ミャンマー国軍の虐殺を止めろ!
ミャンマー国軍の狂気が止まりません。
ミャンマー軍はすでに2月1日以降のクーデターで、国際メディアが把握しているだけで423名、拘束されたり、行方不明となった市民だけで2428人に達しています。
おそらく拘束者の中にはすでに密かに処刑された者も相当数いるはずですから、1000人を超える犠牲者を出しているとみるべきです。
特に国軍記念日には、首都ネピドー郊外で開かれた式典で国軍が軍事パレードを行った後に、デモに無差別発砲して一日で実に市民114人が殺害されています。
「ビルマ人権ネットワークのキャウ・ウィン会長はBBCに対し、ミャンマー軍には「限度も節度もない」ことが明らかになったと話した。
「これは弾圧ではなく大量虐殺だ」
実弾を使った弾圧は、ミャンマー全土の40カ所以上で報告され、首都ヤンゴンや第2の都市マンダレーなどで死者が出ている。
マンダレー管区ミンジャンに住むトゥヤゾーさんはロイター通信に、「(軍は)私たちを鳥や鶏みたいに殺している。自宅にいても」と話した。「それでも私たちは抗議を続ける」。
デモに参加した市民は、クーデターで政権を追われた与党・国民民主連盟(NLD)の旗を掲げ、反全体主義のシンボルとなっている3本指の敬礼で抗議した」(BBC3月28日)
無辜の殺害された人々の中のひとりに、今年20歳を迎えたばかりのミャ・トゥエ・トゥエ・カインさんがいました。
彼女は2月9日ネビドーのデモにおいて頭部を撃ち抜かれて死亡しました。
BBC
「ミャ・トゥエ・トゥエ・カインさんは、今月9日に首都ネピドーのデモに参加し、頭部に深刻なけがを負ったとみられる。警察は当時、放水器やゴム弾、実弾を使ってデモを解散させようとしていた。
人権団体は彼女が受けた傷は、実弾による傷の形状に一致すると主張している。
ミャ・トゥエ・トゥエ・カインさんが入院していた病院の医師の1人は、「正義を求め、前進する」とAFP通信に語った。また、彼女が集中治療室に運ばれて以来、病院スタッフには大きな圧力がかかっていたと話した。
彼女は入院中に20歳の誕生日を迎えた。(略)
兄によると、ミャトゥエトゥエカインさんはNLDが大勝した昨秋の総選挙で初めて投票を経験していた」(BBC2月21日)
彼女だと推定される女性が、発砲を受けてなぎぎ倒されるデモ隊の中にいる画像を確認できます。
彼女にとってこれがおそらく初めてのデモだったはずですが、「逃げないで」と叫んでいる彼女を多くの人が目撃しています。
この数分後に彼女は射殺されました。
BBC
このミャンマー国軍の狂気を絶対に止めねばなりません。
腰が重かった国際社会もやっと動きだ始めました。
特に異例なのは、自衛隊をはじめとする各国軍のトップが共同声明を出したことです。
■令和3年3月28日
統合幕僚監部
各国参謀長等による共同声明について
統合幕僚長山崎幸二陸将は、令和3年3月28日(日)(日本時間)、ミャンマーで生起している事態に対する平和的な解決を求めて、以下の共同声明を発出することと致しました。ミャンマーにおける同国軍による暴力行為を非難する各国参謀長等による共同声明
以下は、オーストラリア連邦、カナダ、ドイツ連邦共和国、ギリシャ共和国、イタリア共和国、日本国、デンマーク王国、オランダ王国、ニュージーランド、大韓民国、イギリス及びアメリカ合衆国の参謀長等による共同声明である。
参謀長等として、我々はミャンマー国軍と関連する治安機関による非武装の民間人に対する軍事力の行使を非難する。およそプロフェッショナルな軍隊は、行動の国際基準に従うべきであり、自らの国民を害するのではなく保護する責任を有する。我々はミャンマー国軍が暴力を止め、その行動によって失ったミャンマーの人々に対する敬意と信頼を回復するために努力することを強く求める
今までわが国の自衛隊が、各国軍隊のトップと連名で共同声明を出すことは、寡聞にして聞いたことがありませんでした。
いままで寡黙な「9条の自衛隊」しか知らなかった私には嬉しい驚きです。
このような各国共同声明に署名した山崎統合幕僚長は、意識せずして、自衛隊は「半軍隊」ではなく国際社会で各国軍と肩を並べる軍隊であると宣言したことになります。
