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2021年2月

2021年2月28日 (日)

日曜写真館 こんな日は風がないから風になろう

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こんな日は風がないから風になろう  片山春奈 17歳

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 白鳥がすっと進んで透きとおる  小林 梓 10歳

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はくちょうとおそろいの白あさの雲   橋本 美優 小学校

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 座りこみ白鳥ながめ日がしずむ  岡田 昊士 小学校

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白鳥の叫べば白き焔立つ 灰色の猫

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2021年2月27日 (土)

山路敬介氏寄稿 海保法改正、シン尖閣密約の事など その2

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承前

また、王毅外相が来日時に「一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(尖閣諸島魚釣島)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない」、「敏感な水域における事態を複雑化させる行動を(日本側は)避けるべきだ」と言い顰蹙を買いました。
ここで言う漁業目的でない「真相が分かっていない日本の漁船」とはチャンネル桜の船の事だけでなく、こうしたリサーチを兼ねた漁船をも指した批判である可能性があると思いました。

そのうえで、朱建栄氏などの「尖閣問題がこじれたのは、日本側の最近の対応のせい」とする主張と重ね合わせて「密約」の観点に沿って言うなら、「漁船以外の船は尖閣周辺の海域に近づけない」とする紛争回避目的の合意があって、それがさらに厳格な「密約化」しているのではないかという疑義を感じざるを得ません。
いずれにしろ、ヤクザの掛け合いさながらの中共流詭弁論法によって押し込まれているのが真実なのでしょうが、茂木外相のまずい対応や、かつての田中=周恩来密約疑惑の事もあり、日本人は王毅発言をただの「傲岸不遜な言い分」と考えられなくなっているのだと思います。

それと、2/22のjapan in depth文谷数重氏の「中国は国際法を無視しない」と題した論文は実に滑稽なものでした。
内容は「海警法の改正は空文であって、中国国内の右派に対する配慮たる措置」にすぎず、結局のところ中共は「国際法に準拠した行動を逸脱する事はない」と結論した文章です。
論旨は馬鹿々々しい限りですが、文谷氏は海警法改正を「強制力を行使し武力使用も可能」 と読んでおり、文脈から海警法改正自体が国際法違反になると正しく見ているようです。
しかし日本政府は「「この法律が国際法に反する形で運用されることがあってはならない。」としつつ、「立法だけでは国際法違反にはならない」とする見解です。
この日本政府の脆弱な立場は、いったい何でしょう。

徴用工判決を受けて新日鉄の資産が差し押さえを受けたとき、当初の見解は「現金化すれば国際法違反」としていた事を思い出させます。
現在は正しく「国際法違反状態である」との立場に変わりましたが、慰安婦問題の時ように必ず後手を踏んで問題を大きくさせてから対処する日本外交の悪癖は、真珠湾攻撃のさいの通告遅れの呪いにでも罹っているようです。

(了)

                                                                                   文責 山路 敬介

2021年2月26日 (金)

山路敬介氏寄稿 海保法改正、シン尖閣密約の事など その1

        130                                           

                                           海保法改正、シン尖閣密約の事など
                                                                                   山路敬介

 

ここのところ何日かコメント欄の入力で常にはねられてしまい、数日間の記事に関連した事項をお願いして書かせて頂く次第です。どうも中国関連の話題についてはAIが特に過敏になるようで、いろいろ試しても何のワードが引っ掛かったものか、皆目見当がつきません。おそるべし中華帝国!とでも言っておきましょう。(笑) 

日本の尊厳と国益を守る会(通称「守る会」は、この二月初旬に中国の海警法施行にともなう提言書を菅首相に提出したそうです。

しかし、その中には海保法改正の必要性は全くふれられていません。

代表の青山繫晴氏によれば、「守る会」の主旨として「実現可能性のあるものだけを提言している」そうで、海保法改正についても「討議はあった」としていますから、実現可能性がないと判断されたのかも知れません。

また、青山氏が現場を含めた海上保安庁各部署へした聞き取りによると、①海警局が侵入して来る箇所が限定的である事、②海保の船に向かってくる気配はなく、民間漁船を負い廻すのみだと言う事、③現状の海保の火力で充分対抗できる事、④たとえば海警が導入した12000トン級の船では漁船を追い廻す事はできず、実際には現場で見せるだけの目的に過ぎないと考えられる事、等々から「余計な法改正をするとワケが分からなくなってしまうので、今のままで良い」(ママ)との意見だったそうです。(YouTubeチャンネル 【ぼくらの国会・第108回】ニュースの尻尾「中国海警法の本当の狙い」より) 

こうした守る会の「海保法改正不要」との判断は、中国の海警法改正の真のねらいを読み解く事から至ったものです。
しかし、あいかわらず漁業者は尖閣に近づく事さえできず、本来の漁果は長年あがっていません。むしろ海保により作り上げられたこの「安全のための禁止」の状況は、「海保によって漁業を阻まれている」と言っても同義だと思えます。

また、上記の海保の見解は庁行政本来の法的立場かぎりのものであって、それを逸脱した意見など余程の改革派公務員でない限り言えるはずがありません。公務員は自らの意思でグレーゾーンを打破する行動に出る事はありません。

「守る会」は安倍前総理以来、自民党内で国防案件について重要な役割を果たして来たと見ていますが、今回は目的を失した省庁縦割り行政の壁にぶつかってしまっていて、海保庁の役割増大からの省昇格や9条改正と紐づける事もできず、その事に気づきもしないようです。
青山さんらが「実現可能性のある提言」とする自然海洋調査、船溜まりや観測機器の設置、現地慰霊祭の実施、等々が実現できるならまだしも良いでしょう。しかし、法の在りようの変化こそが公務員の意識・行動を変えるという重要な視点を欠いています。

そうしたなか、中谷元氏とリベラル派の山尾志桜里氏がつくる超党派の「中国政策に関する国会議員連盟」(JPAC)は存在感を増しています。ウイグル問題を「ジェノサイド」認定すべく活動は超党派であるだけに自民党親中派の縛りを受けづらく、外務省批判にも手をこまねいていません。
ハフポストあたりにも取り上げられるなど、今後、日本の政治家には数少ない本物のリベラル方面にも強くうったえる活動が広がることを期待します。

話がそれました。
ところで、あまり知られていませんが、海保は漁業組合を通じて漁業者に不明船舶や違法漁船のリサーチをさせています。
私にはこうした政策に特別な意味があるとは思えず、税金からの体の良い「魚業補償」のようなものだと思っています。そうであれば、海保は農水省管轄を侵した措置をとっている事になります。
不審船の有り無しに関わらず報告内容の形式だけ整っていればいいので、二人乗船で日当3万円の手当ては漁業者にとってうま味があるものです。

しかし、先の日台漁業水域妥結のさいに台湾側に譲歩した件にともなう補償金などもあり、これではハッキリ言って漁業者本来の就労意欲を削ぎ続ける「補助金行政」そのものです。
国民の権利を金員に換算する場合のある事も仕方ありませんが、地域の産業を台無しにしないで貰いたいです。

                                                                                                                                             (次回完結)

 

2021年2月25日 (木)

韓国による「竹島密約」の一方的廃棄

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毎度のことですが、韓国が島根県の「竹島の日」式典に抗議したそうです。

「ソウル聯合ニュース】韓国外交部の金丁漢(キム・ジョンハン)アジア太平洋局長は22日、島根県が「竹島の日」の式典を開催したことを受け、在韓日本大使館の相馬弘尚総括公使を同部庁舎に呼び出して抗議した。
 相馬氏は、式典の開催を続ける理由などを問う報道陣の質問に答えずに庁舎に入った。
 韓国の独島を巡って、島根県は2月22日を条例で竹島の日と定め、2006年から毎年式典を開催している。日本政府は今年の式典にも内閣府政務官を派遣した。
加藤勝信官房長官はこの日の会見で、「竹島は日本固有の領土だ」と改めて主張した」(韓国聯合2月22日)

「竹島」は国民の脳裏から忘れ去られようとしています。
「竹島の日」は、1905年1月28日に、当時の日本政府が竹島を島根県への編入に関する閣議決定を行い、同年2月22日に島根県が所属所管を告示したことに由来して制定されたものです。
本来は島根県が条例でやるものではありません。1905年の政府決定に根拠があるのですから、とうぜん政府式典で実施すべきです。

ところが、今年も政府は首相以下の閣僚は参列せず、派遣されたのは内閣府政務官の和田義明氏でした。
なにも竹島を奪還するぞなんて勇ましいことを言えというのではなく、こういう領土問題に対しては原則的な態度を貫くべきです。
メディアに至っては、朝日、毎日はとうぜんスルー、読売も知らんぷり、唯一報じたのは産経だけだったようです。

韓国のようにエキセントリックなナショナリズムを鼓吹しろ、と言っているのではなく、最低限のポテンシャルくらい維持しないとダメです。
韓国はわが国にとって一種の不良資産のようなもので、今までどれだけのコストをかけてきたのかということをいったん度外視してかんがえねばなりません。
はっきりいって、サンクコスト(回収不能なコスト)の項目に入れてしまったほうがいいような地域です。
といっても、慰安婦がどーた、徴用工がどーしたのとエキセントリックに騒ぎ立てるでしょうが、それは残務処理のようなものだと割り切りましょう。

だからこそ、残務処理はキチンとしないと禍根を残してしまいます。
原則は譲らず、譲れないことを国として表明していくだけのことです。
まぁ、そのしっかりノーという事が日本人のメンタリティですとけっこう大変なんですが、それが出来ねばいっぱしの国家とはいえません。 

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歴史的な「日中共同声明」調印の知られざる舞台裏 |

昨日見た尖閣密約は大きな禍根を残しました。
手柄に走った田中角栄という野心家によって、自由主義社会の橋頭堡であった台湾を切り捨て、中華帝国に門戸を開いてしまったからです。
いまなお角栄の日中国交回復は戦後外交の金字塔なんて言われているようですが、とんでもありません。
あれほど国益を棄損し、後の世代にツケを回した外交はありませんでした。
そもそも領土を確定しない平和条約などありえませんからね。
それを「後にすんべぇ」ですからね、角栄さんときたひにゃ。あんた一国の首相だろう、村会議員か。

後述する竹島密約もそうですが、オールド自民党の先生方、こういう阿吽の合意は同じ民族の間だけにしてください。
こういう言外に含みを持たせてとりまとめてしまうのは日本民族同士ならなんとかなりますが、約束自体に対する価値観がまったく異なる中韓相手にそれをすると大火傷を負います。

そもそも日中国交正常化自体が誤りでしたが、どうせやるにしてもやりようがあったはずです。
当時の圧倒的に日本が強かった力関係なら、充分に尖閣を日本固有の領土と認めさせることができたのに、絶好の機会を自分から逃して阿吽の呼吸に任せるから、後に約束は破られるわ、破ったほうが正義を振りかざしてくるわ、とエライことになります。

さて、情けないことに、尖閣と同じことをその7年前に日本は竹島でもやってしまっています。
というか、角栄の頭にはこの竹島密約が踏襲すべき前例としてどこかにあったのでしょうね。
当時の事情を知る人は少なくなりましたが、故三宅久之氏が書き残しておられるので参考にさせていただきました。
竹島密約考 

竹島は1905年の日本政府の領土編入によって日本領となりましたが、1951年9月、敗戦を経てサンフランシスコ平和条約で独立した際、返還すべき領土と、しなくてよい日本周辺の固有の領土に分けられました。
この返還される領土の中に竹島が入っていなかったために、狂信的反日運動家であった李承晩大統領が、勝手に李承晩ラインと称する国境線を引いてしまい、その中に竹島を強引に入れてしまったのです。

以後、竹島を巡って今に至る領有権争いが開始されてしまいましたが、この李承晩の蛮行がきっかけで始まったことをお忘れなく。
日本が軍事占領から立ち直ったばかりを狙って竹島を韓国領土としてしまったんですから、まったく性格の悪いことです。
ご注意いただきたいのは、この李承晩ラインこそ、今なお韓国が主張する国境線だということです。
国境線の一方的変更は、国際法違反なのはいうまでもありません。

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半島有事 起こりうる危機(下)】対馬海峡波高し…「李承晩ライン

それから10年後、日本は短期間で国力を回復させますが、一方の韓国は同族の金日成に攻め込まれて亡国の淵に追い込まれるなどして疲弊の極みにありました。
ちなみにこの時、国民を置き去りにして真っ先に逃げだしたのが、いままで日本にだけ威勢がよかったこの李承晩でした。
これを復興させたのが、1961年5月の軍事クーデターによって政権を掌握した朴正熙でした。
朴が最優先に置いたのは韓国の近代化でした。
朴は経済近代化資金を日本から取り出そうとします。
そのために始まったのが、後に日韓基本条約として結実する長期の日韓交渉だったのです。

日本側交渉のの窓口は大野伴睦自民党副総裁、韓国側は朴の側近である金鐘秘中央情報部長が当たり、1962年にはいったん交渉がまとまりかけ「大平-金合意メモ」が作成されましたが、窓口の金と大野の死去で御破算になっています。
この大野の後任に池田首相が指名したのが河野一郎、今の河野太郎の祖父です。
ちなみに一郎も外相、洋平も外相、太郎も外相経験者ですから、外相一族。首相をだすのが悲願だとか。ま、どうでもいいですが。

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半島有事 起こりうる危機(下)】対馬海峡波高し…「李承晩ライン

足かけ14年間もすったもんだで、ご承知のように経済協力総額5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)で妥結しましたが、ここでも最後に喉に刺さったトゲが竹島でした。
これを「解決しないことを解決とする」というわけのわからないことを言って、ゴニョゴニョととりまとめてしまったのが竹島密約でした。

「竹島(独島)の領有権問題は両国の主張が平行線で対立、最後まで残った。そこで宇野、金鐘珞両氏は最終的に竹島問題を棚上げすることで合意、「両国は相互に領有権の主張を認め合い、互いに反論する場合には異議を唱えない」との密約を交わし、この密約内容を日本側は河野国務相を経て佐藤栄作首相(池田首相が病気のため64年の東京オリンピック後退陣、同年11月佐藤内閣が発足)に、韓国側は丁一権国務総理を経て朴大統領に報告され、それぞれ了承を得たという」(三宅前掲)

これが尖閣密約の原型である「竹島棚上げ」密約です。
ここで両国は、竹島の領有権問題を「事実上棚上げし、互いに領有権の主張を認め合う」という密約を結び、双方の政府に引き継がれました。
表だって公表はせずに、互いの領土主張は非難しないというよく言えば紳士協定、有体に言えばなぁなぁ取り決めです。
こういういい加減なことをすると、当事者が現役でいるうちはなんとかその線に納まっていますが、いったん退くともういけません。

それでも日本側は生真面目に密約を守っていましたか、韓国側は1993年の金泳三政権で豹変しました。
金はただ引き継がなかったばかりか、竹島に接岸施設を設け、軍隊を常駐させ、対空兵器などを装備する要塞化を開始してしまったのですから、おいおいです。
そればかりか、竹島を韓国反日ナショナリズムの燃料にして利用しまくったのですから悪質です。

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今さらいうまでもありませんが、この韓国の対応は合意の一方的廃棄であり、軍事的実効支配に至っては一方的国境線の変更ですからとうぜん国際法違反です。
ただし、なんどか私は書いてきていますが、いったんこの実効支配の形に持ち込まれると、そう簡単に覆りません。

この竹島密約は 角栄の尖閣密約と異なり文書化されて双方が保管していたようですが、韓国側の密約文書は金鐘珞が自宅に保管していた80年頃に廃棄してしまい、日本側はこの密約文書の存在を否定しています。
また公式に日本政府は、2007年3月の鈴木宗男氏の質問趣意書に対して、正式に「合意があったとは理解していない」と回答しているようです。

 

2021年2月24日 (水)

尖閣密約はあったか?

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それにしてもわが国の尖閣での対応はピリっとしませんね。
気がついたら、中国はどんどんとエスカレートを繰り返し、「公船」なんて中国語であいまいにしてきましたが、いまや海警はれっきとした準軍隊に成長し、尖閣水域は「施政権」だから武器の使用もありえるなんて言って日本漁船を追い回しているんですから、よー言ってくれますわ。

ところでデニーさん、政府に県の漁船保護を要請するなら、手紙でやんなさんな。やるきなさ見え見え。
そして東京に行ったら、中国大使に面会して抗議のひとつくらいしたらどうです。
うちの県民をこれ以上いじめるな、怒るぞ、くらいタンカ切って来なさい。少しは見直すから。

一方、竹島ときたら、日本はまともな返還要求ひとつするわけでもなく、完全にアチラの国に差しあげたも同然となっています。
先だっての「竹島の日」などは本来は国がやるべきものを、島根県任せにしたうえに、いまや式典に政府は顔すら出しません。
このような無意味な妥協は、相手方の増長を生むのは当然で、竹島を自衛隊が奪還に来ると言って、対日戦争目的の空母や戦略原潜の保有を計画する始末です。
なんでもコリアが言うには、自衛隊が実力で奪還にくるから防備を固めねばならないそうで、そんな事、誰がするかって(笑)。

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日本の海保に測量中止を警告する韓国海上警察
海上で睨み合う海上保安庁VS韓国海洋警察庁 憂慮されるのは一触即発

このように軍事的エスカレーションの階段を登り始めた韓国は、今度はいままでまったく係争水域にすらなっていなかった五島列島におけるEEZで、海保の測量船にイチャモンづけをし始めました。

「海上保安庁は11日、長崎県五島市の女島沖139キロの排他的経済水域(EEZ)内で海洋調査をしていた測量船「昭洋」(3千トン)が、韓国海洋警察庁の船から調査を中止するよう要求されたと発表した。日韓の地理的中間線より日本側で、昭洋は「EEZ内での正当な調査」と回答し、調査を続けた」(朝日1月11日)

この水域は今までいちどとしてもめていなかった場所で、突然相手国のコーストガードにこういう警告をすることを、世界では領土的野心があると言います。
初めは竹島、そして五島列島水域、そしてやがては対馬でしょうかね、やれやれです。
私はかの国を友好国だなんてこれっぽっちも思っていませんから、怒る気にもなれないのですが、これがわが国の国境を囲む実情です。

では、なぜここまでこの両国は増長するのでしょうか。
理由はいろいろあるでしょうが、そのひとつに「密約」の存在があります。今日はこの角度から考えてみましょう。
密約というのは、政府間が条約の裏で決めた秘密の取り決めのことです。
密約は、国民に知らせないで行われた合意、ないしては了解事項のことです。
これ自体は古今東西よくあることで、かつての帝国主義や冷戦期にはしばしば秘密協定がなされて、そのほうが表の条約よりも重要だった時代がありました。これを「狭義の密約」と呼びます。

一方、このように文言で文書化はしないものの、あえてあいまいにしたままにして交渉を終結させることを「広義の密約」と呼ぶ場合があります。
契約概念が希薄なアジアでは、このようないいかげんな決着法が「賢人の知恵」だなんて呼ばれた時代もあったのです。
わが国も例外ではありません。
それが尖閣と竹島の「密約」問題です。

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田中角栄×周恩来「尖閣密約」はあったのか | 外交・国際政治 | 東洋経済

まず尖閣ですが、1972年9月、日中平和条約を締結した田中角栄政権時にそれはなされました。
この時、中国側は文革時の混乱から立ち直るために、なにはともあれ喉から手が出るほど日本の経済支援が欲しかった時期でした。
文革と四人組による内乱によって、極度の国際的孤立と国力の疲弊をきたしていたからです。

そこで訪中した田中に周は、「小異を捨てて大同につく」という甘いささやきをします。
周は戦時賠償を放棄し、日米安保について触れないという妥協を示し、太っ腹ぶりを示して国交を結ぶことを優先しようと誘ったのです。
しかし喉に刺さった最後の刺が尖閣領有権問題だったわけです。

これについて元中国大使だった丹羽宙一郎がこんなことを書いています。
『田中角栄×周恩来「尖閣密約」はあったのか日中問題は45年前の智慧に学べ』
https://toyokeizai.net/articles/-/190196

「しかし、最後の最後になって田中首相より尖閣諸島の領有権問題が出た。尖閣諸島は日中どちらの領土なのか。領有権を主張し合えば、国交正常化交渉は暗礁に乗り上げ、まとまらないだろう。
このとき周首相が、「これ(尖閣問題)を言い出したら、双方とも言うことがいっぱいあって、首脳会談はとてもじゃないが終わりませんよ。だから今回はこれは触れないでおきましょう」と言うと、田中首相も「それはそうだ。じゃ、これは別の機会に」と応じ、交渉はすべて終わり日中共同声明が実現したといわれている〔横浜市立大学名誉教授の矢吹晋(すすむ)氏による〕

仰天するほどの村政治です。
こんな阿吽の呼吸で、領土問題という国家間の重大事が決まってしまうことに驚きを感じます。
日本側には国交回復を焦る必要はなかったはずです。まとまらなかったらマラソン協議をすればいいだけのことです。
それを自分の手柄にしたいばっかりに田中は焦ったのです。

領土問題という重大事を棚上げにしていい道理はありません。
むしろ同じ年の2月に日本の頭越しに 共産国と国交を結び台湾切り捨てた米国に対して、東アジア情勢を不安定にしてどうするのだと抗議してもいいくらいだったはずです。
しかも、周と田中の2人が密室で裏取引してしまい、それがわかったのは田中が後に身内の野中広務に漏らしたからでした。

「元官房長官の野中広務氏は2013年の訪中の際に、「双方で棚上げして、そのまま波静かにやっていく」ことで合意が結ばれたと、田中角栄元総理から直接聞いた話として語った。野中氏は当事を知る「生き証人」の責任として真実を語ったのだと述べている」(丹羽前掲)

これがいわゆる「尖閣棚上げ論」です。
日本政府はいまだ公式には否定していますが、あったのかもしれません。
しかし問題はむしろ、どうしてこの「棚上げ論」がゴミ箱に投げ捨てられたのかです。
その理由は拙劣な旧民主党政権の国有化が原因だったと丹羽は述べています。

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「ひるがえって尖閣問題が日中間のデリケートな問題であることを知りながら、安易に国内問題として国有化に舵を切った民主党政権の応用動作は田中角栄に較べ見劣りがする。胡錦濤主席(当時)と直接言葉を交わし、国有化反対の意思を聞いたにもかかわらず、国有化の手続きを継続した野田佳彦首相(当時)の一連の動きを見ると、あまりに反射神経が鈍かったと思わざるをえない。
中国大使として、尖閣の国有化は日中間に大きな影を落とすと、強く進言していた私としては残念でならないことだった 」(丹羽前掲)

丹羽に言わせると、(彼は「(外交的)反射神経の鈍い」民主党政権が抜擢した中国大使だったはずですが)、尖閣を係争地にし日中関係を悪くした最大の原因はこの尖閣国有化だったということのようです。
なるほど、この野田の2012年9月の尖閣国有化を待っていたかのように、中国海警は大規模な領海侵犯を開始して、いまに至ります。

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中国政府の船舶等による尖閣諸島近海での挑発行動 - 尖閣諸島|内閣

日本でも指折りの親中派である丹羽は、「先人の知恵に学べ」と述べて、こんなことを言っています。

「われわれは、尖閣諸島の領有権にあえて白黒をつけず、棚上げとしたまま国交を回復させた日本と中国の先輩たちの智慧(ちえ)に学ぶべきだ。それが、45年前に日中の国交が正常化した今日9月29日に、私が言いたいことである」(丹羽前掲)

なにを寝言を言っているのか。寝言は寝て言え。
周と田中が阿吽の呼吸で「じゃ、これは別の機会に」と収めた裏合意は公式文書には存在せず、しかもその性格からして賞味期限つきだったのは自明です。

