細野豪志の証言 その2
私は細野豪志という政治家のことを、さほど評価してきませんでした。
民主党が解体した後、小池が作った希望の党を経て、政界の漂流民として自民党二階派に漂着したくらいの認識です。
ただし、もうひとりの自民党漂着組の長島昭久氏も安全保障の専門家であるように、この細野も原子力問題では似た立場にいます。
私がそう思うに至ったきっかけは、この「事故・自己調査報告書」という一冊の本でした。
よく出したな、こんな正直な本、それが私の率直な感想です。
彼の選挙参謀なら、こんな海洋放出が連日騒がれている時期になにを考えているのか、福島県民に寄り添うとか口当たりのいいことを言っていればいいんだ、あれから10年たってどうせ選挙民なんかあんたが事故当時ナニをしたのかなんておぼえちゃいないんだから、と言うかもしれません。
ある意味そのとおりです。そもそも福島は彼の選挙区でもありませんから、一票の足しにもならないのです。
彼の選挙参謀なら、こんな海洋放出が連日騒がれている時期になにを考えているのか、福島県民に寄り添うとか口当たりのいいことを言っていればいいんだ、あれから10年たってどうせ選挙民なんかあんたが事故当時ナニをしたのかなんておぼえちゃいないんだから、と言うかもしれません。
ある意味そのとおりです。そもそも福島は彼の選挙区でもありませんから、一票の足しにもならないのです。
仮に環境大臣や経済産業大臣でもやっていたなら、小泉ジュニアのようにパーフォーマンスのしがいがあるでしょうが、あいにく彼は無役です。
与党の冷や飯食いでなかったなら、彼ほど環境大臣に適した人材はなかったことでしょう。
ジュニアなど足元にも及ばない実践的、かつ、実戦的な原子力知識をもっています。
彼が環境相として答弁したなら、かつての官邸組だった枝野がどんな顔をするか、見てみたいものです。
しかしその枝野ときたら、こんなことをシレっとして言ってのけています。
この男の鉄面皮ぶりにはいつもながら感心させられます。
与党の冷や飯食いでなかったなら、彼ほど環境大臣に適した人材はなかったことでしょう。
ジュニアなど足元にも及ばない実践的、かつ、実戦的な原子力知識をもっています。
彼が環境相として答弁したなら、かつての官邸組だった枝野がどんな顔をするか、見てみたいものです。
しかしその枝野ときたら、こんなことをシレっとして言ってのけています。
この男の鉄面皮ぶりにはいつもながら感心させられます。
「立憲民主党の枝野代表は、訪問先の札幌市で記者団に対し「地元の漁業関係者には危惧や反対の声があるが、政府は何の説明もないまま結論ありきで進めてきた。当事者を無視した被災者なき災害対応であり、事故対応だ」と批判しました。
そのうえで枝野氏は、記者団から海への放出の是非を問われたのに対し「政府はただ『安全だ、安全だ』と言っているだけで具体的な説明がなく判断のしようがない。判断材料が出てこないということは、反対せざるをえない」と述べ、現状では反対する考えを示しました」
(NHK4月12日)
逆説的に言えば、この枝野の発言こそが総選挙を直前に控えた「正しい」政治家の発言ではあるのです。
自分にはここまで処理水の処分を遅らせたことになんの責任もない、すべて悪いのは政権党だ、立憲民主は哀れな福島県民に寄り添っていくのだ、どうぞあなたの一票を、というわけです。
おそらく無知な蓮舫などと違って、枝野は海洋放出しないと手遅れになることくらいは、よく分かっているはずです。
もしほんとうに分かっていないなら、政治家などさっさと辞めて、国会議事堂前で赤旗を振っていて下さい。
自分にはここまで処理水の処分を遅らせたことになんの責任もない、すべて悪いのは政権党だ、立憲民主は哀れな福島県民に寄り添っていくのだ、どうぞあなたの一票を、というわけです。
おそらく無知な蓮舫などと違って、枝野は海洋放出しないと手遅れになることくらいは、よく分かっているはずです。
もしほんとうに分かっていないなら、政治家などさっさと辞めて、国会議事堂前で赤旗を振っていて下さい。
政治家がしなければならないことは、リスクと利益を明確に切り別けて、その上で口に苦くともそれをしっかりと国民に説明することです。
細野はこう述べています。
細野はこう述べています。
「処理水を流すことは、ゼロリスクではないかもしれない。しかし、これまで世界では普通に(海洋に)流されてきた。(放射性物質の)トリチウムの安全性について科学的にすべてわかっているわけではないが、今のところ被害は出ていないし、今後も出ないと予想されている。リスクはある、ということだけ流すのはフェアではない。風評被害が出ている、とだけ情報を流すのは風評被害の拡散でしかないのと同じです」(ニューズウィーク2021年3月11日)