それはさておきここで山崎陸将と各国軍トップは揃って、「プロフェショナルな軍隊の国際基準は、国民を撃つことてはなく守ることである」と言い切っています。
まさにそのとおりです。
これが「国軍」が国の軍隊である所以であり、これこそが絶対的な国際基準なのです。
したがって、自国の国民を無差別に撃つようなミャンマー国軍は、もはや「国軍」の名に値しないと言っていることになります。
これがプロフェショナルの軍人の矜持であり、プライドなのです。
さて、わが国外務省も遅まきながら声明をだしました。
■ミャンマーにおける多数の市民の死傷について(外務大臣談話)
1・日本政府は、国際社会の度重なる呼びかけにもかかわらず、ミャンマー国軍・警察による市民に対する実力行使により、3月27日にはこれまでで最多の死者を数えるなど、ミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難します。また、犠牲者の御遺族に対し哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞い申し上げます。
2・ミャンマー国軍・警察による市民への発砲や被拘束者に対する非人道的な扱い、報道活動に対する厳しい取締りは、民主主義の重要性を唱えるミャンマー国軍の公式発表と矛盾する行動です。軍隊は国民の生命を国外の脅威から守るための組織であることを、ミャンマー国軍指導部は想起すべきです。
3・平和的に行われるデモ活動に対して実弾が用いられることは断じて許されません。日本政府は、ミャンマー国軍が、市民に対する暴力を直ちに停止し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者を速やかに解放し、民主的な政体を早期に回復することを改めて強く求めます。
いつも常に口になにかを入れてしゃべっているような外務省としては、よく言ったというべきではあります。
「強く非難する」と言う表現は、今の外務省にできる最大限の強さですから素直に褒めてやりたいのですが、肝心要の制裁の具体性が見えません。
非難声明は言葉だけではなく、実効性のある制裁とワンセットで初めて意味を持ちます。
外務省はいま毎日数十人、時には100人の桁で積み上げられる虐殺をどうやって止めるきなのでしょうか、そこがまったく見えません。
米国は先日、貿易を停止すると発表しました。
ミャンマー国軍系の企業2社に対しての制裁です。
これはミャンマー国軍が経営するミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)などを指します。
「米財務省は25日、ミャンマーでクーデターを起こした国軍が深く関与する2企業に制裁を科したと発表した。国軍の資金源に打撃を与えて、クーデターに抗議するデモ参加者への弾圧を停止するよう迫る狙いがある。
制裁対象に指定したのは、国軍系のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)とミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)。2社は米企業との取引が禁じられ、米国にある資産が凍結される。バイデン政権は2社に対する事実上の禁輸措置をすでに発動しており、国軍の資金源への締め付けを強めたことになる。
米財務省は、2社について貿易や資源、酒類、たばこ、消費財などの分野で強い影響力を持つと指摘した。2社はインフラや金融、通信といった幅広い分野の事業会社も抱えており、制裁の影響が一般市民の生活に及ぶ可能性がある。制裁を受け、米国以外の企業も2社との取引を控える動きが加速すればミャンマー経済に痛手となる」(日経3月26日)
自衛隊では考えられもしませんが、ミャンマー軍は中国人民解放軍をまねて多種多様な民間企業を経営していますが、その中心がこのMEHLです。
ミャンマー国軍はこの会社をハブにして、さまざまな事業を手がけ、金融投資によって巨額な金を得て、それを国軍に貫流させています。
朝日
「ミャンマーには「ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)」という、もう一つの国軍系複合企業も存在する。MEHLやMECは傘下に銀行や通信、ホテル、製鉄など幅広い企業を持ち、国内経済に強い影響力がある。(略)
