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2021年4月

2021年4月30日 (金)

山路敬介氏寄稿 報道されない現代自衛官の本質 その2

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                          報道されない現代自衛官の本質 その2
~沖縄タイムス「防人の肖像」は現代自衛官の姿を表していない。コロナ宮古島派遣自衛官の姿から ~                 

承前

話がそれました。

宮古島では重傷者用の病床が足りず、自衛隊のヘリで本島に搬送される事態にまで至った事はご存知のとおりです。このことの原因としてメディアはGOTOトラベルをあげましたが、この時点で県内宿泊施設からは一人の発症者も出していません。どこでも同じだと思いますが感染は家庭内が多く、宮古島でのクラスターは特養老人ホームや障がい者用などの施設で発生しています。

 メディアとちがい、そうした状況を正確に地元の自衛隊は予め把握していて、デニー知事から出動要請が出た時点ですでに必要派遣人数や、やるべき事も十分に練られていました。

むしろドタバタしたのは沖縄県の方で、派遣自衛官(看護官)の宿舎の手配や要望、支払いなどの細々した事は同時進行的に市役所や現場で了知されて行ったのです。

 派遣自衛官は朝7時には宿舎となったビジネスホテルを出て、駐屯地から差し向けられたマイクロバスで目的の施設に向かいます。この車は窓から内部の様子がうかがえず、私は乗降口方向から中を覗いてみましたが、沢山のビニール間仕切りが徹底されていて、席毎にさえ区分してあるように見えました。

 現場では施設ごとにやる事がちがいますが、当初は感染者の出た部屋や棟全体への消毒など、またリネン類の処分や取り換えなど事後処理が行なわれました。

それから今度は、今後感染者が出た場合の従来動線と別のラインの確保、厨房が使用不可の場合の予備的な対応などを想定した措置をしています。

 これらの事は同じく派遣された看護師たちとの共同で行なわれましたが、参加した看護師によれば「感染を防ぐ目的として、自衛隊の措置は徹底しているだけでなく、最新の予防医学に基づいていたよう」だとの感想を私に話ました。

 当初私は根拠なく、これら自衛隊の関わりは主として施設へのピンポイント的な対応でしかなく、漠然と「不十分なのではないか」と考えていました。けれど、ワイドショーなどで「コロナ地獄の島」のように興味先行の報道をされていた宮古島市が、自衛隊着任後一週間を経ずに新規感染者数がゼロ近くになったのです。いかに合理と徹底・集中が重要であるか、それを行なえる自衛隊の叡智はさすがだと感じざるを得ませんでした。

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宮古毎日 http://www.miyakomainichi.com/2021/04/139370/20210414

今はまた感染者数が徐々に増えてはいますが、件の施設等へのワクチン接種は行きわたり、月末には高齢者一般への接種が始まります。感染者数や保菌者数はともかく、今後は宮古島から死者は出ないだろうと見られています。

 ところで、前に「県の手配がバタバタしていた」と書きましたが、それはたとえば県が用意した宿泊施設は隊の要望を満たすものではありませんでした。派遣された隊員自身が現地で直にホテル側とていねいに相談して、すでに交渉済みの予算枠の中でほぼ100%の協力が得られたものです。

 彼らはまず、万々が一を考え、隊員からの二次感染など夢にも起こらぬように、フロアーを貸し切りにする交渉をしました。キーは各自持ち切りにして出入りは外の非常階段からのみとし、他の宿泊者だけでなくホテル従業員にすら相対しない方法をとりました。

食事も夕食と翌朝の朝食(パンと飲み物程度)が夕食時に一緒に駐屯地から届けられ、狭い部屋で各自別々に済ませます。

 洗濯は自前の洗濯機を一台フロアーに設置して、他の客と接触する可能性のあるホテルのランドリーは使用していません。ホテル側による部屋の毎日の掃除は断り、シーツ交換などはリネン類とともに所定の場所に用意してもらって、それで各自でしています。

もちろん、夜間外出などという事はなく、休日もフロアーから出る事はありません。

体がなまってしまうとかで、フロアーに出てバランスボール運動とかマットを敷いての柔軟体操を良くしていたそうです。

 ちなみに同ホテルには県から派遣された看護師の皆さんも宿泊していて、そちらは一切が他の宿泊客と同様で朝食会場にも行くし、コインランドリーも使っていたとの事。

自衛隊なら、より厳しく万全の体制をとる事の命令があっただろう事は理解できます。

ただ、派遣されたチーム自身が朝夕のミーティングによって、自ら課して常に改善していた点が特筆されるべきでしょう。

 また、報道のせいで看護師団同様に予定の二週間で任務を終えて帰っていったように理解されていますが、その後10日間はホテルで待機し続けています。

感染状況がぶり返さないかどうか注視する目的もありますが、自らが感染源になる事のないよう念を入れての意味が重要だったようです。ですから待機中の10日間も、それまでの二週間と同じように同じフロアーに缶詰め状態で過ごしていたわけです。

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 私ら市民有志はこのチームに対し記念的な謝意をあらわすべく奔走しましたが、丁重に辞退されています。唯一、かかわりのあった施設から駐屯地経由で夕食時に届けられた質素なフルーツ折だけが届けられました。

 コロナ禍中だったので仕方ありませんが、私だけでなく市民の誰もが名すら知らないままで感謝の言葉を届ける暇もありませんでした。チームの皆さんの声をじかに聴くことも出来ないままでした。


フルーツ盛に添えられていた小さな栞に「自衛隊の皆さん、感謝します」と書いてあって、それをチームの誰かが自分のドアの真ん中に誇らしげに張り出してあった事を私に話してくれた清掃担当のおばちゃんがいて、ポツンと「ちょっと、泣けた」と言いました。

                                                                                                                         了

                                                                                                         文責 山路敬介

2021年4月29日 (木)

山路敬介氏寄稿 報道されない現代自衛官の本質 

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                              報道されない現代自衛官の本質 
~沖縄タイムス「防人の肖像」は現代自衛官の姿を表していない。コロナ宮古島派遣自衛官の姿から ~                                                                             
                                                                                             山路敬介

沖縄タイムス紙上で「防人の肖像(自衛隊沖縄移駐50年)」なるシリーズ化された記事が連載されています。昭和の時代、様々なカタチで自衛隊に関わって来た人たちや沖縄とつながる元自衛官らの個人的体験談をつうじ、インタビューを手記風に読ませる事で一見して個々の心情にまでせまった良質な記事と見まごう読み物となっています。

 沖縄タイムス紙は「1972年の日本復帰に伴い、沖縄に自衛隊が駐屯し始めて2021年で50年目になります。沖縄戦が繰り広げられた国境の島しょ県は、現代の「防人(さきもり)」とどう向き合っているのでしょうか。半世紀をひもときながら、部隊配備が進む琉球弧の今を問い直します。」とシリーズの主旨を説明しています。

 けれど、いうまでもなく沖縄タイムスはじめ琉球新報・県内報道機関は米軍基地だけでなく、自衛隊配備反対派に与する傾きが顕著でした。これまでの自身の自衛隊に対する批判的立場の報道から離れて中立性を保持したようにも見せる、お仕着せの主旨はうそ寒さを感じさせます。

 たとえば、このシリーズ開始と前後して沖縄の特殊県的立場(この言い方からして嫌らしい!)にもかかわらず、県内からの自衛官志願者がふえ続けている現状(人口比割合で全国18位)を疑問視していて、その要因を専門家と称される者の言を借りて「自衛隊の南西シフト」「東北大震災での人助け感覚」などがあると分析させています。

 このシリーズの欠点は、一般の現役自衛官の声が欠落している事です。

4/20には防大出の幹部自衛官の「肖像」も登場しましたが、「国際貢献の意義」だとか、外国での「平和維持活動のやりがい」など定型文的に語らせましたが、それはそれで防衛省要望か辻褄合わせのアリバイ的にバランス挿入した印象を禁じ得ないものでした。

 もとより「現代の防人(タイムス称)」たる現役の生の声を拾うのは容易ではなく、特に沖縄ジャーナリズムには困難な仕事と言って良いでしょう。成果は、せいぜい退いた者の過去史としての個人的な苦心談を選別的に語らせるとか、つくり物めいた仕立てとなる以外になく、その原因を沖縄メディアに対する自衛隊内部の「かん口令(説)」によるとする記者もいます。

 たとえば4/19の分は、現在は那覇市中央消防署長の新城敏行氏(57)の回でした。

新城氏は高校時代から身体能力にたけ、18~22才まで自衛隊に在籍し優秀者の証であるレンジャー訓練を受けつつも、辞めた理由を「訓練が戦争ごっこに思えて、人の役に立っている実感がなかった」としています。志望動機は「実弾を撃てるから」だったそうで、その一方で「(復興支援で力を試される平成時代なら)仕事を続けていたかも知れない。救助の手が届きにくい離島県にこそ自衛隊は必要と思う」などと語らせています。

私の後輩にも同じ動機で辞めた者がおりまして、3.11以後は自衛隊を辞めてまでボランティアとして福島に残りました。

 きびしい軍事的訓練をつうじ、もって「社会貢献もしているという実感や誇りを得られなかった」という辞職の動機はありがちの正義のように思えるし、人によっては承認欲求を抑えきれない事もあるでしょう。ただ、そのようなケースも決して現代の自衛隊に一般的であるとは言えません。

 今の自衛隊は良い意味で「職業」としての観念が発達していて、社会貢献の本分は研鑽を積んだ自己の職責をつうじてなされるものである、との考えがより浸透していることが確かです。

 また、自衛隊は国防に関わる軍事的訓練も災害出動などの場合も、当然のことながら優劣や順位を規定していません。上手に説明できませんが、このことは武士道の本質が「日常」にある事と似ているように思います。演習や銃をとった訓練だけが「訓練」であるのではなく、日常の隊務すべてが鍛錬と結びついてこそハッキリした成果が出せているのだと考えます。

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医療逼迫の宮古島に派遣 陸自がきょうから支援活動|テレ朝new

 私がかような考えを再認識するに至ったのは、先の宮古島市におけるコロナ騒動での自衛隊派遣の現場を詳らかに見たり聞いたりした結果です。

タイムスはじめ沖縄のメディアも派遣自衛官への取材を虚心坦懐に徹底しておれば、件の「防人の肖像」があのような薄っぺらい読み物にならなかっただろうに、と思います。

 タイムスが「国境の島しょ県が、「現代の防人」とどう向き合っているのか?」という命題を立てるなら、オジィの昔話を聞くのではなく、今まさに現役である一般隊員を見つめる事でしか解けないでしょう。報道が主として、迎え入れた空港での歓迎場面だけだったことが実に悔やまれます。

以降、差し障りのない範囲で少し紹介します。

 宮古島市においてコロナ感染者が急増し、1/29デニー知事は自衛隊に緊急出動要請を出しました。この事についてネットでは批判のコメントが多く寄せられましたが、なかなか辛辣でありながら正鵠を得た意見も多くあり、無知な反自衛隊派へのよい刺激になったと思います。

 ただ、知って頂きたいのは大方の報道内容とはちがい、沖縄県民や宮古島市民の一般的感覚として、決して自衛隊に対してネガティブな感情を持っていないという事です。

自衛隊誘致政策をほぼ完了した宮古島市においてはなおさらで、今でも「反対」をうるさく叫ぶ専門人員はせいぜい十数人程度でしかありません。

 宮古のおばちゃんは口さがなく、自衛隊反対派の運動員に対し派遣自衛官が空港へ着く頃合いに「あれ~、あんた空港行かんでいいの? 自衛隊くるな!といつものように出口でやったらいいがぁ~」とからかいました。また、「自衛隊反対の人間は、自衛隊の助けを拒むべき」とかなんとか、真顔で厳しい意見を言う人もあり、それはそれで思わず笑えました。

                                                                                                                (続く)

 

               

  

2021年4月28日 (水)

中国にとって台湾は「真珠湾」です

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 昨日からの続きで、我ながら地味なテーマだなと思いつつ、米中の東アジアでの軍事バランスをかんがえています。
もうしばらくおつきあいください。

よくメディアは面白おかしく「米中逆転」とか、軍事力ランキングなどと書いていますが、そもそも発想がまちがっています。
たとえば中国陸軍は89万人といった馬鹿げた数を保有していることに対して、在日米軍は陸軍は実戦部隊なし、海兵隊が1個師団で、しかもあっちこっちに派遣されているので沖縄にいる実数は3千人以下でしょう。
ならば89万vs3千ですから、比較しようがありません。やる前から勝負はついています。

ではこの比較が正しいのかといえば、あたりまえですが無意味です。
中国陸軍がいかにワラワラいようといまいと、台湾や尖閣侵攻にはなんの意味もないからです。
そりゃそうですよね、だってあれだけだだッ広い中国大陸に5つの軍区に分割されて配置されているのですから、ひとまとめでドーンと来るわけじゃありません。

そもそもまとめて来たくても(「兵力の集中」と言いますが)、あいにく狭い台湾海峡を渡ってこねばなりませんし、尖閣に至っては遠距離なうえにこれも絶海の孤島です。
兵力を敵地に送り込むことを「戦力投射」(パワーエジェクション)と言いますが、渡海する方法がなければ、いくら頭数がいても使えない、つまり無視できる兵力なのです。

軍事力ランキングも同じことで、軍事力はオリンピックじゃありません。

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2020年世界の軍事力ランキング」韓国6位、北朝鮮25位、日本は?

上のランキングは単純に軍事費や兵員や戦車・艦艇の数を比較しただけのもので、現実の力とは無関係です。
というのはそれぞれの国が、自分の国を守るに最適なスタイルと規模を持っているのですから(軍事ドクトリンと呼びます)、比較は本来できないのです。
日本なら9条の呪縛で、わが国だけを守るために適した規模とスタイルを維持してきましたが、今はもっと広い目で太平洋・インド洋地域の安定のために尽くさないと、自分の国も守れなくなりつつあります。

そのために今までは一貫して戦力投射能力を保有してきませんでした。
C-17のような長距離大型輸送機は保有せずに、国産のC1輸送機などはわざわざ航続距離を切り縮め、ファントムは付いている空中給油装置を取ってしまったたくらいです。
戦力投射にあたるからと兵員と戦車などを同時に送り込める強襲揚陸艦の建造も長年制限されていたために、沖縄の離島は無防備でした。
宮古、八重山に住む住民への防衛義務を捨ててきたのですから、ずいぶんとひどい話で、今やっと大きな脅威にまで成長した中国に対して警備隊を常駐させるなどして対処を始めたところです。

さて、中国軍と米軍とが鉾を交えるとした場合、その可能性が最も高いのが、昨日からお話している台湾です。
米軍の太平洋・インド洋司令官は、「来る、来ないではなく、いつ来るかだ」とまで議会証言しています。
米軍はこの5年以内に、中国が台湾への侵攻を計るだろうと見ています。
その場合、主戦場の舞台は海上と空中になります。
陸上戦闘が起きるのは、航空優勢と海上優勢を取ってからのことです。

中国には海軍が世界一になったと歓声をあげている輩がいると聞きますが、中国指導部までほんとうにそう思っているなら馬鹿です。
まぁ夜郎自大となりがちなのがこの国なので、警戒を怠ってはいけませんが、前頭ていどの実力では東の正横綱と勝負になりません。
ただし、前頭にも勝機はないわけではありません。
まともにやったら一発で土俵から投げ出されるのは分かっていますから、サイバー攻撃などの反則技を仕掛けたり、張手の弾道ミサイルを撃ってきます。

日経新聞の記事にあるとおり、中国が台湾、日本やグアムの米軍基地、洋上の米空母を攻撃するための主力兵器は、射程300-5000キロの中距離弾道ミサイルです。
米国はこの中距離弾道ミサイルはロシアとの制限条約で禁じられていたためにまったく保有していませんから、この部分は確かに「米中逆転」しています。

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空母キラー」、DF-21D対艦弾道ミサイル_中国網

よくメディアは、この準中距離対艦弾道ミサイルDF-21D(東風21D)を「空母キラー」などというオットロシイ呼び方をしますか、本当に米空母に当たるかどうかはわかりません。
だって、空母の位置は完全に情報封鎖されていますから、どこに向けて撃ちゃあいいんでしょう。
去年、米空母でコロナが乗組員に拡大したために、艦長が公開でその窮状を訴えました。
その結果、艦長は解任されたのですが、その理由は艦長のとった行為の是非ではなく、現在地を暴露してしまったことです。
それほどまでに秘匿されている空母の位置は、大海に落ちた針を探すようなもんですから、いったい中国はどうやってその場所を知るのでしょうか。
仮にその位置がわっかたとしても、十重二十重にイージス艦に守られている米空母に当てるのは、限りなく無理です。

そしてこの弾道ミサイルが使えると中国軍が判断できるのは、米国の報復がない場合に限られます。
米国は空母やグアムに対する攻撃は、米国に対する宣戦布告ととらえますから、米国は全力で敗北を回避するためにためらうことなく必要な手段を集中します。
米国のモットーは、一発殴られたら100発お返しする100倍返しですからね。
日本はかつて100倍返しで殴り返された経験があるので分かりますね。

さて、殴られた米4軍は直ちに反撃を開始します。
米空軍は、グアムから即応でB-1、B-52爆撃機が射程900キロ以上のステルス巡航ミサイルを発射するでしょうし、本土からはB-2ステルス爆撃機が精密誘導爆弾を投下するでしょう。

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米軍のB-1、B-2、B-52爆撃機がグアムに集結_中国網

米空軍はアラスカなどの本土から、F-22戦闘機4機と、支援機材、搭載兵器、整備員を乗せたC-17輸送機1機の「即応ラプター・パッケージ」を必要数、東アジアへ派遣し、到着後24時間以内にF-22の作戦飛行が開始されます。
嘉手納や三沢からも多くの戦闘機が攻撃に向かうはずです。

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アメリカ海軍 事前集積艦 USNS 1ST LT.JACK LUMMUS(T-AK 3011) 205m

海兵隊は、常に海上事前集積船隊に海兵隊の兵器・物資を積んでマリアナ諸島付近に停泊させています。
3日以内に日本や台湾へ回航し、沖縄の部隊と米本土から輸送機・チャーター機で飛来した部隊を合流させて現場に投入します。

海軍は、今も空母2隻体制が臨時でとられていますが、中東から直ちに空母戦力の集中が行われるはずです。
空母打撃群のひとつひとつが中規模国家の空軍力等しい規模をもっていますが、それを最低でも3個、可能なら4個打撃群を集中します。
増援はミニッツとセオドア・ルーズベルトになるでしょうが、集結まで数週間はかかるでしょう。

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海自と米空母3隻共同訓練 日本海、北朝鮮けん制

それ以外の陸軍本体は、州兵も含むために集結から投入まで更に時間がかかるでしょう。
ハワイや米本土に配備されている攻撃型原潜や巡航ミサイル発射型原潜の主力が到着するまで最速で1週間、最大で2か月間かかるとみられています。
これで米軍という巨大な戦争マシーンが完全に回り始めるわけです。
ですから、時間が立てばたつほど中国軍の勝利の可能性は急速になくなっていきます。

このように見てくると、中国からすれば、大戦前の日本とまったく同じ決断を迫られるのがおわかりでしょうか。
短期決戦で台湾を完全占領するしか勝利の方法はありません。
開戦するか否か、その場合短期決戦で勝利できるかどうか、中国首脳は苦しい選択を迫られるはずです。

逆に中国の攻撃を受ける立場からすれば、中国軍の先制攻撃の2週間を耐えて、増援を待てばよいということになります。
この約2週間の耐える期間を支える役割なのが在日米軍と自衛隊です。
在日米軍は、中国の初動の攻勢に耐えて増援部隊が来る時期まで持久せねばなりません。

いずれにしても台湾や尖閣への攻撃は、中国にとっての「真珠湾」となることだけは間違いありません。
ましてその時に米空母やグアムに「空母キラー」などを発射すれば、世界最大の戦争マシーンを起こすことになることをわかって、中国首脳部はやるのですね。


2021年4月27日 (火)

米軍より中国軍が優勢だって?

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うるま市の市長選勝利、おめでとうございます。確実に次の知事選の足掛かりとなるでしょう。
このところいいニュースがまったくなかったので、ほんとうに嬉しいことです。

さて中国についていつも感じるのですが、メディアが煽る過剰な恐怖には耐性を持ちましょう。
さもないと、メディアの垂れ流す無責任な情報に右往左往することになります。
たとえば、二つの記事があります。

ひとつは、日経(4月21日)の特集記事「台湾有事 備えはあるか」では、中国、台湾、在日米軍の兵力を比較して、「中国優位が鮮明」と結論しました。
危機感を持つのはけっこうですが、ここまで書いてしまうと煽りです。
もうひとつは、共同(4月26日)の「世界の軍事費、2.6%増 コロナ拡大でも最高額更新」は、米中だけで世界の半分の軍事費を占めていて、中国の軍事費の増大は大きいと書いています。

うーん、まったくの嘘じゃないんですが、根も葉もないことと違って、一定の事実が含有されているからかえってやっかいです。
二番目の共同の記事は米中で世界の半分は確かですが、その「世界の軍事費」の大部分を占めるのは、わが国の同盟国の米国です。
だから「世界の半分」という見出しのつけ方は煽りです。

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http://www.garbagenews.net/archives/2258869.html

世界の軍事費の38.4%を占めるのは米国で、中国は13.7%でしかありません。

日経記事は米中逆転、中国が海軍力でも優位に立ったと書いていますが、完全に間違いです。
中国の艦艇750隻という数字が出てきますが、これは米国防総省の『中華人民共和国が関与する軍事および安全保障の進展に関する報告書』においてカウント方法の誤謬とされている数字です。
中国海軍の戦闘艦艇および戦闘を支援する艦艇(バトルフォース)は約350隻だといっていますが、その内訳は、86隻のミニサイズのミサイル哨戒艇や、49隻の056/056A型コルベット(最も小型の艦艇)も含んでいます。
それらの艦艇は外洋航行能力が低く、戦闘力も小さいために、沿岸警備や海警がもっぱら使っている艦種です。
ですから、米海軍と較べたいならこれらを捨象して、実数は215隻前後といったところです。

一方、米海軍の米海軍の戦闘艦艇は現在290隻であり、355隻という目標が法制化されているものの、予算や乗員の面で実現のめどが立っていないようです。
これら艦艇の中には世界最大規模の空母12隻も含まれており、駆逐艦は一隻残らずイージス艦です。
したがって哨戒艇といったガラクタまで入れた中国海軍は比較の対象になりません。

ちなみに海上自衛隊の戦闘艦艇は、現在138隻の主要艦艇(護衛艦、潜水艦、機雷艦艇、哨戒艦艇、輸送艦艇、補助艦艇)です。
個別の艦艇は世界最高の水準を持っていますが、単独では中国に押されつつあるのが実態です。

むしろ中国の脅威を見る場合重要なのは、軍事費の急激な伸びです。

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米国はオバマの時期に削減されましたが、トランプになって再び増加に転じていますからご安心を。
中国が世界第2位の軍事支出をしている国であることは間違いありませんし、内容が研究費や軍人の福利厚生、宇宙関連などが軍事費とは別項目に入れられているので、実際はこれ以上だと推測されています。

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防衛省・自衛隊|令和元年版防衛白書|2 軍事

防衛白書(令和元年)はこのように指摘しています。

「中国は、2019年度の国防予算を約1兆1,899億元と発表した。これを前年度の当初予算額と比較すると約7.5%(約829億元)の伸び12となる。中国の公表国防費は、1989年度から毎年速いペースで増加しており、国防費の名目上の規模は、1989年度から30年間で約48倍、2009年度から10年間で約2.5倍となっている」

ここで防衛白書がいうように、30年間で40倍、10年間で2.5倍という、異常な速度で軍備を拡張していることこそが問題なのです。

次に、以上の軍事費についての数字を頭に置いたうえで、日経の記事を見て下さい。
「米中逆転」とは一体なんのことを言っているのか、私にはさっぱりわかりません。
軍事費の伸びも、オバマ時代ならともかく、今は中国の軍拡に対応していますから、「中国優勢」なはずがないじゃないですか。
ただひとつ日経の記事がそれなりにただ正しいとすれば、「東アジアに限定すれば」という前提条件をつけた場合だけです。

日経の使ったトリックの仕掛けはこうです。
中国軍については、その全軍の陸上兵力、艦艇、作戦機を全部数えています。
逆に、米軍については在日米軍だけでカウントしています。
軍事力比較をするなら、米軍も全軍の数字を出さなければおかしいですね。

