アシックス、ウィグル弾圧で中国政府を支持
日本を代表するスポーツ用品メーカーのアシックスが、ウィグルにおける中国のジェノサイドを「理解して支援した」そうです。
一部を切り取ったわけではないことを示すために、中国版微博(ツイッター)アシックス公式アカウント3月25日声明の全文をアップしておきます。
なお、この声明を日本本社は「承知している」そうですから、アシックス公式の態度はウィグルのジェノサイド容認、いや「理解して支持」しているということになります。
「健全な魂は健全な肉体に宿るという精神をアシックスは信じ、終始、消費者のために優良なスポーツ装備を提供したいと努力しています。
アシックスは中国市場において、現地のサプライ―チェーンを大きく発展させ、原材料の購入から生産まで、新疆棉の購入を含め、中国の異なる地域にわたり行ってきました。優良な原材料は優良な製品を生産を保障する上で重要です。我々は、新疆棉を購入し続け、支持します。
同時に、アシックスが中国本土のサプライチェーンの発展をさらに一歩進め、我々が中国におけるビジネス環境に十分な自信をもっていることを表明します。
アシックスは終始、一つの中国原則を堅持します。また国家主権の領土の完全性を守ることを固く決意します。アシックスは中国の行動に対する一切の中傷やデマへの断固反対を決意するものです」
アシックスの人権意識の低劣さに唖然とします。なにが「健全な魂は健全な肉体に宿る」だ。笑わせます。
アシックスはBBCの報道を突破口にして世界の主要国が21世紀最悪の人権侵害だとして非難しているウィグル弾圧を、デマだ、フェイクニュースだといっているわけです。
これは同じ指摘を受けた日本企業とも大きく異なり、アシックスのコンプライアンス問題にまで発展することでしょう。
「報告書は2017~19年に8万人以上のウイグル族が強制収容所などから中国全土の工場に送られたと分析。各社が供給網の末端で強制労働とつながりがある可能性は排除されていないとした。
指摘を受けた各企業は事実確認などの対応を急ぐ。東芝は強制労働の疑いがある調達先を調査。「当社や連結子会社の直接取引先ではないことを確認」した一方、東芝がブランド使用を認めている企業で、疑いのある調達先と取引があったケースが判明。「強制労働の実態は確認されなかったものの、昨年以降の開発機種は当該調達先の部品を採用していない」とする。
ソニーは「指摘された調達先のうち、サプライチェーン上にある調達先を調べた結果、強制労働の事実は確認されなかった」と強調。シャープや日立製作所、TDKも確認された強制労働の事実はないとする。その一方で、「今後、事実が取引先で判明した場合は断固として是正を求め、改善されない場合は取引停止などの対応も検討する」(シャープ)とする。
企業の短期的な利益追求よりも経営の持続可能性が求められる中、人権を含む社会問題や環境問題への企業責任を重視する投資家からの圧力は強まる。今回の強制労働をめぐる疑惑も対応が遅れれば、企業にとっては重大な経営上のリスクに発展しかねない」
(産経3月22日)
https://www.sankeibiz.jp/business/news/210322/bsc2103222012007-n1.htm
この記事で報告書と呼ばれているのは、2020年3月、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が公表したものです。
(ブルームバーク2021年2月22日『日本の12社、ウイグル弾圧企業との取引停止へ-報道 』 )
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-22/QOWP1VDWRGG501
"Re-education’, forced labour and surveillance beyond Xinjiang"(新疆の強制労働と監視「再教育」)
「 中国政府は、ウイグル人やその他の少数民族1人の市民を新疆の極西地域から全国の工場に大量移送することを促進した。
強制労働を強く示唆する条件の下で、ウイグル人は、アップル、BMW、ギャップ、ファーウェイ、ナイキ、サムスン、ソニー、フォルクスワーゲンを含む技術、衣料品、自動車分野で少なくとも82の有名なグローバルブランドのサプライチェーンにある工場で働いている。
この報告書は、2017年から2019年の間に8万人以上のウイグル人が新疆から中国全土の工場で働くために移送され、そのうちのいくつかは拘禁キャンプから直接送られたと推定している。
家から遠く離れた工場では、通常、分離された寮に住んでおり、3人単位で組織化された北京語を受け、労働時間外のイデオロギー訓練を受け、絶え間ない監視の対象となっており、宗教的な遵守に参加することは禁じられている。
中国は新疆で超法規的な「再教育キャンプ」のネットワークに対する国際的な非難を集めている。
