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2020年12月28日 (月)

組織的侵入をしていた中国海警

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世界が大統領選に気を取られているうちに、中国は「やるべきこと」をやっています。
そのひとつがオージーに対する過熱化した輸入制限であり、そしてわが国に対しては王外相の尖閣領土発言とその裏でエスカレートする一方の領海侵犯です。

この間の中国公船の侵入パターンには、従来と較べて明らかな違いが見られます。
たとえば12月9日のケースでは、中国公船は4隻で船団を組んで長時間に渡って領海侵入を繰り返しました。

中国海警局の船による日本の領海侵入は、11月7日以来で今年22回目。
本土ではまったく報じられていないので、現地の八重山日報(12月10日)を見てみましょう。

「第十一管区海上保安本部によると、9日午前9時43分ごろから尖閣諸島(石垣市登野城尖閣)周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで侵入、約1時間半後に領海を出た。中国公船が尖閣周辺で領海侵入したのは11月7日以来で、今年27日目。
4隻は、機関砲のようなものを搭載した「海警1303」のほか「海警1301」「海警1302」「海警2502」。
加藤勝信官房長官は記者会見で、首相官邸の情報連絡室を官邸対策室に格上げして情報収集や分析に当たり、中国政府に抗議したと説明。「誠に遺憾で、断固容認できるものではない。わが国の領土領空領海を断固として守る方針のもと、関係省庁と連携していく」と述べた。
日中関係に関する認識を問われ「中国は世界第2位の経済大国で、日中関係は日本にとって重要な二国間関係の一つだ。引き続き首脳会談や外相会談などハイレベルな機会を活用し、主張すべきは主張し、中国側の前向きな対応を強く求める」と述べた。
日本政府は11月下旬に来日した中国の王毅外相に対し、尖閣周辺での中国公船の活動に関する懸念を伝えたばかりだった」
中国船4隻が領海侵入 尖閣周辺、今年27日目 | 八重山日報  

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中国公船(右)と並走する海上保安庁巡視船(左)=2013年8月7日、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺海域(石垣市の仲間均市議提供)

次に、海上保安庁が発表している中国公船の領海侵入回数グラフを見てみましょう。Image01_20201228025501

この日のニュースだけを見ると、これまでの領海侵入と同じと感じられるかもしれませんし、こういう中国の侵犯常態化は日本の世論を麻痺させるためのものなのです。

さて侵入パターンは、12月8日から15日を除いて連日接続水域に侵入し、うち9日にはこの4隻がそのまま領海に船団で侵入しています。
また23日には、接続水域に入った4隻のうち2隻が領海侵入をしています。
特徴的なことは中国公船が「4隻」で船団を組んでいることです。
2020年に入ってからこの侵入船団は4隻でチームを組み、毎月15日に1ヶ月ごとの交代をし、別に1隻は予備船で随時リリーフしているようです。

またもうひとつの特徴は、古い巡視船タイプの1000トン級に代わって、その3倍の大きさの3000トン級に交代させたことです。
これは12月に入って冬季の荒天のためだともかんがえられますが、大型の軍艦まがいの公船を侵入させています。
大きさを比較すると、中国公船は八重山漁師の漁船からは小山のように見えるそうです。

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この3000トン級公船は、2013年から2-3年間で作られた軍艦型のもので、船型を見ると船体と、船橋構造物からヘリ格納庫までを一体化して、搭載艇(RHIB)と救命艇の設置場所のほかにスティルス性を考慮したような凸凹を作らない異様な構造となっています。
東シナ海を管轄する海警東海分局には、この3000トン級が8隻が配備され、海監型3000トン、級漁政型3000トン級、そして海警2301型の3種類があるようです。

通常、沿岸警備隊型艦船はあくまでも海上警察活動をしているのであって攻撃任務に就いているわけではありませんから、むしろ相手方のレーダー反射面が大きいほど任務に適しているわけです。
それを相手方に見つからないようすることを主眼とするスティルス・タイプを新造し続ける神経が理解できません。
あんたら警察だろ、海軍のつもりか。

