけで、安全保障面では頑なに尖閣の領有権を主張するという下策に走ったようです。
私は、知日派の王毅はもうちょっと柔軟になにか仕掛けて来るかと思いましたが、毎度ながらの中国共産党節の一本調子。
せめてなにかしらの融和策の一本も持って来るかと思いましたが、手土産のひとつもないゼロ回答ですから逆に驚きました。
たとえば、仮に中国側のほうから日中の摩擦は不毛だから一定期間領有権を棚上げにして、識者まで入れた尖閣円卓会談をもとうじゃないか、なんて言い出されるとこちらも断りにくくなります。
それを「尖閣でうちの国は警備活動をしているのだ」というようなことを言ってしまうんですから、ホントこの人、外務大臣なんでしょうか。
共同記者会見で王毅は、こんなことを述べています。

「王毅外交部長「魚釣島の状況を注視している。事実として日本漁船が魚釣島の水域に入った。これに対してやむを得ず必要な対応を取らなければならない。我々の立場は明確だ。我々は自国の主権を守って行く」
一方、王氏は会談後、記者団の取材に応じ、尖閣周辺海域での日本漁船の活動に触れ、日本側が「既存の共通認識を破壊した」と主張。こうした現状を改めることで「問題を沈静化させることができる」と語った」(時事11月25日) 

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あーあ、王毅言っちゃいましたね。「日本側が共通認識を破壊した」ですか。
これでいくら友好的雰囲気を取り繕うと、この一言で一切が無駄に終わりました。

やれやれ、ここまで言われては、茂木さんも苦笑するしかありませんね。
河野氏なら「それはわが国の認識と異なる」と釘を押すのですが、ここでこんな顔で対応するのも茂木氏のキャラだということにしましょう。
というか彼からすれば、こういう顔するしかないんでしょう。
ややもの足りませんが、それはそれでしかたがないと私は思います。

それ以上に、価値観外交を主張できたことはたいへんにいいことです。
茂木氏は、日中間に横たわる問題が、領有権だけにあるのではなく本質的価値観がまったく違うのだ、ということを王毅に直に伝えたました。

  • (1)香港情勢に関しては、茂木大臣から、立法会議員の資格喪失の件を含む一連の動向への懸念を伝達し、「一国二制度」の下、自由で開かれた香港が繁栄していくことが重要であり、中国側の適切な対応を強く求めた。
  • (2)茂木大臣から、地域・国際社会に共に貢献していく上で、自由、人権の尊重や法の支配といった普遍的価値を重視していると述べた上で、国際社会からの関心が高まっている新疆ウイグル自治区の人権状況について中国政府が透明性を持った説明をすることを働きかけた。

ここで茂木氏が、香港、ウィグルまで言及したことは高く評価できます。
いまさら始まったわけでもない領有権もさることながら、香港・ウィグルの人権問題を言われることのほうが中国にとって痛いことのはずですから。

とまれ、この日中外相会談における収穫は、事実上日中は尖閣問題では決裂しているという再確認ができたこと、価値観を共有しない相手といくら「対話」しても無駄だということがよくわかったことです。
あ、そうそう「日中海空連絡メカニズム」なんてものも本決まりになったのはめでたいことですが、偶発的戦闘が地域戦争に発展しないためには意味がありますが、では本気で尖閣や離島を取りにきたらどうするんでしょうかね。
あの国は侵略するときは、そんな連絡ホットラインなんか切断してしまうでしょうからね。

 

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コメント

ほんと、あのオッサン何しに来たんだか。

わざわざ尖閣決裂宣言しちゃうの?と。外相が喧嘩売りに来たのか?

北欧やカンボジア回ってちょっと調子こいてるのか、共産党内で成り上がるためには何でもするということですかね。。

 王毅の訪日を拒む事は無理にしても、茂木大臣のあのポーズはやりすぎでしょう。
香港では周庭氏や黄之鋒氏の収監や民主派への弾圧がきびしさを増すなか、全く噴飯ものです。
口では懸念を示したとしても、世界からみれば「香港情勢の容認」と受け取られかねません。

欧州で嫌われ者になった王毅が、日本に活路を求めてやって来た事は明らかで、日本国民の対中感情の緩和を通じ、習の国賓来日の地ならし目的のための訪日であったと考えるべきでしょう。

しかし、経済界や中央の政治層の願望とはちがい、日本国民の対中感情が容易に好転する事はありません。そう考えると、尖閣の問題は日本の「守り神」です。
菅さんが習の来日をやるなら、菅政権は崩壊するのではないか。
バイデン外交の深奥を先取りした見立ての下だとしても、国民は中共との距離感を保ちたいと願っています。

かつて安倍元首相は突然、「日中関係は完全に平常な軌道にもどった」として、人々をおどろかせました。
それから中共はさらにやりたい放題の狼藉と、つづく武漢肺炎の世界輸出を止めることはありませんでした。
にもかかわらず二階は、「日中関係は誰が見ても春」などという戯言をいい、反発を受けています。

RCEPといい、中国のTPPへの加入検討といい、日本政府がやっている事は「ギャングは約束を守る」と頑なに信じているようで、約束を守らない場合の担保を国民に示そうともしません。


王毅外相の外交を数年来生温かく見てきましたが、ぶち壊したいときに寄越すものだと思っていました。
繊細な交渉をするなら李克強を派遣するはずです。

果たして王毅外相はぶち壊してくれたのですが、李克強が来れない理由があるのではないかと勘繰ってしまいます。

それと、王毅外相は以前の強面から比べると痩せて覇気が無いように見えます。
ストレスなのか病気なのか、他人事ながら心配してしまいます。

今回の対応からして安倍政権時の官邸主導の外交から元の外務省主導の外交に先祖返りしてしまったとしか思えないのが残念でなりません。
記者会見の最後に強烈なビンボールを投げ込んできたのにその後の返しが「謝謝」ですか。
ケンカ腰になれとは言いませんが気の利いた皮肉の一言でも返せないようでは世界に中国の言い分を認めたかのような取られ方をされる可能性もあるというのに…
せめて無言で退席するくらいの意志表明は見せて欲しかった。

失礼な態度を取ってきた相手にまで礼節を尽す必要なんてありませんよ。

 今回下手な日中宥和の演出が空振りで終わったことに少しほっとしております。しかし水面下では習近平総書記の国賓訪日計画が依然として生きている可能性があり注意が必要です。

 あと尖閣の件は極めて深刻な事態で、王毅外相の態度は「尖閣が中国領」という既成事実化を狙ったものであり、デジタル博物館と合わせた宣伝戦の一角です。うかうかしていると世界中の地図が書き換えられてしまいます。

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