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2021年3月12日 (金)

福島事故におけるリスクコミュニケーションの致命的失敗とは

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3.11を控えて、カンが妙にはしゃいでいたそうです。おー、気味悪ぅ。
2月22日の衆院予算委員会ではパネルまで持ち出して「忠告」なるものをしています。

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予算委で「菅・菅」対決 危機管理めぐり議論:時事ドットコム

「菅氏は2月22日の衆院予算委員会で、次のように菅義偉(すが・よしひで)首相をただした。 「新型コロナウイルス問題と原発事故問題は、危機管理とか緊急事態という面で見ると、共通の面もある」
 「(コロナ危機の)最悪のシナリオが菅政権、菅首相には見えない。そこが非常に大きな問題だ」
 菅氏はこのところ、菅首相への「助言」だとして盛んに「今必要なのは最悪の事態を想定した対応だ」と主張しており、東京新聞のインタビューでは「菅政権の危機管理能力は非常に疑問だ」と語っている」(産経3月11日)

なに言ってんだか、アンタにだけは言われたくない。
カンの失敗は後世に書かれるであろう原発事故失敗学教科書に特筆大書きされるほどゴージャスなもので、どれを取り上げるべきか迷うほどです。
事故処理においてズブの素人なのにもかかわらず不要な介入をくり返し、修羅場の現場に突然押しかけてみたり、事細かく現場作業に介入し吉田所長に注水停止を「命令」して、混乱を招いています。

吉田氏などはっきりと「あの馬鹿」と呼んでいたそうですが、カンのほうは吉田所長が東工大出だとわかると妙に持ち上げたそうで、あの歳まで学歴が大事のようです。
カンが東工大在学中にした研究といえばマージャン点棒の研究だけで、もっぱら学生運動に熱中していたようですが、ま、いいか。
各種事故調もこぞってカンについて、最悪の事故対処だったと酷評しています。

「無用な混乱と事故がさらに発展するリスクを高めた可能性も否定できない。場当たり的で泥縄的な危機管理」(民間事故調)
「現場対応の重要な時間を無駄にしただけでなく、指揮命令系統の混乱を拡大させた」(国会事故調)
「現場を混乱させ、重要判断の機会を失し、判断を誤る結果を生むことにつながりかねず、弊害の方が大きい」(政府事故調)

当時政権にいた民主党は、あらゆる局面で失敗を繰り返していました。 
避難指示は猫の目のように変わり、逃げた先のほうがより線量が高かったりする悲劇が頻発しました。

「震災の年の5月初め、全村避難を強いられることになった福島県飯舘村を取材した際、菅野典雄村長(当時)は語っていた。 「菅首相が『(避難区域設定は)やりすぎるぐらいやってちょうどいい』と言っていたと何人もから聞いた。それでどういうことが起きるかも考えてほしい」
村の幹部も「結局は菅政権の保身だ。命は大切だという美辞麗句の下で、政府は村民に何十倍、何百倍のリスクを負わせている」と述べていた」(産経前掲)

一方、カンの副官だった枝野官房長官は、伝えるべきSPEEDI(放射性物質拡散情報)を公表しませんでした。
当時どこにどれだけの放射性物質が降下したのか、それこそが「被曝」地住民が喉から手が出るほど欲しかった情報でしたが、政府からなんの情報提供もないのですからお手上げです。

当時私は村の役場に問い合わせてみると、そんなことは県に聞けと言われ、県に聞けば国からなんの情報提供もないと言われる始末です。
かくなるうえはとモニタリングポストがある自治体役場に走ってみれば、混乱してわけがわからず、これが事故後の現地の姿だったのです。
結局、その夏になって自主測定運動を起こして、やっと自分の居住地域の放射性物質の実測値が判明したのですが、その間何カ月あったというんです。

そして後に判明したのは、当時事故対策本部の設置されていた官邸には、実は刻々と経済産業省からSPEEDIのファックスが届いていたのに、だれも気がつかなかったというお粗末ぶりだったようです。
え、SPEEDI 情報の大事さを知る者が官邸にいなかったのか、って。
いました。斑目原子力安全委員会委員長です。
本来この原子力事故は斑目氏が総指揮にあたるべきでしたが、カンが「オレが聞いたことだけに答えればいいのだ」と狂ったように怒鳴り散らすために萎縮仕切ってまるで他人事。
腹の中では軽蔑しきっているくせに権力者にはヘタレれて、なにもしないという最悪の学者根性です。

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斑目自身が書いた漫画

責任を放棄してしまった斑目も充分に問題ですが、このカンという男の権力をカサに着た罵詈雑言の嵐は、東電本社押しかけ事件でもいかんなく発揮されます。
なんと彼は、修羅場の極みだった東電本社に押しかけて喚き散らしていますから豪傑です。

