• 20250122-034332
  • 20250122-034624
  • 20250121-022941
  • 20250121-025750
  • 20250119-145554
  • 20250119-142345
  • 20250119-142345_20250119150101
  • 20250119-150249
  • 20250119-152051
  • 20250117-013132

« 問題は選挙の勝ち負けだけではないのです | トップページ | 安倍桜を見る会余聞 »

2020年12月 4日 (金)

黄之鋒と周庭、林朗彦の三氏、牢獄へ

Dsc01728

12月2日、黄之鋒、周庭、林朗彦の三氏が逮捕され、実刑判決が出ました。
三氏は「6・21警察包囲集会」事件で逮捕され起訴され、それぞれ禁固13.5か月、10か月、7か月の実刑判決となりました。
執行猶予も保釈もつかず、保釈も認められずそのまま収監されました。
周庭は泣き崩れ、黄之鋒は退廷時、傍聴席にむかって「難しいのはわかっているけど、がんばれ!」と叫び、林朗彦は「絶対後悔はしない!」と叫んだそうです。
周は決まっていた北海道大学の研究員生活に早く入りたかったのでしょう。

「【台北=矢板明夫】香港の西九竜裁判所は2日、昨年6月のデモをめぐってデモ扇動罪などに問われた民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏(23)に禁錮10月、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(24)に禁錮13月半、林朗彦(アイバン・ラム)氏(26)に禁錮7月の量刑をそれぞれ言い渡した。いずれも執行猶予はつかず、3人は再び収監された。 香港紙、蘋果(ひんか)日報(電子版)などによれば、法廷で量刑を聞いた周氏は号泣した。3日に24歳の誕生日を迎える周氏の弁護士は上訴に伴う保釈を裁判所に申請したが、その場で退けられたという。一方、黄氏は傍聴席の支持者らに対し「頑張って耐えていく」と話しかけ、林氏は「後悔はしていない」と大きな声で叫んだという」(産経12月2日)
https://www.sankei.com/world/news/201202/wor2012020030-n1.html

202011230000375w500_0

日刊スポーツ

この日は周庭(アグネス・チョウ)は24歳の誕生日にあたり、香港浸会大学を卒業する日でもありました。
周庭はせめて誕生日を「みんなと過ごしたい」という切ない望みをもっていましたが、中国共産党はそれを無惨に摘み取ったわけです。
しかも、おおよそ中国以外では禁固10カ月はおろか、逮捕事案にすらなりえない「集会呼びかけ」にすぎません。
まだしも彼女が実力闘争に加わったのなら刑法犯に問われる可能性がありますが、ただの集会呼びかけであり、しかもその集会の主催者ですらありません。
これで逮捕されるということは、当局がこれは潰すと思っただけで、そこに関わるすべての行為が、実行行為や煽動をしたか否かを問わず、一切有罪処罰の対象になりえるということです。
恐るべき話です。これが中国共産党のいう「法治」です。
日本のリベラル左翼の皆さん、これが真のファシズムです。

Enohzivgaeb7il

王詩麗裁判官はこのように判決理由を述べています。

「三人の社会運動は日増しに犯罪的になっていった」と指摘。「三人が共犯として分業協力し、言葉と行動で他人を扇動しこのデモに参加させようとした。デモの規模を大きくし、また道路をふさぎ潜在的リスクを伴い、警察はこの対応のためにマンパワー資源を浪費させた」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.224 2020年12月3日

異常の一言に尽きます。
そもそも王裁判官が実刑判決の理由にしている「煽動行為」の証拠は、黄之鋒と林朗彦がメガホンを使って警察を非難するいくつかのニュース映像、黄之鋒がテレグラムが警察総部前のデモに参加するように呼び掛けるメッセージぐらいのようです。
周庭は黄之鋒の傍らに立ってスピーカーを持っていただけにすぎません。下の写真がその時のものです。

Ehj_ewrueaat2eo

Poker ポーカー Now on Twitter: "【香港】6月の警察本部包囲デモで ...