当時の中国は、開放改革を掲げた鄧小平時代の韜光養晦((とうこうようかい)路線をとっていました。
聞き慣れない熟語ですが、光を韜 (つつ) み養 (やしな) い晦 (かく) すこと、才能や野心を隠して、周囲を油断させて、力を蓄えていくという中国流処世術ですが、転じて経済大国となるまで外交方針は抑制的にしていろ、という教えです。

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鄧小平の演技は実に巧妙で 上の写真でも彼は「井戸を掘った」角栄宅を訪れて、いかに中国人が恩義に報いることに厚いかをアピールしました。
当時の角栄は失脚していましたが、それを重々承知でこういう憎いことができたのが人たらしの鄧小平という人物です
子供に手をやる優しいしぐさは、いかにも古い大国の好々爺然としていて、日本人の中国ファンを激増させました。
当時の日本メディアなどこぞって、鄧という老賢人が発展途上の老大国を再興しようと奮闘努力しているのだから、日本人は日中戦争のお詫びに大いに協力せよ、という論調で報じました。
トヨタ、松下などの日本を代表する企業が、社運をかけて争うようにして中国に向かったのはこの時期からです。

しかし、この経済大国になるまで低姿勢でニコニコ外交をするという路線は、リーマンショック以後、中国が経済の世界の覇者となるに及んで、弊履のように捨てられました。
もう猫をかぶっている必要がなくなったと中国は見て取ったのです。
代わって登場したのが、習近平の「中華の夢」路線です。

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習近平皇帝。もちろんクソコラ

習は「中国の夢を実現しよう」「中華民族の偉大なる復興」という言葉を好んで使い、秦の始皇帝時代から清朝初期まで、ほとんどの期間世界の覇権国家だったことを強調しています。
過去の中華帝国の栄光を取り戻し、それを凌駕する世界に冠たる覇権国に返り咲くことが、習が掲げた国家目標でした。
中国の国家主席が世界帝国になることを堂々と宣言する時代になって、いまさら文革明けの韜光養晦の時代に戻れ、先人の知恵に学べと言われても、そんな時代に戻れもしないし、戻る気もない、ということをいちばんよくわかっているのが、当の中国のはずです。

客観的に見て、日中尖閣密約が仮に存在したとしても、今日棚上げ論が存在する余地はまったくありません。
中国は棚上げにするどころか、施政権すら求めて実効支配を進めています。
そんな相手に対して丹羽のように「先人の知恵に学べ」などときれいごとを言って、かんじんの聞く耳を中国が持っているでしょうか。

従ってわが国も、「そのような密約はなかった」の一言で一蹴するべきです。
双方の正式に外交文書に存在しない以上、ないものはないのです。
田中が言ったとされる「別の機会に」論は、外交用語で言うテイク・ノート(メモで書き残したような非公式記録)でしかありません。
丹羽が日本側がこの密約合意を一方的に廃棄したから、尖閣が紛争化したのだという言い方は、アチラの国の言い分にすぎません。
中国は手ぐすね引いて、東シナ海領有化のタイミングを狙っていたちょうどその時に、ノータリンの民主党政権が絶好の餌を投げてくれた、ただそれだけのことです。

長くなりましたので、竹島密約については次回に回します。、

 

2021年2月23日 (火)

ファイザーワクチン通常冷凍温度帯でも供給可能か

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新型コロナのワクチン接種ですが、ひとついいニュースがありました。
零下70度で供給せよ、なんて厳しすぎる条件が課せられていたファイザーワクチンは、マイナス15度~マイナス25度の温度帯での接種が可能なようです。
これは朗報です。
なぜならファイザーのワクチンは、現在世界で供給されているワクチンの主力ですし、日本も6千万人分の量を確保しているからです。


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「ファイザーワクチン、-25℃~-15℃で保管可能
アメリカのファイザー社は、日本でも使われているワクチンについて「マイナス25度からマイナス15度でも保管が可能」とする新たなデータを、規制当局に提出しました。
 ファイザー社は19日、ドイツのビオンテック社と共同開発したワクチンについて「マイナス25度からマイナス15度でも保管が可能」とする新たなデータをFDA=食品医薬品局に提出し、承認を求めました。これまではマイナス80度からマイナス60度という超低温での保管が必要とされ、輸送や管理が課題となっていました。
 承認されれば一般的な医薬品を保管する冷凍庫での対応が可能で、より迅速な普及につながる可能性があります」
(TBS2月25日)
またファイザーワクチンは、先行して供給されたためにもっとも有効性確認が進んでおり、95%という高い数値を出しています。
較べちゃ悪いですが、どこぞの国のバッチモンワクチンは国によって有効性確認に大きくばらつきが出るようなしろものですから、まじないていどの効果しか期待できません。

ただしこのファイザーワクチンの最大のネックは、供給温度がマイナス70度という超低温だったことです。
「ただこのワクチンは複雑な超低温保管設備が欠かせない。この点は米国で最も高度な医療体制を持つ病院にとってすら供給を受ける際のネックで、資金など資源が乏しい地方や貧困国ではワクチン入手の時期や範囲に影響が生じるかもしれない。
ファイザーらのワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づいており、セ氏マイナス70度以下で保管する必要がある」(ロイター2020年11月10日)
米国は、世界でもっとも先行してワクチン接種を開始した国ですが(トランプの遺産で、バイデンの手柄じゃないからね)、超低温設備には限界があるために冷凍設備の奪い合いになリました。

「ジョンズ・ホプキンス大学ヘルス・セキュリティー・センターのアメシュ・アダルジャ氏は「このワクチンの供給面における最大の課題の1つが低温の維持だ」と述べた。「大都市の病院でさえ超低温でワクチンを保管する設備を備えておらず、あらゆる面で厄介だ」という。(略)
カリフォルニア州も、超低温設備の供給が制限されていると指摘。州の医療当局の半分程度が超低温設備の販売業者やリース業者を探している。
カリフォルニア州はワクチンが届きにくい地域向けに、移動式のワクチンクリニックを配備するなど、超低温設備による供給網を構築することを提案している。超低温設備を持たない機関にはワクチンを提供しないという」(ロイター前掲)

ここで問題になるのが、自治体や医療機関にワクチンを届ける配送網の構築です。
米国で輸送上の問題となったのは、超低温設備とドライアイスでした。

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日経

「ワクチンを運ぶ物流・航空各社も「コールドチェーン」(低温物流)の拡充を進める。UPSは、不足が懸念されていたドライアイスを1時間あたり1200ポンド(540キロ)分生産できる体制を整えた。保管や配送に活用し、病院や診療所などにも提供できるようにする。マイナス20~80度に対応する冷凍庫も確保した。フェデックスは5000以上の配送施設や8万の車両、670機の飛行機などを用意し、配送支援する」
(日経20年12月4日)

もはや国を上げての冷凍輸送大作戦ですが、もう待っておられんとばかりに巨大企業のフォードなどは自力で冷凍設備を作っているようです。
このようにコロナ禍前までは超低温流通は限られた需要しかなかったにもかかわらず、一気にファイザーワクチンで激増したわけですから、供給が決定的に不足します。

「ロイター通信によると、航空貨物団体などの調査でファイザー製ワクチンの超低温輸送に対応できるのは全体の15%にとどまり、輸送手段の不足懸念もある」(日経前掲)

これがファイザーワクチンが、発展途上国で普及せずに、イワシの頭ほどの効果しかない中国ワクチンに飛びついた大きな理由でした。
ブラジルなどの国では奪い合いや盗難が始まっています。

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ロイター

「ブラジルで新型コロナウイルスのワクチンの盗難被害が相次いでいる。ワクチンを打つふりをして実際に接種しない例も発覚しており、ワクチン不足が解消されない中、闇市場で流通しているとの懸念もある。
ブラジルは累計感染者数が1000万人を突破し、感染者数の拡大が現在も続いている。一方でワクチンの確保が間に合っておらず、現在接種できているのは先住民系の市民や高齢者など一部に限られる。こうした中、盗難されたワクチンが医療関係者の身内で使われたり、闇市場に流れたりしている可能性が指摘されている。世界的にワクチンの供給が限られる中、盗難は各国で問題になっている」(ロイター2月18日)

こうした混乱の解消への第一歩がファイザーワクチンの供給温度帯問題の改善でしたが、-15度から-25度での供給可能になれば、一般企業の通常の冷凍庫でも保管可能となり、デリバリー問題が一気に解消されることでしょう。
この改訂はFDAが認可すれば、日本も追随するはずですから、コロナ関連でひさしぶりにいいニュースです。

一方、アストラゼネカのほうはしこっています。
というのは、臨床試験の杜撰さがわかってきたからです。
アストラゼネカは英国とブラジルでの臨床試験(フェーズ3)の暫定的分析結果として、最高で90%、最低でも62%、平均で70%の予防効果が見られたという報告をしていました。
ところがここで奇怪な現象がわかってしまいます。

「治験で90パーセントの予防効果が報告された被験者グループは、全部で2回に分けて接種されるワクチンの1回目で、本来、投与されるべき量の半分しか接種されていなかったからだ。一方、2回とも本来の量のワクチンを接種された被験者グループの場合、それによる予防効果は62パーセントだった」
(小林雅一20年12月3日)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77954

わきゃないでしょう。1回しか接種していないグループが90%で、本来の用法どおり2回接種したグループが62%なんてありえません。
ならば1回接種でいいのかというより、なんでそもそもアストラゼネカの指定する2回接種で統一しなかったんだ、という問題になってしまいます。
https://www.nytimes.com/2020/11/25/business/coronavirus-vaccine-astrazeneca-oxford.html

この疑惑にアストラゼネカがまともに答えられないと、FDAは承認を与えない可能性がでてきました。
アストラゼネカのものは安価で、保管温度帯も2度から8度ですから、多くの国が飛びつきました。
わが国も6千万人分契約していますし、韓国などは確保したワクチン全量がアストラゼネカだけですからムン閣下真っ青なようです。

このようにワクチン接種を加速化するファイザーの温度帯改訂がある一方で、アストラゼネカに待ったがかかる、あるいはEUは領域内で製造されたワクチンは外国にだそうとせずに域内供給を優先させる自国優先主義がむき出しになるといった混沌ぶりです。
こんな各国の利害がむき出しになった混沌状態を演じながら、ワクチン接種大作戦は進むようです。

メディアに煽られて1カ月遅れたからどうのとワーワー騒がないこと。
うちの国は世界でも飛び抜けて死亡率が低い国なんですから。

 

2021年2月22日 (月)

9条の呪いがかかった海上保安庁法を改正せよ

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メディアと野党は、菅さんの息子がどーしたのこーしたという週刊誌ネタに熱中しているようです。
少しは事の軽重をわきまえるがいい。
コロナ禍の真っ最中で、これからワクチンの国民接種が開始されようとするこんな時期に、そんなネタで遊んでいる暇があるのか、ないのか。
いつもこのパターンの繰り返し。首相に縁故びいきがあったのないのと、モリカケ以来一貫して政府追及はこれだけ。
いい加減自分でやっていて飽きないのでしょうか。
ワイドショー民を除いて、国民の相当数は飽き飽きしていますがね。

ところで嬉しい見込み違いというは稀にあるもので、今は国民民主の軒を借りている前原氏がこんな国会質問をしているようです。

「「国際法違反だと明確にいうことが大事だ」 国民民主党の前原誠司元外相は17日の衆院予算委員会で、政府にこう迫った。首相は「わが国の強い懸念を中国にしっかり伝えたい」と述べるにとどめた。
 国連海洋法条約30条は、領海で沿岸国の法令を順守しない場合は「退去要請」を行うことができると規定する。一方、海警法22条は「武器使用を含むすべての必要な措置」が可能とし、対象も限定しない。前原氏はこうした点が国際法違反に当たると主張する」(産経2月21日)

パチパチ。まったくそのとおりです。おお、ひさしぶりにというか、初めて前原さんを褒めたぞ。
あんたらが政権握っていた時に、尖閣の国有化や漁船衝突事件での対処の失敗で一気に悪くしたんだろう、なんて言いません。
その時、外務大臣だったのはあんたやろ、などとも言いません。(言ってるだろが)

今、中国は、コロナ禍で自由主義陣営が半身不随と見て、一気に間合いを詰めようとしています。
そこで打ったのが海警法改訂です。

●中国海警法第22条
国家の主権、主権的権利、及び管轄権が海上において外国の組織、個人の不法な侵害を受けている、若しくは不法な侵害の切迫した危険に直面している場合、海警機構はこの法律及びその他の関連する法律、法規に従って武器の使用を含む必要な全ての措置を講じ、その場での侵害を阻止し、危険を排除する権利を有する。

スルっと読むと、うちの国の海保も「不法な侵害や危機に対して武器の使用を認めていますから、同じじゃんなんておもわないこと。
この海警法22条のコワイのは、ここに「国家の主権、主権的権利、及び管轄権が海上において 」という一項が前提として入っていることです。
これは市民語でいえば、尖閣水域はオレの施政権下にあるから、武力で排除するぞ、と言っていることになります。

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尖閣緊迫!中国公船が連続侵入

ところで、現実に尖閣水域は中国が押えています。
このように言うと、ええっと思われるかもしれませんが、実態として日本は島に公務員のひとりも、施設の一棟も建てておらず、その予定もありません。
強いていえば環境調査をするとかしないとか言っているようですが、進行しているとは聞きません。

つまり中国側からみれば、いや国際社会からみれば、日本が民主党政権時に国有化したのは紛争地域の一方的領土化と見えなくもないわけです。
こんなことをするくらいなら、灯台のひとつも建てればよかったのです。
あの時代なら海警がウロチョロしていなかったので簡単にできましたが、今同じことをしようと思ったら群れなす海警をかきわけ、そこでドンパチにでもなったら中国海軍がしゃしゃり出て来ることになりかねません。
へたすりゃ局地戦です。

領土領海を巡る紛争において、ありていにいえば、押えたものが勝ちです。
いったん実力で押えてしまえば、南シナ海のように実効支配は中国だと国際社会は理解します。
国際法上は無効でも、国際法に罰則規定がない以上、それは中国がいうように「紙屑にすぎない」のです。
そしていったん武力をもって領土化してしまえば、それを原状回復させるためには同じように武力をもってせねばならなくなります。
だから、南シナ海やクリミア半島、あるいは北方領土は、いったん武力で占領したので、原状復帰は極めて困難となります。

ですからいくら日本が「尖閣に領土問題はない」なんて言っても無駄。
問答無用で実力を用いる者に、理屈で勝負出来ません。
だから中国は、あえて施政権下に置いた証拠として海警を使ってパトロールさせて、「不法操業取り締まり」に勤しんでみせているのです。

去る12月に来日した王毅外相がなんと言っていたのか思いだして下さい。

「一部の真相が分かっていない日本漁船が釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な水域に入る事態が発生しており、中国側としてはやむを得ず、非常的な反応をしなければならない」

「真相がわかっていない」、つまり尖閣水域が中国領海だと判っていない日本漁船が侵入するなら、「非常の反応」、つまり武力で追い払うゾ、と言っているわけです。
中国は、日本側が実力で現状変更をするなら、「やむをえず」海警を使って排除しますよ、と言っているのです。
このまま徒らに時間が経過すれば、尖閣は名実共に中国領に編入されるでしょう。

一方、日本の対応は旧来の当たらず触らずで、一切を海保に押しつけたままです。
漁船は海警によって接近することさえできず、かろうじて海保が間に入って衝突を回避させていますが、海保すら尖閣に向かう漁船を「政治活動」と見なしており、紛争回避を理由に国会議員などの乗船を拒んでいるようです。

先ほどの前原氏の質問に対しての政府の回答はこのような腰砕けぶりです。

「政府関係者は「海警法をただちに国際法違反と指摘するのは困難」と慎重な立場を崩さない」(産経前掲)

実行支配権という切り札を握った中国にとって、彼らの側から騒ぎを起こすメリットはありません。
民間漁船を使って騒ぎを起こすなら粛々と排除しようとするでしょうし、仮に自衛隊を入れてくるなら、待ってましたとばかりに中国海軍を投入してきます。
その時、国際社会が中国の実効支配を容認していれば、米軍の介入はできなくなります。

このところ知られてきましたが、海警が沿岸警備隊のように見えるのは見かけだけ、実態は中国共産党中央軍事委員会直系の準軍隊です。
日本の海保は文字通り「海の警察」ですが、中国は「警察の衣を着た軍隊」です。

海保は尖閣を防衛してはならないし、中国海警と違って海自と連携して行動してはならないと規定されています。
それが海上保安庁法第25条の存在です。

●海上保安庁法第25条
第二十五条  この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない

これは世界的にみても異常な規定で、米国沿岸警備隊などの諸外国のコーストガードは陸海空軍に並ぶ準軍隊として位置づけられ、有事には自動的に海軍の指揮下に入ります。
中国がフツーで、世界スタンダードは向こうのほうです。
日本は第9条が軍隊自体を認めていないために、海保は「準軍隊」でないとわざわざ25条に書き込んでしまいました。
ここにも9条の呪いが降りかかっています。
したがって、そもそも海保に領海防衛の任務はないのです。

さらに驚くべきことには、このていどはあるだろうと思っていた領海警備をする任務すら与えられていません。

●海上保安庁法第二条  
海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする

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中国海警局】 尖閣諸島沖、中国海警局の5000トン級と海上保安庁の1000

つまり海保の任務は、「海上の安全と治安の確保」であって、尖閣で民間漁船と中国海警との間に入って身を呈しているのは、領海警備ではなく、「海上の安全」を守る為にすぎないのです。
海保の名誉のためにつけ加えると、それはシーマンシップに根ざした心意気です。

つまり日中間の沿岸警備隊のあり方に関しては、日本の海保が異常なのであって、中国海警が正常な国家の有り様なのです。
しかし自衛隊と異なるのは、海保の任務に「領海警備」を付与するのは、憲法改正などする必要がないことです。
これは海上保安庁法から第25条を削除し、第2条の目的に領海警備の4文字を挿入すれば済むことです。
さらに今自民党国防部会で検討され始めている領海警備法を成立させることにも、憲法改正手続きは不要です。

外交は等価交換です。
やられたことはその分だけやり返す、やり返さないで黙っていれば殴られたことを認めることになるからです。
中国が海警に明確に武力行使を認めた以上、わが国も相応の措置をとるというだけのことで、この対応を誤れば中国は今まで以上に尖閣の実効支配を進めることでしょう。
それは従来の領海戦から、島を奪りにくる領土戦争に移行するということです。
そしてその時は、尖閣進行作戦はワンセットで宮古島侵攻と連動していることをお忘れなく。
この最悪事態に至らぬ前に、ここで止めておかねばなりません。

 

 

2021年2月21日 (日)

日曜写真館 春はそこまで

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梅が咲くのは冬の終りです。

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もう待ちきれない。

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村の郵便局も待っています。

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タローも待ってます。

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でも三寒四温。一直線に春は来ないんです。

 

2021年2月20日 (土)

ミャンマー軍事鎮圧か?板挟みになる中国

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ミャンマーが急速にキナ臭くなっています。
近い将来、第2次天安門事件が再演される可能性がでてきました。
連日の大規模デモに対して、軍部がゴム弾を発射して鎮静化を図ってきましたが、頭部に弾を受けた女性が死亡しました。

 ゴム弾は非致死性とはいうものの当たりどころが悪いと死に至ります。
今回、この気の毒な女性はヘルメットを貫通して死亡したそうです。
おそらくデモ隊に向けて水平発射したのでしょう。
非致死性をいいことにして、代用銃器として使うという悪質な使用方法です。
下写真のように香港でも大量に使用されて多くの重傷者を生みました。

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香港デモで片目を奪ったゴム弾の威力 - yasublog

なお軍部は次回からほんものの銃弾を使用すると警告しています。
軍部は地方から部隊をヤンゴンに集結し、軍に反対するすべてのデモを禁止し、重罪化すると宣言しました。
またすべてのSNSの遮断を開始しています。
軍の終結と通信手段の遮断、これは中国が武力弾圧する前段で必ずすることで、香港以上の血の武力鎮圧をするかもしれません。

「国連のトム・アンドリュース特別報告者は17日、声明を出し、「軍人が郊外からヤンゴンに移動しているという報告を受けた。過去にこのような動きは大規模な殺傷や拘束を引き起こし、大規模な暴力事態の発生が懸念される」と述べています。
軍政最高機構「国家行政評議会」は刑法を改正し、政府、軍、軍幹部に対する不満や嫌悪を誘発する行為を処罰できるようにして、懲役7年から20年という重い刑罰をかすようにしました」(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.275 2021年2月19日)

 今のミャンマー軍は、かつてのように中国と一定の距離を開けていた土俗的存在から変質し、中国軍の直接の指導が入っていると言われています。
未確認情報ですが、中国軍人が既にミャンマー軍の中にいるという情報もあります。
ソースが怪しいので疑問符がついていますが、軍部の鎮圧する手法が中国がよくやる方法を踏襲しているため、ひょっとしたらありえるかもしれません。
あるいは、ミャンマー軍は中国製武器のいいお得意さんですから、その指導のために派遣されていたかもしれません。

それはさておき、似ていることは確かで、中国はSNSを危険視して常に監視下に置いて統制をかけようとします。
中国にとってSNSは支配のための道具でしかありませんから、それを使って反政府派が集会を呼びかけたりすることは許しません。
当局の盗聴にひっかかった者は、事前に反政府分子として令状無しで拘束されてしまいます。
それをよく知っている香港の民主派は、デモ呼びかけに一切SNSを利用せずにアナログに徹したほどです。

ミャンマー軍はSNSの統制を開始し、国内だけではなく外国との通信も遮断し始めました。 
そのためにヤンゴンから送られる映像は、下のように一気に不鮮明になっています。

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NHK 

「軍政は、サイバー保安法を制定するようで、インターネット・サービス・プロバイダーが個人のIPアドレス、電話番号、住民登録番号、住所、最近3年間の活動履歴を保管することを義務づけ、個人のソーシャルメディア情報にアクセスし、個人のメッセージを見ることができることも検討中とか。このネット統制のやり方は完全に中国です。
そしてネットにあふれる、ミャンマー各地での中国人兵士の目撃談(や写真)、大量のエンジニアを送り込んで、インターネット統制のためのグレートファイヤーウォールを創ってあげたという噂。在ミャンマーの中国大使館は、デマだと一蹴して、このクーデターへの中国が関与を完全否定しています」(福島前掲)

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ミャンマー、12日連続抗議デモ | カナロコ by 神奈川新聞

この国民の大規模な抵抗は軍部のみならず、その後ろ楯となっている中国にとっても意外な展開だったようです。
彼らは、クーデターを起こして強い統制下に社会を置き、スーチーらを拘束し、短期で選挙のやり直しを諮る心づもりだったようです。
軍部がおそれていたのは、軍部に一定の議席と閣僚ポストを与えていた憲法を、スーチー派が大勝することによって改憲してしまうのではないかということでした。
そこで、中国の了解の下に一気にクーデターを行い、短期の外科手術的行動て済ましてしまおうと図ったのですが、民主化に馴れた国民はそれを簡単に許さなかったことが最大の誤算でした。

結果として、軍部とそのバックにいる中国は非常に不利な立場になりました。
中国はすでに、オレは関知していないから、双方仲良くしてくれ、と言い始めています。

「ミャンマーでクーデターを起こした軍に対する市民のデモが続いていることについて、ミャンマーに駐在する中国大使は「中国は今のような状況を見たくはなかった」と述べ、アウン・サン・スー・チー氏が率いる政党側と軍側の双方に対話を呼びかけました。
ミャンマーに駐在する中国の陳海大使は、現地メディアのインタビューに応じ、16日、その内容を大使館のホームページで発表しました。
この中で陳大使は、中国はアウン・サン・スー・チー国家顧問が率いる政党、NLD=国民民主連盟と軍の双方とも友好な関係にあるとしたうえで、「中国は今のような状況を見たくはなかった」と述べ、双方が対話を通して適切に問題に対処するよう呼びかけました。
また、陳大使は、国連の安全保障理事会がアウン・サン・スー・チー氏の即時解放を求める報道機関向けの声明を発表したことについて「中国を含む国際社会の共通の立場だ」と述べ、中国としてもスー・チー氏の解放を求める姿勢を示しました」(NHK2月17日)

