ソウル中央地裁は8日、16年1月に開始されていた日本政府を被告とする元慰安婦12名の訴訟で、原告の起訴事実をすべて認めた上で、被告が原告らに損害賠償金として一人1億ウォン(約950万円)を支払え、との判決を下しました。
これに対して加藤官房長官は、「国際法上の主権免除の原則から、日本政府が韓国の裁判権に服することは認められない」などと述べて、相手にしない考えです。
「日本政府が慰安婦被害を賠償すべきという8日の韓国裁判所の判決は、被害者には司法の正義が実現したという意味がある。日本は慰安婦被害について謝罪しながらも「賠償」という概念は最後まで拒否してきた。しかしこじれるだけこじれた韓日関係を解決すべき韓国政府の立場では、もう一つの大きな宿題を抱えることになった。日本は直ちに「韓国が国際法を違反した」と強く反発した。
裁判所は今回の判決で国際法的に通用する「主権免除」概念を排斥した。これは一国の裁判所が他国の政府の主権行為に対して裁判管轄権を持つことができないという規範だが、裁判所は「主権免除論はその後ろに隠れて賠償と補償を回避する機会を与えるためのものではない」と判示した。梁起豪(ヤン・ギホ)聖公会大教授は「その間、被害者が日本と米国の裁判所に提起した訴訟ですべて敗訴したが、今回、韓国国内で救済になったということ」とし「公式的に法廷で日本政府の法的責任が認められたのは初めてであり、意味が大きい」と評価した」
(中央日報日本語版1月9日)
聞き慣れない言葉ですが、外務省が丁寧に説明しています。
外務省『国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約』
「かつては、国及びその財産については、すべて無条件に他の国の裁判所の裁判権からの免除を認めること(「絶対免除主義」)が一般に受け入れられた国際ルールであった。しかし、19世紀末以降、国による経済活動が活発に行われるようになり、現在、国の商業的な行為に関しては免除を認めないとする「制限免除主義」が多くの国において採用されている」(外務省HP)
ところが国際貿易が盛んになって国際間トラブルが頻発すると、こんな外国企業が訴追の枠外では通用しなくなっちゃったんですね。
そこて政府と私企業を線引きをしました。
民間企業間のトラブルはその国の主権の範囲内で訴追して裁けますが、政府は除外対象としたのです。
というわけで19世紀以降、「制限免除主義」、つまり「国の商業的な行為に関しては免除を認めない」という考え方が、多くの国において採用されるに至っています。
これがちょっと小難しい表現で「主権制限論」といいます。国際ルールです。
外務省によれば、1977年に国連総会が国際法委員会に対し「主権免除に関する国際法規」の作成を検討するよう勧告し、その後は2004年12月2日、国連総会において『国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約(国連国家免除条約)』が採択されるに至りました。
しかし、30カ国にならないと条約として発効しないために、いまはその前段ですが、とうぜんわが国は国際ルールとして「主権制限論」を受諾しています。
たしかに発効の前段ですが、すでに国際ルール(通念)として通用しているわけで、ソウル中央地裁のようにいまさら「主権制限論の影に隠れて」なんていわれてもねぇ、なんです。
隠れるも隠れないも、日本としては国際ルールに従って処理してください、というしかありません。当然ですよね。
その線引きですが、外務省はこう説明しています。
「国及びその財産に関して免除が認められる具体的範囲等について主に以下のとおり定める。
(1)国は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、他の国の裁判所の裁判権からの免除が認められる。ただし、商業的取引から生じた裁判手続、雇用契約に関する裁判手続等本条約に定める裁判手続については免除が認められない。
(2)国の財産に対する強制的な措置(差押え等)は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、とられてはならない。
※本条約は、刑事手続及び軍事的な活動については対象外」
ね、読み間違いする余地もなく、国は当該国、この場合韓国裁判所からの裁判権の免除対象になっているために、差し押さえなどの強制措置はとることができないのです。
ですから、日本はこの裁判の判決を無視してかまいません。
というか、悪しき前例を作ってしまうので無視するべきです。
