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2021年2月 3日 (水)

ミャンマー謎のクーデター

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ミャンマーでクーデターが起きました。
昨年11月の選挙で大勝したアウンサン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)に対して軍と軍系の政党は不正選挙を叫んで選挙結果を否定し、軍がアウンサンスー・チーなどを拘束しています。

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クーデター直前に交渉決裂 ミャンマー国軍と与党

スー・チーの国籍がある英国BBCはこう報じています。


「ミャンマー国軍は1日、国家の権力を掌握したと宣言した。同国では1962年の軍事クーデター以降軍事政権が続き、10年前に民政移管の合意がなされた。
今回のクーデターは、2011年に民主的統治に移行するまでの約50年間、抑圧的な軍事政権に耐えてきたミャンマーの人々を恐怖で震え上がらせた。与党・国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー国家顧問(75)や複数の政治家が1日早朝に拘束されたことで、多くの人が過去に置き去りにしたいと思っていた日々を思い出した。
アウンサンスーチー氏と、かつて国内での活動を禁じられたNLDは、2015年に行われた25年間で最も自由で公正な選挙で勝利を収めてから5年間、ミャンマーを率いてきた。同政権は1日に2期目に入るはずだった。」(BBC2月2日)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55885314

クーデターの理由は、「不正選挙」があったからだということになっています。
軍部で権力を握るのはこの男、ミン・アウン・フライン国軍総司令官です。

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ミン・アウン・フライン国軍総司令官 日経

「ミャンマー国軍は1日、クーデターを実行した。国軍系テレビは1年間の「非常事態宣言」が発令されたと伝えた。国軍出身のミン・スエ副大統領が大統領代理として署名した。立法・行政・司法の全権はミン・アウン・フライン国軍総司令官が掌握。
与党、国民民主連盟(NLD)の広報担当は同日、国軍が事実上の政府トップで党首のアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相、ウィン・ミン大統領を拘束したと明かした。」(日経2月1日)

この選挙には日本も含む国際監視団が入っており、不正選挙の余地など存在しませんでした。
当然、軍部のただのいいがかりにすぎませんが、悪いことはみんなトランプ「陰謀論」にくっつけたいオールドメディアはこんな余計なことまで書いています。

「しかし、この不正疑惑を裏付ける証拠はほとんどない。
「アウンサンスーチー氏が総選挙で圧勝したのは明らかだ」と、人権団体「ヒューマンライツ・ウォッチ」(HRW)アジア支部のフィル・ロバートソン氏はBBCに述べた。「選挙で不正行為があったとの疑惑が出ている。どれも証拠のないものばかりで、いささかトランプ氏的な主張だ」
(BBC前掲)

ちょっとちょっと、なにが「トランプ的主張」だつうの。
米国の大統領選に国際監視団がいましたかね。いつトランプはクーデターをするなんていいましたかね。
無関係なことを印象だけで強引に接着しないでいただきたいものですが、認識派のJ氏やリベラル左翼は、ここぞばかりに無関係な事象を結びつけてミャンマークーデター=トランプ「陰謀論」叩きを口にしています。
こういうのを火事場泥棒的所業といいます。

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焦点:ミャンマーのクーデター、米政権は制裁へ複数の選択肢 ロイター

それはさておき、このクーデターに納得できないことが多いのは事実です。
なんといっても軍部の動機がよくわかりません。
軍部はミャンマー建国以来「国の父」として君臨しており、民主化後もその地位はかつてのような独裁権力こそないものの、今なお強力な権力を握っているからです。
また長年の軍事政権による鎖国から脱却したミャンマーには、外国から多くの資本が投下され、遅れていたがゆえの発展の伸びしろは大きく、「アジア最後のフロンティア」とまで言われていました。
日本からも多くの企業が参入していおり、ミャンマーはこの10数年の民主化による繁栄を一挙に失うことになります。

当然のことながら、自由主義諸国は厳しい制裁に入るでしょう。
あいまいなスタンスは、軍部ともスーチーともパイプを持つわが国くらいなもんです。

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バイデン氏が経済制裁を示唆 ミャンマークーデター- 名古屋テレビ