これを「煽動行為」だと断定するなら、街頭での演説やその支援行為一切が犯罪と見なされることなります。
しかも周庭は今までスポークスウーマンとして活躍しましたが、実行行為などには一切加わっておらず、それを教唆した事実はありません。
黄之鋒は雨傘運動からの筋金入りの民主活動家、過去2回に渡って収監経験があります。
一方、周庭はこれが初犯であり、百歩譲ってこれを違法と言ったとしても執行猶予つきで保釈が当然です。

「かつての香港の同様のケースは、香港の弁護士らなどに言わせると、一定期間の社会奉仕が相応の処罰であろう、という。かりに、この「違法集会」に参加するのが犯罪である、というならば」(福島前掲)

裁判所は、黄之鋒がメガホンを持って演説した、テレグラムで警察総部前に誘導した、ということを証拠として判決理由に挙げていますが、これはイスラエルのハッカー企業セレブライトに依頼してハッキングしたもので、内容的にも不特定多数への煽動ではなく、仲間内への連絡にすぎなかったようです。
法治社会においては、このような違法な証拠収集に基づく判決は無効です。

福島氏によれば、この6月の集会において、主役は黄之鋒らデモシストではなく「連登仔」(LIHKG)というグループだったそうで、彼らはいわゆる「勇武派」(武闘派)です。
勇武派は、実力行動も辞せずとして激しく警官隊と衝突を繰り返したのはご存じのとおりです。
私はこのような武装闘争はかならず中国当局の弾圧のエスカレーションを招き、やがて中国国家が前面にでてくることを恐れました。
彼らからすれば、むしろ香港行政府の後ろ楯である中国共産党を引きずり出すことで、中国国家との直接対決を望んでいた節があったようですが、私には無謀な自滅行為と写りました。

いまだ国際社会の民主派への支援体制は充分ではなく、特に米国は議会の制裁法のみといった状況で、むしろ彼らの武闘が支援をしづらくしていました。
議会の民主党がBLMを支持する乗りで香港デモを支援したことに対して、かんじんのトランプは過激デモに対して否定的感想があったように見えました。
この武闘派を押しとどめていたのが、実は黄や周らデモシストの言論重視派です。

Img_0f3ff3748fd47b28f9fc62a903c72e141863

香港の民主派学生、新党「デモシスト」旗揚げ 独立問う投票目指す

彼らが国際社会への発信源となっていたためにまるで彼らが香港デモ全体の司令部のようにみえてしまいましたが、決してそういうわけではなかったようです。
実際に、区諾軒(市議)によれば、6月21日のデモについても、黄らデモシストと武闘派の連登仔と意見が対立していたようです。

「このまま興奮状態でデモを行うと、暴力的な状況が起きそうなので、デモを続けるがどうかを現場で賛否を問うてはどうか、という提案をしたようだ。それで集会のあと、黄之鋒がデモを解散させた、といった非難が参加者から殺到したとか。
つまり黄之鋒が切りの良いところで解散を提案したからこそ、21日の警察前集会は、あの程度の過激さ(レンガを投げたり卵をぶつけたり)で済んだ、ということだ。黄之鋒らがいなければ、もっとヒートアップし、暴動に発展したかもしれない、ということではないか」(福島前掲)

デモシストら穏健派は、暴力闘争をヒートアップすればするほど国際社会の信頼を損ない、中共には弾圧の口実を提供し、結局は運動全体が潰されると判断したようです。
若いも関わらず、このようなバランスの取れた情勢認識ができるのが黄の優れた点です。

1000x1_20201204060301

ブルームバーク

このように彼らは一切の「犯罪」を犯してはいません。
いやむしろ、仲間の過激化を押しとどめる側でした。
もちろん中共当局もそれを知っていながら、あえて穏健派の彼らから実刑判決を下したのはなぜでしょうか。