中国は、米国がコロナ禍と大統領選で自分の国のことだけで手一杯な隙を狙ったつもりだったのでしょう。
いまならへなちょこバイデンはあたふたするだけで、できることはせいぜいが経済制裁の復活くらいだろうから、そのへこんだ分はオレが支援してやるていどだったようです。
しかし、よもやかつて半世紀ちかくおとなしく軍政に服従してきた国民までもが、香港まがいの民主化デモに走るとは思いもしなかったようです。
スーチー派NLD政権の腐敗はつとに有名でしたし、彼女もろひ中国の属国化に動いていましたから、彼らを拘束してもかつてのようなスーチーを民主化のシンボル化することはあるまいと踏んでいたはずです。

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ところがこの甘い見込みは大ハズレで、反軍部デモは拡大する一方、もう手がつけられない状況となってしまいました。
軍部は長きに渡った軍政の経験から、スーチー派指導部を捕らえて監禁してしまえば、デモもおのずと静まると踏んでいたようです。
そこでスーチー派400名から500名を逮捕したのですが、これが裏目にでてしまい、いっそう民衆の怒りに火をつけてしまいました。

現在米国に亡命している鄧聿文(元中国共産党中央党校学習時報副編集長)はこう述べています。

「ミャンマーの軍人はやはり過去の軍人であるが、ミャンマー人民はもはや過去の人民ではない、ということだ。さらにSNS時代に育ったミャンマーの若者は、かつての軍による弾圧の記憶がなく、軍隊の統治に反抗しても、軍が、社会秩序の安定を要請するだけで、武力弾圧をするとは想像していない。
この局面が悪化すれば、軍も大弾圧を開始するかもしれないと、国際社会は心配している。国連の特別報告員のトム・アンドリュースはツイッターで「ミャンマー軍はまるで人民への戦争を布告しているようだ。夜襲、逮捕の増加、多くの民主的権利の取り消し、ネットを封鎖、軍の住宅街の進駐…これは非常に差し迫った兆候だ」と投稿し、ミャンマーの民間メディアも安全部隊がマンダレーで銃を発砲してデモを追い払っている様子を報じている。これで死傷者が出たかは不明だ」(福島前掲)

鄧聿文は、もう双方共に過去のそれではないと指摘しています。
軍部はかつてのような土着的集団ではなく、国民も軍政をあたりまえだと受け入れるような存在ではなくなっていた、ということです。
軍部は近代化の過程で大きく中国軍に依存しており、一方の国民も昔のように軍部を恐れず、SNSをあたりまえに使いこなす存在に変質したようです。

そして鄧は、このまま軍部が弾圧を強めれば必ず第2次天安門事件を引き起こすとみています。
そしてこのミャンマー版天安門事件が起きた場合、中国に跳ね返ってくるだろうとしています。
その理由をこうです。

「ミャンマー軍政の鎮圧行動が世界と中国人民に30年前に中国で発生した天安門事件を思いださせ、中国共産党政権が経済と国家台頭で打ち立てた合法性を弱めることになる。
天安門事件については、中国の多くの民衆も決して忘れてはいないが、しかし中共の隠蔽と、いわゆる大国化のおかげで、昔の出来事とされつつある。たとえ記憶にあっても、その痛みは当時ほどには残っていない。
だが、もしミャンマーで同様の大鎮圧による流血事件が起き、民衆が軍政の銃口のもと流血することになれば、世界の多くの人、特に中国人の記憶がよみがえり、中国でも民主人権と独裁統治の関係、経済と社会秩序が人権の代価となってよいのかどうかについての議論がおこるかもしれない。
実際、ミャンマーに軍の装甲車がヤンゴンに現れたときの写真が中国のネット上に流れたとき、天安門の暗喩のように使われた」(福島前掲)

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中国はミャンマーに関して中立的立場であり、内政干渉する意志はないと言い始めているようですが、そうは問屋がおろしません。
キレイな顔をして双方に和解のテーブルに乗るように言いたいのでしょうが、すでに国際社会はこのクーデターは中国政府の了承の下に実行されたことを知っています。
そもそも中国がこのクーデターを安易に許したこと自体が問題だったのです。

とどのつまり、中国はスーチー派をいやがおうでも西側に追いやることになってしまいました。
このままスーチー派NLDに政権を任せていたなら、中国風に腐敗した親中派政権が存続したものを、軍部の甘い見通しに耳を貸すからこういう板バサミに追いやられます。

さらに流血の事態になれば、もはや中間的立場はできません。
軍部の言うことを聞けば、国際社会からの強い非難を受けるでしょうし(それはすでに始まっていますが)、かといって軍事弾圧を非難すれば軍部は中国からかつてのように距離をあける結果となり、ミャンマーへの中国の影響力は大きく後退します。
そして再選挙になったら、更に前回選挙以上の大勝をNDLは勝ち取るでしょうし、しかもその政権は親中路線から西側寄りとなるはずです。

このように本心をいえば、中国は国軍にこれ以上の軍事鎮圧はしてほしくないはずです。
しかし福島氏は、ミャンマー軍部と中国軍が近親憎悪的感情があり、双方まったく信頼していないとも述べています。
だから国軍は、ここまで来たら中国の言うことなど聞かないだろうと福島氏は見ているようです。

ミャンマー国軍が武力鎮圧を行えば、中国は厳しい状況に追い込まれるし、仮に起きなかったとしてもスーチーを再び民主化の女神とするような空気が再燃し、かれらを自由主義陣営に走らせることになります。

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デモ中に頭撃たれた20歳女性が死亡 ミャンマー

いずれにしても、いったん自由主義vs全体主義という構図ができてしまえば、あとは価値観の戦いに単純化されていくことになります。
それこそもっとも中国が嫌う構図だったはずですが。

 

 

2021年2月19日 (金)

人類は中国に「平和の祭典」の冠を授けてはならない

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米国下院で、中国が北京五輪においてウィグル族にジェノサイドを働いたとして、開催地変更を求めた決議が可決され、追っつけ上院でも同様の決議がなされるでしょう。
誤解なきようにお断りしておきますが、あくまで「この決議は開催地変更」、つまりポンペオの表現を借りれば「五輪の理想を真の意味で掲げる国」への開催地の変更であって、ボイコット呼びかけそのものではありません。
ただし、この下院決議はボイコットの含みを持っていますので、中国の対応次第では直ちにボイコットへと方向転換するでしょう。

「一方、共和党のウォルツ下院議員(フロリダ州選出)は15日、IOCが北京に代わる開催地を見つけられなかった場合、米国オリンピック・パラリンピック委員会が北京五輪をボイコットするよう求める決議案を下院に提出した。
 決議案は、ウイグル自治区での人権抑圧に加え、中国当局による香港での民主派弾圧や新型コロナウイルス感染の情報隠蔽なども非難。また、他の参加国にもボイコットを求め、可決された場合はブリンケン国務長官に決議を各国に送付するよう要請した。
上院でも1月22日、共和党の7議員が開催地変更を求める決議案を提出した」(2月17日産経)

まず、ジェノサイドの概念から押えておきましょう。
というのは、プロパガンダ目的で安易に使われるべき概念ではないからです。
ジェノサイドの国際的解釈について、『集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約 』(1948年国連)、通称「ジェノサイド条約」が存在します。
ミネソタ大学人権図書館 http://hrlibrary.umn.edu/japanese/Jx1cppcg.htm

これは1949年という締結年をみればわかるように、ユダヤ人に対する民族絶滅(ホロコースト)に対して国際社会が二度とこのようなことは起こさせないという意志から生まれています。
このジェノサイド条約を批准したのは150カ国(2019年現在)で、批准していない国はアフリカや東南アジアを中心に多数あり、日本もそのひとつです。
わが国の場合、国内法の犯人処罰規定と食い違いが生じるために批准に至らないようです。
※ 衆議院:第185回国会 法務委員会 第4号

というのはジェノサイド条約は厳密に国際法上の犯罪であると規定して、ジェノサイドに関わった者が入国した場合、それを処罰をするように当該国に求めているからで、わが国はそこまで現状ではできないと考えているようです。

●集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約 1948年 国連
第一条
 締約国は、集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず、国際法上の犯罪であ ることを確認し、これを防止し処罰することを約束する。
第二条
 この条約では、集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもつて行われた次の行為のいすれをも意味する。
(a) 集団構成員を殺すこと。
(b) 集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること。
(c) 全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。
(d) 集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。
(e) 集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。

第三条
 次の行為は、処罰する。
(a) 集団殺害 [ジェノサイド]
(b) 集団殺害を犯すための共同謀議
(c) 集団殺害を犯すことの直接且つ公然の教唆
(d) 集団殺害の未遂

このジェノサイド条約は国際法ですから、その所管は国際司法裁判所(ICJ)となります。
ICJがいままでジェノサイドと認定したのは以下です。
https://www.worldvision.jp/children/crisis_08.html

・1975年~79年までのカンボジアのポルポトによる大量虐殺
・1992~95年までのユーゴの崩壊に際して起きた民族対立による大量虐殺。
・1994年に起きた、ルアンダのツチ族大虐殺。
・審議中・2019年のミャンマーでのロヒャンギに対する虐殺。

 

2021年2月18日 (木)

世の中になくていいものデニー知事とWHO

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トランプについては随時取り上げるつもりですので、とりあえずこのくらいで。
北京五輪のほうも、米国下院で開催地変更の決議が通り、いよいよボイコットの動きに火がつきそうですが、ジジはどうするのでしょうかね。
まぁ、これも次回送りとして、今日は遅れ遅れになっていたWHOの自称「現地調査団」なるものをもう少し見てみましょう。

さてWHOの「現地調査団」が、中国になんちゃって「調査」をしたことはお伝えしましたが、シャンシャン大会なのは分かり切っていましたが、あれほど露骨な茶番をみせられたのもひさしぶりです。
※関連記事 『WHOの武漢「見学会」終わる』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/02/post-ab96a5.html
その前に科学者による調査団と言いたいならば、いくつか前提条件をクリアせねばなりません。
このWHO調査は、本来が不祥事を起こした企業のコンプライアンスを調べる第三者委員会みたいなもの、と思っていただければ、それに一番近いでしょう。
調査団に必要な条件はこのようなものになるでしょうか。
第1に、客観的な知見を持った者による第三者の人員構成であること。
第2に、自由に調査対象を選択し、無条件に調査に立ち入る権限を持つこと。
第3に、対象国があらかじめ用意したデータではなく、原データを収集し、分析できること。
第4に、記者会見場を対象国ではなく、第三国ですること。
まず第1に調査団の構成ですが、中立公正の担保するために、調査対象国以外からのメンバーで構成されねばなりません。
調べる側に調べられる側のメンバーが加わってしまっては、客観性など確保できないからです。
ところが今回は合同チームと称して、中国専門家17人、WHO、国際獣疫局からの専門家17人による34人の専門家が3チームで行っています。
実に半数を当事者であるはずの中国側が占めているわけです。
大事故を起こした企業を調べている調査団の半数がその企業の人間だったら、誰がそんなものを信じるでしょうか。
もうこれだけで、結果は初めから見えていました。
第2に、調査対象を相手国に選択させたら、そのようなものは「調査」ではなくただの「見学」にすぎません。
今回、共産党プロパガンダの宣伝会場に行ったことに象徴されるように、なにからなにまで中国政府が立てたスケジュールに乗って進行しています。
期間は28日間で、見たのは武漢市白沙洲貿易市場、華南海鮮市場、湖北省疾病予防コントロールセンター、武漢市疾病予防コントロールセンター、湖北省動物疫病予防コントロールセンター、中国科学院武漢ウイルス研究所などです。
すべて中国共産党ご指定の場所ばかりです。
さぞかしゴミひとつウィルスひとつなく、ピカピカツルツルだったことでしょう。
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第3に、おそらくここが最も問われたはずですが、原データを採集せねばこの調査自体の科学的価値がなくなります。
そもそも武漢の発生は公式には一昨年19年冬となっていますが、米国政府によれば19年夏の終りには初発が発生した可能性が濃厚です。
しかも武漢P4ラボの関係者で、ゼロ号患者は黄燕玲だと推定されています。

「WHO調査団は、中国が最初にコロナが確認されたとしている2019年12月初旬よりも前の段階で感染が広がっていなかったかを調べている。一段と早い段階でウイルスの存在を特定できていれば、世界的に大流行する前に封じ込められた可能性がある。コロナ感染による死者はこれまで、世界で230万人を超える。
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は10日、WHO調査団の話として、武漢での感染拡大が確認される2カ月前の段階で、中国中部でコロナの症状を訴える患者およそ90人が入院していたと伝えた。
 中国当局はこれらの患者に1年以上経ってから抗体検査を実施した。結果はすべて陰性だったが、時間が経過しているため抗体が検知できない水準に低減していた可能性がある」
(WSJ 2021年2月13日)

そして「不思議な肺炎」が武漢で流行していると中国CDCならびにWHOに報告されたのが、昨年12月31日。
今年1月7日、新型コロナウイルスが分離され、1月13日に診断キットが開発されました。
その後、日に日に患者数が増え、1月20日に習が「重要指示」を出しています。

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中国は一党独裁国家とはいいつつ、各地方にミニ習近平がいて代理統治させているような国で、中央は直接に地方を統治していません。
ですから、共産党中央は2020年1月はじめまで、武漢がこんなスゴイことになっているとは夢にもおもわなかったようです。
ここで状況を知った習は、武漢市に直接介入して仕切るようになります。これが1月20日以降です。
といっても私権の制限をしたのは武漢と湖北省の封鎖に止まり、そのままズルズルと春節の民族大移動を許してしまい、全国と国際社会に感染を拡げます。

そして習が武漢に行って感染阻止宣言をだしたのが3月10日です。
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BBC

ですから現地調査というなら、中国が公式に武漢での大規模感染拡大を認めた去年の1月から遅くとも3月までに現地に立ち入って原データを押えねばなりませんでした。
この時期の立ち入り調査を逃してしまったどころか、WHOは国際緊急事態宣言すら出さず、のほほんと中国政府の言い分を鵜呑みにしていたのですから話になりません。
ちなみに、日本政府が批判され続けている中国人観光客を止めなかった問題は、WHOと中国政府に情報提供を依頼したためだと言われています。
猛省していただきたい。

それはさておき、中国は3月には感染を阻止したという宣言を行い、以後ひとりも発生していないということになっています。
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そんなわきゃないのですが、ならば習がクリーン宣言を出した2010年3月10日直後にWHOは現地調査団を出すべきだったのです。
それを武漢の発生から1年以上たって、隅々まで徹底的に掃き清め、ヤバイ文書やカルテは始末し、関係者の口裏合わせが済んだ今頃になってなにが「現地調査」だというのでしょうか。
中国はウィルスサンプルを国家が無条件で没収する指令を出しています。

ポンペオ前国務長官は去年5月6日の会見でこう指摘しています。

「中国は世界で数十万人の人々の死を防ぐことができたはずだった。世界が地球規模の経済低迷に転落するのを救えたはずだった。
かれらには選択の余地があった。ところが、しかし中国は武漢での感染大流行を隠蔽した」

この中国当局の意図的隠蔽は文書で確認されています。

「国家衛生健康委員会弁公庁 2020年1月3日
6 の通知が発出される以前に、すでに関連する医療衛生機構で関連する病例の生物サンプルを取得している機構及び個人は、そのサンプルを直ちに隠蔽、あるいは国家が指定する機構に送って保存保管し、関連する実験活動や実験結果を適切に保存する」
(正論2月『中国の隠蔽指示文書全文』)

この中国政府の意図は、ただの隠蔽だけに止まらず、新型コロナウィルスのサンプルを、国家が独占してしまうことを意味しています。
これはこの通知1にあるように、「死亡患者の死体組織・臓器等」まで含んでいる徹底さです。
ならば、「現地調査団」は、今どき武漢P4ラボに行っても無意味ですし、ましてや海鮮市場など見る価値もありません。
調べる価値があるのは、唯一、国家衛生健康委員会弁公庁にあると推測されるウィルスサンプルしかありません。

しかし国家衛生健康委員会どころか、武漢の病院レベルでも原カルテやデータ類を開示しなかったようです。


「中国当局は、新型コロナウイルスの起源を巡る調査で手掛かりになるとみられる初期の患者に関する個々の生データについて、世界保健機関(WHO)への提供を拒んでいる。詳細情報の欠如を巡り、双方は激しく口論を交わしたという。WHO調査団が明らかにした。
 中国当局は、武漢市でコロナが拡大し始めていた2019年12月に感染が確認された患者174人に関するデータについて、提供の要請を拒否した。コロナの起源特定を目的とするWHO調査団は今週、1カ月にわたる中国訪問を終えている」
(2月13日ウォールストリートジャーナル)
中国側はあらかじめコロナ患者や感染拡大のデータの要旨とその分析結果まで用意して、図々しくもこれでデータ提出を果たしたと言い張りました。

「WHO調査団のメンバーによると、中国当局や科学者は、コロナ患者のデータに関する広範な要旨や分析を提供。これに加え、武漢で感染拡大が特定される数カ月前の医療記録などを通じて過去にさかのぼって行った調査に関する集計データや分析についてもWHOに提示し、ウイルスの証拠は見つからなかったと説明した」(WSJ前掲)

こんなものをもらっても、科学的にはなんの意味もありません。
データ自体が改竄されていようと、勝手な分析を加えていようと、原データがない以上比較できないからです。
これでは科学的に無価値であるばかりか、隠蔽工作の手助けをしたことにさえなります。

「しかしながら、WHO調査団は過去にさかのぼった分析の元になった生データを見ることは認められなかった。仮に加工されていない元データを入手できれば、WHO側は中国でどのくらい早い段階から、どの程度の範囲に感染が広がっていたのかを独自に分析することができる。調査団のメンバーによると、加盟国は通常、WHOの調査にこうした情報を提供する。
WHO調査団のメンバーで、オーストラリア出身の微生物学者、ドミニク・ドーヤー氏は「中国側はいくつかの事例を見せたが、すべてを見せることとは異なる。それは疫学的調査では標準的なことだ」と話す。「中国側は十分だと考えているかもしれないが、データの入手が遮断されたことで、われわれの観点からは、そのデータの解釈は極めて限られたものになった」(WSJ前掲)

またオーストラリアの調査団員であるドワイヤー氏は、中国国内から発生したと明言していますが、調査団はこれすらあいまいにしたいようです。

「中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスに関する現地調査を行った世界保健機関(WHO)国際調査団のメンバー、オーストラリア人研究者のドミニク・ドワイヤー氏は10日夜、豪放送局ナインニュースのインタビューに対し、「新型コロナは中国から始まったと思う」とする見解を述べた。
微生物学と感染症の専門家であるドワイヤー氏は「中国以外の地域から始まったとする証拠は極めて限られている」と指摘し、コウモリを媒介して感染した可能性が最も高いとの考えを述べた」(読売2月12日)

第4に、調査団の記者会見場の設定です。
こともあろうに中国国内でしてしまいました。

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梁万年と 握手するピーター・ベン・エンバーク

会見では中国側リーダーの中国CDの梁万年が、疫学調査的起源研究結果を説明。
2019年12月以前、武漢で感染が発生した証拠はない、と発言していますが、WHO側のリーダーのエンバークはニコニコと聞いていたようです。
また梁は、パンデミックを引き起こしたことから、このウイルスが高度に人類環境に適応した勢損能力を持っていると指摘しこの能力は偶然に得られたもので、徐々に変異しているが、その段階ごとの変異も自然淘汰によるものだと、説明しました。

一方WHO側リーダーであるエンバークは、関連する証拠はウイルスが自然由来であることを明らかにしているとし、人工由来説を頭から否定したうえで、武漢は蝙蝠が大量にいる地域ではないので、武漢ウイルスの起源は蝙蝠から人に直接感染した可能性はほとんどない、としました。
つまりその他動物、中間宿主を経由した可能性が高いが、詳細は不明だとしました。

「ピーター・ベン・エンバークは、新型コロナが人に感染するルートについて、四つの仮説、実験室漏洩、蝙蝠からの直接感染、輸入食品コールドチェーンなどモノから人への感染、人の生活に近い中間宿主の動物からの感染をあげて、このうち、実験室漏洩は極めてありえないとして、将来この方面の研究はしない、とした。WHOとしては実験室漏洩の可能性を完全に排除したかっこうだ」(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)

これに対して福島氏はこのような疑問を呈しています。

「本気で、実験室漏洩の可能性をつぶすならば、少なくとも、零号患者と噂された黄燕玲に接触すべきでしょう。中国科学院は黄燕玲が別の省で健康に仕事をしていると公式に発表していますが、本人は一向に表にあらわれていません。
石正麗と微信のグループチャットで論争した同業者の武小華や武漢市疾病コントロールセンターからの実験室漏洩を指摘した中国華南理工大学教授の蕭波濤からの聞き取りも、必要だと思われます。私は、彼らが無事なのかどうかも、ふくめてWHOの専門家たちにそこを確認してほしかったですね。
WHO側は彼らへの取材のリクエストを出したのでしょうか。出して断られたとしたら、どんな理由で断られたのでしょうか。記者会見で、記者たちはなぜそこを突っ込まないのでしょうか」(福島前掲)

そもそも中国国内で共同記者会見などすれば、こう言うことを言わねばならないのは火を見るより明らかでした。
ホスト国のメンツを丸つぶしにはできないからです。
おそらく今後まとめられる正式報告書でも、発生源を特定できなかったとしながらも、一番ありうるのが中間宿主経由の感染だとして、華南海鮮市場で売られている冷凍製品、海鮮、養殖動物などからもウイルスは検出されたので輸入食品がもっとも感染源だと推定されることでしょう。
そして当然のこととして、人工漏洩説は絶対にありえない、という結論を出すのでしょうね。
あー、ばかばかしい。世の中になくていいもの、デニー知事とWHO。

 

※春めいてきたので、もう炬燵でもないだろうと、今日から模様替えしました。

 

2021年2月17日 (水)

トランプが作り出した構図とNYTの誤報

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ふゆみさんは「四年後トランプの芽がほぼ無い前提で共和党の主力メンバーはリスタートするのが賢明かと思います」というご意見ですが、私は今回の弾劾訴追でいっそうはっきりしたのは「主役はトランプ」という構図だと考えています。
民主党はこの構図に恐怖して、弾劾訴追を無理筋承知でやったわけです。
しかしお気の毒にも、後述しますが、オールドメディアのフェークニュースの支援をもらいながら詰めきれずに、結局のところ気がついてみればスポットライトを浴び続けたのはトランプばかりと相成りました。

おっと待てよ、トランプは発言手段をビックテックによってすべて封じられて、鉄仮面をかぶされてフロリダに軟禁されているんじゃなかったのかな。
しかし彼の一挙手一投足は、国民注視の的となり、共和党支持者の間では受難の王の帰還を求める声はいっそう強くなってきています。
好きと嫌いにかかわらず、今後4年間、この一件はトランプだったらどうしただろうという形で、ジジに安眠の夜を与えないことでしょう。

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一方共和党内にも反トランプ派がうじゃうじゃいます。
共和党主流は財政規律で締め上げて、財政支出は最低限に、金融緩和は引き締めてという緊縮路線が彼ら保守本流の定番でした。
いわゆるティパーティの「小さな政府」路線がそれです。
しかしトランプは、それと真逆な大型財政支出・大規模金融緩和といういわゆるリフレ政策を実行し、米国経済に空前の繁栄をもたらしました。
これは本来、共和党本流が嫌ったリベラル経済路線そのものです。

また繁栄に取り残された中間層以下もケアする減税政策もまた、本来は民主党がせねばならないものだったはずでした。
トランプが民主党と一線を画するのは、減税によって経済全体を豊かにし、企業を国内に呼び戻して働く場所を増やすということを通じて行ったことです。
トランプのほうがエスニックに対するケアが厚かったし、失業率はFRBが驚嘆するほど低下しました。
一方、民主党リベラルは、この低所得層へのケアを、失業手当のバラ撒きという再分配政策でしようとして、徒に財政赤字を積み増ししていきます。
経済全体を豊かにしないで再分配だけに頼ろうとすれば、国民はやがて自ら働かずに糧を得ることを当たり前に思い、根っこから腐ってきます。

そうではないだろう、勤労こそ民主主義の礎じゃなかったのか、国に養ってもらうんじゃなくて、油が染みついた手で家族を養うことがアメリカ人の誇りじゃなかったのか、それが米国の建国の伝統だったことを忘れるな、とトランプは呼びかけたのです。
このあたりは、本来リベラルがやるべき経済政策を大胆に取り入れ、アベノミクスという新しい衣を着せた安倍氏と酷似しています。
保守本流を自認する麻生氏などと、実はまるで正反対の考え方なあたりもよく似ています。

安倍氏の強さは、本来は保守の異端でありながら、保守本流を自認する党内勢力を取り込めたことでした。
ただし保守本流と手を組んだことで、あれほど反対してきた消費増税をせざるをえなくなるという窮地に陥るのですが。
禍福はあざなえる縄の如しとはよく言ったもんです。

一方トランプは、ジジが選んだ財務長官の元FRB議長のイエレンと大変に相性が良かったように、共和党主流からは常に警戒され、色物扱いにされてきました。
だから、政権発足時に意にそぐわない国務長官を、お目付役のように次々に押しつけられて苦労したのです。
とまれ、トランプがやることなすこと気に食わない、これなら民主党大統領のほうがよほどましだとすら考えていた共和党メーンストリームも多かったことでしょう。
このトランプと共和本流との厳しい対立構図は政権末期までつきまといましたが、それを一転させたのが今回の弾劾訴追です。

トランプは、同じ大統領弾劾でも、クリントン亭主のような死ぬほど恥ずかしい下半身沙汰で訴追されたのではなく、BLMのようなポリコレ異端審問官に広場に引きずり出されて処刑されようとしたのです。

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クリントン大統領が犯した世紀の不倫スキャンダルの決め手とは?