ただ福島に寄り添っていることが誠実だと思っているらしい枝野に較べて、どちらが誠実な政治家の答えかお判りになるはずです。
まぁ、事故時に枝野の言う「福島に寄り添う」というのは、こんなことでしたがね。
まぁ、事故時に枝野の言う「福島に寄り添う」というのは、こんなことでしたがね。
細野は自分は1ミリシーベルトという過剰な除染基準を作った時に丁寧に説明したが、帰ってよいのかという住民の問いに誠実に答えていなかったと言っています。
1ミリシーベルトは当初単なる除染基準でしかなく、住民の帰還は可能だったが、そこまで説明しきれずに答えを濁してしまった結果、まるで1ミリシーベルトが帰還基準になってしまって多くの避難民に強いストレスを与えて客死させてしまった、だから「言葉を濁す」という政治家の姿勢は危険なのだ、と述べています。
「(1ミリシーベルトは)安全の基準そのものとは関係ない」と言ってはいたが、伝わらなかった。福島県浜通りの多くの地域では安全です、と力を入れて言えば良かった。
なぜそれが言えなかったか。事故を起こした責任の一端があるから、「安全だ」と言うことを躊躇した部分はあります。科学的というより政治的な判断をしていた。「すぐに帰れます、(1ミリシーベルトは)安全基準とは関係ありません」ということを、もっと言うべきだった。丁寧な説明はしたが、反論したり断言したりはしなかった。
科学的なコンセンサスがあるものについては、きちんと言うべきです。科学者は10年後も、「これまでのところ安全です」としか言わない。それは100年後も変わらない。結果として、「除染が終わらないと帰れない」という意見が続き、帰還が遅れた。街の復興にも遅れが出た。それだけでなく、転々と避難することで命を落とした人もたくさんいる。被ばくでなく、避難の影響で体調を崩したり命を落とした人は相当いるんです」(NW前掲)
あの時必要だったことは、ゼロリスクを求めず、科学的に分かっているファクトを言葉を濁さずに国民に説明することでした。
それをかつての民主党政権はできなかったし、今なお政治家がもっとも苦手とすることです。
それをかつての民主党政権はできなかったし、今なお政治家がもっとも苦手とすることです。
細野も言っているように、海洋放出はとっくの昔にしておかねばならなかったことで、ぎりぎり去年がリミットでした。
安倍政権が力があるうちに決着をつけて、解決の道筋をつけるべきことだったのです。
それがくだらないモリカケサクラのうえにコロナがかぶってしまって、安倍氏のほうの体力が尽きてしまいました。
もっとも安倍氏は原子力政策には消極的で、ほとんど見るべき成果を残していませんでしたが。
安倍政権が力があるうちに決着をつけて、解決の道筋をつけるべきことだったのです。
それがくだらないモリカケサクラのうえにコロナがかぶってしまって、安倍氏のほうの体力が尽きてしまいました。
もっとも安倍氏は原子力政策には消極的で、ほとんど見るべき成果を残していませんでしたが。
細野は自民党内ではお客さんだからなんでも言えるのだといえばそれまでですが、細野はこうも言っています。
「マイナス面だけを議論すると、どうしても煮詰まってしまうんです。福島に関してはアドバンテージもある。福島沖はほぼ10年間漁をやっていないので、魚は数も多いしサイズも大きいです。もともと親潮と黒潮がぶつかるところで魚の質が良く、その質がさらに上がっている。そういったプラス面をアピールすることで流通し、買い手がつく状況をつくらないといけないです。
岩手県と宮城県のがれき広域処理を環境大臣のときにやりました。全国にお願いして、私の地元の静岡県でも5つぐらいの自治体が受け入れてくれた。当時、「そんなことをしたら静岡県の食べ物が風評被害で売れない」という話があったが、そんなことはなかった。大阪も北九州も東京も受け入れたのですが、初めはものすごく反対運動が起きる。でも、実害が起きないのでみんな冷静に受け止めました」(NW前掲)
そのとおりで、今漁を再開することのベネフィットは大きいはずで、福島沖は元々親潮と黒潮の合流点なことに加えて、10年にも及ぶ休漁によって、脂ののった大きな魚が大量に生息していることがわかっています。
ですから全漁連のように風評被害リスクばかりを叫ぶことがほんとうに地元漁業者の為になるのかどうか、治まった風評被害を再燃させているだけではないかという疑問も浮かぶのです。
そんなにリスキーだとばかり言うなら、こういう方法もあるのではないか、と細野は提案しています。
ですから全漁連のように風評被害リスクばかりを叫ぶことがほんとうに地元漁業者の為になるのかどうか、治まった風評被害を再燃させているだけではないかという疑問も浮かぶのです。
