日米統合体制ができるまでの期間が一番危ない時期だ意見
今さらですが、尖閣が緊迫しています。
私の憶測にすぎませんが、中国が取りに来るなら、バイデンが大統領のうちに取りにくると思っています。
それはこちら側の体制が整っていないからです。
最大の懸念材料はやはりバイデン政権です。
私はできるだけバイデンの外交方針を、中国に籠絡されているから、といった目であらかじめ見ないようにしています。
それを言い出すとハンター疑惑まで遡ってキリがないというか、こちらの目が曇るからです。
ですからバイデンの東アジア政策を突き放してみるように心がけようと思っています。
そもそも尖閣という存在は、日米安保の自動介入条項に拘束されていませんから、オバマがなに言った、トランプがこう言ったというのはただのその時の政権の言質にすぎません。
バイデンになっても似たようなことを言っているようですが、軍事的実体がありませんから外交的リップサービスの可能性があります。
かつてオバマはTPP妥結の手土産で、尖閣が日米安保5条の適用範囲だと言いましたが、それで特に米国の東アジアシフトが変更されたわけでもありませんでした。
オバマが掲げたアジア・ピボット(アジア回帰)はまったく口先だけのものにすぎず、実際には中国になんの手だても打ってこなかったために、この男が政権にいる間に南シナ海の中国の内海化が完成してしまいました。
このように一回軍事的に実効支配してしまうと、そうそう簡単に原状回復ができなくなります。
なんせ国際仲介裁判所の裁定も、こんなもんただの紙クズだと言ってしまえる国ですからね。
いうまでもなく、南シナ海の軍事要塞化の責任はオバマにあります。
まぁだからといってオバマの番頭だったからという理由でバイデンもそうだと今は決めつけません。具体論にたどり着く前に、これで論証終了になってしまうからです。
メディアはよくこの間の米中緊張で米民主党の認識が変わったと言っていますが、私は疑り深いものでその証拠を見せていただかないと信用できません。
「証拠」とはただの言葉ではなく、直接に尖閣に対しての軍事的抑止装置を展開するという「担保」を出せという意味です。
やりようはいくつかあります。
去年8月、米有力シンクタンク「ナショナル・ビュロー・オブ・アジアン・リサーチ」(NBR・全米アジア研究所)は、日米統合機動展開部隊の設立を提言しました。
※NBR報告書"Navigating Contested Waters: U.S.-Japan Alliance Coordination in the East China Sea"(「紛争水域航行・東シナ海における日米同盟共同活動」)
これはジョナソン・グリーナート退役海軍大将(元米第7艦隊司令官・米海軍作戦部長)という米海軍の中枢にいた人物と武居智久元海上幕僚長らがまとめたものです。
このレポートの内容はこうです。
①尖閣水域で中国は準軍事活動を続けていて領土化を企んでいる。
②中国は東シナ海にA2/AD(接近阻・領域拒否)の軍事的バリケードを作ろうとしている。
③中国の最終目的は、巨大海軍国建設による世界の支配である。
④このまま状況が推移すれば軍事バランスが崩れて、日中は尖閣で軍事衝突に至るだろう。
⑤その場合、日本の勝機は先になればなるほど薄い。
⑥崩れかかっている尖閣諸島水域の軍事バランスを早急に正常に戻さねばならない。
そしてここで出てくるのが、「日米統合機動展開艦隊」常設構想です。
なにか有事が起きたら米国が海自に協力してもいいよ、という従来のスタンスとは本質的に別物だと思って下さい。
こういうあいまいなスタンスがこわいのは、尖閣有事に際して「高度の政治的判断」が介入してしまう余地を残しているからです。
たとえば、クリントンの駐日大使だったウォルター・モンデールは尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」とまで言い切り、と国務省のジャパンハンドラーだったマイケルグリーンも「同盟国間であっても領土紛争には不介入・中立の立場をとる」なんてタコ言っている始末でした。
