南部諸州をテキジットへと押しやるバイデン
日米首脳が電話会談をしたそうで、日経がジョー、ヨシの関係となったと妙にはしゃいでおりますが、そんなことはどーでもええのです。
わが国がコロナで協力するのはあたりまえ、地球温暖化でも今は断る関係にない以上、懸案はひとつしか残りません。
「自由で開かれたインド・太平洋」(FOIP)をバイデンが認めるかどうか、その言質をとることです。
この一字でも欠けたら、ザ・クアッドではなくなります。
ザ・クアッドのいちばんのキモはいうまでもなく「自由」という価値観の共有にあります。
ここが欠落するとただの「開かれたインド・太平洋」となってしまって、これじゃRCEPみたいな経済連携協定とどこが違うのということになります。
これは中国を念頭に置いた安全保障同盟なのですから、「自由」、そしてそれが意味する法の下の秩序を落としたら、無意味です。
「両首脳は日米同盟の一層の強化や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協調で合意した。日米にオーストラリア、インドを加えた4カ国のさらなる協力のほか、北朝鮮による日本人拉致問題の解決や北朝鮮の非核化のための連携も申し合わせた。互いに「ヨシ」「ジョー」とファーストネームで呼び合うとも確かめた」(日経1月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE27EJT0X20C21A1000000/
就任式前のバイデンはここをあいまいにしてモゴモゴ言っていましたが、対外政策は当分はいじる気がないようです。
というか、ジジにはそこまで頭がまわらないんでしょうね。
彼は内政で、出しも出したり歴代第1位の30もの大統領令に署名してしまったので、そちらでアップアップです。
常識的には大統領令なんか出してもトランプが4ツ、あとの大統領はせいぜいが平均2ツていどですから10倍以上。
この大統領令の大部分は、内政ですから、彼の関心がどこにいっているかわかるでしょう。
おそらく彼の頭の中では、一位トランプ内政の全否定、二位地球温暖化、三位ヨーロッパ、あとは番外で中東、アジアってところじゃないのかな。
政権初期に日本やオージーさんと波風立てたくないしね、ていどのことで、トランプのように米国が矢面に敢然と乗り出して中国の進出を抑えようなんて気概はみじんもありゃしません。
トランプが、これだけは壊さないでくれと最後の最後まで言い残していった国境の壁政策は早くも全面否定です。
[ワシントン 20日 ロイター] - バイデン米大統領は就任初日の20日、トランプ前大統領の強硬な移民政策の転換に向け、6つの大統領令に署名した。イスラム圏やアフリカなど13カ国からの入国制限の即時撤廃などが含まれた。
バイデン氏はまた、米国に居住する多数の不法移民に市民権獲得への道を開く法案を議会に送付した。
ホワイトハウスで開かれた式典で署名した大統領令には、13カ国からの入国制限撤廃のほか、メキシコ国境沿いの壁建設の停止、選挙区再編時に不法移民を人口に数えないようにするトランプ氏の大統領令の撤回が含まれた。
バイデン氏はまた、国土安全保障省と司法長官に対し、幼少期に親と米国に不法入国した若者「ドリーマー」の強制送還を猶予する「DACA」プログラムの有効性を確保するよう指示する覚書に署名。米国内に居住している不法移民の取り締まり強化を求めたトランプ氏の大統領令も撤回した。
バイデン氏が議員らと共有したメモによると、29日に追加の措置を講じ、米国の難民保護を復活させ、難民審査手続きを強化し、トランプ氏の国境政策によって引き離された家族を再び一緒にするための対策本部を立ち上げる。ロイターはこのメモを入手した。
一方、バイデン政権の当局者が就任前に配布した資料によると、議会に送付した法案は、米国に居住する推定1100万人の不法移民の多数が8年かけて市民権を取得する道筋が示されている。
1月1日時点で米国に居住し、一定の基準を満たしている移民は5年間の滞在資格を与えられ、その後に米国永住権(グリーンカード)が付与される。追加で3年経過すれば市民権取得を申請できるようになるという内容」(ロイター1月20日)
バイデンは、メキシコ国境からの不法移民は強制送還しない、一定期間いる不法移民には国籍を与えるという非常識な政策に舵をきったらしく、当該州のテキサス州から激烈な逆ねじを食らわされました。
当然です。不法移民の7割は犯罪者というデータがあるくらいなのに強制送還しないどころか、あるていど居たら国籍やるてんですから、あんた頭大丈夫か。
とうぜんテキサス州は即刻連邦最高裁に憲法違反で提訴し、今回はさすがの連邦最高裁も即刻無効判決を出しました。