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海警2301 3000トン級

そのとおり、彼らは海保の仮面をかぶった海軍もどきです。
いちおう海警と名乗って、船体にはチャイナコーストガード(中国沿岸警備隊)とデカデカと表記しているにかかわらず、一般の国とは違って中国海警は2018年7月に、中央軍事委員会が直接指揮する武警傘下の海警総隊(中国海警局)に再編統合されています。
つまり中国公船とはいうものの、指揮系統は中国海軍に連なります。

では、日本側に何ができるでしょうか。
現在大型巡視船を八重山に派遣することでしのごうとしていますか、いかんせん海保全体の予算がイージス艦一隻とどっこいくらいの額ですので、巡視船の多くは痛みが激しく、海保職員の疲労も限界に近づいていると言われています。

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海保巡視船うるま

それだけにとどまらず、法的な措置が遅れています。
中国は領海法を一方的に制定し、法的根拠にしていますが、わが国にはそれに相当するものがないのです。
領海に他国の船舶が侵入した場合、直ちに「領海侵犯」事案として実力で排除できるのかといえば、できません。

領海侵犯が成立するためには、以下の条件が成立せねばなりません。

①侵入した船舶が、政府公船・軍艦であること。
※民間船の侵入は、単なる不法入国の範疇だから扱いが別枠。
②侵入した外国公船が国際海洋法の無害通航権を犯した場合。
※無害通航に当たらないと領海国が判断した場合のみ、初めて排除宣言が可能。

中国公船・軍艦は国際海洋法により無害通航権を有していますから、現在の領海侵犯行為に対してもそれが適用されます。
日本側はそれに対して領海であることを強く警告できますが、砲を旋回させたり、艦載機をとばしたり、調査行為などしないかぎり合法です。
日本人としてはふざけるなと叫びたいでしょうが、今回のような中国公船・軍艦は国際海洋法により無害通航権を有していますから、現在の領海侵犯行為に対してもそれが適用されます。
中国船を排除できるのは、日本のEEZ(排他的経済水域)で違法操業した民間漁船の場合に限ります。
日本と中国は日中漁業協定を結んでいます。実に細かく水域がゾーニングされているのでご注意ください。
日中漁業協定 - Wikipedia

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1997年の日中漁業協定によって、他国のEEZ内で操業する場合には、相手国の許可が必要です。
中国漁船が日本のEEZで操業するなら、日本の許可が必要です。
ここで問題となるのは、日中漁業協定で棚上げとなっている海域があることです。
それは
北緯27度線以南の海域で、この27度以南の水域は日中漁業協定第6条(b)によってどちらの権益に属するのか決まっていないのです。
この領有権が明確にされていない水域に、なんと尖閣水域が入っているのです。

アジャパーという感じですが、尖閣を係争地としないことを外国方針としているわが国は、臭いものに蓋とばかりに尖閣水域を法令適用外の「どちらの国のものでもない海域」に設定することに合意してしまいました。
こういうことをすれば、法の盲点が生まれ、そこを中国は突いてくるに決まっています。

つまり、日中漁業協定はこの尖閣を「法令適用除外水域」としてしまうことで、事実上中国の操業を認めてしまっているわけで、これが中国漁船の取り締まりに支障をきたす結果となっています。

「現行の日中漁業協定は、北緯27度以南の東シナ海の日本EEZについて棚上げしており、この海域で中国が自国漁船を取り締まる権利を否定していない。中国の漁業監視船は、これを根拠に行動することができる。
日本政府はこの海域を「EZ漁業法特例対象海域」に指定し、中国漁船に対して漁業関係法令を適用していない。中国漁船もまた、これを根拠として操業している。
日本国民として非常に残念なことだが、中国政府には「自国の漁業監視船の活動を日本が容認している」と主張するだけの根拠がある、と考えるのが国際法的にも自然なのである」(静岡県立大学助教・西恭之)