MEHLとMECはともに1950年に設立された国防協会が前身。協会は生活物資を売る小売店から始まり、60年代にかけて銀行や保険、海運会社も持つ一大組織に成長した。
国軍は90年にMEHL、97年にMECを創設。優良な国営企業を民営化して傘下に収め、外資と合弁を組むことで成長を続けた。残った国営企業は軍人らの天下り先とし、国軍は利権の維持と拡大に成功した」(朝日2月23日)
米国はこのMEHLを狙い撃ちして、米国資産の凍結と貿易の停止を命じています。
それはこの国軍系2企業が、ただの金もうけて国軍幹部の懐を富ましているだけではなく、彼らがなした悪行のひとつであるロヒャンギ迫害や、今回の国民虐殺にもその資金として投じられている疑いが強いからです。
「国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは10日、ミャンマーの国軍系企業の株主に国軍部隊が含まれ、配当が軍の資金源になっていると示す報告書を発表した。イスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害など「人権侵害を支えている」と指摘。合弁を組む外国企業には国軍系企業との提携の解消を求めた。
国軍系企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)は、金融、農業、鉱山採掘など幅広い事業を手掛ける複合企業。国軍最高司令官らの監督下にあり、取締役は全員が軍人か退役軍人が務める。現役兵や退役軍人の「福祉」への貢献を企業目的に掲げている。
アムネスティの報告書によると、MEHLの株式の一部は国軍の地方司令部や部隊が保有する。2017年にロヒンギャの村での掃討作戦を指揮した司令部も含まれる。各部隊に支払われた配当金の具体的な使い道は不明だ」(日経2020年9月10日)
では日本はなにをすべきでしょうか。
ひとつしかありません。
ミャンマー国軍を徹底的に締め上げて、虐殺を速やかに停止させることです。
そのためにこそ、いまに至っても外務省が得意気に口にする「国軍との太いパイプ」が意味があるのです。
今さら、国軍を制裁すれば中国に行ってしまうなどと寝言を言う者がいますが、逆です。
すでにミャンマー国軍は中国側にとっくに走っていってしまい、クーデターを容認した中国ですら、やや困りぎみなのです。
いまや皮肉なことには、ミャンマー国軍の味方はあのならず者国家・ロシアしかこの世界に存在しない有り様です。
ならば、ここで大昔日本軍が残した忘れ形見のミャンマー国軍の死に水をとってやるのは、日本以外いないでしょう。
一切の経済援助の即時停止はあたりまえです。
本来は、国軍系2企業の貿易の停止、日本国内資産凍結、さらには民間企業投資の制限などをすべき時期なのですが、国連制裁決議があれば別ですが、現況では根拠法が希薄です。
ここでもウィグル制裁と同じ問題につきあたってしまいます。
もはや国際人権法を作ることは緊急の課題です。
日本はミャンマー虐殺を止めるために最大限のことをしろ!
« アシックス、ウィグル弾圧で中国政府を支持 | トップページ | もうPKFを入れるしかないのか »
あそこの軍隊は完全に中国式で、少数民族や市民を虐殺するために特化した暴力装置ですからねえ。。エリートほどその意識が高くて装備も良いという不思議な国です。
独立を助けたのは旧日本陸軍でしたけど。。
投稿: 山形 | 2021年3月30日 (火) 07時27分
今回のクーデターにおいて軍側の唯一の道はスーチー側の選挙不正や汚職等の明確な証拠を即座に提示し、自身の正当性を証明する事でした。
しかしおおかたの予想通りそんなものは無く時間切れで一番最悪な展開に転げ落ちました。
ある程度軍部の既得権益が守られている政治体制の中でなぜこのような超ハイリスクローリターンな手段に出てしまったのか全く理解出来ませんが、徐々に権威を失っていく軍の未来への不安とそこに「国のために」という権力者に作られた大義名分が合わさった最悪の選択というのが今のところの見方でしょうか。