この報告書は、中国全土の一部の工場が世界的なサプライチェーンを汚染している国家主催の労働移転計画の下で強制的なウイグル労働を使用しているという新しい証拠を明らかにし、少数民族を対象とした中国の社会キャンペーンの新たな段階を明らかにしている」
(オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)" Uyghurs for sale"より )
https://www.aspi.org.au/report/uyghurs-sale
この報告書を基にしてBCI(ベターコットンイニシアチブ)は、昨年10月に新疆棉に対する認可証の発行を停止し、その強制労働と人権侵害問題に懸念を示しました。
中国は新疆ウィグル自治区で数百万規模と言われていると洗脳キャンプに隔離し、さらにその「卒業生」を中国各地の工場に派遣して劣悪な環境で使役しているようです。
かつてのナチスの強制労働の亡霊が蘇ったようです。
世界の良質な綿製品を扱うアパレルメーカーのほぼすべてがBCIに加盟していますから、この認証を受けないと高品質の綿製品を使っていると名乗れなくなります。
それもあってH&Mやナイキは新疆綿の取引を中止しました。
それに対して、例によって例のごとく中国は官製のボイコット運動を開始しています。
「中国新疆ウイグル自治区の人権状況をめぐる問題に絡み、同自治区産の綿花を製品に使わないと宣言したスウェーデンの衣料品大手のH&Mが、中国で激しい批判にさらされている。国営メディアや中国共産党系の団体が24日になって一斉に批判を展開し始め、ネット通販大手のサイトでは商品を検索できなくなった。 中国当局によるウイグル族への人権抑圧批判を踏まえ、H&Mは昨年9月、新疆産の綿花を同社の製品に使わないとする声明を発表していた。
中国国営中央テレビは24日夜、SNS上で「中国で大もうけしておいて、中国を中傷し、勝手に罪をなすりつける。ビジネスの基本倫理すら毛頭ない」と強く批判。国営新華社通信や共産主義青年団などもSNS上で相次いで同様の批判を発信した」(朝日3月24日)
さてここでアシックスが問題とされるべきは、アシックスが人権意識の鈍さを暴露しただけではなく、更に一歩踏み込んで、「一つの中国原則を終始支持する。中国の領土主権の完全性を守ることを固く決意する」という中国政府の立場を無条件に肯定してしまったことです。
このアシックスの発言は、二重に問題です。
ひとつは、BBCの報道をきっかけにして世界主要国がジェノサイドと認定し、非難と制裁に向かっているウィグル少数民族弾圧を、あろうことか中国政府の立場まで「理解して支援」してしまったことになります。
これは無印良品の良品計画本社が、ウィグルの事態に憂慮するとした消極的対応と較べても、より積極的に弾圧者を支援するという積極支持に回ったことを意味します。
中国に進出した日経企業には、いまだ2012年に起きた反日暴動で多くの工場店舗が焼き払われた経験がトラウマとして残っていることに加えて、コロナによる消費市場の低迷下でも中国市場だけが堅調な伸びをしめしているからです。
今後アシックスなどの企業は、国際市場が低迷する中、中国市場だけが伸びると予測しています。
特に若者向けのアパレル、スポーツ用品は今や初めから中国市場を主要ターゲットにして設定されています。
そしてこの中で起きたのが、米中経済対立から端を発する一連の中国非難の流れであり、中国は市場に参入しようとする外国企業に対して、従属するか、出て行くかという踏み絵を踏ませました。
そもそも一般の国で政治的な踏み絵を踏ますこと自体が考えられもしませんが、この国はそういう国なのです。
大量消費を餌に中国市場に誘い込み、政治的踏み絵を踏ませて飼い馴らそうとし、それに逆らうなら政府が雇った暴徒に店舗や工場を焼き討ちさせて、恬として恥じない国なのです。
思えばこんな政府が民族主義を煽り、外国企業や公館を攻撃するといった中国流は、義和団事件の昔からまったく変わらないやり方でした。
今回はまだ始まったばかりにすぎません。
以後、中国市場に参入した外国企業は続々と踏み絵を踏まされ、従属することを誓わされることでしょう。
ちなみにこの中国流をそっくり模倣したのがコリアです。
慰安婦像を立てたのは反日団体有志ですが、いったん建てればこれを政治的に利用し反日攻撃材料にするのは政府。
ね、同じでしょう。
大中華悪党と小中華の違いがあるだけです。
それはさておき、これが楊潔篪(ようけつち) がアラスカ会談で言った、「我々はまだ西洋人から受ける苦痛がたりないとでもいうのか?」という言葉の答えです。
中国は自らに対する圧力は、必ずナショナリズム、それも健全なそれで狂おうしいばかりの民族主義と排外主義で応えようとするのです。