どうして米国がこのような大きな軍事費を持たねばならないかといえば、欧州、中東、アフガン、東アジアに至る広域のエリアの安全保障を担っているからです。
現在、米軍は大きな戦力移動をしようとしています。
中東やアフガンから撤退を進め、最も危険な中国の軍拡に対応しようとしています。
それは東アジアでの軍事バランスが崩れようとしているからです。
ですから、この部分は日経の「中国優勢」というのも、あながち間違いではありません。

ここまでを整理しておきましょう。

①中国は米国に次ぐ世界第2位の軍事費をもつが、その差は大きい。
②中国の軍事費の伸びは10年間で2.5倍である。
③東アジア・南太平洋においては中国が優勢なのは事実である。

では、もう少し詳細を詰めていきます。
中国は東アジアだけをとると優勢だと言いましたが、かといってその主要な標的である台湾に即座に侵攻できる状況かといえば、そう簡単ではありません。
これは中国陸軍は世界最大規模のの陸上兵力89万人を誇っていますが、なにぶん5つの戦区に分散していますから、89万人が丸々渡海してくるわけではありません。
台湾海峡を渡ってこれる兵力だけを問題にすればいいのです。
そこで中国軍の渡海能力ですが、中国は海軍陸戦隊、空中突撃旅団、空挺降下部隊の軍種類を持って、それらを投入することでしょう。

「073 型大型揚陸艦は、すでに6 隻目が建造され、5 年後には10隻以上に達する可能性がある。そうなると一度に1個重装備師団を輸送できる。これを使うときは、すでに第一波上陸が終わりに近づき、制空、制海権も確実に獲得している。或いは台湾東岸への上陸に使われる可能性もある」
(『最後の手段としての台湾への武力侵攻』台湾 漢和防務評論2018年2月8日)
https://www.ssri-j.com/SSRC/abe/abe-364-20180228.pdf

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世界記録並み」の急ピッチで強襲揚陸艦の建造を進める中国 | 上海から東シナ海に向けて出航するのが確認された075型強襲揚陸艦 
ニューズウィーク

かつて国共内戦末期に金門島に侵攻しようとしたときは漁船まで徴発しましたが、現代では10隻の強襲揚陸艦が主力になります。
それまでに内陸の枢要地点にヘリなど浸透させるでしょうが、あくまでも主力は海兵隊です。
強襲揚陸艦が上陸させられる兵力は、一個師団(訳1万人前後)にすきません。
それも台湾海峡を無事に無傷で渡り切れたらの話です。

台湾海峡を正面から押し渡ろうとすれば、その途中で米国と台湾の潜水艦、水上艦艇、地対艦ミサイル、航空機による対艦攻撃を雨あられと受けねば通過できません。
おそらく強襲揚陸艦の過半数は、台湾海峡を渡り切らずに無力化されると予想されます。

おっと、長くなりましたので、後半は明日に続けます。

 

2021年4月26日 (月)

抹殺された温家宝の母親追悼文

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温家宝前首相は、おそらく文革と共産党改革に何度も言及している唯一の中国共産党(中共)の指導者です。
温は、かねてから公開の場で、現在の中国の政治制度を批判しました。
まず2013年3月5日に開幕した全人代の時のこと、温は習近平と並んで登壇し、引退を前にした最後の政府活動報告を読み上げました。
その大半は、2
期10年の在任中に世界第2の経済大国に押し上げた実績の報告にすぎませんでしたが、続けて政治体制改革に触れてこのように述べています。

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温家宝前首相(右)と習近平国家主席=2013年3月、北京・人民大会堂 CNN 

権力が過度に集中し、制約を受けていないという状況に対し、制度面から是正する。
文革の錯誤がまだ完全に消えていない。政治体制改革は成功しておらず、文革は再び起こりうる」

共産党指導者の演説につきものの「嵐のような拍手」はなく、水を打ったような静寂が人民大会堂を支配したそうです。
温が政治体制の改革について述べたのは初めてではなく、この最後の演説の4年前の2011年にも香港の呉康民にこのようなことを述べています。

「中国の改革が困難である主な理由は、封建制度の残滓と文革の遺毒である」

ここで温が言う「封建制度の残滓」とは、身分が階級と化してしまった社会制度のことを指しています。
中国は紅2代といって
、共産中国の成立と発展に大きく貢献した者の子孫に 特権を与えています。これが「太子党」です。
彼らは中国内部で特権的ファミリーを作って、社会経済や軍を牛耳り、他の党派(団派・上海派)と内部抗争を続けてきました。

「中国20年以上在住の外国人の言として「中国の問題とは実はとても簡単なもので、それは500ほどるあの特権ファミリーの問題である」
「500の特権ファミリーには7人あるいは9人の政治局常務委員、25人の政治局委員、205人の中央委員、さらに一世代、二世代前の元老とその家族が含まれている」
「たとえば、江沢民元総書記の家族は電信事業、李鵬元首相の家族は電力事業、温家宝前首相は保険事業、周永康前政治局常務委員の家族は石油事業をそれぞれ国内で独占し、劉雲山政治局常務委員の家族は投資ファンドを喰い漁っている」
( 陳破空『赤い中国の黒い権力者たち』)

全盛だった重慶モデルのボスだった薄熙来と習の党派闘争にからんで薄を批判したと考えられていました。
ところが必ずしもそれだけでないことがわかるのは、「封建制の残滓」と並んで上げられているのが「文革の遺毒」だという部分です。
当時薄は、文革を思わす大衆動員をとり、「唱紅歌(革命歌を歌え)」運動を行い、テレビに連日資本主義がもらたす経済的な不平等を批判させ、国家が経済で果たす役割を拡大すべきだと主張しました。やがてテレビCMの放送を禁止するといった極端なやり方をするようになっていきます。

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これに政治路線的に最も激しく対立し、このような文革礼賛路線を否定したのが温でした。
温は、天安門事件で失脚した趙紫陽前総書記の秘書でしたが、 趙は第2次天安門において唯一デモ隊との対話を求めて「ここに来ることが遅かったのを許して欲しい」と言った人物です。
は鄧小平によって即座に解任され、やがて64天安門事件という軍隊による大虐殺事件へとつながっていきます。

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それはさておき、文革に関わった経験を持つ最高指導者は、温と習が上げられるでしょう。
このような温の文革否定的的な政治路線は、次期国家主席となるとみられていた文革支持者である習の路線と根本的に異なっていました。
そのことから、当時共通の敵だった薄打倒までは共闘したものの、以後このふたりは隠微な対立をする関係となります。

この翌年の2012年の第18回共産党大会の2カ月前、温は清華大学の講演で文革についてこう述べています。

「中国が大躍進を行い、人民公社がゆがんだ道をゆき、文革という過ちを犯した。改革開放は継続して前進せねばならず、後退できない。そして改革開放こそが国家の未来と希望に関係し、民族の前途と運命に関係するのだ 」

いっそう明確な文革批判と政治改革の訴えは、温が総理としての最後の記者会見の席上での発言です。

「文革終了後、中国共産党は歴史的決議を行い、改革開放を実施した。しかし、文革の錯誤と封建時代の影響はまだ完全に消えていない。今後、また生産分配が不公平になり、汚職腐敗問題などが起こるだろう。これら問題を解決するには、経済改革を行うだけでなく、政治改革を行わねばならない。特に党と国家の指導制度の改革をせねばならない。
政治改革が成功しなければ、経済改革は最後まで行えない。すでに獲得した成果も再び失うことになり、新たな生産の問題は根本的に解決できず、文革の悲劇が再び繰り返されるかもしれない。改革をただ前進させるしかなく、停滞したり後退したりすることに出口はない」

そしてつい先日のこと。温は母親の追悼文を公表し、その中で文革が今日に至るまでの政治運動に影響を与えているとし、温一家自身、文革期間に災難にあったことを書いています。
温の父親は1959年に、歴史的問題で教師の職を追われ、さまざまな制約を受けました。
文革期間には暴力的な紅衛兵によるリンチを受け、学校に軟禁され、給料も出なくなり、大字報と呼ばれる政治的壁新聞が家の門のところに貼られ、野蛮な「尋問」や公開拷問を受けました。
温の父親は連日、紅衛兵に殴打されて、顔形が変形するような日々を送ったようです。

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「 中国の温家宝(ウェンチアパオ:Wen Jiabao)前首相(78)がマカオ紙に習近平(シーチンピン:Xi Jinping shî-chinpin)国家主席を暗に批判したとも取れる文章を寄稿し、波紋を呼んでいる。寄稿文を掲載したのはマカオの知名度の低い新聞で、これは恐らく、中国本土では掲載に意欲を示すメディアがなかったことを示しているとみられる。
寄稿は先週掲載されたもので、表向きは亡き母への追悼文となっている。
ただ、その中で公正、正義、人道、自由を求めるとともに、中国共産党が忘れたがっている文化大革命期を振り返っており、多くの読者が習氏への遠回しの批判と解釈した。温氏の文章に中国のSNSは騒然となった。寄稿文は数十万回にわたって共有され、検閲当局が介入して拡散を阻止する事態となった。
寄稿の末尾で、温氏は中国の理想像を提示しており、国の現状が自身の期待に沿うものではないことを示唆しているとみられる。温氏は「私の考えでは、中国は公正さと正義に満ちた国であるべきだ」「民意や人道、人の本質が常に尊重され、若々しさと自由、努力する姿勢が常にあるべきだ」としている温氏は2003年から13年にかけて首相を務め、1989年6月の天安門事件で暴力的な弾圧に反対したことで失脚した共産党総書記、趙紫陽(チャオツーヤン:Zhao Ziyang)氏の側近トップを務めたこともある」(CNN 4月20日 中国の温家宝前首相、習主席を暗に批判? 寄稿が波紋 )

温がマカオの小媒体に発表したこの文章は、即座に発禁となったようです。
ちなみに習は最近、党史学習近平教育動員大会というイベントで次のように強調しているそうです。

「旗幟鮮明にして歴史虚無主義に反対せよ」「中共は歴史虚無主義者ではない」「自分の歴史に無知であるな、自分を卑下するな」

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毛沢東のレガシーを利用する習主席 - WSJ

このように、中国共産党は輝ける大道を歩んできた歴史がある、毛沢東主義と習近平主義の旗を掲げて前進せよ、と主張しながら、一方で文革については、温時代の党史が独立した一章を割いて暗黒面を記述したことに対して、わずか1節で「社会主義建設は曲折しながら発展した」と書かれているにすぎないようです。

また「白毛女」「紅色娘子軍」など文革時代の紅色革命劇は、中共100年の祝賀宣伝の重要演目となっています。
清明節の間、北京の福田公墓にある、四人組の毛沢東の妻・江青の墓地が対外的に開放される一方、改革派の代表的人物である趙紫陽の墓地は当局によって一般人立ち入り禁止となりました。

中国において、歴史は文革へと逆流を開始したようです。
ただし注意しなければならない点が、ひとつあります。
60年前の文革は鎖国状態で行われた内乱でしたが、今の中国は勃興しようとしている世界帝国です。
ですから文革への逆行は中国国内のことだけでは済まず、全体主義の世界的台頭となることでしょう。
米国のアンティファなどはその兆候なのかもしれません。

 

 

2021年4月25日 (日)

日曜写真館 雲外蒼天

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雲外蒼天は「うんがいそうてん」と読みます。雲の外に出れば、青空が望める。絶望するなという意味です。

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雲霓望み(うんげいのぞみ)とは、日照り続きのときに、雨が降って虹の出るのを待ち望む気持ちのことです。

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雲蒸竜変(うんじょうりゅうへん)が待っているかもしれません。雲が群がり湧くのに乗じて、蛇が竜となり天に上るという意味。

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分厚い雲は永遠に続きませんから。

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2021年4月24日 (土)

難破寸前の一帯一路

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中国の一帯一路がぶざまなことになっています。
まずその兆候は、中国がさんざんなぶりものにしてきたオーストラリアで現れました。

「オーストラリア政府は21日、ヴィクトリア州と中国が結んでいた「一帯一路」構想参加協定を破棄すると発表した。中国政府はこの対応に怒りを表明し、両国の緊張関係がさらに高まっている。
オーストラリア政府は今回、中国とヴィクトリア州が結んでいた2つの協定を、新たに制定された権限を使って破棄した。国益を守る合意に違反しているためと説明している。
在豪中国大使館はこの動きを「挑発的だ」と批判。「両国の関係をさらに傷つけるもので、最終的にはオーストラリアにとって有害となる」とコメントした。
「オーストラリア政府が中豪関係を改善する気がないことを再び示すものだ」
オーストラリアでは先に、州政府や地方自治体、公立大学が諸外国と結んだ合意について国益を脅かす可能性がある場合、政府判断でこれを破棄できる法律が制定された。政府がこの法律を行使したのは今回が初めてだという」(2021年4月23日 BBC)

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スコット・モリソン首相

豪政府が破棄を決定したビクトリア州の協定は、ビクトリア州が2018年と19年に中国と締結した一帯一路関連協定2本に加え、州教育省が2004年にイランと交わした了解覚書、1999年にシリアと締結した科学協力協定の4本です。
ビクトリア州政府は、労働党左派が握っていますが、中国、イラン、シリアとは、これまた揃いも揃ってアブナイならず者国家がお好きなようで。
マリス・ペイン外相は、申告があった1000件以上のブロジェクトを審査した結果、これらの協定の破棄を決めたとし、同時にイランとシリアと結んだ教育や科学に関連する協定も破棄すると発表しています

マリス・ペイン外相は、これらの廃棄された協定について、「豪州の外交政策に矛盾する、あるいは豪州の外交関係の弊害となる」と述べています。
ちなみにペイン外相は、昨年10月、東京を訪れて日米豪印クアッド外相会談に参加していますし、首相のスコット・モリソンは安倍氏が辞任したときに強いショックを受けて東京まで飛んできた人物です。

2020年12月、連邦政府は、国が国益に反すると認めた場合は州政府の結んだ外国との協定や条約を廃棄できるとした外交関係法 (foreign relations laws)を成立させました。
当時は特定の国家を名指ししたものではないとしていましたが、もちろんそれは政治的フェイントだったようで、その目的は中国の一帯一路からオーストラリアをデカップリングすることにあったようです。
中国はすでに国内の多くの地域や分野を握っており、特に労働党左派が握るビクトリア州を拠点にして一帯一路を浸透させ、国内を分断させることを狙っていたと、連邦政府は見ています。

では、この中国の拡げた大風呂敷である一帯一路は、果たしてほんとうに機能しているのでしょうか?
そもそもなんのために一帯一路を作ったのか、いよいよ誰にも分からなくなってきました。
当初それは、中国があり余るチャイナマネーで、中国と世界を結ぶ21世紀のシルクロードを作るためだと信じられてきました。

中国自身はこう答えています。
中国国務院報道局英語版ウェブサイト “How the world will benefit from China’s Belt and Road?” (原文英文)

「世界経済の弱さを後押しし、貿易・投資環境の大きな構造変化に適応するための戦いは、世界金融危機以来、多くの形をとってきた。
中国の古代ユーラシア貿易ルートの復活がその答えである。
一帯一路は国際協力とグローバルガバナンスの新しいモデルであり、一帯一路イニシアチブは世界開発に新たなエネルギーを注入することを目指している
新シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードで構成される一帯一路イニシアチブは、古代シルクロードのコンセプトとルートに基づく開発戦略と枠組みです。2013年後半に中国の習近平国家主席によって提案された」

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ね、抽象的でしょう。
前段でわかるのは、一帯一路は、古代のシルクロードという古い酒を、一帯一路という新しい革袋に入れたものだていどのことです。
中国とアジア、中欧、西欧・アフリカをつなげる巨大な21世紀のシルクロードが一帯一路だというイメージです。

しかしここでハタと思いませんか。なにを時代錯誤なことをのたもうているのか。今は空路と海路の時代です。
紛争が多いアジア-欧州ルートは、いたるところで寸断されるために、国際ルートとしては補助的な存在にすぎません。
もちろんそんなことなど中国はわかっています。
中国が本気で望んだのは、カラコルムハイウェイと呼ばれる中国-パキスタン回廊と、ミャンマーの港にから雲南を経て中国内陸に至るオイルラインだけで、さらに西へのルートの現実性は政治的なものにすぎません。

それがわかるのは、この中国国務院の文章の後段の「一帯一路は国際協力とグローバルガバナンスの新しいモデルだ」として、それが「世界開発に新たなエネルギーを注入する」という部分です。
ここで中国は一帯一路の目的を、端的に「国際協力とグローバルガバナンス」と言い切っています。
文章はあえて主語が欠落させていてぼやかしていますが、とうぜんこの主語は「中国」しかありえません。
ガバナンスという意味は、「統治・支配・管理」の意味です。
つまり、一帯一路は中国が地域覇権国から世界帝国に飛躍するための装置だったのです。
なんのことはない、ここまではオレの勢力圏にするつもりだということにすぎません。

要は、中国にとって、一帯一路とは初めから自らの中華共栄圏構築のツールだったのです。
これが習近平がいう「中国の夢」です。

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ところがこの一帯一路は、当時のグローバリズムの全盛を背景にして、各国それぞれに勝手に解釈されてしまいました。
資金難に悩む諸国にとって、中国という気のいい巨大土建屋がやってきて、国内にどんどんと新しい道路や港湾などを作ってくれる、そしてそれらを海上ルートや陸路で世界一繁栄している中国市場へと直結できるんだ、という美しい誤解でした。

この中国の一帯一路の呼びかけに最も敏感に反応したのは、案外知られていませんが中欧・東欧諸国でした。
彼らはソ連圏から離れて念願の「夢のEU」に入れてもらったのはいいですが、新規の投資は滞り、ただの安価な労働力の供給地に成り下がったことに不満を募らせていました。
これではEUの植民地になっただけではないか。ソ連は独裁的で大嫌いだったが面倒見がよかった。しかしドイツときたら財政緊縮しかいわないで、ドイツ製品を押しつけてくる、ああ、たまらないぜ、くそメルケルめ、というわけです。

米外交専門誌「デプロマット」はこう書いています。(原文英文)
How China’s 17+1 Became a Zombie Mechanism

https://thediplomat.com/2021/02/how-chinas-171-became-a-zombie-mechanism/

なおこの「16+1」とは、一帯一路の参加国のことです。

「2012年、中国は16+1メカニズムを打ち出し、後にギリシャを加えて17+1に拡大したため、中東欧で大きな両手を広げて歓迎した。
それが提案された10年前、当時の16+1メカニズムは多くの熱意と希望を持って受け取られた。
中国は大きな力でインフラを構築し、古い工場を復活させ、西欧の投資家を見ることがなかった人々や地元のプロジェクトに投資すると信じられていた。
この熱気の中で、中東欧諸国の間には、自らこそが「中国のヨーロッパへの入り口」になるための競争が始まった。
しかし10年経ってみれば、約束は果たされず、ゴールラインは見えないどころか始まりもしていないことに気がついた。
どうしてこんなことが起こったのだろうか?
率直にいえば、中国は期待と成果を両立させることができなかったからだ。

そして10年後、中国は大きな失望を受ける。
この17カ国が揃って、ファーウェイの5Gネットワークへのアクセスを禁止する米国との覚書に署名してしまったからだ。
そしてこの17カ国は、ファーウェイや他の中国のハイテク企業を対象とした封じ込め作戦であるワシントンのクリーンネットワークイニシアチブに参加してしまった。
これらの中東欧(CEE)諸国は、中国のヨーロッパへの玄関口であると考えられていた。
今や、彼らは中国にとって最大の頭痛の種となっている」

このようにオーストラリアのみならず、中東欧諸国もまた、一帯一路はインフラ投資計画ではなく、中国にとってだけ必要な地域の港や空港を割譲させ、覇権の拠点に作り替えていくことだとわかったのです。

 

2021年4月23日 (金)

慰安婦問題はメビウスの環

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昨日の慰安婦判決記事の補足です。
昨日私はたんに「判決」とだけ書きましたが、ネットでこれが「却下」か「棄却」かで論争があったようです。
この二つは意味が違います。「却下」はひとことでいえば門前払いで、「棄却」は裁判はしたが原告の訴えは認められず敗訴ということです。

今回のソウル中央地裁の判決は却下ですから、門前払いです。
裁判は開かれたが、日本政府は出廷そのものを拒否しているのですから裁判として成立しませんし、以後出廷するはずがない以上、日本政府相手の慰安婦訴訟はこれでジ・エンドだ、というのが私の記事に書いたことです。
なお、徴用工裁判のほうは主権制限論とは無関係ですから、続きますので念のため。

さて、HNしゅりんちゅさんからこのようなコメントを頂戴しております。

「あくまで「主権免除」に触れるから訴えが認められ無かっただけで、この胡散臭い活動そのものが否定された訳ではないので手放しでは喜べませんね」

おっしゃることはよくわかります。
残尿感が残る判決ですね(←たとえが悪いゾ)。
ソウル中央地裁は慰安婦運動について判決は言及していません。なんせ「却下」ですから当然です。
門前払いですから、慰安婦団体はギャーギャー騒ぎ続けるでしょうし、今後も彼らの運動は残り続けます。
これはいたしかたがないことだと割り切りましょう。
慰安婦問題は国のアイデンティティというと聞こえがいいですが、一種の土俗宗教化していますから、われわれとしてはどうしようもないのです。

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韓国の慰安婦運動は、文明国における市民運動ではなく、一種の宗教的信心の類です。
信仰は自由ですから、売春婦像を拝もうとどうしようと自由です。
しゅりんちゅさんが望むように、「活動そのものを否定」することは、韓国では非国民扱いですから絶対に司法はそんなことはしません。
ですからあたかも国際的配慮をしたために却下するという婉曲な形にしたのです。

訴えた元慰安婦のイ・ヨンスが14歳で慰安婦になったといおうが、慰安婦団体の女帝・ユン・ミヒャン が巨額の不正横領をしていようが、どこまでも牛の涎のように続きます。
したがって、いかに司法から門前払いされようと、懲りずにまた同じ訴訟をなんども起こすことでしょう。

慰安婦団体は最高裁に上訴するでしょうが、しかしあいにく最高裁(韓国は「大法院」)は下級審と違って「法律審」なのです。
これは国際的スタンダードで、これは韓国も日本も一緒です。
「法律審」とはこういう意味です。

「地裁、高裁、最高裁で3回にわたって、同じような裁判を繰り返すわけではありません。以下、民事裁判について説明しますが、地裁、高裁で行われる裁判(下級審)は事実審、最高裁で行われるのは法律審であり、裁判の基本的な性格が異なります(略)
下級審の判決に不服である場合、必ず最高裁に上告できるわけではありません。上告するには、判決の憲法解釈に誤りがあること、憲法違反があること、最高裁の判例とは異なる判断が下されたことなどの上告理由を満たしていることが必要です。高裁での控訴審で敗訴した側は、最高裁でも争って判決を覆すべく、これらの条件を満たす上告理由を書面に記入して提出しますが、ほとんどの場合は理由を満たしていないと最高裁に判断され、上告は棄却されて控訴審の判決が確定します。このため日本の裁判制度は「事実上の二審制」との見方もあります」(しらかば法律事務所)
https://www.potato.ne.jp/shirakaba/hkeizai/51.html

このように最高裁は下級審と違って事実を認定する「事実審」ではなく、下級審の法律解釈そのものを見る「特別な裁判所」なので、大多数の最高裁への上訴は棄却、つまり門前払いとなります。
だから今回の件で、慰安婦団体が最高裁に上訴しても、ふたつの制限主権論を認める判例がある以上、よほどの強烈な政治的圧力がない限り敗訴は決定的です。
まぁこの政権への忖度が濃厚にあるのがかの国ですから、下級審の判決を覆すものが出ないとも限りません。
ただ出る可能性は非常に少なくなった、とはいえます。

というのは、どんな訴訟を起こそうと、わが国はそんな裁判自体を認めずに出廷することは絶対にありません。
裁判自体が不適切である以上、出廷してしまったら裁判を認めることになるからです。
被告人にされた日本政府が出廷しない以上、自動的に裁判は成立する要件を失いますから、司法としては却下しか出しようがないのです。

その理由を菅さんが会見で簡潔にこう述べています。

「まず国際法上、主権国家は他国の裁判権には服さない。これは決まりですから、そういう中でこの訴訟は却下されるべき、このように考えます。そして、日韓の慰安婦問題については、1965年の日韓請求権協定において、完全かつ最終的に解決済みである。ですから、韓国政府として国際法上違反を是正する、そうした措置を採ることを強く求めたいと思います。
我が国としては、このような判決が出されることは、断じて受け入れることはできません」(2021年1月8日首相会見)

