戒厳令報道の真偽
今日までが任期のウィリアム・バー司法長官は特別検察官を任命するつもりはないと言明しました。媒体はCNNですが、疑う理由はありません。
「ワシントン(CNN) 米国のバー司法長官は21日、記者会見で、今年の大統領選の不正やバイデン次期大統領の息子のハンター氏に対して捜査を行う特別検察官の任命について問われ、任命する計画はないと明らかにした。トランプ大統領は大統領選をめぐり不正が行われたと主張しているが、バー氏がトランプ氏の考えを拒否した形だ。
バー氏は大統領選に関する質問に答え、「もし、現時点で特別検察官が正しいツールであり適切だと考えるならば、指名するだろう。しかし、指名していないし、これからも指名しない」と述べた。バー氏はまた、今回の大統領選で大規模な不正は見つかっていないと語った。
バー氏はトランプ氏の支持者から最近要求が出ている投票機器の押収についても否定した。「連邦政府が押収を行うための根拠がない」としている。
今回の記者会見はバー氏がトランプ政権下で行う最後の大規模な記者会見で、トランプ氏からの決別の姿勢が鮮明になった。
トランプ氏は顧問らに対して、ハンター氏や投票機器に関する特別検察官の必要性について尋ねている、選挙が盗まれたと主張し続けている。
ハンター氏については当局が財務関係について捜査を行っている。バー氏はこちらについても捜査を保護するための特別検察官の任命は必要ないとの認識を示した」
(CNN 2020.12.22 Tue posted at 17:20 JST)
https://www.cnn.co.jp/usa/35164234.html
一読してわかるように、バーはハンター疑惑を解明するつもりなどさらさらないし、不正選挙も調査する気はないということです。
「根拠がない」だって(ため息)。こうまであけすけに言われると、こちらのほうが鼻白むほどです。
司法の公正中立もクソもありません。CNNがいうように「トランプとの決別」なんて重々しいもんじゃなく、ただのバイデンへ寝返りにすぎません。
前日の記事を書いていた午前4時頃には知り得なかったためとはいえ、こんなしょうもない男に対して過剰な深読みをしてしまったために起きた誤認でした。
昨日のバーに対しての評価を取り下げると同時に、たいへんに申し訳ありませんでした。
このような分析ミスが起きたのは、私が「大統領の戒厳令」を恐れているからでしたが、そのためにいまホワイトハウスに残る男たちに過大な評価を与えてしまうことになったようです。
AFP
さて、一日たって現時点からこのホワイトハウス戒厳令協議報道を検証すると、信憑性に欠ける点がいくつか散見されます。
なんて言うんだろう、あまりにも出来すぎ、不自然なんですよ。
昨日にも書きましたが、いくら公務ではないとはいえ、今はただの私人であるはずのフリンやパウエルをホワイトハウスに呼び出して、あろうことか戒厳令の是非を論じたことに引っ掛かります。
いいでしょうか、もしこの時論じていたと報じられた戒厳令が失敗した場合、トランプのほうが反乱罪に問われる可能性があるのです。
反乱罪、つまりクーデター未遂ですから、トランプのほうが「大統領のクーデター」として法廷で裁かれる立場になります。
それほどまでに戒厳令を決断することは重いのであって、もしトランプが本気で戒厳令を布告する気ならば、それを私人を交えた場所ですること自体非常識です。
これではフリンやパウエルは、まるで2.26事件における北一輝になってしまいます。
仮にトランプが本気ならば、いまさら「北一輝」の出番はなく、相談するのは実行部隊である陸軍部隊を動かせる国防総省と将官です。
こと次第では、民主党系知事の州兵と連邦軍が対立し、交戦する可能性すら否定できないのですから、しっかりと軍側の意見を聞いておかねばなりません。
ネットで士官学校対抗試合で軍人たちが見に来たトランプにUSAコールを送ったから、トランプのいうとおりに軍が動くなんてヨタが流れていましたが、バカ言っちゃいけない。
現実に市民に銃を向けねばならず、州兵と対決することすらありえることに、指揮官たちが簡単なゴーサインを出すわけがない。
かつて陸軍長官をしており、実戦経験もあるマーク・エスパー国防長官は、アンティファ暴動の時にすらためらいました。
前国防長官の元海兵隊トップのマティスも同じ意見だったようです。
アンティファ暴動ですらこうですから、ましてや選挙がらみなら軍が唯々諾々と従うとは考えられません。
したがって、仮にこのふたりを呼んだとしたなら、それは別のことを話合ったのです。
そして反対したメンツとされたのが、たぶんトランプに政権移譲を勧める立場だったはずの主席補佐官メドウズと法律顧問シポローネだったというのも気になります。
ホワイトハウス内部の非公開の議論が外部メディアに漏れるというのは、出席した者が意図的にリークしたことになります。
これは戒厳令を止めたということをアピールしたい者、つまりメドウズ、ないしはシポローネ以外ありえません。
議論に破れたとメディアに報じられたフリンとパウエル側が漏らすわけがないではありませんか。
しかもリークされた媒体がNYTとCNNという反トランプの急先鋒であるのも気になるところです。
今回の産経記事を書いたのも、いつもCNNを取材源にしていた黒田特派員でした。
