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2021年2月16日 (火)

トランプがマッドマンだということをお忘れか

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バイデンが大統領になってから1カ月たちますが、前職のほうが露出度が高いというのはどうしたことでしょうか。
今米国にはワクチン接種プログラムや緊急経済対策、いえいえ内閣や主要官庁要職すら議会の承認を得られていないのですから、ほんとうはこんな弾劾訴追などにうち興じている暇などなかったはずです。

そもそも史上最大の得票数といいながら、さっぱり大衆的人気がないジジです。
本来なら800万票というさん然たる得票数を背景にして、もう少し華があってもよさそうです。
演説もスピーチライターがワシントンポストの社説をコピーしたようなワシントンDC節。
おまけにご愛嬌で、たまに言葉を忘れたりする老人性健忘症。
息子ときたら愚息を通り越してもはや犯罪者。

そしてなにより半分の国民がトランプに入れ、今もその7割以上が不正選挙があったと信じているのですから、お気の毒としか言いようがありません。
しかし、民主党はあえて弾劾訴追をダラダラとやってしまいました。
バイデンに強い指導力が少しでもあれば、やらせるべきではありませんでした。

これではバイデンが就任時に言っていた「分裂した米国を再び団結させる」などというキレイゴトを自分で否定しているに等しいわけで、オレの敵トランプはまだ死にきっていないゾ、死ぬまでやれ、とバイデンが命じたに等しいわけです。
結果はご承知のように57対43。
熱望した共和党からの造反は、下院ではいつものリズ・チェイニー以下の面々しか発生せず、かえって共和党は反トランプを抑え込んで彼を中心にした体制が固まってしまいました。

つまり、バイデンのいっている「米国を再び統一させる」という意味は、せいぜいがトランプという「凶悪な民主主義の敵」を前にして、与党内部を固めるためだけのものだったのです。
言い換えれば、トランプが必要だったのは民主党のほうだったのです。

「それでは今回の裁判を行う理由は何か。その答えが政治的なものなのは明白だ。ドナルド・トランプ氏に対する嫌悪は、民主党を最も結束させる単一原理だ。トランプ氏が選出されて以降、民主党は政治的にうまくいっており、できるだけ長い間、引き立て役としてトランプ氏をとどめておきたいと望んでいる」(ウォールストリートジャーナル2月9日『【社説】トランプ氏弾劾裁判を民主党が望む理由 』)
https://jp.wsj.com/articles/SB11260852109866014048004587272783292417576

さて、ここで改めて思い出していただきたいのですが、 トランプは希代の勝負師です。
勝負師にもいろいろありますが、トランプは綿密な戦略を練って進むタイプではなく、その場その場の一種のひらめきのようなものを大事にします。
ポーカーをやっている相手には、彼がなにをするか見当がつかず、常に後手後手に回ったあげく気がつくと負けていて、えっオレ負けたの、ということになります。
なんせこの男、時にはテーブルをちゃぶ台返しするようなまねすらするんですからたまらない(笑)。
ですから、ドナルド・トランプという男は、マッドマンセオリで戦う勝負師で、正統派の外交官あがりには嫌われます。

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CNN

彼の真骨頂が出たのは、北朝鮮との直接交渉でした。
綿密に戦略を練ってブレーンの言うことに耳を傾けるようなタイプだと、まず会談自体をやりません。
マティスなら絶対にやるな、同盟国の圧力でやれと言ったでしょうし、ワシントンの政界で悪魔とまで言われたボルトンもやるのはいいが、やる以上徹底的に核を放棄させるまでやれ、と言ったことでしょう。

しかし、トランプはそのどちらも取らなかったわけです。
直接会談でスイートな関係を正恩と作ると見せかけて薬籠中のものとして核開発を凍結させて、3回目を餌にして身動き出来ないようにしてしまいました。
協定書が発行されて文言に書いてないので、トランプは派手な会談をしただけたと勘違いしている者がおおいのですが、実態として北は核開発を続ければ、3回目はない以上、現状凍結のまま指をくわえているしかなかったのです。
まぁ、バイデンになったら凍結解除してしまうかもしれませんがね。

いずれにしても、トランプには初めから「完全かつ不可逆的・検証可能な非核化」なんてする気はなかったのです。
北から核を取り上げるのは土台無理ですから、使わせないようにすればいいだけじゃん、そうトランプは思ったのです。
つまり核開発の事実上の凍結です。文言にないだけのことです。
そして結果として、いつのまにか北朝鮮のような硬直した国が彼の術中にはまって身動きがとれなくなってしまっていましたが、これでいいのです。
これがマッドマン・トランプの典型的な手法です。