同じ大統領弾劾訴追であっても、クリントンが守ったのは自分の下半身の不始末でしたが、トランプの場合、米国の民主主義とよき伝統をこれ以上破壊してよいのかという叫びそのものでした。
だから国民の半分がトランプに一票を投じ、1月6日にも全米から馳せ参じたのです。

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だから上院総務のマコーネルに象徴されるように、内心はトランプくたばれと思っていても、党内力学はそれを許さないほどトランプ防衛で固まってしまっていました。
つまり、民主-共和の別なく、その上に君臨する民衆的パワー、泥臭くも踏まれても簡単にはくたばらない勢力、これがトランプが作り出したかった構図です。

このように考えてくると、誰が24年の大統領候補になるにしても、トランプの支持なしに共和党は決められないし、一方民主党もトランプと戦える候補を選ばねばならないこととなったと私は考えますが、いかがでしょうか。

さて、山路さんが触れておられたNYTのフェークニュースの一件ですが、及川幸久氏のユーチューブにアップされています。
2021.02.16 国騒然!NYタイムズの大誤報とトランプ弾劾裁判の真相 ...
今のところ彼のチャンネルしか乗っていないようですので、簡単に紹介しておきます。
ちなみに、初めから期待していませんが、わが国のメディアは完全にスルーしています。

1月8日、ニューヨークタイムスは議事堂に乱入したトランプ支持者がブライアン・シクニック氏という警官を消火器で殴り殺したというニュースを流し、それにUSAツデイなど他のメディアもすべて追随しました。

これは衝撃的ニュースとして、動かぬトランプ派の暴力の象徴として扱われ、ワニババァは民主主義の英雄として議会名誉勲章をやれと騒ぎ、ジジは連邦議会の警官の柩に詣で、ホワイトハウス声明で顕彰したほどです。
つまりこの警官死亡事件は、弾劾裁判でトランプを吊るしたい者にとっての象徴的事件として祭り上げられたのです。

しかし、この時すでにシクニック氏の遺族は政治利用はしてほしくないとFOXニュースで語っていたのですが、モロに政治利用されたことはいうまでもありません。

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NHK

「アメリカの連邦議会にトランプ前大統領の支持者らが乱入した事件の対応にあたり死亡した警察官の遺灰が連邦議会議事堂に安置され、バイデン大統領がその死を悼みました。
1月、トランプ前大統領の支持者らが連邦議会議事堂に乱入した事件では、警察官のブライアン・シクニック氏が、支持者らを排除する対応にあたっていた際にけがをして、その翌日に死亡しました。(略)
連邦議会への乱入事件をめぐっては、支持者を扇動したとして弾劾訴追された、トランプ前大統領の弾劾裁判の審理が来週、始まることになっています」(NHK2月3日)

ここでNHKはまるで決定した真実のようにトランプ派暴徒によって殺されたと報じていますが、この時点では警察とFBIが捜査している段階で、最終報告は出ていませんでした。
ところが捜査してみると、シクニック氏に頭部外傷はなく、彼は事件翌日に兄に向けて体調はいい、というメールを送っていつもどおりの勤務をしていたのですが、その後、気の毒にも発作を起こして亡くなったことかわかりました。
この時点で捜査打ち切りで、警察は殺人事件として立件せずに、乱入事件とは無関係と断定しました。
これが事実です。

是れに気がついたのが、NYTに並ぶ反トランプの司令塔であるCNNだったのは皮肉です。
2月3日、CNNはシクニック氏の死亡事件は殺害された証拠はないという記事を配信しました。
CNNによれば、この事件を捜査した警察は議会突入事件とは無関係だと判断し、犯人探しをすることもしなかったし、死因は発作であったというのです。
ここでニューヨークタイムスは、まともな裏付け取材することなく、初めからトランプ支持派の仕業という予見に基づいて警官殴打死亡事件として報じてしまった、つまり誤報だった疑いが濃厚に出たわけです。

なるほど事件直後、警察関係が揉み合いとの関係をほのめかすことを言っていたのは確かですが、それは検視の結果を踏まえない速報にすぎず、NYTの記事のように警察が消火器による頭部殴打が原因だと断定したわけでもなんでもなかったのです。
それを想像たくましくトランプ支持派の暴行による殺人として書き立ててしまい、トランプを火刑にしている火に燃料を投下したのですから、罪が深い。

しかもこれにすべてのオールドメディアが相乗りし、トランプの敵失だと大喜びしたワニばばぁやジジまでもが、トランプ有罪の動かぬ証拠にしてしまいました。
実際、この弾劾裁判の検事役は、警官死亡事件をNYT 記事を根拠にしてトランプ支持派に殺されたと決めつけて、トランプの有罪を主張しました。
しかし翌日に弾劾投票を控えた前日の2月12日になって、NYTはあの記事は全部誤報でしたという訂正記事を出すはめになります。
しかしこの誤報に追随したメディアはこれを揃ってスルーします。
かくして捏造記事はいまや「真実」の仮面をかぶってひとり歩きを始め、NYTが訂正記事を出した翌日の13日にはジジはホワイトハウスの声明に同じことをくりかえす始末です。
どうやらジジとそのスタッフは、民主党機関紙のNYTをちゃんと読まなかったようです。

メディアの誤報や捏造記事の一人歩き、慰安婦や南京事件で私達日本人もうんざりするほど経験してきたことですが、ここでもまた再演されてしまったのです。

 

 

2021年2月16日 (火)

トランプがマッドマンだということをお忘れか

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バイデンが大統領になってから1カ月たちますが、前職のほうが露出度が高いというのはどうしたことでしょうか。
今米国にはワクチン接種プログラムや緊急経済対策、いえいえ内閣や主要官庁要職すら議会の承認を得られていないのですから、ほんとうはこんな弾劾訴追などにうち興じている暇などなかったはずです。

そもそも史上最大の得票数といいながら、さっぱり大衆的人気がないジジです。
本来なら800万票というさん然たる得票数を背景にして、もう少し華があってもよさそうです。
演説もスピーチライターがワシントンポストの社説をコピーしたようなワシントンDC節。
おまけにご愛嬌で、たまに言葉を忘れたりする老人性健忘症。
息子ときたら愚息を通り越してもはや犯罪者。

そしてなにより半分の国民がトランプに入れ、今もその7割以上が不正選挙があったと信じているのですから、お気の毒としか言いようがありません。
しかし、民主党はあえて弾劾訴追をダラダラとやってしまいました。
バイデンに強い指導力が少しでもあれば、やらせるべきではありませんでした。

これではバイデンが就任時に言っていた「分裂した米国を再び団結させる」などというキレイゴトを自分で否定しているに等しいわけで、オレの敵トランプはまだ死にきっていないゾ、死ぬまでやれ、とバイデンが命じたに等しいわけです。
結果はご承知のように57対43。
熱望した共和党からの造反は、下院ではいつものリズ・チェイニー以下の面々しか発生せず、かえって共和党は反トランプを抑え込んで彼を中心にした体制が固まってしまいました。

つまり、バイデンのいっている「米国を再び統一させる」という意味は、せいぜいがトランプという「凶悪な民主主義の敵」を前にして、与党内部を固めるためだけのものだったのです。
言い換えれば、トランプが必要だったのは民主党のほうだったのです。

「それでは今回の裁判を行う理由は何か。その答えが政治的なものなのは明白だ。ドナルド・トランプ氏に対する嫌悪は、民主党を最も結束させる単一原理だ。トランプ氏が選出されて以降、民主党は政治的にうまくいっており、できるだけ長い間、引き立て役としてトランプ氏をとどめておきたいと望んでいる」(ウォールストリートジャーナル2月9日『【社説】トランプ氏弾劾裁判を民主党が望む理由 』)
https://jp.wsj.com/articles/SB11260852109866014048004587272783292417576

さて、ここで改めて思い出していただきたいのですが、 トランプは希代の勝負師です。
勝負師にもいろいろありますが、トランプは綿密な戦略を練って進むタイプではなく、その場その場の一種のひらめきのようなものを大事にします。
ポーカーをやっている相手には、彼がなにをするか見当がつかず、常に後手後手に回ったあげく気がつくと負けていて、えっオレ負けたの、ということになります。
なんせこの男、時にはテーブルをちゃぶ台返しするようなまねすらするんですからたまらない(笑)。
ですから、ドナルド・トランプという男は、マッドマンセオリで戦う勝負師で、正統派の外交官あがりには嫌われます。

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CNN

彼の真骨頂が出たのは、北朝鮮との直接交渉でした。
綿密に戦略を練ってブレーンの言うことに耳を傾けるようなタイプだと、まず会談自体をやりません。
マティスなら絶対にやるな、同盟国の圧力でやれと言ったでしょうし、ワシントンの政界で悪魔とまで言われたボルトンもやるのはいいが、やる以上徹底的に核を放棄させるまでやれ、と言ったことでしょう。

しかし、トランプはそのどちらも取らなかったわけです。
直接会談でスイートな関係を正恩と作ると見せかけて薬籠中のものとして核開発を凍結させて、3回目を餌にして身動き出来ないようにしてしまいました。
協定書が発行されて文言に書いてないので、トランプは派手な会談をしただけたと勘違いしている者がおおいのですが、実態として北は核開発を続ければ、3回目はない以上、現状凍結のまま指をくわえているしかなかったのです。
まぁ、バイデンになったら凍結解除してしまうかもしれませんがね。

いずれにしても、トランプには初めから「完全かつ不可逆的・検証可能な非核化」なんてする気はなかったのです。
北から核を取り上げるのは土台無理ですから、使わせないようにすればいいだけじゃん、そうトランプは思ったのです。
つまり核開発の事実上の凍結です。文言にないだけのことです。
そして結果として、いつのまにか北朝鮮のような硬直した国が彼の術中にはまって身動きがとれなくなってしまっていましたが、これでいいのです。
これがマッドマン・トランプの典型的な手法です。

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CNN

今回の11月以降のトランプの動きは、合理的に解釈しようとするからわからなくなります。
これも紛うことないマッドマンセオリの発動なのです。
私は11月大統領選の開票から一貫して、いかに不正があろうと制度は制度、毒酒をあおって潔く結果に従えと言ってきました。
しかし、トランプはそれから制度のチャブ台返しをやり始めます。
勝利が盗まれたとして、敗北を認めずに1月6日の選挙人投票まで粘り続ます。

これで米国民の目は、存在感ゼロのジジにではなく、トランプに釘付けされます。
メディアも、大嫌いなトランプめ、くたばりやがれこの悪鬼め、とばかりに叩きまくります。
日本では、今までトランプ支持のような顔をしていた自称保守論客が、いつのまにかインボー論だぁなどと叫び始めて民主党支持者になってしまったのには驚きました。
しかしなんのことはない、非難しようが支持しようが、全部トランプという勝負師を中心に回っていたわけです。

たぶんトランプも勝てば僥倖ていどと判断していたはずですが、粘るに粘り続け、最後には支持大衆をワシントンに集めて大衆のパワーを使って圧力をかけることまでしました。
この時に起きた一部支持者の議事堂突入で、いったんは弾劾訴追にまでされますが、ここからが勝負師の真骨頂。
この弾劾訴追は元から無理筋な政治ショーなのはわかり切っていましたが、トランプはこの窮地をチャンスに変えてしまいます。

弾劾訴追されるまでトランプは敗北宣言をだしていなかったために、一部の支持者はトランプこそ真の大統領であるという主張をしていましたが、この時に弁護団が使ったロジックが「民間人を議会は裁けない」というものでした。
トランプは、さぁ民間人となったオレを裁けるのかと言っているわけで、実は隠し味で敗北を認めちゃっているわけです。
つまりいつか言わねばならなかった敗北宣言をこのような形で出したともいえるわけで、実にズルイというか巧みというか、彼らしいというか。
しかも言われた国民の大部分が、これを変形の敗北宣言だとは受けとらないというおまけつきですから、支持者はいまだ負けたと思っておらず、闘争は継続中なのです。

そしてなによりこの弾劾訴追の戦いは共和党全体の浮沈がかかっています。
共和党支持層の大部分がトランプ大好きですから、ここで寝返ったら中間選挙で落とされます。
だから泣いても笑ってもトランプを支えるしかなかったのです。
ここで皮肉にも、敗北した王が野に下ったとはいえ捲土重来のためには彼にしたがうしかない、という空気が生まれてしまいました。
元々トランプが嫌いな共和党議員は両手両足の指の数ほどいたはずですが、リズ・チェイニーなど地元で責任追及される始末です。

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トランプ氏、2022年選挙へ協力 米共和下院トップと会談 - SankeiBiz

トランプが愛国党という実体のない党を使ってフェイントをかけてみせると、あわてて共和党下院総務がトランプの王宮に駆けつける始末です。
そこで王からニコニコと、安心しろ、今後も共和党には協力するからと握手されれば、ほっと胸をなで下ろすという具合。役者が違うのです。

「トランプ氏を支える政治団体は声明で「トランプ氏の人気が今ほど高まったことはない」と共和党内での影響力を誇示した。マッカーシー氏側は「長きにわたり無視されてきた国民の懸念に耳を傾けること」の重要性を強調。共和党が選挙で勝つには、依然としてトランプ氏の岩盤支持層を頼りにする必要性をにじませた」(産経1月29日)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210129/mcb2101290915015-n1.htm

少なくとも中間選挙まで、共和党は間違ってもトランプを党外に出すことは、虎を野に放つことだと判っていますから、王としての処遇は変えないでしょう。

このように、大統領選の延長戦と弾劾訴追を経て、共和党という経年劣化してしまった存在が、トランプを中心に団結してしまったのです。
結局、民主党はトランプのマッドマンセオリにまんまと乗ってしまったのです。
そして民主党左派は頼りないジジではなくカマラを推すようになり、いっそう分裂が進んだといわけです。
なにもかもトランプの思惑どおりかもしれません。

2021年2月15日 (月)

トランプ訴追失敗

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いやー、土曜日夜の地震は3.11以来最大級の揺れでした。
私はあの年、半年間大小の余震を経験したために、そうそう簡単にうわっと思わないんですが、先日はひさしぶりまた来たぁと思っいました。
当地で震度5弱でした。もう少し強ければ、屋根の積雪で家屋の圧壊という地方も出たかもしれません。
被害に合われた地方の方に、心からお見舞い申し上げます。

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wedge.ismedia.jp

さて、米国のトランプ弾劾訴追が無罪となりました。
57対43。共和党から裏切りが7名出たのはご愛嬌です。
この連中は、リズ・チェイニーのようなRINO(Republican In Name Only)と呼ばれる隠れ民主党員です。
彼らが民主に寝返っても、弾劾可決に必要な3分の2にははるかに届きません。
とうぜんの結果ですが、文句なし無罪です。

元々筋が悪い訴追で、民間人となった前大統領を議会が裁こうとした建て付け自体が違憲です。
一般人となった人を議会が裁けるはずがないので、民主党は合衆国憲法修正第14条第3項を使っています。

●合衆国憲法修正第14条第3項
アメリカ合衆国憲法を支持するために、議会の議員、アメリカ合衆国の役員、州議会の議員、州の執行若しくは司法官として宣誓した者が、アメリカ合衆国に対する反乱若しくは反乱に従事し、又はアメリカ合衆国の敵に援助若しくは慰安を与えたとき、この者は議会の上院議員若しくは下院議員、大統領及び副大統領の選挙人、又はアメリカ合衆国若しくは州の下で、文民的若しくは軍事的な役職に就くことはできない。但し、上下院の3分の2の投票によって、この措置は取り除くことができる。

つまりトランプが「アメリカ合衆国に対する反乱」と「合衆国の敵に援助を与えた」から訴追するのだという筋立てです。
議事堂に突入した者らは「合衆国の敵」であって、トランプはそれを「援助もしくは慰安」を与えたのだ、ということのようです。

次に「裁判」と称していますが、裁判という以上裁判官がいるわけですが、では裁判官は誰なんでしょう?
素朴にヘンだと思いませんか、検事役の議員がおり、いちおう弁護人も弁護団がついていて、裁判官だけが欠落しているわけです。
裁判官がいないということに、この訴追の虚構ぶりが現れています。
いや、こういうケースでも裁判長役をすべき資格を持つ者として連邦最高裁長官と上院議長が指名されていることはいるのです。

●合衆国憲法第3条6項
上院はすべての弾劾を裁判する唯一の権利を持つ。その目的で着席するとき、上院議員は宣誓または確約をする。米国大統領が裁判を受けるとき、最高裁判所長官が裁判長となる。出席議員の3分の2の同意がなければ何人も有罪判決を受けることはない。

ところが優先権があるはずの連邦最高裁長官がまず逃げました。
失笑することには、あのテキサス州違憲訴訟を蹴った連邦最高裁長官殿が、オレはやりたくないとさっさと降りちゃったんですから話になりません。
きっとこの訴追自体に多くの司法関係者から違憲の疑いを指摘されていたから、後からなにか言われたくなかったのでしょうね。

ならば第2候補の上院プレジデント(議長)のカマラ・ハリスがやるしかないわけですが、これも関わりたくないと拒否。
おいおい、ですが、裁判官なしでやると異端審問ぶりがバレてしまいますから、しかたなく上院与党の最も長い任期を努めた者ということで退任間近の民主党老議員に泣きついてやっとかっこうがついたというお粗末でした。

なぜこんなにみんながみんな裁判長役に腰が引けていたかと言えば、民主党側に勝てる見込みがなかったからです。
3分の2の67票で訴追成立ですから、民主党はなにがなんでも共和党から16人の裏切り者を引っ張りこまないと勝てないわけです。
ところが訴追自体に違憲の疑いありという共和党の申し立てに、寝返った共和議員が6名きりしかいなかったのです。
いつもの「名前だけ共和党員」の皆さんです。
予想を裏切って共和党は団結できたのです。
あのトランプが大嫌いなマコーネル院内総務さえ渋々違憲に一票いれたほどです。
これで訴追票決をとる前から大勢が決まってしまいました。10人以上足りません。

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中日

だから民主党が勝てないことが分かり切っている訴追票決に、さすがにカマラ女史も出たくなかったのです。
出たくないのは、選挙人結果を開票することを義務づけられていたペンスも一緒ですから、困ったお人です。
今後、カマラはなにかあると逃げるタイプだとバレてしまいました。ジジ、気をつけてね。
それはさておき、民主党は負けること覚悟で、最大限トランプの悪を言い募り、それを御用達メディアにじゃんじゃん報じさせるためだけにやったわけです。
ほんとうはコロナ対策だとか、内閣の任命承認だとか、やることは山積しているのに、こんな政治ショーを悠長にやっている時間的余裕はなかったんですがね。

ここまでこだわった理由を、反トランプの発信装置であるCNNに説明してもらいましょう。

「現職ではない当局者を弾劾した先例はあり、「遅い弾劾(late impeachment)」と呼ばれている。弾劾裁判の主なペナルティーは罷免だが、その他にも上院議員がトランプ氏が将来公職に就くことを禁じるための採決ができるようになる効果がある――トランプ氏が2024年の大統領選への出馬の可能性を排除していないことを思い出してほしい。6ケタの年金の受け取りなど大統領退職後の特権を失う可能性もある」(CNN1月14日)

ここでCNNが「遅い弾劾」はあると言っていますが、それは100年前のこと。

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AFP

本音は民主党が、将来トランプが公職につくことを禁じる票決を取りたかったのです。
二度と金輪際大統領はおろか村長にもなれないわけで、いかに彼らがトランプのカリスマ性を恐れていたのかわかります。
あまりにも意図が見え見えの政治的復讐劇にすぎません。

ところが時事はこんな報道をしています。

【ワシントン時事】米上院は13日、連邦議会襲撃をめぐる弾劾裁判で、共和党のトランプ前大統領に無罪を言い渡した。上院議員100人による投票は、有罪57票に対し無罪43票。共和党(50人)から7人が有罪票を投じたが、有罪評決に必要な3分の2には届かなかった。弾劾裁判は開始からわずか5日で終了し、米民主主義の歴史に汚点を残した事件での大統領の責任をめぐる議論は深まらなかった」(時事2月14日)

なにが「議論が深まらなかった」だっていうの。
時事は書いていませんが、票決直前の最終口頭弁論で共和党側は、ワシントンDC市長、下院議長のワニばばぁ、カマラの召還を求めていましたが、民主党が「議論が深まる」のをおそれて採決にもちこんだのです。
なぜでしょうか。
3人とも全員がゴリゴリの民主党左派ですが、ここにワシントンDC市長といった小者がひとり混ざっていることに注目下さい。
この市長は民主党極左のブラックライブマターの熱狂的支援者で、なんとホワイトハウス前の通りをブラックライブマター通りに改名してしまったほどイっちゃた人です(笑)。

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ホワイトハウス前の道路」の名称が「Black Lives Matter Plaza」に

