北朝鮮、核開発再開、米シリア爆撃から見えてくるものとは
北朝鮮が核濃縮プロセスを再開したとIAEAが警告を発しました。
「IAEA(=国際原子力機関)は1日、北朝鮮がウラン濃縮関連の核活動を継続しているほか、新たに使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す作業への着手を疑わせる動きがあることを明らかにしました。
これは、1日から開かれているIAEA理事会の冒頭演説で、グロッシ事務局長が明らかにしたものです。
それによりますと、IAEAが北朝鮮のウラン濃縮関連施設とみているカンソンの施設で、引き続き活動がみられるということです。
また、寧辺にある使用済み核燃料の再処理を行う「放射化学研究所」では、最近になって水蒸気が上がっていると指摘。プルトニウムを取り出す作業に着手した可能性を示唆しました。
グロッシ事務局長は、北朝鮮の核活動について依然として「深刻な懸念がある」と表明し、国連の安全保障理事会決議の明らかな違反だと非難。今後も、北朝鮮への査察復活に向けて準備を強化していくと述べました 」
(日テレ3月1日)
早くも始まりましたか。
北朝鮮は米朝合意など属人的なものだと思っているらしく、トランプの退陣と共に核とICBMの開発を再開するつもりのようです。
まぁ、正恩からすればトランプならありえたかもしれない第3回直接会談の実現性が完全に断たれた以上、あんな非核化の約束は反故だと考えているのでしょうね。
これに対してのバイデン政権の反応は伝えられていませんが、口で多少非難はしてもなにもしないと思われます。
というか、バイデンにはしたくとも出来ないのです。
なぜなら、バイデンの政策はトランプの残したものを完全に否定することが大原則ですから、トランプがやった直接会談などイの一番にダメダメです。
もっともあんなことができる大統領は、歴史的に見てもトランプだけでしょうしね。
改めて直接会談前の北朝鮮の核開発を巡る状況を振り返ると、国際社会は完全な手詰まり状態でした。
国連制裁決議は北朝鮮を支援する国家や国際ネットワークの幇助のためにスカスカとなっていました。
国連制裁パネルの古川勝久氏のレポートを見てみましょう。
『第3 章 対北朝鮮制裁における日本の課題』
http://www2.jiia.or.jp/pdf/research/R01_Korean_Peninsula/03-furukawa.pdf
「北朝鮮による制裁逃れは依然、継続している。
米政府を含む国連加盟国24 カ国が2019 年6 月11 日付けで国連安全保障理事会1718 委員会(北朝鮮制裁担当)に送った書簡によると、制裁にもかかわらず、北朝鮮は、国連安全保障理事会決議で禁止されている、洋上での石油精製品の瀬取りを何度も繰り返していたことが報告されている。この書簡によると、2019 年1 月1 日~ 4 月29 日の間だけでも、少なくとも79 回の瀬取りが確認され、安保理の制裁決議が定める年間上限50 万バレルの
供給制限が破られたと指摘されている1。平均で1.5 日の間に一回の頻度で瀬取りが行われていた計算となる」
古川勝久 『第3 章 対北朝鮮制裁における日本の課題』
http://www2.jiia.or.jp/pdf/research/R01_Korean_Peninsula/03-furukawa.pdf
韓国政府が韓国船籍タンカーの瀬取り関与を否定 小野寺防衛相は不信感
このように国連制裁決議はまったく守られておらず、北は複数の国の幇助を得て制裁逃れをしていたことがわかります。
整理すれば
・2018 年中米政府が確認した他国籍船からの石油タンカーの瀬取り回数・・・延べ263 回・平均で1.38 日の間に1度
・2019年度第1四半期変わらない頻度。
・2020 年1 月~ 8 月の間、の石炭の密輸出・・・約370 万t(推定3 億7 千万ドル=約406 億円相当)。月平均で46.25 万t
・石炭密輸出のうち7 割以上の約280 万tは、北朝鮮船から中国船へ洋上での瀬取りによるもの。
・北朝鮮労働者の国外追放の義務付け・・・もっとも多い中国とロシアは一度追放した後に観光ビザなどで再入国して無効化。
つまり中国、ロシア、韓国などの国々は北朝鮮の制裁破りを半ば公然と行っていたわけで、トランプがこのような「国連制裁」に限界を感じて、マッドマンセオリの手段を選んだのです。
あのまま直接会談前の状況が進展したとしても、可能なのはせいぜいが瀬取りを封じるために海上封鎖をするていどのことしかできず、最大の北の支援国の中露がそれに参加しない以上、できることは限られていました。
海上封鎖といっても、仮に北朝鮮船舶がそれを突破しようとした場合、船舶を停船させ武装して臨検せねばなりませんが、北朝鮮が拒んだ場合戦闘となります。
最悪、処理を誤れば、戦闘は戦争にエスカレートする可能性があります。
このように、バイデンら民主党が言っている国連制裁の強化、あるいは同盟による北朝鮮包囲網は既にボロボロだったし、これ以上なにかしようとすれば戦争となりかねなかったのです。
このような既に実証済みのことを蒸し返すのが、スリピージョーです。
ま、もっとも仮に彼が直接会談をやりたいと言っても、周囲が絶対にやらせないでしょうがね。(笑)
彼ほど能力が欠落した大統領は歴史上稀ですから。