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CNN

今回の11月以降のトランプの動きは、合理的に解釈しようとするからわからなくなります。
これも紛うことないマッドマンセオリの発動なのです。
私は11月大統領選の開票から一貫して、いかに不正があろうと制度は制度、毒酒をあおって潔く結果に従えと言ってきました。
しかし、トランプはそれから制度のチャブ台返しをやり始めます。
勝利が盗まれたとして、敗北を認めずに1月6日の選挙人投票まで粘り続ます。

これで米国民の目は、存在感ゼロのジジにではなく、トランプに釘付けされます。
メディアも、大嫌いなトランプめ、くたばりやがれこの悪鬼め、とばかりに叩きまくります。
日本では、今までトランプ支持のような顔をしていた自称保守論客が、いつのまにかインボー論だぁなどと叫び始めて民主党支持者になってしまったのには驚きました。
しかしなんのことはない、非難しようが支持しようが、全部トランプという勝負師を中心に回っていたわけです。

たぶんトランプも勝てば僥倖ていどと判断していたはずですが、粘るに粘り続け、最後には支持大衆をワシントンに集めて大衆のパワーを使って圧力をかけることまでしました。
この時に起きた一部支持者の議事堂突入で、いったんは弾劾訴追にまでされますが、ここからが勝負師の真骨頂。
この弾劾訴追は元から無理筋な政治ショーなのはわかり切っていましたが、トランプはこの窮地をチャンスに変えてしまいます。

弾劾訴追されるまでトランプは敗北宣言をだしていなかったために、一部の支持者はトランプこそ真の大統領であるという主張をしていましたが、この時に弁護団が使ったロジックが「民間人を議会は裁けない」というものでした。
トランプは、さぁ民間人となったオレを裁けるのかと言っているわけで、実は隠し味で敗北を認めちゃっているわけです。
つまりいつか言わねばならなかった敗北宣言をこのような形で出したともいえるわけで、実にズルイというか巧みというか、彼らしいというか。
しかも言われた国民の大部分が、これを変形の敗北宣言だとは受けとらないというおまけつきですから、支持者はいまだ負けたと思っておらず、闘争は継続中なのです。

そしてなによりこの弾劾訴追の戦いは共和党全体の浮沈がかかっています。
共和党支持層の大部分がトランプ大好きですから、ここで寝返ったら中間選挙で落とされます。
だから泣いても笑ってもトランプを支えるしかなかったのです。
ここで皮肉にも、敗北した王が野に下ったとはいえ捲土重来のためには彼にしたがうしかない、という空気が生まれてしまいました。
元々トランプが嫌いな共和党議員は両手両足の指の数ほどいたはずですが、リズ・チェイニーなど地元で責任追及される始末です。

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トランプ氏、2022年選挙へ協力 米共和下院トップと会談 - SankeiBiz

トランプが愛国党という実体のない党を使ってフェイントをかけてみせると、あわてて共和党下院総務がトランプの王宮に駆けつける始末です。
そこで王からニコニコと、安心しろ、今後も共和党には協力するからと握手されれば、ほっと胸をなで下ろすという具合。役者が違うのです。

「トランプ氏を支える政治団体は声明で「トランプ氏の人気が今ほど高まったことはない」と共和党内での影響力を誇示した。マッカーシー氏側は「長きにわたり無視されてきた国民の懸念に耳を傾けること」の重要性を強調。共和党が選挙で勝つには、依然としてトランプ氏の岩盤支持層を頼りにする必要性をにじませた」(産経1月29日)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210129/mcb2101290915015-n1.htm

少なくとも中間選挙まで、共和党は間違ってもトランプを党外に出すことは、虎を野に放つことだと判っていますから、王としての処遇は変えないでしょう。

このように、大統領選の延長戦と弾劾訴追を経て、共和党という経年劣化してしまった存在が、トランプを中心に団結してしまったのです。
結局、民主党はトランプのマッドマンセオリにまんまと乗ってしまったのです。
そして民主党左派は頼りないジジではなくカマラを推すようになり、いっそう分裂が進んだといわけです。
なにもかもトランプの思惑どおりかもしれません。

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コメント

記事にあるようにマッドマンセオリー発動は特に外交に於いて絶大な効力を発揮し、国内政治のパワーゲームでも勝ちに近い形を決めて来られていました。
プランニングや実務を担った多くの部下がファイアーされるのも、一般国民はトランプショーとしてある意味楽しんで来れました。

> 最後には支持大衆をワシントンに集めて大衆のパワーを使って圧力をかけることまでしました。
この時点で、トランプ氏は現職大統領という地位の下で、自国民の自分の支持者とその現場にいる人達の命を賭け金に国内政治でマッドマンセオリーをやった訳です。
これも彼が統率したのではなく、できた状況に自分らしく乗った結果なのでしょう。
それを良しとしない、というのが、中程度以上の責任があると考える人たちの意思と私は思います。