彼らはなぜ当日ワシントンDC市警の議事堂警備がガラ空きだったのか、よく知っているはずです。
在米ジャーナリストの安倍かすみ氏は、こう感想を書いていました。

「しかし調べを進めていくと、驚くべき映像が出てきた。目を疑ってしまうのだが、群衆のためにバリケードを取り去ったり建物内で侵入者らとセルフィーを撮る警官や警備員の姿などもソーシャルメディアでシェアされているのだ。
これらの映像を見る限り、特に混乱状態ではない。また前述のオクス容疑者もそうだが、一旦入り込んだ侵入者らはリラックスして、自由に建物内を行き来している」(『トランプ支持者は、厳重なハズの議事堂を「なぜこれほど簡単に」襲撃できたのか? ── 現地で深まる謎』1月8日)

ここで安倍かすみ氏が書いているように、初めに侵入を意図したグループが飛び込み、後ろの多くは押し出されるようにして侵入してしまったようです。
初めからトランプ演説と関係なく、あらかじめ侵入する計画を立てて、準備していたグループが煽動したのです。

そのうえ不思議なことにいつもは最も厳しい警備がなされているはずの議事堂は簡単に侵入を許し、突入した者は警官と妙にまったりした雰囲気に浸っているのがSNS動画で判明しています。
下の写真では捕まったQシャノンも中央左に写っていますし、他の連中ものんきなもんで記念撮影なんぞしていました。
議会警察とみられる制服の者も、逮捕するでもなくなにやら話をしています。

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東京

警官が自らバリケードを開けて道を作っていたという証言もあるほどです。
もっぱら発砲して防いでいたのは要人警護のシークレットサービスだけで、死亡者もこの時出ています。

憶測の域を出ないとお断りしますが、共和党が証人申請したワシントンDC市長、下院議長などは職責上、この突入があらかじめあることを知っていた可能性が濃厚です。
というのは不穏分子を事前にあぶり出し、諸関係に警報を発すべきFBI が、6日以前に突入計画がある旨の警報をあらかじめ出していたことが判っているからです。

「[ワシントン 15日 ロイター] - 米司法省のマイケル・ホロウィッツ監察官は15日、連邦捜査局(FBI)や他の警察当局がトランプ大統領の支持者による連邦議会議事堂乱入にどのように備え、対応したかについて、同省の内部監視部門が調査を行うと発表した。
調査には国防省や国土安全保障省、内務省も関与するという。
これとは別に、米国防総省の監察官も、議会騒乱に絡む同省の責任や役割について精査する方針を示した。
ロイターを含む複数のメディアの報道によると、バージニア州のFBI事務所は議会乱入事件が起きる前日、過激派がワシントンに向かい、暴力や「戦争」を仕掛ける用意を整えていると警告する文書を回覧していた

にもかかわらず6日当日、FBIの警告に耳を貸さず、普段は厳しい議事堂警備をガラ空きにし、突入するに任せていたのはなぜでしょうか。
いまや一部では、彼らはトランプを罪に落とすために、議事堂侵入をやらせたという「陰謀論」すらもささやかれている始末です。
ぜひワシントンDC市長と下院議長閣下におかれましては、それを否定していただくためにも、FBIからの警告を知っていたかどうかについての明確な答弁をお聞かせ願いたいものです。

とまれ、これでトランプ弾劾はひとまず終了しました。
まことに不毛そのものの弾劾騒ぎでしたが、唯一の功徳はこれによって共和党は再びトランプを中心に結束し得ることを内外に示したことでしょうか。

 

 

2021年2月14日 (日)

日曜写真館 水に浮かぶシルエットの林

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心が静かになる時間です。

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冬の間だけ、水上にシルエットの林が現れます。

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自然はそこにあるだけで十全に美しいと思います。

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温かくなると葉が繁ってだいぶ趣が変わります。この冬の時期が一番好きです。

 

2021年2月13日 (土)

慰霊五輪かジェノサイド五輪か

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活発なご意見をありがとうございます。
お気づきかと思いますが、今回私は自覚して「暴論」を言っています。
暴論というのは、飛躍を前提にします。現実に生じるであろういくつもの難点をあえて目に入れず、意識的に短絡させています。

今回の場合、あえて私が1年延期論で捨象したのは大きく3点です。
ひとつは、延期された場合の後始末。
もうひとつは、国内政治。
三つ目は、来年の北京冬季五輪です。

後始末は考え出すとキリがないというか、そこで議論が止まってしまいます。
だからいったん切り放しておかないと思考に幅を持たす事ができません。

二つ目は、国内政局ですが、好むと好まざるとにかかわらず、今後政局は小池女史を中心にしたものに変化していくでしょう。
野党がホワイトアクションなどという児戯で遊んでいる間に、小池氏はかつての政局の女帝に復帰することを狙っています。

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でなければ、4者会談に開催都市でありながら欠席するというふざけきったまねができるはずがありません。
あれは森を切る刃で、いままで後ろ楯となることで安閑としていた二階すら切る心づもりがなくてはできないことです。

この人が持ち込みたい構図は、年寄りの権力者に立ち向かうジャンヌ・ダルクですから。
おそらくこの秋には、凛々しい女帝として国政に再挑戦し、弱体化した菅政権を揺るがすつもりでしょう。
菅さん、若いほうがいい、女性がいいなんてくだらない介入するんじゃないよ。女帝の思うつぼではありませんか。
女帝の思惑はコロナ制圧、五輪大幅縮小を引っさげて秋の総選挙に一方の局としてうって出ることかもしれません。

しかし、そのような些事はどうでもよいのです。
現代史上空前の規模にまで膨れ上がったこの感染症の前には、国内政局などほとんど無視できる変数にすぎません。

そこで三つ目です。
1年延期論の最大のネックは、いうまでもなく北京五輪とバッティグすることです。それをどう考えるかです。
常識的には、延期不可能の最大の理由だと思います。
しかしほんとうにそうであってよいのでしょうか?逆ではないのでしょうか。

東京五輪は新型コロナの感染のために延期を迫られました。
原因は新型コロナウィルスです。
この新型コロナウィルスのために、世界で1億743万人が感染し隔離され、入院を迫られ、あるいは集中治療室に送られて、実に280万人もの人が生命を失いました。

「世界59カ国・地域のデータに基づくウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析によると、280万人以上が命を落としている。この数字は、今回のパンデミックによる世界的な打撃を最も包括的に示すものだ。これら諸国・地域の昨年の死者総数は、平年の水準を12%以上上回っている」((ウォールストリートジャーナル2021年1月 15日)
https://jp.wsj.com/articles/SB11721070613559173311104587222350435711924

ここで私たちは大きな問いを突きつけられています。
この原因を不問に付してよいのかどうか。WHOの「現地調査団」なるおらゃらけた者どもが言うように、中国にはなんの責任もなかったのか、どうか。
このWHO発表の評価については、次の機会に譲りますが、このような仕組まれた幕引きを許してよいのかどうか。

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にこやかに握手をする調査団のピーター・ベン・エンバレクと中国CDCの梁万年

[武漢(中国) 9日 ロイター] - 新型コロナウイルスの起源を探るため中国湖北省武漢市を訪問している世界保健機関(WHO)調査団を率いるピーター・ベン・エンバレク氏は9日、武漢ウイルス研究所からウイルスが漏えいした可能性は極めて低いとし、これ以上の検証は必要ないとの見解を示した」(ロイター2月9日)

WHOは武漢P4ラボからのウィルス漏洩を否定し、感染源はわからなかったとしています。
つまりなにもわからなかったのが成果だというわけで、これでWHOは晴れて中国に免罪符を発行したことになります。
なんという馬鹿げた茶番。仕組まれた結末。
このような世界に巨大な災厄をもたらし、それを闇の中に葬ろうとしている者たちに、「平和の祭典」をする資格があるでしょうか。

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BBC

そして米国政府が公式に認めたように、今、ウィグルで起きている事態はただの人権侵害ではなく、少数民族抹殺・ジェノサイドだという事実です。
この認識はバイデン政権にも受け継がれています。

「アメリカのブリンケン国務長官は就任後初めて記者会見し、中国と気候変動問題などで協力を模索する考えを示す一方、ウイグル族らに対する中国政府の行為についていわゆる「ジェノサイド」にあたるとの認識を改めて表明し、人権問題には厳しく対応する姿勢を強調しました」(1月28日 NHK)

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An anti-extradition bill protester is detained by riot police during skirmishes between the police and protesters outside Mong Kok police station, in Hong Kong, China September 2, 2019. (Tyrone Siu/December 31, 2019)
ピューウリッツァ賞受賞作品 ロイター

そして香港に対する悪魔の所業。
もはや中国政府が立つべきは聖火台ではなく、被告席なのです。

一方、わが国のオリンピックの性格は、一般的な世界最大の競技大会ではなく、生命を失った人たちの深い悲しみと、それを癒す慰霊と鎮魂でなくてはなりません。
そしてオリンピックを、この地獄から人類が立ち上がろうとする復興の象徴とすることで、初めてこの時期に開催する意味が伝わるのです。
そうでなくては、この足かけ2年に及ぼうとする人類の苦しみがまったく無意味になります。

であるなら、中途半端に今年やり、来年には予定消化的に冬季五輪をすること自体を根本から問い直したほうがよいのではないでしょうか。
私たち人類は、慰霊五輪とジェノサイド五輪のどちらを選ぶのでしょうか。

最後に念のために書き添えておきますが、私は1年延長案が日のめをみることはないと思っています。
現実に五輪財政を握る国際スポンサーであるグローバル企業が、中国と全面対立するこの案を選ぶはずがないからです。
したがってIOCが呑むことはありえません。
唯一可能性があるとすれば、米国とEUが揃ってボイコットに乗り出す場合だけですが、トランプならいざ知らず今のバイデンにそのパワーがあるとはおもえません。

そして残念ですが、いまだウィグルに対してジェノサイド認定ができないようなわが国においておや、です。
ただ、東京五輪と北京五輪をリンクさせて考えていただきたいと思った次第です。

 

 




 

2021年2月12日 (金)

東京オリンピックは悪疫退散・慰霊祈念大会です

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川淵氏がなるようです。まぁ、妥当な選択です。
私は川淵氏がJリーグを発足させた30年前からよく知っています。
なんせ当時私、できたばかりの鹿島の熱狂的ファンでしたから。
川淵氏が帝王の如く振る舞うあの読売の渡邉恒雄を抑え込んでホームタウン制を定着させ、そのいわば初号モデルがわが鹿島でした。
鹿島はすでにホームタウンのチームがあってJに来たのではなく、逆に川淵氏の理念型に合わせて新たにチームを作ったのです。
今のJの興隆は川淵氏でなければありえなかったでしょうし、仮にあってもプロ野球の焼き直しだったでしょうね。

そして発足翌年の正月、ファーストウィナーとなった鹿島と読売の対決は、川淵理念の鹿島と渡邉利権のベルディの頂上対決と化していました。
大いに見物でしたが、結局負けたんですがね。
そしてあれから30年経過し、どちらが正しかったのか今のベルディの凋落ぶりを見るとあまりにも鮮明で、胸が痛みます。

とまれ、私は川淵氏の脂の乗りきった時期を知っています。
Jから離れた川淵氏は、必ずしも万全に素晴らしい指導者だとは思いません。
JFAのキャプテンとしては違和感のほうが強かったのも事実です。
それにもう彼も80代。
あいかわらず若々しいが、かつてのような強引なまでの突破力を期待するほうが無理でしょう。

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ただ、今のスポーツ界には彼くらいしかこの非常事態に対応できる人材がいないのも確かで、彼をはずしてしまうとあとは政界から安倍氏クラスを引っ張ってくるしかないのも事実です。
しかし誰もやりたくないでしょうがね、こんな時期に。
新会長はまずは組織委員会を掌握し、我が身大事のIOCに新政権樹立を認めさせ、本来は主催者なのに知ったことかとばかりにスタンドプレーに走りたがる小池女史を味方につけ、そのうえでポリコレ魔女狩り方向に飛び火させて喜んでいる白服連中もおさめねばなりません。
それにしてもなんなんだろうね、あの人ら。
米国のポリコレに追随するのがニューファッションだと考えている軽薄さがぞっとします。
今、そんなことに浮かれていられる時期かと思いますが、ああ、これだけでも充分に大変。

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そういった統治基盤を作ったうえで、どっちにころんでも非難される開催問題に対応せねばならないわけです。
中止すれば国民は更に意気消沈、延期すればその対策が山積み、強行開催すれば・・・、ああ、どの道もひどい難所です。

無責任な世界は、東京大会なんぞ成功してあたりまえ、どこかでクラスターのひとつでも出れば袋叩きにしてやろうと手ぐすね引いて待っています。
IOCは今回の森氏へのドンデン返しをみればよーくその体質がわかりました。
自分の利権だけが大事なただの日和見貴族どもです。
彼らIOC貴族は大事なのは自分だけ。開催国が困ろうとどうしようと、知ったことではないのです。

感染対策を万全にしようとすれば競技が盛り上がらず、オリンピックらしい華やかさを求めればクラスターが無数に発生してチュドーンです。
最悪、東京大会が第4波の発生源となりかねません。
現実的には、できる限りの感染対策をしながら分散実施したり、小規模化したりしてお茶を濁すのでしょうが、そのような大会なら今やる意味があるのかどうか、そこから考えたほうがいいと思うのです。
もちろん私はやるなと言っているわけでもなければ、まして中止しろなどとはまったく思っていませんが、やるならスタンダードサイズのオリンピックをしたいじゃないですか。

そもそも、今、率直に言えば国民のオリンピックに対する熱意のボルテージは最低レベルです。
もう足かけ2年も続いた流行り病で、生活基盤すら失っている国民も多い。
閉塞感が街中に溢れ、行き場のないやり切れなさが国全体を覆っています。

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だからこそ、このうつむき加減の国民のため、いや世界の人々のために、オリンピックは大いに華やかに元気よく開催せねばならないのです。
ちょうどかつて流行り病で大勢の人が死んだ江戸で、隅田川の花火が人々の慰霊と悪病退散を祈って開かれたように。
この東京オリンピックは悪疫退散、慰霊祈念大会なんですから。

 

2021年2月11日 (木)

森さん、東京五輪を大事に思うならスッパリ辞めなさい

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森さんがどうしたのこうしたのと喧しいことです。
はっきり言って、あの人の失言癖は黒光りするほど年季が入っています。
同じ失言癖でも、麻生さんのは愛嬌がありますから救いがありますが、森さんのはいわずもがなのことをリップサービスして自爆するパターンです。
前世紀の代議士センセイが後援会なんかで言いそうな類の発言です。
あるいは居酒屋でオダあげている親父レベルでしょうか。

それをこともあろうにオリンピックがらみの場所で、組織委員会の責任者があんなことを言ってしまったらアウトに決まっています。
バカですか。首相の頃から鮫の脳みそだと思っていましたが、歳くってメダカの脳みそになってしまったようです。

まぁ、すっぱり辞めるんですな。それしか選択肢はありません。
別に政権が救済する必要はありません。
そもそも政府には罷免権がないことですし、あの発言には守る価値がいっさいないからです。

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森会長発言 IOC声明「完全に不適切」 | オリンピック・パラリンピック

女性の発言が長いって、あんたねぇ、グダグダしゃべる男共を私は1ダースくらい知っています。
それもだいたいが管理職のエライさんだ。
リモートで30分で終わる会議を2時間、3時間にするのは、おおむね無能な男の上司です。
後段でJOCの女性理事を持ち上げて、当人はバランスをとっているつもりでしょうが、全文を通しで読んでも本音が前段にあることは間違いありません。
発言の切り取りだという人もいますが、森さんの本音が前段にあったのは間違いないことです。
もっぱら批判しているのがいつものジェンダーや野党メディアで、しかも政局にからめていますから、むきなる方も多いようですが、守るとかえっておかしくなるケースだってあるのですよ。

というのは、東京五輪の今後のことを考えると、森さんには今直ちに辞めてもらったほうがいいのです。
もはや東京五輪の焦点は「東京五輪をいかに開くか」ではなく、「いかに損害を最小にして次善の策に切り換えるか」に移っているからです。
皆さんが言いにくいようですから私からハッキリ言ってしまえば、今年のオリンピックの開催は不可能です。
去年に照準を合わせ、そして今年に再度コンセントレーションをもってこようとしているアスリートにはほんとうにお気の毒ですが、開催できる客観状況がありません。

日本の第3波自体は気温が温暖化し、ワクチン接種が始まれば状況は好転するかもしれませんが、それはわが国だけのこと。
ファイザーやアストラゼネカなどの安全性が確認されている先進国のワクチンを接種ができるのは一部の国だけのことです。

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  中国が開発中のワクチン3種初公開…年内実用化へ、「欧米に先行 ...

今もそして今後も、残念ながら接種されるワクチンは圧倒的に中国製ワクチンとなるでしょう。
第一、効かない。

「シノバックのワクチンにいち早く飛び付いたインドネシアは、同国で行われた試験での有効性は65%だったと明らかにした。ただ、この試験の参加人数はわずか1620人で、有意なデータを集めるには少な過ぎる」(ブルームバーク2021年1月21日)

ゆるゆるの有効性判定でも65%。実際は半分を切るでしょうから、まじないの御札でもおでこに貼っておくほうが気が利いています。
それにあの中国自身が「戦時製造」だと自分で言っているほどですから、必要な治験や臨床試験がスルーされています。
たぶん薬害が大量に発生するでしょうが、そんなことを気にするようなヤワな国じゃありません。
欲しいからくれといったから供与したのだ、文句あっか、でおしまいです。
ひょっとして供与国との間で、なんらかの不都合があっても提訴しないなんて協定のひとつも結んでいるかもしれません。

そのうえウィルス変異を更に拡大する可能性すらあります。

「フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は4日、中国製の新型コロナウイルスワクチンについて、情報が一切共有されていないため有効性は不明だと警告し、効果がなければ新たな変異さえ助長しかねないと指摘した」(2月5日 AFP)

こんな効くか効かないか判らず、安全性が確認されておらず、新たな変異を助長するようなバッチモンを数億の人々がありがたがって打とうとしている、それが今の世界の現実です。

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新型コロナ 中国「ワクチン外交」着々 欧米製買えぬ途上国に無償提供

このような諸国から大量の選手や観光客を迎えるというのは、東京大会を巨大クラスターにしてしまうことです。
東京大会のスタジアムが、フィールドが、あるいは選手村が感染ハブになる危険があります。
そして受け入れた観光客に街中に出るな、なんて言えますか。
そもそもこんなコロナパニックの真っ最中に観光客なんて来るのでしょうか。

どうしてもやりたいなら、代表選手はもこちらが指示した手順を守って事前検査と隔離を行い、選手村に帰っても個室でメシを食ってもらうしかしりません。
とうぜんスタジアムには観客は入れない。
というか、初めから観客は受け入れない方が無難です。

こんなオリンピックにやる意味が果たしてあるのでしょうか?
こんなボロボロで、しかも危険なオリンピックを開いてみても、日本国民は、いや世界の人々はいっそう気が滅入るばかりではないでしょうか。

ですから、もうスッパリと開催を諦めて、次善の策に切り換えるべき決断の時なのです。
森さんに残された仕事があるとすれば、それは東京大会を次の次のそのまた次にされてしまうことを断固拒否して、24年開催にズレ込むことをIOCと交渉することでした。
もちろん東京五輪はやります。しかしそれはもはや今年ではないことは万人の目に明らかな以上、国民に納得いくように説明し、理解を得る努力をする。
そして次善の策を提示して、それに立ち向かうというコンセンサスをとることだったはずです。

それを知ってか知らずか、こんな大事な時期に居酒屋の酔っぱらい親父みたいな発言をしているような人物に総指揮は任せられません。
組織委員会は、IOCからなにがなんでも次の24年大会の開催権をもぎとらねばならないのです。
順番にズレていく方式をIOCに飲ませることができないなら、日本の負けなのです。

だから関が原の島津軍団ではありませんが、「前に向かって撤退」せねばなりません。
ただただ負けましたではなく、的確なダメコン(ダメージコントロール)が必要です。
希望の芽を残した形で中止しないと、そうでなくてもコロナで疲弊の極にある国民は立ち直れなくなります。

やるべきことは山積しています。
今年の大会中止による巨額の損害賠償を拒否せねばなりません。
各種競技団体に針の山を登るような説明を何度もせねばなりません。
準備をとっくに完了している施設、グッズの処置をどうするのかも考えねばなりません。
スポンサー企業にも納得させて今後の協力を取り付けねばなりません。
こういう撤退戦は開催権を得ることよりはるかに難しいことなのです。
こんな難事の指揮を森さんが執れますか?