「主権国は他の国の裁判権に服さない」、そして慰安婦問題は65年の日韓請求権協定で終わっているし、さらにそれは日韓慰安婦合意で裏書きされている、これが日本政府の立場のすべてです。
この日本政府の立場は、なんど蒸し返そうと不変です。

ここで首相が言う「そういう決まり」とは、2004年12月2日、国連総会において『国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約(国連国家免除条約)』を指します。
これが国際法です。
ですからわが国は「国際ルールに則れ」とだけいうしかありません。
それをやっとわかったから、韓国司法はとりあえず国際ルールに乗っ取る姿勢を見せたのです。

もちろんそれは韓国が日本の言い分を承服したという意味ではありません。
韓国は日本のいうことを聞いて大人の対応をしてやったのだから、日本も少しは韓国にも花をもたせろや、ということを言い出しました。

「この日の判決と関連し聖公会(ソンゴンフェ)大学日本学科のヤン・ギホ教授は、「外交的な領域で扱われた慰安婦問題が韓国国内の訴訟で司法的な領域に入ってきたが、裁判所は韓日両国の対話と協力を通じて問題を解決せよとして慰安婦問題を再び外交の領域に押し出した」(中央日報4月22日)

司法は外交的解決をしろと押し戻した、さぁ外交交渉で負けを挽回するぞ、ということのようで、まことにもってご苦労さんなことです。
だからムン政権の外相は、またぞろ日本は韓国政府の提案を聞け、とあたりまえの顔をして言い出したというわけです。

というわけで、終りはありません。
ただしすべて彼らが望むような外交問題ではなく、彼らの国内問題にすぎません。
国内問題である以上、まるでメビウスの環のように、一回ねじれてもどこまでも続くということになります。
こんなことに私たち日本人はつきあう必要はまったくないので、勝手にやっていなさい、というだけのことです。

 

2021年4月22日 (木)

慰安婦問題終了のお知らせ

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ちょっと驚いたニュースが入ってきました。
韓国のソウル中央地裁が、慰安婦問題や徴用工といった定食メニューを終りにしてしまうような判決をだしてしまいました。

「韓国のソウル中央地裁は21日、旧日本軍の慰安婦被害者や遺族20人が日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを却下した。同地裁は1月に日本政府に対し12人の原告に1人当たり1億ウォン(約970万円)の賠償支払いを命じたが、異なる判断を出した。
却下は訴訟要件を満たしていない場合、審理を行わず下す決定だ。
今回地裁は日本政府が主張する主権免除を適用する必要があると判断した。主権免除とは主権国家が他国の裁判管轄権から免除されることを意味する」
(聯合4月21日)

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李容洙(イ・ヨンス)

初めて地裁の判決が割れましたね。それも分裂する判決を出したのはまたもソウル地裁ですから、思わずおいおいと言いたくなってしまいます。
前回は(といっても今年の1月ですけど)こう言っていました。

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「日本政府が慰安婦被害を賠償すべきという8日の韓国裁判所の判決は、被害者には司法の正義が実現したという意味がある。日本は慰安婦被害について謝罪しながらも「賠償」という概念は最後まで拒否してきた。しかしこじれるだけこじれた韓日関係を解決すべき韓国政府の立場では、もう一つの大きな宿題を抱えることになった。日本は直ちに「韓国が国際法を違反した」と強く反発した。
裁判所は今回の判決で国際法的に通用する「主権免除」概念を排斥した。これは一国の裁判所が他国の政府の主権行為に対して裁判管轄権を持つことができないという規範だが裁判所は「主権免除論はその後ろに隠れて賠償と補償を回避する機会を与えるためのものではない」と判示した。梁起豪(ヤン・ギホ)聖公会大教授は「その間、被害者が日本と米国の裁判所に提起した訴訟ですべて敗訴したが、今回、韓国国内で救済になったということ」とし「公式的に法廷で日本政府の法的責任が認められたのは初めてであり、意味が大きい」と評価した」
(中央日報日本語版1月9日)

今回は慰安婦訴訟は主権免除に反するから損害賠償は却下、前回は主権免除を認めずに損害賠償を認める、というわけです。
今回が常識的判断、前回が非常識なんですが、実は前回で日本は「敗訴」しています。
いや正確には裁判に出ていませんから、勝つも負けるもないのですよ。
日本政府はそもそもの前提である主権制限論に反するようなこんな裁判は裁判として認めていないんですからね。
ですから、ソウル中央地裁が、原告の訴えを認めて前回は1億ウォンの損害賠償を認めようとどうしようと、われ関せずがわが国の一貫した立場です。

日本がワレ関セズの立場を取ると、困ったのは原告側でした。
上訴でもしてくれればプロパガンダになるのに、日本はシカトですから呆然としたことでしょう。
ならば判決が確定したと見なして日本政府から1億ウォンを差し押さえればいいのですが、ここからが本当の問題が始まるのです。

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だって日本政府からむしり取るといってもナニを取るんですか、ということにハタと気がついたようです。
この慰安婦裁判は構造は徴用工と一緒ですが、大きく違うのは訴えられたのが三菱重工などの私企業ではなく日本政府だということです。
すると1億ウォン分の日本政府の資産を差し押さええて現金化せにゃならんのです。
ナニを差し押さえるんでしょう。韓国国内の日本政府資産なんて大使館や公使館ていどしかありませんから、大使館でも差し押えるしかないのです。
実際にやったら見物だろうなぁ。大使館の屋根にそそり立つ慰安婦像。もう外交もクソもないよね。

ここで日本政府が主権制限論を主張した意味が、やっと鈍い原告らにも分かってきたことでしょう。
具体的に大使館を差し押さえるという意味は、日本の外交官に使わせないようにするということです。
いうまでもなく、外交官とその施設の保護を義務づけたウィーン条約違反です。
まずこれをやったら、大使帰国ていどでは済みません。今までの最悪の流れから一気に断交に発展するでしょう。
ソウル地裁が今回言っているように、相手国の正当な外交活動をやらせないんですから、もうこんな国とは国交自体が成り立たないと日本政府は判断するでしょうからね。

それにやっと気がついたので、韓国司法はこの4月になって、慌てて主権制限論を認めて訴訟費用を日本に求めない判決をだしています。(遅いンだよ)

裁判所は「ウィーン条約27条の規定により、国内的事情と解釈にもかかわらず(慰安婦の合意など)条約の効力は維持することができる」とし「このような場合、判決の執行自体が権利濫用に該当し請求異議の訴訟や暫定処分の対象になる可能性を排除することはできない」と指摘した」
(朝鮮日報4月20日)

ここでソウル中央地裁が言っているウィーン条約27条とはこのようなものです。

第二十七条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。

苦しい言い訳ですね。ウィーン条約が言っていることは、条約は国内法を超越するということです。
ですから条約に反する国内法は作れないし、よしんば出来てもそれに条約上の義務は拘束されないということです。
日本の場合なら、仮にデニーさんが首相になって、辺野古飛行場使用取り消し法みたいなものを作っても、条約上の義務は消滅しないのでまったく無意味なようなものです。

そこでソウル中央地裁はムン閣下のメンツも立てて、国内法的には慰安婦に関する今までの政府の措置や司法判断はそのまま維持できるが、慰安婦合意は条約だからこの埒外にある、という論法をひねり出したわけです。

簡単に主権制限論についておさらいしておきます。
これは国際ルールです。

「国及びその財産に関して免除が認められる具体的範囲等について主に以下のとおり定める。
(1)国は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、他の国の裁判所の裁判権からの免除が認められる。ただし、商業的取引から生じた裁判手続、雇用契約に関する裁判手続等本条約に定める裁判手続については免除が認められない。
(2)国の財産に対する強制的な措置(差押え等)は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、とられてはならない
外務省『国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約

要するにこういうことです。
外国において、外国籍の私人、ないしは私企業を訴えることは出来ますが、外国政府を訴えることはできません。
そんなことを認めると、たとえば沖縄の基地反対派が米国政府を相手取って損害賠償請求訴訟なんかができてしまいます。
そして頭の調子のおかしな地裁判事が原告勝訴にしてしまうと、米国には支払い義務が生じます。
それに応じないと、合衆国財産である戦闘機を差し押える、なんてことになっちゃいます(笑)。

ね、ありえないでしょう。そんなことを認めたら、私人が勝手気ままに国家間関係に介入できてしまういますもんね。
だから、外国政府を訴えることは原則不可能なのです。
やっと遅ればせで、韓国司法はそれに気がついたようです。

負けた元慰安婦は「国際司法裁判所に行く」といっていますが、どうぞご自由に、恥かくだけですから。
わずかですが、実際に主権免除論が国際司法裁判所で審理されたケースがあります。
それは2004年に、イタリアの最高裁がドイツ政府に対して第二次大戦中に生じた損害の賠償を命じた判決を出したことに対して、ドイツ政府はこれを不当として国際司法裁判所に提訴しました。

まぁ、そもそも旧同盟国に損害賠償を求めるというのが相当にヘンですが、ドイツからすればそんなことを認めてしまったらヨーロッパ全部の国に損害賠償を支払わなければならなくなって、戦後処理の枠組み全体がおかしくなります。
ドイツは個人賠償をしたが、日本はしていない、なんてことを言う人がいまでもいますが、ドイツはユダヤ人だけに対してのことで、膨大な数に登る被占領地の人に対しては賠償はおこなっていないのです。
ユダヤ人だけには謝罪して賠償させる一方、侵略した国家に対する賠償は不問に付すというのが、連合国の作った枠組みでしたからね。
結局2012年に国際司法裁判所は、ドイツ勝訴、イタリアが国際法違反だという判決を出して幕になりました。

ちなみにムン閣下もまだ延々と慰安婦問題をやりたいようで、韓国外相はこんなことをまだ言っています。

「鄭氏は、大統領府の国家安保室長を務めた際、数回にわたって非公開で訪日し、日本政府の高官と元慰安婦問題について協議したと明かしたうえで、「毎回、現実的な案を持っていったが、日本が自分の主張だけを一貫して行う態度に驚いた。協議を壊そうとしていた」と語った。
一方、慰安婦意について鄭氏は「合意を破棄したと言ったことは一度もない。韓国政府は合意の枠を維持しながら現実的な解決方法を追い求めていく」と主張。「解決においては被害者中心主義、被害者の立場を尊重しなければならないというのが韓国政府の基本的な精神だ」と強調した」(朝日21年4月21日)

私のかすかな記憶では、慰安婦問題は日韓合意で決着して、10億円支払って安倍氏のお詫びの手紙までつけて、既に手渡しています。
このときに締結したのが日韓慰安婦合意で、その文言にはこの冷厳な文言が入っています。

「最終的、かつ不可逆的に解決した」

最終的に解決したことをどう再協議することができるんでしょう、ボク、わかんないや。
ひょとして韓国外相がいう「現実的解決法」って、日韓政府と企業がカネを出し合って財団を作ってどうのこうのというアレですか。
あんたって馬鹿ですか。
かつてのアジア女性基金の焼き直しのようなことをしても失敗するのが分かっていたから、直接日本政府が10億円を慰安婦ひとりひとりに配ったのですよ。
日韓両政府が、米国を仲介にしてそのやり方で合意したのですから、どこをどう叩いてもこれでオシマイ。
国家間交渉でいったん合意したことは条約と見なされますから不動です。
ゴールポストを動かすことはできない、それが「不可逆的」という文言の意味です。

関連記事 慰安婦問題の日韓合意について

 

2021年4月21日 (水)

安保は米国、経済は中国という二股をどこまで続けられるか

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昨日の記事は中国に対するいわば「心構え」のようなことを書きましたので、なんだ精神論かと思われた方もいらっしゃったと思いますので、今日は具体的にお話していきます。

今回の日米共同声明は外交若葉マークの菅首相がしてやられたと考えている国民はいると思います。
というのは、かなりキツイ内容なのですよ、あれ。
同じ内容がトランプ-安倍でやっていたなら、今頃はメディアと野党が発狂状態だったかもしれません。
だって日米共同宣言には、中国との対話を前提にしながらも、実質米軍による核の持ち込みを示唆する部分がありますし、日本が求めた尖閣防衛が日米安保5条の範囲内にあることを認める代わりに、台湾「海峡」防衛と南シナ海防衛に日本が参与するということも言っているわけです。
これって完全な「戦後」からの離脱じゃないですか。

そのうえ後半では、中国経済とデカップリング(分離)しろと言われているのです。
自民党の伝統的な対中政策といえば、中国はやっかいな国だから、怒らせないで手なずけていこう、ご機嫌取りも厭わない、というものでした。
それは「安全保障は米国だより、経済は中国だより」という日本の基本構造があったからです。
韓国とは違った意味での二股外交だといわれても致し方がないものでした。

ところが、対中宥和に走ると見られていた米民主党政権が、これを頭から否定し、そんな安易なことは許さない、経済と安全保障は一体のものだというトランプ路線をそのまま継承したどころか、「同盟重視」という言い方で日本にも同調を強く求めたのですから、さぁ困った。
そこででてくるのが朝日の「その覚悟があるか」という論調です。

たぶん今の自民党にその「覚悟」はないでしょうね。
菅さん個人は分かりませんが、党内には多くの親中派を抱え、同盟関係には日本最大の親中政党の公明党、そして支持母体には日本最大の中国大好きの財界が控えています。
バリバリの保守派はむしろ少数。
ですから、日本は一見米中の外交バランスをとって来たように見えて、実は政財界そしてメディアに磐石に存在する親中派に支配されてきたのです。
だから、この中国経済とデカップリングしろという米国の要求ほど、つらいものはないわけです。

ではなんでこのような強固な親中派が国内に、しかも政権内に存在するのでしょうか。
それについては多少説明が必要です。
よくある誤解に、日中貿易において日本が赤字を垂れ流していて、中国が貿易黒字・日本は貿易赤字で弱小だからしたかがない、というものがあります。
それは身の回りにメイドインチャイナか溢れているし、日本経済が誇る世界のトヨタも中国市場が命と思っている節があるので、そう感じてしまうのですが、実際はそれほど単純なものではありません。
財務省が出している貿易収支をみて下さい。

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図録▽対中・対米の貿易収支・経常収支の推移

2012年~16年という円高時代を除けば、日本は中国に一貫して貿易黒字になっています。
これ自体意外ではありませんか。なんとなくイメージでは日本は雪崩のようなメイドインチャイナに圧倒されているようなかんじじゃありませんでしたか。
しかし違うのです。直近でも、先日新しい貿易統計が出ましたが、真っ先に輸出が伸びた先は中国相手でした。
全体主義は危機に強いのです。人権もクソもなく国家が強権的に統制できますからね。
今年後半には米国も回復してひっくり返すかもしれませんが、残念ながら今のコロナでよろめいている日本経済にとって中国とデカップリングするのは死の苦しみに等しいというのも事実なことは事実です。
ただし買うほうではなく、売る方で。

さて中国税関総署が、2021年4月13日に最新の貿易統計を出しました。
対日貿易ではなく世界貿易です。

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ちなみに、すべての統計数字が政治的に改竄されているといわれる中国において、貿易統計だけは相手国のデータがあるために正確だとされています。
これはを見ると2021年1~3月のドル建て貿易統計は、過去最高を記録しています。
輸出品目は、マスクやパソコン、ワクチンなど新型コロナウイルス関連がけん引し、輸入は資源のほか化粧品などの最終製品も伸びています。
輸出は前年同期比49%増の7099億ドル(約77兆円)、輸入は28%増の5936億ドル、輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は1163億ドルです。

一方、2020年の日中貿易総額は前年比0.8%増の3175.38億ドルで、うち中国の対日輸出は1426.64億ドル、日本からの輸入は1748.74億ドル、貿易赤字は322.1億ドルです。
これまで中国は10年以上にわたって日本最大の貿易相手国なことは確かです。

ただし日中貿易は2011年に3429億ドルのピークに達した後、2012年に尖閣諸島問題をめぐって関係が悪化し、今も完全に回復していません。
2015年には中国の対日赤字が73億ドルに減少した後、徐々に増加し、2018年には335億ドルに達しています。

次に中国が日本から輸入している商品をカテゴリー別に見てみましょう。
2018年のトップ5の輸入商品は、第1位が機械・電気機器および部品で852億ドル(47.2%)、第2位が精密化学製品(肥料、化粧品など)が203億ドル(11.2%)、第3位が車両・船舶などの輸送設備が187億ドル(10.4%)、第4位が光学・医療機器が165億ドル(9.1%)、第5位が金属製機械類で149億ドル(8.3%)となっています。
これら5品目だけで全体のほぼ9割近くを占めています。
典型的な科学技術部品と精密製造設備類といった中間財輸出型が、中国においても完全に成立しているのがお判りでしょうか。
これに比べれば、ユニクロなんかたいしたことはありません。

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一方、日本が中国から輸入している主な商品は、2018年度で機械・電気製品で789億ドル、繊維品が218.8億ドル、原材料、家具・玩具が107.5億ドルなどとなっています。
これもよくレアメタルが輸出禁止になったら日本経済が潰れるなんて言う馬鹿がいますが、別に他の輸入先を見つければいいだけのことで実際に前回の騒動で日本は代替を見つけています。

これからわかることは、日本が技術的に高い機械・電気関係の中間財を輸出し、中国からは低価格で技術水準が低い製品や身の回りの消費財を輸入しているということです。
このように見てくると、韓国に対しても言えることですが、中国もまた日本から精密加工機械や電気製品といった中間財を輸入して、それを加工して製品化することで成り立っているということになります。

つまり科学技術でマウントしているのは日本であって、中国ではないのです。
もちろん日米共に中国市場を失うことは大きなダメージですから、財界は巨大な輸出市場を失うことを恐れています。
しかしより大きな打撃を受けるのは、中国のほうです。
なぜなら日本にとって中国製品でなくてはならない商品はありませんが、逆はまた真ならずで、中国とっての日本製品は死活的な位置を占めているからです。

たとえば中国は建築ブームでしたが、そこで重用されているのは日本製のユンボやブルです。
中国製はあることはあるし安いのですが、すぐに故障してしまいます。
結局は日本製が世界一だということになって、高値で取引されています。
同じく中国の国有企業のほとんどでは、日本製の工作機械が使われています。

また穀物についてもかつては輸出国でしたが、いまや輸入国に転落し家畜の飼料の多くを米国に依存しています。
トランプ政権の輸出管理規制強化に対抗して、米国に報復関税をかけたものの、飼料が逼迫し豚肉が高騰し、国民の怨嗟をあびたのは記憶に新しいことです。
大豆の輸入に報復関税をかけたら、じぶんの国の豚に食わせるものがなくなって大騒ぎ(苦笑)。
今じゃアツモノに懲りてナマスを吹くではありませんが、世界の大豆を買い漁って国際市場価格を高値に張り付け、世界の畜産家から恨まれています。
かといって、他に報復できる品目はなしですから、初めから米中経済戦争の勝負は見えていたようなもんです。

ですから、米国と日本が本気で中国と経済でデカップリングを開始したら、中国経済は致命的な打撃を受けるでしょう。
中国にとって経済失速は、他の国のようなただの政権交代を意味しません。
共産党支配そのものが崩壊する危険を常にはらんでいるからです。
だから中国共産党はなにがなんでも中国経済を守ろうとします。

このような構造を知った上で、中国市場べったりの構造から、半導体市場のように日米で力を合わせて中国から足抜きして新たな市場をつくろうではないか、というのが米国の提案なのです。
これは考えようによってはなかなか魅力的な提案じゃないですかね、財界さん。

 

2021年4月20日 (火)

菅さん、台湾有事の腹はできていると答えよう

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さて、日米首脳会談も終り、次の段階に入ります。
今回の首脳会談についてアレコレ言う人がいますが、ハト氏が言うように食ったのがハンバーガーだろうが、豪華晩餐だろうが関係ありません。
菅さんの日程がコロナ対策で詰まっていたからトンボ帰りしただけのことです。自分だってハンバーガーを食ってきたくせにヨー言うよ。
菅さんのズボン丈がだって(爆笑)。まさにどーでもいい。
スガのおいちゃんの持ち味は、この野暮ったさなんですからね。

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さらに、オリンピックについてバイデンが出場を明言しなかったことをとやかく言いたがる人がいますが、これも無視してかまいません。
だってこの時期は、やるやらない、出る出ないの時期ではなく、「やる以上どのようにキッチリやるのか」という方法論の詳細を詰めるべき時期だからです。
米国がコロナを理由に来ないのなら、ここまで孤立無援のオリンピック準備を進めてきた日本に対しての重大な裏切り行為にほかなりません。
万が一米国がそんなことをしたのなら、日米首脳会談の前提たる日米同盟に深い傷を与えますから、これは利敵行為じゃありませんか、と問い返せばいいのです。

ですから、外野のくだらない雑音に気を取られる必要はありません。
日米会談で与えられた宿題は多いのですから、それに順位をつけて、緊急度が高いものから対応を決していけばいいだけのことです。

なんといっても肝は台湾についてどうするのか、です。
共同声明の文言は、「台湾海峡」でも「台湾」でもかまいません。
共同声明は外交文書ですから、あのていどにボカしておいたほうが、文言に拘束されなくてよいのです。

むしろ、今「台湾」と書き込まれて困るのは台湾のほうじゃないでしょうか。
なぜなら、それは台湾が「地域」でもなければ「大陸の一部」でもないあいまいな国際的地位ではなく、国家としての台湾承認を求める「台湾独立」を意味しかねないからです。

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では台湾国民が「独立」を望んでいるかといえば、時代によって変化しますが、熱烈支持はおおむね3分の1ていどです。
中国が懐柔政策をとった「三通」時代は大陸との統一や現状維持を望む者が増えましたが、習が「戦狼」路線で野望をむき出しにし、香港の惨状を目の当たりにすると独立が急増しました。
このように台湾人の多くは現状維持をとらないと中国から侵攻を受けてしまうと考えており、独立の旗を高く掲げるには至っていないのです。
ですから、このような時期こは日米両国は台湾の形式的地位に拘泥せずに、実質で台湾を守っていくことを宣言すればいいのです。

さて、そこで問題がひとつあります。
米国はいいでしょう。バイデンには危惧が残りましたが、いまや現政権が台湾防衛に立ち上がることを疑う者はいません。
問題は日本の国内問題です。
日本国民の多くは、特に沖縄県民は台湾の命運と沖縄のそれを重ねて見ようとはしていないからです。

なぜでしょうか。
それは為政者が台湾有事とは日本有事のことだ、このふたつは連動して動いているということを国民に訴えないからです。
そのために日本国民の多くは、台湾をほんものの友人と考えていますが、自分自身のセキュリティ問題と関連づけて考えません。
ですから、台湾-尖閣-宮古の危機は連動しているといわれても、ピンとこないのではないでしょうか。
台湾有事といわれても、そりゃ気の毒だ、パイナップルでも買って応援しようていどで終わってしまいます。

ではこういう質問をしてみましょうか。
中国軍が台湾に侵攻した場合、台湾上空のみならず両軍の戦闘機は広い範囲で交戦するでしょうが、日本の国境線で彼らは引き返してくれますか?
だいたい国境線は可視化できませんから、そんな保障はありません。
ではその時、自衛隊は中立を守るのでしょうか、それとも台湾を守るために共になんらかの形で戦うので.しょうか?