わが国はこの尖閣水域を日中漁業協定に沿って「どちらの国のものでもない水域」にしていますが、中国はそんな紳士的な取り決めなど屁とも思っていません。
中国がしているのは、協定の盲点を着いた既成事実の積み重ねです。
中国側は、2016年のように北緯27度以南の尖閣水域にまで大挙して漁船を入れてきたり、例年平然と多くの漁船を入れては、ここはオレら中国様の海だ、と主張するようになりました。
中国海警はそれを取り締まるどころか、今回訪日した王毅が言い放ったように、「日本漁船が違法操業している」と、居直り強盗のようなことを言う始末で、沖縄県議会から抗議声明を受けたほどです。

ですから日本政府は早急に、この海域に隣接する中国や台湾と同様の領海法の法整備をせねばなりません。
外交において、等価の対応をすることが認められています。
中国が一方的に領海法を制定し、尖閣周辺の暫定水域にまで漁船を入れてくることを続けるのなら、こちらも当該国の法律によって対処可能なような領海警備に関する法律を早急に作って対処せねばなりません。
これは一方的な国内法の制定だけですむので、どうせ中国はギャーギャー言うに決まっていますが、あんたの国と同じもんを作ってナニが悪いねん、と放っておけばよろしい。
そして、そんなにご不満でしたら、日中漁業協定もいい機会ですから改訂交渉をしましょか、と突き放し下さい。ニタニタあいまいに笑ってはいけません。

こういう政府ができることをせずに海保にばかりその重圧を任せているから、気がつけば中国が領海宣言をして日本漁船を「取り締まる」ようになるのです。

 

 

 

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コメント

まったく、既に増長してしまった中共に曖昧な政策では飲み込まれるだけです。昔の自民党が悪いんですけどね。。
70年代に平和条約を結ぶために尖閣は後年の世代に託すなんて無責任なことをせずに、優位なうちにガッチリと領海や経済水域を定めて置かなかったから現状を招きました。
いやあガキの頃に日教組な先生達に「日中平和友好条約」の素晴らしさとか、歓迎しなさい!というムードは凄かったですね。
先生達でもいわゆる戦中世代はひたすら「戦争はダメ!」だったのはともかく、戦後のベビーブーム世代の人は、そのちょっと前までは毛沢東独裁で文革とかでとんでもないことをやってたことは知らんぷりでした。日教組内で上司には逆らえないしという感じ。
あんなんで各地に立派な「教育会館」とか建てまくったりで、後で考えるとどっからそんなカネが出てたのやら?です。まさに労組利権。

それにしても中国の従順な下僕政権だった民主党時代、最後に野田首相時代に尖閣の国有化宣言してからの露骨な嫌がらせの増加は見事にグラフに出てますね。。。むしろ相手に介入の口実を与えるための「国有化宣言」だったのではないかと考えると逆に腑に落ちます。

妄想話になりますが、

中国海警が装備も指揮系統も実質海軍化した訳で···

本来は警察相手には警察で当たるのが原則ですので海警の相手をするのは日本では海上警察組織である海保。
だが予算も装備も人員も足りない。。

んじゃ70年ほど前に我が国がやったように海保予備隊を作って、海上保安隊に進化させて海警を名乗る組織にするというのは理に叶っています。予算や人員でたぶん無理でしょうけど。
じゃあ自衛隊出せ!?と言われそうですけど、そんな組織改変が可能なら自衛隊はとっくに国防軍もしくは日本軍になっているであろうという前提での話です。

憲法問題が必ず絡んでくるでしょうけど、そんな議論や口論は一切無視してます。
単純にパワーバランスと名称を比較した想定の話です。

在沖米軍が抑止力にはなっていますね。
ぎりぎりの軍事バランスを保っています。それもバイデン政権誕生でどうなるか。沖縄は相も変わらず米軍基地反対です。
自衛隊は手かせ足かせをはめられ、アメリカも頼りにならなくなった時が危ない。最近、中国の企業の大型倒産が相次いでいますが、トランプ効果ですね。中国国内がガタガタしているのに自由主義陣営はコロナ騒動で結束できない。2021年度は何が起きても不思議ではない。

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