「今回の裁判ではっきり分かったのは、香港の司法のやり方は、もう中共政府のやり方とほとんど同じで、裁判で起訴事実を明らかにし、法の下で公平に裁くというものではない。中国本土と同様、法は中共が気に入らない人間を痛めつけ、脅し、屈服させるための道具であり、国内外に影響力の強い人間を共産党が法の名の下で屈服させて見せることで、「鶏を殺して猿を脅す」効果、「寒蝉効果」と呼ばれる委縮効果を狙うものなのだ。
そうして運動の熱を恐怖政治で抑え込み、メディアをコントロールし、中共に逆らう存在を殲滅しようとしている。
このための見せしめとして裁く対象は、顔をマスクや眼鏡でかくし匿名の破壊活動で抵抗する勇武派よりも、寸鉄まとわぬ姿で顔と名前をさらし、正論を訴える言論活動家の方が、目的の萎縮効果は大きいだろう。
なぜなら言論の活動家が求めるのは、最終的には対話による解決であり、対話の余地があるという希望をつぶすことが、人々に一番絶望を与えることになる」(福島前掲)

それに対して武闘派は、自分たちが暴力という違法行為に走る以上、警官に殴られ逮捕され、牢屋送りになることはむしろ当然の覚悟のうえで、そこでまた法廷闘争を戦えばよいと考えています。
このへんの彼らの心理は、かつての70年安保世代と似たものだと思われます。
しかしそれは市民社会から隔絶した思い込みであって、必然的に社会から孤立化するが故に、仮に逮捕・収監・実刑判決を受けても社会は驚かないでしょう。
国際社会も彼らの目的には理解を示しつつ、その救済をしようとまでは考えないでしょう。
中国共産党は暴力によって政権を奪取し、暴力で考えの違う者たちを粛清し、時には第2次天安門のような大虐殺すら厭わない暴力のプロです。
ヤクザが屍の山を築き、ヤクザが仕切っているのが、この中国という国なのです。
こんな彼らと、暴力のエスカレートで勝とうとすること自体が大きな間違いで、彼らにとって武闘こそ待ち望んだ抵抗方法だったともいえるのです。

ですから中国共産党にとって、ほんとうの摘み取るべき対象はこんなハネ上りたち武闘派ではなく、国際社会にパイプを持ち、多くの外国人ジャーナリストや議員たちから愛されて支持されていた黄や周などの穏健派でした。

さて、実はこの判決は前触れでしかありません。

「黄之鋒と周庭については、8月10日に香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕された件がまだ残っている。こちらの方が、実は恐ろしい。違法資金集めや外国との結託、などといった罪が問われかねない。特に中共が目の敵にしている黄之鋒は中国に送致されて中国の司法で裁かれる可能性もあるのではないかと噂されている。(略)
黄之鋒、周庭には今年8月10日に香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕された件もある。今後、この件でも裁判が行われるのか。また、台湾への脱出途中で中国海上警察船に拿捕され、中国深?で収監中の12人の香港市民の裁判はどうなるだろうか」(福島前掲)

中国は、米国の政治の混乱に乗じています。それが終息するまであと数カ月はかかるはずです。
それまでに中国は香港民主派を根絶やしにしようとしています。
同時にオーストラリアを断交にまで追い込み、日本を無力化することでクアッドを解体させようとするでしょう。

 

 

« 問題は選挙の勝ち負けだけではないのです | トップページ | 安倍桜を見る会余聞 »

コメント

これが中国共産党の恐怖政治の実態であることをまざまざと見せ付けられる出来事でした。
周庭さん達には国際社会の目があるから、今までは逮捕はしても釈放されましたが···今度こそヤバイ!
8月に逮捕釈放された時に心の中で「アグネス!今すぐ逃げて亡命しろっ!!」と叫んだもんですけど。。
いやあ見事にアメリカが選挙で混乱してる時にやってくれましたね。一方で日本には王毅を釘刺し役として送り込んで来たり、全く憎たらしいほどの外交手腕です。