仮に自衛隊が中立を守ろうとすれば、防空識別圏に侵入した軍用機の所属を問わずスクランブルをかけて追い払います。
さらに領空に侵入された場合、これも所属を問わず撃墜することが国際法上は可能です。
これが「中立を守る」ということの意味です。
実際に大戦中、スイスはドイツ機も英米機も、平等に迎撃しました。
したがって、領空に台湾機が逃げ込んで来た場合、自衛隊は台湾機を撃墜することがありえます。
このように「中立」というのは優しげにきこえますが実は真逆で、冷酷で厳しい立場のことです。
いわば自国だけが平和なら後は知ったことか、というミーイズムの権化ですからね。

これが従来からのわが国が「紛争の解決手段としての戦力を放棄」したことの必然的結果で、それは中国がまだ軍事的膨張を開始する以前の牧歌的時代の産物でした。
しかし前政権において、集団的自衛権を一部容認し、周辺事態の有事においては重要影響事態であると認識して行動を起こすことが可能となりました。
中国の膨張政策に対応したのですが、具体的になにを指すのかは明確にされていませんでした。

今回それが明示されたことになります。
それが台湾有事です。
日本は、「台湾海峡」の防衛義務を負うことを国際公約としました。
したがって台湾有事に対して、重要事態安全確保法が適用されます。
重要事態とは、そのまま現状の危険な事態を放置すれば、日本の平和と安全に重要な影響を与えると考えられる事態のことです。

●重要影響事態安全確保法
平成十一年法律第六十号
重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(以下「重要影響事態」という。)に際し、合衆国軍隊等に対する後方支援活動等を行うことにより、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)の効果的な運用に寄与することを中核とする重要影響事態に対処する外国との連携を強化し、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。 

(重要影響事態への対応の基本原則)
第二条 政府は、重要影響事態に際して、適切かつ迅速に、後方支援活動、捜索救助活動、重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律(平成十二年法律第百四十五号)第二条に規定する船舶検査活動(重要影響事態に際して実施するものに限る。以下「船舶検査活動」という。)その他の重要影響事態に対応するため必要な措置(以下「対応措置」という。)を実施し、我が国の平和及び安全の確保に努めるものとする。
 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。

現行法で可能なのは、後方支援・捜索救助船舶臨検等に限られていますから、その範囲をどうとるのかという運用面の解釈になります。
たぶん野党は国会審議で、枝葉末節にこだわってアレはどうだ、コレはどうだと根掘り葉掘り聞いてくるでしょうが、首相は官僚的答弁ではなく、直接に国民に語りかけるべきです。

台湾を守ることは、日本の安全と平和を守ることに直結している。わが国が最良の友である台湾を見捨てることは断じてない、可能な限り米国と共に支援を惜しまない、と。


2021年4月19日 (月)

日米首脳会談、現時点で最良の成果

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もの足りない部分はいくつかありますし、トランプ政権ならもっと踏み込んだ表現をとったと思われますが、現時点では最良の共同声明でした。
共同声明のオリジナルは日米が公表しています。

U.S.- Japan Joint Leaders’ Statement: “U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”
2021/04/16付 ホワイトハウスHP
日米首脳共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」【※PDFファイル】
2021/04/16付 外務省HP
日米首脳会談】日米共同声明の全文 - 産経ニュース

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産経ニュース

まず、もっとも注目された安全保障については、このように述べています。
この冒頭のワンフレーズにすべてがこめられています。

“Today, the United States and Japan renew an Alliance that has become a cornerstone of peace and security in the Indo-Pacific region and around the world.”

「今日、日本と米国は、インド太平洋地域、そして世界全体の平和と安全の礎となった日米同盟を新たにする。」

コーナーストーンとは礎石のことです。オバマ時代の日米共同声明にもこの表現は使われてますが、それはもっと一般論的な日米二国間関係の強固さはを謳う修飾語としてでした。
今回はそれは「インド・太平洋地域をとりまく世界情勢」にまで大きく格上げし具体性をもたせました。

具体的に何を共に守ろうとするのかについて、明確に名指ししています。
ここで曖昧に「東アジアの平和と安定」などと表記されると、この共同声明は無意味な外交儀礼となってしまうからです。
しかしこれは危惧に終わりました。

“We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. We share serious concerns regarding the human rights situations in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region. The United States and Japan recognized the importance of candid conversations with China, reiterated their intention to share concerns directly, and acknowledged the need to work with China on areas of common interest.”

「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港および新疆(しんきょう)ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。」

画期的なことはここでTaiwan Strait (台湾海峡)が明記されたことです。
「台湾」ではなく「台湾海峡」という表現には引っ掛かりますが、これは日米両国を現時点では拘束し続けている、ワンチャイナ・ポリシーとの兼ね合いでしょう。
これについて米国はトランプ時代に9割方まで見切りをつけつつあります。
バイデン政権となってからも、継続して政府要人を派遣するなどをして、密接な対応をしています。

そもそも中国がなにかというと言い出す「一つの中国」論については、米国は国交時にテイク・ノート(聞き置いた)という表現を使っていて、「台湾が中国の領土」などという中国の主張を認めたわけではありませんでした。
むしろ問題はわが国で、日中国交に際して「理解する」という一歩踏み込んだ表現を使ってしまっています。
この角栄の軽率な文言のために、わが国は台湾を国家として承認することはおろか、台湾の名を口に出すことすらできないこととなってしまいました。
特にその恐中病が深刻なのは二階や公明です。
当然帰国するなり、血相を変えて首相官邸に飛び込んでくることでしょうから、菅氏が「帰ってからのほうが大変だ」と漏らしたとおりです。

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Getty Images

また私がもっとも懸念していたウィグル・香港の人権状況についても触れられています。
これは大きな前進だと評価します。
具体的には先日の記事でもしたとおり、米国の制裁手段である国防権限法2021と日本がいかに協調していくかにかかっていますが、この具体性については詰めきらなかったようです。

またもう一点注目すべきは、たんに日米豪印のクアッドとの準同盟関係だけではなく、ACEANとの連合も掲げたことです。

「日米両国は、皆が希求する、自由で、開かれ、アクセス可能で、多様で、繁栄するインド太平洋を構築するため、かつてなく強固な日米豪印(クアッド)を通じた豪州およびインドを含め、同盟国やパートナーと引き続き協働していく。日米両国はインド太平洋における東南アジア諸国連合(ASEAN)の一体性および中心性並びに「インド太平洋に関するASEAN アウトルック」を支持する。日米両国はまた、韓国との3カ国協力がわれわれ共通の安全および繁栄にとり不可欠であることにつき一致した。」

余計なことに韓国も連携に入れているのがバイデンらしいところですが、いつまで続くのやら。

ちなみに辺野古移転に関してもさりげなく共同声明に一句盛り込まれています。

「日米両国は、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である。」

共同声明は条約に準じますので、以後デニーが覆したくても不可能となりました。

なお、共同声明後半は “Competitiveness and Innovation” (技術革新についての共同)が述べられています。
これは日米同盟が安全保障だけの同盟ではなく、、「癌治療法の開発、バイオテクノロジー、人工知能(AI)、量子科学技術、民間宇宙開発協力」などに加え、「安全な通信技術(secure information and communications technolotgy, ICT)」まで含んだ経済同盟への質的転換を図ろうとするものです。

またこれに絡んで、サイバーセキュリティについても言及がなされています。

「日米両国はまた、より緊密な防衛協力の基礎的な要素である、両国間のサイバーセキュリティ及び情報保全強化並びに両国の技術的優位を守ることの重要性を強調した。」

これは単なる軍事的協力にとどまらず、日米両国の優位性を守る=技術流出等を許さないということです。
次回に詳しくみていきますが、日本は今回日米会談でも議題となった半導体についても世界最高水準の位置につけていますし、技術はいまだに保有しています。
ただシェアを完全に喪失したために、1990年代にバブル経済が崩壊して以降、みるも無残にその分野での存在感を喪失してしまいました。
とはいえ、世界範囲から見れば日本企業は各分野のコア技術をほぼ手中にしており、また先端技術の多くの分野においても日本は常に世界トップ3に入っていることは確かです。
米国が軍事のみならず経済においても真剣に中国との戦略的競合を考え始めた今、もはや組むべきは日本と台湾しか残っていないのは事実でしょう。

今後どのような形で台湾を守っていくのかは語られませんでしたが、CPTPP(アジア太平洋地域における経済連携協定)やWHO加盟などで台湾の国際社会復帰を認めていくようなことから始まるかもしれません。

 

2021年4月18日 (日)

日曜写真館 休みの街

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昼下がり、ご老人がふらりと暖簾をくぐります。

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大正の御世からここに居ます。

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普通のそば屋さんなのが不思議なくらいです。

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倉はまめに扉を開けて空気を入れないといけません。

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坪庭を見ながらおそばをどうぞ。

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古い商家の箱箪笥。

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休みの街。

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2021年4月17日 (土)

日米首脳会談、台湾の平和と人権明記が焦点

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※  共同声明に以下の文言が入ったようです。午前9時追記

「首相は記者会見で、「世界の平和と繁栄に中国が及ぼす影響について議論した。東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試み、地域の他者に対する威圧に反対することで一致した」と述べた。
首相は会見で、「台湾海峡の平和と安定の重要性については日米で一致しており、今回改めて確認した」と説明。中国海警船が領海侵入を繰り返す尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関し、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条の適用対象に含まれることをバイデン氏と改めて確認したことも明らかにした」(産経4月17日)

「台湾」ではなく「台湾海峡」ですか。苦肉の表現だな。
ウィグル香港の人権については

「アメリカは日本の最良の友人であり、日米は、自由、民主主義、人権などの普遍的価値を共有する同盟国だ
全文で確認してから記事にします」(NHK4月17日 )日

「人権を普遍的勝ちとする」か。これではただの一般論です。
制裁についてはまったくふれられていません。
評価などは来週月曜日にします。

本日未明に行われている日米首脳会談の共同記者会見は、午前4時現在まだ行われていませんので見切りで書くことにします。
なんだか山路さんではないが、落ち着きませんよね。
トランプと安倍さんなら鉄板の安定感があったのですが、方やジジ、方や外交若葉マークの菅さんですから、よもやとは思いますが、大丈夫かな。
逆に言えば、双方ともしたたかなプレイヤー型政治家だったドナルド&シンゾーは、その時の会談の状況次第で事務方が決めた線を飛び越えることもあったに対して、側近が支えてやらないと危なげな双方ですから落ちるべき所に落ちるでしょう。

「落ちるべき所」とはなんでしょうか。それをもっとも雄弁に語っているのが中国です。
あの「戦狼」報道官の趙立堅はこうあらかじめ脅しをかけていました。

「中国外務省の趙立堅副報道局長は16日の記者会見で、日米首脳会談の共同声明で台湾問題が盛り込まれる見通しになったことに関して、「両国が結託して中国に対する否定的な動きをしており、米国と日本に深刻な懸念を表明した」と語った。
趙氏は「中米、中日関係はいずれも重要な転機にある。(日米関係強化により)第三国の利益を損なってはならない」と主張した。また、「われわれが国家主権、安全、発展の利益を守る決意は固く、日米は中国の内政に干渉してはならない」と述べた」(時事4月16日)

第三国が、他の二国間首脳会談に対してアレを言うななんてことは、外交上ありえない暴言ですが、この粗暴野卑な男は言いたい放題です。
要は、日米首脳会談で台湾の平和に触れるな、との仰せのようです。
中国の前にでると固まったタヌキのようになる韓国と違って、米国はこのようなことを言われれば言われるほど、ホー、やはりそこがツボだったのかと再確認するだけのことです。
だから共同声明で台湾について触れることを、中国への外交的アンサーにするはずです。
市民語でいえば、チャイナ、ウルセーということです。

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読売

趙立堅が言うように、 日米首脳会談のキモは、あくまでも台湾についてどのような表現でその防衛を日米が確認するか、にかかっています。

共同声明のメニューは下図のようにたくさんありますが、今、焦眉の問題は尖閣と台湾しかないのです。
あとはウィグルや香港の人権問題についてどこまで突っ込めるかで、それが明記できればとうぜんワンセットでどう中国を制裁するのかという方法論になっていきます。

メディアの報道がいつも隔靴掻痒なのはこの三つのこと、すなわち①尖閣・台湾・南シナ海の安全、②ウィグル・香港の人権、③対中制裁、といった三つの要素をバラバラに併記してしまうからです。
この三つは別ち難くひとつのテーマであって、気象変動などは合意するもしないも菅政権は、2050年CO2ゼロなどは宣言していますから、今さら争点にはなりません。

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読売

米国はストレートに、尖閣防衛の言及と絡ませて、クアッドの実体化と台湾・南シナ海問題への日本の積極的関与を要求してくるはずです。
米国が言っていることはしごく当然で、尖閣を日米安保第5条の範囲内だということに固執してきた日本に向けて、尖閣の海はどこにつながっているのか、台湾と南シナ海だろう、切り放しちゃダメだ、ということです。

ここなんですよ、日本の今までの限界は。
日本は尖閣に対して、米国にも強く防衛に協力して欲しいと言いつつ、そこから先に一歩も出ようとしなかったわけです。
9条と親中派のしばりが強かったからです。
しかし尖閣の防衛は、中国による東シナ海支配の野望を砕かないともたらされません。
そして中国が尖閣に固執するのは、地下資源とは無関係です。

前々から書いてきているように、中国が尖閣を欲しがる理由は二つです。
ひとつには、尖閣は太平洋への道を拓くための扉に位置し、ふたつには台湾に侵攻する時に軍事的におさえて置かねばならない要衝にも尖閣は位置しているからです。
このふたつの戦略上の理由から、中国は必ず尖閣を我が物にしようとします。
その時には宮古島は極めて危険です。
私はその時期を台湾侵攻の前後か、あるいは同時だと考えています。

米政府の中でも米海軍がこの南シナ海-台湾-尖閣の繋がりをもっともよく理解しています。
ですから、先日中国海軍が空母遼寧を宮古と沖縄の間を通過させて太平洋へ抜けた時、横須賀からイージス艦を急派して、並走させています。
この時、米海軍からはアーレイ・バーク級イージス艦2隻、海自からは護衛艦2隻の合計4隻で、遼寧空母打撃群を追いかけ、その時の写真を米海軍自身がツイートしています(後に国務省から怒られて削除したようですが)。

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撮影された場所はフィリピン海のようで、DDG-89マスティンです。
ふたりの士官が写っていますが、左のCOの帽子をかぶったのが艦長、右のXOが副長です。
艦長なんか足を投げ出して双眼鏡で遼寧をしげしげと眺めていて緊張感ゼロなことから、戦闘配備にはついていないようです。
ただし、こういうすぐ横を並走しているということは、遼寧空母打撃群6隻が作っているはずの輪形陣をなんなく破ってしまったということになります(苦笑)。
たぶん中国海軍に対して、おめーらなんか目ゃないんだよ、この餃子野郎め、とでも毒づいていたのでしょう。
ちなみにどうでもいいですが、「餃子空母」というのは遼寧の愛称です。 

米海軍は中国海軍の力量を試しているので、このようなことは米ソ冷戦期には日常的に行われていました。
この時に、並走されたくらいで射撃管制レーダーを照射したり、艦をぶつけようとしたりすれば、即座に三流海軍と見なされます。
今のところ中国海軍はこの「試験」には乗らないようですが、コリアのようにすぐに逆上してレーダー照射なんかすると偶発戦争になる可能性がありますので、そこそこに。

話を戻します。
日米首脳会談では中国の人権についてどこまで踏み込むかが、もうひとつのキモです。
いままでの菅政権のように、口では批判するがなんの制裁もしないなんてことはありえません。
批判と制裁はワンセットなのです。おつきあい非難でどうにかなる時期じゃないのですよ。
加藤官房長官は「人権に対する制裁は法律にない」なんてバカ言っていますが、韓国に輸出管理規制強化をかけたように、外為法をうまく運用すれば可能です。

米国は、すでにトランプ時代から国防権限法2021を作って、「中国軍に所有・支配されている企業リスト」の拡大強化をしています。
バイデンもこれをそっくり受け継ぎました。
国防権限法2021によって、従来は司法省、CIA、FBI と協議してかけたのですが、この手続きが簡略化されました。
それに従って、指定対象が大幅に拡大し、「軍民融合貢献者」という概念が導入されています。
これにより、人民解放軍系の「民間企業」に対して、米国が先端技術などの輸出禁止処置を取ることができます。
そしてさらに同盟国に対して、同様の輸出管理規制強化をさせようとしています。

台湾もきついが、この輸出管理規制強化も今までのらりくらりでスルーしてきた日本には厳しいはずです。
まちがいなく、中国は怒り狂うでしょうからね。
さらに人権問題では、ウイグルやチベット、香港問題が共同声明に必ず盛り込まれなければなりません。
グローバルマグネツキー法の制定も迫られるはずです。
これもそうとうに日本にとって度胸のいることです。
今、ウイグル綿とトマトがターゲットになっていますが、それだけでは済みません。
更に広範囲な日本企業が打撃を受けるはずです。

カゴメが新疆のトマトの不使用を声明したために報復されるようですが、それは中国市場へのアクセスも制約されることを意味します。
こういう中国進出企業の悲鳴に対して真正面からこたえていかねばなりません。
そのためにはまず菅政権がしっかりとした中国方針を持たねばならないのは自明であって、政権から二階を叩き出し、公明を黙らせないとどうにもならないでしょう。

ところで菅首相は、訪米直前にウォールストリートジャーナルに寄稿しています。
日本ではまったく無視されていますのでやや長文ですが、付録でご紹介しておきます。

 

[付録]
Japan’s Path to Growth and Stability in the Pacific
By Yoshihide Suga  
仮訳
太平洋における日本の成長と安定への道~私たちは、気候変動と高齢化によって引き起こされる問題に取り組んでいます~             
菅義偉 2021年4月14日 17:56

日本は転機に直面しています。パンデミックの後、我々の課題は、成長軌道に戻り、世界経済において強力なリーダーシップの役割を果たすことです。
高齢化と人口減少、セパリズムと一過性の特別な利益による官僚制は、これらの長年にわたる困難な問題に対する解決策を提供し、さらなる成長志向の改革を実施することが、私の政権の成長戦略の中核です。

日本は、自国経済と世界の両方にとって、成長のための新しい原動力を生み出す上で主導権を持たなければなりません。グリーンポリシーとデジタルトランスフォーメーションには特に可能性があります。
気候変動は差し迫った世界的な問題です。私は、経済的制約ではなく、強力で持続可能な成長を生み出す原動力として取り組んでいます。その確信を持って、私は2050年までに日本をカーボンニュートラルにすることを約束しました。
昨年末、私の政府は、洋上風力、水素、その他の技術に対する野心的な目標を示すグリーン成長戦略を発表しました。グリーンプロジェクト、税制優遇、規制改革、国際標準化プログラム、その他の国際協力を支援する2兆円(180億ドル)の基金を含む、民間経済の投資とイノベーションを促進するための様々な政策を動員します。

パンデミックは、日本が政府のサービスをデジタル化するには遅すぎることを明らかにしました。民間産業にも追いつくことがたくさんあります。私の政府は、最先端のデジタル国家になるために大胆に改革を加速します。私はデジタルエージェンシーの創設を発表し、首相に直接報告し、今年の秋に稼働するコントロールポイントを務めました。
このデジタル革命により、私たちは皆をデジタル経済に取り入れていきたいと考えています。高齢化と少子化に直面した最初の国の一つとして、日本は技術を駆使して誰も置き去りにしない社会を作り出します。
そして、ポスト5Gネットワークを見据えて、デジタル技術における競争力を磨き、グローバルデジタル化競争のフロントランナーとして浮上するために、米国と協力することを楽しみにしています。日本は、世界貿易機関(WTO)の電子商取引交渉を通じて、「信頼を持ったデータ自由な流れ」を引き続き推進していきます。

保護主義が世界的に広がる中、日本は自由貿易の旗手としてのリーダーシップを発揮してきました。米国がTPPから離脱した後、環太平洋パートナーシップの包括的かつ進歩的な協定を締結するために11カ国を結集し、日EU経済連携協定(日米)などの協定を締結した。包括的経済連携協定と地域包括的経済連携我々は、WTO改革を含め、自由で公正な経済領域を拡大し、ルールに基づく多国間貿易体制の強化に努め、引き続き努力します。

地域的および世界的な繁栄のためには、自由で自由な秩序、海上安全保障、接続性が不可欠です。我が国は、同じ志を持つ国々との協力を通じて、自由で開かれた中太平洋を守る取り組みを戦略的に進めます。
こうした取り組みを通じて、より強い経済と社会を築くのが、私の政府の使命であり、責任です。強い日本は、米国との良好な協力関係と、インドー太平洋の平和と繁栄の基盤の前提条件です。

今週ワシントンを訪れる予定です。バイデン大統領が初めての外国人指導者ゲストとして私を迎えてくれたことに感謝します。1912年に日本から寄贈され、アメリカ人が熱心に栽培したワシントンの桜は、毎年春に美しく咲きます。
この厳しいパンデミックシーズンに、自由、民主主義、人権、法の支配の普遍的価値を表す同盟を強化し、地域に平和と繁栄をもたらす自由で開かれたインドーパシフィックに向けて両国のリーダーシップを発揮する機会を楽しみにしています。

 

2021年4月16日 (金)

菅首相訪米、米国は台湾防衛を要求するでしょう

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菅首相が訪米しました。

首相は15日夜、初の米国訪問に向け出発する。ワシントンのホワイトハウスで16日午後(日本時間17日未明)にバイデン大統領と会談。日米同盟を強化し、中国の台頭に連携して対処する方針を確認する。気候変動問題や重要品目のサプライチェーン(供給網)構築を含む経済安全保障をめぐっても意見を交わす見通しだ」(時事4月15日)

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NHK

 菅さんの初陣です。
バイデン政権ができてから、4カ月ちかくたっていますので、2+2会談やクアッド首脳会談などで実務的なことの積み重ねはできていますので、そうそう大外しはないはずです。
新大統領として初の外国要人としてのご指名ですから、バイデンとしても気合が入っていると思われます。
バイデンがなにを言うのか忘れてしまい、菅さんが大仏と化している光景が見えるようで、ああ心配。

なにか宗主国に新大統領が誕生するたびに押っ取り刀でご挨拶に出向くようでなんだかなぁ、という気がしますが、声もかからないほうがもっとなんだかなぁ、なんですが(笑)。
むしろ今の中国の「戦狼」ぶりを見ると、つまらないプライドを捨てて実を取るべき時期です。

向こうさんからしても、数ある同盟国から日本を「大統領最初の客人」として選んだのは、くじ引きで決めたわけではありません。
日本以外に中国にストップをかける同盟国が、世界に存在しないからです。
日本人は妙にじぶんの国を弱小国だと思っているふしがありますが、アジア全域を見渡しても経済力で世界3位、人口は仏独を合わせたより大きな1億2千万人、海軍力は自由世界第2位、空軍力も同じ世界5位、そしてなにより民主国家群の中核的同盟となることを期待されているクアッドの提唱国てす。
それがわが国の客観的国際地位だ、ということを忘れないようにしましょう。

だから米国はヨーロッパ諸国ではなく、「最初の客」として日本を指名したのです。
暴走する中国を止めるには、地理的にも軍事的にも中国に隣接する日本しかいないし、日本ぬきで世界戦略は立てられないからです。
日本はこの自らが置かれた立場から逃げようがないし、逃げるべきではありません。

菅さんは安倍氏と既に会談しているので、腹案はもっていると思われます。
たぶん外交の師匠に胸襟を開いていろいろと尋ねたのでしょうね。
安倍氏としてもここで菅さんが外交的失敗をすれば致命的になることは分かっていますから、元の女房役に親切に教えたんじゃないでしょうか。
ほんとうは彼が行けば安心なんですが、ま、しょうがない。

もうすでに共同声明の内容については事務方同士で決めているはずで、先乗りしているNSCの北村局長と米国サリバン大統領補佐官が文言まで詰めているはずです。
その意味では、首脳会談はジジが居眠りをしないかぎり予定調和です。

要点は絞られています。
よくメディアが気候変動がどーたらと言っていますが、そりゃ話には出るでしょうが、もうすでに首相は2050年までにCO2排出ゼロを謳ってしまっていますから、総論で終わると思います。
むしろ、バイデンが環境問題とグリーンエコノミーに注ぎ込むという220兆円規模のインフラ投資をすると言っているのですから、退屈でしょうがしっかり拝聴してきて下さい。

バイデンは壮大な大風呂敷を拡げています。

「バイデン米政権は31日、8年間で2兆ドル(約220兆円)規模をあてるインフラ投資計画を議会に提案する。財源として連邦法人税率を21%から28%に上げるなど企業増税を求める。持続的な経済成長や中国への対抗を狙う。野党は増税に反対しており、議会審議が紛糾するのは必至だ。
バイデン大統領は31日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグを訪れて演説し、「米国雇用計画」の詳細を発表する。
ホワイトハウスによると、道路や橋の修復など交通網の整備に6210億ドルを求める。気候変動対策の一環で電気自動車(EV)を普及させるため、地方政府や企業に補助金を出して充電設備を2030年までに50万カ所設ける。電力網の刷新に1000億ドルをあてて温暖化ガスの排出削減にもつなげる。
国を挙げて巨額を投じる中国に対抗するため、サプライチェーン(供給網)の強化など製造業の振興に3000億ドルを投じる。このうち半導体の米国生産を後押しする補助金に500億ドルを充てるよう求める。人工知能(AI)など研究開発投資にも1800億ドルを見込む。
バイデン政権が公約に掲げる格差解消も計画の柱だ。過疎地を含む全米に高速通信網を行き渡らせる。低所得者向けの住宅や公立学校、育児施設の増設・修復も促す」(日経3月31日)