つまり、大統領が戒厳令を仕掛けようとしているということを一番聞きたい所に、それを否定する立場の者が、欲しい情報を、欲しい時期にリークしたということになります。
なんのことはない、反トランプ陣営にとってにこれほど都合のいいニュースはなかったことになります。
そう考えると、出来すぎなニュースでした。
フェークとまでは現時点で断定できませんが、その可能性が濃厚です。
ただし、フェークであろうとなかろうと、この微妙な時期に戒厳令をしようとトランプが企んでいるというニュースは全米を駆け回ったことでしょうし、それは一部の熱狂的トランプ支持者以外にはドン引きの情報だったはずです。
それは我那覇真子さんの米国ユーチューブ(必見)で、スーパーからモノが消えつつあるという報告でもわかります。
これはトランプにとって得か損か、かんがえないでも判ろうというものです。
なお、パウエル側はそのような議論はしていないと述べています。
「パウエル弁護士がWHでトランプ大統領と会った件、クーデターや戒厳令についてはやはりNYTやCNNのデマだったと現場にいたパトリック(パウエル組)が証言。退陣を促したいメドウズ首席補佐官と弁護士達によるリークだったと。
メドウズは大統領がコロナ入院した時も怪しかった」
htps://t.co/pXg9hvLCyu」
このツイートも裏をとりようがないもので、真偽半ばします。
フリン・パウエル側なら、ホワイトハウスで戒厳令を大統領に勧めたなどと口が裂けても言えないはずで、こう言うしかないからです。
ですからこれは決定的証言にはなりえませんが、情報としてお伝えしておきます。
このようにペンスが集計された選挙人の票を開封する否かで緊張が高まる1月6日まで、どちらのサイドからも偽情報が意図的に流されます。
自戒をこめて、注意しましょう。
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バー司法長官は12/1に「選挙不正は見つからなかった」としました。それを翌日に今度は報道官が「調査中」などとして、バー長官発言を事実上否定しています。
それを今回はさらに否定したか、今後の調査にはさらに消極的なバー長官の発言となったわけです。
こんな日々クルクル変わるもの、時点時点での論評は不可能です。
この事に限らず、トランプ政権ならではの特色ですね。
トランプ大統領は戒厳令や反乱法の適用を否定して、今度は共和
党7州に対して「議会を開いて選挙人を変えるよう」呼び掛けています。それでも動かない場合には、1/6の開票日にペンス議長が投票結果を認めない事を期待しているようです。
これまでもさんざんそうだったように、なぜトランプ政権はドタバタばかりだったのか。トランプ氏の責任の部分を見ずに、この事も語れません。
P女子やウッド弁護士、ジュリアーニ氏の主張の大方は事実だし、正しいものです。しかし、肝心のトランプ御大が信頼に値しません。
最終的にペンスに火中の栗を拾わせようとする根性も気に入りません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年12月23日 (水) 11時36分
前回選挙では不正調査の長を任されていたペンスですが、今回の選挙においては極めて静観した姿勢を貫いています、もう一人の片腕のポンペオとは対照的です。
個人的に不正疑惑に関していまひとつ説得力を感じないのもこの件に対してペンスが反応していないのがあります。
あのトランプが腹心の静観に特に不満を漏らしていないようですし、本当に訳が分かりません。
そのような同氏が投票結果を認めないという伝家の宝刀を抜く事があるとはとても思えません。
あるとすればジョージアの上院選挙で共和党が負けてトリプルブルーが成立した時にもしかしたら…というくらいの可能性だと予想しています。
投稿: しゅりんちゅ | 2020年12月23日 (水) 16時47分
私の考えでは、戒厳令は可能ではないかと思っております。戒厳令を発出するには名目が正しいものであれば可能ではないか、国民も納得するのではないかと思うのです。
戒厳令の発出は、不正な選挙が行われたとの国民の議論が多く、また多くの国民が選挙を信用できないとしているからです。戒厳令を敷いて具体的には投票の審査を第三者が行うということであれば何の問題もない筈です。民主党が自信があるのであれば、これに応じるべきです。
トランプ側が戒厳令下で選挙結果を改ざんするのでなければ、戒厳令も拒否しなくてイイ。
投稿: ueyonabaru | 2020年12月23日 (水) 22時47分
ueyonabaruさんの言うとおりでしょう。
「情勢をかんがみて」という事も言えなくもないでしょうが、トランプに選挙をひっくり返す気が本気であるならば、少なくともそうしたカードをあらかじめ捨てないと思うのです。
州議会にハッパをかけ、1/6には支持者に議会を囲ませる。
そうした事は地方議会や副大統領に責任を押し付け、まわりを焚きつけて惑わせるだけで、自分の責任は回避する。
ボルトンの回想録に何度も出て来たトランプの姿勢のあらわれのように思ってます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2020年12月24日 (木) 00時45分