特に焦点となるのが米国です。
米国はバイデンがその気にさえなれば、制裁のためのオプションはいくらでもあります。
まず大統領がミャンマーに対して、大統領令として緊急事態宣言を出すことです。

「米財務省で制裁担当シニアアドバイザーを務めていたピーター・クチック氏は、ミャンマー情勢に関して国家非常事態を宣言する大統領令によりバイデン氏がミャンマーに対する新たな制裁プログラムを構築する可能性があるとみる」(ロイター2月1日)
https://jp.reuters.com/article/instant-article/idJPKBN2A20UA

クチックによると、これ自体は制裁ではありませんが、「バイデン政権のクーデターに対する見方や要望」を示すことができ、次の段階に進むことが可能となるそうです。
次の本格的制裁は、バイデンが国際緊急経済権限法(IEEPA)を用いることです。
ただしこれを使うと強力すぎて、進出している外国企業が窮地に立たされますので、慎重な対応となるかもしれません。

米国のミャンマー投資は遅れているため米国系企業には実質的な損失は少ないようですが、できるなら軍部高官に的を絞った制裁ていどにしてほしいというのが、大方の外国企業の願いでしょう。
つまり、建前では強力な制裁を口にしても、実質的な経済制裁は様子見になるかもしれません。
ミャンマー民主化は、オバマ時代の数少ない外交成果ですから、さぁジジどうしますか。

一方、制裁を受ける立場の軍部ですが、米国の経済制裁を受けても、肝心の軍部は痛くも痒くもありません。
その理由は二つあります。
ひとつは、軍部はミャンマー最大の利権集団で、傘下に多くの企業や商店を抱えています。

「ミャンマー軍は独自に経済活動を行なっており、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)など国軍系企業が存在する。このほかにも軍が経営する企業や工場、商店、ヘルスセンターなどが存在している。また、退役軍人団体など関連団体を通じて国内でのビジネスへの投資も行なっている。」(ウィキ)

ただしこれらはいずれも国内に止まっており、国際市場との取引は少ないと見られています。

「ミャンマーの軍高官は地元企業と強力なつながりを持つが、金融制裁によって影響を受ける可能性がある海外での権益をほとんど持っていない」(ロイター前掲)

ですから過去の国際社会の民主化要求を掲げた経済制裁期間には制裁で苦しんだのは一般国民だけで、軍部は屁とも思っていなかったフシがあります。
そして既に制裁はロヒャンギ迫害で受けているのです。
ミャンマー軍の少数民族弾圧の残虐さは有名ですが、このロヒャンギ迫害の時には、スーチーは軍部を擁護しています。
今回のクーデターではスーチーが拘束されると、ロヒャンギ難民に歓声がわいたそうです。

「軍高官の大半はグローバル・マグニツキー人権問責法の下で既に制裁を受けている。
トランプ前米大統領の下でグローバル女性問題担当特使を務め、政権のミャンマー政策に深く関与していたケリー・カリー氏によると、国務省高官はイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題でミャンマー軍の主要企業2社に対するマグニツキー法に基づく制裁を2018年に準備したが、実行されなかったという」(ロイター前掲)

ですから、クーデターを起こした軍部は、とうぜん経済制裁がくることを見越しているし、そんなもんは怖くはないと考えています。
たぶん軍部は現行の制度を変更しないかもしれません。
というのは、選挙に勝とうが負けようが、いまでも充分に軍部は国政に関与できる権限を保証されているからです。

ミャンマー議会(民族代表院及び人民代表院)の議員定数の4分の1は、ミャンマー軍司令官により指名される」(ウィキ前掲)

また内閣ポストも防衛、国境警備など3つを軍部に割り当てられています。
ここがこのクーデターのよく理解できない点です。
BBCも現実に軍部がこのクーデターでなにを得たいのかわからないという書きぶりです。