目的はCO2削減という民主党左派好みの空疎なものですが、巨額財政投資自体は大正解です。
コロナから立ち直ることが求められているのは米国も日本も同じこと。
日本は今米国に協調して巨額財政投下をする時期です。
むしろ米国側から、もっと日本がカネをバラ撒けと要求して欲しいくらいです。
外圧頼みは寂しいですが、うちの国の財務省や太郎ちゃんはそうでもしないとビクリとも動きませんからね。

次に、なんといってもメーンテーマは対中戦略のすり合わせです。
ジジが気象変動なんて寝言を言っている時は聞いたふりをしているだけでかまいませんが、対中戦略はわが国の焦眉の課題です。
ここで米国は日本に腹を括れ、いつまでもコウモリやっているんじゃねぇ、と言ってくることでしょう。
いや、言って欲しい。かまわないから一発かまして下さい、バイデン閣下。
日本には中国ラブの亡者どもが政権与党に溢れているのです。

実は、この首相訪米前に、日米韓三カ国は、北朝鮮をめぐる問題などを協議しています。

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日経

「日米韓3カ国は2日、安全保障担当の高官協議をワシントン近郊で開き、北朝鮮の非核化や中国への対応に関する協力を確認した。中国は3日、韓国との外相会談を福建省アモイで開催した。対立を深める米中が韓国との連携を巡って綱引きする構図が鮮明になった。
共通の安全保障上の目標を守り、前進させるために努力する」。日米韓は協議後に共同声明を出して強調した。バイデン政権発足後、対面で初の高官協議だった。北村滋国家安全保障局長とサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)、韓国の徐薫(ソ・フン)国家安保室長が出席した。
声明は中国を念頭に「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の懸念」を話したとも記した。半導体など重要品目の安定供給網(サプライチェーン)の構築といった経済安全保障の協力も協議したとみられる」(日経4月4日)

北村NSC局長とサリバン補佐官、日米はメンツまで一緒です。

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日米韓“安全保障担当”高官協議がスタート|日テレNEWS24

もちろんここで話合われたのは、韓国の去就です。
米国が言ったのは、コリア、お前真面目に中国と対峙する気があるのか、あるならクアッドに参加しろ、台湾防衛についても一肌脱げと言ったところでしょうか。
韓国がなんと答えたのか分かりませんが、さすが日本を目の前にして「日本の歴史認識が問題だから協力できない」なんてことは言わなかったようです。
しかし、米国の言うことは聞く耳持たないことは、態度で示しています。
なんとその翌日、中韓外相会談がもたれて、その席上韓国はは協力関係の強化と2+2会談の実現、そして習の訪韓まで要請しています(爆笑)。

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「韓国の聯合ニュースによれば、王氏は会談冒頭、朝鮮半島問題をめぐり「韓国と共に対話による政治解決プロセスを推進する」と強調。鄭氏は「韓中両国は韓(朝鮮)半島の完全な非核化という共通目標がある」と述べ、「中国の積極的役割」に期待感を示した。
韓国が要請している習近平国家主席の訪韓については、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いた後、早期実現を図るとした。日中韓首脳会談の早期開催に向けた協力も再確認した。
 中国外務省によると、王氏は北朝鮮が主張する「(自国の)安全への合理的な懸念」の解決が必要と改めて指摘。米国と対立する北朝鮮の立場を代弁した」(日経4月4日)

やってくれますね、コリア。
韓国は中国に対して、北朝鮮を代弁して「北の安全保障の懸念」を払拭してくれるように要請し、さらなる「協力強化」を約束したうえで習に訪韓まで請うたというんですから、空恐ろしい。
それだけで終わらず、外務・防衛の2+2会談を中国にもちかけるということは、安全保障分野でも、中国様の準同盟国になる意志を示したということになります。

韓国はそれを時期もあろうに、日米韓国三カ国会談翌日にかますのですから、見上げたんだよ、風呂屋の煙突です。
米国の顔に真正面から泥団子を投げつけ、中国にひざまずいたことになりますが、意味を分かってやっているんでしょうね。
いいかげん米国も目を覚ましなさい。あの国はもうアチラ側に走ったのです。
トランプはとっくにそう考えて、その対処を練っていましたが、バイデン政権はそこからですか、なのです。

では、このような韓国の裏切りという新局面を受けて、日本の役割とその位置づけを大きく変化させねばなりません。
まず朝鮮半島に対しては、米韓同盟の枠組みを崩さずに新しいシフトに変化していく必要があります。
米韓同盟があるからこそ、韓国軍を戦時統制権で拘置できます。
これがあるかぎり韓国大統領が自由に動員できるのは特戦団と海兵隊くらいで、主力は動かせません。
トランプのように見切りをつけて去ることはいつでもできますから、今は韓国軍に北や中国軍とおかしな共同をさせないことてす。

最悪なのは、中韓北の三国が同盟を組み、それにロシアが協力するという構図です。
この反日米4カ国同盟を組まれた場合、日米同盟は対応できないかもしれません。
ですから、韓国が実質で裏切っていることは充分承知していても、韓国はまだ友好国だというしぐさを続けておく必要があるのです。

そしてその一方で、韓国なき日本海方面の防衛を構想せねばなりません。
韓国が従来要求されてきた役割は、対北、対中、対露の前線国家・橋頭堡でしたから、これを失えば、当然最前線に日本が来ることになります。
西は東シナ海・尖閣海域、北は日本海が日本の新たな防衛ラインとなります。

今回日米首脳会談でここが詰められるはずです。
具体的には、日本がこの数十年曖昧にし続けてきた台湾防衛に参加を求められることでしょう。
尖閣を日米安保で守ることを米国に頼むるなら、その見返りに台湾防衛の旗幟を明確にせねばならないのです。

日本は韓国とは違う意味で米中に二股をかけていました。
もうそれが効く時代ではないのです。




2021年4月15日 (木)

ムン閣下、とうとう国際裁判所に提訴だとか

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ムン閣下が国際海洋法裁判所に提訴なさるそうで、まことに慶祝の至りです。
え、なぜ慶祝かといえば、決まっているじゃないですか、こんなことをしたら自分で出口のないどん詰まりに自分から飛び込むようなもんですからね。

[ソウル 14日 ロイター]  韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、日本政府による福島原子力発電所処理水の海洋放出決定を巡り、当局に国際海洋法裁判所提訴に向けた方法を検討するよう指示した。青瓦台(大統領府)報道官が14日、明らかにした。
日本政府は13日、福島第1原子力発電所にたまり続ける多核種除去設備(ALPS)処理水を海洋放出すると発表した。
これに対し韓国政府は、相星孝一駐韓大使を呼び厳重に抗議するとともに、省庁間の緊急会議を開いて対応を協議した。
報道官によると、文大統領は地理的に近く日本と海を共有する国として、「今回の決定には大きな懸念があると言わざるを得ない」とし、日本政府に韓国の懸念を伝達するよう相星大使に要請した。
韓国外務省は声明で、同様な懸念を米政府にも表明したと明らかにした。日本の決定について、米国務省は13日、「透明性を保ち、世界的な原子力安全基準に沿った手法を採用した」との見解を示している。
同省は中国当局者とのオンライン会議で、処理水海洋放出計画について「強い遺憾と深刻な懸念」を共有したという。
中国外務省の趙立堅報道官は14日の定例会見で、日本の決定は汚染水の海洋への廃棄という前例を作ることになると指摘。
「海は日本のごみ箱ではない。太平洋は日本の下水管ではない」と述べた」(ロイター2021年4月14日 )

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文在寅、福島第1原発の処理水海洋放出に「待った」 国際海洋法裁判所へ

世界一の海洋汚染国中国から、海洋を下水管にしている、なんて言われるのは片腹痛い。
この趙立堅は、「戦狼外交の切り込み隊長」という勇ましいふたつ名で呼ばれる人物で、かつては南シナ海の人工島についての国際仲介裁判所の裁定を「紙くず」と呼び捨てたいわくつきの男です。
こんな粗暴野卑・傲岸不遜・無知蒙昧な男から批判されるのは日本の名誉くらいに思って下さい。

ところでいままで何度も書いてきたので今さらですが、海洋放出は国際基準を守ることを条件にまったく合法的処理方法です。
別に放射性物質を含んだ処理前の排水を、そのまま海洋放出するわけじゃありませんから。
原発は止めていようと廃炉工程に入っていようと、冷却し続けねばなりませんから、とうぜん排水として汚染水は出ます。
それを本来はさっさとALPSを通して国際基準にまで浄化し、取りきれないトリチウムだけを海水放出して希釈すれば済んだことです。
これがいわゆる「ALPS処理水」、あるいはたんに「処理水」と呼ばれます。

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ALPS処理装置装置 東電

これをNHKのようにいまだ「放射性汚染水」なんて悪意をこめて呼ぶからおかしくなるのです。

トリチウムのことを「放射性物質」なんてオドロオドロした呼び方をするから恐怖を煽るので、トリチウムは自然界に多く含まれているごく微弱な「三重水素」です。

要するに、トリチウムは「水素」です。
水素の同位体で、人体の中では水素(H3) の化学形である「水」の形をとっています。
 それが福島第1の処理現場では排水に含まれていて、言ってみれば「水の中に水がある」状態です。

もう少し細かく言えば、トリチウムは、毎日宇宙から地球にふりそそぐ放射線が空気中にある窒素や酸素とぶつかり、日々あらたに作られるもので、空気中や海水中に普通に含まれています。

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中性子を2つ持つ水素の同位体であり、ベーター線を出しますが、非常に小さな力しかなく、人体に与える影響はミニマムで、ヨーロッパの硬水系ミネラルウォーターにはトリチウムが含まれていますし、フランスにはトリチウムの食品基準すらあるほどです。
※関連記事『トリチウム水が「汚染水」だって?』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-229865.html

これが、先日も書いたように政治的決断ができなかったために、なんと10年丸々時間を無駄に してしまいました。
そしてとうとう膨大なタンク群が満タン。風評被害を恐れて、触らず触らず、見えません見えませんをやってしまったツケです。
どこかの政権がやらねばならなかったのですが、事故後10年の節目に当たった菅さんがこの貧乏籤を引く羽目になったわけです。

ではどうするのかといえば、海洋放出しか選択の余地はありませんでした。
これは日本政府が勝手に考えているのではなく、IAEAからの提言に沿ったものでした。
国際的な基準にまでトリチウムの濃度を下げて、その基準値以下になるように希釈してから海洋放出するわけです。
しかもそのトリチウムの希釈基準も充分にマージンをとって、国内規制基準の40分の1以下するとしています。このナニが問題なのか。

なになに、国内の規制値だって、と驚く人もいるかも知れませんが、当然他のすべての国内原発はとっくにあたりまえの顔をして海洋放出をしています。
いや、世界の原発もすべて海洋放出しています。

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2018年2月2日に開催された『多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第7回)』という会合で配布された『資料5-2 トリチウムの性質等について(案)』には詳細な排出量のグラフがあります。

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共同は「世界各国で海洋放出について意見が別れた」なんて書いていますが、なぜこういう国際世論が割れたなんて書き方をするのかね。

ゴネているのはいつものお約束の中韓だけです。
じゃあてめーらはどうしているんだといえば、ハイしっかり出しておられます。

中国は福島で予定されている6倍ですから、どのツラ下げて言っているんだと言いたくもなります。(だんだん言葉づかいが荒くなるゾ)

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「経済産業省がまとめたデータによると、韓国の主要原発である月城原発は2016年に液体約17兆ベクレル、気体約119兆ベクレルの計約136兆ベクレル(ベクレルは放射能の強さや量を表す単位)を放出。同様にフランスのラ・アーグ再処理施設は15年に計約1京3778兆ベクレルを海洋と大気にそれぞれ出している。 このほか、英国のセラフィールド再処理施設は15年に約1624兆ベクレル、カナダのダーリントン原発は同年に約495兆ベクレルをそれぞれ放出した」(産経4月12日)

●韓国・中国のトリチウム放出量(2016年現在)
・韓国月城原発・・・液体放出量17兆ベクレル
                   ・・・気体放出量119兆ベクレル
・古里原発         ・・・液体36兆
                    ・・・気体16兆
・中国大亜湾原発・・・42兆(2002年)

もう今さら中韓のダブスタには驚きませんが、この国には自分の国の原発の放出状況くらい教えてくれる官僚がいないのですかね。
輸出管理規制強化のときにも思いましたが、官僚くらいリアルにやってくれなきゃ、この国ほんとうに沈没しますぜ。

一方米国とIAEAの反応は、当然のことながらすっきり日本支持。
そりゃそうだ、IAEAのいうとおりやっているんですし、去年事務局長が来て放出を支持していました。

・米国務省のネッド・プライス報道官 「透明性を保ち、世界的な原子力安全基準に沿った手法を採用した」
・国際原子力機関(IAEA) 「国際基準に従っている」

即日米国が支持声明を出したのは、ムン閣下におかしなことを言わせないためですが、ダメでした。
さてムン閣下が今ソウルとプサンのダブル惨敗で先が見えてしまったわけですが、これからどうするとなると実はそう選択肢は多くないんです。
前にも書きましたが、よりいっそうの反日するか、さもなくば米国の仲介でおとなしく自由主義陣営の鞘に納まるか二つにひとつなんです。
崩れゆく支持層をつなぎとめるにはよりいっそうの反日しかないんですが、反日もやりすぎてネタ切れで困っていたところに、降って湧いた慈雨ような福島第1の海洋放出。
もう泣きださんばかりに後先なく飛びついたんでしょう。目に浮かびます。
いままでもさんざんやってきたので、新鮮味ゼロ。
使い回しのネタです。
放射能五輪をボイコットするぞって、どうぞどうぞ。遠慮なく。

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韓国はこの海洋放出にしてもそうですが、対日関係の中でしかモノを見れないために、「日本がぁ」と糾弾する時には米国が頭の中から消滅しています。
違うんですよ、ほんとうの韓国の相手は日本なんかじゃなくて、米国なのです。
米国がこの馬鹿げた韓国の対応に怒っているのです。
ですから、今回の場合、米国国務省がいち早く海洋放出を支持したのは一般論で言っているのではなく、韓国に対するメッセージなのです。
コリア、いいかげん静かにして米韓日三国連携に復帰しろ、ということですね。

米国からすれば、バイデンとなっていっそう同盟重視が大事なんですから、トランプのように「ま、いいか、あの国はああいう国だ。さっさと出てこうぜ」路線から、米韓同盟の締め直しに向かっています。
それは正気に返って中国と対峙しろということ。日本を愛せとまではいわないが、少なくと米国の顔を立ててつまらないことで騒ぐなということです。
まことにささやかな願望で、属国になって足をなめろというチャイナ帝国とはえらい違いです。

この米国の言うことを無視して、定番のGSOMIA廃棄なんてやると、もう後はありませんからね、知ーらないっと。
韓国はあいかわらず、オレがいないとウェノムは困るだろう、なんて思っているようですが、あいにく日本は韓国がどうしようと知ったことではない悟りの境地に達してしまっています。

あいにく我が国は、日米同盟に基づくクアッドさえしっかりしていれば、わが国の安全保障は保たれるという歴史的シフトチェンジを済ましてしまいましたんでね。

 

2021年4月14日 (水)

細野豪志の証言 その2

2021年4月13日 (火)

細野豪志の証言 その1

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福島第1原発事故の真摯な総括が出ました。
あの半狂乱に陥った首相に率いられた
官邸スタッフの中でほぼ唯一正気だったのは、当時首相補佐官(後原子力事故担当大臣)だった細野豪志でした。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-15e5.html

船橋洋一『メルトダウン・カウントダウン』 には、細野が対策統合本部事務局長として、混乱を極めた官邸内で専門家を中心とするチームを作ろうと奮闘している様が描かれています。

当時の官邸は、平時からキレ易い体質のカンが、3日間も寝ないで荒れ狂っており、「オレの言うことに答えればいいんだ」と絶叫する暗愚の独裁者と化していました。
政権側にいたのが、枝野官房長官、海江田経産大臣、そして細野補佐官でした
専門家といえるのは東電の代表としてて送り込まれていた武黒一郎フェローと斑目春樹原子力安全委員会委員長でしたが、彼らはカンの怒号に押しつぶされ、専門家としてなすべきことを放棄したばかりか、武黒などはカンの注水停止「命令」まで吉田所長に強要する有り様でした。
果ては、カンは学生時代のゲバ仲間を官邸に招集し、なんの専門性もない彼らに内閣参与の肩書まで与えて事故対応の「助言」をさせていたのですから、なんともかとも。
※関連記事『福島事故 「素人政治家」に屈伏した原子力テクノクラートたち』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-5977-2.html

この状況に抗して、独断で原子力事故の専門家による「助言チーム」を作ろうとしたのが細野でした。
彼は、近藤駿介原子力委員会委員長にこの助言チームのリーダーを依頼します。
 
近藤は、原子炉の確率論的安全評価の第一人者であり、この時期、海を隔てて同じく福島事故どのような対応するべきか苦慮していた米国原子力規制委員会(NSC)トップとも人的ネットワークを持っていました。  
この官邸側近藤氏と、現場の吉田所長らの働きによって、なんとか事故は収束に向かったわけですが、ほんとうに薄氷の危機とはまさにこの時期のことでした。

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このように細野について私は影の功労者といってよい人物だと評価していました。
しかしその後、その当の細野が野田政権で環境大臣だった当時、1ミリシーベルトという極端に低い規制値を設定したために、過剰な除染作業によって帰還が大幅に遅れる原因を作り出しました。

このあたりの矛盾した内情をぜひ細野から聞きたいものだとかねがね思っていたところ、福島現地から鋭い報告を送り続けた社会学者の開沼博氏との共著で一冊の本を出しました。
タイトルに「自己調査報告書」とあるように、他者への批判ではなく自らの犯した過ちについて率直に書かれています。

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『東電福島原発事故 自己調査報告書』(徳間書店)

この本に合わせて、細野はニューズウィーク(2021年3月11日)のロングインタビューにも答えています。
※『3月11日で東日本大震災と福島第一原発事故から10年。当時、民主党政権の担当相として、最前線で事故処理・対応に当たった細野豪志衆院議員が語る反省と課題と希望』
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/03/10-127.php

冒頭彼は、いわゆる政治家本にはしない、と断ったうえで、「私は歴史法廷で、罪を自白する覚悟をもって本書を書いた」としています。

「細野:震災から10年なので、記憶の風化を考えるとここがラストチャンスと思ったんです。2012年に原発事故直後の対応については政府・国会・民間と3つの事故調査報告書が出ていますが、2011年から12年にかけての政策決定の検証は十分には行われていない。その中で、明確にいくつか検証されるべきこと、改善すべき問題があると思っていました。それを書きたかった」(NW前掲)

私はこのような証言を待っていました。
カンや斑目のような人外魔境の自己弁護は論外として、船橋氏や門田氏の優れたドキュメントを除き、当時事故対応に当たった側の記録は欠落したままです。
わずかに各種事故調に残されていますが、一種の黙契でもあるかのようにな口裏合わせじみた証言が見られるに止まっています。
このような粘ついた空気の中で、「歴史の証言台に立って罪を自白する」と語り始めた細野に拍手します。

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第1回】政治家に訊く:細野豪志 | 政治家に訊く

ではなぜ、1ミリシーベルト除染や甲状腺検査などの過剰な対応が生まれたのでしょうか。
それはゼロリスクに縛られていたためだ、と細野は言います。

「細野:そこはまさに一致する。ゼロリスクを求めたことの問題点です。あと、およそ科学的に分かっていることについて、言葉を濁すことの弊害。まさにワクチンがそうです。ワクチンを打つことが個人にとっても、社会にとっても必要だと言うこと。みなさんが打つ、打たないは自由と言わない方がいい。打ってくださいときちんと言うべき。
そのうえで、リスクとベネフィットを説明する。打たないことで、違うリスクが出ることの説明をすべき。
そこが十分やりきれなかった反省が、処理水や食品の安全基準の問題でした。のち甲状腺検査が問題になった時も、リスクをどう考えるかということが非常に影響した。今につながる問題です」(NW前掲)

事故後福島に対して政府がとった過剰な対応は、当時の世相に色濃くあったゼロリスク信仰におもねるものでした。
元来は運動家たちの大きな声でしかなかったものを、メディアがことさらに取り上げて増幅し、まるで国民が皆揃って不安だというような脚色を施して「民意」としてしまいました。
政府は科学的ファクトを伝えずになぜか口ごもり、行政責任者にも小池知事のように「安全だが安心ではない」ということを平気で言い出す者も現れてきます。
とどのつまり、政府はたとえば今回の海洋放出も満タンになるまで問題解決を先送りにするような迎合的対応を続けてきてしまいました。

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2021年4月12日 (月)

日本の「核のごみ」、カナダで受け入れ構想浮上?

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実現するかどうかわかりませんが、ひとつの可能性として核廃棄物の最終処分地の候補が登場しました。
それもなんとカナダです。

「カナダで日本からの高濃度放射性廃棄物(核のごみ)を受け入れる計画が検討されていたことが、複数のカナダメディアの報道で4日までに明らかになった。ラジオ・カナダが入手した2019~20年の電子メールで、カナダのクレティエン元首相から日本の原子力産業関係者に打診があったという。カナダ政府や日本政府の関与は明らかになっていない。
公共放送CBCによると、クレティエン氏は19年夏、日本の大手広告代理店幹部に宛てた書簡で、日本など他国の核廃棄物をカナダ北東部ニューファンドランド・ラブラドル州の処理施設で保管することへの協力を申し出た。打診を受け20年4月にカナダで予定されていた会合は新型コロナウイルスの感染拡大で見送られたが、元米政府原子力顧問のティム・フレイジャー氏やカナダの企業経営者、日本の原子力産業や広告業界の幹部が出席する予定だったという。
1993~03年に首相を務めたクレティエン氏はラジオ・カナダの1日公開のインタビューで「カナダは原子力発電に使われるウランを売ってお金を稼いできた。買った国が直面する核廃棄物の処理を助ける責任がある」と述べた。自身の所属する法律事務所が計画に関わるメンバーを法律面で支援しているとも明らかにした。
ただ、実現の可能性は不透明だ。ニューファンドランド・ラブラドル州のフューリー州首相は「州政府内で正式に議論されたことはなく、検討の余地はゼロだ」と否定した。20年夏にクレティエン氏から構想を聞かされたが、拒否したという」(日経2021年4月5日)

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 カナダのクレティエン元首相

うーん、ぜんぜん決まった話じゃないのね。まだ処分施設もできていません。
元首相のクレティエン氏が所属する法律事務所が、カナダのラブラドル州の楯状地ある最終処分場場に日本の核廃棄物を受け入れる「法律的支援」をする用意があるということのようです。 

「処分場建設の構想があるのは北大西洋に面したニューファンドランド・ラブラドル州で、米エネルギー省の元高官やカナダの企業家が加わっている。クレティエン氏は19年夏に別の日本側の関係者にあてた書簡で「地層処分構想を進めるためにカナダ(政府)や州、パートナー国での議論を調整し、そこに参加するつもりだ」として会合に招待。日本側は「情報が漏れないよう最大限の注意を払う必要がある」とした上で「個人として参加する」と返信したという」(毎日4月4日)

この「日本側」の原子力関係者や大手広告代理店(たぶん電通)は、カナダ側と接触しつつも「秘密にしてくれ」という状況のようです。
このやりとりのメールが漏洩してしまい、地元の州政府も反対を言い出してしまっては、この時点で話は座礁。

日本政府はこれについて消極的な対応をしています。

「梶山弘志経済産業相は6日の記者会見で、核のごみは国際原則に基づき国内で処分を進めると説明した上で「(構想に)政府は関与していない」と強調した」(日経4月7日)

「加官房長官は5日の記者会見で、日本の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)をカナダで受け入れる計画が検討されていたとする同国メディアの報道に関し、「政府として使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の海外での処分を検討している事実は全くない」と述べた。
 加藤氏は「核のごみ」をめぐる日本の対応について「発生した国で処分されることを原則とする放射性廃棄物等安全条約に基づき国内で処分地を探す努力を積み重ねている」と説明した」(日経4月5日)

まぁ、なににつけても慎重な菅政権らしくあっさりと断っています。
加藤さん、ウィグル問題でも人権で制裁する法律はないなんて平気で言っていましたが、ここでもまたしても前例踏襲ですか。
あっさりと否定しないで、実現は難しいのは百も承知のうえで、話だけでも繋いでおけばよいものを。
こういう断り方をすると、もう後はないですよ。
言ってくれている相手が、怪しげな人物ではなくカナダ元首相ですからね。