中国は、日頃は世界に冠たる中華帝国と大いばりしているくせに、いったん国際社会から非難を浴びようものなら、一気に180年前のアヘン戦争の頃に逆戻りしてしまうのですから、たまったもんじゃありません。
今回H&MなどのCMに出ていた中国人女優などが出演拒否の理由を、「中国が汚された」といっているようですが、それは逆です。
「中国を汚した」のはH&Mではなく、ジェノサイドを働く中国共産党のほうです。
デマだ、フェークだというのは勝手ですが、国際社会から調査団とメディアを受け入れればよいだけのことでで、それを拒否し続けているからこうなるのです。
そして安直にナショナリズムを爆発させ、徒党を組んでボイコットだ不買だと叫んで外国企業に押しかける、こういう無知無自覚な中国国民のあり方を魯迅は阿Qと呼んだのです。
今回アシックスが踏んだのは、「中国の一つの中国原則を支持し領土主権を完全に守る」という踏み絵でした。
これは、中国のいう「領土の核心的利益」を全面肯定することを意味します。
中国の「一つの中国原則」とは、米国のワン・チャイナ・ポリシーと異なり、台湾の「解放」まで含む、中国の領土政策を含む侵略主義的概念です。
これをいったん飲むと、台湾のみならず中国は南シナ海、東シナ海の尖閣まで含んで「神聖不可分な領土」としているわけですから、アシックスは台湾・尖閣で中国政府の側についたということを意味します。
これはウィグルや台湾のみならず、私たち日本国民に対する重大な背信行為です。
しかもアシックスは、ただの一企業ではなく東京五輪のゴールドパートナーですから、東京五輪はウィグルのみならず、台湾・尖閣まで含む中国政府の領土的立場に諸手を上げる企業が支援する薄汚れたものだということになります。
アシックスは、いつから中国政府の支配下の企業になってしまったのでしょうか。
この中国法人の公式声明を日本本社も容認するなら、アシックスはもはや日本企業ではありません。
さっさ神戸から北京に移動したらいかがでしょうか。
きっと尖閣に上陸してくる海上民兵はアシックスを履いてくることでしょう。
※画面テーマを桜に模様替えしました。いま、桜はあでやかに満開です。
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管理人さんの気持ちは痛いほど分かります。アシックスの人権意識には私も愕然としますがアシックス側としても中国に工場を持っていて工場が閉鎖されたらとか、日本人の社員が拘束されたらとか考えていると思います。人権侵害を批判するだけでは中国には対抗できないというのが現実です。実際に社員がフジタの時ように拘束されれば会社側の責任問題にも発展しかねません。管理人さんはもしそうなったらどうするのでしょうか。アシックスを批判するのは簡単ですが人質外交をもろともしない中国に対抗する手段を考えないと財界全体が中国になびきます。私には日本もスパイ防止法を作って中国に対抗することしか思い浮かびません。
投稿: ken | 2021年3月29日 (月) 04時01分
普通は黙ってるか、新疆綿使ってるかどうかすら誤魔化しとくんでしょうけど、
ここまで踏み込んだ声明出すってことは···まあ間違いなく共産党のエライ人から狙い撃ちで直々に「言わされた」んでしょ。
投稿: 山形 | 2021年3月29日 (月) 05時51分
ウイグルの人々のことについて思いを馳せるならば、アッシックスのようにものを言うことはできない筈だ。人権の弾圧とか難しい表現をするならば事の重大さはむしろ通じにくくなるのではないだろうか。これは、ナチスが行ったジェノサイドと同じものだと言った方が良い。自分自身が家族から引き裂かれ強制労働をさせられるなんて許せることではないのだ。
私はこれからアッシックス製品を極力買わないようにしたい。
洗脳された中国人の愛国心は利己主義でしかない。人道に悖るのだ。アッシックス社は中国から引き揚げ、会社を解散した方が良い。社員は困るだろうが、悪いことをして非難を浴びるよりはその方がよい。
投稿: ueyonabaru | 2021年3月29日 (月) 07時24分
kenさんのご指摘通り、あのようなごろつき国家で商売をする以上一民間企業が旗幟を鮮明にするのが難しいのは理解できます。が、ここまで突っ込んだ内容(まるで皇帝の靴をなめるが如き)を表明することには大いに疑問を感じてしまいます。現地法人の発表と言うことで神戸の本社がどういう意思を表明するのか気になるところではあります。
アシックスと言えば前進はあのオニツカタイガー、歴史ある企業なだけに変なところで味噌を付けないことを願うばかりです。
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2021年3月29日 (月) 08時40分
甲高の多くの日本人に合った運動靴の選択肢が狭まりますが、新聞やテレビのニュースを見ていない若者が、正確な(国際的に事実とみなされている)情報を把握し、既得権を含むしがらみのない欧米諸国の人々と同じ距離感で、人権侵害に対してNoという消費行動を示す予感がします。