不法移民の現状はこうです。
「合法移民の増加に比例するように、非合法移民も増えた。2016年のピュー・リサーチ・センターの推計では、アメリカ国内には現在、非合法移民が約1070万人いるとも言われている。総人口を3億2000万人とすると人口の3.3%が非合法移民となる。非合法移民の5割以上は、メキシコに隣接するカリフォルニア州(約5.6%)やテキサス州(約5.7%)など6州に集中している 。
家族単位で長い間、不当に滞在するケースも多い。アメリカは出生地主義であるため、一家の中で親は非合法移民でも、子どもがアメリカで生まれれば、その子どもはアメリカ国籍となる。それだけ、法的にも人道的にも一家を切り離すのが難しい」(前島和弘上智大学総合グローバル学部教授)
ただし前島氏の使った1100万人という数字は少なめに見た数字で、最新の研究ではその倍以上と見られています。
「イェール大学とMITの研究チーム は1990~2016年の人口データを基に人口統計モデルを用いて、米国に在住している不法移民は2,210万人と推定した」(2018年 9月18日 グローバルリスクコミュニケーション)
なんと不法移民が全人口の3.3%、1000万を超え、彼らは国籍もなく統計上は「いない人」です。
トランプはその実態調査に乗り出しましたが反対にあって、正確な数は不明です。
メキシコとの壁と言うので勘違いされていますが、不法移民にメキシコ人 だけではなく、グアテマラ、ホンジェラスなどからメキシコ国境を超えて侵入してきます。
彼らは何度逮捕されて送還されても再び侵入し、最底辺の臨時労働者として働いています。
一部の産業は不法移民なくしては回らない部門もあるほどです。
オバマは、今バイデンが模倣している不法移民政策の原型を作った人物でした。
「不法移民は一時的に法的移民のステータス(temporary protected status: TPS)を取得の後、長期滞在が可能となり、アメリカ国民が納めた税金で、社会保証も受けられ、アメリカ国民で同じ権利を持つことになる。
2つの異なる移民政策であるが、アメリカに渡ろうとする不法移民に示すメーセージは同じである。それは、不法移民は全て「永住権の資格を取得できる」ことである」(グローバルリスクコミュニケーション前掲)
いくら不法入国しようと真正さえすれば合法的移民の資格を得られ、米国民と同等の社会保証を受ける権利をもて、永住権の資格も持てるというのですから、中米からの流入が止まるはずがありません。
今回のバイデンの移民法はこのようなものです。
「バイデン政権の当局者が就任前に配布した資料によると、議会に送付した法案は、米国に居住する推定1100万人の不法移民の多数が8年かけて市民権を取得する道筋が示されている。
1月1日時点で米国に居住し、一定の基準を満たしている移民は5年間の滞在資格を与えられ、その後に米国永住権(グリーンカード)が付与される。追加で3年経過すれば市民権取得を申請できるようになるという内容。
自然災害および内戦などから逃れてきた特定国の移民向けの「一時保護資格(TPS)」やDACAの対象者、一部の農場労働者に対しては合法的な資格を得るまでの期間をより短くする」(ロイター1月22日)
一方依存度が高い産業部門以外の米国人は、このような不法移民の増加を憂慮しています。
「世論調査によれば、米国民の半数以上はトランプの強硬策を好意的に受け止めているようだ。7月12~14日に約2000人を対象に行われた調査では、強制退去に「強く」または「ある程度」賛成する人が51%に達する一方、反対は35%にとどまった。共和党支持者に限れば65%が強制退去に「強く」賛成し、「ある程度」賛成する人も含めると賛成が85%を占めている」(2019年7月22日 ニューズウィーク)
すでに市民権を持つヒスパニック層すら、安い賃金で働く不法移民の流入の圧力を受け続けており、今までのような民主党支持基盤ではなくなりかかかっているといいます。
このような状況を見ると、バイデンのオバマ路線への回帰は、いっそうテキサス州の分離独立(Texit・テキジット)を加速し、南部諸州を巻き込んでいくことになるでしょう。
テキジットの原因はあのテキサスが意地を見せた連邦最高裁への意見訴訟が発端でした。