いくらソウル中央地裁が、日本大使館跡地などを差し押さえて競売するなんて言いだしてもガン無視すべきです。
韓国の法廷にも出てしまっては、自分から主権制限論を捨てたことになりますから、出ては行けませんし、同じ理由から控訴もしてはいけません。
仮に原告側が差し押さえなどに走った場合でも、今度は、外交使節の保護を定めたウィーン条約で韓国の心得違いに逆ねじを食らわせましょう。
聯合 土俗信仰の像を拝む人々
ウィーン条約は国際法で、文明国と名がつく国はそれを遵守しないとけっこう恥ずかしいことになってしまいます。
文明国だから国扱いしてもらえるのであって、ルールは守らないような国はただの野蛮国です。
国際法は国家間関係の紛争の種をあらかじめ取り除いておくものですから、結局は人間関係のようなものです。
というか、そもそも国際法というのは、近代国内法を敷衍したものなのです。
人と人の関係でも、「この家にはレイプ魔がいますよぉ」なんてことを大声で喚いて、相手の家の前にディスるような看板や、ましてや「この子がレイプの被害者の少女ですよぉ」なんて銅像を建てたら、絶対に喧嘩になりますよね。
ま、国家規模で実際にこれをやり続けているのが韓国です。
一国の代表部であり、その国の威厳の象徴たる外交施設を、誹謗する像を勝手に建てたり、その前で定期集会をしたりして外交関係が円滑にいくわけがありません。
これは接受国義務違反です。
ウィーン条約とはそのことを明文化した国際法です。
■外交関係に関するウィーン条約
第22条 1 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
2 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
この像も慰安婦合意で撤去することに決まっていたのですが、韓国外相は「解決するとは言ったが、撤去するとは言っていない」(爆笑)とシラとしてそのままになっています。
というわけで、そもそも韓国は裁く対象とならない外国政府を裁いてしまい、そのうえ「賠償と補償」を要求しているのですから、前提が間違っている上に判決を実体化させるために日本政府の施設(大使館・領事館・文化施設など)を競売の対象としたらしたで、今度はウィーン条約にモロに反してしまいます。
できると思うなら、どうぞおやりなさい。
自称徴用工訴訟で民間企業相手の資産売却すらまったく進んでいないのに、今度はもっと大物の日本政府資産ですから、推して知るべしです。
やったら十倍返ししますよ、とかねがね日本政府は言ってきているんですからね。
先ほど述べたように日本としては、このソウル地裁の審理には顔さえ出していませんでしたが、それは一度出廷すると主権制限論を自ら捨てたことになってしまうからです。
そしてどんなめちゃくちゃな判決がでようと、外交的に強く抗議しても、基本的には完全無視でけっこうです。
控訴するとやはりこの韓国の国際ルール違反を認めてしまうことになるので、同じ土俵には乗りません。
仮に、日本大使館跡地をや公使館や、その付属施設の日本文化院(公報文化院)を売りにだそうものなら、よい機会ですから、大使館の再建を断念してしまうことも選択肢となります。
どうせ作れば作ったで、またおかしな像を建てられるのがオチで、韓国政府を喜ばせるだけですから、もういらないんじゃないでしょうか。
ならばいっそう、現状でも韓国政府のネチネチしたいやがらせによって大使館施設がない状態なので、この際大使館も置かず、大使も置かないっていうのはどうでしょうか。(ああいかん、だんだん投げやりになるわたくし)
領事館は邦人保護で必要ですが、もうこの国とまともな外交関係を結ぶのは無理だと、大部分の日本人は勘づき始めていますしね。
関係修復を計るどころか、有名な反日議員を駐日大使に送り込んでくるような国となにかできると考えるほうが幻想というものです。
というわけで、なにもかも彼らの国内政治の延長であって、つきあわされるわが国はいい面の皮です。
お願い、うるさくしないで放っておいてくれないかな、こちらは新型コロナと米国大統領選の余波でそれどころじゃないんです。
ま、国内政治っていっても、結局、それでなくても検事総長騒動で首が回らないムン閣下の首を、さらに締め上げただけのことなんですがね。
ハンギョレが「訴訟には勝ったが、もうこの先は手詰まり」なんて書いていますが、はじめから袋小路に頭突っ込んでいまさらなにを(笑)。
ムン閣下はこのままなにもしないで、訴訟には勝ったとだけ言って、処理はお次ぎの政権にお願い、ってところかな。
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