その時の政権の「高度な政治的判断」とやらで、米国は個別領土紛争に介入できませんからよろしく、なんて言われたら目も当てられません。
これを大きく変えたのがトランプ時代で、トランプは明瞭に尖閣を中国の南シナ海侵略の外縁として捉えました。
中国は尖閣を奪取することを明言しており、このまま手をこまねいていれば南シナ海に続いて東シナ海も「中国の内海」と化すことが明白だからです。
そこでトランプが手を打ったのが、台湾の再認識です。
台湾は米国が「一つの中国」政策に縛られていたために実質的に放置されたままでしたが、台湾を国際社会に再復帰させると同時に国防力を飛躍的に強化させる方針に切り換えました。
海上自衛隊護衛艦てるづき 空母ロナルド・レーガンらと日米豪3か国共同
そしてこのトランプの東シナ海を中国に渡さないという決意の流れの中で出てきたのが、クアッドとこの日米統合機動展開軍の常設です。
民主党政権時ならいかに民間シンクタンクとはいえ日米統合機動展開軍という発想すら出る余地がなかったはずです。
仮に日米統合機動展開軍が編成されれば、常設艦隊としてスタンバイしているわけてすから、これほど大きな担保はありません。
そしてもうひとつ、トランプ時代に出た画期的な米軍シフトが、海兵隊「戦力2030」です。
※関連記事 『海兵隊の新方針 沖縄に対艦ミサイル部隊を展開させる』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-1a5e66.html
「戦力2030」を要約すると
①戦車部隊の全廃・砲兵部隊・オスプレイ・水陸両用車両・F35Bの削減
②1万2000人削減
③対艦ミサイル部隊(HIMARS) を7隊から21隊に増強し、「海兵沿岸連隊」(MLR)を沖縄島しょう部に配備
このプランは、今の在沖海兵隊の完全な再編を意味します。
今の在沖米海兵隊は、平時はキャンプシュワブに駐留し、有事においては先遣隊として普天間のオスプレイを使っていち早く橋頭堡を築く、という即応任務が与えられていました。
このプランはこれを再編して、対艦ミサイル部隊にさせてしまおうというのですから、私も驚きました。
ちなみにそうなったら、辺野古は自衛隊の水陸機動団が独占することになってしまいますね。
ひょっとして、地元紙が言う悪の権化の「日米密約」って、このことだったのね(笑)。
米軍の代わりに自衛隊が、それも離島を守るための部隊が入る、このどこに文句があるのかお聞きしたいもんです。
それともまた「日本軍帰れ」なんて叫びますか(←ホントにホントに昔やった)。
対艦ミサイル部隊を作るなんて、まんま今の宮古の自衛隊展開構想と一緒です。
おい米軍、日本の尖閣防衛プランをパクったなと言いたくなります。
奄美、宮古…南西地域で陸自駐屯地が続々と拡充、中国脅威に対抗 - 産経
別にパクってくれてもいいのです。いや、むしろ大いにパクって下さい。
米軍が自衛隊の尖閣・離島防衛プランをバクればパクるほど、日米が一体化して東シナ海を防衛する統合体制が固まっていくともいえるわけてす。
すでに米国は、トランプ時代に東アジアの軍事的最前線が朝鮮半島になどには存在せず、実は台湾と尖閣にあることを認識しました。
そこで台湾の国防力強化に「乗り」、さらに対艦ミサイルの槍衾で宮古海峡を封鎖し、侵攻を食い止めようという自衛隊のプランに「乗った」のです。
「乗った」という意味では、先述した日米統合機動展開艦隊も、自衛隊の尖閣・離島防衛のための陸海空統合緊急展開部隊構想と結びついていますから、自衛隊のマスタープランに米軍のほうが進んで統合されたといってもいいかもしれません。
もっと大枠のクアッド構想もそうですが、むしろ日本は米国を「従属」させている側面すらあるのです。
とまれこのような大きなシフトチェンジが、既に米軍の中に生まれています。
これがただの外交リップサービスではなく、しっかりとした「担保」というやつです。
馬鹿なメディアは、バイデンが尖閣は日米安保の範囲内だと言った言わないで騒いでいましたが、なにを今さら。
そんなことは言ってもらわなくてもけっこうです。
だって、そんなこと決まりきったことだからで、今求められているのは、しっかりとした日米共同で作る軍事的「壁」だからです。