こんな状況で、くだらない失言をして足を引っ張るような者は去って下さい。
ついでに失言ジジの首をとって政権に打撃を与えたいなんて考えているやつもね。

 

2021年2月10日 (水)

日米統合体制ができるまでの期間が一番危ない時期だ意見

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今さらですが、尖閣が緊迫しています。
私の憶測にすぎませんが、中国が取りに来るなら、バイデンが大統領のうちに取りにくると思っています。
それはこちら側の体制が整っていないからです。

最大の懸念材料はやはりバイデン政権です。
私はできるだけバイデンの外交方針を、中国に籠絡されているから、といった目であらかじめ見ないようにしています。
それを言い出すとハンター疑惑まで遡ってキリがないというか、こちらの目が曇るからです。
ですからバイデンの東アジア政策を突き放してみるように心がけようと思っています。

そもそも尖閣という存在は、日米安保の自動介入条項に拘束されていませんから、オバマがなに言った、トランプがこう言ったというのはただのその時の政権の言質にすぎません。
バイデンになっても似たようなことを言っているようですが、軍事的実体がありませんから外交的リップサービスの可能性があります。
かつてオバマはTPP妥結の手土産で、尖閣が日米安保5条の適用範囲だと言いましたが、それで特に米国の東アジアシフトが変更されたわけでもありませんでした。

オバマが掲げたアジア・ピボット(アジア回帰)はまったく口先だけのものにすぎず、実際には中国になんの手だても打ってこなかったために、この男が政権にいる間に南シナ海の中国の内海化が完成してしまいました。
このように一回軍事的に実効支配してしまうと、そうそう簡単に原状回復ができなくなります。
なんせ国際仲介裁判所の裁定も、こんなもんただの紙クズだと言ってしまえる国ですからね。
いうまでもなく、南シナ海の軍事要塞化の責任はオバマにあります。
まぁだからといってオバマの番頭だったからという理由でバイデンもそうだと今は決めつけません。具体論にたどり着く前に、これで論証終了になってしまうからです。

メディアはよくこの間の米中緊張で米民主党の認識が変わったと言っていますが、私は疑り深いものでその証拠を見せていただかないと信用できません。
「証拠」とはただの言葉ではなく、直接に尖閣に対しての軍事的抑止装置を展開するという「担保」を出せという意味です。
やりようはいくつかあります。

去年8月、米有力シンクタンク「ナショナル・ビュロー・オブ・アジアン・リサーチ」(NBR・全米アジア研究所)は、日米統合機動展開部隊の設立を提言しました。
※NBR報告書"Navigating Contested Waters: U.S.-Japan Alliance Coordination in the East China Sea"(「紛争水域航行・東シナ海における日米同盟共同活動」)
これはジョナソン・グリーナート退役海軍大将(元米第7艦隊司令官・米海軍作戦部長)という米海軍の中枢にいた人物と武居智久元海上幕僚長らがまとめたものです。
このレポートの内容はこうです。

①尖閣水域で中国は準軍事活動を続けていて領土化を企んでいる。
②中国は東シナ海にA2/AD(接近阻・領域拒否)の軍事的バリケードを作ろうとしている。
③中国の最終目的は、巨大海軍国建設による世界の支配である。
④このまま状況が推移すれば軍事バランスが崩れて、日中は尖閣で軍事衝突に至るだろう。
⑤その場合、日本の勝機は先になればなるほど薄い。
⑥崩れかかっている尖閣諸島水域の軍事バランスを早急に正常に戻さねばならない。

そしてここで出てくるのが、「日米統合機動展開艦隊」常設構想です。
なにか有事が起きたら米国が海自に協力してもいいよ、という従来のスタンスとは本質的に別物だと思って下さい。
こういうあいまいなスタンスがこわいのは、尖閣有事に際して「高度の政治的判断」が介入してしまう余地を残しているからです。

たとえば、クリントンの駐日大使だったウォルター・モンデールは尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」とまで言い切り、と国務省のジャパンハンドラーだったマイケルグリーンも「同盟国間であっても領土紛争には不介入・中立の立場をとる」なんてタコ言っている始末でした。
その時の政権の「高度な政治的判断」とやらで、米国は個別領土紛争に介入できませんからよろしく、なんて言われたら目も当てられません。

これを大きく変えたのがトランプ時代で、トランプは明瞭に尖閣を中国の南シナ海侵略の外縁として捉えました。
中国は尖閣を奪取することを明言しており、このまま手をこまねいていれば南シナ海に続いて東シナ海も「中国の内海」と化すことが明白だからです。
そこでトランプが手を打ったのが、台湾の再認識です。
台湾は米国が「一つの中国」政策に縛られていたために実質的に放置されたままでしたが、台湾を国際社会に再復帰させると同時に国防力を飛躍的に強化させる方針に切り換えました。

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海上自衛隊護衛艦てるづき 空母ロナルド・レーガンらと日米豪3か国共同

そしてこのトランプの東シナ海を中国に渡さないという決意の流れの中で出てきたのが、クアッドとこの日米統合機動展開軍の常設です。
民主党政権時ならいかに民間シンクタンクとはいえ日米統合機動展開軍という発想すら出る余地がなかったはずです。
仮に日米統合機動展開軍が編成されれば、常設艦隊としてスタンバイしているわけてすから、これほど大きな担保はありません。

そしてもうひとつ、トランプ時代に出た画期的な米軍シフトが、海兵隊「戦力2030」です。

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※関連記事 『海兵隊の新方針 沖縄に対艦ミサイル部隊を展開させる』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-1a5e66.html

「戦力2030」を要約すると

①戦車部隊の全廃・砲兵部隊・オスプレイ・水陸両用車両・F35Bの削減
②1万2000人削減
③対艦ミサイル部隊(HIMARS) を7隊から21隊に増強し、「海兵沿岸連隊」(MLR)を沖縄島しょう部に配備

このプランは、今の在沖海兵隊の完全な再編を意味します。
今の在沖米海兵隊は、平時はキャンプシュワブに駐留し、有事においては先遣隊として普天間のオスプレイを使っていち早く橋頭堡を築く、という即応任務が与えられていました。
このプランはこれを再編して、対艦ミサイル部隊にさせてしまおうというのですから、私も驚きました。
ちなみにそうなったら、辺野古は自衛隊の水陸機動団が独占することになってしまいますね。
ひょっとして、地元紙が言う悪の権化の「日米密約」って、このことだったのね(笑)。
米軍の代わりに自衛隊が、それも離島を守るための部隊が入る、このどこに文句があるのかお聞きしたいもんです。
それともまた「日本軍帰れ」なんて叫びますか(←ホントにホントに昔やった)。

対艦ミサイル部隊を作るなんて、まんま今の宮古の自衛隊展開構想と一緒です。
おい米軍、日本の尖閣防衛プランをパクったなと言いたくなります。

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奄美、宮古…南西地域で陸自駐屯地が続々と拡充、中国脅威に対抗 - 産経

別にパクってくれてもいいのです。いや、むしろ大いにパクって下さい。
米軍が自衛隊の尖閣・離島防衛プランをバクればパクるほど、日米が一体化して東シナ海を防衛する統合体制が固まっていくともいえるわけてす。
すでに米国は、トランプ時代に東アジアの軍事的最前線が朝鮮半島になどには存在せず、実は台湾と尖閣にあることを認識しました。
そこで台湾の国防力強化に「乗り」、さらに対艦ミサイルの槍衾で宮古海峡を封鎖し、侵攻を食い止めようという自衛隊のプランに「乗った」のです。
「乗った」という意味では、先述した日米統合機動展開艦隊も、自衛隊の尖閣・離島防衛のための陸海空統合緊急展開部隊構想と結びついていますから、自衛隊のマスタープランに米軍のほうが進んで統合されたといってもいいかもしれません。
もっと大枠のクアッド構想もそうですが、むしろ日本は米国を「従属」させている側面すらあるのです。

とまれこのような大きなシフトチェンジが、既に米軍の中に生まれています。
これがただの外交リップサービスではなく、しっかりとした「担保」というやつです。
馬鹿なメディアは、バイデンが尖閣は日米安保の範囲内だと言った言わないで騒いでいましたが、なにを今さら。
そんなことは言ってもらわなくてもけっこうです。
だって、そんなこと決まりきったことだからで、今求められているのは、しっかりとした日米共同で作る軍事的「壁」だからです。

この日米シフトの再編さえ完成すれば、中国が東シナ海に手を出すことは事実上不可能に追い込まれます。
中国は、このような日米の統合シフトが完成するまで一定期間(最低でも5年から10年)かかると考えています。
ならば日米の腰が定まらない今のうちに、一気に取りに来るかもしれません。
そのための海警法改訂で、海警に軍事的権限を与えて名実共に準軍隊化するような危険を挑発を、今この時期に仕掛けてくるはずがありません。

その意味で、いまから4年間が最も危険な時期ですが、逆にいえば日本がイニシャチブを握って乗り切るしかない時期でもあるということです。

 

 

 

2021年2月 9日 (火)

いつものデニー知事のご都合主義

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デニー知事が宮古島で発生したクラスターに自衛隊の看護師を要請し、自衛隊は災害派遣として既に活動を開始しています。

「新型コロナウイルスの感染拡大で医療体制がひっ迫している沖縄県宮古島市で、医療支援のため現地入りした自衛隊の看護官らが31日からの活動に向け事前の訓練を行いました。
人口およそ5万5000人の沖縄県宮古島市では、29日までの4日間で110人を超える新型コロナウイルスの感染者が新たに確認され、医療体制がひっ迫しています。
沖縄県からの災害派遣要請を受けて現地に入った陸上自衛隊の看護官らは30日、宮古島に駐屯する部隊と合わせて40人の災害派遣隊に編成されました(NHK2021年1月20日)

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沖縄 宮古島市 感染拡大で医療体制ひっ迫 支援の自衛隊が訓練 | 新型

ため息が出ますが、実はこれで医療支援要請は二度目なのです。
半年に2回の自衛隊への支援要請というわけです。

「全国知事会は18日、玉城デニー知事からの要請を踏まえ鳥取県など5県から看護師10人を派遣すると発表した。陸上自衛隊第15旅団(那覇駐屯地)も同日、玉城知事の災害派遣要請を受け、看護官ら約20人を県内の医療機関などに派遣した」(琉新2020年8月19日)

これだけ自衛隊やよその自治体に安易に支援を求める自治体は、全国でもそう多くはないでしょう。
そもそも夏に一回医療崩壊の危機を経験したのですから、第3波がくる前になぜ手を打たなかったのでしょうか。
時間はたっぷりあったはずで、その間にコロナ専用病棟や、それに見合った医療体制の拡充などいくらでも手当てする余裕があったはずです。

予算不足だったならば、自治体や地元医師会が発議して厚労省に掛けあえばよいのです。
おそらく今の状況なら問題なく通るはずです。
沖縄県は今まで、国のほうからこれだけの振興予算がつきましたからいかがいたしましょうか、といった上げ膳下げ膳を当然だとおもっていました。
その甘ったれた体質が染みついているため、いざという時に医療崩壊を簡単に起こしてしまい、そして簡単に国にすがる。
国も沖縄県にはことのほか甘いので、直ちに自衛隊を派遣してしまい、こんなことではたぶんまたどこかで同じようなことを起こすでしょう。
こういうことを、どこまでも続く負のスパイラル街道と呼びます。

ですから、首里城が失火で燃えたといえば、原因の究明など放り出しておっとり刀で東京の当時官房長官だった菅氏に泣きつくという醜態をさらします。
常識的には、失火の疑いが強かったのですから、まずは失火原因を突き止め、県の管理ですから責任の所在を明確にし、その上で再建するならするで、県独自の計画をまとめて、その上で予算が不足するならその時に国に支援を要請すればいいのです。
それをとるものもとりあえず、官邸に泣きついてしまう、こういう情けない精神を私たちはなんと呼んだらいいのでしょう。

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政府、首里城再建へ補正計上も=沖縄知事、菅官房長官らに要請

※関連記事
デニー氏の仕事は「心の喪失感」を訴えることではない.

こんなていたらくでは、なにも反省していない沖縄県は、また医療崩壊を引き起し、またまた自衛隊の災害派遣を要請することでしょう。
こういう国に対して沖縄だけは特別だという意識は、かつて90年代に当時政権中枢にいた野中幹事長や額賀防衛庁長官が作ってしまったものです。
彼らは沖縄から産婦人科の医師が不足しているという電話一本で、すぐに自衛隊の医官を派遣する、という対応をしてきました。
こういう話がいまでも「美談」として残っているのです。
同じことを別の県が要請したら同じ対応をしたかどうか。
というか、そもそも他の自治体はそんなことを言い出しませんが。

その一方で、デニー知事は自衛隊に災害派遣要請をした同時期に、自衛隊の配備反対と言い出しています。
片方で自衛隊にすがりつき、片方でその配備に反対する。コッチは来てくれ、コッチは来るな、どちらかにしてくださいな(苦笑)。

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全く聞いていない。認められない」沖縄のデニー知事、辺野古の自衛隊 .

「沖縄県の玉城デニー知事は25日午前、米軍普天間飛行場の代替施設として建設中の名護市辺野古の新基地を、陸上自衛隊も常駐することで極秘合意していたことに関し、「まったく聞いていない。認められない」と反発した。
我々が求めているのは実質的な負担軽減だ」と述べ、陸自と海兵隊の共同使用になれば基地負担軽減につながらないとの認識を示した。「自衛隊と海兵隊が基地を共同使用するということが前提となっているのでは、県民感情からしても認められない」と述べた」 (沖タイ2021年1月25日)

辺野古ができるのはそうとうに先(たぶん10年はかかります)ですから、じっくりと自衛隊配備計画を聞いてから話あえばよいことで、とまれ自衛隊と聞いたらとりあえずハンタイしてみないと納まらないのですから困った人です。
第一、沖タイがいうように辺野古は「新基地」じゃなくて、普天間基地の「代替」です。
都市部の基地を撤去して、規模を縮小して僻地に代替を作るのですから、まちがいなく負担軽減です。
これについてはもう言い尽くしましたが、いつまでそういう陳腐な政治スローガンにしがみついているのか、つきあいきれません。
※関連記事
『わかりやすい移設問題その1  こんがらがったら、初めから解きほぐしてみよう』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-fac1-1.html

反基地運動団体が言うぶんには、一種の仕事ですからご自由にどうぞ。
しかし同じことを自治体首長が言ったらシャレになりません。
それは今後辺野古への自衛隊配備について、国と自治体との紛争事案にするという意思表示とみなされるからです。
つまり、デニー知事は水陸機動団に沖縄に来るな、と言っているのです。
ではこの水陸機動団が何を目的に作られたのか、知っていて言っているのですね。

水陸機動団は、沖縄離島防衛のためだけに特化した部隊です。
具体的には、現在常に侵攻の危機にさらされ続けている宮古島、石垣島などを防衛するためだけに作られています。
しかし、今は長崎県に駐屯しているために、あまりに遠い。
防衛する対象地域のそばに近接して配備することが望ましいのは、説明する必要もありません。
だから、本島に防衛拠点を置くことを構想しているわけで、このどこが問題なのか、教えてほしいくらいです。
それとも宮古、石垣は守らなくもかまわない、とでもデニー知事はいうのでしょうか。

たぶんデニー氏はなにひとつまともに考えちゃいません。
大型クラスターが出た医療崩壊だと言われればおたついて国にすがり、辺野古に自衛隊が来ると言われれば反射的にハンタイを口走る。
首里城再建や新型コロナの医療派遣でさんざん国に借りを作っておきながら、シャラっと自衛隊ハンタイと言える、たいした心臓です。
なにひとつ定見もなく、かといって我が道を行く根性もない、ただ右往左往するだけの人、それがデニー知事という人です。
思えば、デニー氏になってから沖縄記事がガクっと減ったのは、この男の骨なしくらげのようなフニャフニャ感がたまらないからです。

 

 

2021年2月 8日 (月)

仕掛けられていたトランプ包囲網

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TIME誌が大統領選について、バイデン陣営の内幕を暴露した記事を載せているので紹介しておきます。
この邦訳はないため、及川幸久BREAKINGによっています。
 https://www.youtube.com/watch?v=bGMYi4ww6hY)

さてこのTIME記事は『2020年大統領選を救った影の選挙運動の隠れた歴史』というもので、大統領選の中で起きたさまざまな不可解な出来事が、偶然に起きたものではなく、水面下でリベラル左翼が連合を組みそれぞれが州議会、大企業、ビッグテック、さらには米国商工会議所まで動かしていたことがわかります。

内幕暴露といっても、この記事を書いたモーリー・ボールはリベラル系女性ライターで、彼女は米国の民主主義を愛するリベラルたちが、「フェアな選挙をするために手を組んだ素晴らしい成果だ」と称賛しているのですが、取材力がなまじあったためにコクのある一本に仕上がっているようです。
ちなみにTIMEは、トランプ政権のロシア疑惑を執拗に叩いていたメディアで、一貫してBLM支持、反トランプ陣営に立つリベラルメディアです。
この大統領選直前には、表紙のTIMEの題字をVOTE(投票しろ)に変更してしまい、絵柄までBLMという傾いた姿勢が話題を呼びました。

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米TIME誌の題字が「VOTE」に 1923年以来初 - アメリカ大統領選挙202

さて、このTIMEは今回の大統領選の内幕をリベラル左翼陣営自らが暴露した内容になっています。
この記事は、反トランプ包囲網が作られる過程が判って興味深いのですが、キモはこの部分です。

「彼らは州に投票制度と法律を変えさせた」

ここで言う「彼ら」とはリベラル団体の連合体のことで、後述しますが、トランプ再選を阻むために作られた反トランプ連合のことです。
彼らは州政府に働きかけて投票制度に郵便投票を認める制度と法律の変更運動をおこなって成果をあげたととTIMEは書いています。
この部分こそ、ジュリアーニやテキサス州が一貫して糾弾していた合衆国憲法に違反する箇所で、このことによって悪名高い郵便投票が爆発的に増えたわけです。

郵便投票は今回実に半分にも及び、バイデンの得票約8000万票のうち4000万近くが郵便投票によって得られたことになります。
実際に投票日に投票所に赴いて、本人確認を経て正規な投票をした有権者は、全体のわずか4分の1にすぎませんでした。

●今回の投票形態
・郵便投票・・・約半数
・当日の直接投票・・・4分の1
・期日前投票・・・4分の1

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SBI

はい、ここで今回の選挙の最も大きな争点となった郵便投票がやはり出てきましたね。
郵便投票に対しての米国民の意識はおおむね否定的でした。
当日自分で投票箱を入れるまで信用できるか、オレの大事な一票が盗まれてたまるもんか、という危惧があったからです。

今思えば、それは大変に正しい恐れでした。
そもそも郵便・期日前投票は民主党に有利というのが定説でした。

「投票自体は明かされていないが、投票者の登録政党比率を見ると、全国ベースで民主党が45%に対して共和党が37%。登録政党通りに投票したと仮定するとバイデンが8ポイントのリードしていることになる。これは世論調査の支持率格差の平均値と一致している。ところが激戦州の個別状況を見ると世論調査とは違う展開で、トランプが顕著に差を縮めている」(SBI ジョセフ・クラフト特別レポート2010年10月27日)

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AFP

そりゃそうでしょう。得票の半数を占めながら、そもそもまともな本人確認ひとつしない、トランプ票は捨てられる、バイデン票は締め切り後も受け付ける:死んだ人が投票している、投票者が有権者数より多いなどといった不正報告が絶えなかったのはご承知のとおりです。
もちろんそれは選挙につきものの勘違いがありえるので個別に検証が必要ですが、元来が民主党に有利で、しかも不正が容易な郵便投票をメーンにしてしまったらなにが起きるか、誰が有利になるのかわかりきっていました。

ここで、この郵便投票をメーンにするのに一役買ったのが、ツイッターやフェースブックなどのビックテックだったとTIMEは述べています。
リベラル左翼連合は、ビックテックのCEOを直接説得して、軒並み反トランプの立場に協力させたと書かれています。
たとえば彼らは、フェースブックCEOのザッカーバーグのディナーパーティに押しかけて、このように訴えたそうです。

「トランプ陣営が間違った情報をSNSで大量に流しているのでこれを検閲して欲しい」

そしてこの訴えにザッカーバークは進んで協力し、ツイッターなどのビックテック全体も追随したそうです。
ビックテックは郵便投票に対して猛然と抗議するトランプ陣営を虚偽の情報を拡散しているとして無条件に削除したばかりか、大量のトランプ支持者のアカウントを永久停止処分にしてしました。
ここに本来あってはならないSNSプラットフォームによる言論統制が始まったのです。

さらに言論検閲だけに止まらずザッカーバークは、自らの妻が主催するチャン・ザッカーバーク・イニシャチブを使ってこのリベラル左翼連合に3億ドルもの巨額寄付をしていると、この記事には書かれています。
このような潤沢な資金に支えられたリベラル左翼連合は、激戦州に重点的に圧力をかけ続け、とうとう州政府は選挙制度を議会に諮らずに一存で変更してしまいました。

実は2016年の大統領選において、ヒラリーはトランプに286万票もの得票差をつけていました。


「米インターネットメディア「クック・ポリティカル・リポート」によると、現在も開票が続くなか、両氏の得票数はクリントン氏が6420万票、トランプ氏は6220万票になった。
トランプ氏は選挙人の過半数を得て勝利している。各州の選挙人は12月19日、今月8日の一般投票の結果を踏まえて投票する。
一般投票の得票数が少ない方の候補が、大統領選に勝つのはこれで5回目」(BBC2016年11月24日)

「ネブラスカ州とメーン州を除く全ての州で、得票が最も多い候補に全ての選挙人が当てられる「勝者総取り」ルールになっているからだ。
そのため選挙戦では、選挙人が多く、両党とも勝利する可能性がある州が鍵となった。今回は、フロリダ(29人)、ノースカロライナ(15人)、オハイオ(18人)などの州でトランプ氏が勝利したことが、大統領への道をひらいた」(BUZZ FEED NEWS 2016年12月20日)

ここに民主党の大統領選の深刻な総括が誕生します。
すなわち、トランプは投票で負けても、重要州の投票人投票で勝つ、だから激戦州をなにがなんでも押えねばならない、いかなる手段を使っても。

これは単に民主党だけではなく、リベラル左翼全体の共通認識でした。
彼らは4年間かけてトランプ追放を準備します。
民主党本体がそれをすると利害が見え透くので、それをリベラル左翼連合に大衆運動としてやらせました。
一見見た目は「フェアな選挙をしようと」という爽やか系青年運動に見せかけていますが、実は事務局はしっかりリベラル左翼が握っている、というわけです。
日本では共産党系がよくやる「市民運動」ですが、いまでも騙される人が大勢います。

リベラル左翼連合は、たとえば州政府に働きかけるにあたって、巧妙にも自分の思想的本音を隠して「私たちは反トランプをしたいのではなく、フェアな選挙をしたいだけです」と超党派に訴えました。
ここに人のいい共和党員が参加していきます。たとえばあの州の知事と州務長官のようにです。
彼らはリベラル左翼の誘惑に負けて選挙制度を勝手に変更してしまい郵便選挙を激増させ、それを議会やトランプ自身からも批判されると、今度はいきなり迫害されたような気分になって、CNNに泣きつき、気がつけばまるっきり民主党員となってしまいました。

ところでトランプ包囲網はこれだけではありませんでした。
なんと全米商工会議所という大企業の団体とまでこのリベラル左翼団体は秘密協定を結んでいた、とTIMEは暴露しています。
ここは日本でいえば経団連のようなものですから、とうぜんトランプ支持だと思われていたのですが、理由はよくわかりませんが、ここも寝返ってしまったようです。

いうまでもなくオールドメディアはもともと反トランプでしたから、言論機関の9割9分、SNSの9割9分、激戦州の州政府、全米商工会議所、そして最後に出てくるのが、この司令部的役割を果たした全米労働総同盟(AFL-CIO)です。

これに比して、トランプに一票を投じた7000万を超える人々は砂の一粒のような存在でした。
組織にも団体にも頼らずに、その足で投票所に向かったような米国のグラスルーツの人々です。
ですから今回の大統領選は、この名もなき人々とエスタブリッシュメントとの戦いであったのかもしれません。

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AFL-CIO

このリベラル左翼連合を作ったAFL-CIOは、「米国労働総同盟-産業別組合会議」と言って1100万人の組合員を擁する米国最大の労働ナショナルセンターです。
日本の連合に相当する団体で、本部ビルがワシントンDCのホワイトハウスのすぐ裏にあるように議会へのロビー活動も活発におこなっています。
いうまでもなくここは有力な民主党支持団体で、このホドホルツァーも4年前のトランプが勝利した大統領選に椅子から転げ落ちんばかりに驚いたひとりであったようです。
この人物が4年がかりで作り上げた、リベラル左翼連合によるトランプ追放劇はかくしてひとまず勝利したのです。

TIMEは「トランプはある意味で正しかった」と述べています。
その意味はトランプが陰謀があったというのは、立場を変えれば事実だが、それは多くの人たちがフェアな選挙を実現するために努力し、手を握って戦って勝利した水面下の動きなのだ、それを陰謀だと言わば言え、ということのようです。

勝った勝ったと喜ぶのは勝手ですが、この大統領選で最も傷ついたのが、米国民主主義の根幹である選挙制度そのものだったということをお忘れになっているようです。

 

※改題しました。いつもすいません。

2021年2月 7日 (日)

日曜写真館 仏顔して牡丹見る

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牡丹を見つ立つてをり全き人  小川双々子


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夕闇の既に牡丹の中にあり   深見けん二

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ぼうたんの夢の途中に雨降りぬ   麻里伊

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 美しき人の帯せぬ牡丹かな  李 千

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日輪を送りて月の牡丹かな  渡辺水巴

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今日は季節はずれの牡丹をお題にしました。
この世の中、東も西も情けなくなることばかりで、気分が萎れますね。
こういう時には、牡丹の立ち姿のように気高く生きたいものです。
せめてすっくと立ち上がりましょう。

 

2021年2月 6日 (土)

議事堂乱入者たちの構成

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1月6日の議事堂乱入事件の希少な資料としてアップしておきます。
ソースは静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之氏の『米議事堂襲撃犯の大半は極右とは無関係』(『NEWSを疑え!』第931号(2021年2月4日号))です。
西氏が紹介しているのは、シカゴ大学のロバート・ペイプ教授ら20数名のシカゴ安全保障・脅威プロジェクトのもので、総合誌「ジ・アトランティック」2月号に掲載されています。

この間米国では、乱入者の中にQシャノンのようなカルト運動家や極右が見られたことから、トランプ自身もその支持者たちもまとめて暴力的白人至上主義であるかのような非難が広まっています。
また日本でも、安直にトランプとその支持者たちを暴力的白人至上主義として非難する者が絶えません。
メディアにかかるとトランプ支持者のイメージは、低学歴の白人肉体労働者ということになっているようです。
まぁこれがもしほんとうなら、米国民の半分がそうだということになっちゃいますがね。
「ネトウヨ」と一緒で、この貧困なイメージは左翼リベラルのエリート意識から来ているようです。