「原発事故で政府の現地対策本部長を務めた池田元久経済産業副大臣(当時)の覚書も、菅氏が現地視察に訪れ、一般作業員の前で怒鳴り散らす姿をこう記している。 
「指導者の資質を考えざるを得なかった」(産経前掲)

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このような半狂乱の首相閣下に妨害されて情報を出し渋り、せめて正気でいてほしい副官までこんなことを記者会見で言い出す有り様でした。 

「直ちに健康被害を及ぼすものではない」

こういうことを、テレビで毎日なんども繰り返して、それで国民が安心すると思っているのがズレきっています。
「直ちに健康被害を及ぼすものではない」とは、時間が立つと放射能の毒が拡がって、病気になるのだ、、晩発性障害の可能性があると政府が言った、と国民は誰しもそう受け取りました。
これが後に東日本を覆い尽くす風評被害の始まりでした。

実際、多くの国民がそう理解して、ミネラルウォーターや西日本の農産品に走りました。 
産直先から西日本の農産品にしばらく置き換えますからといわれたのもこの時期です。
SNSでは、武田邦彦や早川由紀夫が「東日本のものを食べたら死にます」と絶叫していました。
このようにして
2011年3月から数年間に及ぶ「風評被害」と言う名の「被曝」地差別が続くことになります。
わが農場も例外ではなく、以後3年間もの間、無明地獄をさまよい続けるはめになります。 
今思ってもよく潰れなかったものですが、実際、農民から何人もの自殺者が出ました。

もっとも重度の放射能恐怖症に罹った人たちの中から自主避難者がでます。
まったく避難する必要がない地域のひとびとが逃げ出したということに、この事故のリスクコミュニケーショの重大な失敗が現されています。


・県外自主避難者数・・・23,000名(約半数)
・県内自主避難者数・・・18,000名(避難区域でない市町村からの避難者数)
・計          ・・・約41,000名

いまでも元の居住地に帰らずにいる方も多いようですが、この原因を作ったのがこの国の情報の出し遅れです。

さて、ここに原発事故を総括した優れた報告書があります。 
ウェーデン政府がチェルノブイリ事故発生直後の1年間の社会的混乱を総括してまとめた報告書です。  

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これは、スウエーデンの防衛研究所、農業庁、スウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁が1997年から2000年までに行った合同プロジェクトで、「どのように放射能汚染から食料を守るか」(邦訳  『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』)という報告書です。  
この報告書の完成は、事故後10年まで待たねばなりませんでしたが、その報告の範囲は食料だけにとどまらず実に広範で、事故対応、放射能規制、広報のあり方、食品規制、農業対応、そして防衛研究にまで及ぶものです。 

残念ながら、わが国の事故調報告書が事故の技術的解明に終始し、一部においては「だから日本人は」というような安直な文明批評に陥ったことと較べると、その徹底した分析姿勢には感銘を覚えます。 
これを手にしてみると、スウェーデンにおいても事故直後、多くの問題が発生していたことがわかります。

チェルノブイリ事故以後、北欧は深刻な放射能汚染にさらされました。  

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 チェルノブイリ事故だのヨーロッパのセシウム137分布図
(ネーチャー誌2011)
 

事故後の風向きの下流に位置したためにスウェーデンの一部は、福島における40㎞地帯に相当する被曝を受けました。  
また、放射性物質を吸着しやすいキノコ類や、またトナカイやヘラジカを好んで食べる食習慣があったことも、より問題を複雑にしました。 
スウェーデン政府は率直に、この社会的混乱の原因を分析しようと試みています。 
この報告書はこのような総括から始まります。

スウェーデンの原発事故処理の教訓 
バニックは事故直後の情報発信の失敗により起きる 
 

「チェルノブイリ原発事故によって被災した直後のスウェーデンにおける行政当局の対応は、『情報をめぐる大混乱』として後々まで揶揄されるものでした。」
「行政当局は、ときに、国民に不安をあたえることを危惧して、情報発信を躊躇する場合があります。
しかし、各種の研究報告によれば、通常、情報発信によってパニックの発生を恐れる根拠は無く、むしろ、多くの場合、十分に情報が得られないことが大きな不安を呼び起こすのです。とりわけ、情報の意図的な隠蔽は、行政当局に対する信頼を致命的に低下させかねません。」
「行政当局が十分な理由を説明することなく新しい通達を出したり、基準値を変更したりすれば、人々は混乱してしまいます」

このようにスウェーデン政府は、情報の隠蔽と二転三転する説明こそが、国民に混乱を与える最大の原因だとしています。  
スウエーデン政府がこの報告書で、自戒を込めてここで「行政当局は、ときに、国民に不安を与えることを危惧して、情報発信を躊躇する場合がある」と述べていることに注目してください。 