「専門家たちは、国軍がなぜ今このような行動に出たのか、確信がもてていないようだ。国軍が得られるものはほとんどないと思われるからだ。
「現行制度が国軍にとって非常に有益であることを忘れてはならない。国軍には完全な指揮権や、商業的利益における大規模な国際投資、戦争犯罪をめぐる民間人からの政治的保護がある」と、シンガポール国立大学アジア研究所の博士研究員、ジェラルド・マッカーシー氏はBBCに説明する」(BBC前掲)

つまり軍部は新たになにか得られるとすれば、そうとうに色褪せたといえ「民主化のシンボル」と見られているスーチーを軟禁できるていどのことで、かえって国民からの圧倒的批判を満身に浴びることでしょう。
そもそもスーチー率いる国民民主同盟の雪崩的勝利が気に食わなかったからていどで、国際社会を敵に回してしまうというのが解せません。

そしてもう一つの理由は、軍部の後ろ楯に中国があることです。
中国さえ支持してくれるなら、経済制裁は怖くないし、軍は今までどおりに軍事援助を受けることができます。

その中国は今回のクーデターを静観する構えです。

「中国外務省の汪文斌副報道局長は1日の記者会見で、ミャンマー国軍のクーデターに関し「ミャンマーの関係各方面は憲法と法の枠組みの下、相違点を適切に処理し、政治と社会の安定を守るよう望む」と述べた。中国はミャンマーが国際社会で孤立していた軍政時代から蜜月関係を構築しており、国軍への非難は避けた」(時事2月3日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020101018&g=int

つまりは様子見です。ま、見ようによっては、親中国家内部の内部抗争にすぎませんからね。
たぶん中国は知っていたのでしょう。
このような大事に走る前に、軍部が最大の援助国の中国になんの相談もなく独走するとは考えられないからです。
たぶん事前の相談を中国は受けたか、あるいはもう一歩踏み込んでなんらかの合意があった可能性はありえます。

ミャンマー軍は中国との繋がりなしには存在しえない軍隊です。
今回のクーデター に登場するミャンマー軍の装備の多くは、中国が供与したもので、国軍の装備は陸海空軍、上から下まで中国製です。

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中国網 ミャンマー国軍パレード。すべての装備が中国製

国軍は人民解放軍によって育成され、装備を与えられた軍隊で、彼らが中国の意志をまったく無視して独走することなどありえないのです。
といっても、中国はスーチーとの関係も深く、いわば二股をかけていました。
スーチーもスーチーで、中国に媚びること著しく、こんなことを中国で言う始末でした。

「ロヒンギャ問題をめぐる軍への擁護で欧米諸国からの名声が地に落ちたスー・チー氏は、17日に行われた習主席の歓迎式典で、ミャンマーはこれからも常に中国の味方だとして、「言うまでもないが、隣国としては世界が終わるまで(中国に)足並みをそろえる以外にない」と述べた」(AFP2020年1月18日)

ここまで言ってしまっては、もはや「隣国」ではなく「属国」宣言です。
欧米リベラルのアイコンだったスーチーの堕落はここまできていたのです。

ではなぜその中国がこのクーデターを容認したのか、単にバイデンの対中政策の瀬踏みをしたかったのか、謎は深まるばかりです。

 

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コメント

最後の想像が当たってると思います。
ミャンマー国軍は中国さえ後ろにいてくれれば困らないので、大した得も無いのにワザワザ仕掛けた。
米豪はすぐに批難してますけど、実際に制裁を実行すれば、WHOのようにますます中国が浸け入ってくるので対応は厄介なことになります。
さあ、バイデンさんどうするかね?という話。
スーチー女史もロヒンギャ問題(あくまでベンガル人扱いだが、何もしてない訳では無い)では国際的に批判されてきてますし、辛いところですね。

軍政に戻ったら、1番困るのはミャンマー国民ですね。特に少数民族は恐怖しているでしょう。。

国民の未来とか人権とかそんなきれい事など一切ない清々しいまでの既得権の奪い合いにみえます。
お恵みを貰える相手は欧米でも中国でも構わないからより多くを恵んでくれる方に付きますぜ、さあハンマープライズ!