ペイブ教授らの議事堂占拠者についての調査は、そのイメージを否定しています。、
結論からいえば、逮捕された193名の多くは、中産階級が占めており、年齢構成は40代、居住地はバラバラで全米にひろがっていますが多くンプ
白人至上主義者や極右の関係者は20名ほどしかいませんでした。
つまり「普通のトランプ支持者」だったようで、奇しくもトランプ支持層のサンプル調査となっています。

●1月6日の議事堂乱入者たちの構成
● 職業・・・40%が中産階級。事業主、ホワイトカラー、医師、弁護士なども含む。無職は9%。
●平均年齢・・・40代、68%が35歳以上。
●地域・・・バイデン氏が勝った郡が過半数。トランプが票の60%以上を得た郡の住民は26%。
●過激派・白人至上主義団体に属するか支持する者は20名に止まる。

これを、2015年~20年でFBIに逮捕された108人の全米の極右暴力事件と比較してみます。

●極右暴力事件の逮捕者の構成
●職業・・・中産階級はすくなく、無職が25%を占めた。ホワイトカラーはいない。
●平均年齢・・・61%が35歳以下。
●過激派・・・、白人ナショナリズムを掲げる刑務所内ギャング、スキンヘッド集団28人、民兵組織、「オース・キーパーズ」「スリー・パーセンターズ」などの極右団体24人。

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つまり、1月6日の議事堂占拠で逮捕された者は、白人至上主義とは無関係な中産階級によって占められ、その多くはバイデンが勝利した地域からが多いことから、大統領選に対する抗議が目的だったとわかります。
また、よく誤解されているように、これらトランプ支持者には白人至上主義者は少なく、彼ら過激派を取り締まっても無意味なことがわかると教授は述べています。

「逮捕者は小さな極右団体の集まりではなく、トランプ支持層の縮図だった。ペイプ教授らは、「暴力を中核に据え、トランプ支持者が少ない地域からも力を引き出す大衆的政治運動が、米国政治の新勢力」となっていることが、議事堂襲撃によって明るみに出たと考察している。
それゆえ、若者の過激化への対策のように、雇用を促進したり、年を取って穏健化するのを待ったりする対策は、中流・中年の相手には通じないし、有名な極右団体を取り締まっても、無関係な人の政治的暴力を防止できないと指摘している」(西前掲)

ただし私は、ベイブ教授はトランプが率いる新たな大衆的政治運動を「暴力を中核に据えている」としていますが、私はそうは思いません。
左翼リベラル陣営が叫ぶ白人至上主義取り締まり強化がなんの効果ももたらさないのは間違いありませんが、これはこの事件は普通の米国人が、異常な空気の中で、群衆に押し出されるようにして侵入を冒してしまった事件です。
なによりトランプには占拠を指令した事実はないし、合同会議の異議申し立てを破壊してしまっては自らに不利になるだけのことです。

トランプを倒すことが社是のはずのCNNはこう報じています。

「(CNN) 米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー元長官は14日までに、トランプ大統領の支持者による連邦議会議事堂への乱入事件に触れ、自らがこれまで目にした証拠に基づけば組織的な謀議による犯行との見方を示した。CNNの取材に述べた。「少なくとも陰謀があったことに間違いはない」と主張した。
表現の自由などを尊重する憲法修正第1条の権利を行使する人々がロープ、はしごやハンマーを自然発生的に起きる出来事に持ち込むことはあり得ないと指摘。「計画された攻撃である」と断じた。
CNNはコミー氏の今回の発言前に、証拠が出始めたことを受け法執行機関当局者は議事堂の騒乱は統制がきかなくなった抗議行動と言うより、事前に謀議された行動だったとの見方に傾斜していると報道。
これらの証拠のうちFBIは、ホワイトハウス近くで開かれていたトランプ氏支持者の集会にいた一部の参加者が現場を早めに抜け出し、議事堂の攻撃に用いられた道具を準備した可能性があるとの情報を吟味していると伝えた」(CNN1月14日)
https://www.cnn.co.jp/usa/35165059.html

ここでCNNは、ワニババァが強引に進める大統領訴追の理由を、トランプの煽動が原因であるとしたことを否定してしまっています。
FBIは捜査の結果、「早めに集会を抜け出して、攻撃に用いられた道具」は事前に集められたもので、そこには事前計画が存在したという見解を持っています。
つまり、当日のトランプの演説はこの事件となんの関係もなく、ましてや首謀者などではまったくなかったのです。
にもかかわらず、民間人となったトランプを議会が裁こうというのですから、くだらない政治ショーです。

 

2021年2月 5日 (金)

ミャンマークーデターの影の主役・中国

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もう一つのミャンマー・クーデターの主役は中国です。
今回、このクーデターに対して、自由主義陣営はなにもできない状況でした。
米国のジジ政権はあの調子ですから、なにかできるような状態ではありませんし、他の自由主義諸国もコロナ禍で出来るのは口先介入ばかり。

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ミャンマー国軍、中国の支援で権力維持 クーデター黙認と判断か - 産経

今回なんの意志表示もしなかったのはタイと中国だけですが、タイは自分が常に民政と事軍事政権に行ったり来たりですからなにか言えるはずもありませんので、中国のみだと見てかまわないでしょう。
果たしてこれが偶然でしょうか?

私は当初から、軍部は中国と何らかの合意があって踏み切ったと考えていました。
それは軍部が唯一事前通告した国がどこかを見ればわかります。それが中国です。

「ミャンマー、狙い澄ましたクーデター 直前に中国と接触
ミャンマー国軍が中国に事前通告せず、クーデターを起こしたはずがないと多くの専門家はみる。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相はわずか数週間前の1月にミャンマーを訪問し、ミン・アウン・フライン氏、スー・チー氏とそれぞれ会談した。
関係者によると、ミン・アウン・フライン氏は20年の総選挙で不正行為があったと主張し、不満を漏らした。王氏はミャンマー国軍が「正しい」役割を果たし、国に積極的に貢献すべきだと応じた。軍が2国間関係のさらなる改善に貢献することを中国が期待しているとも語ったという」(日経2月3日)

ここで日経が書いている「狙いすました」という部分が重要です。
記事によれば、クーデターの数週間前に軍部のボスであるミン・アウン・フライン国軍司令官が訪中しています。
どうしてこんな時期に、ヤンゴンを開けて訪中したのか、特に想像を巡らす必要はありません。
朝鮮戦争前に中国を訪れた金日成がその可否を中国に尋ねたように、フラインは決行について最終調整をしに訪中したのだとしか考えられません。

王毅はこう言ったそうです。
「軍は積極的に国に貢献しろ。正しい役割を果たせ」
クーデターを決意したフラインにこう言えば、それはクーデターを実行しろ、という意味以外ありえません。
フラインの満足そうな顔が目に浮かびます。

もし王毅が反対なら、かつての金日成に中国指導部が言ったように落ち着いて考えろと言うでしょうし(後に毛沢東の一声で介入しますが)、そもそもこんなことを聞いたら外交ルートを使ってスーチー側に警告を発するはずです。
つまりこの瞬間、中国はスーチー派をバッサリ切って、改めて国軍側に立ったのです。

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王毅氏、ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍最高司令官と会見

中国は、国境を接する国の内政に常に干渉し続けてきました。
中国にとって近隣国とは、いわば旧ソ連の東欧圏のようなもので、自由主義圏との緩衝地帯であり続けてもらわねば安心して眠れない地域なのです。
ですから、中国は国境を接する国が米国の影響下に入ることをなによりも嫌いますし、可能なら傀儡政権を作ってしまおうと常に狙っています。

そう考えて周辺国をみれば、北朝鮮では張成沢を使って正恩を排除しようとして返り撃ちにあってしまいましたし、言うことを聞かないベトナムには軍事侵攻して逃げ帰ったことさえあります。
東アジアで唯一中華帝国にまつろわなかったのは、古代より日本だけでした。

このベトナム侵攻の時に中国が使った言葉が香ばしい。
なんと皇帝が臣下に使うような「膺懲」(ようちょう)ですから、アナクロの極み。現代の話とも思えません。
膺懲の意味は懲らしめること。しかも対等な関係ではなく、歴代の中国王朝が冊封国に使った表現です。
中国がどういう眼で周辺国を見ているか、判ろうというものです。
彼らの脳みその中身は古代から不変なようです。

常に中国は周辺国に三つのことを要求します。
ひとつめは、中国に服従を誓う従順な姿勢。
二つめは、国を安定させること。
三つめは、中国の国家戦略への絶対的服従です。

服従、安定、従属、なんか香港国安法で言っていることと似ているでしょう。
逆に嫌うのは、自由主義諸国と友好関係にあって「帝国主義の走狗」がうじゃうじゃいるような政府。
彼ら西側の遣い走り共は、いつ何どき米国に寝返るかわかったもんじゃないので、ほんとうはきれいさっぱり収容所送りにしてしまいたいと考えています。

ミャンマーの場合、それがスーチー陣営であったのはいうまでもありません。
姫がいくら習にゴマをすって見せて属国宣言をして見せても、あれだけ骨の髄まで欧米流に染まって、いまでも息子が英国人のような奴をオレが信用すると思うか、お前の与党なんかブルジョワ自由主義分子揃いではないか、というのが本音だったのでしょう。

だから中国は、安定しているといえばこれ以上安定している存在はない軍事独裁政権が大好きです。
中国流の一党独裁と同じ構造だからです。
思うだけではなく、常にそのように工作していますから、中国の周辺国がほとんど独裁政権で占められているのは、偶然ではないのです。

さてその中国は、南シナ海で東南アジア諸国だけではなく、EUまで含んだ自由主義陣営全部を敵に回してしまいました。
いまや英仏独までが、艦隊をアジアに送ろうとしています。
もはや南シナ海方面は完全な手詰まりですから、内陸に眼を向けるしかありません。

中国-ミャンマー間では、重要な経済プロジェクトが動き出しています。

「スーチー国家顧問兼外相が17年12月1~3日に中国を訪問した際、習近平国家主席との間で「中国・ミャンマー経済回廊」に合意した。
これは、中国の昆明(雲南省)と、ミャンマーのチャオピュー(ラカイン州)やヤンゴンを鉄道や高速道路で結ぶ構想だ。
中国側の高速道路は既に開通しているが、ミャンマー側は山岳地帯の難所が多いため、時間がかかっている。中国と同水準のインフラ実現には巨費が必要で、中国側からの借款で賄われるとみられる」
(2月4日『ミャンマーが欧米に圧迫されればされるほど我が方に近づいてくる――中国「内政不干渉」という沈黙のルール』 西岡省二)
https://news.yahoo.co.jp/byline/nishiokashoji/20210204-00220959/


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試される一帯一路「債務の罠」の克服――中国-ミャンマー経済回廊の建設

上の地図は上海からインド洋に抜ける「上瑞高速道路」ですが、起点は中国経済の心臓部である上海から発し、杭州、長沙を抜け、雲南からミャンマーに入って南下して分岐し、一方はヤンゴンに、そしてもう一方はチャオピュー港に達します。

「中国が重視するのは、ベンガル湾に面するこのチャオピューだ。
中国は中東などの原油をマラッカ海峡経由で輸入せざるを得なかった。だが、このチャオピューを経由できれば、仮にマラッカ海峡が海上封鎖されてもエネルギー供給は滞らないからだ。
加えて、チャオピューは▽中東産原油▽ラカイン州沖合のシュエ・ガス田から中国に向けた天然ガス――の両パイプラインの起点でもある。中国国有の複合企業、中国中信集団(CITIC)を中心とする企業連合が15年12月、チャオピューでの大規模港湾と工業団地の開発権を取得している」(西岡前掲)

中国はこのような海洋に抜ける道路を何本か建設しています。
一本が、ウィグルからヒマラヤ超えをしてパキスタンを抜けてインド洋に出るカラコルムハイウェイです。

かつてロシアが温かい海を求めて南下したことで世界は動乱に叩き込まれましたが、いまの中国も同じように海に抜けるルートを作り続けています。
中国大陸沿岸は浅瀬が続いているために大型船が停泊できる良港に乏しいうえに、いったん米国と戦争になれば数日で機雷封鎖されてしまうといわれています。
だからその場合にでもサバイバルできる陸路で海洋に抜けるルートが欲しいのです。

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そして今建設中なのが、このベンガル湾からインド洋に出られる上瑞ハイウェイなのです。
これが、一帯一路の一環であることはいうまでもありません。

「この経済回廊はもちろん、習主席肝いりの広域経済圏構想「一帯一路」の一部と位置づけられている。習主席は20年1月17~18日にミャンマーを訪問した際、スーチー氏との会談で、経済回廊を実効段階に移すことで一致。33に上る覚書を締結した」(西岡前掲)

中国にとって、自由主義陣営ががん首並べてコロナ禍に足をとられ、しかも米国がジジ政権で迷走する今こそ、ミャンマーに介入する絶好の機会でした。
今この時期しかないと決心した軍部と、今なら自由主義諸国の寝首をかけると考えた中国、この思惑が一致したのがこのクーデターだったようです。

 

2021年2月 4日 (木)

したたかなミャンマー国軍の投げた球とは

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ミャンマーのクーデターの話を続けます。
クーデターなんぞという今どき流行らないものをやらかして、国際社会を敵に回す動機がわかりませんでしたが、やっと少し腑に落ちてきました。

よく分からなかったのは、昨日も書きましたが、現況の憲法でも議席の4分の1は軍部に割り当てられていますし、内閣のポストも国防・国境警備などの主要ポストは軍部の指定席です。
これでなにが不満なのか、さっぱりわからなったのです。
クーデターなどというリスキーなことをやってしまったら、うまくいっても経済制裁、失敗すれば軍部の特権は取り上げられ、軍備削減なんてなりかねませんからね。

そのうえ南国の軍隊だけあって、ミャンマー国軍がクーデターをする兆候はかなり前からバレバレで、ヤンゴンの外国大使館筋はこぞってクーデターの兆候ありと政府に警告していたようです。
しかしスーチー女史はこの外交団の警告を聞いてもなにも手を打たなかったようで、おそらく軍部が最後のチャンスとして考えていたはずのクーデター前夜の会談も一蹴してしまったようです。

結果論ですが、スーチー姫(いい年をしていても心は姫君)、一国を背負う政治家としては稚拙ですぞ。
この時には全軍がクーデター準備を完了していたはずで、それをバックにして恫喝されたわけで、クーデターをされてしまえば一切合切すべて失うのはわかりきっていたはず、しかも姫君陣営は丸腰。
なのに、国際社会に救援を求めるでもなく、生硬に決裂させてしまいました。
やりはしないとなめていたか、ボケていたかです。

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ロイター

この前夜の会談で軍部が突きつけた要求は、実現不可能なものではなかったと思われます。
クーデター後に軍部はこのような声明をだしています。
なかなか渋い声明で、自分らは軍事政権に戻る気はない、選挙管理暫定政権を作っただけだと言っています。

「行政評議会設置の発表に先立ち、ミン・アウン・フライン氏は2日、任命済みの閣僚らとの初会合で「次の総選挙後に新政権が発足するまで、我々が国を導かなければならない」と発言した。優先課題として、新型コロナウイルス対策に加え、選挙実施に向けて国軍が不満を唱えた有権者リストの精査を挙げた」(日経2月3日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM02E8E0S1A200C2000000/

つまり軍事政権に戻すのではなく、不正な選挙を糺して、正当な選挙を実施し、そこで新たに選ばれた民主政権に引き継ぐということのようです。
憲法もいじりませんよ、新型コロナ対策はしっかりしますよということで、これがほんとうなら短期間でこの暫定政権は終了するということになります。
ただし、選挙結果が再び同じように国民民主連盟(NLD)の勝利と出た場合、どうするのでしょうかね。
お神籤じゃあるまいに、吉がでるまで引き続けるわけにもいかんでしょうが。

軍部は、国際社会が再び選挙監視団を送って投票を監視するなどの条件が満たされれば、国際社会が容認できるギリギリの線を狙ったようです。
というのは、スーチー女史のこの間のあまりにひどい中国傾斜にいささかうんざりしているからです。

「ロヒンギャ問題をめぐる軍への擁護で欧米諸国からの名声が地に落ちたスー・チー氏は、17日に行われた習主席の歓迎式典で、ミャンマーはこれからも常に中国の味方だとして、「言うまでもないが、隣国としては世界が終わるまで(中国に)足並みをそろえる以外にない」と述べた」
(AFP2020年1月18日)

「世界が終わるまで中国について行く」なんて言っちゃお終い。
しかも武漢ウィルスとも言われる新型コロナが世界を飲み込み、中国への怒りに満ちていた時期です。
よりによってこんな時になにを寝ぼけているのか、この姫君に国際社会はげんなりしたことでしょう。
西側各国が、ミャンマーをこんなベタベタのパンダハガーに任せられないという気持ちになりかかったのに、知らぬは当人ばかりなりです。
ロヒャンギ迫害事件で、スーチーの声望は地に落ちていますから、彼女を軍部から擁護しなければならない理由はあまりないのです。

ミャンマーは中国に隣接し海洋進出のルートを握る要衝にあります。
ですからミャンマーの国是は、中国に吸収されないように、かといって敵に回さないようにというどっちつかずの路線でした。
西側の制裁で国軍はすっかり中国軍スタイルになりましたが、それでもなんとかバランスを取りたいという気持ちは国軍には残っていたはずです。
この微妙なバランスの秤を一気に中国ベッタリに向けてしまったのが、他ならぬオックスフォード大学で学んだ「英国人」スーチー女史だったというのは皮肉なことです。

一方、米国のジジは口では非難しつつも、「クーデター」という表現を慎重に避けていました。
なぜでしょうか?
ミャンマー民主化は、ジジが番頭だったオバマ政権の唯一(ホントにホントにこれだけ)の得点ですから、非難しないとしまらない。

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スーチー女史はオバマの勲章ですから、ジジとしても無条件に守りたい。
かといってクーデター認定してしまうと、ワンセットで制裁しなければなりませんから、それも国際協調主義者のジジとしてはやりたくない。
うー、どうしようとジジにとっていきなりの難問でした。
ポンペオなら、即日制裁プロセスの検討にはいることを宣言しつつ、それを圧力にして軍部との妥協線を探るでしょうが、ジジにそんな高等なことができるかどうか。

ジジはやっと昨日になってクーデターと認定しましたが、それとて単独制裁ではなく、まずは国連安保理なんぞに持ち込んで無意味な討論を重ね、そしてとどのつまりはお約束の中露の拒否権に合って立ち消えとなることでしょう。
本気で制裁したいなら、国際緊急経済権限法(IEEPA)などを使って単独でするしかないのです。
しないならしないで、軍部とNLDを仲介し、軍を撤収させ監禁している者の解放を条件に、軍部の望んでいる再選挙を国際監視団の立ち会いの下に認めてやるなんてこともできないわけではないのです。

国際社会としてもスーチーなどにはミャンマーを任せて中国の属国をひとつ増やしたくはないでしょうし、かといって軍事政権にも戻したくはないはずです。
本音と建前が又割きしているのです。
それを軍部はしっかり読んでだしたのが、この声明です。
皆さん、クーデターなんてモノ騒がせなもんじゃありませんよ。ただの選挙管理暫定政権を作っただけで、混乱を抑えるために拘束しているだけのことです。
選挙をやり直せばすぐに民政に復帰しますから、というのがこの軍部のクセ球です。

国軍も中国派には違いありませんが、この土着的集団の面従腹背ぶりは年季が入っているのです。
そもそも国軍を作ったのは他ならぬ日本でしたが、負けそうになるとさっさと連合国に寝返ってしまいました。
こんなDNAを持つ国軍ですから、今の中国を巡って緊張する国際状況を塩辛く見ています。
中国に極度になびくスーチー路線は危険だし、かといって中国に楯突きたくもない。
ですからもう少しお目こぼしいただけるなら、中国への属国路線を凍結し、元のどっちつかずの国に戻しますから、と言いたいようです。

 

2021年2月 3日 (水)

ミャンマー謎のクーデター

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ミャンマーでクーデターが起きました。
昨年11月の選挙で大勝したアウンサン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)に対して軍と軍系の政党は不正選挙を叫んで選挙結果を否定し、軍がアウンサンスー・チーなどを拘束しています。

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クーデター直前に交渉決裂 ミャンマー国軍と与党

スー・チーの国籍がある英国BBCはこう報じています。


「ミャンマー国軍は1日、国家の権力を掌握したと宣言した。同国では1962年の軍事クーデター以降軍事政権が続き、10年前に民政移管の合意がなされた。
今回のクーデターは、2011年に民主的統治に移行するまでの約50年間、抑圧的な軍事政権に耐えてきたミャンマーの人々を恐怖で震え上がらせた。与党・国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー国家顧問(75)や複数の政治家が1日早朝に拘束されたことで、多くの人が過去に置き去りにしたいと思っていた日々を思い出した。
アウンサンスーチー氏と、かつて国内での活動を禁じられたNLDは、2015年に行われた25年間で最も自由で公正な選挙で勝利を収めてから5年間、ミャンマーを率いてきた。同政権は1日に2期目に入るはずだった。」(BBC2月2日)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55885314

クーデターの理由は、「不正選挙」があったからだということになっています。
軍部で権力を握るのはこの男、ミン・アウン・フライン国軍総司令官です。

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ミン・アウン・フライン国軍総司令官 日経

「ミャンマー国軍は1日、クーデターを実行した。国軍系テレビは1年間の「非常事態宣言」が発令されたと伝えた。国軍出身のミン・スエ副大統領が大統領代理として署名した。立法・行政・司法の全権はミン・アウン・フライン国軍総司令官が掌握。
与党、国民民主連盟(NLD)の広報担当は同日、国軍が事実上の政府トップで党首のアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相、ウィン・ミン大統領を拘束したと明かした。」(日経2月1日)

この選挙には日本も含む国際監視団が入っており、不正選挙の余地など存在しませんでした。
当然、軍部のただのいいがかりにすぎませんが、悪いことはみんなトランプ「陰謀論」にくっつけたいオールドメディアはこんな余計なことまで書いています。

「しかし、この不正疑惑を裏付ける証拠はほとんどない。
「アウンサンスーチー氏が総選挙で圧勝したのは明らかだ」と、人権団体「ヒューマンライツ・ウォッチ」(HRW)アジア支部のフィル・ロバートソン氏はBBCに述べた。「選挙で不正行為があったとの疑惑が出ている。どれも証拠のないものばかりで、いささかトランプ氏的な主張だ」
(BBC前掲)

ちょっとちょっと、なにが「トランプ的主張」だつうの。
米国の大統領選に国際監視団がいましたかね。いつトランプはクーデターをするなんていいましたかね。
無関係なことを印象だけで強引に接着しないでいただきたいものですが、認識派のJ氏やリベラル左翼は、ここぞばかりに無関係な事象を結びつけてミャンマークーデター=トランプ「陰謀論」叩きを口にしています。
こういうのを火事場泥棒的所業といいます。

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焦点:ミャンマーのクーデター、米政権は制裁へ複数の選択肢 ロイター

それはさておき、このクーデターに納得できないことが多いのは事実です。
なんといっても軍部の動機がよくわかりません。
軍部はミャンマー建国以来「国の父」として君臨しており、民主化後もその地位はかつてのような独裁権力こそないものの、今なお強力な権力を握っているからです。
また長年の軍事政権による鎖国から脱却したミャンマーには、外国から多くの資本が投下され、遅れていたがゆえの発展の伸びしろは大きく、「アジア最後のフロンティア」とまで言われていました。
日本からも多くの企業が参入していおり、ミャンマーはこの10数年の民主化による繁栄を一挙に失うことになります。