しゅりんちゅさんが昨日記事コメントの最後に書かれている「無党派層」は2〜3割の割合で推移し、中間でも次期大統領選でも、両党は己の鉄板の上にこれをどれだけ積めるかが勝負です。
本体が半壊しては積みようがないとはいえ、四年後トランプの芽がほぼ無い前提で共和党の主力メンバーはリスタートするのが賢明かと思います。日本の自民党よりずっと新規の人材豊富ですよ。

  ふゆみさんの「四年後トランプの芽がほぼ無い前提で共和党の主力メンバーはリスタートするのが賢明 」、これは違うと思いますね。
まず第一に「分断」はトランプがもたらしたものではなく、所得格差が原因です。
なぜ所得格差社会になったかと言えば、ブッシュ、サッチャー時代から始まった新自由主義、その後のクリントンやヒラリーらが信奉した無定見なグローバリズムが原因です。

おかげで中間層がいなくなり、40~50代の死亡率も増えました。グローバリズムがさらに昂進するにつれ、トランプ支持者的な低所得者層だけでなく、次にはエリートではない大卒者までが疎外されるに至ったわけで、それらの人々が民主主義をあきらめてサンダース支持に廻ったのです。
トランプが国内問題で最初にお得意のマッドマンセオリーを成功させたのは、フォードがメキシコに工場を移す計画を撤回させる際に用いた脅しで、これは大当たりしました。そうでもしなければ米国に製造業がもどってこず、さらにこの流れがコロナ禍までの米国経済浮揚の主要因となったのです。

言いたいのは、トランプ企図した種類の保護主義こそが米国を救ったのであって、その為にこそEU以外はみな国民国家化が進んでいるという事です。それが世界の本当の趨勢です。
トランプは共和党主流派の連中とはちがい、そのあたりを良く理解していました。「一国主義」とかのように十把一絡げに 雑駁に言われたのでは、その本当の意味を間違えます。
政治が変わらなければならない時の問題は考え方やイデオロギーより、政治とは何かについての基準をどうひっくり返すかが重要です。
そのような事は古びた共和党主流派には最も困難な事で、トランプにしか出来ません。

ところで、バイデンはバイ・アメリカンの大統領令に署名しましたが、これをマスコミは100日ルールを破ってまで「まるで、トランプのよう」として非難しました。ですが、これはバイデンの方が正しいのです。
経済問題において、結局は使い方を間違えると思いますが、最後にはバイデンを支持したサンダース支持者の方を向いた政策はれいの2兆ドル支出にも見られます。人気面はともかく、政策面でも共和党主流派はバイデンにすらもかなわないでしょう。

 ところで話題がそれますが、米議会乱入事件のさい「トランプ支持者が消火器で警官の頭を割って死亡させた」というのはNYタイムズ発のフェイクニュースだったようですね。これには少々びっくりしました。

なんと言っても「警官死亡」は消火器撲殺と相まって、人々の印象に重大な影響を与えるトピックだったし、弾劾裁判では反トランプ側から「事実」として主張されどおしでしたから。
また、バイデンはすでに「哀悼の意」を捧げていたし、BBAは「議会内に顕彰碑を建てるべき」と主張していました。

しかし、そうすると警備側には犠牲者はない事になりましょうか。
このフェイクがなかった場合、我々が議会侵入事件を頭に描く際の絵柄がずいぶん違ったのではないか? と残念です。

私はその情報を拾えませんでした。
NYタイムスの撤回ソースなどあれば貼っていただければありがたいです。
投げつけられてバウンドした消火器が頭に当たり警官が死亡した、という後日報と比較してフェイクと言っているのであれば見つけました。でも警官は亡くなっている報道です。
本記事とも違う話なので深追い無用であれば無視してください。
山路さんと私の見ている米国像は拾ったデータが似かよっていても見立てがここまで違うものなのかと思うことしきりで、興味深いです。ここで私が色々書くのはそろそろ野暮ですね。

 ふゆみさん

 最初に見たのはWTだったと思いますが、押さえてもいず日本語でもないので、今すぐには上手くさがせません。
YouTubeで詳しく説明している信頼にたる方がいるので、貼っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=51Tf2ZK2YtM

それと、見立てが違うのは仕方がありませんよね。
ただ、「自由貿易」と、トランプのいわゆる「一国主義」や保護主義が対立した概念であるかのような間違った言説を日本の保守の一部が垂れ流している事は懸念しています。
機会でもあればじっくり説明したいですが、書くのを控えるなんて事は言わんで下さい。
私はどうも率直なもので、お気に障るような部分があれば勘弁して頂けると幸いです。

いや、私の文章も大概空気読まずに冷酷なので、対立しているような様相が他人の目に醸されるのも望ましくないなあと思った次第です。
とまれ、私のような認識派に山路さんは売電推しと決めつけず、私は山路さんをトランプ狂信のQとも罵らずに互いの違う観点をコメントしている事が、健全な言論の自由の証明ですね。

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