「この訴訟は、「ジョージア、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの4州で大統領選挙が不正に行われた疑いがあり、投票ではなく州議会が大統領選挙人を選出すべきである」としてテキサス州が起こしたもので、フロリダ、テネシーなど17州と106人の連邦下院議員が原告として名を連ねた。これに対し、連邦最高裁判所は「テキサス州は提起する法的権利を有することを証明できていない」と門前払いの形で提訴を却下したことから、ウエスト氏は「この判決は『州が連邦憲法に違反してもかまわない』という判例を確立したことになる。この事態を重く受けとめ、我々は連邦憲法を遵守する連合国家を形成すべきなのかもしれない」と訴えた」(藤和彦 経済産業研究所上席研究員)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d07e8f8c55610fcc99c15ba04ddf15b6e4ba282
テキサス州知事は、憲法をあくまでも守りぬくと言明していますから、今後このままバイデンが「左翼リベラルのためだけの内政」を強行し続ける限り、南部諸州の動きには目を離せなくなりそうです。
テキサスの共和党員は「共産主義化した連邦政府にいる意味はない」とまで述べています。
ところでフランス革命の著作で有名な佐藤賢一氏に、『アメリカ第二次南北戦争』という小説があります。
この小説は、まだテキジットなどという言葉すらなかった16年も前に書かれたものですが、ぞっとするほど今の状況を予見しています。
佐藤氏はさすがにフランス革命を知り尽くした作家らしい目で、第2次南北戦争勃発までの筋書きを記述しています。
そのプロセスはこうです。
2013年、テキサス州ダラスを訪問中の女性大統領が暗殺され、これにより自動的に大統領となった黒人副大統領は、銃規制強化を強権的に実施する。
これに猛反発した南部諸州が合衆国を離脱し、認めない北部の連邦政府と第2次南北戦争が引き起こされ、南部諸州は独立する。
現時点で、佐藤氏がテキサスなどの南部諸州が独立に踏み切るだろうと見た条件の9割が揃ってしまっています。
盗まれた大統領選。門前払いされた連邦最高裁へのテキサス州の提訴。
国民の半分が選んだトランプへ執拗に繰り返される民主党の弾劾訴追。
バイデン政権の著しい左傾化政策の数々。
左翼の黒人マイノリティ、しかも女性だという理由だけで選ばれた副大統領のハリス。
こんな状況で健康不安を抱えるバイデンが倒れて執務執行不可能となれば、国民が選んだわけではないカマラが大統領となっしまうというわけです。
ま、こんな状況の中で、「ジョーは自由で開かれたインド・太平洋」って言ってくれたと感涙せんばかりの認識派の皆さんには憐憫の情すらわきます。
今はジジの脳みそがそこまで回らないだけのこと。
トランプが言う「左翼のあやつり人形」の主筋であるオバマは有名な口先番長でしたから、いつ気が変わってもいいように備えておきましょう。
大統領の交代による本質的変化は、まず内政において現れ、やがて外交政策にも影響を及ぼし、そして世界が気がつくころには異質の国へとなっていきます。
オバマがその8年間で、米国を所得格差と人種対立のるつぼに変えてしまい、南シナ海を文字通り中国の海にしてしまったように、です。
バイデンは建国の精神を捨てる気のようです。
これは元々バラバラな米国人の紐帯を断ち切ってしまうということを意味します。
そのひとつの現れとしてトランプが作った「1776委員会」を廃止したことが挙げられます。
トランプは後世いろいろな評価をもらうことになるでしょうが、私は建国の精神の復活を掲げた正統派の大統領であったと考えています。
ただし、トランプに与えられた4年間は、急激に左翼全体主義に全身を冒されてしまっているあの国を変えるには短すぎました。
彼は多方面で、衰退して内部崩壊しようとするアメリカを変えようとしましたが、いかんせん短すぎました。
しかも初めの2年間は、共和党主流の執拗な妨害と、オバマが仕掛けたロシア疑惑との戦いに費やされたのですから、気の毒としかいいようがありません。
そうでありながらも彼が渾身の力で作った理念が「1776委員会」であったことは、我が国ではほとんど知られていません。
長くなりましたので、これについてはあすに回します。
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英文では、「自由で開かれたインド太平洋における平和と繁栄」になっているようですが、まずは菅総理、今出来ることをやったと評価出来るでしょう。言葉による定義も大事です。
ただ、バイデンやケリー、ライスのようなオバマ時代の遺物は「同盟国が大事」といいながら、過去はそろって食言家揃い。
分かりやすい同盟是々非々派のトランプとはちがい、腹は別にあると見た方がいいでしょう。