てな感じでミャンマー軍政府は息蒔いているのかもしれませんが、結局どっちにも正義なんてないしめんどくさいしで軍政が国民に対して手を上げない限り欧米は口だけ出して具体的な制裁などは行わないと思っています。
そんな情勢ですが「ミャンマーはアジア最後のフロンティア」だと継続して投資される方はどうぞ自己責任でという所でしょうか。

 軍事政権側はウソかホントか知りませんが、フライン司令官は「選挙をやり直す」としてい、「再選挙の結果、どちらかが政権を担うべき」としていて、軍の関与を最小限にとどめるつもりであるように見せています。
「いじめるなら、中共に接着しちゃうもんね~」カードは西側にはそれなりに有効で、タイミングを見計らったようにも見えます。

あらためて外務省のホームページでミャンマーを見てみると。
人口構成はビルマ族が7割を占め、残り3割に7民族、細分化すると134の少数民族が国境地帯に居住。
宗教は9割の仏教徒と残り1割にイスラム教徒とキリスト教徒その他。
ここでもう、こりゃ大変そうだ、しかでてきません。
考えるに。
有権者の著しく多くを占めるビルマ族・仏教徒がイスラム教徒のロヒンギャを嫌って反対するので、NLD政権だろうが軍政権だろうが、ロヒンギャと融和はできない。
でもロヒンギャの扱いを変えない限り、欧米とイスラム諸国からの非難や制裁は避けられない。
避けようと思えばNLDは軍をグリップせねば、だがしかし、ロヒンギャの一部以外に、他の少数民族でも武装闘争を続けるものがあるので、軍の力は必要。
軍は力を保つために中共との結びつきは欠かせない、だがしかしNLD政権も、ロヒンギャで欧米とイスラム諸国の非難から擁護してもらい続けるには、二股かけられていると分かっていても、中共とよい関係でいるしかない。
中共の立場になって考えてみると、一帯一路構想実現には(中の人は何であれ)地理的にミャンマーが必要。(既に雲南省とミャンマーのインド洋側を結ぶ石油とガスのパイプラインができている)
ミャンマーが軍政権の方が中共はいいだろうけれど、国際社会の手前、ミャンマー民主化を喜んでみせる方が得策。
そもそも、ロヒンギャ難民問題には謎があり、直ぐには信じない方がいい情報が多く、ミャンマーに人道上の非難をする諸国はあっても、積極的にロヒンギャ難民を受け入れる国は無い。

うーんとても複雑系。

思いつきではありますが、「中国」と言っても一枚岩ではない、ということなのかな、と思います。特に、米大統領選で勝利したのですから、今までの統制が緩んで内部抗争が起こってもおかしくないでしょう。
国内でも既に起こっているかもしれませんが、まずは国外で起こったことが報道されたのかもしれません。

アジアに民主主義国はムリ筋と思うようになりましたわ。日本だって、
米国に強制的に民主化してもらったんだし、日本国憲法なんて今だ
に一言一句変えずに、米国製のを使ってる。
大昔からアジアの大国だった中国でも、あの独裁中共が跋扈してる
有様。その下の、自称小中華の朝鮮はさっぱりワケわからん国だし、
ベトナムだ、フィリピンだと、第二次世界大戦後の約75年間、いったい
何してたの?という気にさせられますわ。

で、ミャンマーです。スーチーさんは、ずっと旧世代になってしまって
いて、若い世代から見れば、某国でいう森会長みたいな存在にあた
り、もう感覚がズレまくっているんだそう。ただ民主化の偶像になった
為にミャンマーのリーダーになっただけであって、政治的な実力も未来
へのビジョンも国民への指導力も、お粗末というしかないのがバレて
きたのが混乱の原因かと。

でも、ミャンマー政府内に人材がいないんだろうな、それで彼女自ら
リーダーになるしかなかったんだろうな、と同情はします。1776年、
1789年に欧米はスタートしましたが、アジアなんて、早くて1945年頃
からですわ。そう考えて悪魔的視点から見ると、アジアにはまだまだ
生贄や犠牲が必要ということになります。どうにかならないもんです
かねぇー、『米百俵』の精神がある人がアジアのあちらこちらにいて
欲しいですわ。

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