軍としては生き残るにはもう中露側にすがるしか道は残っていないのでそれを止める事はできないでしょう。
中国はこれによって起きる制裁を「アジアへの差別」とすげ替え工作を行ってくるでしょうから東南アジア諸国がこれになびかないように日本政府はアジアの大国の立場から促していく必要があります。
あるんですが…できるのかなぁ今の外務省に。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年3月30日 (火) 08時30分
餅は餅屋、職業軍人どうし、分かれ、分かってくれという働き掛けは、とても斬新で良いやり方だと考えます。
それでどうするか選ぶのはミャンマー国軍自身です。
10年くらい前から、各国の製造業は製造拠点の「チャイナプラスワン」の選択肢の一つにミャンマーを選んで進出して来ました。
ところがこのコロナ禍、原材料をミャンマーで輸入して加工、完成品を輸出する生産方式は打撃を受けていますが、少し調べてみたら、非常に多くのミャンマー人が従事するアパレル関係で多くの縫製労働者の解雇が出てしまい、EUが昨年4月に500万ユーロ(6億円弱)で設立した救済基金に、今年1月もう500万ユーロ(6億円強)を追加拠出したほどなのだそうです。
ミャンマー国民が収入面の生活不安状態になるだけでなく、突然意味なく武力で命を取られるのを映像で見て、我が方のいまだ恵まれ方を思います。
ミャンマー国軍と疎通回路があるとされる我が国に(否が応でも、暗黙にも)求められる、期待される役割は、ミャンマー国軍に対してダメージ或いは修正を、最も効率よく与えられる方法を取れるようにして実行することですね。
それにしても、本物のマッド・メンを見た…としか言いようのない狂気。
投稿: 宜野湾より | 2021年3月30日 (火) 13時01分
いまや皮肉なことには、ミャンマー国軍の味方はあのならず者国家・ロシアしかこの世界に存在しない有り様です。
えぇ、ほんとに。インドも困り気味で静観とはいえミャンマーのパレードにちゃんと参加してますし、元々インド国境地帯では国軍の許可を得て武装勢力と争ってたり、ミャンマーは中国よりインドからの武器購入のが多いですもんね。インドへ逃亡した警察官の返還どうするんでしょうね。
カレン族はキリスト教が多いし、やっぱりミャンマーはいろいろ複雑ですね。
投稿: いろは | 2021年3月30日 (火) 14時26分
現実的には、「虐殺をヤメロ!」と迫ったところで、ミャンマー国軍は
そのまんまだと思いますわ。誰も彼も皆そう思っている。北朝鮮やら
大中華の軍と同じ。国軍という名だけど、その実は私兵集団なので、
国民の利益より特定集団の利益を優先するのが当然だからです。
戦前の我が旧大日本帝国もそうでしたので、国民の若者を特攻に
駆り立てたりしました。まあ、ごく一般の日本国民はヒデー目に合わ
されました。私の故爺さんなど、「けけけ、憲兵はコワかったわい」
と、恐怖にドモりながら話してくれましたっけ。
私兵なので、その教育でも「第一条は絶対に国民を守れ!第二条
は第一条を絶対に守れ、以下なし」なんて教えは無くて、上に対する
絶対服従だけですわ。民主主義国の軍隊なら、末端の兵であったと
しても、一般自国民への攻撃など命令であっても自主的に背きます。
でも私兵どもなら自国民への攻撃など、命令した上に対しての手柄
だてとして進んで攻撃します。
そんな絶対権力ピラミッド型の私兵軍団なので、コッチの言うコトを
聞かせようとすると、ガチンコ対決で屈服させるか、何らかのディー
ルをして落とし処を探して妥協するか、ですわ。一般国民などカヤの
外です。残念ですけど、スー・チーさんには政治的な実務力が無か
ったようです。ミャンマー国軍とのディールに失敗しているからです。
米国がガチンコに出ると、中共が出てくるのは確実ですわ。可愛い
数少ない中共の舎弟なのですから。こりゃ世界のモメ事は、突き詰
めると、米中の第二冷戦に行き当たってしまうという、身も蓋もない
解決不能の成り行き任せの出たトコ勝負になってしまい、歯がゆい
ですわ。尖閣もどうなることやら・・
投稿: アホンダラ1号 | 2021年3月30日 (火) 23時31分