ケリー特使は「バイデン政権が気候変動問題と最優先するからと言って、(ウイグルの人権問題などで)中国との政治的妥協をする事はない」としていますが、それならなぜ、中共政府に対する「ジェノサイド認定」に消極的なグリーンフィールドをわざわざ国連大使にしようとするのか。ケリーは「中国の排出量が問題」としながら、どうやって中共に排出ガス削減を迫るのか?その点にはまったく触れようとしません。
また、テキサス州の動きはまだ「(日本で言えば)住民投票条例を作るか否か」の議論の段階ですが、単なる「けん制」とは言えないようです。
あのスーザン・ライスが国内問題担当補佐官として今回の大統領令を主導している事への危惧、やがて本気で最高裁判事の定員を20名に増やしてしまうだろうといった見方も強く、オーストラリア一国と同等のGDPを有する自信も背景にあります。
バイデンはオバマと同じく、ホワイトハウスに入ってした事の第一はチャーチルの胸像を撤去した事です。「認識派」の旧態然とした「バイデン中道派説」は、早く改められた方がいいでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年1月29日 (金) 09時05分
うーん、チャーチルの胸像なんか別に放置しとけばいいだけで、わざわざ撤去ですか。イデオロギーで誰かの入れ知恵でやってるんでしょうね。
んじゃあ各地の「少女像」とやらも撤去してくださいなと。。
やっぱりスーザン·ライスか。
もう散々ネタにしてるけど、コンドリーサ·ライスとなんかのドサクサで入れ替えちまえと(笑)
投稿: 山形 | 2021年1月29日 (金) 09時46分
山形さん、コンディ&パウエル懐かしいですね。コンディはまだ若いですしもう一度表で活躍してほしいです。ニッキーヘイリーとか、保守系でも非白人男子カテゴリの有望株は沢山いるんで動乱をチャンスに頑張って欲しいなと思います。
今朝の記事内容についてトランプの功績とバイデンの早速の失策の数々について同意見です。
とはいえ、「ジョーは自由で開かれたインド・太平洋」って言ってくれたと感涙せんばかりの認識派
は、「ジョーは自由で開かれたインド・太平洋」って日本は何とか言わせたね、こうやってジリジリ前進する事は意味がある。さらに他の同盟国も取り込んで中国に寄れないように日本は取り組むべき。と渋く見ているのが認識派
だと思いますよ。実際スタンダードジャーナルの2番組はそう繰り返しています。
バイデン個人についても「中道派」ではなく「あの民主党内においては中道寄り」。
彼自身にトランプのような実権は擁立された時から無いようなもので、今キャンベル等とカマラハリス等でパワーファイトが行われ個別に勝ちを得た方にサインしている存在だという意見に私は今のところ納得がいきます。
投稿: ふゆみ | 2021年1月29日 (金) 12時12分
国と国との約束さえ反故にされそうで疑わしい
ああ嫌だ嫌だ、まるで韓国相手にしてるみたい
内政に関してはもうどうしょうもないですが
民主党ってやつはどうして「分断をなくそう、お前は出ていけ」を平気でやれるのか、ここだけは理解不能です
投稿: しゃちく | 2021年1月29日 (金) 12時59分
そもそも不法移民事態が、犯罪です。トランプ元大統領の言っていたことは、家主の許可を取って、玄関から入れという常識的な事にすぎません。
家主に無断で窓から入った住居不法侵入者を、家族の一員にするなど、正気の沙汰ではありません。
スペインは、不法移民を合法化した途端、合法化された元不法移民が本国から親族を呼び寄せ、「スペインへ行けば何とかなる」とばかりに、さらなる不法移民を呼び寄せるという悲惨な結果となりました。現在、スペインは、激増した移民のために社会保障費が増大し、移民の数を一人でも減らすために、現金支給までして、帰国を促していますが、全くうまくいっておりません。一度入ったら、テコでもうごきませんよ。
投稿: アミ | 2021年1月29日 (金) 13時09分
飯も食えない本国より、とりあえずアメリカ、ヨーロッパに行けば飯が食える。中国でさえまともに飯が食えるのは共産党に寄生するエリート層だけであり、日本の生産現場も中国などの移民なしではやっていけない状況です。結果的に中国人マフィアなどを生み出しました。
日本は厳しい審査がありますが、不況などで外国人犯罪が一気に増えました。安い労働力に頼る安易な政策は回りまわって日本自身を痛めます。過ってのの日本人も日本で飯が食えずアメリカに、南米に移民しました。待っていたのは過酷な労働。日本人移民の偉かったのは過度な自己主張がなかった。島国で独自の文化を形成してきた日本人の長所です。半面日本以外の国は権利意識が強いですね。
投稿: karakuchi | 2021年1月30日 (土) 01時14分