オーストラリアにはさらにワインまで関税で圧迫してますけど、動じない豪州は素晴らしいですね。ちょっと前の政権だったら、日本の民主党政権時代みたいに危なかったですけど。

ウイグル問題もそうですけど、我が国を含めて国際社会は経済を押さえられて強いことは言えないのが実に残念です。
トウ小平時代からの長い計略が効いて来ているとも言えますね。
企業や西欧や途上国は今や数年や10年先レベルで利益を考えがちですが、ヤツらは中国4000年ではないですけど連中は50年100年先を考えて覇権を握る戦略を持っているのが伝統だということを忘れてはいけません!!

朝日新聞は昨日の3面で「締め付け」強まると載せて、社説で高々と批判していましたが、批判文句が「言論弾圧」を許さない、です。新聞自身がこうやって恐ろしい光景を見て弾圧感はあるでしょう。
しかし彼等3名が不当逮捕による不当判決により、今後命の危険に満ちた牢獄にぶち込む行為は「人権弾圧」ですね。
日本の刑務所に1年やそこら入るのとは訳が違うのです。そして別件で刑期上乗せはあるでしょう。
メディアも諸外国もせめて言葉で更に非難を強めて欲しいです。特に周庭さんはかわいいからと各国メディアがもてはやして登った台から降りづらくしたのですから。

活動家の摘発は武闘派から行われるものですが、ここまで一方的に穏健派ばかりを根絶やしにしてくるあたり、武闘派の中に中国政府がモグラを潜入させて内部から実力行使に向かうようコントロールしていたという疑惑も濃くなってきます。

このような思想の分断&過激化などで敵対勢力を内輪揉めさせつつ自滅に追いやるというのは近年の中国常套手段となっています。
彼らは民主主義の弱点をよくわかっています。
今朝のラジオで掛谷英紀氏がエコーチェンバーの危険性を唱えていましたが、自分の反対側の意見とそれに至った理由などにも冷静に目を通し続けないといけないと感じる今日この頃です。

もちろん中国レベルの暴虐は論外ですが、それにどう対峙するかという時点での議論で度を超えた人格攻撃にまで発展する昨今の日本の保守言論界にすこし寒気を感じます。

しゅりんちゅさんお書きの
> 昨今の日本の保守言論界にすこし寒気
私も感じます。
中国側の暴挙に煽られて危機感を募らせ必死に発信しているのでしょうが、効果的でないのです。
今まで日本政府の失態を「もっと頭を使って効果的に動け」と批判している人達にしては、怒りの発露が発信効果を害している(普通の人がどんどん眉唾して引いていく)のに無頓着過ぎます。

 ジョシュアは13.5年、周庭さんは10か月。
ですが、北京の狙いは周庭さんらに恭順の意を示させること。
思想改造が目的なので、中共の刑期は段落にすぎません。
続いて国家安全法で追訴されれば、10年以上の刑期と北京への押送があり得ます。

習のポスターに墨汁をぶっかけて精神病院送りになった女性がありましたが、監視体制をぬってSNSで悲壮な発信をしました。
かくも自由を奪われる事に対する非常な体験は、イデオロギーを超えた生き死にの問題を超える事もあると深く感銘しました。

このような事態に、日本はじめ世界中がこれを遠巻きに眺めているだけの現在、トランプ御大は「中国人を救わなければ」とし、ポンぺオは「中共と人民の分離」を言いました。
来るバイデン時代に日米は、「互恵のための率直な対話」という事らしいですが、そうした実験は失敗に終わったのです。
それでも同じことをし続けるのは、中国の全体主義化に加担するも同義でしょう。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 問題は選挙の勝ち負けだけではないのです | トップページ | 安倍桜を見る会余聞 »