就任直後の各国首脳との電話会談はカマラがしてしまったような能力では、あながち冗談ではなくいまや「米国の最高機密は大統領閣下のボケ」のようです。
それはさておき、こういうバイデンのおつむの状態を国際社会は不安半分、興味半分で眺めているわけですが、北はさっさと見切りをつけてしまったことになります。
北は核開発再開中止の見返りに、米国政府に第3回の直接会談を呼びかけるかもしれません。
そしてそれが不発に終われば、堂々と核開発を再開する名分を得られます。
その感触を小当たりしているのが現在の段階で、遠からず更に露骨な核開発のステップが始まるはずです。
またバイデン政権は、シリアの親イラン勢力に対して空爆を行いました。
バイデンはここでもトランプ路線を全否定し、イラン核合意に復帰すると言っています。
オバマの数少ない勲章ですからね。
いや待てよ、なにもしないのにもらっちゃったノーベル平和賞があったっけ(笑)。
その一方でサウジに軍事援助を停止するなど締めつけを始めています。
シリア空爆の理由は、イランの米軍への攻撃への報復です。
「バイデン米大統領は2月25日、イランの支援を受けた武装勢力がひそむシリア東部の施設への空爆を指示した。
米国防総省によれば、2月半ばにイラク北部で米軍駐留拠点の周辺がロケット弾攻撃を受けたことへの報復だという」
(ニューズウィーク3月1日)
いちおう米軍への報復と言っていますが、ならばカードを切るのが遅い。
米軍がテロ攻撃を受けたのですから、翌日にでも報復せねばなりません。
半月もたってから、これは実はね、と言っても寝言です。
不思議なのは、今、バイデンはイランとよりを戻したいのに、なぜイランと事をかまえるのか分裂的で理解に苦しみます。
「長年にわたって敵対してきた両国の関係は、オバマ政権下の2015年に締結された核合意をトランプ政権が一方的にほごにしたことで再び悪化。バイデンは就任早々、合意への復帰に意欲を示したが、前提条件として核開発を制限する合意内容をイランが再履行することを要求している」(NW前掲)
バイデンはこのイラン核合意に限らず、WHOやパリ協定の枠組みに戻ることを主張しています。
いみじくもトランプがCPACで、「なんの交渉もしないで、そのまま戻るのか」と嘲笑を浴びせたように、イランにただ核合意の枠組みに戻れといっても戻るはずがないじゃないですか。覆水盆に返らずです。
もうすでに核濃縮の濃度を兵器級にまで上げようとしている以上、イランは米国に更に高いハードルを要求するはずです。
だからいったんトランプが廃棄した核合意を元に戻すことは、至難です。
WHOにしても、米国が分担金割合が中国より多いことを問題視して脱退を表明したトランプに、WHOは必死になって引き止めにかかり「分担金はまけますから止めないで」と袖をつかんで泣いてすがったそうです。
ならばどうせ戻るなら、バイデンはそこから始めりゃいいのです。
分担金だけではなく、WHOの運営の透明化や民主化などいくらでも要求材料はありそうなもんなのに、初めから復帰ありきで始めちゃうから、得られるものも得られなくなります。
それをトランプ憎し、政権オーナーのオバマにいい顔したいばっかりで頭が一杯のジジは、交渉もクソもなく、まんま戻ろうとするのですから、あんたロバか。
なぜそんな簡単なことに気がつかないのか、逆に不思議なくらいです。
話を戻しますが、イラン核合意復活のためにイランにすり寄れば、それは単に米国とイランの二国間関係に止まらず他のアラブ諸国との関係を極度に悪化させます。
トランプがとった中東政策は、中東の紛争の根っこにあったイスラエルとの関係をUAEやオマーンなどと国交を正常化させることで安定化させ、イランを完全包囲してしまうことでした。
これに中東の一方の盟主であるサウジが乗ることも確実視されていたのに、バイデンのイラン宥和・サウジ敵視政策でちゃぶ台返しです。
バイデンは野党時代にサウジのムハンマド皇太子を侮辱したために、そうでなくてもサウジから憎悪されていますしね。
このように見てくると、バイデンの選択肢は限られているようです。
トランプ路線を継承し現状維持を続けるのか、オバマ政権時のようにイランに宥和政策をとってアラブとの関係を放棄するのかの二択です。
前者を選べば、ブリンケンが言っているように「トランプは間違っていなかった」ことがはっきりしてしまって赤恥をかきますし、後者を選べば、イランはいうことを聞かず、アラブ諸国からは憎まれます。
かくして一番安易な解決法である戦争を選んで、力づくで言うことを聞かせようとして泥沼化させてしまいます。
これが民主党の戦争好き体質です。
ポリコレよろしく、自分の価値観を相手に力付くで押しつけようとして戦争を引き起こすのです。
これが民主党流の歴史的失敗のパターンでしたが、また繰り返すのでしょうか。
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世界中でアンクル·サムを嫌う連中はいくらでもいる。その理由がこうした米国流(民主党流)の善意や民主主義の押し付けなんですよねえ。
ちなみに1番上手く行ったのが戦後の日本。。
なんで少しは歴史に学ばないのかと。
いくら今が叩き時でも憎いからってトランプの政策をことごとくひっくり返してたら、そりゃあ世界で信頼されなくなりますよ。。
投稿: 山形 | 2021年3月 2日 (火) 06時29分