この日米シフトの再編さえ完成すれば、中国が東シナ海に手を出すことは事実上不可能に追い込まれます。
中国は、このような日米の統合シフトが完成するまで一定期間(最低でも5年から10年)かかると考えています。
ならば日米の腰が定まらない今のうちに、一気に取りに来るかもしれません。
そのための海警法改訂で、海警に軍事的権限を与えて名実共に準軍隊化するような危険を挑発を、今この時期に仕掛けてくるはずがありません。
その意味で、いまから4年間が最も危険な時期ですが、逆にいえば日本がイニシャチブを握って乗り切るしかない時期でもあるということです。
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日米統合機動展開艦隊
いいですねぇ。ぼくの解釈では日米統合機動展開艦隊=日米連合軍と考えます。こうなると、中国はうかつに手が出せません。しかし、その前に日米統合機動展開艦隊を日本国憲法から切り離す必要があると思います。つまり、日本国憲法の支配下にあるといざという時に動けません。映画「シン・ゴジラ」や「空母いぶき」でも再三問題になるように自衛隊が動くときには憲法との整合性が常に問われて時間がかかって仕方がない。日米統合機動展開艦隊を日本国憲法の下から切り離し、自由に動くことができるようにしておけば、いざ鎌倉という時にすぐに対処できます。
もっとも野党やマスコミや何よりも相手の中国が火がついたようにギャーギャー言うでしょうが(^0^)
投稿: 泰山木 | 2021年2月10日 (水) 15時04分
元海将の伊藤俊幸氏の「漁船の警備においては相手が海警である以上は、こちらも海保で対応しなければいけない、ここに海自を助っ人に使えば中国の思うツボ」という意見はなるほどと思いました。
あくまで日米艦隊の連携行動は威嚇として使うだけで軍に相当する力を行使するのはまた別の話。
これを感違いして「海保ではいつ被害が出るかわからないから海自を使え」という短絡的な判断は状況をエスカレートさせる利敵行為だという事になります。
大国に隣接する島国としては領海問題は尖閣以外でも発生していますので海保を領海警備を前提とした強化をはかる必要があります。
装備と人員の強化ももちろんの事、より自由度の高い警備行動を可能とする法改正に管轄を国交省から防衛省へ移管してよりスムーズに自衛隊との連携を取れるようにするなどやらなくてはいけない事が山のようにあります。
いつまでも不審船に水ぶっかけたらなんとかなるとかいう時代でもありませんし。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年2月10日 (水) 17時28分
バイデン政権の「戦略的忍耐」が、
1.腹黒版→いずれ中共が必ずデッドラインを越えてくるor越えさせるのを待ち構えてのことならば、叩き潰す時がくる。
2.花畑版→忍耐すれば中共も同じように忍耐してくれるorさせられると考えてのことならば、いずれ中共の膨張が手に負えなくなると分かって、やっぱり叩き潰す時がくる。
但しそれは尖閣ではないかも。
中共の海警法に対抗して、海上保安庁法の武器使用規定20条を改正しろと求める議員さんたちがおられるのですが、なんで海警法と同じことをやろうとするのか。
国際法に反して武器を使用すれば、我が国の主権を侵害したと見做しますよ、日本に自衛権を行使させるおつもりですの?と、世界にも見えるように中共にキッパリいわないで、相手の土俵に態々乗りにいこうとするのって、どういうつもりなのか。
不用意に勇ましいのはホントやめてほしいですわ。
ところで、日経新聞のコメンテーター秋田浩之氏がTwitterで、「対中政策は戦略的忍耐だと発言したホワイトハウス報道官。米政権は失言だったと悟り、密かに各国に打ち消しました、、、。こんな裏話を取材し、米中対立の行方と日本への影響を分析してみました」といっていて、え?どゆこと?と思うも、肝心の記事は有料会員限定で読めず。ケチくさ。
投稿: 宜野湾より | 2021年2月10日 (水) 18時40分