安定陸塊

一方日本において1万年単位で安定している地層を探すのは容易ではありません。
それは環太平洋造山帯に日本列島は位置しているからです。
上図の緑色の地帯がもっとも安定している地盤なら、下図の赤色はもっとも不安定な地帯です。

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太平洋を取り囲む「環太平洋造山帯」


環太平洋造山帯は、太平洋の周囲を取り巻く火山帯のことで、日本列島も含め火山列島や火山群の総称である。環太平洋火山帯には世界の活火山の約6割があり、大・小スンダ列島インドネシア)と西インド諸島カリブ諸島)を含めた広義の環太平洋火山帯では世界の8割近くの火山を擁している」(ウィキ)

日本列島は三つのプレートが集合する世界でも稀な不安定な地層の上に浮いています。
この中に10万年単位の最終処分地を見つけだすのが困難なのは子供でもわかります。
だから今候補に出てきている北海道だけではなく、広く世界に目を向けないとこのままズルズルと先送りするだけとなってしまいます。

ところで、処理済水の海洋放出も同じですが、これは廃炉問題と深く関わっています。
立憲民主などは、安易に海洋放出をヤメロと叫んでいますが、では廃炉作業は止めていいのかという二択の問題なのです。
東電が悪いのだから潰してしまえなどと言うひとがかつてはワラワラいましたが、そんなまねをしたら廃炉事業の主体と費用負担の先行きが見えなくなります。
電力会社の経営が安定して余裕があるからこそ、廃炉にできるのであって、そのためには原発を今は動かして資源コストを下げるしかないというパラドックスが、運動家にはどうも理解できないようです。 

また、もうひとつの大きな問題があります。
それは原発が、火力などと違って使用前の核燃料と、使用済み核燃料の二種類の核燃料を常に抱えていることです。

2011062303福島第1の使用済み燃料プール。

すべての原発の原子炉に、これと同じものがあり、約2万8千トンもの使用済み燃料が存在している。これは再稼働とは関係なく、残り続ける

すべての原発の原子炉に上の写真と同じ使用済み燃料が存在しています。
これは再稼働うんぬんとは無関係で、稼働用の未使用核燃料とは別のものです。
この使用済み燃料プールには全国で約2万8千トンに及ぶ核廃棄物が残ったままになっています。

この使用済み燃料もまた使用済み燃料プールに入れて、常に冷却しておく必要があります。
再稼働を止めたとしてもこの使用済み燃料は残り続けるのであって、これを忘れた再稼働停止や原発ゼロ論は机上の空論にすぎません。
反原発派は、ただ最終処分地がないことを無責任に批判の材料にするのではなく、持論の原発ゼロを実現するためにもそれが必要だと考えるべきです。

さて使用済み核燃料の処理方法は、ふたとおりあります。  
ひとつは、再処理することです。 
政府はこの方法を最も有望だと考えていました。

これは青森六ヶ所村の再処理工場で、ウラン酸化物+ウラン・プルトニウム混合酸化物と、高レベル核廃棄物の二つに分離して、後者のプルトニウムを除去した核廃棄物を300メートル地下の地層処分します。  

Photo                   六ヶ所村再処理工場

この再処理工場の最大の利点は使用済み廃棄物から、もっともやっかいなプルトニウムを取り出すことができることです。
これをリサイクルしてMOX原子炉で使います。  

MOX燃料(モックス)とはこのようなものです。

「混合酸化物燃料の略称であり、原子炉使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウム再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4~9%に高めたものである。
主として高速増殖炉の燃料に用いられるが、既存の軽水炉燃料ペレットと同一の形状に加工し、核設計を行ったうえで適正な位置に配置することにより、軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ」(Wikipedia) 

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プルトニウムは、半減期がもっとも長く実に2万4千年もありるために、これをどう処理するかが最終処分の肝になるわけです。
このプルトニウムをリサイクルすることで、核廃棄物の体積は3分の1に圧縮できます。
今この再処理工場はさまざまな問題に直面していますが、たぶんこれを動かさない限り問題解決には近づかないと思われます。 

再処理ができなかった場合の次善の策としてあったのが、そのままプルトニウム+ウランごと埋却してしまうという方法です。 
再処理工程を省いて、プルトニウム+ウラン入り核廃棄物を、そのままキャスクという特殊なドラム缶に入れて埋めてしまいます。 

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この直接埋却方法は日本列島においてはそうとうに難しいと思います。
その理由は無人島に埋めればいいというような近視眼的なことではなく、列島の地盤が前述したように世界で最も不安定だからです。
だから、海外埋却まで視野に入れても損はないと思います。

 

2021年4月11日 (日)

日曜写真館 菜の花といふ平凡を愛しけり

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花菜ほの~香を吐いて白みそめし風 種田山頭火

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瞑れば菜の花色に安房の空 石塚友二

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ふところの菜の花雛はしぼみけり  三橋鷹女

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菜の花 なのはな 街から来た子に翼生えて 伊丹三樹彦

 

2021年4月10日 (土)

全漁連は処理水の海洋放出に「反対」していない

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菅総理が全漁連岸会長と会談をおこなったそうです。
菅氏がなにを言うかは決まりきっていますから、今さらなにか目新しいことを合意するという場ではありませんでした。
もうすでに政府の結論は動かす余地がなく、漁民団体の声も聞きましたよ、という儀式です。

「岸氏によると、菅首相からは「処理水の処分は避けて通れない。海洋放出がより現実的という有識者による政府小委員会の報告書を踏まえ、政府の方針を決定したい」と、汚染処理水の処分に理解を求められた。これに対し、岸氏は放出反対の姿勢を崩さなかったものの、海洋放出を前提にする場合は国民への丁寧な説明や風評被害の対策をすることなど五つの要望をした」(毎日4月7日)

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全漁連は反対だとしたうえで、「国民への丁寧な説明と風評被害対策」を求めています。
ここで注意していただきたいのは、メディアは「反対」の部分だけ切り取っていますが、全漁連は運動家と違って、海洋放出そのものに反対とは言っていないことです。
あくまでも、「風評被害を出すから反対だ」、といっているにすぎません。
これをメディアは「全漁連は反対した」と短絡して伝えます。
このニュアンスの違いを伝えないから、メディアはダメなのです。

確かに岸会長は「一貫して反対してきた」とは言っていますが、それは風評被害が起きることに対しての懸念からでした。
しかしあくまでも漁民の怒りは風評被害に向けられているのであって、事故の処理作業に向けられているのではありません。
ここで処理水問題を解決しないと、廃炉作業が止まってしまうえないことも、時間がないことも理解しています。
にもかかわらずあえて「反対」といわざるをえないのは、やすやすと賛成するとまた風評被害が再発する可能性があるからです。

これは10年前の福島事故による深刻な風評被害を受けた者なら、すぐに理解できることです。
私もそのひとりでしたから、理屈ではなく感覚でわかります。
全漁連が生産者の代表として恐れていることは、メディアが報じるような「放射性物質の海洋放出」そのものではなく、それを当のメディアが面白おかしく報じることによる二次的被害、すなわち風評被害なのです。

全漁連は、というより地元漁民は「放射性物質の海洋放出」について、福島県民の多くがそうであるように、そこらの記者などおよびもつかぬほど熟知しています。
福島の農民は、自分の農地に降った放射性物質と実に10年間もの間戦って、そこから収穫されるコメについては全袋検査という、世界の誰もがなしえなかった努力をしてきました。
漁民は一匹一匹を計測する作業をどれほど積み重ねてきたことか。
そして子供たち全員も、なんどとなく計測され、ガン検診を受けてきました。

その過程で、生産者たちはしっかりした実践的放射能の知識を身につけました。
まさに我が身を突き刺すような思いで学んだのです。
そこらのジャーナリストがお手軽に本を読んで訳知りになったのとはわけが違う。

だから言えるのです、もう放射能による直接の脅威の時期は終わった、と。
「フクシマ」には人は住めない、食べたら死ぬぞ、などと言ったら、精神が病んでいると言われます。
風評被害は消滅し、フクシマの農産物や水産物はまったく平常に流通し、食卓に上がっています。

だから、寝た子を起こすなというのが漁民たちの声です。
もう福島を放射能がらみで思い出さないでくれ、もう「フクシマ」と呼ぶなというのが住民たちの偽らざる声です。
自分たちは普通に生きて、普通にそこで生産を営んでいる者にすぎないのだから。

では、誰が風評被害を煽ったのでしょうか。
犯人はひとりに絞ることができます。それが「煽り産業」であるメディアです。
メディアがまるでハルマゲドンでもきたかのように騒ぎ立て、被災者に涙するふりをして商売にしたからです。
煽れば視聴率が取れる、部数が伸びるから煽ったのです。
そのメディアの煽りを100倍にして運動にしてしまったのが反原発運動家たちです。

今回のコロナ危機でも感じましたが、メディアは煽りを商売にするはいいかげん止めたほうがいい。
危機を焚きつけて不安材料をこれでもかと投下し、それでほんとうに国民が不安に陥れば「国民はこんなに不安なのだ。政府は無能だ」と国民の代表づらをして政府を叩きます。
これに野党や運動団体が乗って、お祭りになってしまう、これが「フクシマ」を作った構図でした。

彼らには終りというものがありません。
いつまでもどこまでも飽きることなく商売するためには、「フクシマ」は被曝地であり続け、農産物や水産物は放射能で汚染され続けていなければならないのです。
そしてこのような不安商売が拡がれば拡がるほど、風評被害は増幅していき地元住民を傷つけ続けるのです。
そして風評被害が起きれば起きたで、そらみたことか海洋放出が原因だと騒ぐわけです。
自分で不安を作り出して、火のないところを火事にして商売にする放火愛好者たち、それがメディアです。

これは平穏な生活と生産こそが願いの漁民の立場とはまったく違います。
漁民はこんな騒ぎは早く終わって欲しいと願っているから、放出そのものがやむをえないことを充分に理解しつつ、その処理水の扱いには充分に風評被害対策をして欲しいと言っているだけです。
要は、全漁連は政府が海洋放出するならば、責任をもってマスコミ対策しろといっているのですよ。
 

 

 

2021年4月 9日 (金)

ムン閣下、お腹を召すお支度を

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ご落城でございます、ムン閣下、お腹を召すお支度を。
負けも負けたり、首都ソウルと第2の都市プサンの市長選で惨敗です。
まずは、この間完全にムン閣下を見離した感がある中央日報からいきましょうか。

「青瓦台内部的では選挙敗北自体より予想よりも大きな得票率の差に衝撃を受けた様子だ。与党の核心関係者はこの日、中央日報の電話取材に対して「ソウルでこのような票差で負けたのは、2007年大統領選挙以上の完敗」とし「事実上、文大統領は与党の圧倒的議席(174議席)と関係なく野党が反対することを強行しにくい環境に直面することになった」と話した」(中央日報4月8日)
https://japanese.joins.com/JArticle/277415

ま、そうでしょうな。今回の2市長選は来年に迫った大統領選のいわば前哨戦的性格でしたから、負けるにしてもその「負け方」が注目されていました。
それを負けるに負けたり、グーの音も出ない負け方です。
いままで左翼陣営が強かったソウルで1.5倍、元々保守の地盤だったプサンでは2倍近い得票差での敗北です。
「共に民主党」執行部は共に総辞職だそうです。

●ソウル得票率  野党「国民の力」候補      ・・・57.5%
・                  与党「共に民主党」候補    ・・・39.2%
・ポイント差                                       ・・・18.3%ポイント(約1.5倍)
・ソウル投票率                                   ・・・58.2%
●プサン得票率 野党「国民の力」候補       ・・・62.7%
与党「共に民主党」                             ・・・34.4%
・ポイント差                                      ・・・ダブルスコア弱
・プサン投票率                                 ・・・52.7%

両市長選は、前任市長の辞任に伴う補選ですが、本選並の得票率ですから、いかに国民の関心が高かったかわかります。
もちろん高い理由は、単なる市長選びではなく大統領の信任投票だったからです。
ムン閣下は案外選挙に強く、いままで連戦連勝。去年のコロナの下の選挙すら「K防疫」で大勝しています。
支持率は、たしかいまでも32%くらいあったんじゃなかったかな。
あれだけムチャクチャして、そのすべてに失敗しているのに信じがたい高支持率です。

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news.livedoor.com

これだけ大きな経済停滞を招いて失業者の山を築き、外交的には日本と断交寸前になり、米国からは愛想づかしされ、北朝鮮からは相手にもされず今や馬鹿呼ばわり、おまけに不動産価格の高騰でただでさえ国民を怒らせているところに、韓国土地住宅公社職員による土地投機地雷がチュドンと爆発。
まぁえてして政権末期というのは、内外の膿がそこかしこで吹き出して手におえなくなった時に、よりによって政権の脇腹を刺すスキャンダルが火を吹くもんなのです。

ムン閣下に飽き飽きしたガソリンを充満させているところに、スキャンダルの火を投下すれば、そりゃ大爆発します。
一度こういう潰走モードに入るとムン閣下、待ち構えているのはレームダックなんて生優しいもんじゃありません。
文字通り崖っぷち。

次の大統領選で「共に民主党」候補が勝てなければ、ムン閣下の政治の師のノ・ムヒョン閣下のように、ほんとうに崖から飛び下りねばならないことになってしまいます。
さもなくば、前任者のパククネのように、一生牢獄につながれて獄死する運命が待ち構えています。
パククネを好きなはずがありませんが、それにしても彼女に降りかかったムン政権の冷酷な仕打ちは度はずれています。

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裁判を受けるパククネ やつれたなぁ。

実刑24年、罰金18億円!この歳ですから、終身刑ということです。
このように負けた大統領は全員揃って地獄行き。こういうオットロシイ国なのです、韓国は。

さて今回の選挙は市長候補そのものよりまるで大統領選びでした。
たとえば「共に民主党」のソウル市長候補のパク・ヨンソンは、初めは自分のことを「中央政府と意思疎通できる」と、ムン閣下とのパイプが太いことを自慢していました。
なんせ当初は、恐れも知らず「韓国はムンジェイン保有国だ」なんて快調に飛ばしていたくらいです。
それにしても「ムンジェイン保有国」ですか、まるでリーサルウェポンですな(笑)。

ここまで持ち上げておきながら、選挙戦がたけなわになるに従って、土地投機問題でのムン閣下の人気の絶不調ぶりにやっと気がつき、今度はムン閣下と距離を開け始めたのですから薄情なもんです。
終盤戦では、ムン閣下の不人気な土地投機問題への批判を始めたりしたようですが、時既に遅し。

韓国では、政権が交代するたびに検察が前政権の不正を摘発し、大統領前職者や、時にはその前までが芋づる式に逮捕され、牢獄に放り込まれてきました。

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朝日

ムン閣下はノムヒョンの大統領室長の時、師が目の前で崖から飛び下り自殺しているのをみていますから、自身が政権につくとやったことは「検察改革」でした。
ただ検事総長の首をすげ替えただけではなく、検察権力を事実上解体してしまったのです。
その「検察改革」の過程で、チュ・ミエ前法務部長官が、政権の不正捜査に乗り出していたユン・ソギョル検事総長を強引な手法で懲戒してしました。

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ユンは韓国には珍しい反骨の士として有名で、パククネ疑惑捜査で有名になり、ムン政権の支持団体である挺対協の不正にメスを入れています。
元挺対協の女ボスであるユン・ミヒャンの、仰天するばかりの不正蓄財が明らかになったのはこの時です。
それにしてもこれだけ慰安婦運動がトンデモだとわかっても、いまでも支持している人が日本にいるのは不思議です。
ユン・ソギョル元検事総長は国民的人気も高く、次期大統領選に出馬すれば勝利する可能性もあります。
しかしユンが政権に牙をむきかねないことを恐れたムン閣下は、「高位公職者犯罪捜査処」という組織を作って、司法を粛清できる体制を整えました。
もちろんその理由は単純明快。すべて「共に民主党」政権が永続するためです。

ところで、今後どうなっていくのでしょうか。
どうなろうと知ったこっちゃないと言うとそれっきりですから少し考えてみます。
どのメディアも一様にレームダック化するだろうなんてあたりまえのことを書いていますが、そんなことはしょせん韓国の国内事情にすぎません。

レームダックになろうとローストダックになろうと、知ったことではありません。問題はわが国にとってどうなるのかです。
より反日的になるだろうと占うメディアが多いことに、かえって驚きました。
わけないでしょう。
ムン政権は慰安婦合意を反故にし、徴用工という日韓基本条約に触れる反日カードまで切っています。
米国絡みでもGSOMIA廃棄を口にすることで米韓同盟を揺るがし、あげくはなにを血迷ったのか自衛隊機にレーダー照射までして軍事緊張を意図的に作り出してしまいました。
そのうえ離米親中親北という、お前どっちの味方なんだということをした張本人が、このムン閣下です。
これらの愚行はひとつの政権でせいぜいひとつくらいやればリッパなんですが、それを反日反米の大安売りをしたのがこの人です。
これ以上なにか積み増しできますかね。

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残るは、イ・ヨンバクのように竹島にでも上陸してブイブイ言いますか。
そんなまねをしても日本はただ馬鹿が吠えているとしか見ないでしょうし、イ・ヨンバクの二番煎じです。
バイデンになって、またもや日韓の歩み寄りを言い出している米国はさぞ怒るでしょうな。

つまりもう韓国の反日カードは種切れなのです。
ムン閣下としては日本がせめて首脳会談くらいしてくれればメンツもたつでしょうが、絶対にしません。
駐日大使すら首相はおろか外務大臣にすらいまだに面会できないわけで、日本のほうから折れて来る可能性はナッシングです。
そもそも一般的に末期政権になにをやっても次の政権で反故にされる可能性が高いので、外国政府は傍観を決め込むのが常識です。
それなのに、なんでいまさら日本政府が今まで煮え湯を飲まされ続けたムン政権になにかしてやらにゃならんのでしょうか。

かといって選挙で惨敗したうえに、ここでムン閣下のほうから日本に折れたら少数派に転落しかかっている「共に民主党」支持層が逃げてしまいます。
かといってもう反日カードも品切れ。
頼みの心の恋人北朝鮮は冷淡な上に、起死回生を目論んだ東京五輪共同出場の夢も消えました。
つまり、もはやムン閣下にはなにもできないのです。

ああ、どうすりゃいいのさ、この私。
ムン閣下の悩みは尽きないのであります。

 

2021年4月 8日 (木)

人為的炭酸ガス主犯説は仮説にすぎない

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炭酸ガスが地球を金星のようにくるんで、温室みたいにしてしまう、というのが温室効果ガス説です。
実際に、金星が分厚いガスにくるまれた惑星であり、内部は高温だということが発見されてから、ではそれは地球にも当てはまるんじゃないかと考え始めたのです。

温暖化効果ガスといっても何種類もありますが、そのうちの主犯と見なされたのが炭酸ガスでした。
ここで問題となるのは、この炭酸ガスの発生原因です。
自然由来なのか、それとも人間社会が生み出した経済活動によるものか、その原因によって対処方法が違うからです。

炭酸ガスは人間活動が作り出したのだとするのが炭酸ガス人為説です。
これがどうしたことか圧倒的に支持されて、いまやどの教科書にも載っているような「定説」となっていることはご承知のとおりです。
今日はこれについて考えてみましょう。

さてCO2が海洋や植物に吸い込まれることを、自然界の緩衝作用といいますが、いったいどのくらいの時間かかって吸い込まれているのかは大事なポイントです。 
というのは、海洋や植物に吸収されるまでに長い時間がかかるのです。
つまり、今この世界にあるCO2は、ただいま現在のものではなく、過去に由来して蓄積しているのです。
この蓄積期間にも説がいろいろとあるようですが、最短で5年間、長いもので200年間という学者もいるそうです。
 

このCO2が自然界に吸収されるまでの期間を、「滞留時間」と呼びますが、これを最短の5年間ととると、モロに人間の活動によるという証明となります。
 一方200年ととると、人間活動との関係が微妙になります。 
というのは工業化のきっかけとなった産業革命が起きたのが18世紀半ばから19世紀だからで、人為説ならばそこから有意な気温上昇がなければならないはずですが、実は19世紀にはテムズような河が凍るような小氷河期が到来しているのです。
また20世紀にも70年代には寒冷期が来ています。
その頃には氷河期がやってくると人類はおびえていたのをもう忘れたようです。

では、5年~15年間の短期滞留期間説を取るとすれば、CO2が気温上昇の疑惑の真犯人扱いですから、思い出されるのが、CO2と気温上昇がパラレルで上昇するという、マイケル・マンのホッケースティック曲線です。 
これは樹木の年輪の感覚から割り出した仮説です。

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これが地球温暖化を説明するのにつごうがいいことから、炭酸ガス主犯説の科学的根拠とされました。
しかしあいにく、このホッケースティック曲線には大きな誤りがありました。
最大の誤りは、上のグラフの右に見える19世紀以前の気温が単調に横ばいですが、現実の観測記録と大きく異なっています。
これでは10C~14Cの中世温暖期は無視され、19世紀の小氷河期もなかったことになってしまいます。

実はそのことはいまやIPCCですら認めているのです。ただし小声で。

「だがIPCCの第5次評価報告書(2013年)の示した過去の温度のグラフでは、中世(1000年前後)の温度は、現在とあまり変わらない高さまで上がっている。
政策決定者向け要約
「北半球では、1983年から2012年の30年間は、過去1400年間で最も暖かかった可能性が高い」「幾つかの地域において、中世気候異常(950年から1250年)の内の数十年間は、20世紀末期と同じぐらい暖かかった(高い確信度)」となる。(略)
ホッケースティック曲線の発表の後、古気候を巡った論争が起きて、結局、IPCCはホッケースティック曲線の使用を止め、最新の第5次評価報告書では北半球において中世の温暖期(今のIPCCの言葉では中世気候異常と呼ばれているけれども)が存在したことが明記されている」(『中世は今ぐらい熱かった:IPCCの最新の知見』杉山大志IPCC第6次評価報告統括代表執筆者)

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上図のIPCC(2007) 第4次評価報告書においてはホッケースティック曲線は消滅しています。
つまり20世紀に入って特異な気温上昇が見られたという説は、科学的信憑性が低いとIPCC自身が認めているということになります。

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また上のグラフは、中世温暖期は地球規模で見ても、中世の温暖期は現在よりも暖かかったとする複数の温度再現研究結果をまとめたものです。
中国においても同様の中世温暖期があったことが記録に残っています。

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また、このホッケースティック曲線が衝撃を与えた20世紀からの極端な気温上昇の中にも、下図のように1940年から1980年まで続いた「寒冷期」が存在します。
そういえば思い出しました。1970年当時の世界の気象学会はどんな警鐘を鳴らしていたのでしょうか。「来る小氷河期に備えよ!」でしたっけね(苦笑)。
そのわずか20年後に真逆ですか、まさに「君子ハ豹変ス」の見本ですな。 

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それはさておき、上の地球の気温変化グラフに、下図のCO2の排出量グラフを 重ねてみましょう。1940年~1980年にかけて、大気中のCO2濃度に低下が見られたのでしょうか、下図をご覧ください。

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 一目瞭然ですね。1940年のCO2排出量は50億トン弱、1980年には180億トン弱、つまり3.6倍になっているにもかかわらず、実際には寒冷期が来ているのです。
これをどのように、CO2の増大が地球の気温上昇につながったと整合性をもって説明するのでしょうか。 

下は極地における氷床ボーリングによる二酸化炭素とメタンの資料ですが、左端の現代と2万3千年前を較べれば同じだとわかります。
さらには1万3千年、3万3千年前にも高い時代がみられます。

The Vostok Ice Core: Temperature, CO2 and CH4
http://euanmearns.com/the-vostok-ice-core-temperature-co2-and-ch4/
 

Vostok_temperature_co2

CO2は20世紀以前にも大量に存在しました。あたりまえです。突然20世紀になって登場したわけでもなんでもありません。
たとえば、日本の古代縄文期、古代ローマ時代、そして中世など、人類がこの地球上に現れてからもなんどとなくその増大をみました。現在のCO2濃度以上の時などザラなほどです。 

ではCO2増大と気温上昇には相関関係があるのでしょうか?そう、確かにあるにはあります。
ただし、一般に流布されているように「CO2増大によって気温上昇が起きた」のではなく、その真逆のプロセスによって、ですが。 

それでは次の図をご覧ください。 

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上図の破線がCO2です。実線が気温です。一見パラレルですが、よく見ると面白いことに気がつきませんか。そうです、CO2の増大は気温上昇した「後」に発現していることが分かります。 
この現象はちょうどサイダーを温めるとブクブクと炭酸の泡が出てくるように、海水面の温度上昇により海水に含まれていたCO2が空気中に放出されるからです。 