そんなにリスキーだとばかり言うなら、こういう方法もあるのではないか、と細野は提案しています。
「1つのやり方として、テスト的に放水するという手はある。きちんとモニタリングして、それを批判的な立場の人にも検証してもらう。ただ、今は政治マターになってしまって、パタッと動きが止まっている」
「処理水もきちんとやれば可能だと思います。もちろん100%モニタリングをする。IAEAも監視に加わると言っているから、国際社会のモニタリングも受ける。情報公開をすれば、一時的にいろいろなことは起きるが冷静に受け止められる状況は作れる。日本人は冷静さ、バランス感覚を持っていると思います」 (NW前掲)
政治が悪い意味でからまってしまったために、なにひとつ動かない、これが問題なのです。
なにかといえば政府追及のネタにしたがる野党とメディア、初めから腰が引けている与党、こんな政治の怠惰のためにどれほど遠回りをせねばならなかったのか。
なにかといえば政府追及のネタにしたがる野党とメディア、初めから腰が引けている与党、こんな政治の怠惰のためにどれほど遠回りをせねばならなかったのか。
かくして政治の仕事は大きく決めることだったにかかわらず、政治がかえって問題解決の足を引っ張ってしまい、結局10年もかかってしまいました。
閣議決定したといっても、まだこれから2年もの時間がかかり、タンクの増設も必要だと政府は言っているようです。
ならばその期間を使って、細野の提案のように小規模の放出テストをして、漁連はもとよりIAEAや反対する中韓にも来てもらってモニタリングしてもらえばいいのではないでしょうか。
閣議決定したといっても、まだこれから2年もの時間がかかり、タンクの増設も必要だと政府は言っているようです。
ならばその期間を使って、細野の提案のように小規模の放出テストをして、漁連はもとよりIAEAや反対する中韓にも来てもらってモニタリングしてもらえばいいのではないでしょうか。
2021年4月14日 (水) | 固定リンク
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正直だな細野!
民主党時代には立場上言えないことも多々あったでしょうし、当時の上司がカンや枝野ですからねえ。。
枝野の意見はヤフーコメントで袋叩きでしたね。いわゆる「おまいう」や「毎度のことだがそれなら対案出せ」と。。
所謂常磐物の魚は最高です!しかもこの10年取ってないんだから、資源量も凄いでしょうね。あー、記事読んでてドンコ鍋が無性に食いたくなりましたよ。
かつては正月頃に(仙台などの消費地需要で一気に値段が上がる時期なんですけど)、相馬港まで活ナメタカレイを買いに行ってましたから。。あと生青海苔。
一昨日地元のスーパーに行ったら「相馬産生青海苔」のパックがありました。
ああ、あの津波に飲まれた松川浦の青海苔養殖も復活したんだとシミジミと。
熱々の味噌汁に一掴みドバっとぶっ込むと磯の香りが最高!
あとパスタでも超シンプルなペペロンチーノに合えると···スゲェうんまいです。。
投稿: 山形 | 2021年4月14日 (水) 07時09分
細野氏らが一ミリシーベルトに基準を決めて、そのせいで巨額の国家予算が無駄に失われたに違いありませんが、当時のテレビ・主要マスコミの論調は現状回復論(ゼロリスク論)ばかりの中でギリギリ可能な選択肢だったという事でしょう。
「ゼロリスク論」は「反対論」の応用編で、マルクス主義が作った典型的な行動パターンです。「反対」とか「ゼロリスク」を基に意思表示すれば即ち「正義」となり、客観的に物事がつかめているとの思い込みもそこに生じます。だいいち、バカでも少しは利口そうに見えたりもします。
そうしたスタイルが長年の身上だった枝野や菅(カン)らが行き着いたのは、当然のごとく実際的な政治行動の放棄に等しいものでした。
細野が一ミリ基準を決めたとき「行き過ぎ」との批判はすぐに上がりましたが、むしろ基準が決まって前進可能になった事に対する安堵感が生まれたと記憶します。
「必要だったことは、ゼロリスクを求めず、科学的に分かっているファクトを言葉を濁さずに国民に説明すること」。 これは期待された安倍政権になっても1ミリシーベルト基準を変える事が出来なかった事からも明らかなように、今でも相当に難しい課題です。
民主主義下においての政治家は、一身を賭して事にあたっていただく他ないと思います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年4月14日 (水) 10時17分
まずは処理水の放出が無事決まってなによりです。
朝日新聞などは今になって「あれは汚染されていたものを処理した水」などと見苦しい言い訳を垂れ流して、それによって生じた風評被害に関して謝罪する気は一切無いようです。