スウェーデンを襲ったチェルノブイリ事故がそうであったし、わが国の福島事故や東日本大震災は、その規模と深刻さにおいて前例を遥かに超えていました。
この時に、国の能力を超えてしまうこともありえるのですが、この時に国がなすべきなのは国民と民間企業の協力です。
そしてこの協力を得る近道こそ正しい情報の発信です。
 
いかなる事態が起きて、今どのような状況なのかについて、隠し立てすることなく、明解に意思疎通すべきです。

何をあたりまえなことを、と思われるかもしれませんが、現実に多くの企業や行政が、大規模な事故においてやりがちなことは、この「情報隠し」なのです。 
今起きている事故の状況でイッパイイッパイなのに、正しい情報なんか与えればいっそうこの混乱が広がてしまうと考えて情報を隠匿してしまい、出す時期を失することです。
結局、出しそびれてしまう内に週刊誌などにスッパ抜かれるはめになり、混乱に拍車をかけるはめになります。

当時、わが国の政府が最初に国民に伝えるべきは、いうまでもなく危険情報の基本中の基本である放射性物質拡散図でした。 
これはSPEEDI情報として官邸は持っていたにも関わらず公表せず、似たようなものが出たのは週刊誌現代でした。

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週刊現代」2011年7月16日号

火山学者の早川が上図の拡散シミュレーション図を週刊現代に発表し、これが一気に拡散して実際の放射性物質の降下状況のように扱われました。
当時私もこの早川拡散図を食い入るように見た経験があります。
しかもそれがあくまでも実測値ではなく、PCで作ったシミュレーション図にすぎなかったために不正確で、いっそうパニックに輪をかけていくことになります。

後にこの早川は度し難いデマッターになっていき「東日本の農家はテロリストだ」などということを平気で口走るようになりましたが、当時このような欲しい情報を欲しい時期に提供したために多くの信奉者が出ました。
当然ただの想定図ですから、間違いだらけで、事態は鎮静化するどころか、いっそう拡がっていくことになります。
というか早川は熱狂的反原発主義者であったために、むしろ国民を煽ることに快感をおぼえていたようです。

そもそもこんな基本的情報は政府が直ちに発表するのかあたりまえで、週刊誌に先にでてしまうということ自体が、度し難い政府の無能ぶりと国民に対する愚民視を表しています。 
スウェデン政府は三つの情報は正確に直ちに伝達すべきだとしています。


①汚染の拡大状況
②事故状況辞意ョ右京

政府が、この三つのリスク・コミュニケーションに失敗すると、国民は「政府情報を一切信じない」、「まだなにか隠しているに違いない」という根深い不信感に直結していくことになります。 
そしていったん国家が国民に信用されなくなれば、後に政府がなにを言おうと信じようとせずに、ネット空間の情報や週刊誌、テレビからのバイアスのかかった情報だけを信じる層が生まれてしまうことになります。

先日3.11の報道を見ると、ほとんどこの政府のリスクコミュニケーションに触れたものはなかったようですのですが、重大な危機の時期において国家の責務として問われるのは、このことなのです。

 

 

 

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コメント

  この3日間のブログ主様の福島原発に関する解説は本当に復習になりました。有難う御座いました。福島南部に在住の親戚のリンゴ農家は風評被害に今も苦しんでおります。マスコミ・評論家・エセ科学者には本当に怒りしかありません。
  当事、菅氏は首相として政権運営が行き詰まっており崩壊寸前でした。大地震が発生し津波が原発を襲った時、「俺は東工大卒の理系だ」の過信で、チャンスとばかりに現場に乗り込み「リーダーシップを発揮してカッコいいところを見せよう」としたのが大きな過ちでした。視野の狭い小人物が権力のトップに立ち大事に対処すると失敗する典型例です。戦前の日本軍組織にも似たような人物がいたような。

今でも悔しいのは、311のちょうど1年前にチリ沖の大地震で、三陸海岸に津波があり、住民の3.8%しか避難しなかったんよ。
それを受けて自民党から「津波対策推進に関する法律」が出され、そこには311で多数の命を救えた内容が盛り込まれていた。
だが、菅直人政権はそれを審議せず放置したんよね。
https://twitter.com/pxf03241/status/1369945070581903361

上記引用に始まる、この方の一連のツイートを復習のご参考のひとつにどうぞ。
なお、原発事故を想定した防災訓練のことを菅直人が忘れきっていたのは、朝日ソースで。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104180525.html

ありのままの我が身を振り返ることが求められている人たちが、それどころか歴史修正にチャレンジしていることも含めて記録。

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