現在の気温ですとCO2放出が支配的ですが、0.6℃低下するとCO2濃度の上昇は止まるとの説もあります。 
つけ加えれば、CO2は自然界からも放出されており、人間活動由来なのは、そのうちたかだか3%しかないのです。 
このように考えると、大気中の質量比0.054%にすぎないCO2が、その6倍もの0.330%の質量比をもち、5.3倍の温暖化効果をもつ水蒸気より温暖化効果があるというのは不自然ではないでしょうか。 

なんらかの原因で地球が温暖化した結果、海水温が上昇し膨大な水蒸気が発生し、それに伴ってCO2も放出されたと考えるのが素直だと思われます。 
また、そのCO2排出量のわずか3%ていどしか人間由来でないとすれば、人間活動由来のCO2「こそ」が地球温暖化の主犯であると決めつけるのは、あまりに飛躍がありすぎるように思えます。 

私は人為的炭酸ガスが増大していることは事実だと考えていますし、それが温暖化の一因となっていることも確かだろうと考えています。
また歯止めのない工業化が自然環境を破壊していることも事実だと思っています。
さらに
現在なにかしらの複合的原因で、地球温暖化が進行する時期に当たっていることも事実だとおもいます。
ここまではいわゆる地球環境派と一緒です。

ただしここからがちがうのですが、地球温暖化の原因とおもわれるのは、太陽黒点の変化などたぶん片手の指の数では足りないほど存在します。
そのうち黒点の変化説はこのようなものです。

太陽の黒点の数はガリレオの時代から観測されています。黒点数と地球の気候に相関があることは以前から知られていました。
黒点数はおよそ11年の周期で変動していますが、17世紀のマウンダ―期とよばれている時代にはほとんど黒点がありませんでした。

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太陽黒点数の変動 「気候変動とエネルギー問題」深井有

この時期にはロンドンのテームズ河が冬に凍り、氷の上でスケートをする絵が残されています。19世紀初めにも黒点数の少ないダルトン期があり、それ以降現在まで黒点数は上昇傾向にあります。
黒点数の変動周期と地球の平均気温をプロットしたのが下図で、太陽黒点と地球気温は
相関性を示しています。

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黒点数と平均気温の相関  深井前掲

つまり太陽の黒点が減り、その周期が伸びると地球は寒くなり、その反対は暖かくなるのです。
しかしこの太陽黒点の変動だけでも説明しきれず、宇宙線による変動説(スヴェンスマーク説) や地球規模の海流の変化など諸説があります。

これらをバッサリ切って視野に入れない、議論すらさせないでは、あまりに非科学的というもんではありませんか。
にもかかわらずその原因を一面的に人為的炭酸ガスのみに求めていき、経済や社会生活に大きな打撃を与えかねない現在の信仰にも似た風潮には疑問をもたざるをえません。

現在のグリーンファンドなどは巨額な資金を運用しており、いまや世界経済にも影響を与えるまでになっています。彼らの野望とこの人為的炭酸ガス説は無縁とは考えにくいのです。

 

※2019-年12月18日記事を 加筆修正して再録しました。

2021年4月 7日 (水)

炭酸ガス減らして日本滅ぶ

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菅さんは官房長官までの人だった、という気がしてなりません。
彼は安倍政権の継承を謳いながら、実際には二階と公明党に政局運営を委ねてしまい、いまや二階政権のようです。
少数派閥の悲しさといえばそれまでですが、中国には完全に腰が引けていますから、逆鱗にふれませんようにといわんばかりにウィグルや台湾では沈黙を通しています。
あげく聞こえてくるのは、脱炭素ばかり。
日米首脳会談では、まちがいなく脱炭素の取り組みを要求されますから、参ったね、これは。

「地球環境」を持ち出せばナンでも通る、それが今のご時世です。
ポリコレと一緒で大義だと勘違いしているようですからイヤダ。
人為的地球温暖化説は、ほんとうは仮説のひとつにすぎないわけですが、いったんシステムとして立ち上げてしまって経済・社会がそれに向けて走りだすと、もはや反論を受け付けない絶対真理になってしまいました。
メディアは大雨が降れば地球温暖化、干ばつが来れば異常気象、晴れても曇っても炭酸ガスが悪い、というわけです。
世界でも、冗談じゃねぇや、そんなことをしたら国内産業は壊滅するだろう、と言っているのは、唯一トランプ率いる米国共和党だけだといってもいいくらいです。
環境問題は人権を武器にできる中国相手よりも、ある意味でもっと反対しづらいことなのですが、トランプのこの反骨精神には脱帽します。

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どうしてそうなるのでしょうか。
たとえば生物多様性という大きなテーマがありますが、総論賛成、各論はなにもしないというのが現状でした。
それに対して地球温暖化人為説のほうは、それで儲かる企業がそれこそ掃いて捨てるほどできました。
脱炭素を掲げれば、営々と化石燃料エンジンの改良を積み重ねてきた自動車産業は、それを止めてEVというモノになるかならないかわからない分野に投資をさせられることになります。
するとバッテリー産業は儲かり、レアアースを扱っていた連中にもうま味があります。
そこに勝機を求めるテスラなどの新規参入グループもひしめいているわけですから、いつのまにか次世代自動車はEVと水素で決まりという「常識」ができてしまいました。

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しかし考えればすぐにわかりそうなものですが、EVほどの電気食いの商品はないわけです。
なんせ一晩中充電していなければいけない、走行距離も短い、おまけに充電インフラは未整備ときています。
しかし逆にいえば、だから新規の大規模投資ができる余地は巨大で、そこに商機を感じた企業が殺到するわけです。
するとそこに新たな既得権益が生まれ、政-財-官の三位一体の利権構造ができてしまう。これがわが国です。

そんな電気の大食いEVを主流にするには、大規模な発電能力の向上が必要ですから、本来はここで今の主力である火力発電を増やしていかねばならないはずですが、それは脱炭素でダメ。
では10年前までの主力電源の一角にいて、しかも炭酸ガスを出さない原子力はといえば、減らす議論はあっても増やす議論はついぞ聞きません。
水力さえ環境破壊ということで新規の建設は不可能です。
残るは再エネだけですが、気まぐれなうえに非力。
こんな脱炭素ブームが続いたら、遠からず深刻な電力不足の時代が来るのは目に見えていますが、一回立ち上がってしまった利権共同体による暴走はそうかんたんには止まりそうにありません。

いや止まるどころか、いっそう磐石にするために、税収に環境税を繰り入れることまでかんがえ始めました。
要は増税です。しかも時期が最悪です。
デフレを脱却しないうちにかぶるようにして今のいつ果てるとも知れないコロナ禍ですから、増税なんて言っている状況ではないはずですが、増税原理主義者には税金さえむしり取れるなら、そんなことは目ではないのです。
なんせ、脱炭素ほど税金をむしりとるのに適したフロンティアはありません。

本来なら、コレコレこういうわけで、このような負担をお願いします、と政府が課税の説明を縷々せにゃならんのに、「地球様のおためであるぞ、頭が高い。反対する奴は地球の敵」で済んでしまうのですからね。
しかもそれが手つかずでまっさらに目の前に拡がっているのですから、これはたまらない。
いまでも「地球温暖化対策税」という名で排出量トンあたり289円をとっていますから、新規の炭素税はどうなるのか、まだわかりません。

いずれにせよ、中井環境省事務次官のように、就任初日に「わたしゃ炭素税やる気です」みたいな官僚の権限を逸脱したことを、あろうことかコロナ不況の真っ只中の去年7月に発言してしまったりするくらい前のめりです。
いかに「地球環境」というのが、中井氏の出身母体の財務省にとっておいしいテーマなのかわかろうというものです。

ではこの炭素税ですが、消費税と違ってややわかりにくい点がありますので、説明しておきましょう。
まず、この炭素税は国際的な流れです。だからやっかいなのです。
日米首脳会談でバイデンは、この政権の大方針である、カーボン・プライシングをテーマにしてくるでしょう。
EUも今年の前半には「国境炭素税」を決めるはずですから、4月の気候変動サミットでは炭素税が世界の流れとして定着することになります。
このカーボン・プライシング、直訳すれば炭酸ガス値付けこそが、日本で言う「炭素税」です。

「国境環境税」という呼び方をしているのは、炭酸ガスにかけられる関税だからです。
いまでも炭酸ガスを売り買いするETS(排出枠取引制度)はありますが、それは温室効果ガスの排出権の枠の売買に止まっています。
基準量を決めて、排出量が多い企業は少ない企業から排出量枠を買うのです。

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排出量取引制度(キャップ&トレード)とは? – NPO法人 国際環境経済

今やこの排出量枠には市場ができてしまい、その売り買いに金融投資筋がへばりついて儲けをすすっていいるというダーティーな世界になっています。
ちなみにあのグレタ嬢を支援しているのは、この環境を食い物にしている金融投資筋です。

それはさておき、この温室効果ガスに対する税金を、すべての輸入品に拡げようとするのが「国境炭素税」です。
国境炭素税は輸入に対してかけられますから一種の保護関税と同じ働きをします。
たとえば日本からEU域内へ自動車や機械を輸出しようとすると、国内で消費した炭酸ガスの排出量から算出された「国境炭素税」を支払わねばならなくなります。
日本の場合、電力の75%が化石燃料だと判定されますから、非常に高い税率が背負わされます。
いままで書いてきているように、これは非常に不当な計算方法で、日本の火力は世界一の低炭素・高効率炉なのですが、火力=悪玉説に凝り固まったEUはそんなことは無視するでしょう。

さらにこの国境炭素税にはこのような抜け穴が容易されています。
国内であらかじめ炭素税を徴収してしまえば、輸出に関してはオフセット(相殺)されるのです。
これは国内炭素税と国境炭素税が二重取りにならないようにする措置です。
一般の関税にはこんな仕組みはありません。

するとどこの国もそうですが、外国に関税としてむしられるより自国で徴収しようとしますから、国内には炭素税を絶対に作ろうとします。
これが、今環境省が言っている炭素税です。
これを企業にかけた場合、いっそう企業は苦しくなり経済は停滞します。
企業にとどまらず、この負担は消費者に転化されるからです。
つまり結局、社会全体の負担は増大し、消費者たる国民が炭素税を結局かぶることになります。

ただ唯一、この炭素税がいいことは、今まで環境省や経産省が個々別々にばらまいてきた補助金や、FIT賦課金などを炭素税として一本化できることです。
おそらくEUなどと交渉する場合、一本化された炭素税としてやることになるでしょう。

とまれジュニアが夢見る2050年CO2排出ゼロを達成するためには、一説では今の倍の税収が必要とされるとされ、巨大な国民負担としてのしかかってくることだけは間違いありません。

 

2021年4月 6日 (火)

宮古島沖、遼寧空母艦隊が通過の意味

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今日は炭素税について書く予定でしたが、時期を失しますので、先に沖縄本島と宮古島の間を通過した中国海軍の遼寧空母打撃群を先に取りあげます。

「統合幕僚監部によると、場所は、長崎県の五島列島沖合に浮かぶ男女群島の南西約470kmの海域とのこと。空母「遼寧」のほかレンハイ級ミサイル艦 、ジャンカイII級フリゲート1隻およびフユ級高速戦闘支援艦1隻の計6隻だとしています。 2021年4月3日(土)午前8時頃に同海域を南東進し、その後、これら艦艇は太平洋へ向けて沖縄本島と宮古島の間の海域を南下したといいます」(トラフィックニュース4月4日)

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宮古島付近を通過する遼寧  警戒している海自艦艇からの撮影 防衛省

この遼寧艦隊は、近々編成されるであろう中国海軍の3セットの空母打撃群のひとつです。
遼寧自体がロシア空母の焼き直しの練習艦にすぎませんが、今回の艦隊編成を見るとレンハイ級防空艦にジャンカイⅡ級2隻の対潜艦を2隻つけ、さらに高速補給艦もつける本格的構成となっています。

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レンハイ級駆逐艦 防衛省

ちなみに、レンハイ級は中国海軍の排水量12,000~13,000トンの大型駆逐艦(055型)で、大きさからいえば駆逐艦よりひとつ上の巡洋艦に属する大型艦です。
ちなみに、大きいほうから巡洋艦→駆逐艦→フリゲート艦です。
このレンハイはピカピカの虎の子艦で、さぞかし海自や米海軍にみせびらかしたかったのでありましょう。

レンハイ級は、つい先だっての3月中旬、対馬沖を東に3隻の艦隊を組んで航行していきました。
その後、別行動をとっていた遼寧本隊と合流したもののようです。

「防衛省統合幕僚監部は19日、中国海軍のレンハイ級ミサイル駆逐艦など艦艇計3隻が対馬海峡から日本海へ航行するのを確認したと発表した。レンハイ級は中国海軍最大規模の駆逐艦で、日本近海で活動するのを海上自衛隊が初めて確認した。領海侵入や海自艦艇、航空機への危険な行動はなかった」
(共同3月19日)

この遼寧艦隊について、中国海軍はこう発表しています。

「北京時事】中国海軍の高秀成報道官は5日、空母遼寧を含む艦隊が台湾周辺海域で訓練を行ったと発表した。高報道官は「年度活動計画に基づく定例的な訓練」としているが、台湾の蔡英文政権をけん制する狙いもあるとみられる。
高報道官は「(これまでの)訓練の成果を検証することが目的だ」と主張した。さらに「国家主権、安全、発展の利益を守る能力向上に役立つ」と強調。今後も同様の演習や訓練を行っていくと述べた。」(時事4月5日)

目的は、台湾に対する威嚇と示威です。
この国が「国家主権・安全」という時は、彼らの言葉を使えば「神聖不可侵の領土の防衛」を指します。
彼らの「主権」はウィグル・チベット、香港・南シナ海・台湾にまで及びますから、これを軍事力で守るという意味です。
さらに「発展の利益」とは、まだ掌中にしていない東シナ海、特に尖閣周辺海域を「主権下」に置くことを意味します。

と、ここまでは中国海軍報道官が口にしたとおりですが、海軍は国際社会を相手にしている性質上、その動きは当該国の外交的シグナルだと判断されます。
今回の場合、あえて16日に開かれた日米2+2に来航していますから、日米2+2で中国を明確な脅威対象として名指しされたことに対する意趣返しの意味は当然あるでしょう。

「日米両政府は16日に東京都内で外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催し、中国を名指しで懸念を表明した。防衛省は、この時期に日本付近で大型艦艇を航行させた中国の意図を詳しく分析している」(共同前掲)

また今回注意を促したいのは、中国が東シナ海を台湾侵攻時の想定戦場にしていることがいよいよはっきりしてきたことです。
まずは台湾の置かれた地理上の位置を確認してください。
尖閣諸島や与那国と国境で隔てられているものの、同一海域といってもいいことがお判りになるでしょうか。

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台湾の経済・社会的中心は台北のある西海岸にありますが、そこを中国が攻略すると仮定した場合、台湾海峡を力攻めで押し寄せるのは得策ではありません。
従来は、かつての国共内戦末期の金門島を巡る戦いのように、多くの漁船を使って力づくで押し渡ってくることが想定されていました。
もちろん今も中国はこの正面玄関を破って侵攻するポーズを隠してはいませんが、想像以上に苦戦することが予想されます。
とうぜん事前にミサイル攻撃をしかけたり、空爆をかけたりはするでしょうが、そう安易に崩せるものではありません。

となると、中国は守りの堅いに西海岸正面だけではなく、裏門の東海岸も同時に攻撃せねばならないでしょう。
いわば台湾島をぐるりと包囲する体制を整えて侵攻してくると想定されます。
その場合、中国海軍はその虎の子の遼寧などの空母艦隊をどこに投入するでしょうか。
東海岸に面する台湾海峡はあまりに狭い一方通行の溝のようなもので、大規模空母艦隊にとって自由な機動が不可能です。
台湾海峡でウロチョロしていたら、たちまち対艦ミサイルの飽和攻撃のよい餌食になってしまいます。

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となると、空母艦隊が自由に遊弋でき、かつ戦術的に意味がある海域は、台湾島の後ろに位置する東シナ海だけとなります。
すなわち尖閣諸島水域です。
上の概念図をみればわかるとおり、中国の大戦略である第1列島線上の要衝に尖閣と沖縄があるのは偶然ではないのです。
この尖閣水域を確保しなければ、中国は台湾を落とせません。
また、横須賀方面から台湾救援に急行する日米艦隊を阻止するには、この水域をおいて他にありません。

多くの日本人は、尖閣危機と台湾危機は別物と思っているかもしれませんが、実はまったく同一のテーブルの上の出来事です。
したがって、中国は台湾を攻略しようとするとき、あらかじめ尖閣を取りに来るでしょう。
さらに尖閣水域を支配するには、その後背地の宮古島も占領しようとするかもしれません。
そのように考えると、今回の遼寧空母艦隊がなぜ宮古島周辺から台湾に向かったのか、その動きの意味がわかってくると思います。

では、台湾に侵攻するのはいつになるでしょうか。
それついては米海軍太平洋艦隊司令官が答えています。

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ジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官  中国の台湾侵攻「多くの人が理解しているより切迫」 米軍司令官

「ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領から次期インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官(海軍大将)は23日、上院軍事委員会の指名承認公聴会で証言した。アキリーノ氏は、中国による台湾侵攻が「大多数の人たちが考えるよりも非常に間近に迫っている」と警告し、対応策をとるべきだと訴えた。 アキリーノ氏は「台湾に対する(中国からの)軍事的脅威は増している」と指摘。「中国共産党が米軍を地域から排除することを目的とした能力を向上させている」とも強調した。
 その上で、中国軍の軍事的進出を押さえ込む「太平洋抑止構想」の実現に向けてインド太平洋軍が議会に要求した、2022会計年度(21年10月~22年9月)から6年間で270億ドル(約2兆9000億円)に及ぶ予算を承認するよう要請した」(2021年3月24日 産経)

いみじくも太平洋艦隊司令官が言うように、「大多数の人たちが考えるよりも非常に間近に迫っている」のかもしれません。

 

2021年4月 5日 (月)

ジュニアの指導員は財務省

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ジュニアの考えの足りない戯れ言は笑殺すればよいことですが、彼に振付師がいるとなるとまったく違ってきます。
かなり知られてきたことですが、小泉ジュニアには指導員がいます。
中井徳太郎環境事務次官です。
この人物の現住所は環境省事務次官ですが、本籍地は財務省です。
中井氏は就任会見早々、財務省当時は主計官どまりだったのに、環境省では晴れて事務次官となった高揚感からかいきなり飛ばしています。
この発言にはSNSで批判が殺到したので、おぼえている方も多いことでしょう。

環境省の新次官、就任会見で炭素税の必要性強調
環境省
の中井徳太郎事務次官は22日、就任後初の記者会見で、二酸化炭素の排出量に応じて企業などに経済的負担を求めるカーボンプライシングについて、脱炭素社会の実現には「炭素税も含め有効だと本当に思っている」とし、前向きな姿勢を示した。

 ただし、新型コロナウイルスの感染拡大で経済が停滞する中、その影響を「よく見極める視点も大事」とも述べた。カーボンプライシングは欧州を中心に実施されているが、日本では諸外国並みのものは実現にはいたっていない。
 中井氏は財務省出身で、2011年に環境省に移り、21日付で現職となった」(朝日 2020年7月23日)

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地域循環共生圏「質的な成長」へ:中井 徳太郎環境次官 – オルタナS

おいおいダメに決まっているだろう、こんなこと言っちゃ。
ハッキリ言っておきますが、官僚には租税をどうするこうするということを言う権限は与えられていません。
それをもっているのは、あくまでも国民が選んだ代表によって作られる議会だけです。
官僚は議会が作った法律に沿って、それを忠実に執行する権限をもつだけにすぎません。
それを行政官が「オレは環境税が欲しい」なんて言ったら、この国は国民が選ぶことのできない、したがって罷免もできない官僚が国民の上位にそびえる官僚主権国家になってしまいます。
これを小難しい言い方で「租税法律主義」と呼びます。

「現在、全ての民主主義国家では、国民の代表者から成る議会が定めた法律によってのみ租税が賦課される。これを、租税法律主義と称する。言い換えれば、課税権者(国家)に対して、被課税権者=国民(の代表である議会)の同意に基づく課税を義務付けるという形を採っている。法治主義の現れでもある 」(ウィキ)

財務省は環境省を植民地だと長年考えてきました。
その財務省が中井氏を送り込んだのは東日本大震災直後でしたが、その時期、財務省は大震災を奇貨として復興増税を画策していました。
これは後に野田政権の消費増税として現実のものとなります。
そして満を持して財務省が現在環境省にやらせたいのが「炭素税」です。
そのための司令塔が中井事務次官であり、広告塔が小泉ジュニアです。

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女性自身

平たい話、ジュニアほど動静と発言が逐一報じられる大臣は、政界広しといえどいないでしょう。
女性週刊誌にまでしょちゅう登場し、オレってセクシー、マイスプーンもって歩こうよ、エコカーってカッコいいぜ、レジ袋なんてダサイよな、かっこよくマイバックをひろげてみようぜ、なんて言おうもんなら、キャー、ステキという声がかえってきます。
こんなトリックスターは政界でもほとんどいないでしょう。
強いていえば山本太郎ですが、ジュニアほど顔が女性向けではありません(笑)。
環境省は、いや財務省は、最高の広告塔を手に入れたのです。

そのイケメンがそっとささやくのです。
「地球環境はもう崩壊寸前なんだ、今ちょっとだけあなたの税金で地球を救ってくれないかなぁ。1日コーヒー一杯分でセーブ・ジ・アースできるんだ、ステキだろ。きみとボクでセクシーに楽しく増税しようよ」
ああ、言いそう、ほんとうに言いそう(笑)。

トリックスターとは物語で、わざと破調を作って世界を混乱させる悪戯妖精のような存在ですが、まさにジュニアはこの役割を心得て、中井次官の手のひらで踊っているのです。
だから、レジ袋やマイスプーンといったオードブルの後に、今ジュニアが言っている自動車産業のEV化や炭素税という胃もたれしそうなことをテンコ盛りにしたいようです。
長くなりそうなので炭素税については次回に続けます。

それにしても元環境大臣って、どうして小池百合子やジュニアみたいな勘違いタイプが多いんだろう。

 

 

2021年4月 4日 (日)

日曜写真館 桜堤を歩く

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太陽に挙りて桜咲きにけり 稲畑廣太郎

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中年の居場所眠たく桜咲く 児玉硝子

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川沿を海へと河津桜かな 阿部ひろし

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音楽やさくら散るとき澄みわたる 廣嶋美恵子

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遠き遠き遠き青春さくら散る 林翔

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余生こそ一刻千金さくら咲く 山中宏子

■お断り 最初にアップした日曜写真館は、見直したらあんまり陰気なので、全面差し替えしました(汗)。

2021年4月 3日 (土)

小泉ジュニアは超馬鹿です

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小泉ジュニアは超馬鹿です。
一般人ならただの馬鹿で済みますが、与党の政治家、それも大臣なのですから気の毒ですが「超」の栄えある冠を授けさせていただきます。
「超馬鹿」の受賞理由は、いい大人が中坊並の知識で中坊が言いそうなことを言うだけではなく、閣僚になってもやらかしてしまい、それをオレってカッコいいだろと自惚れているから超馬鹿なのです。

彼の言論の特徴は父親似で、ろくに考えもしないのに、しゃべってしまうということです。
後先がありませんから、こんなこと言ってどーするのということを平気で口にします。
たとえば、今進行している福島第1の廃炉作業でもっとも問題になっている、汚染水、もといトリチウム水の処理について、ジュニアはこんなことを発言していました。


「進次郎氏は12日、東日本大震災で被災した福島県の漁業関係者と面会し、東京電力福島第1原発の汚染水浄化後の処理水をめぐり原田義昭前環境相が「海洋放出しかない」と述べたことについて、「率直に申し訳ない」と謝罪した。 こうした一連の言動をめぐり、容認派と反対派からネット上で批判・注文が殺到している。
 今月下旬には、米ニューヨークで開かれる国連総会の環境関連イベントにも出席し“国際デビュー”を果たす予定だが、政治家として真価が問われるポストのようだ」(ZAKZAK9月13日)