さすがマスコミ様。
前例主義で固まっている日本では一度決まった基準を変えるのは新規で基準を作るよりも困難ですからね。
新型コロナでも尾身氏の発言がどんどん投げやりな感じになってきているのも感情論、ゼロリスクの圧力に屈した感がありとても残念です。
今の日本政府に足りないのは情報発信力なのでNHKなんぞさっさと完全民営化して使ってない電波帯取り上げて国営の政府広報TVを作ればいいんですけどね。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年4月14日 (水) 16時49分
トリチウム悪!だからゆるキャラ不謹慎!とゼロリスク界隈が吹き上がる復興庁の解説を見に行ったら、誰でもわかるように解説されてありました。
https://www.reconstruction.go.jp/topics/sozai/alpssyorisui_tirasi.pdf
動画もあるようです。
まあこれすら、信じたくない人たちは「信用できない!」としか言わないのだろうけれど。
時に。
「風評被害がー」とだけ主張するマスコミ及び方々は、発生して被害方向に働くと想定する風評は科学的に誤っているor現在根拠薄弱であると「自分たちは知っている」が、「どうせ世間はバカな人ばかり」だから風評を信じ込んで買ってくれない、と考えているということなんでしょうかねぇ。
そういうことが無いとは言わない、というよりそれも必ずあるでしょうけれど、全員がそうというわけではないし、それ以前に、誰にも選択の自由はあるので、「買いたい・食べたい」を選ぶ人々の方を向いて、漁業・水産加工業などの方々はやっていくことを始まりとするのが良いのでは、と思うのです。
投稿: 宜野湾より | 2021年4月14日 (水) 21時16分
今日こそ早めにコメントしようと思ったら、Windowsのアプデが始ま
ってしまい、完了に1時間半かかりました。NHKなら、気に入らなけ
ればTVのスイッチを切ればいいけど、MS社はよっぽどタチが悪い
ですわ。勝手にダウンロードされると、私の低スペのPCはそれに
忙殺されてしまい、死んだようになってしまう・・
何かのクルマ雑誌で、GT-Rの開発責任者だった水野さんという人
が、「最近のエンジニアは優秀だけど自分の専門の域から出れなく
て、クルマ全体のバランスから考えることが苦手だ」、というような
ことを言っていました。処理水の海洋放流ですが、どーも私は心配
ですわ。トリチウム自体がどーのこーのというのじゃなくて、純粋な
エンジニアリングの話ですわ。もしも、基準値を上回るトリチウムが
検出されたら、原子力技術全体の信用が丸ツブレ、もう元も子もな
くなってしまいます。ミスは絶対に許されない。
そりゃ頭バツグンの人達の仕事ですから、己の専門領域において
は完璧でしょうが、それだからといってプラント全体が完璧という訳
じぁーない。現に、全電力喪失という、全てのタマゴを同じカゴに載
せてしまったシロートのような凡ミスをしてしまっている。水野さんの
ような責任者を雇っているのか?肩書だけのデタラメな脳タリンじゃ
どうにもならない、デューク東郷のようなプロフェッショナルが必須
ですわ。IEAなんてのも100%信じちゃいけない、何かあったら逃げ
まっせ、しょせん日本という主権国家の責任行為なのだから。
投稿: アホンダラ1号 | 2021年4月15日 (木) 00時23分
細野さんの当時のことを記憶しておりますが、ハッキリと物言う方のように思いましたよ。当時の民主党の幹部たちが色々言っておりましたがこれらは心に伝わってくるものがありませんでしたね。残念なのは1ミリという極端なことを言ってしまったことです。これには、私もがっかりしたものです。しかし、今弁解もしておりますので、あのような状況下では、正論は言えなかったのかと、若干同情します。
原子力の問題でも、もっと詰まった議論をして、リスクをとる方向で結論が出ることを望んでおります。原発のゴミは深海投棄でも地中深く埋める方法でも私は賛成です。中国は原発をこれから多く造ろうとしていますが、後処理をどうしようと考えるのでしょうか? 彼らは、深海投棄か地中深く埋めることで考えているのではないでしょうか。そして、このような処置で十分安全だと主張し世界に向けて宣伝するのでしょうよ、きっと。強弁で来ますよ。
危険なのは中国なのであり、原子力のゴミ投棄などはこれに比べれば現実的脅威でもありません。それは遠い将来のリスク・テイクの問題であり、今原発を止めることは愚策だと思いますね。
トリチウム汚染水の海洋放出は安全だと思っております。
投稿: ueyonabaru | 2021年4月15日 (木) 01時43分