当然のことながら、自由主義諸国は厳しい制裁に入るでしょう。
あいまいなスタンスは、軍部ともスーチーともパイプを持つわが国くらいなもんです。

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バイデン氏が経済制裁を示唆 ミャンマークーデター- 名古屋テレビ

特に焦点となるのが米国です。
米国はバイデンがその気にさえなれば、制裁のためのオプションはいくらでもあります。
まず大統領がミャンマーに対して、大統領令として緊急事態宣言を出すことです。

「米財務省で制裁担当シニアアドバイザーを務めていたピーター・クチック氏は、ミャンマー情勢に関して国家非常事態を宣言する大統領令によりバイデン氏がミャンマーに対する新たな制裁プログラムを構築する可能性があるとみる」(ロイター2月1日)
https://jp.reuters.com/article/instant-article/idJPKBN2A20UA

クチックによると、これ自体は制裁ではありませんが、「バイデン政権のクーデターに対する見方や要望」を示すことができ、次の段階に進むことが可能となるそうです。
次の本格的制裁は、バイデンが国際緊急経済権限法(IEEPA)を用いることです。
ただしこれを使うと強力すぎて、進出している外国企業が窮地に立たされますので、慎重な対応となるかもしれません。

米国のミャンマー投資は遅れているため米国系企業には実質的な損失は少ないようですが、できるなら軍部高官に的を絞った制裁ていどにしてほしいというのが、大方の外国企業の願いでしょう。
つまり、建前では強力な制裁を口にしても、実質的な経済制裁は様子見になるかもしれません。
ミャンマー民主化は、オバマ時代の数少ない外交成果ですから、さぁジジどうしますか。

一方、制裁を受ける立場の軍部ですが、米国の経済制裁を受けても、肝心の軍部は痛くも痒くもありません。
その理由は二つあります。
ひとつは、軍部はミャンマー最大の利権集団で、傘下に多くの企業や商店を抱えています。

「ミャンマー軍は独自に経済活動を行なっており、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)など国軍系企業が存在する。このほかにも軍が経営する企業や工場、商店、ヘルスセンターなどが存在している。また、退役軍人団体など関連団体を通じて国内でのビジネスへの投資も行なっている。」(ウィキ)

ただしこれらはいずれも国内に止まっており、国際市場との取引は少ないと見られています。

「ミャンマーの軍高官は地元企業と強力なつながりを持つが、金融制裁によって影響を受ける可能性がある海外での権益をほとんど持っていない」(ロイター前掲)

ですから過去の国際社会の民主化要求を掲げた経済制裁期間には制裁で苦しんだのは一般国民だけで、軍部は屁とも思っていなかったフシがあります。
そして既に制裁はロヒャンギ迫害で受けているのです。
ミャンマー軍の少数民族弾圧の残虐さは有名ですが、このロヒャンギ迫害の時には、スーチーは軍部を擁護しています。
今回のクーデターではスーチーが拘束されると、ロヒャンギ難民に歓声がわいたそうです。

「軍高官の大半はグローバル・マグニツキー人権問責法の下で既に制裁を受けている。
トランプ前米大統領の下でグローバル女性問題担当特使を務め、政権のミャンマー政策に深く関与していたケリー・カリー氏によると、国務省高官はイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題でミャンマー軍の主要企業2社に対するマグニツキー法に基づく制裁を2018年に準備したが、実行されなかったという」(ロイター前掲)

ですから、クーデターを起こした軍部は、とうぜん経済制裁がくることを見越しているし、そんなもんは怖くはないと考えています。
たぶん軍部は現行の制度を変更しないかもしれません。
というのは、選挙に勝とうが負けようが、いまでも充分に軍部は国政に関与できる権限を保証されているからです。

ミャンマー議会(民族代表院及び人民代表院)の議員定数の4分の1は、ミャンマー軍司令官により指名される」(ウィキ前掲)

また内閣ポストも防衛、国境警備など3つを軍部に割り当てられています。
ここがこのクーデターのよく理解できない点です。
BBCも現実に軍部がこのクーデターでなにを得たいのかわからないという書きぶりです。


「専門家たちは、国軍がなぜ今このような行動に出たのか、確信がもてていないようだ。国軍が得られるものはほとんどないと思われるからだ。
「現行制度が国軍にとって非常に有益であることを忘れてはならない。国軍には完全な指揮権や、商業的利益における大規模な国際投資、戦争犯罪をめぐる民間人からの政治的保護がある」と、シンガポール国立大学アジア研究所の博士研究員、ジェラルド・マッカーシー氏はBBCに説明する」(BBC前掲)

つまり軍部は新たになにか得られるとすれば、そうとうに色褪せたといえ「民主化のシンボル」と見られているスーチーを軟禁できるていどのことで、かえって国民からの圧倒的批判を満身に浴びることでしょう。
そもそもスーチー率いる国民民主同盟の雪崩的勝利が気に食わなかったからていどで、国際社会を敵に回してしまうというのが解せません。

そしてもう一つの理由は、軍部の後ろ楯に中国があることです。
中国さえ支持してくれるなら、経済制裁は怖くないし、軍は今までどおりに軍事援助を受けることができます。

その中国は今回のクーデターを静観する構えです。

「中国外務省の汪文斌副報道局長は1日の記者会見で、ミャンマー国軍のクーデターに関し「ミャンマーの関係各方面は憲法と法の枠組みの下、相違点を適切に処理し、政治と社会の安定を守るよう望む」と述べた。中国はミャンマーが国際社会で孤立していた軍政時代から蜜月関係を構築しており、国軍への非難は避けた」(時事2月3日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020101018&g=int

つまりは様子見です。ま、見ようによっては、親中国家内部の内部抗争にすぎませんからね。
たぶん中国は知っていたのでしょう。
このような大事に走る前に、軍部が最大の援助国の中国になんの相談もなく独走するとは考えられないからです。
たぶん事前の相談を中国は受けたか、あるいはもう一歩踏み込んでなんらかの合意があった可能性はありえます。

ミャンマー軍は中国との繋がりなしには存在しえない軍隊です。
今回のクーデター に登場するミャンマー軍の装備の多くは、中国が供与したもので、国軍の装備は陸海空軍、上から下まで中国製です。

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中国網 ミャンマー国軍パレード。すべての装備が中国製

国軍は人民解放軍によって育成され、装備を与えられた軍隊で、彼らが中国の意志をまったく無視して独走することなどありえないのです。
といっても、中国はスーチーとの関係も深く、いわば二股をかけていました。
スーチーもスーチーで、中国に媚びること著しく、こんなことを中国で言う始末でした。

「ロヒンギャ問題をめぐる軍への擁護で欧米諸国からの名声が地に落ちたスー・チー氏は、17日に行われた習主席の歓迎式典で、ミャンマーはこれからも常に中国の味方だとして、「言うまでもないが、隣国としては世界が終わるまで(中国に)足並みをそろえる以外にない」と述べた」(AFP2020年1月18日)

ここまで言ってしまっては、もはや「隣国」ではなく「属国」宣言です。
欧米リベラルのアイコンだったスーチーの堕落はここまできていたのです。

ではなぜその中国がこのクーデターを容認したのか、単にバイデンの対中政策の瀬踏みをしたかったのか、謎は深まるばかりです。

 

2021年2月 2日 (火)

WHOの武漢「見学会」終わる

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あーあ、なんとも馬鹿馬鹿しい茶番が終わりました。
WHOの中国武漢現地調査が終わったそうです。現地調査というのはおこがましい、ただのタイベックスを着込んだ「見学会」にすぎません。

充分に想像できたのですが、これは国際機関の現地査察なんてご大層なモンじゃなく、中国主催の国際見学会にすぎませんでした。
当初からWHOと中国政府がなぁなぁまぁまぁで企画し、何カ国かの専門家を入れるという形式だけ整えて、決められた当局御用達のコースだけを見せたのです。
これは古典的な共産主義国家のやり口で、特に珍しくもなんともありません。旧共産圏の取材はみんなこんなことが定番でした。
たとえば半世紀ほど前に本多勝一という朝日の記者が「南京大虐殺」の記事を書いた時には、共産党の案内するルートを辿って、当局の用意した「生き証人」からだけ取材したそうです。
どんなものが出来るか初めからわかりきっていますが、一度権威ある媒体が公にすれば、それは消えない歴史の真実として一人歩きしてしまいます。

ですから、こんな中国当局が準備した調査に乗って、プロパガンダに協力したWHOのほうが悪質なのです。
当然結果はなにも出ず、新型コロナの発生源は中国ではない、我々も被害者なんだ、我々は凛々しく習主席の指導で勝利したのだぁ、という講釈を延々と聞かされてお終いです。

「WHO調査の焦点「華南海鮮卸売市場」、視察は約1時間で終了…実質的成果なしか
 【武漢中国湖北省)=吉岡みゆき】新型コロナウイルスの発生源を調べるため、武漢入りしている世界保健機関(WHO)の国際調査団は1月31日、流行初期に感染者が集中した華南海鮮卸売市場を視察した。市場は閉鎖から1年以上が経過しており、感染経路などの解明につながるかは不透明だ。
 WHOがこの市場を視察するのは初めて。扱っていた食用の野生動物を介し、出入り業者にウイルスの集団感染が起きた疑いがあり、WHOは調査の焦点と位置づけてきた。5万平方メートルの敷地に約1000店が入居していたが、中国当局が昨年1月1日に閉鎖した。
 調査団は中国の関係者と卸売市場の敷地に入り、視察は約1時間で終わった。内部は水産物の水槽などほとんどの備品が撤去済みとされる。中国側から店舗の位置の説明などを受けるだけで、実質的な成果を得られなかった可能性が高い」(読売1月31日)

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新型コロナウイルス】 武漢訪問のWHO調査団が活動開始

そもそもこの「見学会」は、テドロスの面子を守ってやるために中国がお慈悲で開いてやったものです。
発生から1年以上たっても、なお発生源の武漢に立ち入ることすら許さない中国に非難轟々の有り様を、これ以上さすがのテドロスも抑えきれなかったから渋々やってみせたのでしょうね。
テドロスは恥も外聞もなく、「あたしも中国には失望いたしました」なんて弱気なことを言っていましたが、これ以上窮地に立たせると国際世論に追い詰められちゃいますからね。
手代に辞められてしまっては困ると思ったんでしょう。

1年以上も経過し、徹底的に何度も消毒されてしまって、店舗も取り払われてしまったドンガラの海鮮市場なんぞ見ても無意味です。
調査と称するならば、いうまでもなく武漢ラボに立ち入って石正麗グループの研究員に聞き取りをせねば何の意味もありません。
絶対に武漢ラボなんか見せっこありませんから、ならば次善として病院や海鮮市場に行くというのはわからないではありません。

ならば、さっさと行けばよろしかろうに。
中国が入国許可をださないのはわかりきっていますが、発生直後のから今行かねば発生動向調査(サーベイランス)ができないことを国際世論に強く訴えるべきでした。
当時なら、当局も隠しおおせないほど大量の患者が溢れていましたから、サーベイランスで発生ルートを明確にすることができれば、さらなる感染拡大を初期で止めることも可能だったはずです。
それを1年以上たってから、ナニやってんのか。

サーベイランスとは、発生源と目された市場から自宅や職場までどのような動線が伸びているか、感染が何を介してどのようにどこまで飛び火しているか、それを実地に検証することです。
すると、この多くの動線の網の目から、逃げも隠れもできない真実の感染源が浮かび上がってくるはずです。
今でも遅くはありません。その残り香くらいはあります。それが患者とその家族の証言です。

ところがWHO調査団が案内されたのは、患者が入れられていた病院と海鮮市場でしたが、病院に行くならしっかり患者とその家族への聞き取りくらいせねばなんにもなりません。
それがこんなていたらくですから、ホントこの「調査団」は素人ですか。

「WHOの国際的な調査チームによる現地調査について、武漢の病院で新型コロナウイルスに感染した父親を亡くした張海さんは、NHKの取材に対し「調査チームは私たち遺族の話を真っ先に聞くべきだ」と訴えています。
張さんによりますと、WHOの現地調査が始まるのを前に、遺族などが参加するSNSのグループチャットが突然、使用できなくなったということで、中国当局は、初期対応の遅れや情報の隠蔽があったとして政府の責任を問い続ける遺族の声に神経をとがらせているものとみられます」(NHK2月1日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210201/k10012842971000.html

珍しくもNHKが骨のあることを書いています。しかしこの部分は中国ではブラックアウトしたとか(笑)。
患者家族が使っているチャットも突如つかえなくなったということです。
NHKさん、この放送、手を変え品を変えて中国向けにねじ込んで下さいな。それがジャーナリズムの良心のはずでしょう。

今でも、できるだけ多くの患者とその家族から、当時どこでなにをしていたのか、どこで誰と接触したのか、なにを食べたのか、何に触ったのかまで緻密に聞き取りをすれば感染ルートについて多少のことが判ってくるはずです。
この調査だけで優に1カ月以上かかるはずで、この肝心要の部分を欠落させて調査完了してしまうという凄まじさよ。
ホントこの調査団、専門家なのでしょうか。

当局が見せたかったものだけ見るのがこの「見学会」の趣旨ですから、武漢ラボなど望むべくもなく、キレイに洗い清められた海鮮市場に行って見せられたのが「発生源の証拠」でした。
あ、そうそう、その前に行ったたところが壮絶に愚劣です。

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WHO調査チーム 武漢の病院で調査 “封じ込め”宣伝展示を視察 | 新型 ...

「一方で、30日には、中国共産党の指導のもとで感染の封じ込めに成功したと宣伝する展覧会の会場におよそ2時間半にわたって滞在したほか、31日の海鮮市場の視察前には、感染対策に成功し、都市の封鎖が行われていた間、住民への食料の供給を支えたと中国政府が宣伝する別の市場を、およそ1時間半視察しました」(NHK前掲)

WHOが「調査」したのは、感染と無関係な別な市場と共産党の新型コロナのプロパガンダ展覧会だそうです。 

「新型コロナの起源を探るため中国・武漢を訪れている世界保健機関(WHO)の国際調査団は30日、共産党がコロナへの「勝利」を誇示するため開いている展覧会を訪れた。展示内容は科学研究との関連性が低く、中国側主導で調査日程が組まれているもようだ。
 30日午後に訪れた展覧会は、習近平国家主席の対応が時系列で紹介され、感染症対策の成功を強調する宣伝色も強い」(共同1月30日)

そして見せられたのが輸入海産物を扱う倉庫で、ここが当局の言う発生源だそうです。
なんのことはない、新型コロナは海外から持ち込まれたんだぁ、ということのようですが、あれ、かつては米軍が持ち込んだんだとかコウモリを食ったからだとか言っていませんでしたっけ(笑)。いつから輸入冷凍食品になったんでしょうか、ご都合主義なことです。

「調査団は1月31日午前には、卸売市場の仕入れ先で、輸入冷凍食品を扱う大型倉庫を訪れた。中国当局は当初、卸売市場の野生動物を介してウイルスが流行した疑いを挙げたが、後に、ウイルスが冷凍の魚介類などに付着して中国に流入した可能性を訴え始めた。調査団にも国外からの流入説を改めて説明したとみられる」(読売2月1日)

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武漢のWHO、「何も残ってない」市場視察…「非常に有益だった

調査団員は「大変に有益だった」と書き込んでいるようですが、迎えた一般ピーブルは「なにも残っていないところを見てなにしに来たんだ」と首を傾げていたそうです。

「現地調査3日目の1月31日午後、ようやく実現した華南海鮮卸売市場の視察は約1時間で、形式的な内容だったようだ。調査団の一人はツイッターで「市場のレイアウトを見られ、スタッフと話ができ、非常に有益だった」と書き込んだが、近くに住む男性(27)は「中には何も残っていない。今更何を見るのだろう」と首をかしげた」(読売前掲)

というわけで、これにて中国の禊ぎは終わりました。

 

2021年2月 1日 (月)

中国のワクチン外交

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中国は新型コロナを、全体主義国家の得意技である情報統制と軍隊を使った強権的なロックダウンで乗りきり、表面を繕ってしまうやいなやすかさず終結宣言。
あれよあれよと言う間に、地獄にのたうつ世界を尻目に経済を全面的に再開させてV字回復達成。キャッホー。

BBCが破滅的な英国の状況と較べて、ため息まじりにこう報じています。
抜粋するとこのようなバラ色の未来が拡がっているようです。

「GDP総量が初めて100兆超えの101.5兆元。物価変動計算をせずに比較した場合1978年の40倍。世界経済の比重は1.7%から17%に上昇した。
経済成長率は2.3%。コロナの影響のわりには、予想よりはましだったが、44年ぶりの低水準。
2020年を四半期ごとにみると第一四半期マイナス6.8%、第二四半期3.2%。第三四半期4.9%。第四四半期6.5㌫。
第二四半期から新型コロナを押さえこんで、世界でいち早く経済回復モードに突入できた」(BBC 原文中文 2021年1月18日)
https://www.bbc.com/zhongwen/simp/business-55702760

BBCの論評では、2021年の中国経済予測は全体的に楽観的で、IMFなどの予測では7.8%増だそうです。
中国の統計数字ほどあてにならないものはないので割り引いて聞いても、どん底にあえぐ自由主義諸国と較べるまでもなく回復基調にあるみたいです。

これだけでも充分にこの世に神も仏もいるものかという気分にさせられますが、そのうえ目下大量生産中の中国製ワクチンは世界15カ国で承認を受け、一帯一路のアフリカを中心にワクチン外交の真っ最中ときていますから、もはや力なく笑うしかありません。

「習近平(シー・ジンピン)国家主席のリーダーシップに感謝したい」。1月中旬、バルカン半島の小国セルビアの首都ベオグラードに、中国医薬集団(シノファーム)が開発した100万回分の新型コロナ用ワクチンを積んだチャーター機が到着した。ブチッチ大統領は自ら空港で出迎え歓迎した。29日には隣接するハンガリーも、欧州連合(EU)加盟国として初めてシノファーム製ワクチンを承認した」(日経1月30日)

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ベオグラードに掲げられた巨大看板

一方、自由主義諸国のワクチンはしょっぱなからつまづいています。

中国・ロシア製ワクチン、途上国に攻勢 米欧供給遅れで
中国製15カ国で接種許可、ロシアも10カ国超
中国製ワクチンが使用許可を得た国は少なくとも15カ国に達し、2020年末に比べ約5倍に増えた。巨大経済圏構想「一帯一路」に参加する国を中心に囲い込む狙いがにじむ。セルビアやハンガリーはその典型例だ。
中国製やロシア製の新型コロナワクチンは治験のデータに不透明感がつきまとうなど安全性に不安がくすぶる。
にもかかわらず、途上国や新興国を中国・ロシア製ワクチンの調達へ急がせる要因が、米欧製薬大手のワクチン供給の遅れや混乱だ。カナダでは米大手ファイザー製ワクチンの供給が生産見直しで遅延している。
EUはワクチンを一括購入し、加盟国に配分する仕組みをとるが、英製薬大手アストラゼネカが1~3月のEU向け供給を当初計画の半分未満に削減するなど混乱した。」(日経1月30日)

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産経

完全に自由主義諸国のワクチン政策は出遅れました。
原因はいうまでもなく、欧米ワクチンの供給体制が逼迫しているからです。
いまのところ現実に供給可能な製薬会社は2社。
米国ファイザーと英国アストラゼネカですが、当初の契約どおりの数量を供給できないと言い始めています。
今の時点では各国政府が色をなして抗議していますから、決定的な遅れとなるか否かはわかりません。
そのうえにファイザーのワクチンなどは、零下70度で供給せねばなりませんから、超低温流通・保管が難しい発展途上国ではまず配布はむりでしょう。

そもそもワクチンは、日本を見るまでもなく、仮に出来てもその臨床試験から承認までに4年ほどかかるものなのです。
そりゃそうでしょう。打ったはいいが薬害が出た、死亡者が出たとなれば、即刻接種を中止して、遡ってなにが原因だったのか、承認態勢が甘かったのではないかという責任問題にまで発展していきます。
これがむしろ文明国のワクチンに対するあたりまえのコンプライアンスであって、中国のように発生が止まらないうちからワクチンが出来ているなんて常識ではありえないことなのです。

ワクチンのネックはふたつです。
ひとつは、新型コロナのウィルスサンプルの入手が遅れたこと。
いまひとつは、ワクンチン認可の煩雑さです。

しかし、中国はワクチン製造国としては後進だったにかかわらず、真っ先に作り上げてしまいました。
どうやったのでしょうか。
種明かしは簡単。ワクチン研究-製造-臨床試験といった全プロセスをすべて軍が行っているからです。
よく「中国民間製薬会社」などと報じられていますが、一枚皮を剥げば下からでてくるのは人民解放軍です。
たとえば今回ワクチン製造会社のひとつのカンシノバイオは、人民解放軍系の国有企業で、その支配下にあって、人民解放軍系のウィルス研究所と強い結びつきをもっています。

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中国で新型コロナウイルスに対するワクチンの臨床試験がスタート:日経 

「カンシノの実験用ワクチンには人民解放軍の研究所が重要な役割を果たしており、アデノウイルスを用いた方法を開発している。軍は独自の「軍事上、特に必要とされる医薬品」の承認プロセスを持っており、先月、軍の研究部門とカンシノが開発したワクチン候補の軍事使用を承認した」((アンサーズニュース2020年7月9日)
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/18748/

元来、中国においては、ウィルス研究は武漢P4ラボがそうであったように、完全に人民解放軍が掌握しています。
ウィルスは武器、これが中国の大原則ですから、人民解放軍系研究所がノウハウの一切を握っています。
ウィルス兵器とワクチンはワンセットで開発するのが常識だからです。

今回の発生源と見られている武漢P4ラボも、SARSのようなことは二度と起こさないためにウィルス研究をしたいという嘘をついてフランスからP4技術を教えて貰って作ったものです。
フランス国内では、中国にこんな軍事転用可能な技術を渡してよいのかという反対も根強かったのですが、中国市場に色気があった仏政府はそれを押し切って供与してしまいました。
それも初めの約束は中仏共同管理でしたが、やがて中国管理となり民間研究とは名ばかりで、たちまち人民解放軍が掌握してしまったことはいうまでもありません。
この武漢P4ラボの石正麗グループが入手したRaTG13ウィルスから、意図的にか偶然にか新型コロナウィルスが誕生してしまい、それが何らかの理由で漏洩して今の世界を揺るがすパンデミックへと発展していったと考えられています。

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それはさておき、中国は武漢でパンデミックが起きるとすかさず、ウィルスサンプルを隠匿し、同時にそのワクチン製造を「戦時下製造」と名づけて大々的に乗り出しました。
元々自分の国で作ったウィルスですからサンプルには事欠かないうえに、臨床試験などは軍病院を使ったのでしょうから、早くて当然です。
そのうえに、試作品ができると、一般の国ならそこから延々と臨床試験を繰り返して安全性確認をするのですが、それをスパッと省いてしまうことができます。
なんせコンプラなき国の、しかも「戦時下製造態勢」ですからこわいものなし。

外国に供給するに当たっては、当該国の臨床試験も受ける必要がありますが、まともな医療インフラをもたない国のそれはいくらでも融通が効くようです。
コンプライアンスなき国がなき国にワクチン供給するというのですから、ゾッとします。
間違いなく、今後薬害が大量発生するでしょう。
そもそも効くかどうかさえわからないのです。

「シノバックのワクチンにいち早く飛び付いたインドネシアは、同国で行われた試験での有効性は65%だったと明らかにした。ただ、この試験の参加人数はわずか1620人で、有意なデータを集めるには少な過ぎる」(ブルームバーク2021年1月21日)

 

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