これは既に環境大臣に就任してからの発言ですから、おいおいです。
そもそもトリチウム水の海洋放出の所轄は環境省ではなく産業経済省です。
信念さえあればなんでも言っていいわけじゃありません。
自身の発言のために政権の政策が拘束されてしまうからです。
小泉ジュニアは父親譲りの反原発を進めたいようですが、同じ理念をもっている河野ジュニアのほうは、閣僚になれば持論であった反原発を封印してしまいました。
これでいいのです。大臣が個人的人気取りで所轄外のことにいちいち口出ししてカッコつけていたら、内閣なんてただの学校のホームルームだからです。

ところがジュニアときたら、こんなことも平気で言っています。

「小泉進次郎環境相は11日夜、環境省内で行った就任記者会見で東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原発について「どうやったら残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と述べた。2030年度に再生可能エネルギーの電源比率22~24%を目指すと掲げた政府のエネルギー基本計画に関し、さらに比率を拡大すべきだとの認識を示した」(毎日9月12日)

あーあ、不勉強なくせに頑固、というか不勉強だから頑固なんです、この人。
「どうやったら残せるのかではなく、どうやったらなくせるのか」ですって(笑)、そんなことは反原発運動家が言うせりふです。
運動家は経済がわかりませんから(というか、経済がわかっていたら運動なんか出来ませんからね)、即時停止、再稼働反対と脊椎反射で答えても許します。
しかし、閣僚、つまり政策を作り、それを責任をもって行政に落とし込んでいく職分の人間がそれをやったらシャレになりません。
だって、どうやるかの道筋をかんがえる、そしてそれを具体化するのが政治家の仕事だからです。

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私は経済を傷つけないためには、一定数の原発を残しつつ段階的に長期間かけて「なくす」のが、もっとも合理的な回答だと考えています。
脱原発をスローガンで言っているのなら、即時停止で済みますが、実際にそれをすれば化石燃料に依存し、輸入エネルギーの増大によって国富が流出していきます。
電力会社は疲弊し、廃炉コストを出せなくなり、電気料金は上りますから、国民を苦しめます。

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上図の薄い緑色が再エネで、図を横切るように上昇する黒線が家庭用電気料金を現しています。
再エネが増加すると電力料金も上昇していくのがわかります。
脱原発と再エネをセットで国策にしてしまったドイツ、イタリア、デンマークが、水力の多いカナダの倍であるのがわかります。
日本は現在中位の電力料金で済んでいますが、再エネを2倍にすると30円/kWhに跳ね上がって世界でも電気料金上位の国となります。
それでなくても福島事故以降、カンが原発ゼロにした祟りで、上り続けている電気料が更に国民生活を直撃していきます。
国民の経済と生活に打撃を与えて脱原発しても、それは本末転倒ではありませんか。

そのうえトリチウム水の海洋放出まで止めてしまっては廃炉作業すら出来ませんから、原子力は永久になくなりません。
そもそも廃炉した後の最終処分も結論がでていないのでから、原発ヤメロだけではなんの回答にもならないんですよ。
この「汚染水」の海洋放出も、許すなとか言っていられるうちはいいのですが、ここで止めたら廃炉作業を断念せねばならなくなります。
ならば福島第1の廃炉を放棄しますか?
そこまで分かって言っているのならアッパレで、ならば大臣なんか辞めて国会議事堂の前でシュプレッヒコールをしているほうに回って下さい。

また、原発を止めるということは、火力発電の比率を高めることと同義語です。
既存のエネルギー基本法でも、2030年に再エネを16%から24%にするためには火力を56%でキープせねばなりませんでした。
この火力を微減させるためには、再エネを20%台にして、原子力を今の3%からかつての水準に近い20~22%にまで増やさねばならないのです。

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この原子力を減らしたらそのぶんジュニアが大嫌いな火力も増やさねばならないのですか、この逆説がわからないとどうにもなりません。
言い換えれば、二酸化炭素ガスを削減するというジュニアのもう一つの政治目標は、火力や原発をある程度残していかねば達成されないのです。
だからそのバランスをどうとっていくのかが、政治家の政治家たるゆえんなのですが、化石燃料はヤメロ、原発もヤメロではまるでコレも欲しいアレも欲しいとおねだりすればなにか貰えると勘違いしているガキです。

ところで、つい先だってジュニアは超馬鹿語録に新たな一頁をつけ加えました。

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 「化石燃料、石炭・石油・天然ガス、これに依存して人間の経済社会活動が営まれる時代を変えよう!というのが、カーボンニュートラルであり、このプラスチックをもし使うのであれば、リサイクルが前提となる、ゴミが出ないサーキュラーエコノミーなんですよね。
石油の色もにおいもないから分からないと思うのですが、石油って化石燃料なんです。
じゃあこのプラスチックを、使い捨てを減らそうと思ってるかというと、プラスチックの原料って石油なんですよ! 意外にこれ知られてないんですけど」

ぶ、はは、ジュニアは国民がプラスチックが石油由来だと知らないと思っているらしいですね。
当人は啓蒙と思っているのかもしれませんが、ほんとうは愚民視というんですよ。
小学生でも知っているようなことを、爽やか柑橘系でしゃべってるんですから、まるでNHKの子ども向け番組のお兄さんみたいです。
ここでジュニアがかっこいいと思って使った「カーボンニュートラル」は、環境運動に多少関心がある人なら誰でも知っている考えかたです。
これは化石燃料に頼らない、という考えかたではありません。

カーボンニュートラルのほんとうの意味は、温室効果ガスの大気中への排出量と、消費量をプラスマイナスで均衡させるという考え方です。
米国ではすでに菜種のバイオエタノール化を義務化していますが、食糧になるものを燃やすというなんとも不道徳な考え方です。
実際に、これで得られる炭酸ガスをマイナスする効果と、化石燃料による温室効果ガスが打ち消し合うかどうかわかっていません。
だって、カーボンニュートラルなんていうのは、暇な学者が考えた机上の計算にすぎず、実際には作物の収穫、運送、加工には多くの工程を必要とし、その間炭酸ガスをガンガン排出するからです。

ついでにサーキュラーエコノミーっていうのは、循環型経済のことで、日本はすでに世界で首位を争うプラスチックのリサイクル率を誇っていますから、なにをいまさらの話です。
啓蒙としてはチンプなうえに間違っていますし、横文字で言うオレってカッコいい、と思うナルシストが言いそうなセリフです。

政策としてはコンビニのレジ袋を止めさせたり、プラスチックスプーンを取り上げたりしても、なんの意味もありません。
ただひたすら消費者が不便をして、コンビニやスーパーに行くたびに、進次郎め、次は落としてやるぞ、と思うだけのことです。
まぁかつては次期首相なんて呼び声がありましたが、絶対に首相になんかしてはいかんタイプでしょうな。

進次郎さん、あなたには育児休暇を永遠にとっていて下さい。

 

2021年4月 2日 (金)

過激なポリコレと同じになった脱炭素

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まったくヤレヤレな気分ですが、日本は温暖化ガスを2030年時点で4割削減するそうです。
なんでも2050年にはゼロにするのだとか。

「脱炭素に向けた議論が日本でも本格的に動き出した。2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするためには、30年時点で40%を大きく超える削減目標が必要だ。達成には、再生可能エネルギーの拡大や排出量取引制度の導入、技術投資などを急ぐ必要がある」(日経3月31日)

言うのは自由ですが、よもや本気じゃないでしょうね。
立憲あたりが言っているぶんには聞き流しますが、言っているのがいかにも実務肌の菅さんなので、なんだかなぁという気分になります。

政府は去年12月25日に、「グリーン成長戦略」を公表し、その中で経済と環境を両立させて2050年にCO2排出の実質ゼロを目指すとしています。
はっきり言って不可能です。
小規模な削減規模であれば、新型太陽光発電の導入や、電池の改良でなんとかなるでしょうが、大規模に脱炭素をするとなるとあのタブーに触れなければなりません。
ナニかって?そりゃ原発に決まっています。
元々、原子力は3.11まで約3割を占める主要の電源だったのですから、これを増やせとはいいませんから、せめて元の発電規模に復元させるだけでそうとうに脱炭素は実現するはずです。

しかしこれも東海第2の差し止め訴訟が勝訴してしまい、柏崎刈羽が東電のトンマのおかげで再稼働が延期されてしまったためにどうなることやら。
今のように素人の司法に再稼働の判断を握らせるような仕組みがあるかぎり、元の発電規模に戻すのにはどれだけ時間がかかるかため息がでます。

あと残る削減手段は、現在主力電源になっている火力の脱炭素化を進めることです。
電力会社は、原子力を封じられ、脱炭素を政府から要請されるという苦しい立場を、火力の低炭素化・効率化でブレークスルーしようとしています。
たとえば、我が国の先進的な脱炭素火力システムには、このようなものがあります。

●超々臨界圧発電方式(USC)
燃料を燃やして蒸気をつくる際に、極限まで高温、高圧にして蒸気タービンを回すシステム
●コンバインド・サイクル発電
高温のガスを燃やしてまずガスタービンを回し、その排ガスの熱を再利用して蒸気をつくることで蒸気タービンも回すシステム
●石炭ガス化複合発電(IGCC)
コンバインド・サイクル発電でガスタービンを回すのに使われる「高温ガス」を、石炭をガス化して作るシステム
●CO2分離・回収型石炭ガス化複合発電(IGCC)
世界初、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手 | NEDO

この低炭素化・効率化の火力技術は世界最高水準です。
火力というと、炭素ガスと硫黄酸化物をボンボン出しているものしか想像できないと置いていかれますよ。

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 資源エネルギー庁

上図を見ていただければ、中央の世界平均が941㌘CO2/kwhに対し、日本の超々臨海圧発電(USC)は795㌘、CO2分離・回収型石炭ガス化複合発電(IGCC)に至っては590㌘と半分です。
 同じ石炭火力発電とくくってしまうのがいかに乱暴かわかるでしょう。
日本の低炭素・高効率火力発電は、インドや米中のそれと比較すると、実に4割以下の炭素排出量となっています。
日本はひとことで化石依存と言いながらも、炭素排出の少ないLNG火力(グラフ右端)の比重を高め、新型の低炭素型に置き換えながら、従来型の旧式石炭火力を削減し続けています。
こういう実態を知ってか知らずか、結局火力なんだからみんな止めちまえ、輸出するなんて温暖化効果ガスを増やすだけだ、という馬鹿が出ました。
かのセクシー進次郎です。
セクシーくんは、低炭素石炭火力輸出に制限をかけると言い出して、エネルギー業界を呆れさせました。

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「小泉進次郎環境相は26日の閣議後記者会見で、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電所の輸出支援政策見直しについて触れ、相手国で脱炭素への移行が促進されることを輸出要件に含めるべきだとの考えを表明した。政府が6月にも策定する「インフラシステム輸出戦略」の基本方針に盛り込むことを目指す。
この日環境省の有識者検討会が、脱炭素化に政策転換するよう輸出相手国を支援する重要性などを指摘した報告書を取りまとめたのを踏まえ、環境省として新たな方針を示した。小泉氏は、石炭火力は新設後約50年稼働するため相手国のCO2排出量を固定化するほか、投資に見合った資金の回収ができなくなるリスクがあると指摘。「長期的なリスク評価が必要だ。ビジネス最優先で、売れるから売るというだけではだめだ」と述べた」(毎日2020年5月26日)

私はレジ袋は勇み足でしゃーない奴ていどに思っていましたが、この日本の低炭素排出・高効率火力の輸出に対する規制発言にはあきれ果てました。
規制どころか、もっと積極的に日本が生み出した低炭素・高効率火力を、官民が協力して世界に普及させることが、世界にとってもっとも効果的な脱炭素の方法なのに反対してどうする。
世界で二酸化炭素ガスの排出量ベストスリーの米中印に輸出するだけで、そうとうの削減が可能となるのに、環境大臣がこれに反対するというんですから超絶バカです。
そもそも二酸化炭素排出の圧倒的世界一位の中国の排出量をどうにかしないと、世界全体の脱炭素など絵に描いた餅なのです。
中国の二酸化炭素問題に触れない地球温暖論は偽善です。そういや、グレタさんもひとことも触れないよな。

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データで見る温室効果ガス排出量(世界) | JCCCA 全国地球温暖化防止

政府は、原子力に封印をしたまま、その代替をになっている安価な化石燃料の従来通りの利用に大きな制限をかけ、CO2の回収貯留を義務付けるといいます。
その代替は、不安定で気まぐれな電源である再生可能エネルギーをメーンに据え、まだ技術が完成していない水素エネルギーで代替するということのようです。

そのうえこの「グリーン成長戦略」により、2030年に年90兆円、2050年に年190兆円の経済効果があると捕らぬタヌキの皮算用をしているのですから、頭大丈夫ですか、菅さん進次郎化しちゃったんじゃないでしょうね、と心配になります。
カンが強引に進めた太陽光発電の普及の帰結として、国民は年間2.4兆円の賦課金を背負うことになりました。
この再エネ賦課金は、消費税と酷似していて、所得と無関係に使った電気使用料に均等にかけられるために、貧困層に大きく負担がのしかかります。
しかも再エネ振興のために、20年間固定価格買い取りとして制度化してしまったために、累進的に負担を増していくことになります。

またかつてカン政権は、再エネによるグリーン成長戦略だなどと言っていましたが、メガソーラーの多くは中韓の外国資本によって占められ、しかも太陽光パネルの大部分は中国製ですから、国内の富の流出を招いたにすぎませんでした。

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世界の太陽電池生産量・生産能力および太陽光発電システム導入量

これを今度は年間100兆円規模でやろうというのですから、日本経済が破綻する可能性があります。

なるほど今の世界のトレンドは、脱炭素です。
脱炭素はいまポリティカル・コレクトネスと同じ位置に納まってしまいました。
私が地球温暖化説に関心を持ち始めた10年ほど前には、環境問題に関心がある人だけのテーマでした。

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かつて私はアル・ゴアの有名な『不都合な真実』を読み解く中で、このゴアの主張には多くの過剰な装飾、ありていえば嘘が含まれていることに気がつきました。
これについては別な機会に譲りますが、ゴアが警鐘を鳴らした多くの事象が、温暖化とは別な原因で起きていることがわかったからです。

私はやがて、地球温暖化のバチカンであるIPCCの人為的二酸化炭酸ガス温暖化説は「根も葉もある間違い」 だと考えるようになりました。
たしかに人為的温暖化は存在します。そこまでは事実で、温暖化は起きていないというのは誤りです。
そしてその原因のひとつに、人類の経済的社会的活動があるのも事実でしょう

しかし地地球規模の気象変動を、温暖効果ガス、すなわち二酸化炭酸ガス排出だけですべて説明しようとするには、あまりにも無理があります。
地球の気候は周期的に変動し続けていますし、その原因は人類の活動とは無関係な太陽の活動や海洋の周期に影響されているからます。
脱炭素への取り組みを全否定する気はありませんが、二酸化炭酸ガスのみに特定して、それだけを中心に経済・社会を規制するのは行き過ぎです。
そのようなことをすれば必ず経済・社会活動の低迷を招くことになることはわかりきっているからです。

ところで私のような温暖効果ガス懐疑論は、10年前には自由に発言できる雰囲気がありましたが、現在はいささかの勇気が必要になってきています。
脱炭素運動が、一部の極端な環境活動家の手から日米欧の政治の中心に踊りだしてしまったからです。
まるで、かつてのポリコレが少数の運動家から、「世界の常識」と化していったように、です。

温暖化効果ガス削減は、いまや少しも疑ってはならない「絶対真理」、ないしは「絶対正義」と化したのです。
これに真正面から反対できる政治家は少なく、私が知る限り世界広しといえどドナルド・トランプしかいませんでした。
だから、トランプは「地球の敵」扱いされましたが、トランプの反骨は筋金入りだと感心させられます。

一方、風見鶏よろしく世間の風向きを計ることに動物的嗅覚を持つ小泉父子は、脱炭素に走ったというわけです。

 

※扉写真を差し替えました。

 

2021年4月 1日 (木)

公明党「ウィグル弾圧の証拠はない」と言った瞬間、米国務省がウィグル人権報告書を提出

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思わず苦笑してしまいましたが、公明党がウィグル非難に反対、いや「慎重」だそうです。

「公明党の山口那津男代表は30日の記者会見で、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害をめぐり、日本が対中制裁に踏み切る欧米諸国と足並みをそろえるべきかについて慎重な考えを示した。「わが国が制裁措置を発動するとすれば、(中国当局の)人権侵害を根拠を持って認定できるという基礎がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない」と述べた。 国内では超党派で、海外での深刻な人権侵害行為に制裁を科すための日本版「マグニツキー法」の制定に向けた動きも進む。山口氏は同法の制定についても、「日本にとってはいかがなものか。慎重に検討すべきと考える」と述べた。
山口氏は中国が日本にとって最大の貿易相手国であり、幅広い日中の交流の歴史があることを指摘し、「国際的な緊張の高まりや衝突を回避し、(緊張を)収められるような積極的な対話を日本こそ主導すべきではないか」と強調した」(産経3月31日)
https://www.sankei.com/politics/news/210330/plt2103300020-n1.html

なにを言っているのか、山口さんは。これが「小さい声を聞く力」の党のいうことだとは笑止です。
公明党には、中国の片隅の「小さな声」は聞こえないようです。
聞く気にさえなれば、BBCやWSJ、あるいは日本では産経が詳細な記事を多くアップしていますし、日本には3000人のウィグル人が暮らしていますから、少しは「聞く力」をつかってみたらいかがでしょうか。

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産経

この党は、先だっても重要施設近辺の土地利用についての法案にも反対したばかりで、よほど中国がお好きらしい。
この党は中国の友人を自認しているのですから、ならば真の友人らしく人権弾圧について調査に応じるように忠告すべきです。
それを踏まえての「対話」であって、人権弾圧に加担することが「交流」ではないはずです。
そもそも中国は人権問題の存在自体を認めませんから、「対話」そのものが成立しませんがね。
ですから、聞く耳を持たない相手の「積極的対話」なんて空論空語の極みなのです。

さてこの日本でも進められているマグニツキー法の元となったマグニツキーは、ロシアの税務当局が2億3000万ドルの巨額の横領をしていると告発したことで、当局に1年以上にわたって拘束され、2009年に獄中死しました。

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このロシアの人権弾圧事件を受けて、米国が2012年に制定したのがこの「マグニツキー法」です。
この法律によって、人権侵害をした個人や組織を対象に資産凍結やビザ発給制限などの制裁を科すことが可能となりました。

当初はロシアに対しての法律でしたが、今はグローバル・マグネツキー法となって、対象を全世界に広げています。
また米国のみならず、英国やカナダなどの国々も同様の法律を制定し、昨年末にはEUも承認しています。
今回のウィグルのジェノサイドに対しても、このマグネツキー法を根拠に制裁が課せられています。
※関連記事 『米国議会、ウイグル人権法案可決!』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/12/post-9ecfad.html

この反対するほうが難しい人権法に、公明党は「証拠がないから反対」だそうです。
国内の人権には日頃から人一倍敏感な公明党とは思えません。中国となると一気にその眼が曇ってしまうようです。
いまでもBBCの報道を先頭に多くのウィグル人の証言が存在しますが、物的証拠でもみせないと信用しないということでしょうか。
たとえば収容所内部の詳細な調査とかがご要望でしょうか。
だからこそ、国際社会は職業再訓練センターと呼ばれる300万人とも言われる隔離施設の査察を求めているのです。
国際社会が中国に見せろと言っている時に、「証拠がないから見るな」と言っているようなもので、このおかしさに気がつかないようでは、そうとうなもんです。

公明党が「証拠を出せ」と言ったら、それを知ってか知らずか同じ3月30日、米国務省が「2020年人権報告」を発表し、200国家と地域の人権および労働者権利状況についてまとめました。
この報告のほとんどの部分が中国で占められています。
この報告書をもとに、米国務省はすでに英国、カナダと合同で中国に対して制裁を実施しており、さらにEUなどの国際社会と広く共同して人権を守るために声を上げていく、と宣言しています。

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ブリンケンはこの報告発表の会見の席上で、このように述べています。

「バイデン大統領は人権問題を米国外国政策の中心におくことを約束している。これは国務省としても非常に重視している約束だ。我々は持てる外交手段を利用して人権を守り、人権侵害者の責任を追及していく」

バイデン政権もトランプ政権から変わらずに、米国の対外政策の基本に中国の人権問題を上げていくということです。
たぶんこんどの日米首脳会談でもテーマに登るはずですが、その時に「法律がないのでなにもできません。与党で反対する党があるのでなにもしません」とでも菅首相は答えるつもりなのでしょうか。恥ずかしい。
国際人権法がなければ、作ればよいだけのことです。
外圧を持ち出すのは好きではありませんが、わが国はこうでもしないと「証拠がないからぁ」などということを言う手合いを黙らせることが難しいのだから困ります。

今年の人権年次報告はおおむねトランプ政権時のものを引き継いでいますが、さらに中国当局によるウィグルの大規模な隔離政策や強制労働に焦点をあてています。

「2020年度の報告では、さらに中国政府における新疆の少数民族政策に着目。100万人を超えるウイグル人とそのほかのムスリム少数民族グループを強制収容し、さらに200万人に対して全日制の”再教育”研修を行った、と指摘。中共は学校、工場、監獄などの施設を改造し、さらに大規模な強制収容施設を拡張している、としている。
ブリンケンは報告の前言で、次に様なコメントをよせた。「中国、中共当局はムスリムを主としたウイグルのジェノサイド(民族絶滅)、およびウイグルその他の宗教と少数民族グループに対する監禁、拷問、強制避妊手術、迫害などの人類に対する罪を犯している。
さらに「強制収容所からの生還者は、執法人や刑事、強制収容所施設職員らによる、拷問やその他の侮辱行為について証言している。その中には電気棒による拷問、水刑、殴打、レイプ、売春の強要、避妊手術の強要などが含まれる。
華為などハイテク企業が開発したAI顔認証技術により、中共は”ウイグル警報”を打ち出し、ウイグル人やそのた少数民族を群衆の中で識別することに利用している、という。ヒューマンウォッチの報告によれば、中国国家安全部と情報技術企業の協力により、大衆自動言語識別監視システムが作られ、チベット語とウイグル語を識別するだけでなく、指紋、DNAなどの生物情報を収集して、データとして蓄積されている、という」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)No306)

更にこれが単なる強制収容にとどまらず、収容所で再教育という名の洗脳を受けたウィグル人を移送し、劣悪な労働環境で強制労働させていることも報告しています。

「今年発表されたこの人権報告では、新疆の収容施設、監獄、工場における国家の支援を受けた強制労働問題にも触れられている。報告では中共による強制労働、研修、移転計画を通じて新疆の収容施設のウイグルや現地の労働者に強制的に労働に従事させている大量の証拠が挙がっている。
特に農業、アパレル、電子産品分野など領域で強制労働が行われている。綿花、トマトの収穫と加工の工程における強制労働が深刻であると指摘されている」(福島前掲)

なお、この収容施設についてはウォールストリートジャーナルがすでに内部資料を入手していますので、一読をお勧めします。
これなど物的証拠の最たるものですが、公明党は知らないのでしょうか。
WSJ 2021年4月1日 『中国ウイグル監視の内部文書、収容所送りの理由も 拘束された311人の詳細情報が流出 』 
中国ウイグル監視の内部文書、収容所送りの理由も - WSJ

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WSJ

この政府内部文書を報道機関に公開したのは、新疆政府の職員だったウイグル族女性のアシエ・アブドゥラヘブ氏で、オランダに亡命時に内部文書を持ち出しました。

「 スプレッドシートからは、新疆ウイグル自治区の1400万人のイスラム教徒を厳しく取り締まる段階から次に進み、当局が新たな管理手法を取り始めたことがわかる。 カラカシュ県のリストにある住民の85%が少なくとも1年の再教育を受けた後、最終的に出所を勧告されていた。文書によると、かみそり状の鉄条網を張り巡らせた再教育施設を出た後も、彼らは引き続き政府の監視下に置かれる。
 大半の収容者は、監視された状態でコミュニティーに戻るか、または工業団地での仕事に就く。リストには再教育施設で習得した技術や知識についての記述はほとんどなく、法的手続きや司法審査にも触れていない。
 また、この文書はカラカシュ県の4つの主要な再教育キャンプを挙げている。最大規模の「第1訓練センター」は県南部の大規模な工業団地の端に置かれている。別のキャンプは元高校の敷地内にあり、国営メディアの宣伝動画の中で、収容者が調理や油絵などを学んでいるところが紹介された」(WSJ前掲)

このようにウィグルの人権弾圧については、これ以外にも多数の証拠や証言が上がっており、山口氏ら公明党は見ようとしないから見えないだけのことです。


 

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