それが顕著になり、何を言っても無駄といったあきらめ感もありますが、すべてを置いて帰る中で日本人を無事に帰国させるために、欧米に歩調を合わせた外交折衝と国会決議を粛々と積み上げ、それを淡々と報道する流れが促されることを願っています。
良く言えば後の先をとって、悪く言えば二番の一番で既得権を得て維持している面々ほど、弱みを握られていない限り、人権侵害なくすという大義につくのはたやすいと思っていて重い腰が上がらなくなっているように思われます。
すべてを置いて帰ってくる(他国に移る)企業を欧米陣営でサポートするといった形で、新たなビジネスチャンスが編み出され、人質や拘束といった犠牲をもエネルギーにしていく新たな国家連合がつくられた後に、勝ち馬に乗れば良いということにはならず、悪名高き(?)TPPのように乗り遅れないようにしなければならない時代なのに。
投稿: 梅匂人心 | 2021年3月29日 (月) 10時04分
かなり衝撃的です。
この問題は kenさんが言うような、「社員がフジタの時ように拘束されれば会社側の責任問題にも発展しかねません。管理人さんはもしそうなったらどうするのでしょうか?」などという簡単な話ではありません。
政府はジェノサイド認定せず、先の非難声明にも加わっていません。
アシックスはこうした事から日本政府の方向性をさぐり、今回の現地法人の声明を承諾したに違いありません。民主主義国際社会の一員としての貢献はおろか、足を引っ張るような日本政府のありさまには絶望感すら感じます。
ナイキやH&Mと対極にある今回の声明は、アシックスが人権をないがしろにしてもうけたとしても、民主主義社会では重い十字架を背負う事になるでしょう。
それ以前に、コンプライアンスや重大な企業倫理違反に問われる可能性のある事案に対し、事実を「ない事」として安直に判断した態度からさっするに、パナソニックのように中国現地法人の方が本社よりも権限が強いという事である可能性が大です。すでにしてアシックスは実質的に中国企業だという事か。
また、アシックスなど潰れようがどうでもよい企業ですが、このような事態が他の日本企業にも続くとすれば、世界に対して「やっぱり日本は人権意識が低い国」との烙印を押される事になります。
南京や慰安婦問題に対する憂慮から判断を留保していた日本政府・外務省は、日本版マグニツキー法の制定を速やかに行うべきです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年3月29日 (月) 11時08分
東京、北京、オリンピック開催を相当に意識しての工作の一環なんでしょうね。
尤も、在仏中共大使館Twitterアカウントは、中共の台湾政策に批判的なフランスの学者を指して「チンピラ」(AFP)と投稿したのに続いて、批判的な人々を「狂ったハイエナ」(AFP)と投稿して、研究者たち議員たちからフランス外務省まで怒らせ中だし。
中共は、日本には慰安婦問題、アメリカには国内人種差別問題を挙げて「あなた方だって他人のことがいえるのか」と主張したので、「それは自白と考えて宜しいでしょうか(古畑任三郎風)」なわけですが。
「一切」という以外、具体的にどれが何故デマであるのか、中傷であるのかをアシックスは明確にしないので確認したくなりますが、対台湾政策で中共を批判する者は「ごろつき」(毎日新聞)との主張を認め同意し、中共のウィグル族に対する人権侵害はデマである、これがアシックスさんの公式見解であるということで、宜しいんでしょうかね。
投稿: 宜野湾より | 2021年3月29日 (月) 13時12分
及び腰の日本政府だって前政権から遠回しに「中国から早めに足洗っておいた方が良いぞ」というメッセージは出ていた訳で、言わされたものだとしても同情もなにもありません。
このポリコレ全盛の時勢にしかもそれがより強く出てしまうスポーツ業界を生業としている企業が誰が見ても不利にしかならない表明をあえてしたはそういう事なんでしょう、残念でなりません。
当然のように今日の上げ相場の中で自社株も暴落しているしこのまま手をこまねいていれば最悪中国絡みの投資家に株握られて取り返しの付かない所までいくでしょう。
さらに今回の騒動で他の同じような立場の日本企業はなんだかの意志表明を強いられる事になるでしょうから、見物です。
どっちに転んでも地獄は見ますがそれは承知の上での中国進出だった訳ですから「その時」が来てしまった以上、毅然とした経営者としての態度を示して欲しいですね。
そう言った意味ではアシックスはきっぱりと態度を表明してくれただけマシとも言えますね。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年3月29日 (月) 17時48分